説明

α−メチレン−β−ヒドロキシ酸エステル誘導体の製造方法と使用

【課題】オゾン非消尽原料に基づいた、触媒助触媒として有用なエステルの誘導体を製造する方法、助触媒及び複合助触媒−触媒化合物の提供。
【解決手段】2−エン含有量の高いハロ−ブタ−2−エン酸類およびエステル類の誘導体(そのうちの幾つかは新規である)を製造する方法である。これらのエステル類およびその誘導体は、エチレンの重合反応又はエチレンのα−オレフィン類、所望により、非共役ポリエン類との共重合反応用助触媒として有用である。本助触媒は、遷移金属化合物(例えばバナジウム)と組み合わせて、複合助触媒−触媒化合物を調製することも可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2−エン含量の高いハロ−ブタ−2−エン酸およびエステルの誘導体を製造する方法、並びに、エチレンの重合および共重合(例えば、エチレン、少なくとも一種の他のより高級なα−オレフィンモノマーおよび、所望により、非共役ジエンを共重合するα−オレフィン共重合体の製造)における触媒助触媒としてのそれらの使用を対象とする。
【背景技術】
【0002】
α−オレフィンを重合してα−オレフィン共重合体およびEPDMを生産することは、当該技術分野ではよく確立された技術である。これらの重合においては、遷移金属触媒(たいていは、バナジウム系触媒)および有機アルミニウム共触媒を反応混合物に添加して、重合反応を触媒する。触媒効率の向上および/又は重合体の分子量を調節するために、触媒活性化剤または助触媒が、ジエンの取り込みを含む触媒選択性と効率が改善されるという利点を与えるので、頻繁に使用される。
【0003】
特許文献1では、2,ω,ω,ω−テトラハロゲノアルカン酸エステルの水素化を中性または酸性の媒体中で(すなわち、反応混合物をpHを7以下に保って)実施すると、その2−ハロゲン原子(すなわち、カルボキシル基に隣接した炭素原子上のハロゲン原子)が、トリハロゲノメチル基のハロゲン原子に影響せずに、選択的に脱離されることが開示されている。この方法で、加水分解反応、水素化カップリング、脱ハロゲン化水素反応、および複分解的置換反応などの反応が関与する多数の合成に有用な化合物が合成できる。
【0004】
特許文献2では、アクリレート類、アクリロニトリル、アクリルアミド類、またはビニルケトン類が、有機第三アミン触媒の存在下では、周囲温度においてさえ、アルデヒドと反応し、非常に良好な収率で、対応する2−(1−ヒドロキシアルキル)−アクリレート類、アクリロニトリル類、アクリルアミド類、またはビニルケトン類を生成できることが開示されている。これらの生成物モノマーはその構造中に−OH残基を有し、重合反応すると、良好な接着特性を示すと言われている。
【0005】
特許文献3には、tert−アルキルメトキシ−置換バナジウム化合物が、エチレンの重合用またはエチレンとα−オレフィン(と所望により非共役ポリエン類と)の共重合用触媒として有益であることが開示されている。前記触媒作用を持つバナジウム系化合物は、所定の構造の助触媒(好ましくは、ブチル4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート、メチル2−メチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート、エチル4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート、2−エチルヘキシル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート、およびブチルペルクロロクロトナートからなる群より選択される一種)と併用することが好ましい。
【0006】
非特許文献1は、アクリレートエステルが、触媒量のDABCO (1,4−ジアザ−ビシクロ[2.2.2]オクタン)の存在下、室温で、多種多様なアルデヒド類(反応性が高く、官能化された典型例)と、α−位において、速やかにカップリングできることを報告した。
【0007】
非特許文献2は、安価なアルデヒド類とアクリル酸エステルから出発して、三置換オレフィン類を立体選択的に生成する反応連鎖を記載している。
【0008】
非特許文献3は、アルデヒドおよびケトンが、アクリロニトリル、アクリル酸エステル、アクロレインおよびα,β−エノン類に付加して、一定範囲の2(X)−プロペン−1−オール(X=CN、COOR、COR)を生成するであろうことを開示している。この反応は第三アミンの触媒作用を受け、圧力に非常に敏感である。大気圧下ではほとんどの反応が起こらないのに対し、5キロバール以下の圧力においては多種多様な生成物を得ることができる。
【0009】
非特許文献4は、ジメチル2,3−ジアルキル−2,3−ジクロロ−ブタンジオアート類が、ジメチルホルムアミド又はジメチルスルホキシド中において、CuBr−Feによって促進されたメチル2−ブロモ−2−クロロカルボキシラートの還元性ホモカップリング反応を経由して、効率的に調製されることを開示している。
非特許文献5は、有機金属触媒存在下においてアルデヒド−アクリレート縮合物を均一系水素化すると、主にアンチ−異性体が生成することを報告した。ここで使用される触媒は、複雑な配位子のみからなる遷移金属錯体である。彼らはまた、非特許文献6において、これら触媒によるこのようなジアステレオ選択性が、該縮合生成物のα−ヒドロキシ官能基がシリル化される際に観察されることを報告した。
以上の文献記載事項は、それらの記載全体を本明細書の記載の一部とする。
【0010】
【特許文献1】米国特許第2,515,306号
【特許文献2】米国特許第3,743,669号
【特許文献3】米国特許第5,527,951号
【非特許文献1】Hoffmann et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 22(10):795 (1983)
【非特許文献2】Rabe et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 22(10):796-7 (1983)
【非特許文献3】Hill et al., Tetrahedron Letters 27 (41):5007-5010 (1986)
【非特許文献4】Benincasa et al., Tetrahedron Letters 36 (7):1103-1106 (1995)
【非特許文献5】Brown et al., Organic Syntheses 68:64 (1989)
【非特許文献6】J. Chem. Soc. Chem. Comm. 277-278 (1998)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、オゾン非消尽性原料に基づいた、触媒助触媒として有用なエステルの誘導体を製造する方法を対象とする。より具体的には、本発明は、式IaまたはIb、
【化1】


(式中、
nは、所与のR1またはR5の結合能を超えない1から4の整数であり、
−Eは、
【化2】


であり、
−G−は、
【化3】


であり、
1、X2およびX3は、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アリール、アリールオキシ、シアノ、および水素からなる群より独立に選択され、
1は、水素、アルキル、アルカリール、アラールキル、ハロアルキル、ハロアリール、ハロアルカリール、ハロアラールキル、アルケニル、シクロアルキル、アミノ、キサンタニル、スルフィニル、スルホニル、アリール、アシル、オキシアリール、およびアロイルからなる群より選択され、
2は、水素、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アリールオキシ、シクロアルキルまたは−COOR6(式中、R6は、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アラールキルまたはアリールである)からなる群より選択され、
3およびR4は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アシルオキシ、シクロアルキル、アリールオキシ、アラールキル、およびアリールからなる群より独立に選択され、
5は、水素、アルキル、アルカリール、アラールキル、ハロアルキル、ハロアリール、ハロアルカリール、ハロアラールキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、キサンタニル、スルフィニル、スルホニル、アリール、アシル、オキシアリール、およびアロイルからなる群より選択され、
Aは、酸素、硫黄、およびNR7(式中、R7は、水素、アルキル、アルカリール、アラールキル、ハロアルキル、ハロアリール、ハロアルカリール、ハロアラールキル、アルケニル、シクロアルキル、およびアリールからなる群より選択される)からなる群より選択される)
のエステルの誘導体の製造方法であって、
この製造方法が、そのエステルを、
A) 少なくとも一種のルイス酸または塩基と、更に、所望により、遷移金属触媒不存在下において、化学量論量の穏やかな水素化物と、または
B) 遷移金属またはそれらの酸化物からなる群より選択される触媒の存在下において、水素と、または
C) アルキルアルミニウム類、アルキル水素化物、および可溶性のニッケルまたはパラジウム塩からなる群より選択される少なくとも一種の可溶性触媒と、
反応させる工程を含む、上記製造方法を対象とする。
【0012】
別の側面において、本発明は、エチレンを触媒(共)重合する方法であって、助触媒を用いる方法において、助触媒として、少なくとも1種の、下記式IaまたはIb、
【化4】


(式中、
nは、所与のR1またはR5の結合能を超えない1から4の整数であり、
−Eは、
【化5】


であり、
−G−は、
【化6】


であり、
1、X2およびX3は、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アリール、アリールオキシ、シアノ、および水素からなる群より独立に選択され、
1は、水素、アルキル、アルカリール、アラールキル、ハロアルキル、ハロアリール、ハロアルカリール、ハロアラールキル、アルケニル、シクロアルキル、アミノ、キサンタニル、スルフィニル、スルホニル、アリール、アシル、オキシアリール、およびアロイルからなる群より選択され、
2は、水素、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アリールオキシ、シクロアルキルまたは−COOR6(式中、R6は、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アラールキルまたはアリールである)からなる群より選択され、
3およびR4は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アシルオキシ、シクロアルキル、アリールオキシ、アラールキル、およびアリールからなる群より独立に選択され、
5は、水素、アルキル、アルカリール、アラールキル、ハロアルキル、ハロアリール、ハロアルカリール、ハロアラールキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、キサンタニル、スルフィニル、スルホニル、アリール、アシル、オキシアリール、およびアロイルからなる群より選択され、
Aは、酸素、硫黄、およびNR7(式中、R7は、水素、アルキル、アルカリール、アラールキル、ハロアルキル、ハロアリール、ハロアルカリール、ハロアラールキル、アルケニル、シクロアルキル、およびアリールからなる群より選択される)からなる群より選択される)
のエステルの誘導体(この誘導体は、そのエステルを、
A) 遷移金属触媒不存在下において、少なくとも一種のルイス酸または塩基および、所望により、化学量論量の穏やかな水素化物と、または
B) 遷移金属またはそれらの酸化物からなる群より選択される触媒の存在下において、水素と、または
C) アルキルアルミニウム類、アルキル水素化物、および可溶性のニッケルまたはパラジウム塩からなる群より選択される少なくとも一種の可溶性触媒と、
反応させることにより合成される)を助触媒として使用することを特徴とする、上記方法における改善を対象とする。
【0013】
さらに別の側面において、本発明は、下記構造式、
M(O)rm(助触媒からHをとった残りの部分)n
(式中、
Mは遷移金属カチオンであり、
Xはハロゲンアニオンであり、
rは0〜3であり、
mは0〜6であり、
nは1〜7であり、
r+m+nの最高合計値は7であり、
【化7】


助触媒は、下記構造式、
(式中、
nは、所与のR1またはR5の結合能を超えない1から4の整数であり、
−Eは、
【化8】


であり、
−G−は、
【化9】


であり、
1、X2およびX3は、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アリール、アリールオキシ、シアノ、および水素からなる群より独立に選択され、
1は、水素、アルキル、アルカリール、アラールキル、ハロアルキル、ハロアリール、ハロアルカリール、ハロアラールキル、アルケニル、シクロアルキル、アミノ、キサンタニル、スルフィニル、スルホニル、アリール、アシル、オキシアリール、およびアロイルからなる群より選択され、
2は、水素、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アリールオキシ、シクロアルキルまたは−COOR6(式中、R6は、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アラールキルまたはアリールである)からなる群より選択され、
3およびR4は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アシルオキシ、シクロアルキル、アリールオキシ、アラールキル、およびアリールからなる群より独立に選択され、
5は、水素、アルキル、アルカリール、アラールキル、ハロアルキル、ハロアリール、ハロアルカリール、ハロアラールキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、キサンタニル、スルフィニル、スルホニル、アリール、アシル、オキシアリール、およびアロイルからなる群より選択され、
Aは、酸素、硫黄、およびNR7(式中、R7は、水素、アルキル、アルカリール、アラールキル、ハロアルキル、ハロアリール、ハロアルカリール、ハロアラールキル、アルケニル、シクロアルキル、およびアリールからなる群より選択される)からなる群より選択される)
のエステル、またはそのエステルを、
A) 遷移金属触媒不存在下において、少なくとも一種のルイス酸または塩基および、所望により、化学量論量の穏やかな水素化物と、または
B) 遷移金属またはそれらの酸化物からなる群より選択される触媒の存在下において、水素と、または
C) アルキルアルミニウム類、アルキル水素化物、および可溶性のニッケルまたはパラジウム塩からなる群より選択される少なくとも一種の可溶性触媒と、
反応させる工程を含む方法によって調製される、そのエステルである)
を有する、エチレンの触媒(共)重合用助触媒−触媒化合物を対象とする。
【0014】
このエステル出発原料は、無溶媒下、塩基触媒を用いたアルデヒドとアクリレートとの縮合反応により、高収率で調製できる。所望により、反応サイクルを著しく短縮するために、反応の間に水を存在させても良い。
化学式IIaとIIbを有する誘導体は、エステル出発原料をルイス塩基(求核性)またはルイス酸(親電子性)化学試薬と反応させることで製造できる。
【化10】


