説明

α−イミノエステルの不斉アルキニル化のための方法


【化1】


〔式中、RおよびRは独立して所望により置換されていてもよいアルキル、シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、そしてYは水素または窒素保護基である〕の不斉アルキニル化α−アミノエステルの製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、α−イミノエステルへの末端アルキンの付加の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
エナンチオマーα−アミノ酸、特に、非タンパク質由来アミノ酸はタンパク質工学およびペプチドベース薬剤発見の重要な手段として格別であり、急速に人気が増加している。精力的な研究はエナンチオマー的に富化された人工α−アミノ酸の製造に集中してきた。いくつかの手法、例えば、エンアミドの生物分解ルートならびにロジウム触媒不斉水素化が非常に有望と示されてきた。しかし、未だ人工アミノ酸誘導体の異なる型の便利な合成のための効率よく、技術的に可能な方法の必要性がある。
【0003】
このような合成のための魅力的な戦略はα−イミノエステルへのエナンチオ選択的求核付加である。これは新規キラル中心および新規炭素−炭素結合が1回の操作で構築でき、さらに適当に設計された側鎖が導入できるため有用であり得る。当分野の以前の研究は主にα−イミノエステルの触媒不斉アルキル化に集中していた。使用されている求核試薬はエノールシラン、アリル金属化合物、TMS−ニトロネート、ケトンおよびニトロアルカンを含む。
【0004】
最近、穏やかな反応条件下でAg(I)塩の存在下でα−イミノエステルに末端アルキンを直接付加することによるα−イミノエステルのアルキニル化が報告されている。Ji et al., “Efficient Synthesis of β, γ-alkynyl α-amino acid derivatives by Ag(I) catalyzed catalyzed of α-imino esters”, 346 ADV. SYNTH. CATAL. 42-44 (2004)参照。しかし、これに報告されているAg(I)−触媒反応はキラルリガンド、例えば、アミノホスファン、ジホスファンおよびpyboxが使用されるときでさえ、エナンチオ選択性ではない。
【0005】
したがって、光学的に活性な人工α−アミノ酸を合成するために使用され得るα−アミノエステルの不斉末端アルキニル化を提供するための製造法が必要である。本発明はこの必要性に取り組む。
【発明の開示】
【0006】
発明の要旨
本発明は、式
【化1】

〔式中、RおよびRは独立して所望により置換されているアルキル、シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、そしてYは水素または窒素保護基である〕の不斉アルキニル化α−アミノエステルの製造法であって;式
【化2】

〔式中、RおよびYは式IIIに記載のとおりの意味を有する〕のα−イミノエステルを式
【化3】

〔式中、Rは式IIIに記載のとおりの意味を有する〕の末端アルキンと反応させることを含む方法に関する。
【0007】
発明の詳細な説明
本発明は、α−イミノエステルの触媒不斉アルキニル化のための方法に関する。
【0008】
本明細書で使用される“α−イミノエステル”なる用語は式(I)
【化4】

