説明

α1−抗トリプシン組成物およびこのような組成物を用いた処置方法

α1−抗トリプシン組成物および種々の肺疾患を処置するためにこのような組成物を使用する処置方法が提供される。この組成物は、一般に、AAT、安定化炭水化物(例えば、トレハロース)、表面活性剤(例えば、ポリソルベート80)、および治療剤としての使用のためにAATを安定化する抗酸化剤を含有する。この処方物は、液体および固体の両方として調製され得、そして液体処方物の噴霧によるか、または乾燥粉末処方物のエアロゾルへの変換により投与される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(背景)
α1−抗トリプシン(AAT)は、比較的広範な基質特異性を有するプロテアーゼインヒビターである;その主な機能は、エラスターゼを阻害することであるが、またカテプシンGおよびプロテイナーゼ3のインヒビターでもある。これらの酵素のインヒビターとしての活性に加えて、AATはまた、肺肥満細胞の脱顆粒を阻害し、ヒスタミン放出因子を阻害し、腫瘍壊死因子(TNF)の放出を阻害し、そして肺胞マクロファージおよび肺胞細胞からのロイコトリエンBの放出を阻害することが示されている。
【0002】
AATは、主に肝臓で合成されるが、また他の細胞(マクロファージ、腸管上皮細胞および腸管パーネト細胞が挙げられる)においてより少ない程度で合成される。肝臓において、AATは、最初に52kDの前駆体タンパク質として合成され、その後、3つのアスパラギン酸残基において翻訳後にグリコシル化を受け、そしてチロシンスルホン化を受ける。生じたタンパク質は、55kDの天然の一本鎖糖タンパク質として分泌される。AATの正常なアロタイプは、M型AATと称される(しばしば、プロテアーゼインヒビターM型、または単にPiMと称される)。一旦血漿中に分泌されると、PiMの半減期は、約5日間である。
【0003】
特定の個体は、AAT欠損をもたらす遺伝的障害を有する。これらの個体は、肝疾患および/または肺気腫の危険性が増加する。哺乳動物における肺組織は、特にエラスターゼの作用に感受性であり、エラスターゼは、制御されない場合、肺胞の間隙の全ての主要なタンパク質成分を分解し得るので、肺気腫の危険性は増加する(例えば、非特許文献1を参照のこと)。
【0004】
AAT欠損は、北アメリカおよび北ヨーロッパのほとんどの人種において1700人中約1人に影響を及ぼす常染色体の劣性形質としてもっとも頻繁に伝達される。このAAT欠損の特定の形態は、一般にプロテアーゼインヒビターZ型(または単純にPiZ)と称される。PiZに関連する変異は、グルタミン酸342のリジンとの置換を引き起こす一ヌクレオチド置換である。現在までの証拠は、この置換が、AATの正常なタンパク質のフォールディングを妨げることを示す。この変異は、特にタンパク質の単量体形態の安定性を減少し、ポリマー形態の形成を増加するようである(例えば、非特許文献2;非特許文献3;および、非特許文献4を参照のこと)。
【0005】
AAT欠損に関連する肝疾患の場合において、調査は、AATの変異体PiZ形態が、肝細胞の小胞体(ER)中に小球として保持されることを示す。変異体AATの保持は、酵素のPiZ形態の異常なフォールディングにより引き起こされ、これは、ERからゴルジ体へのその輸送を阻害するようである(例えば、非特許文献5;非特許文献6;および非特許文献7を参照のこと)。
【0006】
上に記載されるように、AATにおける欠損は、気腫の病因において中心的な役割を果たす。なぜならば、AATは、エラスターゼ、カテプシンGおよびプロテイナーゼ3の調節において重要な役割を果たすためである。調査は、例えば、AATが、肺胞洗浄流体において90%を超える好中球エラスターゼインヒビター活性の原因となることを示し、このことは、AAT欠損個体において観察される肺組織の破壊は、肺中のエラスターゼおよびAATの不均衡に起因することを示唆する。カテプシンGおよびプロテイナーゼ3の制御される作用とともに、エラスターゼの制御される作用は、肺結合組織のゆっくりであるが着実な破壊、および肺気腫の発症に関連する弾性をもたらす。環境汚染物質および喫煙は、存在するわずかなAATを不活性な形態へ酸化することにより、AAT欠損の問題を悪化させ得ることを示す、いくつか証拠がある(例えば、非特許文献8を参照のこと)。
【0007】
AAT欠損を有する個体へのAATの投与は、現在までの主要な処置形態である。多くの場合、このような処置プロトコルは、AATを静脈内投与する工程を包含する。このアプローチには少なくとも2つの問題がある。第一の問題は、肺における治療レベルを達成するために、大量のAATが静脈内投与されなければならないことである。第二の問題は、AATが比較的大量に容易に得られ得ることから、組換えAATの使用が有利であるが、組換えAATは、天然に存在する形態よりも不安定であるので、この形態のAATは、その循環において短い半減期を有することである。
【非特許文献1】Smithら,J.Clin.Invest.1989年,第84巻:p.1145−1154
【非特許文献2】Lomasら,Nature,1992年,第357巻:p.605−607
【非特許文献3】Gadekら,「Alpha−1−Antitrypsin Deficiency」,The Metabolic Basis of Inherited Diesease (Stanbury,J.B.ら編)McGraw−Hill,New York,1982年,p.1450−1467
【非特許文献4】Carrollら,Nature,1982年,第2988巻:p.329−334
【非特許文献5】Carlsonら,J.Clin.Invest.1988年,第83巻:p.1183−90
【非特許文献6】Wuら,Proc.Natl.Acad.Sci.1994年,第91巻:p.9014−9018
【非特許文献7】Dycaicoら,Science,1988年,第242巻:p.1409−1412
【非特許文献8】Hunnighakeら,Am.Rev.Respir.Dis.1983年,第128巻:833−838
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、患者に安定な形態のAATを提供するために、新規な組成物(組換え形態を含む)に対する必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の簡単な要旨)
AATを含有する種々の薬学的組成物が提供される。この組成物は、AAT欠損に関連する種々の疾患の処置において有用である。この組成物は、一般に、AAT、安定化炭水化物、表面活性剤および抗酸化剤を含有する。
【0010】
この組成物は、吸入療法を介して患者へ投与するために処方される。特定の組成物は散剤として処方され、そしてその散剤をエアロゾルに変換することにより投与される;対照的に、他の処方物は、噴霧化され得る液体として処方される。薬学的組成物中のAATは、種々の異なる形態(天然に存在するAAT、組換えAATおよび形質転換AATが挙げられる)であり得る。AATは、グリコシル化されてもまたはグリコシル化されなくてもよい。
【0011】
この組成物は、種々の異なる安定化炭水化物を含有し得る。適切な炭水化物としては、ラクトース、スクロース、トレハロース、ラフィノース、マルトデキストリンおよびマンニトールが挙げられるがこれらに限定されない。多くの異なる抗酸化剤もまた、組成物中で使用され得る。例示的な抗酸化剤としては、グルタチオンおよびメチオニンが挙げられる。
【0012】
提供される溶液ベースの薬学的組成物は、通常、1mg/ml〜100mg/mlのAAT、1%(w/v)〜5%(w/v)の安定化炭水化物、0.01%(w/v)〜0.5%(w/v)の表面活性剤、および1mM〜10mMの抗酸化剤を含有する。いくつかの組成物におけるAAT濃度は、10mg/ml〜50mg/mlより多少低い。したがって、散剤として処方される組成物において、AAT、炭水化物、表面活性剤および抗酸化剤は、この散剤が患者へ投与するための水溶液に可溶性である場合、AATの濃度が1mg/ml〜100mg/mlであり、炭水化物の濃度が1%(w/v)〜5%(w/v)であり、表面活性剤の濃度が0.01%(w/v)〜0.5%(w/v)であり、そして抗酸化剤の濃度が1mM〜10mMであるような量で存在する。
【0013】
本明細書中で開示される特定の他の薬学的組成物は、組換えα1−抗トリプシン(AAT)、安定化炭水化物、ならびに表面活性剤および抗酸化剤からなる群より選択される少なくとも1つのさらなる安定化剤を含有し、ここでAAT/炭水化物の比(重量:重量)は、1:1〜5:1である。この型のいくつかの組成物は、表面活性剤および抗酸化剤の両方を含有する。
【0014】
処方物の種々の成分の相対量を示す1つの処方物の特定の例は、50mg/mlのAAT、25mg/mlのトレハロース、5mMのメチオニン、および0.02%のポリソルベート80を含有する2mの処方物である。凍結乾燥される場合、このような組成物は、100mgのAAT、50mgのトレハロース、1.5mgのメチオニン、および0.4mgのポリソルベート80を生じる。別のベース処方物は、5%AAT、2.5%炭水化物(例えば、トレハロース)、0.1%〜0.2%表面活性剤(例えば、Tween−80)、5mM 抗酸化剤(例えば、メチオニン)および10mM緩衝液(例えば、リン酸ナトリウム、pH7.4)(全ての百分率は、(w/v)である)を含有する。
【0015】
前述の組成物の内の薬学的組成物は、AAT欠損に相関する種々の疾患の処置において使用され得る。例えば、これらの組成物は、AAT欠損に関連する肺疾患を処置するために使用され得る。したがって、例えば、提供される特定の方法は、有効量のAAT、安定化炭水化物、表面活性剤および抗酸化剤を含有する薬学的組成物を、患者の肺に投与する工程を包含する。これらの組成物の内の特定の組成物は、すぐ上に(just)記載されるとおりである。上に示されるように、これらの組成物は、一般に、吸入により投与される。この組成物が固体である場合、この方法は、患者が吸入し得るエアロゾルへこの固体を変換する工程を包含する。この組成物が液体である場合、この方法は、患者による吸入のために液体を噴霧化する工程を包含する。