(式中、n、E、G、X1、X2、X3、R2、R3、R4、R5およびAは、前述したとおりのものであり、Yは、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシル、水素、アルキル、アルカリール、アラールキル、ハロアルキル、ハロアリール、ハロアルカリール、ハロアラールキル、アルケニル、シクロアルキル、キサンタニル、スルフィニル、スルホニル、アミノ、アリール、アシルオキシ、オキシアリール、およびアロイルオキシからなる群より選択される)
【0015】
これらのヒドロキシエステル(Ia、Ib、IIaおよびIIb)、好ましくはアシル化エステル、最も好ましくはアセチル化エステルは、遷移金属触媒不存在下、穏やかな水素化物試薬(例、硼水素化ナトリウム)を使って、簡単な実験操作で、水素化分解反応を行い、周囲温度または単に穏やかな加熱により、アシルオキシアニオン(R1がアシル基であり、Yがアシルオキシ基である)をヒドリドアニオンに置換することによって、構造式IIIaおよびIIIbのα,β−不飽和エステルを高収率で製造できる。この水素化分解は、メチレン型単位に隣接する脱離基を選択的に置換し、還元反応又はその他の潜在的脱離基の脱離が起こらないようにする。
【化11】

【0016】
このエステル出発原料はまた、遷移金属触媒(例、活性炭に担持したパラジウム)を用いて水素化し、構造式IVaおよびIVbの構造を有する異性体の混合物が得られる。
【化12】


(式中、E、G、X1、X2、X3、R1、R2、R3、R4、R5およびAは、前述したとおりのものである)
アンチ−生成物はシン−生成物よりも優勢に生成し、アンチ対シンの比は1:1より大きく、22:1もの高比率になることもある。溶媒の選択は、アンチ/シン比率に若干の影響を及ぼす。非キラルな触媒によるこのような立体選択的な水素化は、アンチ−異性体である生成物を優勢につくる、単純で実用的な方法を提供する。X1、X2およびX3がハロゲンである場合、この水素化は、ハロゲン化エステルを、ハロゲン又はヒドロキシ(アシルオキシ又はアルコキシ)基への攻撃なしに、α−アルキルエステルに変換する。
【0017】
構造式IVaおよびIVbの水素化化合物は、穏やかな加熱下、炭酸水素アルカリ金属塩(例、炭酸水素カリウム)などの穏やかな塩基と反応させ、IIIaおよびIIIbの構造式のα,β−不飽和エステル類を高収率で得ることができる。この反応で使用する塩基量は、触媒量から化学量論量までとすることができる。この脱離反応に対しては、構造式IVaおよびIVbのR1が、アシル、アロイル、オキシアリール、スルホニル、およびスルフィニルからなる群から選択されるのが好ましい。最も好ましくは、R1はアシル基である。
【0018】
(好ましい実施の形態の説明)
前述したように、本発明は、構造式IaおよびIb、
【化13】


(式中、
nは、所与のR1またはR5の結合能を超えない1から4の整数であり、
−Eは、
【化14】


であり、
−G−は、
【化15】


であり、
1、X2およびX3は、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アリール、アリールオキシ、シアノ、および水素からなる群より独立に選択され、
1は、水素、アルキル、アルカリール、アラールキル、ハロアルキル、ハロアリール、ハロアルカリール、ハロアラールキル、アルケニル、シクロアルキル、アミノ、キサンタニル、スルフィニル、スルホニル、アリール、アシル、オキシアリール、およびアロイルからなる群より選択され、
2は、水素、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アリールオキシ、シクロアルキルまたは−COOR6(式中、R6は、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アラールキルまたはアリールである)からなる群より選択され、
3およびR4は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アシルオキシ、シクロアルキル、アリールオキシ、アラールキル、およびアリールからなる群より独立に選択され、
5は、水素、アルキル、アルカリール、アラールキル、ハロアルキル、ハロアリール、ハロアルカリール、ハロアラールキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、キサンタニル、スルフィニル、スルホニル、アリール、アシル、オキシアリール、およびアロイルからなる群より選択され、
Aは、酸素、硫黄、およびNR7(式中、R7は、水素、アルキル、アルカリール、アラールキル、ハロアルキル、ハロアリール、ハロアルカリール、ハロアラールキル、アルケニル、シクロアルキル、およびアリールからなる群より選択される)からなる群より選択される)
のエステルの誘導体であって、
上記エステルを、
A) 遷移金属触媒不存在下において、少なくとも一種のルイス酸または塩基および、所望により、化学量論量の穏やかな水素化物と、または
B) 遷移金属またはそれらの酸化物からなる群より選択される触媒の存在下において、水素と、または
C) アルキルアルミニウム類、アルキル水素化物、および可溶性のニッケルまたはパラジウム塩からなる群より選択される少なくとも一種の可溶性触媒と、
反応させる工程を含む製造方法のエステルの誘導体の調製および使用を対象とする。
【0019】
構造式IaまたはIbの化合物の好ましい例には、ブチル2−メチレン−3−ヒドロキシ−4,4,4−トリクロロブチラート、ブチル2−メチレン−3−アセトキシ−4,4,4−トリクロロブチラート、およびブチル2−メチレン−3−フェノキシ−4,4,4−トリクロロブチラートが含まれる。
構造式IaまたはIb(式中、R1はH)の化合物は、アルデヒドとアクリレートとの間の縮合反応により合成できる。いわゆるHillman−Baylis反応は、文献に綿密に引証が付けられている。さらに具体的には、当該化合物は、第三アミンである触媒(例、トリエチレンジアミン、ジアザビシクロ−[2,2,2]−オクタン、ピロコリン、キヌクリジンおよびその他の類似の立体障害のない、比較的強い塩基である第三アミン)の存在下、α,β−オレフィン性不飽和カルボン酸のエステル、チオエステル、またはアミド誘導体をアルデヒドと反応させることで合成できる。
【0020】
このアルデヒドとの反応に適当な多くのアクリル系モノマー中、以下が代表的であるが、これらに限定する意図ではない。メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソ−オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、ラウリルアクリレート、フェニルアクリレート、シクロヘキシルメチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロペンチルアクリレート、フェニルエチルアクリレート、p−エチルフェニルアクリレート、m−クロロフェニルアクリレート、p−ニトロフェニルアクリレート、トリクロロメチルアクリレート、p−カルボキシメチルフェニルアクリレート、m−メトキシフェニルアクリレート、フルフリルアクリレート、等である。ブチルアクリレートが本発明の実施に使用するには好ましい。
【0021】
本発明において意図する、典型的なアルデヒドは、式、RCHO(式中、Rは、置換または無置換の分岐又は直鎖のアルキル(C1−C3)、置換または無置換の分岐又は直鎖のアルケニル(C2−C8)、置換または無置換のアルカ−(C1−C4)アリール、置換または無置換のアラールキル(C1−C4)、および置換または無置換のアリールを含む)で表すことかできる。最後の3個の範疇に入るアリール残基は典型的にはフェニルである。
【0022】
本発明において意図する、多数の典型的なアルデヒド中、以下のものが例として挙げられる。アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、オクタルデヒド、クロラール、2,2,2−トリブロモアセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、ジブロモアセトアルデヒド、モノブロモアセトアルデヒド、m−エチルフェニルアセトアルデヒド、m−クロロベンズアルデヒド、p−ニトロフェニルアセトアルデヒド、m−カルボメトキシベンズアルデヒド、p−メトキシベンズアルデヒド、等である。
【0023】
本発明の実施に使用されるエステルの合成のための最も好ましいアルデヒドはクロラールであるが、クロラールの塩素原子のうちの1つを水素又はアルコキシ基で置換することもまた望ましい。アルコキシ基を使用する場合、1〜6個の炭素原子(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシ、又はそれらの異性体)を有するのが典型的であろう。好ましくは、このようなアルコキシ基は、1〜4個の炭素原子を有するものである。
【0024】
この反応は広い温度範囲で行うことができる。この反応は、約0℃から約200℃の温度範囲、好ましくは約25℃から125℃の温度範囲において効率的である。溶媒を用いる場合には、この反応は、その溶媒の沸点以下の温度において最も良好に実施される。
この反応は、大気圧下できわめて容易に起こるが、大気圧以上又は大気圧以下を利用することもできる。バッチプロセスは効率的に利用できるが、連続又は半連続プロセスもまた利用できる。
【0025】
触媒濃度に関しては、触媒が反応物(例、アクリル系モノマーおよびアルデヒド)の全重量基準で、約0.1〜約20%(モル重量)の範囲で存在することが望ましい。好ましくは、触媒濃度は約1〜約10%(モル重量)の範囲である。より好ましくは、触媒濃度は約1〜約5%(モル重量)の範囲である。
【0026】
この反応はいかなる溶媒も存在しない状態で行うことが好ましいが、所望により、水を反応中に存在させて、反応サイクルを著しく短くすることもできる。所望により、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、メチルエチルケトン、ジブチルエーテル、クロロホルム、酢酸エチル、スルホランやその他の不活性溶媒を用いることができる。
【0027】
これらの反応生成物は、構造式Ia又はIb(式中、X1が、水素、ハロゲン、およびアルコキシからなる群より選択され、
2とX3が、ハロゲンであり、
1が、水素およびアシルからなる群より選択され、
2が、水素、ハロゲン、C1−C16アルキルまたは−COOR6(式中、R6は、C1−C18アルキル、C3−C18アルケニル、C5−C6シクロアルキル、C7−C9アラールキル、およびC6−C10アリールである)からなる群より選択され、
3およびR4が、水素およびC1−C16アルキルからなる群より独立に選択され、
5が、水素、C1−Cl8アルキル、C6−C10アリール、C7−C9アルカリール、C7−C9アラールキル、C3−C6アルケニル、C1−C18ハロアルキル、C6−C10ハロアリール、C7−C9ハロアルカリール、C7−C9ハロアラールキルからなる群より選択され、
Aが酸素である)の構造を持つことが好ましい。
【0028】
これらの反応生成物は、構造式Ia又はIb(式中、X1、X2およびX3が塩素であり、
1が、水素およびアセチル性アシルからなる群より選択され、
2が、水素、塩素、C1−C8アルキル、および−COOR6(式中、R6は、C1−C8アルキル、ベンジル、およびフェニルである)からなる群より選択され、
3およびR4が、水素およびC1−C7アルキルからなる群より独立に選択され、
5が、C1−C12アルキル、フェニル、トリル、ベンジル、アリル、C1−C2ハロアルキル、およびハロフェニルからなる群より選択され、
Aが酸素である)の構造を持つことがより好ましい。
【0029】
本発明の一側面において、これらの化合物は、構造式IIaおよびIIbの化合物の合成に使用される。
【化16】


