説明

がん撮像のためのシステム、方法及び装置

【課題】PET−MRI複合システムを用いたがん撮像のための方法及び装置を提供する。
【解決手段】方法は、がん撮像のコンテキストにおいてPETとMRIの両方に関する性能特性を利用している。身体の大きな領域をがんに対する高い感度で評価するためにMRIが使用されており(304)、また次いで位置特定された関心対象エリアに関して生理学的情報を提供するためにPETが使用されている(308)。任意選択では次いで、位置特定された関心対象エリアを高い空間分解能及び追加の組織コントラストを伴って再スキャン(312)するためにMRIを再度使用し、PET情報を補完するような解剖学的情報及び軟部組織コントラストが提供される。PET−MRI複合システムを使用することによって、これら2つの様式からの撮像データの身体内の同じ部位への正確な基準付けが保証される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的には陽電子放出断層(PET)及び磁気共鳴撮像(MRI)に関し、より具体的には、PET−MRI複合システムを用いてがんを撮像するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
PET撮像では、関心対象物において陽電子放出放射性核種の断層画像を生成することが必要である。放射性核種ラベル付け薬剤(すなわち、「放射性医薬品」)が撮像対象に投与される。この対象は検出器リング及び検出電子回路を備えたPET撮像システムの内部に位置決めされる。放射性核種が崩壊すると、「陽電子」と呼ぶ正電荷のフォトンが放出される。FDG(すなわち、18F−フルオロデオキシグルコース)などよく使用される放射性医薬品では、こうした陽電子は電子と衝突して相互に消滅するまでに対象の組織内を数ミリメートルしか移動しない。陽電子/電子消滅の結果、概ね511keVのエネルギーを有する1対のガンマ線が互いに反対方向に放出される。
【0003】
検出器リングのシンチレータによって検出されるのはこのガンマ線である。これらの構成要素内のシンチレーション材料にガンマ線が当たると光が放出され、この光はフォトダイオードや光電子増倍管などの光検出器構成要素によって検出される。光検出器からの信号はガンマ線の入射として処理される。2本のガンマ線が相対して位置決めされたシンチレータに概ね同時に当たると、同時事象が記録される。データソートユニットがこの同時事象を処理し、どれが真の同時発生事象であるかを決定すると共に不感時間及び単独ガンマ線検出を示すデータを分類する。この同時発生事象は分類されかつ統合されてPETデータのフレームが形成され、これを対象内の放射性核種ラベル付け薬剤の分布を表した画像に再構成することができる。
【0004】
MRIは、X線その他の電離放射線を使用することなく人体内部の像を作成できる医用撮像様式の1つである。MRIは強力なマグネットを用いて強力で均一な静磁場(すなわち、「主磁場」)を作成している。この主磁場内に人体(または、人体の一部)が配置されると、組織の水にある水素原子核に関連する核スピンが偏向状態になる。このため、このスピンに関連する磁気モーメントは主磁場方向に沿って優先的に整列状態になり、この軸(慣例では「z軸」)に沿ってわずかな正味組織磁化が生じることになる。MRIシステムはさらに、電流が加えられたときに振幅がより小さく空間的に変動する磁場を生成する傾斜コイルと呼ばれる構成要素を備える。典型的には傾斜コイルは、z軸に沿って整列すると共にx軸、y軸またはz軸のうちの1つに沿った位置と共に振幅が直線的に変動する磁場成分を生成させるように設計されている。傾斜コイルの効用は、単一の軸に沿って磁場強度に対して、またこれに伴って核スピンの共鳴周波数に対してわずかな傾斜を生成することにある。直交する軸を有する3つの傾斜コイルを用いると、身体内の各箇所における標識共鳴周波数を生成することによってMR信号を「空間エンコード」することができる。水素原子核の共鳴周波数位置またはその近傍の周波数のRFエネルギーのパルスを生成するためには無線周波数(RF)コイルが使用される。これらのコイルを用いると、核スピン系に対して制御された方式でエネルギーを加えることができる。次いで核スピンが緩和してその静止エネルギー状態まで戻されるに連れて、核スピンはRF信号の形式でそのエネルギーを手放す。この信号は、MRIシステムによって検出されると共に、複数のこうした別の信号と組み合わせられ、コンピュータ及び周知のアルゴリズムの利用によってこれらの信号からMR画像を再構成することができる。