【0016】
これらの方法は、種々の疾患を処置するために使用され得る。開示される組成物を投与することにより処置され得る疾患の例としては、エラスターゼ、カテプシンGおよび/またはプロテイナーゼ3の活性に関連する肺疾患が挙げられる。特定の処置は、好中球、肥満細胞またはT細胞の活性化に関連する肺炎症性疾患の処置において有効である。いくつかの組成物で処置され得る他の疾患としては、成人呼吸促進症候群、新生児呼吸促進症候群および敗血症症候群が挙げられる。処置され得る疾患の他の特定の例としては、気腫およびぜん息が挙げられる。
【0017】
いくつかの処置方法において、患者は、この疾患に感受性であり、この薬学的組成物は予防有効量で投与される。それに対して、他の例において、患者は疾患を有し、そしてこの薬学的組成物は治療有効量で投与され得る。
【0018】
AAT欠損に関連する肺疾患を処置するためのさらに他の方法は、グリコシル化されない組換えAAT、安定化炭水化物、ならびに表面活性剤および抗酸化剤からなる群より選択される少なくとも1つのさらなる安定化剤を含有する薬学的組成物を、患者の肺に投与する工程を包含し、ここでAAT/炭水化物の比は、1:1〜5:1である。このような組成物を投与する工程を包含する方法は、前述の疾患を処置するために使用され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(詳細な説明)
(I.定義)
他に規定されない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者に共通して理解される意味を有する。以下の参考文献は、本発明において使用される多くの用語の一般的な定義を有する技術の1つを提供する:Singletonら,DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY(第2版 1994);THE CAMBRIDGE DICTIONARY OF SCIENCE AND TECHNOLOGY(Walker編,1988);THE GLOSSARY OF GENETICS,第5版,R.Riegerら(編),Springer Verlag(1991);およびHale & Marham,THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY(1991)。本明細書中で使用される場合、以下の用語は、他に特定されない限り、これらの参考文献に基づく意味を有する。
【0020】
本明細書中で使用される場合、用語「AAT」とは、一般的に、天然のAATアミノ配列、ならびに改変体、フラグメント、調製物の起源または形態によらない改変された形態を有するタンパク質をいう。したがって、この用語は、AATの天然に存在する形態および組換え形態の両方、ならびにグリコシル化された形態およびグリコシル化されない形態を包含する。この用語は、天然の供給源(例えば、血漿)から単離されたAAT、当該分野で周知の合成方法によりおよび/または組換え手段もしくは遺伝子組換え手段により作製されたAATを包含する。「天然に存在するAAT」または単純に「天然のAAT」は、天然の供給源(すなわち、血清)から単離され得るAAT形態をいう。用語 天然に存在するAATは、特に、AATの天然に存在する短縮形態(truncated form)または可溶性形態、天然に存在する改変体の形態(例えば、代替的にスプライシングされた形態)、天然に存在する対立遺伝子改変体、および翻訳後修飾を含む形態(例えば、背景技術において議論されるグリコシル化およびスルホン化)を包含する。天然のAAT配列の特定の例は、米国特許第4,599,311号および同第4,711,848号(これらの両方は、本明細書中でその全体が参考として援用される)において提供される。例示的な天然のAAT配列は、配列番号1(GenBank登録番号AAB59375もまた参照のこと)として提供される。「組換えAAT」(rAAT)とは、遺伝子操作、組換えまたは形質転換技術を使用して作製されたAATをいう。組換えAATを作製するための例示的な方法は、米国特許第4,599,311号、同第4,931,373号および同第5,218,091号(これらの各々は、本明細書中で全ての目的のためにその全体が参考として援用される)において議論される。組換えAAT形態は、その酵素が発現される生物に依存してグルコシル化され得るか、またはグリコシル化され得ない。用語 AATは、AATのヒト形態、および他の哺乳動物のAAT(例えば、サル、チンパンジー、およびゴリラのような霊長類、ならびにマウス、ウサギ、ウシおよびブタのような非霊長類由来のAATの両方)を包含し得る。
【0021】
「AAT改変体」とは、天然の配列のAATタンパク質に対する機能的等価物であるタンパク質、ならびに類似のアミノ酸配列を有し、そして天然に存在するAATの活性の1種以上をある程度まで保持するタンパク質をいう。AATの活性としては、エラスターゼ、カテプシンGおよび/またはプロテイナーゼ3を阻害する能力が挙げられるが、これらに限定されない。他の例示的なAAT活性としては、肺肥満細胞の脱顆粒を阻害する能力、ヒスタミン放出因子を阻害する能力、腫瘍壊死因子(TNF)の放出を阻害する能力、ならびに/または肺胞マクロファージおよび肺胞細胞由来のロイコトリエンBの放出を阻害する能力が挙げられる。
【0022】
改変体はまた、AAT活性を保持するフラグメントを含む。フラグメントはAATの活性部位を含み、代表的には、活性部位のいずれかの側の少なくとも5〜20個の側方のアミノ酸を含む。フラグメントは、通常少なくとも25アミノ酸、50アミノ酸、75アミノ酸、100アミノ酸、150アミノ酸、200アミノ酸、250アミノ酸、300アミノ酸、または350アミノ酸を含む。
【0023】
AAT改変体はまた、AATの天然の配列と実質的に同じであるタンパク質を包含する。このような改変体としては、アミノ酸の変更(例えば、欠失、挿入および/または置換)を有するタンパク質が挙げられる。「欠失」とは、関連するタンパク質中の1個以上のアミノ酸残基の非存在をいう。用語「挿入」とは、関連するタンパク質中の1個以上のアミノ酸の付加をいう。「置換」とは、ポリペプチド中の1個以上のアミノ酸残基の別のアミノ酸残基による置き換えをいう。代表的には、このような変更は、改変体タンパク質の活性がAATの天然の配列と実質的に類似するように、本質的に保存的である(例えば、Creighton(1984)Proteins,W.H.Freeman and Companyを参照のこと)。置換の場合において、別のアミノ酸を置き換えるアミノ酸は、通常、類似する構造的性質および/または化学的性質を有する。挿入および欠失は、代表的に1〜5アミノ酸の範囲であるが、挿入の位置に依存して、より多いアミノ酸が、挿入または除去され得る。この改変体は、当該分野で公知の方法(例えば、特定部位の突然変異誘発(Carterら,(1986)Nucl.Acids Res.13:4331;Zollerら,(1987)Nucl.Acids Res.10:6487)、カセット変異誘発(Wellsら,(1985)Gene 34:315)、制限選択変異誘発(Wellsら,(1986)Philos.Trans.R.Soc.London SerA 317:415)、およびPCR変異誘発(Sambrookら,(1989)Molecular Cloning,Cold Spring Harbor Laboratory Press)を使用して作製され得る。
【0024】
AAT改変体はまた、AATの改変された形態または誘導体形態を含む。改変されたAATとは、一般に、天然の配列のAATの1個以上のアミノ酸が、天然に存在しないアミノ酸残基に変更されたタンパク質をいう。このような改変は、翻訳の間または翻訳後に起こり得、そしてリン酸化、グリコシル化、スルホン化、架橋、アシル化、およびタンパク質分解性の切断が挙げられるがこれらに限定されない。
【0025】
AATの改変体形態の特定の例は、例えば、米国特許第4,732,973号および同第5,134,119号(これらは両方とも、本明細書中で全ての目的のためにその全体が参考として援用される)において議論される。例示的な改変体は、その活性部位のメチオニンが、より酸化されにくいアミノ酸(例えば、バリン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、セリンまたはトレオニン)で置き換えられた改変体である。他の特定の改変体および改変体を作製するための方法は、一般に、米国特許第4,711,848号(これは、本明細書中で全ての目的のためにその全体が参考として援用される)に記載される。
【0026】
2個以上の核酸またはポリペプチドの文脈において、用語「同一な」または「同一性」%とは、等しいか、あるいは配列比較アルゴリズム(例えば、以下に記載されるアルゴリズム)を使用してか、もしくは目視検査により測定されることにより、比較および最大限の対応のために整列された場合、特定の割合の等しいヌクレオチドもしくはアミノ酸残基を有する2種類以上の配列または部分配列をいう。
【0027】
2種類の核酸またはポリペプチドの文脈において使用される場合、語句「実質的に同一な」または他の関連する語句は、配列比較アルゴリズム(例えば、以下に記載されるアルゴリズム)を使用してか、もしくは例えば目視検査により測定され、比較および最大限の対応のために整列された場合、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、95%もしくは99%のヌクレオチドまたはアミノ酸残基の同一性を有する2種類以上の配列あるいは部分配列をいう。好ましくは、実質的な同一性は、少なくとも約40〜60残基長である配列の領域にわたって、好ましくは60〜80アミノ酸を超える領域、より好ましくは少なくとも約90〜100残基にわたって存在し、そしてもっとも好ましくは、配列は、比較される配列の全長(例えば、ヌクレオチドのコード領域)にわたって実質的に同一である。