(式中、n、E、G、X1、X2、X3、R2、R3、R4、R5、Y、およびAは前述したとおりのものである)
【0030】
本発明によれば、構造式IIa又はIIbの化合物の合成は、構造式Ia又はIbの化合物の転位反応又は求核試薬および親電子試薬を用いた簡単な操作により行うことができる。これら試薬には、シアン化物、アミン、アミド、アルコール、アルコキシド、チオール、マロナート、リチウムアルキルアルミニウム、アルキルアルミニウム、アルキルリチウム、グリニャール試薬、ハロゲン化アンモニウム、ハロゲン化金属、無機ハロゲン化物、アルキルアルミノキサン、アルキルアルミニウムオキシド、ハロゲン化アルキルアルミニウム、ハロゲン化水素酸、N−ハロイミド、周期律表の第13〜17族の元素のハロゲン化物、ハロゲン化チオニル、ハロゲン化スルフリル、ハロゲン化スルホニル、ハロゲン化オキシリル、ハロゲン化アシル、酸無水物、およびアレーンが含まれる。
【0031】
この合成用の代表的な試薬としては、例えば、水、シアン化リチウム、シアン化ナトリウム、シアン化カリウム、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノール、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシド、フェノール、チオフェノール、エチルアミン、プロピルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、アニリン、リチウムジイソプロピルアミド、マロン酸ジエチル、マロン酸ジメチル、トリエチルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、メチルアルミノキサン、ジイソブチルアルミニウムオキシド、メチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムブロミド、メチルリチウム、塩化ピリジニウム、塩化リチウム、臭化リチウム、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、塩化銅、臭化銅、臭化マグネシウム、塩化スズ、塩化チタン、塩化ジエチルアルミニウム、エチルアルミニウムセスキクロリド、塩酸、臭化水素酸、N−クロロスクシンイミドおよびN−ブロモスクシンイミド、三塩化リン、五塩化リン、塩化チオニル、塩化スルフリル、塩化オキシリル、塩化アセチル、無水酢酸、メタンスルホニルクロリド、ベンゼン、およびスチレンである。
【0032】
この反応用の好ましい試薬は、エタノール、イソプロピルアルコール、フェノール、メチルアルミノキサン、ジイソブチルアルミニウムオキシド、三塩化リン、五塩化リン、塩化チオニル、塩化アルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム、エチルアルミニウムセスキクロリド、塩酸、臭化水素酸、無水酢酸、塩化アセチル、およびベンゼンである。
【0033】
これらの反応生成物は、式IIaとIIb(式中、X1が、水素、ハロゲン、およびアルコキシからなる群より選択され、
2とX3がハロゲンであり、
Yが、水素、ハロゲン、C1−C16アルキル、アリール、アルコキシ、アシルオキシ、およびシアノからなる群より選択され、
2が、水素、ハロゲン、C1−C16アルキル、または−COOR6(式中、R6は、C1−C18アルキル、C3−C18アルケニル、C5−C6シクロアルキル、C7−C9アリールアルキルまたはC6−C10アリールである)からなる群より選択され、
3およびR4が、水素、ヒドロキシ、アシルオキシ、およびC1−C16アルキルからなる群より独立に選択され、
5が、水素、C1−C18アルキル、C6−C10アリール、C7−C9アルカリール、C7−C9アラールキル、C3−C6アルケニル、C1−C18ハロアルキル、C6−C10ハロアリール、C7−C9ハロアルカリール、C7−C9ハロアラールキルからなる群より選択され、
Aが酸素である)を有することが好ましい。
【0034】
これらの反応生成物は、式IIaまたはIIb(式中、X1、X2およびX3が塩素であり、
Yが、水素、塩素、臭素、およびシアノからなる群より選択され、
2が、水素、塩素、C1−C8アルキル、および−COOR6(式中、R6はC1−C8アルキル、ベンジル、およびフェニルである)からなる群より選択され、
3とR4は、水素、ヒドロキシル、アシルオキシ、およびC1−C7アルキルからなる群より独立に選択され、
5が、C1−C12アルキル、フェニル、トリル、ベンジル、アリル、C1−C2ハロアルキル、およびハロフェニルからなる群より選択され、
Aが酸素である)を有することがより好ましい。
【0035】
本発明の他の側面において、式Ia、Ib、IIa、およびIIbの化合物は、式IIIaおよびIIIb、
【化17】


(式中、E、G、X1、X2、X3、R2、R3、R4、R5、およびAは前述したとおりである)
の化合物の合成において使用される。
【0036】
本発明によると、この合成反応は、遷移金属触媒不存在下、周囲温度にて、硼水素化アルカリ金属(例、硼水素化リチウム、ナトリウムまたはカリウム)などの穏やかな水素化物試薬を使った簡単な操作によるか、またはその反応混合物を穏やかに加温することにより実施される。多くの場合、その反応生成物は、式IIIbのもののみである。この異性体は、式IaおよびIbにおけるR1O−アニオンである脱離基のヒドリドアニオンによる置換、および同時に起こるアリル性二重結合転位反応により、α,β−不飽和エステルを高い収率で生成したものである。好ましい脱離基は、R1がアシル、アロイル、アリール、およびスルホニルからなる群より選択される場合のものである。最も好ましい脱離基は、R1がアシルである場合のアシルオキシル基である。
【0037】
この異性体は、穏やかな水素化物により、式IIaおよびIIbの化合物から製造できる。好ましい脱離基は、Yが、ハロゲン化物、アリールオキシド、チオアリールオキシドおよびアンモニウムからなる群より選択される場合のものである。最も好ましい脱離基は、ハロゲンアニオン、例えば塩素アニオンである。
この水素化分解は、X1、X2、X3および−A−R5などの他の潜在的な脱離基を除く、メチレン単位に隣接した脱離基を選択的に置換する。
【0038】
この水素化分解は、溶媒を使用して、または溶媒なしで実施できる。この反応で使用できる代表的溶媒として、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、t−ブタノール、ジブチルエーテル、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールt−ブチルエーテル、エチレングリコールt−ブチルメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジ(エチレングリコール)ジブチルエーテル、ジ(エチレングリコール)ジエチルエーテル、ジ(エチレングリコール)ジメチルエーテル、ジ(エチレングリコール)ブチルエーテル、ジ(エチレングリコール)エチルエーテル、ジ(エチレングリコール)メチルエーテル、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)モノブチルエーテル、ポリ(プロピレングリコール)ジエチルエーテル、ポリ(プロピレングリコール)ジメチルエーテル、プロピレンカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジ(プロピレングリコール)、ジ(プロピレングリコール)ブチルエーテル、ジ(プロピレングリコール)メチルエーテル、ジ(プロピレングリコール)プロピルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン類、アセトニトリル、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロヘキサン、酢酸、酢酸エチル、クロロホルム、塩化メチレンなどが挙げられるが、これらに制限されない。
【0039】
この水素化分解反応で使用できる多くの穏やかな水素化物中、以下のものが代表的であるが、これらに制限されない。すなわち、硼水素化ナトリウム、硼水素化リチウム、硼水素化カリウム、硼水素化テトラブチルアンモニウム、硼水素化ナトリウム−塩化セシウム錯体、シアノ硼水素化ナトリウム、トリメトキシ硼水素化ナトリウム、トリアセトキシ硼水素化ナトリウム、トリブトキシ硼水素化リチウム、アセトキシ硼水素化ナトリウム、硼水素化亜鉛、アセトキシ硼水素化亜鉛などである。好ましい水素化物は、硼水素化リチウム、硼水素化ナトリウムおよび硼水素化カリウムである。最も好ましい水素化物は硼水素化ナトリウムである。
【0040】
この水素化分解反応はまた、周囲温度以下で実施できる。この場合、この反応で使用される水素化物には、リチウムアルミニウムヒドリド、アルミニウムヒドリド、リチウムアルミニウムトリ−t−ブトキシヒドリド、リチウムアルミニウムトリメトキシヒドリド、ナトリウムアルミニウムジアルコキシヒドリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、リチウムトリエチルボロヒドリド、ボラン−テトラヒドロフラン錯体、ボラン−ピリジン錯体、ボラン−有機アミン錯体、ボラン−ジメチルスルフィド錯体、ジクロロボラン、ジシクロヘキシルボラン、ジスルフィドボラン、カテコールボラン、硼水素化亜鉛−酢酸錯体などが含まれる。これらの温度での使用に好ましい水素化物は、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、トリエチル硼水素化リチウム、リチウムアルミニウムトリ−t−ブトキシヒドリド、ボラン−テトラヒドロフランである。最も好ましい水素化物はジイソブチルアルミニウムヒドリドである。
【0041】
この水素化分解反応は、反応媒体中でのボロヒドリド溶解性を実質的に増加させることによって反応速度を増大させるため、相間移動試薬/相間移動触媒の存在下で実施できる。そのような触媒は、周期律表第15族元素の四級塩、例えば、酢酸テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルホスホニウムなど、とすることができる。
クラウンエーテル、エチレングリコール、ジ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、エチレングリコールエーテル類、ジ(エチレングリコール)エーテル類、ポリ(プロピレングリコール)エーテル類などの有機溶媒も、この水素化分解用の相間移動試薬として使用可能である。
【0042】
これらの反応生成物は、式IIIaまたはIIIb(式中、X1は、水素、ハロゲン、およびアルコキシからなる群より選択され、
2とX3は、ハロゲンであり、
2は、水素、ハロゲン、C1−C16アルキルおよび−COOR6(式中、R6は、C1−C18アルキル、C3−C18アルケニル、C5−C6シクロアルキル、C7−C9アラールキルまたはC6−C10アリールである)からなる群より選択され、
3およびR4は、水素およびC1−C16アルキルからなる群より独立に選択され、
5は、水素、C1−Cl8アルキル、C6−C10アリール、C7−C9アルカリール、C7−C9アラールキル、C3−C6アルケニル、C1−C18ハロアルキル、C6−C10ハロアリール、C7−C9ハロアルカリール、およびC7−C9ハロアラールキルからなる群より選択され、
Aが酸素である)の構造を持つことが好ましい。
【0043】
これらの反応生成物は、式IIIaおよびIIIb(X1、X2およびX3は塩素であり、
2は、水素、塩素、C1−C8アルキル、および−COOR6(式中、R6は、C1−C8アルキル、ベンジル、またはフェニルである)からなる群より選択され、
3およびR4は、水素およびC1−C7アルキルからなる群より独立に選択され、
5は、C1−C12アルキル、フェニル、トリル、ベンジル、アリル、C1−C2ハロアルキル、およびハロフェニルからなる群より選択され、
Aが酸素である)の構造を有することがより好ましい。
【0044】
米国特許第5,527,951号は、これらのα,β−不飽和エステルが、RuCl2[(C6H53]などの触媒存在下、式、
【化18】