〔式中、
は所望により置換されていてもよいアルキル、シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであり;そして
Yは水素または窒素保護基である〕を有する化合物を意味する。
【0009】
本明細書で使用される“所望により置換されていてもよいアルキル”は1から20個の炭素原子、例えば、1から7個の炭素原子を有する非置換または置換直鎖または分岐鎖炭化水素基を意味する。非置換アルキル基の例は、限定すべきではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル(pr)、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、オクチルなどを含む。置換アルキル基は、限定すべきではないが、1個またはそれ以上の下記の基:ヒドロキシル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、シクロアルキル、アルケニルまたはアルコキシにより置換されているアルキル基を含む。
【0010】
本明細書で使用される“低級アルキル”なる用語は1から6個の炭素原子を有する上記の所望により置換されていてもよいアルキル基を意味する。
【0011】
本明細書で使用される“アルケニル”なる用語は少なくとも2個の炭素原子を有する上記アルキル基のいずれか1個であり、さらに結合点で炭素−炭素二重結合を含むことを意味する。有用なものは2から4個の炭素原子を有する基である。
【0012】
本明細書で使用される“ハロゲン”、“ハライド”または“ハロ”なる用語はフッ素、塩素、臭素およびヨウ素を意味する。
本明細書で使用される“アルコキシ”なる用語はアルキル−O−を意味する。
本明細書で使用される“シクロアルキル”なる用語は1個またはそれ以上の置換基、例えば、アルキルまたはアルコキシにより置換されていてもよい3から6個の炭素原子の所望により置換されていてもよい単環式脂肪族炭化水素基を意味する。
【0013】
単環式炭化水素基の例は、限定すべきではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどを含む。
【0014】
本明細書で使用される“アリール”なる用語は環の位置に6から12個の炭素原子を有する単環式または二環式芳香族炭化水素基、例えば、フェニル、ビフェニル、ナフチルおよびテトラヒドロナフチルを意味し、これらのそれぞれは所望により1から4個の置換基により置換されていてもよく、例えば、所望により置換されていてもよいアルキル、シクロアルキルまたはアルコキシである。
【0015】
本明細書で使用される“単環式アリール”なる用語はアリールに記載の、所望により置換されていてもよいフェニルを意味する。
【0016】
本明細書で使用される“ヘテロアリール”なる用語は芳香族ヘテロ環、例えば、単環式または二環式アリール、例えば、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、フリル、チエニル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、インドリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチエニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフリルなどを意味し;所望により、例えば、低級アルキルまたは低級アルコキシにより置換されている。
【0017】
本明細書で使用される“窒素保護基”なる用語は本発明の特定の化学変化を行うために使用される条件下で反応成分との望ましくない反応から窒素を保護するために導入された置換基を意味する。特定の反応のための保護基の必要性および選択は当業者に既知であり、置換基が一部である分子の構造および安定性ならびに反応条件に依存する。
【0018】
これらの条件に合う既知の保護基ならびにそれらの導入および除去は、例えば、McOmie, Protective Groups in Organic Chemistry, Plenum Press, London, NY (1973);およびGreene and Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley and Sons, Inc., NY (1999)に記載されている。
【0019】
Yに対する適当な窒素保護基の例は、限定すべきではないが:p−メトキシフェニル(“PMP”)、ベンジル、メチルおよびトリフェニルメチルを含む。特に有用なものはPMPおよびベンジルである。
【0020】
本明細書で使用される“末端アルキン”なる用語は式(II)
【化5】

〔式中、Rは所望により置換されていてもよいアルキル、シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである〕を有する化合物を意味する。
【0021】
本明細書で使用される“不斉アルキニル化α−イミノエステル”なる用語は式(III):
【化6】

〔式中、Y、RおよびRは上記定義のとおりである〕を有する化合物を意味する。
【0022】
本発明において有用な触媒は、遷移金属源、例えば、遷移金属、遷移金属塩または遷移金属錯体に結合しているキラルリガンドを含む。このような触媒はその場で製造するかまたは使用する前に単離することができる。
【0023】
触媒系のための適当な遷移金属は、限定すべきではないが、銅(Cu)、イリジウム(Ir)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)およびルテニウム(Ru)ならびにそれらの塩および錯体を含む。特に有用なものは、例えば、銅およびその錯体である。このような遷移金属源のさらなる例は、例えば、Seyden-Penne、Chiral Auxiliaries and Ligands in Asymmetric Synthesis, John Wiley & Sons, Inc., NY (1995)に見いだすことができ、これは出典明示により内容を包含させる。
【0024】
遷移金属錯体の例は、限定すべきではないが、IrCl・2COD、Zn(OTf)、ZnCl、Sc(OTf)、CuO、CuOAc、CuCl、CuI、CuBF、CuBr、CuPF・4MeCN、CuOTf・0.5C、およびCu(OTf)を含む。しかし、特に遷移金属源として有用なものはCuPF・4MeCNおよびCuOTf・0.5Cである。
【0025】
キラルリガンドの例は、限定すべきではないが、下記4、5、6、7、8a、8bおよび9に記載のキラルリガンドならびにそれらのエナンチオマー、ならびにそれらのエナンチオマーの混合物を含む。しかし、特に有用なものは、キラルリガンド:5、7、8aおよび9、ならびにそれらのエナンチオマーならびにそれらのエナンチオマー混合物である。キラルリガンド4は2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(または“Binap”)である。キラルリガンド6は1−(2−ジフェニルホスフィノ−1−ナフチル)イソキノリン(または“Quinap”)である。キラルリガンド9はビス(オキサゾリジン)−ピリジン(または“Pybox”)である。
【化7】