【0028】
配列の比較について、代表的には、1つの配列は、比較される試験配列に対する参照配列として作用する。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列および参照配列は、コンピュータに入力され、必要な場合、配列の同等のものが指定され、そして配列アルゴリズムプログラムパラメータが指定される。次いで、配列比較アルゴリズムは、指定されたプログラムのパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列についての配列同一性%を計算する。
【0029】
比較のための配列の最適なアライメントは、例えば、局所のホモロジーアルゴリズム(Smith & Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981))、ホモロジーアライメントアルゴリズム(Needleman & Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970))、(Pearson & Lipman,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の方法に類似する探索)、これらのアルゴリズムのコンピュータによる実行(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WIのGAP, BESTFIT,FASTA,およびTFASTA)、または目視検査(一般に、Current Protocols in Molecular Biology,(Ausubel,F.M.ら編)John Wiley & Sons,Inc.,New York(1987−1999,補遺46(1999年4月)のような補遺を含む)を参照のこと)により実施され得る。配列比較を実施するためのこれらのプログラムの使用は、代表的に、各々のプログラムについて特定の初期パラメータを使用して実施される。
【0030】
(II.概論)
薬学的処方物として種々のタンパク質を安定化するために有用な組成物、ならびに種々の治療処置方法および予防処置方法においてこのような処方物を使用する方法が提供される。開発された処方物の1つの群は、AATを含有する。これらの処方物は、AAT欠損に関連する種々の症状の処置において有用である。本明細書中で使用される場合、「AAT欠損」は、一般に、個体の内因性AATレベルが、エラスターゼまたは他のプロテアーゼ(例えば、カテプシンGおよびプロテイナーゼ3)の破壊活性を防御するのに不十分であることを意味する。AATレベルは、不十分でありえる。なぜならば、AATレベルは、代表的な個体の集団よりも低いため、そして/またはエラスターゼレベルが、一般の集団に対して上昇されるためである。
【0031】
この処方物は、一般にタンパク質処方物に共通の課題、ならびに治療剤としてAATの送達に関連する特定の課題に対処するように設計されている。例えば、治療用途のためのタンパク質は、多くの場合、その天然の生物学的環境外では本質的に不安定である。共通した安定性の問題としては、非共有結合性の凝集および共有結合性の凝集、脱アミノ化、環状イミドの形成、切断および酸化が上げられる。例えば、AATは、活性部位のメチオニンの存在に起因する酸化、および凝集を受けやすい。本明細書中に開示される処方物は、安定化剤を欠くAATの水溶液(天然に存在する形態よりも安定でないグリコシル化されない組換え形態が挙げられる)に対してAATの安定性を改善する。この処方物の成分は、この処方物が、肺への送達を増強するために容易に噴霧化され得るか、または乾燥粉末からエアロゾルへ容易に変換され得るように選択される。この処方物は、安定性をさらに増強するために、水溶液の形態で調製され得るか、または粉末として凍結乾燥され得る。結果として、この処方物は、液体処方物を噴霧することによるか、またはいくつかの例において、この粉末を吸入され得る乾燥エアロゾルに変換することにより投与され得る。
【0032】
(III.組成物)
(A.一般論)
提供される処方物または組成物は、1)タンパク質を安定化する成分を含有し、2)容易に噴霧され得るか、または容易にエアロゾルへ変換され得る形態であり、そして3)肺組織に適合性である。本明細書中の議論の大部分は、AATを含有する処方物に焦点を当てるが、当業者は、開示された処方物の成分が、他のタンパク質を含有する処方物を調製するために使用され得ることを認識する。
【0033】
組成物中に含まれる成分は、一般に、以下の1つ以上である:単純な糖(例えば、単糖、二糖または三糖)、表面活性剤/界面活性剤、抗酸化剤、および緩衝剤。種々の他の活性成分(例えば、1種以上のさらなるプロテアーゼインヒビターおよび/または抗炎症剤)もまた、必要に応じて含まれ得る。
【0034】
この処方物は、種々の様式(例えば、1)後に噴霧化され得る液体として、2)乾燥粉末のエアロゾル化により送達され得る粉末として、または3)貯蔵のために粉末に凍結乾燥される液体として(次にこれは、後に患者への投与直前に液体として再形成される))で調製され得る。したがって、この処方物は、液体であり得るか、または粉末であり得る。以下に列挙される成分の濃度は、一般に液体処方物を想定する。粉末処方物の成分は、この粉末が再形成される場合、本明細書中に記載される濃度を有する液体を生じるような適切な量で存在する。
【0035】
(B.タンパク質)
処方物に含まれるAATは、上に定義され、そして天然に存在するものであり得、組換え技術により調製され得、そして/または化学合成により調製され得る。ヒト血漿由来のAATは、Bayerにより生産される非経口用製品PROLASTINとして市販されている。グリコシル化AATまたはグリコシル化されないAAT(例えば、米国特許第4,599,311号;同第4,931,373号;および同第5,218,091号を参照のこと)は、処方物中で使用され得る。いくつかの処方物は、上に定義されるとおりのAATフラグメントまたはAAT改変体を含有する。このような改変体の配列は、代表的に、天然に存在するAATのアミノ酸配列と実質的に同一であるアミノ酸配列を有し(例えば、米国特許第4,711,848号、および同第4,599,311号を参照のこと)、そして天然の配列を有するAATの1つ以上の活性を有する。したがって、例えば、特定の組成物は、AAT改変体を含有し、この改変体は、1)配列番号1に列挙される天然のAAT配列に少なくとも85%、90%または95%の配列同一性を有し、そして2)エラスターゼを阻害し得る。特定の組成物中に含有され得る適切な改変体としては、例えば、米国特許第4,732,973号;同第5,134,119号;および同第4,711,848号に議論されるものが挙げられる。AATは、ヒトAATまたは他の哺乳動物AATであり得る。
【0036】
このタンパク質の塩および誘導体も、同様に利用され得る。これらは、このタンパク質に活性に悪影響を及ぼすことなく、他のタンパク質とともに、一般に使用される確立した技術により調製され得る。特定の処方物において利用され得る適切な塩および誘導体の例としては、アルカリ金属塩、酸付加塩およびエステルが挙げられるがこれらに限定されない。
【0037】
このタンパク質は、代表的に、少なくとも90%、他の例においては少なくとも95%、およびなお他の例においては少なくとも98%または99%の純度を有する。これらの純度の値は、重量ベースで、組成物中の他のタンパク質に対するAATの量を反映する。このAAT濃度は変動し得るが、液体処方物においては、一般に1mg/ml〜100mg/ml(この間の任意の範囲を含む)の範囲である。他の例において、この濃度は、1mg/ml〜50mg/mlであり、そしてなお他の例においては、60mg/ml〜65mg/mlである。いくつかの処方物中のAAT濃度は、100mg/ml、75mg/ml、50mg/ml、25mg/ml、10mg/mlまたは5mg/ml未満である。重量%ベースで表現されると、このAAT濃度は、代表的には2%(w/v)〜20%(w/v)の範囲であり、いくつかの例において、5%(w/v)〜15%(w/v)の範囲である。したがって、例えば、いくつかの処方物は、5%(w/v)、7%(w/v)、9%(w/v)、11%(w/v)、13%(w/v)または15%(w/v)のAAT濃度を有する。
【0038】
(C.炭水化物)
この組成物は、代表的に単純な炭水化物(例えば、単糖、二糖または三糖)を含有する。この炭水化物は、他の物の間で、不定形の凍結防止剤および不溶化剤(lyoprotectant)として機能し、したがって、室温貯蔵を容易にする。炭水化物は、噴霧化されるべき処方物については肺組織に適合可能であるように選択される。下記の結果は、トレハロースはこれらの基準を十分に満たすが、他の炭水化物が特定の代替の処方物において使用され得ることを示す。他の適切な炭水化物としては、ラクトース、スクロース、ラフィノースおよびマルトデキストリンが挙げられるがこれらに限定されない。なお他の処方物としては、単糖(例えば、ソルボースもしくはガラクトース)、キシリトールのようなアルジトールまたはマンニトールが挙げられる。
【0039】
液体処方物中の炭水化物(例えば、トレハロース)の濃度は、一般に約1mg/ml〜約50mg/mlの範囲であり、そして他の例においては約10mg/ml〜約50mg/mlの範囲である。このレベルを有意に超える炭水化物の濃度は、多すぎる炭水化物が吸入の間に送達されるという結果をもたらし得、このことは、肺が潜在的に炭水化物で被覆される結果をもたらし得る。したがって、種々の処方物は、少なくとも1mg/ml、5mg/ml、10mg/ml、15mg/ml、20mg/ml、25mg/ml、30mg/ml、35mg/ml、40mg/mlまたは45mg/mlの炭水化物を含有するが、一般に約50mg/ml未満である。%ベースで表現されると、この炭水化物の濃度は、通常、約5%(w/v)までである。したがって、重量%ベースの炭水化物の濃度は、通常少なくとも1%、2%、3%または4%であるが、5%未満である。このタンパク質/炭水化物の比(重量:重量)は、通常、この比が約1:1〜5:1の間であるように調節される。従って、例示的な処方物(例えば、AAT処方物)は、1:1、2:1、3:1、4:1または5:1のタンパク質/炭水化物の比(w:w)を有する。