の化合物を、式C(X)(X1)(X2)(X3)(式中、X、X1、X2およびX3は全てハロゲンであり、例えば四塩化炭素である)の化合物と反応させ、式、
【化19】


の化合物を生成させ、この化合物を、例えば、適当な塩基による処理により、脱ハロゲン化水素することで調製できることを教示している。これらの式で、nは、1、2、3、又は4であり、X、X1およびX2はハロゲンであり、Aは、酸素、イオウ、またはハロゲンであり、R1は、水素、ハロゲン、C1−C16アルキルまたは−COOR4(式中、R4はC1−C18アルキル、C3−C18アルケニル、C5−C6シクロアルキル、C7−C9アラールキルまたはC6−C10アリールである)であり、R2は、水素、ハロゲンまたはC1−C16アルキルであり、但し、nが1であり、Aがハロゲンである場合には、R3は存在せず、nが1であり、Aが酸素またはイオウである場合には、R3は、水素、C1−C18アルキル、C6−C10アリール、C7−C9アルカリール、C7−C9アラールキル、C3−C6アルケニル、C1−C18ハロアルキル、C6−C10ハロアリール、C7−C9ハロアルカリールまたはC7−C9ハロアラールキルであり、nが2である場合には、Aは酸素またはイオウであり、R3はC2−C12アルキレンであり、そして、nが3または4である場合には、Aは酸素またはイオウであり、R3は、原子価nを持つC−C12アルキル基である。
【0045】
本発明の製造法は、大気オゾン層破壊の原因となり、また当分野の労働者の健康にとって有害物と信じられており、さらに厳格な安全予防策の実施が必要とされる四塩化炭素の使用を回避できるという点で、前記した製造法よりも有利である。
上述の製造法により調製された不飽和エステルは、接着剤、耐油性重合体用モノマー、カチオン性メタロセン触媒を製造するための有機酸化剤、およびZ−N重合反応触媒用の助触媒/酸化剤/調節剤に使用可能である。
【0046】
本発明の製造法によって調製できる多くの不飽和エステル中、特に、エチレンの重合またはエチレンとα−オレフィン類と(所望により)非共役ポリエン類との共重合の助触媒として有用であることから、次のものが好ましい。すなわち、2−メチレン−3,4,4,4−テトラクロロブチラート類、2−メチレン−3−ブロモ−4,4,4−トリクロロブチラート類、2−メチレン−3−ヒドロキシ−4,4,4−トリクロロブチラート類、2−メチレン−3−アセトキシ−4,4,4−トリクロロブチラート類、2−メチレン−3−ホルモキシ−4,4,4−トリクロロブチラート類、2−メチレン−3−フェノキシ−4,4,4−トリクロロブチラート類、2−メチレン−3−エトキシ−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート類、2−メチレン−3−メトキシ−4,4,4−トリクロロブチラート類、2−メチレン−3−イソプロポキシ−4,4,4−トリクロロブチラート類、2−メチレン−3−エトキシ−4,4,4−トリクロロブチラート類、2−メチレン−3−ブトキシ−4,4,4−トリクロロブチラート類、2−メチレン−3−シアノ−4,4,4−トリクロロブチラート類、2−クロロメチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート類、2−ブロモメチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート類、2−ヒドロキシメチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート類、2−フェノキシメチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート類、2−アセトキシメチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート類、2−ホルモキシメチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート類、2−メトキシメチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート類、2−エトキシメチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート類、2−イソプロポキシメチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート類、2−ブトキシメチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート類、2−シアノメチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート類、2−ヒドロキシメチレン−4,4,4−トリクロロブチラート類、2−アセトキシメチレン−4,4,4−トリクロロブチラート類、2−ホルモキシメチレン−4,4,4−トリクロロブチラート類、2−クロロメチレン−4,4,4−トリクロロブチラート類、2−ブロモメチレン−4,4,4−トリクロロブチラート類、2−シアノメチレン−4,4,4−トリクロロブチラート類、2−エトキシメチレン−4,4,4−トリクロロブチラート類、 2−イソプロポキシメチレン−4,4,4−トリクロロブチラート類、2−ブトキシメチレン−4,4,4−トリクロロブチラート類、2−メチレン−4,4,4−トリクロロブチラート類、および2−メチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート類である。これら説明のために挙げた実例の中では、ブチルエステル類が好ましい。米国特許第5,527,951号が開示するように、ブチル2−メチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアートが最も好ましい。
【0047】
当該技術分野においては、エチレンの重合またはエチレンとαオレフィンと(所望により)非共役ポリエン類との共重合用の触媒として、遷移金属触媒(バナジウム系化合物であることが最も多い)を使用することがよく知られている。例えば、米国特許第3,260,708号でNattaらは、広範囲のバナジウム系化合物(バナジウムハロゲン化物、バナジウムオキシハライド類、バナジルジ−およびトリアセチルアセトナートおよびハロアセトナート類、バナジウムトリベンゾイルアセトナート類、バナジルトリアルコラートおよびハロアルコラート類、テトラヒドロフラナート類、エーテラート類、バナジルトリクロリドおよびバナジウムトリ−およびテトラクロリドのアミナート類を含む)の使用を開示している。さらに、この型の他の有用な触媒が、特に、米国特許第4,189,558号、同第4,378,455号、および同第5,527,951号において開示されている。
【0048】
また、これら触媒を、例えば、有機−リチウム化合物や有機−アルミニウム化合物のような共触媒と連携して使用することもまたよく知られている。有機アルミニウム化合物が使用される場合、それはアルキルアルミニウムまたはアルキルアルミニウムハロゲン化物であることが好ましい。ハロゲン化合物中、塩化物が最も好ましい。好ましいアルキルアルミニウム塩化物として、エチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウム二塩化物、ジエチルアルミニウム塩化物、およびジイソブチルアルミニウム塩化物が挙げられる。
【0049】
触媒効率を強化および/または重合体分子量を調節するため、1種類以上の触媒活性化剤、または助触媒がしばしば使用される。上述した製造法で調製される不飽和エステルまたは化学式Ia、Ib、IIa、IIb、IIIa、およびIIIbで表されるそれらの誘導体は、エチレンの重合およびエチレンとα−オレフィンと(所望により)ポリエンとの共重合において、触媒助触媒として使用可能である。
【0050】
本発明の製造法で調製されるような助触媒化合物を使用する場合には、触媒、共触媒、および触媒助触媒が、重合反応時に、「共触媒」対「触媒プラス助触媒」のモル比が約0.5:1〜約500:1の範囲になるように存在することが好ましい。このモル比が約1.5:1から約100:1の範囲にあることがより好ましい。このモル比が約2.5:1から約10:1の範囲にあることが最も好ましい。バナジウム含有化合物中における、触媒助触媒対バナジウムのモル比は、1:1〜100:1の範囲にあることが好ましく、3:1と64:1の範囲にあることがより好ましく、6:1〜48:1の範囲にあることが最も好ましい。
【0051】
この触媒助触媒は、式Ia、Ib、IIa、IIb、IIIa、およびIIIbの化合物の二種以上の組成物とすることもできる。触媒助触媒としてのこれら化合物の組成物は、完全にランダムな組合せで、かつどのような配合割合とすることもできる。
【0052】
本発明の製造法で調製されるような、ヒドロキシ、またはキサンタニル、またはアミノ官能基を含んでいる助触媒化合物を使用する場合には、触媒を助触媒と予備混合または反応させて、重合反応触媒として用いる錯体または化合物(例えば、バナデート)を生成させることができる。この重合反応触媒は、重合反応において、触媒および助触媒としての二重の役割を果たす。この触媒はVの構造式を有している。
M(O)rm(助触媒からHをとった残りの部分)n
(式中、
Mは遷移金属カチオンであり、
Xはハロゲンアニオンであり、
rは0〜3であり、
mは0〜6であり、
nは1〜7であり、
r+m+nの合計値は最大で7である。
好ましくは、Mは、周期律表において第3、4、5、6および7族から選ばれる遷移金属カチオンであり、より好ましくは、バナジウムである。Xは、塩素、臭素およびヨウ素アニオン、好ましくは塩素アニオンとすることができ、mが1より大きい場合、Xは更にこれらのうちの2つまたは3つの混合物とすることができる。
【0053】
この助触媒−触媒化合物を重合反応において使用する場合には、その共触媒と触媒−触媒助触媒が、重合反応時に、共触媒対触媒−助触媒のモル比が約1:10と約500:1の範囲にあるように存在することが好ましい。このモル比は約1:1と約100:1の範囲にあることがより好ましく、このモル比が約3:1と約40:1の範囲にあることが最も好ましい。
【0054】
重合反応過程は次のように行われるのが典型的である。触媒組成物、反応媒体、およびコモノマーを、反応容器(非反応性材料、例えば、ガラスまたはステンレス鋼でできているのが典型的である)に導入する。最良の結果を得るためには、α−オレフィン(使用する場合)は無水状態が好ましく、したがって、そのようなモノマーを反応器へ導入する前に、例えば、モレキュラーシーブを通じて、乾燥することが好ましい。好ましくは、α−オレフィン中の水分は10重量ppm以下とすべきである。
【0055】
反応中に生成する重合体の分子量の調節を改善するため、水素ガスを使用することもできる。具体的には、水素ガスを利用した場合には、分子量を低くすることが可能である。
【0056】
一般に、触媒濃度は、全反応媒体(すなわち、反応媒体+モノマー+触媒組成物)1リットルあたりバナジウム約1×10-8と約3×10-1モルの範囲とすることができる。好ましくは、全反応媒体1リットルあたり約1×10-6と約5×10-3モルのバナジウムを使用する。
重合反応媒体は不活性媒体(例、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、ベンゼン、トルエンなど)であるのが典型的であるが、プロピレンモノマーは、所望により他の液状α−オレフィンと組み合わせて、反応媒体として役立たせることが可能である。
【0057】
重合反応は、液状状態で、約−25℃〜約70℃の範囲の温度で起こる。より好ましくは、この反応温度範囲は、約−20℃と約50℃の間である。反応時間は、反応バッチサイズ、反応温度、選択した特定反応物質および他の同様の要因などの要因に依存して、数分以下から数時間以上に変化しうる。所望により、反応はサンプリング又は反応混合液固形分測定で監視できる。反応時間は約15分から約3時間の範囲であるのが典型的である。さらに、この反応はバッチ式または連続式のいずれの方法でも行うことができる。
【0058】
本発明の様々な特徴と側面が、以下に続く例においてさらに説明される。これらの例は、当業者に本発明の範囲内における実施の仕方を示すものであるが、それらは、本発明の範囲を制限するものとして意図されたものではまったくない。
【0059】
(例)
例1 ブチル2−メチレン−3−ヒドロキシ−4,4,4−トリクロロブチラートの調製
マグネチックバーを備えた1リットル1つ口丸底フラスコに仕込んだクロラール(311.9g)とブチルアクリレート(208.8g)の混合物に、DABCO(1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン)(6.4g)を添加した。DABCO添加後すぐに乳状の溶液が生じた。この反応フラスコに還流コンデンサーと温度計を設けた。温度を、2分以内に51℃に、そして20分後に55℃に上昇させた。この時点で、溶液は透明な黄色に変化する。1時間後、温度は71℃にあり、ゆっくりと低下し始めた。63℃に反応温度を維持するため、加熱した。6時間後、未反応原料を60〜80℃/0.3mmHgでストリッピング除去した。375.8gの黄色の油状生成物が得られ、ガスクロマトグラフィ(GC)分析により、この生成物の純度が92%+のブチル2−メチレン−3−ヒドロキシ−4,4,4−トリクロロブチラートであることがわかった。生成物の構造は核磁気共鳴(NMR)分光分析で確認した。
【0060】
例2 ブチル2−メチレン−3−アセトキシ−4,4,4−トリクロロブチラートの調製
機械的攪拌機、温度計およびコンデンサーを備えた、2リットルの三つ口丸底フラスコに仕込んだ1173.0gのブチル2−メチレン−3−ヒドロキシ−4,4,4−トリクロロブチラート(91%純度)に、520.0gの無水酢酸および7.0gの酢酸ナトリウムを加えた。この反応混合物を、120℃で3時間、加熱した。未反応の無水酢酸と生成した酢酸を、80℃/0.6mmHg未満の真空下でストリッピング除去した。室温まで冷却後、フラスコ底部に沈降した固体の酢酸ナトリウムを分離した。1236.1gのアセチル化生成物を91.3%純度 (GC分析)、91.4%収率で得た。生成物の構造はNMR分光分析で確認した。
【0061】
例3
アセチル化工程で酢酸ナトリウムを用いなかったほかは、例2と同様に行った。193.9gのブチル2−メチレン−3−ヒドロキシ−4,4,4−トリクロロブチラート(89%純度)と75gの無水酢酸の混合物を還流下、3時間加熱した。反応が完結した時に、205.3gの生成物を、89%純度(GC分析)、92%収率で得た。
【0062】
例4 ブチル2−メチレン−3−ヒドロキシ−4,4,4−トリクロロブチラートおよびブチル2−メチレン−3−アセトキシ−4,4,4−トリクロロブチラートの水素化
この水素化反応は、Paar低圧水素化反応器(Rocking型)中で実施した。触媒、反応物質および溶媒を含む反応原料を重負荷ガラスボトルに仕込んだ。このボトルを金属製網かご内部のシェーカー中に積載した。真空によりボトル内の酸素を除去し、水素で置換した。この操作を3回繰り返し、完全な酸素の除去を確保した。20〜30psigの水素をフラスコに仕込み、水素化反応機の運転を開始した。反応機内の水素圧を監視し、必要に応じて、水素を再供給した。水素の取り込みが停止した後、水素供給を切り、反応混合物を反応ボトルから取り出した。生成物は、触媒を濾過で除去し、溶媒を蒸発除去することにより得た。その生成物をGCとNMRで分析し、反応転化率と水素化生成物のアンチ/シン比を求めた。
典型的な水素化生成物(表1)および実験例は以下の通りである。すなわち、38.9gのブチル2−メチレン−3−アセトキシ−4,4,4−トリクロロブチラートを55mlのエタノールに溶解し、それに0.26gの酸化白金を添加した。21psiの水素を反応ボトルに供給し、水素化を水素圧の低下により監視した。2.5時間後、反応を停止し、酸化白金触媒を回収後、エタノール溶媒を除去した。黄色油状物(36.0gのブチル2−メチル−3−アセトキシ−4,4,4−トリクロロブチラート)がアンチ/シン比率12で得られた。
【表1】