【0026】
アミン塩基の例は、限定すべきではないが、PMP−H、EtN、PrNH、PrEtN、CyNMeを含む。しかし、特に有用なものはPMP−Hである。
化合物Iのそれぞれのアルキニル化反応(下記)は下記の一般法にしたがって実施される:
すべての反応は窒素雰囲気下で実施される。すべての化学物質および溶媒、例えば、有機溶媒は特に記載のない限りさらなる精製なしに受け取ったまま使用する。有機溶媒であるCHClはCaHから蒸留する。化合物Iは当業者に既知の方法にしたがって合成される。例えば、Andrew Taggi et al., “A-imino esters: versatile substrates for the catalytic, asymmetric synthesis of α and β-amino acids and β-lactams,” 36 ACC. CHEM. RES. 10 -19 (2003)参照。
【0027】
Pybox(キラルリガンド9)(9.7mg、0.025mmol)およびCuOTf・0.5C(6.5mg、0.025mmol)を磁気撹拌棒を含む乾燥した10mL丸底フラスコに加える。CHCl(1.0mL)を加え、混合物を室温で1時間撹拌する。本発明で使用できる他の有機溶媒はジエチルエーテル、テトラヒドロフランおよびジオキサンである。溶液を約−10℃に冷却する。反応温度は約−40℃から約30℃;例えば、約−20℃から0℃で変動し得る。CHCl(400μL)中のα−イミノエステル(化合物I)(52.3mg、0.25mmol)、CHCl(100μL)中の末端アルキン(化合物II)(0.25mmol)およびPMP−NH(アミン塩基)(3.2mg、025mmol)を激しい撹拌下で連続して加える。得られる溶液を−10℃で撹拌し、反応物をTLCによりモニタリングした。反応完了後、混合物を1cm×1cmのシリカゲルの栓を通して濾過し、次いでEtOAc(10mL)で洗浄する。溶液を分液漏斗に注ぎ、EtOAc(25mL)およびHO(5mL)とよく混合する。水性層を捨て、有機層を飽和塩水(5mL)で洗浄する。得られる有機層を無水NaSOで乾燥させ、濾過し、次いで真空濃縮する。フラッシュカラムクロマトグラフィー(溶離剤として9:1 ヘキサン−EtOAc)により残渣を精製し、淡黄色油状物として所望のアルキニル化生成物を得る。
【0028】
分析のため、H NMRおよび13C NMRスペクトルを室温でVarian AS 500(500および125MHz各々)スペクトロメータでCDCl中で記録する。化学シフト(δ)をppmで表示し、J値をHzで得る。HRMSをFisons VG platformまたはFinnigan Model MAT−95スペクトロメータでESI法で行う。HPLC分析をWaters 486 UV検出器を有するWaters Model 600を使用して行う。旋光度を10cmセルにおいてPerkin−Elmer Model 341偏光計で測定する。フラッシュカラムクロマトグラフィーをシリカゲルで行った(230−400メッシュ)。
【実施例】
【0029】
実施例1:触媒のための適当な遷移金属の同定
表1.異なる金属塩により触媒される4−フェニル−1−ブチンのα−イミノエステルへの付加
【化8】

【表1】

条件:CHCl(5mL)中の1(0.5mmol)および2a(1.0mmol)
単離された収率
【0030】
上記表1に記載のとおり多くの遷移金属、例えば、Zn(II)、Cu(I)/(II)、Ir(I)およびSc(III)を試験する。IrCl・2COD、Zn(OTf)、ZnClまたはSc(OTf)が触媒前駆体として使用されるとき、4−フェニル−1−ブチン2aのα−イミノエステル1への付加は観察されない(表1の登録1)。触媒前駆体CuPF・4MeCN(登録3)およびCuOTf・0.5C(登録4)が使用されるとき、所望の生成物3aは良い収率で得られる。例えば、Cu(OTf)(登録5)、CuCl、CuBr(登録2)、CuOおよびCuOAc(登録1)を含むいくつかの他の銅錯体は低いまたは相対的に検出できない触媒活性を示す。
【0031】
実施例2−アミン塩基含有の効果
表2.4−フェニル−1−ブチンのα−イミノエステルへの不斉付加
【化9】