【0040】
(D.表面活性剤)
噴霧化され得るかまたはエアロゾルへ変換され得、そして肺組織に適合性である表面活性剤はまた、代表的にタンパク質の安定性を増強するためにタンパク質の処方物に組み込まれる。本明細書中で使用される場合、用語「表面活性剤」は、当該分野におけるその通常の意味を有し、そして一般に界面を活性化する物質を意味する。表面活性剤はまた、時々、当該分野で湿潤剤、表面張力低化剤、界面活性剤、分散剤または乳化剤と称される。この表面活性剤は、処方物中のタンパク質の凝集の防止、ならびに濾過、凍結−解凍、凍結乾燥および貯蔵の間に起こり得る表面変性の最小化において有用である。例えば、凝集に対する保護は、AATを含有する処方物に関して重要である。なぜならば、AAT凝集物は、そのモノマー形態よりも安定でないためである。
【0041】
表面活性剤は、すぐ上に列挙された特徴を有する任意の表面活性剤または界面活性剤から選択され得る。代表的には、非イオン性の表面活性剤が利用される。適切な表面活性剤の特定の例としては、種々のポリソルベート(USP/NF名)安定化剤(例えば、ポリソルベート80)が挙げられるがこれらに限定されない。他の適切な表面活性剤としては、TWEENTM(例えば、TWEEN80)および商品名PLURONICTMで販売される表面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
特定の処方物においては、表面活性剤は含有されないが、他の処方物においては含有される。処方物に添加される場合、表面活性剤の濃度は変動し得るが、一般に、液体処方物の約0.01%(w/v)〜約0.5%(w/v)の範囲である。特定の処方物について、この表面活性剤の濃度は、約0.01%(w/v)〜0.1%(w/v)または0.02%(w/v)〜0.1%(w/v)の範囲である。したがって、種々の処方物は、少なくとも0.01%(w/v)、0.025%(w/v)、0.05%(w/v)、0.075%(w/v)、0.1%(w/v)、0.2%(w/v)、0.3%(w/v)または0.4%(w/v)の表面活性剤を含有するが、約0.5%(w/v)未満である。この濃度は、投与される場合、肺組織に悪影響をもたらすレベルを超えるべきでない。
【0043】
(E.抗酸化剤)
本明細書中で使用される場合、「抗酸化剤」は、当該分野におけるその一般的な意味を有する。抗酸化剤とは、一般的に、酸化プロセスの間の酸化、特にAATのアミノ酸残基の酸化を阻害する物質をいう。処方物中の抗酸化剤の目的は、例えば、タンパク質の活性および/または安定性のために重要なアミノ酸の酸化を防止することである。例えば、AATは、重要なメチオニン残基(酸化された場合、活性の減少をもたらす)を含む。薬学的組成物中で利用される多くの抗酸化剤は、処方物中に組み込まれ得る。例示的な抗酸化剤としては、メチオニン、グルタチオン、システインおよびアスコルビン酸が挙げられるが、当該分野で公知の他の抗酸化剤も、同様に使用され得る。例えば、いくつかの処方物は、N−アセチルシステインを含有する。
【0044】
液体形態において、抗酸化剤のレベルは、一般に、約1mM〜10mMである。したがって、種々の処方物は、約1mM、2mM、4mM、5mM、6mM、8mMまたは10mMの抗酸化剤を含有するが、特定の処方物は、それより多少多くまたは少なく含有し得る。
【0045】
(F.緩衝液)
噴霧化され得るか、または乾燥粉末からエアロゾルへ変換され得、そして肺組織に適合性の種々の緩衝液は、代表的に、処方物中に含有され得る。この緩衝液はまた、pH約6.5〜7.5の間のpH(この範囲のpH値は、肺に適合可能であるため)における緩衝化能力を提供する。特定の処方物は、7〜7.5の間のpHを有し;他の組成物は、7.2〜7.5の間のpHを有する。他の処方物は、多少低いpH(例えば、6.6〜6.8)を有する。いくつかの例において、処方物は、リン酸緩衝液を含有する。なぜならば、リン酸緩衝液は、所望されるpH範囲にわたる良好な緩衝化能力を有し、かつ比較的安価なためである。しかし、他の緩衝液(例えば、TRIS)もまた、使用され得る。
【0046】
(G.さらなる任意の成分)
特定の処方物は、AAT欠損に関連することもある種々のほかの症状に対処するための種々の任意の成分を含有し得る。いくつかの組成物は、他のセリンプロテアーゼインヒビター(例えば、以下の節に列挙される)を含有する。他の組成物は、肺結合組織の分解に関連する炎症を回復するのに有効な物質を含有し得る。このような抗炎症剤は、当該分野で一般的に公知の抗炎症剤のいずれかより選択され得るが、ただし、これらは、肺組織に適合性であり、噴霧され得るか、エアロゾルへ変換され得る。例えば、特定の処方物は、コルチコステロイドを含有し得る。このような化合物の特定の例としては、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、プレドニゾン、吉草酸ベクロメタゾン、吉草酸ヒドロコルチゾンおよびハロシノニド(halocinonide)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
(H.粉末組成物)
本明細書中に記載される組成物を含む液体処方物は、粉末を形成するために凍結乾燥され得る。従って、液体処方物(例えば本明細書中に記載される)を凍結乾燥することにより調製される粉末処方物もまた、提供される。以下により詳細に議論されるように、このような組成物は、乾燥粉末のエアロゾルとして投与され得る。あるいは、この粉末は、以下に記載される種々の選択肢に従って投与され得る液体処方物を形成するために、再水和され得る。
【0048】
(I.バリエーション)
前述の議論は、AAT処方物に焦点を当てたが、すぐ上に記載された成分が、種々の他のタンパク質を含む処方物を調製するために、上に列挙される濃度で配合され得る。この処方物は、本質的に任意の治療タンパク質を含有し得る。このタンパク質は、水溶液に溶解される場合噴霧され得るか、または乾燥粉末からエアロゾルに変換され得る。したがって、例えば、このタンパク質は、AATが属する血漿の血清プロテアーゼインヒビターの一般クラス(種々のセリンプロテアーゼインヒビターを含む)のメンバーであり得る。例示的なセリンプロテアーゼとしては、肥満細胞、好中球、好酸球および/または好塩基球から得られ得るもの(例えば、エラスターゼ、カテプシン−G、キニン(kinin)、腫瘍壊死因子、コラゲナーゼ、キモトリプシン、トリプターゼ、カリクレイン(kalikrein)およびカイメース)が挙げられるがこれらに限定されない。この処方物に含有され得るセリンプロテアーゼインヒビターの特定の例としては、C−反応性タンパク質、αシステインプロテアーゼインヒビター、C−1−インヒビター、α2−マクログロブリン、α2−抗プラスミン、セリンアミロイドAタンパク質、分泌性白血球プロテアーゼインヒビター、気管支粘膜インヒビター(bronchial mucous inhibitor)およびインターαトリプシンインヒビター(inter−aipha−trypsin inhibitor)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0049】
(J.貯蔵寿命)
提供される処方物は、その本来の活性を実質的に、少なくとも2ヶ月、4ヶ月、6ヶ月、8ヶ月、10ヶ月または12ヶ月以上の間保持し得る。例えば、凍結乾燥されて−70℃または25℃で保存される処方物は、代表的に6ヶ月貯蔵される場合にその活性の少なくとも70%〜95%を保持し得る。いくつかの凍結乾燥された組成物は、6ヶ月以上貯蔵される場合に90%、95%、98%以上の活性を保持する。より高い温度(例えば40℃〜50℃)においてさえ、凍結乾燥された組成物は、6ヶ月の期間にわたってその本来の活性の少なくとも60%〜80%を保持する。特定の組成物は、不安定な組成物の5000倍〜8000倍安定であることが見出された。組成物は、少なくとも6ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月またはそれ以上でさえ、薬学的使用のために安定かつ適切であり得る。
【0050】
(IV.処方物および投与)
処方物の成分(例えば、タンパク質、炭水化物、表面活性剤、抗酸化剤および/または緩衝液)は、当該分野で標準的な方法にしたがってともに混合される。いくつかの例において、例えば、濃縮されたタンパク質溶液は、処方物の他の成分を含有する溶液の容量と混合される。特定の例として、濃縮されたタンパク質溶液の4容量(例えば、60mg/ml〜65mg/ml)は、他の成分の5×混合物の1容量と混合されて、約48mg/ml〜約52mg/mlの濃度のタンパク質、ならびに前述で特定された範囲の濃度の他の成分を有する最終溶液が得られる。この得られた溶液は、この溶液を滅菌するために0.2ミクロンのフィルタを通されて濾過され、その後、滅菌されたガラスバイアルに移される。これらのバイアルは、滅菌栓でシールされ、次いで凍結乾燥される。使用のために準備する場合、この組成物は、滅菌水を添加することより再形成され得る。さらなる詳細は、以下の実施例で提供される。
【0051】
薬学的組成物を処方するために使用される成分は、好ましくは、高い純度であり、実質的に、潜在的に夾雑物は含まない(例えば、少なくとも国内食品(National Food)(NF)等級、一般的には少なくとも分析等級(analytical grade)、そしてより代表的には少なくとも薬学的等級(pharmaceutical grade))。所与の化合物が、使用前に合成されるべき程度まで、得られた生成物は、代表的には、合成プロセスまたは精製プロセスの間に存在し得るいかなる潜在的に毒性の因子(特に、任意の内毒素)も実質的に含まない。組成物はまた、GMP条件下で作製される。
【0052】