【0063】
例5 ブチル2−メチレン−3−フェノキシ−4,4,4−トリクロロブチラートの調製
15mlのテトラヒドロフラン(THF)に溶解したフェノール(2.0g)を、0℃にて、5mlのTHFに懸濁させた水素化ナトリウム(1.0g、60%油中)にゆっくりと添加した。このフェノキシド溶液に、15分後、10mlのTHFに溶解した3.0gのブチル2−メチレン−3−アセトキシ−4,4,4−トリクロロブチラート(粗、GC:86%)をゆっくりと滴下した。0℃で3時間この反応液を攪拌し、次いで、温度が室温まで上がるに任せた。その反応液を50mlの水と50mlのエーテルを添加することにより処理した。その有機層を分離し、溶媒を真空下に除去した。得られた黄色油状物をアルミナカラムに移し、生成物をヘキサンで溶出させた。ヘキサン除去後に、かすかに黄色の油状物を3.1g得た。NMR分光分析で、その生成物がブチル2−メチレン−3−フェノキシ−4,4,4−トリクロロブチラートであることを確認した。
【0064】
例6 ブチル2−クロロメチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアートの調製
52.8gの粗ブチル2−メチレン−3−ヒドロキシ−4,4,4−トリクロロブチラートに、27.2gの塩化チオニルを添加した。この混合物を室温で3日間撹拌した。過剰の塩化チオニルを除去した後、NMRにより、出発原料のうちの約1/3がブチル2−クロロメチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアートに転化したことがわかった。この生成物をジエチルエーテル100mlに溶解し、飽和炭酸水素カリウム水溶液で洗浄した。そのエーテル層から48.2gの黄色生成物が得られた。NMRから、生成物がブチル2−クロロメチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアートおよびブチル2−メチレン−3−ヒドロキシ−4,4,4−トリクロロブチラートの混合物であることがわかった。
粗塩化チオニル反応生成物の部分蒸留により、8.5gの無色油状物が、ブチル2−クロロメチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアートおよびブチル2−メチレン−3−ヒドロキシ−4,4,4−トリクロロブチラートの1:1混合物として、得られた。
【0065】
例7 ブチル2−メチレン−3,4,4,4−テトラクロロブチラートおよびブチル2−クロロメチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアートの調製
24.4gの粗ブチル2−メチレン−3−ヒドロキシ−4,4,4−トリクロロブチラートに13.2gの過剰量の塩化チオニルを添加した。この混合物を氷浴槽中で7℃に冷却し、この混合物に2.0gのトリエチルアミンを非常にゆっくりと滴下した。反応温度は30℃まで上昇し、暗色溶液を得た。この混合物を室温で一晩撹拌し、次いで20mlのトルエンをこの混合物に添加し、さらに7時間還流加熱した。反応が終了した時点で、その混合物を非常にゆっくりと重炭酸水素カリウム溶液に注ぎ入れ、次いで、50mlのジエチルエーテルを加えた。その有機層を分離し、硫酸マグネシウム上で乾燥した。溶媒除去後、暗色油状物を得た。ヘキサンを用いてアルミナカラムを通して溶出させると、褐色油状物を22.5g得た。NMRから、これがブチル2−クロロメチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアートおよびブチル2−メチレン−3,4,4,4−テトラクロロブチラートの73:27の比率の混合物であることがわかった。
【0066】
例8 ブチル2−メチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアートの調製
ブチル2−メチル−3−ヒドロキシ−4,4,4−トリクロロブチラート(2.6%)およびブチル2−メチレン−3−アセトキシ−4,4,4−トリクロロブチラート(3.5%)を含む63.8gのブチル2−メチル−3−アセトキシ−4,4,4−トリクロロブチラート(92%)を、還流コンデンサー、磁気撹拌子および温度計が装備されたフラスコに仕込んだ。26. 0gの炭酸水素カリウム粉末、2.8gのナトリウムサルコシナート(40%水溶液)および2.0gのテトラ−n−ブチルアンモニウムブロミドをこのフラスコに添加した。この反応液を94℃まで3時間加熱した。GC分析から、この反応混合物が、出発原料の残りとともに、60.5%のブチル2−メチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアートおよび4.2%のブチル2−メチル−2,4,4−トリクロロブタ−3−エノアートを含むことがわかった。
【0067】
例9 ブチル2−メチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアートの調製
約2.5%の2−メチレン−3−ヒドロキシ−4,4,4−トリクロロブチラートおよび747mlのテトラヒドロフランを含む1236.1gの粗2−メチレン−3−アセトキシ−4,4,4−トリクロロブチラート(91.3%)を還流コンデンサー、磁気撹拌子および温度計を装備した2リットルフラスコに仕込んだ。38.0gの硼水素化ナトリウムを3回に分けて、この撹拌された溶液に添加した。反応温度は32℃まで上昇した。反応液を3時間で70℃にゆっくり加熱した。NMR分析から、出発材料の80%が生成物であるブチル2−メチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアートに転化していることがわかった。この反応液をさらに6時間80℃で加熱し、テトラヒドロフランの除去および水の添加により反応をクエンチした。その有機層を分離し、GC分析により、79.2%のブチル2−メチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート、1%のブチル2−メチル−2,4,4−トリクロロブタ−3−エノアート、6.6%の未反応出発原料、ブチル2−メチレン−3−アセトキシ−4,4,4−トリクロロブチラート、3%のブチル2−メチル−3−アセトキシ−4,4,4−トリクロロブチラートおよび0.5%のブチル2−メチレン−3−ヒドロキシ−4,4,4−トリクロロブチラートが存在することがわかった。水素化生成物であるブチル2−メチル−3−アセトキシ−4,4,4−トリクロロブチラートが、反応系における水又は痕跡量の他のプロトン性溶媒の存在のため、生成した。
この粗生成物は蒸留により精製できる。例えば、123gのこの粗生成物を0.06mmHg/65℃で蒸留した。そのポットからサンプリングされた蒸留生成物(84gの留出物)は、GC分析により、目的生成物であるブチル2−メチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート93.8%という分析値を示した。
【0068】
例10 ブチル2−ヒドロキシメチレン−4,4,4−トリクロロブチラートの調製
この化合物は、室温で起こるブチル2−メチレン−3−ヒドロキシ−4,4,4−トリクロロブチラートの転位反応で得られた。未精製ブチル2−メチレン−3−ヒドロキシ−4,4,4−トリクロロブチラート生成物は転位反応を起こし、ブチル2−ヒドロキシメチレン−4,4,4−トリクロロブチラートを非常にゆっくりと生成した。室温で4か月後に、NMR分光分析により30%の転位生成物が検出された。
19.2gの生成物混合物を93〜95℃/1mmHgで蒸留し、3.45gのやや黄色がかった油状物を得た。NMR分析により、それが、ブチル2−ヒドロキシメチレン−4,4,4−トリクロロブチラートおよびブチル2−メチレン−3−ヒドロキシ−4,4,4−トリクロロブチラートの78:22の比率の混合物であることがわかった。
【0069】
例11 ブチル2−アセトキシメチレン−4,4,4−トリクロロブチラートの調製
例10で得たブチル2−ヒドロキシメチレン−4,4,4−トリクロロブチラートおよびブチル2−メチレン−3−ヒドロキシ−4,4,4−トリクロロブチラートの0.5gの混合物を、4gの無水酢酸に溶解した。この反応混合物を還流加熱した。反応が完結した後、酢酸および余剰の無水酢酸を真空下でストリッピング除去した。この粗生成物をヘキサンに溶解し、アルミナカラムを通して濾過した。0.6gの黄色油状物が得られた。NMRにより、この生成物がブチル2−アセトキシメチレン−4,4,4−トリクロロブチラートおよびブチル2−メチレン−3−アセトキシ−4,4,4−トリクロロブチラートの87:13の比率の混合物であることがわかった。
【0070】
例12 例9のブチル2−メチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアートを使用する、EPDM溶液の調製
温度調節コイルを装備した1ガロンガラス反応器を30℃に維持し、1.5Lの乾燥ヘキサンと、1.8mlのヘキサンに溶解した2.3mmoleのエチルアルミニウムセスキクロリドを仕込み、撹拌を開始した。500mlシリンダーを4psigの水素で加圧し、次いで、水素を、この反応器の中において25psigの全圧を達成するに十分なプロピレンとともに、この反応器に仕込んだ。次いで、エチリデンノルボルネン(ENB、6ml)をこの反応器に添加した。この反応器をモル比1/1のエチレンとプロピレンにより50psigまで加圧した。重合反応を通して常に50psigの反応器内圧力を維持するために必要とされるだけ、ガス状のエチレン/プロピレン混合物を連続的に供給した。バナジウムオキシトリクロリド(VOCl3、3.2mlヘキサン中0.16mmole)およびブチル2−メチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート(1.5mlヘキサン中0.75mmole)をこの反応器に添加し、次いで、4mlのENBを5分後に添加した。重合反応混合物の温度は重合過程の初期段階ですぐに34℃に上昇し、冷却してその後は30℃に保った。0.5時間後、イソプロピルアルコールを加えて重合反応を停止し、生成した重合体生成物を洗浄し、重合混合物から分離し、分析を行った。分析結果は表2に掲げた。
【0071】
例13 ブチル2−メチレン−3−ヒドロキシ−4,4,4−トリクロロブチラートを使用する、EPDM溶液の調製
温度調節用コイルを装備した1ガロンガラス反応器を30℃に保ち、1.5Lの乾燥ヘキサンおよび1.4mlのヘキサンに溶解した1.8mmoleのエチルアルミニウムセスキクロリドを仕込み、撹拌を開始した。500mlのシリンダーを10%水素で20psigに加圧し、次いで、水素を、この反応器の中において25psigの全圧を達成するに十分なプロピレンとともに、この反応器に仕込んだ。次いで、エチリデンノルボルネン(ENB、5ml)をこの反応器に添加した。この反応器をモル比1/1のエチレンとプロピレンにより50psigまで加圧した。重合反応を通して常に50psigの反応器内圧力を維持するために必要とされるだけ、ガス状のエチレン/プロピレン混合物を連続的に供給した。バナジウムオキシトリクロリド(VOCl3、4.0mlヘキサン中0.2mmole)および蒸留済みブチル2−メチレン−3−ヒドロキシ−4,4,4−トリクロロブチラート(1.4mlヘキサン中0.7mmole)をこの反応器に添加し、次いで、3mlのENBを5分後に添加した。重合反応混合物の温度は重合過程の初期段階ですぐに36℃に上昇し、冷却してその後は30℃に保った。20分後、イソプロピルアルコールを加えて重合反応を停止し、生成した重合体生成物を洗浄し、重合混合物から分離し、分析を行った。分析結果は表2に掲げた。
【0072】
例14 ブチル2−メチレン−3−ヒドロキシ−4,4,4−トリクロロブチラートを用いる、EPDM溶液の調製
GC分析値84%を有する粗ブチル2−メチレン−3−ヒドロキシ−4,4,4−トリクロロブチラートを触媒助触媒として使用した以外は、上記例13に記載したのと同様の操作を行った。生成した重合体の性質を表2に示した。
【0073】
例15 ブチル2−メチレン−3−アセトキシ−4,4,4−トリクロロブチラートを使用する、EPDM溶液の調製
GC分析値86%を有する粗ブチル2−メチレン−3−アセトキシ−4,4,4−トリクロロブチラートを触媒助触媒として使用した以外は、上記例13に記載したのと同様の操作を行った。生成した重合体の性質を表2に示した。
【0074】
例16 粗2−メチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアートを使用する、EPDM溶液の調製
少量のブチル2−メチレン−3−アセトキシ−4,4,4−トリクロロブチラートを含む粗ブチル2−メチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアートを触媒助触媒として使用した以外は、上記例13に記載したのと同様の操作を行った。生成した重合体の性質を表2に示した。
【0075】
例17
ブチル2−メチレン−3,4,4,4−テトラクロロブチラートおよびブチル2−クロロメチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアートの混合物を触媒助触媒として使用した以外は、上記例13に記載したのと同様の操作を行った。生成した重合体の性質を表2に示した。
【0076】
例18
ブチル2−メチレン−3−ヒドロキシ−4,4,4−トリクロロブチラートおよびブチル2−クロロメチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアートの混合物を触媒助触媒として使用した以外は、上記例13に記載したのと同様の操作を行った。生成した重合体の性質を表2に示した。
【0077】
例19
ブチル2−メチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート、ブチル2−メチレン−3−アセトキシ−4,4,4−トリクロロブチラート、ブチル2−メチレン−3,4,4,4−テトラクロロブチラートおよびブチル2−クロロメチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアートの混合物を触媒助触媒として使用した以外は、上記例13に記載したのと同様の操作を行った。生成した重合体の性質を表2に示した。
【0078】
例20 ブチル2−メチレン−3−フェノキシ−4,4,4−トリクロロブチラートを使用する、EPDM溶液の調製
ブチル2−メチレン−3−フェノキシ−4,4,4−トリクロロブチラートを触媒助触媒として使用した以外は、上記例13に記載したのと同様の操作を行った。生成した重合体の性質を表2に示した。
【0079】
例21 ブチル2−ヒドロキシメチレン−4,4,4−トリクロロブチラートを使用する、EPDM溶液の調製
例10で製造したブチル2−ヒドロキシメチレン−4,4,4−トリクロロブチラートおよびブチル2−メチレン−3−ヒドロキシ−4,4,4−トリクロロブチラートの混合物を触媒助触媒として使用した以外は、上記例13に記載したのと同様の操作を行った。生成した重合体の性質を表2に示した。
【0080】
例22 ブチル2−アセトキシメチレン−4,4,4−トリクロロブチラートを使用する、EPDM溶液の調製
例11で製造したブチル2−アセトキシメチレン−4,4,4−トリクロロブチラートおよびブチル2−メチレン−3−アセトキシ−4,4,4−トリクロロブチラートの混合物を触媒助触媒として使用した以外は、上記例13に記載したのと同様の操作を行った。生成した重合体の性質を表2に示した。
【0081】
比較例 触媒助触媒なしでのEPDM溶液の調製
温度調節用コイルを装備した1ガロンガラス反応器を30℃に保ち、1.5Lの乾燥ヘキサンおよび3.0mlのヘキサンに溶解した3.9mmoleのエチルアルミニウムセスキクロリドを仕込み、撹拌を開始した。500mlシリンダーを10%水素で40psigに加圧し、次いで、水素を、この反応器の中において25psigの全圧を達成するに十分なプロピレンとともに、この反応器に仕込んだ。次いで、エチリデンノルボルネン(ENB、10ml)をこの反応器に添加した。この反応器をモル比1/1のエチレンとプロピレンにより50psigまで加圧した。重合反応を通して常に50psigの反応器内圧力を維持するために必要とされるだけ、ガス状のエチレン/プロピレン混合物を連続的に供給した。バナジウムオキシトリクロリド(VOCl3、2.0mlヘキサン中1.0mmole)をこの反応器に添加し、次いで、4mlのENBを5分後に添加した。重合反応混合物の温度は重合過程の初期段階ですぐに37℃に上昇し、冷却してその後は30℃に保った。20分後、イソプロピルアルコールを加えて重合反応を停止し、生成した重合体生成物を洗浄し、重合混合物から分離し、分析を行った。分析結果は表2および3に掲げた。
【表2】