【表2】

条件:0℃でCHCl(1.5mL)中の1(0.25mmol)および2a(0.5mmol)。
A:0.5当量のEtN、B:0.5当量のPrNH、
C:0.5当量のPMPNH、D:0.1当量のPMPNH
単離された収率。反応は約−10℃で行う。
【0032】
アミン塩基の添加ならびに他の銅源および構造的に異なるPyboxリガンドの使用を上記表2において試験する。C−C結合形成反応で使用される金属アルキニリドはアミン塩基、例えば、EtNの存在下で生成されることが既知である。驚くべきことに、本発明のアルキニル化系において、反応は0.5当量のEtNまたはPrNH(登録6、7)を加えることによって顕著に阻害される。対照的に、添加剤として0.5または0.1当量のPMP−NHの使用はエナンチオ選択性の減少なしで3の収率を73%から86%および90%に各々増加する(登録5、8、9)。続く注意深い最適化により約−10℃で遷移金属源としてCuOTf・0.5Cおよびキラルリガンドとしてより配座固定されたPybox(9)を使用する条件に至り、収率90%および85%エナンチオマー過剰率(“ee”)で所望の生成物3を得る。
【0033】
実施例3−CuOTf・0.5C6H6/pybox(9)による触媒作用によるα−イミノエステルのアルキニル化
表3.CuOTf・0.5C/9による触媒作用によるα−イミノエステルのアルキニル化
【化10】