処方物が乾燥粉末のエアロゾルとして送達される場合、粉末にされた処方物は、代表的に、肺深部(deep lung)へこの粉末の輸送を可能にするサイズにされる。適切な粒子サイズおよび乾燥粉末AAT処方物を調製するための方法に関する手引きは、米国特許第5,993, 783号(これは、本明細書中で全ての目的のためにその全体が参考として援用される)において提供される。
【0053】
(V.処置方法)
提供されるAAT処方物は、AAT欠損を有する患者またはこのような欠損に感受性の患者の治療処置および予防処置において使用され得る。このような方法は、AAT欠損に関連する有害な効果の回復または予防において有用である。
【0054】
本明細書中で使用される場合、用語「処置」とは、治療処置および/もしくは予防処置の両方をいう。この用語はまた、症状の重篤度および/もしくは頻度の減少、症状および/もしくはその根底にある原因の排除、症状の発症および/もしくはその根底にある原因の予防、ならびに/または損傷の改善もしくは回復をいうことを、広範に意味する。本明細書中で使用される場合、用語「患者」は、一般的に、AATが欠損したか、またはこのような欠損の危険性がある哺乳動物の患者をいうことを意味する。多くの場合、この処置方法は、ヒトを処置するために使用される。背景技術の節で議論されるように、AAT欠損は、遺伝的要因、環境要因、および生活スタイル(例えば、喫煙)の要因に相関する。
【0055】
AATは、一般に、処置方法において「有効量」で投与される。有効量とは、所望される効果(例えば、AAT欠損の回復)を提供する、物質の十分であるが非毒性の量をいう。治療的処置方法において、この処方物/組成物は、「治療有効量」で投与される。治療有効量は、AAT欠損を遅延させるかまたは回復するのに十分な量、この欠損を排除するのに十分な量、またはAAT欠損に関連する症状を治療するのに十分な量である。このような治療的方法は、いくつかの例において、下気道(例えば、肺の下部)のAATレベルが、AAT欠損を有さない個体の代表的なレベルになるまで続けられる。予防処置が施される場合、この処方物は、「予防有効量」で投与される。一般に予防有効量は、AAT欠損に感受性(例えば、遺伝的要因および他のリスク要因に起因する)の患者におけるAAT欠損の発症を遅延させるかまたは予防するのに十分な量である。
【0056】
一般に、この組成物は、患者の下気道(すなわち、肺の深部)に到達するように患者に投与される。液体処方物について、これは、代表的に当該分野で確立された手段に従って、再形成された液体処方物を噴霧することにより達成される。次いで、噴霧された処方物は、患者に吸入され得、このようにして、肺の深部の所望される領域に輸送される。当該分野で公知の種々の噴霧器のいずれも、この処方物を噴霧化するために利用され得る。本明細書中で開示される特定の処方物とともに使用され得る例示的な噴霧器としては、米国特許第5,150,071号;同第4,198,969号;同第4,253,468号;同第4,301,970号;同第4,453,542号;同第4,150,071号;および同第4,620,670号(これらの各々は、本明細書中で全ての目的のためにその全体が参考として援用される)において議論されるものが挙げられるが、これらに限定されない。噴霧器を使用するAAT処方物の送達に関する方法は、米国特許第5,618,786号および同第5,780,440号(これらの両方は、本明細書中で全ての目的のためにその全体が参考として援用される)において議論される。
【0057】
処方物が粉末であり、そして乾燥粉末として送達される場合、例えば、米国特許第5,993,783号において議論される噴霧器ならびに方法が使用され得る。
【0058】
当業者は、投与されるAATの量は、種々の要因に依存することを理解する。このような因子としては、患者の年齢および体重、投与の頻度、ならびにAAT欠損の重篤度(例えば、処置が予防的であるかまたは治療的であるか)が挙げられるがこれらに限定されない。毒性および治療効力は、組織培養および/または実験動物モデルにおける標準的な薬学的手順(例えば、LD50(集団の50%に対して致死性の用量)、およびED50(集団の50%において治療学的に有効な用量)を決定する工程を包含する)に従って決定され得る。特定の処置方法において、AAT投薬量は、1日あたり体重1kgあたり約0.1mg〜約10mgの範囲である。他の例において、投薬量は、1日あたり体重1kgあたり約1mg〜約5mgの範囲である。より重症でない症状を有する患者が、処置されるかまたは特定の予防方法における場合に、投薬量レベルは、1日あたり体重1kgあたり約5μg〜約100μgの多少低い範囲であり得る。
【0059】
この処方物は、患者のAAT欠損の重篤度および処方物中のAAT濃度に依存する種々のスケジュールに従って、主治医により調整され得る。それほど重篤でない場合、または予防的処置について、例えば、この処方物は、1日1回数日間ごとに投与されるのみであり得る。より重篤である場合は、処方物が1日数回(例えば、2〜4回)投与されることを必要とし得る。
【0060】
提供される処方物は、本質的にAATに応答性の任意の肺に関連する疾患(例えば、種々のAAT欠損性疾患)を処置するために投与され得る。したがって、例えば、AATがエラスターゼ、カテプシンGおよび/またはプロテイナーゼ3のインヒビターであることから、この処方物は、これらの酵素の活性に関連する肺疾患を処置するために使用され得る。AATはまた、好中球、肥満細胞およびT細胞の活性化を阻害することから、この組成物はまた、これらの細胞型の活性化に関連する疾患を処置するために使用され得る。処置され得る疾患の特定の例としては、肺気腫、ぜん息、成人呼吸促進症候群、新生児呼吸促進症候群、敗血症症候群および嚢胞性線維症が挙げられる。
【0061】
以下の実施例は、開示される処方物および方法の特定の局面を例示するために提供されるが、特許請求された本発明を限定すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0062】
(I.導入)
その天然の環境から取り出された場合のタンパク質は、その安定性に負に影響を及ぼし得る種々の状態に供され得る。AATの水溶液に関する研究は、AATの活性は、45℃で貯蔵された場合に7日間以内に48%に低下し得ることを示した。治療剤としてのAATの価値のために、安定したAAT処方物に対する実質的な必要性が存在する。
【0063】
rAATについての凍結乾燥処方物のスクリーニングを補助するために、9種類の処方物を配合し、凍結乾燥し、そして6ヶ月までの間、安定性について配置した。4種類の賦形剤をその処方物中に含めた:1)トレハロース(タンパク質安定剤)、2)Tween−80(表面活性剤)、3)メチオニン(抗酸化剤)、および4)リン酸ナトリウム(緩衝化剤)。9種類の処方物は、種々のレベルの、1)rAATタンパク質(5%(w/v)および10%(w/v))、2)トレハロース(0%(w/v)〜5%(w/v))および3)Tween−80(0.0%〜0.5%)を有した。全ての処方物は、10mMリン酸ナトリウムおよび5mMメチオニンを含有した。rAATの保存における処方物の利用性を、機能性活性、全タンパク質および凝集(すなわち、モノマー%)についてのアッセイを実施することにより評価した。これらの9種の処方物の組成を表1に要約する。
【0064】
(II.方法)
(A.緩衝液の調製)
配合のために必要な全ての緩衝液を、標準的な実験室条件下で調製した。周囲温度において試薬を計量し、脱イオン(DI)水に添加した。この溶液を混合し、必要なpHに調節し、DI水で必要な容量にした。次いで、この溶液を、0.22μフィルタを通して濾過した。
【0065】
代表的に、10mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pHを7.4に調節した)を調製した。次いで、必要量のトレハロース、Tween−80およびメチオニンをそのリン酸緩衝液に添加し、この溶液を混合し、必要なpHに調節してDI水で必要な容量にした。次いで、この溶液を0.22μフィルタを通して濾過した。
【0066】
(B.rAAT原薬(bulk drug substance)(BDS)の解凍および処理)
BDSを−70℃で貯蔵し、約30℃で解凍した。このBDSを、処方物1〜3および処方物4〜5の作製について、さらに処理することなく、「そのままで」使用した。しかし、処方物6〜9の作製については、異なるロットを使用した(10mMリン酸ナトリウム(pH7.4)の濃度に対して緩衝液の交換を必要とし、約50mg/ml〜約100mg/mlであった)。これらの工程の両方を、クロスフロー濾過(Tangential Flow Filtration)を使用することにより達成した。
【0067】
(C.rAAT BDSの処方および凍結乾燥)
全ての処方物は、標準的な実験室条件下で実施し、層流フード(laminar flow hood)下では実施しなかった。この処方物の緩衝液を調製し、これらの条件下でrAAT BDSと混合した。表1により、全ての生成物の溶液を調製して、最終組成物を達成した。
【0068】
部分的に栓をした後、温度プローブを、バイアルの内側に(各々の処方物について少なくとも1つ)入れた。標準的な熱電対(Omega熱電対)を使用し、ゴム栓中のせん孔した穴を通してそのバイアルの内側に固定した。チャンバの温度は、トレイを装填する場合に室温または室温+5℃であった。トレイを装填すると、凍結乾燥サイクルを開始した。
【0069】
(D.凍結乾燥後の試験(0ヶ月))
このケーキの外観を、凍結乾燥後に記録した。「スパーク試験」を使用した真空の存在について、各々のバイアルを試験した。各々の処方物からのバイアルを、2mlの注射用水(WFI)で再形成し、全タンパク質について(Practical Approaches to Protein Formulation Development,Byeong Chang and Susan Henderson,Rational Design of Stable Protein Formulations:Theory and Practice,John F.CarpenterおよびMark C.Manning編, Pharmaceutical Biotechnology 第13巻,Kluwer Academic/Plenum Publishers (2002),p.13)、機能性活性およびモノマー含量について試験した。