A: ブチル2−メチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート、GC分析値93.8%、上記硼水素化ナトリウム法で製造。
B: ブチル2−メチレン−3−ヒドロキシ−4,4,4−トリクロロブチラート、蒸留品、GC分析値98.3%
C: ブチル2−メチレン−3−ヒドロキシ−4,4,4−トリクロロブチラート、GC分析値84%
D: ブチル2−メチレン−3−アセトキシ−4,4,4−トリクロロブチラート、GC分析値86%
E: 粗2−メチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート(ブチル2−メチレン−3−アセトキシ−4,4,4−トリクロロブチラートを83:17の比で含む)
F: ブチル2−メチレン−3,4,4,4−テトラクロロブチラートおよびブチル2−クロロメチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアートの73:27の混合物
G: ブチル2−クロロメチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアートおよびブチル2−メチレン−3−ヒドロキシ−4,4,4−トリクロロブチラートの1:1の混合物
H: EおよびFの1:1の混合物
I: ブチル2−メチレン−3−フェノキシ−4,4,4−トリクロロブチラート
J: ブチル2−ヒドロキシメチレン−4,4,4−トリクロロブチラートおよびブチル2−メチレン−3−ヒドロキシ−4,4,4−トリクロロブチラートの78:22の混合物
K: ブチル2−アセトキシメチレン−4,4,4−トリクロロブチラートおよびブチル2−メチレン−3−アセトキシ−4,4,4−トリクロロブチラートの87:13の混合物
【0082】
触媒効率は、重合体ポンド/バナジウムのポンドで表す。
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)およびMw/Mnは、オルトクロロベンゼン中130℃にて、
Waters RA401屈折率検出器およびWaters Styragel HTカラム(10E6Å、10E5Å、10E4Å、10E3Å)を装備したWaters GPC 150℃ゲル透過クロマトグラフで測定した。分子量は、American Polymer Standards Corp.からのポリスチレン標準(分子量分布が狭く、Mnが9300から2.1×106)に対して較正した溶出時間から計算して求めた。
【0083】
重合体生成物のムーニー粘度(125℃におけるML1+4)は、ASTM規格D1646に従ってMonsanto Mooney粘度計モデルMV2000により求めた。
重合体生成物のエチレン、プロピレン、およびENBの組成は、ASTM規格3900に従って、Perkin−Elmer赤外分光光度計モデルParagon 1000PCにより、重合体の薄層フィルムの赤外分光分析によって求めた。
【0084】
ガラス転移温度(Tg)は、150℃で15分間成形後、室温で24時間アニーリングした20〜25mgの重合体分析試料を用いて、走査型示差熱量測定により測定した。Tgは、Perkin−Elmer DSC 7走査型示差熱量計(20℃/分の昇温速度で−100℃から180℃まで)で記録された、試料の昇温曲線上のガラス転移の中点として報告した。
【0085】
例23 ビス(2−ブトキシカルボニル−4,4,4−トリクロロブテン−3−オキシ)クロロバナジウムオキシド{O=VCl[O−CH(CCl3)C(=CH2)CO2492}を用いる、EPDM溶液の調製
このバナジウム触媒は、VOCl3を、必要量のブチル2−メチレン−3−ヒドロキシ−4,4,4−トリクロロブチラート(蒸留済み、分析値98.3%)のヘキサン溶液と混合することにより調製した。このバナジウム触媒は、混合後、塩化水素を除去するために、アルゴンガスによってパージした。
温度調節用コイルを装備した1ガロンガラス反応器を30℃に保ち、1.5Lの乾燥ヘキサンおよび1.4mlのヘキサンに溶解した1.8mmoleのエチルアルミニウムセスキクロリドを仕込み、撹拌を開始した。500mlのシリンダーを10%水素で20psigに加圧し、次いで、水素を、この反応器の中において25psigの全圧を達成するに十分なプロピレンとともに、この反応器に仕込んだ。次いで、エチリデンノルボルネン(ENB、10ml)をこの反応器に添加した。この反応器をモル比1/1のエチレンとプロピレンにより50psigまで加圧した。重合反応を通して常に50psigの反応器内圧力を維持するために必要とされるだけ、ガス状のエチレン/プロピレン混合物を連続的に供給した。1.5mlのヘキサンに溶解した0.14mmoleのO=VCl[O−CH(CCl3)C(=CH2)CO2492をこの反応器に添加し、次いで、4mlのENBを5分後に添加した。重合反応混合物の温度は重合過程の初期段階ですぐに37℃に上昇し、冷却してその後は30℃に保った。20分後、イソプロピルアルコールを加えて重合反応を停止し、生成した重合体生成物を洗浄し、重合混合物から分離し、分析を行った。分析結果は表3に掲げた。
【0086】
例24 トリス(2−ブトキシカルボニル−4,4,4−トリクロロブテン−3−オキシ)バナジウムオキシド{O=V[O−CH(CCl3)C(=CH2)CO2493}を用いる、EPDM溶液の調製
上記バナデ−ト、すなわち、トリス(2−ブトキシカルボニル−4,4,4−トリクロロブテン−3−オキシ)バナジウムオキシドを触媒として用いた以外は、例23に記載したのと同様の操作を行った。
【表3】


V1:O=VCl[O−CH(CCl3)C(=CH2)CO2492
V2:O=V[O−CH(CCl3)C(=CH2)CO2493
【0087】
多くの変更や修正が、本発明の基礎をなす原理から離れることなく、なされ得ることを考慮すると、本発明に賦与されるべき保護範囲を理解するためには、添付の請求の範囲が参照されなければならない。
本発明において前記水素化物が、硼水素化ナトリウム、硼水素化リチウム、硼水素化カリウム、硼水素化テトラブチルアンモニウム、硼水素化ナトリウム−塩化セシウム錯体、シアノ硼水素化ナトリウム、トリメトキシ硼水素化ナトリウム、トリアセトキシ硼水素化ナトリウム、トリブトキシ硼水素化リチウム、アセトキシ硼水素化ナトリウム、硼水素化亜鉛、およびアセトキシ硼水素化亜鉛からなる群から選択されることが好ましい。
本発明の一態様では、エチレンを触媒(共)重合する方法であって、助触媒が採用される方法において、助触媒として、
2−メチレン−3,4,4,4−テトラクロロブチラート、
2−メチレン−3−ブロモ−4,4,4−トリクロロブチラート、
2−メチレン−3−ヒドロキシ−4,4,4−トリクロロブチラート、
2−メチレン−3−アセトキシ−4,4,4−トリクロロブチラート、
2−メチレン−3−ホルモキシ−4,4,4−トリクロロブチラート、
2−メチレン−3−フェノキシ−4,4,4−トリクロロブチラート、
2−メチレン−3−エトキシ−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート、
2−メチレン−3−メトキシ−4,4,4−トリクロロブチラート、
2−メチレン−3−イソプロポキシ−4,4,4−トリクロロブチラート、
2−メチレン−3−エトキシ−4,4,4−トリクロロブチラート、
2−メチレン−3−ブトキシ−4,4,4−トリクロロブチラート,
2−メチレン−3−シアノ−4,4,4−トリクロロブチラート、
2−クロロメチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート、
2−ブロモメチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート、
2−ヒドロキシメチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート、
2−フェノキシメチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート、
2−アセトキシメチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート、
2−ホルモキシメチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート、
2−メトキシメチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート、
2−エトキシメチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート、
2−イソプロポキシメチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート、
2−ブトキシメチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート、
2−シアノメチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート、
2−ヒドロキシメチレン−4,4,4−トリクロロブチラート、
2−アセトキシメチレン−4,4,4−トリクロロブチラート、
2−ホルモキシメチレン−4,4,4−トリクロロブチラート、
2−クロロメチレン−4,4,4−トリクロロブチラート、
2−ブロモメチレン−4,4,4−トリクロロブチラート、
2−シアノメチレン−4,4,4−トリクロロブチラート、
2−エトキシメチレン−4,4,4−トリクロロブチラート、
2−イソプロポキシメチレン−4,4,4−トリクロロブチラート、
2−ブトキシメチレン−4,4,4−トリクロロブチラート、
2−メチレン−4,4,4−トリクロロブチラート、および
2−メチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート
からなる群から選択されるエステルを使用することを特徴とする、上記方法が提供される。
前記エステルがブチルエステルであることが好ましい。
前記エステルがブチル2−メチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアートであることが好ましい。
本発明の他の態様では、下記構造式、
M(O)rm(助触媒からHをとった残りの部分)n
(式中、
Mは遷移金属カチオンであり、
Xはハロゲンアニオンであり、
rは1〜3であり、
mは1〜7であり、
nは1〜7であり、
r+m+nの最高合計値は6であり、
助触媒は、
2−メチレン−3,4,4,4−テトラクロロブチラート、
2−メチレン−3−ブロモ−4,4,4−トリクロロブチラート、
2−メチレン−3−ヒドロキシ−4,4,4−トリクロロブチラート、
2−メチレン−3−アセトキシ−4,4,4−トリクロロブチラート、
2−メチレン−3−ホルモキシ−4,4,4−トリクロロブチラート、
2−メチレン−3−フェノキシ−4,4,4−トリクロロブチラート、
2−メチレン−3−エトキシ−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート、
2−メチレン−3−メトキシ−4,4,4−トリクロロブチラート、
2−メチレン−3−イソプロポキシ−4,4,4−トリクロロブチラート、
2−メチレン−3−エトキシ−4,4,4−トリクロロブチラート、
2−メチレン−3−ブトキシ−4,4,4−トリクロロブチラート、
2−メチレン−3−シアノ−4,4,4−トリクロロブチラート、
2−クロロメチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート、
2−ブロモメチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート、
2−ヒドロキシメチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート、
2−フェノキシメチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート、
2−アセトキシメチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート、
2−ホルモキシメチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート、
2−メトキシメチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート、
2−エトキシメチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート、
2−イソプロポキシメチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート、
2−ブトキシメチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート、
2−シアノメチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート、
2−ヒドロキシメチレン−4,4,4−トリクロロブチラート、
2−アセトキシメチレン−4,4,4−トリクロロブチラート、
2−ホルモキシメチレン−4,4,4−トリクロロブチラート、
2−クロロメチレン−4,4,4−トリクロロブチラート、
2−ブロモメチレン−4,4,4−トリクロロブチラート、
2−シアノメチレン−4,4,4−トリクロロブチラート、
2−エトキシメチレン−4,4,4−トリクロロブチラート、
2−イソプロポキシメチレン−4,4,4−トリクロロブチラート、
2−ブトキシメチレン−4,4,4−トリクロロブチラート、
2−メチレン−4,4,4−トリクロロブチラート、および
2−メチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート
からなる群から選択されるエステルである)を有する、エチレンの触媒(共)重合用助触媒−触媒化合物が提供される。
前記エステルがブチルエステルであることが好ましい。
前記エステルがブチル2−メチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアートであることが好ましい。
本発明の他の態様では、
2−メチレン−3−ヒドロキシ−4,4,4−トリクロロブチラート、
2−メチレン−3−アセトキシ−4,4,4−トリクロロブチラート、
2−メチレン−3−フェノキシ−4,4,4−トリクロロブチラート、
2−クロロメチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート、
2−メチレン−3,4,4,4−テトラクロロブチラート、
2−メチル−4,4,4−トリクロロブタ−2−エノアート、
2−ヒドロキシメチレン−4,4,4−トリクロロブチラート、および
2−アセトキシメチレン−4,4,4−トリクロロブチラート
からなる群から選択されるエステルを含む組成物が提供される。
前記エステルがブチルエステルであることが好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステルの誘導体の製造方法であって、
式IaまたはIbで示されるエステルを、
【化1】