【表3】

単離された収率。
【0034】
広範な末端アルキンを使用してα−イミノエステル1の直接アルキニル化を行い、代表的な結果を上記表3に要約する。4−フェニル−1−ブチン(登録1)の添加と同様の方法で、3−フェニルプロピン(登録2)、1−オクチン(登録3)およびシクロプロピルアセチレン(登録4)の付加反応が良い収率およびエナンチオマー過剰率で対応するアルキニル化生成物を提供する。一方、三重結合の近くに巨大な置換基を有するアルキン、例えば、トリメチルシリルアセチレン(登録6)の使用は、低い反応率およびエナンチオ選択性に至った。イミノエステル1への本シクロプロピルアセチレンの添加(登録4)は配座的に制限されたシクロプロパン環を含むα−アミノ酸誘導体に新しい直接のおよび便利な接近を顕著に示す。
以下に実施例3の表3の生成物、すなわち、3a−3fの分析条件を記載する。
【0035】
エチル−2−(p−メトキシフェニルアミノ)−6−フェニル−3−ヘキシノエート。化合物3aを一般方法を使用することにより収率90%で得る。ee値(85%)をキラルカラム[Chiralcel AD、90:10 ヘキサン:i−PrOH、1.0mL/分:t(多量)=11.48分、t(マイナス)=16.75分]を有するHPLC分析により測定する。[α]20−64.7°(c 0.5、CHCl);1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ = 7.28-7.25 (m, 2H), 7.20-7.16 (m, 3H), 6.80-6.78 (m, 2H), 6.67-6.65 (m, 2H), 4.69 (t, 1H, J = 2.3 Hz), 4.27-4.24 (q, 2H, J = 7.5 Hz), 3.76 (s, 3H), 2.80-2.77 (t, 2H, J = 7.3 Hz), 2.49-2.46 (dt, 2H, J = 7.3, 2.0 Hz), 1.31-1.28 (t, 3H, J = 7.5 Hz); 13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ = 169.5, 153.7, 140.6, 137.6, 128.7, 128.6, 126.6, 116.5, 114.9, 84.8, 75.4, 62.5, 55.9, 50.5, 34.9, 21.1, 14.3; HRMS (ESI) C21H24NO3 [M+1]+ 計算値: 338.1756, 測定値: 338.1782。
【0036】
エチル−2−(p−メトキシフェニルアミノ)−5−フェニル−3−ペンチノエート。化合物3bを一般方法を使用することにより収率92%で得る。ee値(83%)をキラルカラム[Chiralcel AD、90:10 ヘキサン:i−PrOH、1.0mL/分:t(少量)=21.49分、t(多量)=35.00分]を有するHPLC分析により測定する。[α]20−38.1°(c 0.4、CHCl);1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ = 7.31-7.24 (m, 5H), 6.83-6.81 (m, 2H), 6.74-6.72 (m, 2H), 4.83 (t, 1H, J = 2.2 Hz), 4.32-4.28 (q, 2H, J = 7.2 Hz), 3.76 (s, 3H), 3.62 (d, 1H, 2.0Hz), 1.27 (t, 3H, J = 7.3 Hz); 13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ = 169.5, 153.6, 139.7, 136.3, 128.7, 128.1, 126.9, 116.4, 115.0, 82.9, 72.8, 62.5, 55.8, 50.5, 25.2, 14.3; HRMS (ESI): C20H22NO3 (M++1) 計算値: 324.1600, 測定値(M++1): 324.1596。
【0037】
エチル−2−(p−メトキシフェニルアミノ)−3−デシノエート。化合物3cを一般方法を使用することにより収率89%で得る。ee値(91%)をキラルカラム[Chiralcel AD、90:10 ヘキサン:i−PrOH、1.0mL/分:t(多量)=9.96分、t(マイナス)=12.63分]を有するHPLC分析により測定する。[α]20−62.3°(c 0.4、CHCl);1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ = 6.79-6.77 (m, 2H), 6.70-6.68 (m, 2H), 4.70 (t, 1H, J = 2.3 Hz 1H), 4.29-4.24 (q, 2H, 7.3 Hz), 3.75 (s, 3H), 2.19-2.15 (dt, 2H, J = 7.0, 2.3 Hz), 1.47-1.44 (m, 2H), 1.34-1.20 (m, 13H), 0.89-0.86 (t, 3H, J = 7.0 Hz); 13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ = 169.6, 153.7, 139.3, 116.6, 114.9, 86.0, 75.0, 62.4, 55.8, 50.6, 31.5, 28.6, 28.5, 22.8, 18.9, 14.3, 14.2; HRMS (ESI) C19H28NO3 [M+1] +計算値: 318.2069, 測定値: 318.2091。
【0038】
エチル−2−(p−メトキシフェニルアミノ)−4−シクロプロピル−3−ブチノエート。化合物3dを一般方法を使用することにより収率92%で得る。ee値(79%)をキラルカラム[Chiralcel AD、95:15 ヘキサン:i−PrOH、1.0mL/分:t(多量)=11.08分、t(マイナス)=19.46分]を有するHPLC分析により測定する。[α]20−47.4°(c 0.7、CHCl);1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ = 6.78-6.74 (m, 2H), 6.66-6.62 (m, 2H), 4.64 (d, 1H, J = 2.3 Hz), 4.26-4.21 (q, 2H, J = 7.0), 3.17 (s, 3H), 1.26 (t, 3H, J = 7.0 Hz), 1.12-1.08 (m, 1H), 0.67-0.64 (m, 2H), 0.63-0.60 (m, 2H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ = 169.9, 153.7, 140.1, 116.4, 115.2, 88.8, 70.6, 62.6, 56.1, 50.7, 14.5, 8.8, 8.7; HRMS (ESI) C16H20NO3 [M+1] +計算値: 274.1443測定値: 274.1453。
【0039】
エチル−2−(p−メトキシフェニルアミノ)−5−(トリメチルシリル)−3−ペンチノエート。化合物3eを一般方法を使用することにより収率63%で得る。ee値(77%)をキラルカラム[Chiralcel AD、90:10 ヘキサン:i−PrOH、0.7mL/分:t(多量)=18.03分、t(マイナス)=27.63分]を有するHPLC分析により測定する。[α]20−36.3°(c 0.5、CHCl);1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ = 6.79-6.72 (m, 2H), 6.68-6.66 (m, 2H), 4.71 (t, 1H, 2.5Hz), 4.28-4.24 (q, 2H, J = 7.2 Hz), 3.74 (s, 3H), 1.46-1.45 (d, 2H, J = 3.0 Hz), 1.32-1.29 (t, 3H, J = 7.3 Hz), 0.04 (s, 9H); δ = 169.8, 153.5, 139.6, 116.3, 114.9, 83.7, 73.9, 62.2, 55.9, 50.5, 14.3, 7.3, -1.9; HRMS (ESI) C17H26NO3Si [M+1] +計算値: 320.1682, 測定値: 320.1711。
【0040】
エチル−2−(p−メトキシフェニルアミノ)−4−(トリメチルシリル)−3−ブチノエート。化合物3fを一般方法を使用することにより収率55%で得る。ee値(48%)をキラルカラム[Chiralcel AD、90:10 ヘキサン:i−PrOH、1.0mL/分:t(多量)=6.97分、t(マイナス)=9.15分]を有するHPLC分析により測定する。[α]20−98.5°(c 0.3、CHCl);1H NMR (500 MHz,CDCl3): δ = 6.65-6.63 (m, 2H), 6.55-6.53 (m, 2H), 4.58 (s, 1H), 4.15-4.11 (q, 2H, J = 7.0), 3.60 (s, 3H), 1.15(t, 3H, J = 7.0 Hz); 13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ = 169.0, 153.6, 139.5, 116.4, 114.9, 100.1, 90.0, 62.5, 55.8, 51.2, 14.2, -0.1; HRMS (ESI) C16H24NO3Si [M+1] +計算値: 306.1525, 測定値: 306.1529。
【0041】
実施例4−不斉アルキニル化α−イミノエステルの有用性
本発明の方法の生成物、すなわち不斉アルキニル化α−イミノエステルは光学的に活性な人工α−アミノ酸誘導体を合成するために使用され得る。この例は下記スキーム1に示され、これは成長ホルモン生成物で使用される薬学的に興味のあるペプチドの重要な中間体であるビスホモフェニルアラニン誘導体またはスキーム1の(R)−12を得るための実施例3の生成物3bの修飾である。
スキーム1
【化11】