【0070】
トレイから出すときに、各々のバイアルを、凍結剤の標識でラベルした。次いで、このバイアルを、ラボシーラー(lab sealer)を用いて密閉した。安定性の研究のために、真空の全ての生成物バイアルを、−70℃、+5℃、+25℃、+40℃、+50℃、および+60℃のインキュベーターに入れた。最小限6個のバイアルを調製した。
【0071】
(E.安定性試験)
1.サンプルバイアルの取り出し:0ヶ月の試験後、処方物1〜9を、6種類の異なる温度(−70℃、+5℃、+25℃、+40℃、+50℃、および+60℃)における安定性に対して配置した。表2Aおよび2Bに示す時点において、サンプルバイアルを、適切な安定性チャンバから取り出した。各貯蔵温度から2つのバイアルを取り出し、ナンバー1およびナンバー2と標識した。各々のバイアルを、各月において、適切な時点の確認とともに標識した。バイアルを、室温に平衡化し、次の工程に進めた。
【0072】
2.再形成:各々のバイアルを、新しく開封したボトルから得た5.0mlの注射用水(WFI)で再形成した。各々のバイアルを、ゆっくりと回転し、溶解を完了した。全てのバイアルを、使用しない時点から氷水浴に入れた。
【0073】
3.安定性試験についての1.0mg/mlの希釈物の作製:1.0mg/mlの希釈物を、以下のとおりに作製した:各々のバイアルからの500μlの20mg/ml溶液を、15mlの遠心チューブ中の9.5mlの0.2M Tris・Cl(pH8.0)に添加した。各々のチューブのタンパク質濃度は、約1mg/mlであった。正確な濃度を、A280により検証した。A280の結果を使用して、各々の再形成したバイアル中の全タンパク質を計算した。2つの1mg/ml希釈液を、各々のサンプルバイアルから作製した。
【0074】
4.全タンパク質(A280):2セットの1mg/mlの希釈物を、このアッセイについて使用した。簡単に述べると、0.2M Tris Cl(pH8.0)をブランクとして使用した。次いで、100μlのTrisを、UVマイクロプレート上のいくつかのウェルに添加した。次に、100μlの各1mg/mlサンプルを、いくつかのウェルのそれぞれに添加して、このソフトウェアで予備測定した(pre−defined)。全てのサンプルをプレート上に装填すると、このプレートを、280nmおよび320nmで読み取った。データの出力を、ABS280、ABS320およびABS280ー320について得た。全タンパク質および活性の計算について使用したのはABS280ー320である。
【0075】
5.rAAT活性のアッセイ:2セットの1mg/ml希釈液を、活性のアッセイについて使用した。このアッセイは、rAATおよび膵臓のブタエラスターゼ(PPE)の、等モルの共有結合複合体を形成する能力に基づいている。参照曲線を、種々の量のPPEの存在する基質の光学的応答から生じさせる。この曲線を利用して、所与の量のrAATおよびPPEから形成されたPPE−rAAT複合体の%を決定することによりrAATの機能性活性を計算する。代表的には、この値を、rAATのモルあたりのPPEのモルで表現する。組換えα1−抗トリプシンの活性を、膵臓ブタエラスターゼの濃度を変化しながら、30℃で30分間インキュベートすることにより、決定する。このインキュベーションの間、rAATは、PPEの一部に結合し、これは、試験するrAATの希釈に依存する。このインキュベーション期間後、色素基質(Suc−A−A−A−pNA)をこの反応混合物に添加する。この発色団は、rAATにより結合されないPPEにより切断される。放出されたp−ニトロアニリンは、405nmにおいて分光光度法で測定される黄色を発色する。阻害%を、濃度変化におけるPPE参照を使用し、そして試験サンプルについて得られた吸光値を比較することにより定量する。AAT活性は、米国特許第4,931,373号に記載されるとおりに測定し得る。
【0076】
6.SEC−HPLC/UVアッセイによるrAATの凝集:2セットの1mg/ml希釈液を、サイズ排除HPLC分析を使用する凝集アッセイのために使用した。異なる凝集状態を表すピークを検出し、そしてカラムから溶離したタンパク質として記録した。主要なHPLCパラメータは以下である:a)タンパク質濃度:1mg/ml;b)希釈用緩衝液:0.2M Tris Cl(pH8.0);c)移動相:200mM KCl、20mM NaHPO、5mM クエン酸ナトリウム(pH7.5);d)HPLCカラム:Guard SWxlガードカラム,6.0mm × 40mm,7μm粒子サイズ,TosoHaas part #08543を有する、TSK−GEL G3000 SWXL,7.8mm × 300mm,5μm粒子サイズ,Toso Haas part #08541;e)ポンプ勾配:定組成;f)注入量:100μl;g)流速:0.3ml/分;h)検出器:Variable Wavelength Detector(VWD)、およびf)検出波長:280nm。
【0077】
(III.安定性の評価)
F1〜F9の全ての処方物を、0〜6ヶ月間の安定性について配置した。この処方物を、前述のとおりに、種々の温度レベルで配置した。各々の処方物の全タンパク質、活性および凝集を、適切な温度および貯蔵条件において決定した。n/aとして表されるサンプルは、安定性の取り出しおよびその後の試験を実施しなかったことを示す。
【0078】
(A.タンパク質および活性の回復)
9種類の処方物(F1〜F9)の各々の全タンパク質および活性を、0〜6ヶ月間の貯蔵の間、−70℃、5℃、25℃、40℃、50℃および60℃の温度で測定した。ABS280ー320値を、集計した。この値を、rAATの吸光係数(0.485)で除算し、そしてその商に50を乗算する(50倍希釈の因子を考慮にいれるため)ことにより、処方物の全タンパク質を決定した。各々の処方物の活性を、表2Aおよび表2Bに示す。
【0079】
(B.モノマー含量の回復)
9種類の処方物(F1〜F9)の各々の凝集を、0〜6ヶ月間の貯蔵の間、−70℃、5℃、25℃、40℃、50℃および60℃の温度で測定した。HPLCクロマトグラムを、各々の処方物の凝集およびモノマー含量の両方について割合を計算した。
【0080】
(C.rAAT濃度の効果)
2種類の処方物の安定性に対するrAAT濃度の効果を、処方物F1およびF2のモノマー含量を決定することにより、試験した。両方の処方物は、10mMリン酸ナトリウム(pH7.4)中のrAATタンパク質のみを含有した。処方物F1は、50mg/mlのrAATを含有し、一方、処方物F2は、100mg/mlのrAATを含有した。
【0081】
(D.Tween−80濃度の効果)
rAAT処方物の安定性に対するtween−80の濃度の効果を、処方物F5、F6、F7およびF8のモノマー含量を定量することにより試験した。各々の処方物は、10mMリン酸ナトリウム(pH7.4)中に50mg/mLのrAAT、2.5%トレハロース、5mMメチオニン、および種々の割合のtween−80を含有した。
【0082】
(E.トレハロース濃度の効果)
rAAT処方物の安定性に対するトレハロース濃度の効果を、処方物F1〜F9のモノマー含量を定量することにより、試験した。各々の処方物は、種々の割合のトレハロースを含有した(個々の組成物については、表1を参照のこと)。トレハロースのこれらの機能%として、これらの処方物のモノマー含量を、表3Aおよび3Bに示す。
【0083】
(IV.考察)
(A.安定性の評価)
(1.タンパク質の回復)
9種の処方物は全て、示された温度における0〜6ヶ月の貯蔵において全タンパク質の明らかな変化がないこと示した。9種の処方物の間で変化は存在した(15%以内)が;これは、おそらくアッセイ固有の多様性に起因し、そしておそらくマイクロウェルプレートの使用に関連する。
【0084】
(2.活性の回復)
−70℃、5℃、25℃、40℃および50℃の貯蔵温度では、6ヶ月の貯蔵期間に渡って一定した活性レベルを示した。例えば、25℃にて貯蔵された処方物F5およびF6は、それぞれ、0ヶ月の貯蔵の活性レベルについて81.7%および78.1%を示し、6ヶ月貯蔵の活性レベルについて77.2%および82.4%を示した。−70℃〜50℃における0〜6ヶ月の間貯蔵された処方物のいずれにも活性における明らかな変化は存在しなかった。存在するなんらかの変化は、おそらくアッセイの固有の多様性に関連し、そしておそらくマイクロウェルプレートの使用に関連する。
【0085】
活性においてわずかに見られた変化は、60℃にて貯蔵された処方物F2、F4およびF9に付随した。処方物F2は、3ヶ月の貯蔵において、62.4%阻害(0ヶ月)から39.4%への23%の活性の減少を示した。同様の結果は、処方物F4に関しても見られた。処方物F4において、0ヶ月のサンプルは、64.6%の活性を有し、一方で、60℃で4ヶ月貯蔵されたそのサンプルは、39.7%を有した。これらの2つの処方物の間の共通のつながりは、どちらもトレハロースを含有しないことである。処方物中に存在するトレハロースの欠如と60℃における0〜4ヶ月の貯蔵による活性の明らかな減少との間に関連が存在する可能性があり得る。処方物F9は1%のトレハロースを含有し、一方で残りの6種の処方物は、2.5%を含有した。F9の活性は、60℃貯蔵の0ヶ月における76.7%阻害から6ヶ月の貯蔵における49.1%での可能な減少を有した。それぞれ、0ヶ月で78.1%、81.6%および78.9%の活性を有し、6ヶ月の貯蔵で69.7%、72.6%および66.1%の活性を有する処方物F6、F7およびF8と比較して、処方物F9は、6ヶ月の貯蔵においてより大きな減少を示した。このことは、活性の減少と、処方物中に存在するトレハロースのより低い割合との間の関連の可能性を示す。
【0086】
(B.モノマー含量の回復)
(1.rAAT濃度の効果)