(式中、
nは、所与のR1またはR5の結合能を超えない1から4の整数であり、
−Eは、
【化2】


であり、
−G−は、
【化3】


であり、
1、X2およびX3は、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アリール、アリールオキシ、シアノ、および水素からなる群より独立に選択され、
1は、水素、アルキル、アルカリール、アラールキル、ハロアルキル、ハロアリール、ハロアルカリール、ハロアラールキル、アルケニル、シクロアルキル、アミノ、キサンタニル、スルフィニル、スルホニル、アリール、アシル、オキシアリール、およびアロイルからなる群より選択され、
2は、水素、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アリールオキシ、シクロアルキルまたは−COOR6(式中、R6は、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アラールキルまたはアリールである)からなる群より選択され、
3およびR4は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アシルオキシ、シクロアルキル、アリールオキシ、アラールキル、およびアリールからなる群より独立に選択され、
5は、水素、アルキル、アルカリール、アラールキル、ハロアルキル、ハロアリール、ハロアルカリール、ハロアラールキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、キサンタニル、スルフィニル、スルホニル、アシル、オキシアリール、およびアロイルからなる群より選択され、
Aは、酸素、硫黄、およびNR7(式中、R7は、水素、アルキル、アルカリール、アラールキル、ハロアルキル、ハロアリール、ハロアルカリール、ハロアラールキル、アルケニル、シクロアルキル、およびアリールからなる群より選択される)からなる群より選択される)
A) 少なくとも一種のルイス酸または塩基と、または
C) アルキルアルミニウム類、アルキル水素化物、および可溶性のニッケルまたはパラジウム塩からなる群より選択される少なくとも一種の可溶性触媒と、
反応させる工程を含む、上記製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
1が、水素、ハロゲン、およびアルコキシからなる群より選択され、
2とX3が、ハロゲンであり、
1が、水素およびアシルからなる群より選択され、
2が、水素、ハロゲン、C1−C16アルキルおよび−COOR6(式中、R6は、C1−C18アルキル、C3−C18アルケニル、C5−C6シクロアルキル、C7−C9アラールキル、およびC6−C10アリールである)からなる群より選択され、
3およびR4が、水素およびC1−C16アルキルからなる群より独立に選択され、
5が、水素、C1−C18アルキル、C6−C10アリール、C7−C9アルカリール、C7−C9アラールキル、C3−C6アルケニル、C1−C18ハロアルキル、C6−C10ハロアリール、C7−C9ハロアルカリール、C7−C9ハロアラールキルからなる群より選択され、
Aが酸素である、
上記方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、
1、X2およびX3が塩素であり、
1が、水素およびアセチル性アシルからなる群より選択され、
2が、水素、塩素、C1−C8アルキル、および−COOR6(式中、R6は、C1−C8アルキル、ベンジル、およびフェニルである)からなる群より選択され、
3およびR4が、水素およびC1−C7アルキルからなる群より独立に選択され、
5が、C1−C12アルキル、フェニル、トリル、ベンジル、アリル、C1−C2ハロアルキル、およびハロフェニルからなる群より選択され、
Aが酸素である、
上記方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、前記エステルが、ブチル2−メチレン−3−ヒドロキシ−4,4,4−トリクロロブチラート、ブチル2−メチレン−3−アセトキシ−4,4,4−トリクロロブチラート、およびブチル2−メチレン−3−フェノキシ−4,4,4−トリクロロブチラートからなる群より選択される、上記方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記エステルを、少なくとも一種のルイス酸または塩基と反応させる工程を含む、上記方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、生成する誘導体が下記構造式、
【化4】


(式中、Yは、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシル、水素、アルキル、アルカリール、アラールキル、ハロアルキル、ハロアリール、ハロアルカリール、ハロアラールキル、アルケニル、シクロアルキル、キサンタニル、スルフィニル、スルホニル、アミノ、アリール、アシルオキシ、オキシアリール、およびアロイルオキシからなる群より選択される。R〜R、G及びEは、上記の意味を有する。)である、上記方法。
【請求項7】
請求項5に記載の方法であって、前記ルイス酸または塩基が、シアニド、アミン、アミド、アルコール、アルコキシド、チオール、マロネート、リチウムアルキルアルミニウム、アルキルアルミニウム、アルキルリチウム、グリニャール試薬、ハロゲン化アンモニウム、ハロゲン化金属、無機ハロゲン化物、アルキルアルミニウムオキシド、ハロゲン化アルキルアルミニウム、ハロゲン化水素酸、N−ハロイミド、周期律表第13−17族の元素のハロゲン化物、ハロゲン化チオニル、ハロゲン化スルフリル、ハロゲン化スルホニル、ハロゲン化オキシリル、ハロゲン化アシル、酸無水物 およびアレーン類からなる群より選択される、上記方法。
【請求項8】
請求項6に記載の方法であって、
1が、水素、ハロゲン、およびアルコキシからなる群より選択され、
2とX3がハロゲンであり、
Yが、水素、ハロゲン、C1−C16アルキル、アリール、アルコキシ、アシルオキシ、およびシアノからなる群より選択され、
2が、水素、ハロゲン、C1−C16アルキル、または−COOR6(式中、R6は、C1−C18アルキル、C3−C18アルケニル、C5−C6シクロアルキル、C7−C9アリールアルキルまたはC6−C10アリールである)からなる群より選択され、
3およびR4が、水素、ヒドロキシ、アシルオキシ、およびC1−C16アルキルからなる群より独立に選択され、
5が、水素、C1−C18アルキル、C6−C10アリール、C7−C9アルカリール、C7−C9アラールキル、C3−C6アルケニル、C1−C18ハロアルキル、C6−C10ハロアリール、C7−C9ハロアルカリール、C7−C9ハロアラールキルからなる群より選択され、
Aが酸素である、
上記方法。
【請求項9】
請求項6に記載の方法であって、
1、X2およびX3が塩素であり、
Yが、水素、塩素、臭素、およびシアノからなる群より選択され、
2が、水素、塩素、C1−C8アルキル、および−COOR6(式中、R6はC1−C8アルキル、ベンジル、およびフェニルである)からなる群より選択され、
3とR4は、水素、ヒドロキシル、アシルオキシ、およびC1−C7アルキルからなる群より独立に選択され、
5が、C1−C12アルキル、フェニル、トリル、ベンジル、アリル、C1−C2ハロアルキル、およびハロフェニルからなる群より選択され、
Aが酸素である、
上記方法。
【請求項10】
請求項6に記載の方法であって、Yが水素ではなく、前記誘導体を、化学量論量の水素化物と、遷移金属触媒の不存在下において、さらに反応させて、下記構造式、
【化5】


の誘導体を生成させる、上記方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、前記水素化物が、硼水素化ナトリウム、硼水素化リチウム、硼水素化カリウム、硼水素化テトラブチルアンモニウム、硼水素化ナトリウム−塩化セシウム錯体、シアノ硼水素化ナトリウム、トリメトキシ硼水素化ナトリウム、トリアセトキシ硼水素化ナトリウム、トリブトキシ硼水素化リチウム、アセトキシ硼水素化ナトリウム、硼水素化亜鉛、およびアセトキシ硼水素化亜鉛からなる群より選択される、上記方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法であって、
1が、水素、ハロゲン、およびアルコキシからなる群より選択され、
2およびX3がハロゲンであり、
2が、水素、ハロゲン、C1−C16アルキル、および−COOR6(式中、R6は、C1−C18アルキル、C3−C18アルケニル、C5−C6シクロアルキル、C7−C9アリールアルキルまたはC6−C10アリールである)からなる群より選択され、
3とR4が、水素およびC1−C16アルキルからなる群より独立に選択され、
5が、水素、C1−C18アルキル、C6−C10アリール、C7−C9アルカリール、C7−C9アラールキル、C3−C6アルケニル、C1−C18ハロアルキル、C6−C10ハロアリール、C7−C9ハロアルカリール、およびC7−C9ハロアラールキルからなる群より選択され、
Aが酸素である、
上記方法。
【請求項13】
請求項10に記載の方法であって、
1、X2およびX3が塩素であり、
2が、水素、塩素、C1−C8アルキル、および−COOR6(式中、R6は、C1−C8アルキル、ベンジル、またはフェニルである)からなる群より選択され、
3およびR4が、水素およびC1−C7アルキルからなる群より独立に選択され、
5が、C1−C12アルキル、フェニル、トリル、ベンジル、アリル、C1−C2ハロアルキル、およびハロフェニルからなる群より選択され、
Aが酸素である、
上記方法。
【請求項14】
助触媒を用いて、エチレンを触媒重合又は触媒共重合する方法において、
助触媒として、少なくとも1種のエステルの誘導体であって、
下記式IaまたはIbで示されるエステルを、
【化6】