【0042】
アルキニル化生成物3bを定量的収率で10に水素化する。次に10を硝酸アンモニウムセリウム(CAN)で処理して収率76%で標的分子を得る。この変換により3bの絶対配置はRであると決定される{(R)−12について[α]20−11.7°(c 0.4、CHCl);ref47、そのSエナンチオマーについて[α]20+14.5°(c 0.4、CHCl)}。加えて、リンドラー触媒の存在下での3bの半還元により(Z)−ビニルアミノ酸誘導体11、α、β、γ−ビニルアミノ酸誘導体を得る。半還元と組み合わせたα−イミノエステル1の触媒不斉アルキニル化は、ビニル基のアミノ酸誘導体への最初の触媒導入を提供する。Pd/Cを使用する11の水素化はまた定量的収率で中間体10を提供する。
【化12】

スキーム2.α−イミノエステルのアルキニル化について提案されるメカニズム
【0043】
特別な理論に縛られることなく、α−イミノエステルの触媒アルキニル化のための推測されるメカニズムをスキーム2に概説する。触媒中心への基質1およびアルキン2の連続的な複合体形成は中間体13を製造し、これを分子内アルキン転移に付し、中間体14を得る。14からの生成物3のその後の解離と同時に触媒が再生される。
【0044】
このように、本発明は良い収率および良いeeをもたらすα−イミノエステルへの末端アルキンの不斉付加のための方法を提供する。
【0045】
本発明は、詳細な説明と併せて記載されているが、上記は説明を意図し、特許請求の範囲により定義されている本発明の範囲を制限しないと理解されるべきである。他の局面、有利な点および変法は特許請求の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】

〔式中、RおよびRは独立して所望により置換されているアルキル、シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、そしてYは水素または窒素保護基である〕の不斉アルキニル化α−アミノエステルの製造法であって;式
【化2】

〔式中、RおよびYは式IIIに記載のとおりの意味を有する〕のα−イミノエステルを式
【化3】

〔式中、Rは式IIIに記載のとおりの意味を有する〕の末端アルキンと反応させることを含む方法。
【請求項2】
該反応が触媒の存在下である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該反応が触媒量のアミン塩基の存在下である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
該アミン塩基がPMP−Nである請求項2に記載の方法。
【請求項5】
該触媒が遷移金属、遷移金属塩、または遷移金属錯体を含む請求項2に記載の方法。
【請求項6】
該遷移金属錯体がCuPF・4MeCNおよびCuOTf・0.5Cからなる群から選択される請求項5に記載の方法。
【請求項7】
該触媒がキラルリガンドを含む請求項5に記載の方法。
【請求項8】
該触媒が
【化4】

の化合物、それらのエナンチオマーおよびそれらのエナンチオマー混合物からなる群から選択される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
がアルキルである請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2008−540671(P2008−540671A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−512482(P2008−512482)
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【国際出願番号】PCT/US2006/019141
【国際公開番号】WO2006/125030
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(501060541)ザ・ホンコン・ポリテクニック・ユニバーシティ (6)
【氏名又は名称原語表記】The Hong Kong Polytechnic University
【Fターム(参考)】