処方物F1は、50mg/mlのrAATを含有し、一方で処方物F2は、100mg/mlのrAATを含有した(両方とも10mM リン酸ナトリウム、pH7.4)。0〜3ヶ月の貯蔵期間において、処方物F1とF2とのモノマー含量における明らかな差は存在しなかった。例えば、処方物F1は、60℃にて3ヶ月の貯蔵の際に49.8%のモノマーを含有した。両処方物とも0ヶ月の貯蔵における95.5%のモノマー含量で開始して、同じ条件下で処方物F2は、44.0%のモノマーを含有した。したがって、F1と比較した場合の処方物F2のタンパク質のより高い濃度は、処方物の安定性に対する有意な効果を有さなかった。
【0087】
(2.Tween−80濃度の効果)
4種類のrAAT処方物の安定性に対するTween−80濃度の効果を、Tween−80の濃度を変化した各々の処方物のモノマー含量%を定量することにより研究した。Tween−80は、処方物F5、F6、F7およびF8の安定性に対する明らかな効果を有さなかった。モノマーの割合は、全ての貯蔵条件下で、全ての処方物の間で一貫していた。例えば、0%のTween−80を有する処方物F6は、60℃にて6ヶ月の貯蔵の際に84.2%モノマーを示し、一方で処方物F7(0.02% tween−80)およびF8(0.10% tween−80)は、それぞれ、82.0%および81.4%のモノマー含量を示した。
【0088】
(3.トレハロース濃度の効果)
rAAT処方物の安定性に対するトレハロース濃度の効果を研究するために、9種全ての処方物F1〜F9のモノマー含量を分析した。処方物F3〜F9は、6ヶ月の貯蔵において、モノマー含量におけるそれらの初期値からの明らかな変化を示さず、処方物F1およびF2は、−70℃、5℃および25℃にて3ヶ月の貯蔵において有意な変化を示さなかった(表3A)。最初の観察可能な変化は、40℃の貯蔵温度において生じ、60℃にてもっとも劇的な効果を生じる。0%のトレハロースを含有する処方物F1、F2およびF4のモノマー含量は、それぞれ、0ヶ月の貯蔵における95.5%、NDおよび94.1%から、60℃における2ヶ月の貯蔵後に59.4%、53.6%および60.5%に減少した(表3B)。このことは、残りの処方物と比較して、モノマー含量における明確な減少である。
【0089】
1.0%のトレハロースを含有する処方物F9はまた、モノマー%(本来の%は、98.0%)においてわずかな減少を示し、6ヶ月の貯蔵後に57.8%へ減少した。これは、モノマー含量において、2.5%または5.0%のトレハロースを含有する処方物よりもわずかに高い減少であった。これらの処方物F6、F7およびF8は、それぞれ、98.3%、98.1%および97.4%のそれらの初期値から、6ヶ月の貯蔵後に84.2%、82.0%および81.4%のモノマーに減少した。したがって、最小限2.5%のトレハロースを含有する処方物は、60℃にて6ヶ月の貯蔵の際に、モノマー含量におけるより少ない減少を維持するもっとも良い安定性を示した。
【0090】
(V.結論)
試験した処方物は全て、安定化剤を含有しないAAT組成物に対して安定性において有意な改善を示した。炭水化物(例えば、トレハロース)の含有は、試験された種々の因子の安定性に対して最も適切な有益な効果を有した。表面活性剤の含有は、AATタンパク質の濃度が増加するにつれて、安定性に対するより少ない効果を有した。2.5%のトレハロースを含有する処方物は、5%を含有する処方物と同様の挙動を示す。最小量の賦形剤は、生成物の開発において理想的であることから、5%のrAAT、0.1%または0.02%の表面活性剤(例えば、Tween−80)、5mM 抗酸化剤(例えば、メチオニン)および10mM緩衝液(例えば、リン酸ナトリウム(pH7.4))とともに約2.5%の炭水化物(例えば、トレハロース)の組成物を含有する処方物は、良好なベース処方物を提供する。
【0091】
本明細書中に記載される実施例および実施形態は、例示の目的のみであり、これらの考慮内の種々の改変または変化が当業者に示唆され、そして本出願の精神および範囲内、ならびに添付の特許請求の範囲内に包含されることが理解される。本明細書中で引用される全ての出版物、特許および特許出願は、全ての目的のためのその全体が本明細書中で参考として援用される。
【0092】
(表1.rAAT処方物1〜9(F1〜F9)の組成)
【0093】
【表1】

注記:全ての処方物は、10mMリン酸ナトリウム(pH7.4)で作製した。
【0094】
(表2A.−70℃、5℃および25℃にて0〜6ヶ月の貯蔵での処方物F1〜F9の活性(%))
【0095】
【表2A】

(表2B.40℃、50℃および60℃にて0〜6ヶ月の貯蔵での処方物F1〜F9の活性(%))
【0096】
【表2B】

(表3A.−70℃、5℃および25℃の温度にて0〜6ヶ月の貯蔵でのモノマー含量(%)に対するトレハロース濃度の効果)
【0097】
【表3A】

処方物の組成について表1を参照のこと。
【0098】
(表3B.40℃、50℃および60℃の温度にて0〜6ヶ月の貯蔵でのモノマー含量(%)に対するトレハロース濃度の効果)
【0099】
【表3B】

処方物の組成について表1を参照のこと。
【0100】
【化1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
α1−抗トリプシン(AAT)、安定化炭水化物、表面活性剤および抗酸化剤を含有する薬学的組成物であって、該AATは、天然のAAT、組換えAAT、またはAAT改変体である、組成物。
【請求項2】
前記組成物が、吸入療法によって患者へ投与するのに適切な形態である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、散剤として投与される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、噴霧化され得る液体として処方される、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記AATが、天然のAATである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記AATが、組換えAATである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記AATが、AAT改変体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記AATが、グリコシル化されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記AATがグリコシル化されていない、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記安定化炭水化物が、ラクトース、スクロース、トレハロース、ラフィノース、マルトデキストリンおよびマンニトールからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記安定化炭水化物が、トレハロースである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記抗酸化剤が、メチオニン、グルタチオン、システイン、アルコルビン酸およびN−アセチルシステインからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
請求項3に記載の組成物であって、前記AAT、炭水化物、表面活性剤および抗酸化剤は、前記散剤が患者への投与のために水溶液中で可溶化される場合、該AATの濃度が1mg/ml〜100mg/mlであり、該炭水化物の濃度が1%(w/v)〜5%(w/v)であり、該表面活性剤の濃度が0.01%(w/v)〜0.5%(w/v)であり、そして該抗酸化剤の濃度が1mM〜10mMであるような量で存在する、組成物。
【請求項14】
前記AATの濃度が、10mg/ml〜50mg/mlである、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記AATの濃度が、1mg/ml〜100mg/mlであり、前記炭水化物の濃度が、1%(w/v)〜5%(w/v)であり、前記表面活性剤の濃度が、0.01%(w/v)〜0.5%(w/v)であり、そして前記抗酸化剤の濃度が、1mM〜10mMである、請求項4に記載の組成物。
【請求項16】
前記AATの濃度が、10mg/ml〜50mg/mlである、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
請求項3に記載の組成物であって、緩衝液をさらに含有し、ここで:
(a)前記炭水化物がトレハロースであり、前記抗酸化剤がメチオニンであり;そして
(b)前記AAT、トレハロース、表面活性剤およびメチオニンは、前記散剤が患者への投与のために水溶液中で可溶化される場合、(i)該AATの濃度が10mg/ml〜50mg/mlであり、(ii)該トレハロースの濃度が10mg/ml〜50mg/mlであり、(iii)該表面活性剤の濃度が0.01%(w/v)〜0.5%(w/v)であり、そして(iv)該メチオニンの濃度が1mM〜10mMであるような量で存在する、
組成物。
【請求項18】
請求項4に記載の組成物であって、緩衝液をさらに含有し、ここで:
(a)前記AATの濃度が10mg/ml〜50mg/mlであり;
(b)前記炭水化物がトレハロースであり、該トレハロースの濃度は10mg/ml〜50mg/mlであり;
(c)前記表面活性剤の濃度が0.01%(w/v)〜0.5%(w/v)であり;そして
(d)前記抗酸化剤がメチオニンであり、該メチオニンの濃度が、1mM〜10mMである、
組成物。
【請求項19】
組換えα1−抗トリプシン(AAT)、安定化炭水化物、ならびに表面活性剤および抗酸化剤からなる群より選択される少なくとも1種のさらなる安定化剤を含有する薬学的組成物であって、ここで、該AAT/炭水化物の比(重量:重量)は、1:1〜5:1であり、そしてさらに、該AATは、天然のAAT、組換えAATまたはAAT改変体である、薬学的組成物。
【請求項20】