(式中、
nは、所与のR1またはR5の結合能を超えない1から4の整数であり、
−Eは、
【化7】


であり、
−G−は、
【化8】


であり、
1、X2およびX3は、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アリール、アリールオキシ、シアノ、および水素からなる群より独立に選択され、
1は、水素、アルキル、アルカリール、アラールキル、ハロアルキル、ハロアリール、ハロアルカリール、ハロアラールキル、アルケニル、シクロアルキル、アミノ、キサンタニル、スルフィニル、スルホニル、アリール、アシル、オキシアリール、およびアロイルからなる群より選択され、
2は、水素、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アリールオキシ、シクロアルキルまたは−COOR6(式中、R6は、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アラールキルまたはアリールである)からなる群より選択され、
3およびR4は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アシルオキシ、シクロアルキル、アリールオキシ、アラールキル、およびアリールからなる群より独立に選択され、
5は、水素、アルキル、アルカリール、アラールキル、ハロアルキル、ハロアリール、ハロアルカリール、ハロアラールキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、キサンタニル、スルフィニル、スルホニル、アシル、オキシアリール、およびアロイルからなる群より選択され、
Aは、酸素、硫黄、およびNR7(式中、R7は、水素、アルキル、アルカリール、アラールキル、ハロアルキル、ハロアリール、ハロアルカリール、ハロアラールキル、アルケニル、シクロアルキル、およびアリールからなる群より選択される)からなる群より選択される)
A) 少なくとも一種のルイス酸または塩基と、または
C) アルキルアルミニウム類、アルキル水素化物、および可溶性のニッケルまたはパラジウム塩からなる群より選択される少なくとも一種の可溶性触媒と、
反応させることにより合成される誘導体を助触媒として使用することを特徴とする、上記方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、
1が、水素、ハロゲン、およびアルコキシからなる群より選択され、
2とX3が、ハロゲンであり、
1が、水素およびアシルからなる群より選択され、
2が、水素、ハロゲン、C1−C16アルキルおよび−COOR6(式中、R6は、C1−C18アルキル、C3−C18アルケニル、C5−C6シクロアルキル、C7−C9アラールキル、およびC6−C10アリールである)からなる群より選択され、
3およびR4が、水素およびC1−C16アルキルからなる群より独立に選択され、
5が、水素、C1−Cl8アルキル、C6−C10アリール、C7−C9アルカリール、C7−C9アラールキル、C3−C6アルケニル、C1−C18ハロアルキル、C6−C10ハロアリール、C7−C9ハロアルカリール、C7−C9ハロアラールキルからなる群より選択され、
Aが酸素である、
上記方法。
【請求項16】
請求項14に記載の方法であって、
1、X2およびX3が塩素であり、
1が、水素およびアセチル性アシルからなる群より選択され、
2が、水素、塩素、C1−C8アルキル、および−COOR6(式中、R6は、C1−C8アルキル、ベンジル、およびフェニルである)からなる群より選択され、
3およびR4が、水素およびC1−C7アルキルからなる群より独立に選択され、
5が、C1−C12アルキル、フェニル、トリル、ベンジル、アリル、C1−C2ハロアルキル、およびハロフェニルからなる群より選択され、
Aが酸素である、
上記方法。
【請求項17】
請求項14に記載の方法であって、前記エステルが、ブチル2−メチレン−3−ヒドロキシ−4,4,4−トリクロロブチラート、ブチル2−メチレン−3−アセトキシ−4,4,4−トリクロロブチラート、およびブチル2−メチレン−3−フェノキシ−4,4,4−トリクロロブチラートからなる群より選択される、上記方法。
【請求項18】
請求項14に記載の方法であって、前記エステルを、少なくとも一種のルイス酸または塩基と反応させたときに生成する誘導体を使用する工程を含む、上記方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、生成した誘導体が、下記構造式、
【化9】


(式中、Yは、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシル、水素、アルキル、アルカリール、アラールキル、ハロアルキル、ハロアリール、ハロアルカリール、ハロアラールキル、アルケニル、シクロアルキル、キサンタニル、スルフィニル、スルホニル、アミノ、アリール、アシルオキシ、オキシアリール、およびアロイルオキシからなる群より選択される)である、上記方法。
【請求項20】
請求項18に記載の方法であって、前記ルイス酸または塩基が、シアニド、アミン、アミド、アルコール、アルコキシド、チオール、マロネート、リチウムアルキルアルミニウム、アルキルアルミニウム、アルキルリチウム、グリニャール試薬、ハロゲン化アンモニウム、ハロゲン化金属、無機ハロゲン化物、アルキルアルミニウムオキシド、ハロゲン化アルキルアルミニウム、ハロゲン化水素酸、N−ハロイミド、周期律表第13−17族の元素のハロゲン化物、ハロゲン化チオニル、ハロゲン化スルフリル、ハロゲン化スルホニル、ハロゲン化オキシリル、ハロゲン化アシル、酸無水物 およびアレーン類からなる群より選択される、上記方法。
【請求項21】
請求項19に記載の方法であって、
1が、水素、ハロゲン、およびアルコキシからなる群より選択され、
2とX3が、ハロゲンであり、
Yが、水素、ハロゲン、C1−C16アルキル、アリール、アルコキシ、アシルオキシル、およびシアノからなる群より選択され、
2が、水素、ハロゲン、C1−C16アルキル、または−COOR6(式中、R6は、C1−C18アルキル、C3−C18アルケニル、C5−C6シクロアルキル、C7−C9アリールアルキルまたはC6−C10アリールである)からなる群より選択され、
3およびR4が、水素、ヒドロキシ、アシルオキシ、およびC1−C16アルキルからなる群より独立に選択され、
5が、水素、C1−C18アルキル、C6−C10アリール、C7−C9アルカリール、C7−C9アラールキル、C3−C6アルケニル、C1−C18ハロアルキル、C6−C10ハロアリール、C7−C9ハロアルカリール、C7−C9ハロアラールキルからなる群より選択され、
Aが酸素である、
上記方法。
【請求項22】
請求項19に記載の方法であって、
1、X2およびX3が塩素であり、
Yが、水素、塩素、臭素、およびシアノからなる群より選択され、
2が、水素、塩素、C1−C8アルキル、および−COOR6(式中、R6はC1−C8アルキル、ベンジル、およびフェニルである)からなる群より選択され、
3とR4は、水素、ヒドロキシル、アシルオキシ、およびC1−C7アルキルからなる群より独立に選択され、
5が、C1−C12アルキル、フェニル、トリル、ベンジル、アリル、C1−C2ハロアルキル、およびハロフェニルからなる群より選択され、
Aが酸素である、
上記方法。
【請求項23】
請求項19に記載の方法であって、Yが水素ではなく、助触媒として使用される前記誘導体が、化学量論量の水素化物と、遷移金属触媒の不存在下におけるさらなる反応により生成された、下記構造式、
【化10】


を有するものである、上記方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法であって、前記水素化物が、硼水素化ナトリウム、硼水素化リチウム、硼水素化カリウム、硼水素化テトラブチルアンモニウム、硼水素化ナトリウム−塩化セシウム錯体、シアノ硼水素化ナトリウム、トリメトキシ硼水素化ナトリウム、トリアセトキシ硼水素化ナトリウム、トリブトキシ硼水素化リチウム、アセトキシ硼水素化ナトリウム、硼水素化亜鉛、およびアセトキシ硼水素化亜鉛からなる群より選択される、上記方法。
【請求項25】
請求項23に記載の方法であって、
1が、水素、ハロゲン、およびアルコキシからなる群より選択され、
2およびX3がハロゲンであり、
2が、水素、ハロゲン、C1−C16アルキル、および−COOR6(式中、R6は、C1−C18アルキル、C3−C18アルケニル、C5−C6シクロアルキル、C7−C9アリールアルキルまたはC6−C10アリールである)からなる群より選択され、
3とR4が、水素およびC1−C16アルキルからなる群より独立に選択され、
5が、水素、C1−C18アルキル、C6−C10アリール、C7−C9アルカリール、C7−C9アラールキル、C3−C6アルケニル、C1−C18ハロアルキル、C6−C10ハロアリール、C7−C9ハロアルカリール、およびC7−C9ハロアラールキルからなる群より選択され、
Aが酸素である、
上記方法。
【請求項26】
請求項23に記載の方法であって、
1、X2およびX3が塩素であり、
2が、水素、塩素、C1−C8アルキル、および−COOR6(式中、R6は、C1−C8アルキル、ベンジル、またはフェニルである)からなる群より選択され、
3およびR4が、水素およびC1−C7アルキルからなる群より独立に選択され、
5が、C1−C12アルキル、フェニル、トリル、ベンジル、アリル、C1−C2ハロアルキル、およびハロフェニルからなる群より選択され、
Aが酸素である、
上記方法。
【請求項27】
下記構造式、
M(O)rm(助触媒からHをとった残りの部分)n
(式中、
Mは遷移金属カチオンであり、
Xはハロゲンアニオンであり、
rは0〜3であり、
mは0〜6であり、
nは1〜7であり、
r+m+nの最高合計値は7であり、
助触媒は、エステルの誘導体であり、
前記誘導体は、式IaまたはIbで示されるエステルを、
【化11】


(式中、
nは、所与のR1またはR5の結合能を超えない1から4の整数であり、
−Eは、
【化12】


であり、
−G−は、
【化13】


であり、
1、X2およびX3は、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アリール、アリールオキシ、シアノ、および水素からなる群より独立に選択され、
1は、水素、アルキル、アルカリール、アラールキル、ハロアルキル、ハロアリール、ハロアルカリール、ハロアラールキル、アルケニル、シクロアルキル、アミノ、キサンタニル、スルフィニル、スルホニル、アリール、アシル、オキシアリール、およびアロイルからなる群より選択され、
2は、水素、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アリールオキシ、シクロアルキルまたは−COOR6(式中、R6は、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アラールキルまたはアリールである)からなる群より選択され、
3およびR4は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アシルオキシ、シクロアルキル、アリールオキシ、アラールキル、およびアリールからなる群より独立に選択され、
5は、水素、アルキル、アルカリール、アラールキル、ハロアルキル、ハロアリール、ハロアルカリール、ハロアラールキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、キサンタニル、スルフィニル、スルホニル、アシル、オキシアリール、およびアロイルからなる群より選択され、
Aは、酸素、硫黄、およびNR7(式中、R7は、水素、アルキル、アルカリール、アラールキル、ハロアルキル、ハロアリール、ハロアルカリール、ハロアラールキル、アルケニル、シクロアルキル、およびアリールからなる群より選択される)からなる群より選択される)
A) 少なくとも一種のルイス酸または塩基と、または
C) アルキルアルミニウム類、アルキル水素化物、および可溶性のニッケルまたはパラジウム塩からなる群より選択される少なくとも一種の可溶性触媒と、
反応させる工程を含む方法によって調製される)
を有する、エチレンの触媒重合又は触媒共重合用助触媒−触媒化合物。
【請求項28】
下記式、
【化14】


(式中、
nは、所与のR1またはR5の結合能を超えない1から4の整数であり、
−Eは、
【化15】


であり、
−G−は、
【化16】


であり、
1、X2およびX3は、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アリール、アリールオキシ、シアノ、および水素からなる群より独立に選択され、
1は、水素、アルキル、アルカリール、アラールキル、ハロアルキル、ハロアリール、ハロアルカリール、ハロアラールキル、アルケニル、シクロアルキル、アミノ、キサンタニル、スルフィニル、スルホニル、アリール、アシル、オキシアリール、およびアロイルからなる群より選択され、
2は、水素、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アリールオキシ、シクロアルキルまたは−COOR6(式中、R6は、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アラールキルまたはアリールである)からなる群より選択され、
3およびR4は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アシルオキシ、シクロアルキル、アリールオキシ、アラールキル、およびアリールからなる群より独立に選択され、
5は、水素、アルキル、アルカリール、アラールキル、ハロアルキル、ハロアリール、ハロアルカリール、ハロアラールキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、キサンタニル、スルフィニル、スルホニル、アシル、オキシアリール、およびアロイルからなる群より選択される。)
の化合物を製造する方法であって、下記式、
【化17】


(式中、R〜R、G及びEは、上記の意味を有する。)
の化合物を、触媒量から化学量論量の塩基と反応させる工程を含む、上記方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法であって、前記塩基が炭酸水素アルカリ金属塩である、上記方法。
【請求項30】
請求項29に記載の方法であって、前記炭酸水素アルカリ金属塩が炭酸水素カリウムである、上記方法。
【請求項31】
請求項28に記載の方法であって、前記反応を加熱下にて行う、上記方法。
【請求項32】
請求項28に記載の方法であって、前記構造式IVaおよびIVb中のR1が、アシル、アロイル、オキシアリール 、スルホニル、およびスルフィニルからなる群から選択される、上記方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法であって、前記構造式IVaおよびIVb中のR1がアシルである、上記方法。

【公開番号】特開2008−56691(P2008−56691A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−279802(P2007−279802)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【分割の表示】特願2000−580973(P2000−580973)の分割
【原出願日】平成11年10月6日(1999.10.6)
【出願人】(501152802)ユニロイヤル ケミカル カンパニー インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】