前記比が、1:1〜2:1である、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記安定化炭水化物が、トレハロースである、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
前記組成物が、前記表面活性剤を含有する、請求項19に記載の組成物。
【請求項23】
前記組成物が、前記抗酸化剤を含有する、請求項19に記載の組成物。
【請求項24】
前記組成物が、前記表面活性剤および前記抗酸化剤の両方を含有する、請求項19に記載の組成物。
【請求項25】
前記表面活性剤がポリソルベート80であり、前記抗酸化剤がメチオニンである、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記組成物が固体として処方される、請求項19に記載の組成物。
【請求項27】
前記組成物が液体として投与される、請求項19に記載の組成物。
【請求項28】
前記AATが天然のAATである、請求項1に記載の組成物。
【請求項29】
前記AATが組換えAATである、請求項1に記載の組成物。
【請求項30】
前記AATがAAT改変体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項31】
前記AATがグリコシル化されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項32】
前記AATがグリコシル化されていない、請求項1に記載の組成物。
【請求項33】
α1−抗トリプシン(AAT)欠損に関連する肺疾患を処置するための方法であって、該方法は、有効量のAAT、安定化炭水化物、表面活性剤および抗酸化剤を含有する薬学的組成物を患者の肺に投与する工程を包含し、ここで、該AATは、天然のAAT、組換えAATまたはAAT改変体である、方法。
【請求項34】
前記組成物は吸入により投与される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記組成物は固体であり、そして前記患者による吸入のために該固体をエアロゾルへ変換することにより投与される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記組成物は液体であり、そして前記患者による吸入のために該液体を噴霧化することにより投与される、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記疾患が、エラスターゼ、カテプシンGおよび/またはプロテイナーゼ3の活性に関連する肺疾患である、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記疾患が気腫である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記疾患は、好中球、肥満細胞またはT細胞の活性化に関連する肺炎症性疾患である、請求項33に記載の方法。
【請求項40】
前記疾患がぜん息である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記疾患が、成人呼吸促進症候群、新生児呼吸促進症候群または敗血症症候群である、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記患者は、前記疾患に感受性であり、そして前記薬学的組成物は予防有効量で投与される、請求項33に記載の方法。
【請求項43】
前記患者は前記疾患を有し、そして前記薬学的組成物が、治療有効量で投与される、請求項33に記載の方法。
【請求項44】
前記AATが、天然に存在するAATである、請求項33に記載の方法。
【請求項45】
前記AATが、組換えAATである、請求項33に記載の方法。
【請求項46】
前記AATが、AAT改変体である、請求項33に記載の方法
【請求項47】
前記AATが、グリコシル化されている、請求項33に記載の方法。
【請求項48】
前記AATが、グリコシル化されていない、請求項33に記載の方法。
【請求項49】
前記安定化炭水化物が、トレハロースである、請求項33に記載の方法。
【請求項50】
前記抗酸化剤が、メチオニン、グルタチオン、システイン、アスコルビン酸およびN−アセチルシステインからなる群より選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項51】
請求項35に記載の方法であって、前記AAT、炭水化物、表面活性剤および抗酸化剤は、前記散剤が患者への投与のために水溶液中で可溶化される場合、該AATの濃度が1mg/ml〜100mg/mlであり、該炭水化物の濃度が1%(w/v)〜5%(w/v)であり、該表面活性剤の濃度が0.01%(w/v)〜0.5%(w/v)であり、そして該抗酸化剤の濃度が1mM〜10mMであるような量で存在する、方法。
【請求項52】
前記AATの濃度が、10mg/ml〜50mg/mlである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記AATの濃度が1mg/ml〜100mg/mlであり、前記炭水化物の濃度が1%(w/v)〜5%(w/v)であり、前記表面活性剤の濃度が0.01%(w/v)〜0.5%(w/v)であり、そして前記抗酸化剤の濃度が1mM〜10mMである、請求項36に記載の方法。
【請求項54】
前記AATの濃度が、10mg/ml〜50mg/mlである、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
請求項35に記載の方法であって、緩衝液をさらに含有し、ここで:
(a)前記炭水化物がトレハロースであり、前記抗酸化剤がメチオニンであり;そして
(b)前記AAT、トレハロース、表面活性剤およびメチオニンは、前記散剤が患者への投与のために水溶液中で可溶化される場合、(i)該AATの濃度が10mg/ml〜50mg/mlであり、(ii)該トレハロースの濃度が10mg/ml〜50mg/mlであり、(iii)該表面活性剤の濃度が0.01%(w/v)〜0.5%(w/v)であり、そして(iV)該メチオニンの濃度が1mM〜10mMであるような量で存在する、
方法。
【請求項56】
請求項36に記載の方法であって、緩衝液をさらに含有し、ここで:
(a)前記AATの濃度が10mg/ml〜50mg/mlであり;
(b)前記炭水化物がトレハロースであり、該トレハロースの濃度は10mg/ml〜50mg/mlであり;
(c)前記表面活性剤の濃度が0.01%(w/v)〜0.5%(w/v)であり;そして
(d)前記抗酸化剤がメチオニンであり、該メチオニンの濃度が、1mM〜10mMである、
方法。
【請求項57】
α1−抗トリプシン(AAT)欠損に関連する肺疾患を処置するための方法であって、該方法は、グリコシル化されていない組換えAAT、安定化炭水化物、ならびに表面活性剤および抗酸化剤からなる群より選択される少なくとも1つのさらなる安定化性薬剤を含有する薬学的組成物を、患者の肺に投与する工程を包含し、ここで該AAT/炭水化物の比は、1:1〜5:1である、方法。
【請求項58】
前記比が1:1〜2:1である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前期組成物が吸入により投与される、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
前記組成物が固体であり、そして前記患者による吸入のために該固体をエアロゾルへ変換することにより投与される、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記組成物は液体であり、そして前記患者による吸入のために該液体を噴霧化することにより投与される、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
前記疾患は、エラスターゼ、カテプシンGおよび/またはプロテイナーゼ3の活性に関連する肺疾患である、請求項59に記載の方法。
【請求項63】
前記疾患が気腫である、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記疾患は、好中球、肥満細胞またはT細胞の活性化に関連する肺炎症性疾患である、請求項59に記載の方法。
【請求項65】
前記疾患がぜん息である、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記疾患は、成人呼吸促進症候群、新生児呼吸促進症候群または敗血症症候群である、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記安定化炭水化物がトレハロースである、請求項59に記載の方法。
【請求項68】
前記組成物は、表面活性剤および抗酸化剤の両方を含有し、該表面活性剤がポリソルベート80であり、そして該抗酸化剤がメチオニンである、請求項59に記載の方法。

【公表番号】特表2007−511539(P2007−511539A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540034(P2006−540034)
【出願日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【国際出願番号】PCT/US2004/038650
【国際公開番号】WO2005/048985
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(501453189)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (289)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER HEALTHCARE S.A.
【出願人】(506158898)アリバ ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】