【0005】
がんの検出及び診断の際には、PETとMRIの両方がルーチンで使用される。臨床設定においてPET撮像は、細胞の代謝を計測するためにグルコース類似物である18F−フルオロデオキシグルコース(18F−FDG)を用いて実施されるのが最も一般的である。18F−FDGは、細胞によって取り込まれると共に、並行してグルコースまでリン酸化される。細胞が取り込んだ18F−FDGの量は、その細胞によって実施されるグルコース代謝量に関する1つの尺度となる。がん細胞の大部分は代謝活性が上昇しており、通常の細胞と比較して18F−FDGをより高い率で取り込む。したがって18F−FDG取り込みが上昇した病巣域が悪性疾患に関するマーカーと見なされる。がん撮像におけるMRIの使用は主に、成長する悪性疾患の有無に関連する総体の解剖学的変化、あるいは微小血管解剖構造や生理学的な変化を検出することに依拠している。がんの検出及び診断のコンテキストでは、身体全体にわたってがん性病変を高感度で検出できるような幾つかのMRI技法が知られている。例えば、転移性の病変が暗いバックグラウンド上の明るい病巣領域として表現されるようなショートタウIR(Short Tau Inversion Recovery:STIR)法で重み付けしたシーケンスが使用されることがある。別法として、がん病変とバックグラウンド組織の間で画像コントラストを生成するためにMR造影剤が使用されることがある。MR造影剤はMR撮像の前に撮像対象に静注投与されることがある。例えば、成長が速い組織に特徴的である高い血管密度領域や漏洩性の血管壁内にプールされるような常磁性の造影剤が使用されることがあり、またT1重み付け画像上で高MRI信号として常磁性の造影剤が検出されることがある。がん細胞は、血管形成因子を放出することによってその環境内において血管密度の上昇及び血管透過性の上昇を促す。造影剤を用いてT1重み付け画像上で信号強度が上昇した病巣領域を検出することは、がんに関する高感度のインジケータとなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
がんに関する撮像の役目には、原発性の腫瘍の検出及び診断と、これに続く身体内の別の部位への疾患の転移性拡大の範囲を決定するための病期分類と、が含まれる。病期分類の用途では、全身性撮像方針が望ましいが、全身性撮像では大きな領域を妥当なスキャン時間内に高空間分解能かつ高検出感度で撮像する能力が要求される。全身性PET撮像では実用上不可能な長さのスキャン時間が要求される。例えばPETを用いた胴体部の撮像では、スキャン時間が30分必要となることがあり、また全身をカバーするには複数の別の撮像ステーションが要求されることになる。さらに目下のPETシステムによる全身性スキャンで達成可能な実用的な空間分解能は5〜10mmであり、微小ながんに対する感度としては受け入れられない。しかし、がんへの18F−FDGの取り込みは組織種別や臨床上攻撃性の挙動と相関性があり、またこれはがんの診断及び管理における重要なツールの1つとなる。目下のところ利用可能なテクノロジーを用いると、ミリメートル未満の分解能による全身性MRI検査は20分未満で完了することがある。全身性MRIはがんに対して極めて高い感度を示す。さらにMRIは解剖学的画像作成及び軟部組織コントラストを提供することができる。PET−MRI複合システムを用いるとMRIにより提供される解剖学的情報とPETにより提供される代謝情報との正確な相互位置合わせが得られる。したがって、これら2つの撮像様式に特有の長所を活用しているがん撮像のためのPET−MR複合システム及び方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態では、PET−MRIシステムにおけるがん撮像のための方法は、MR撮像プロトコルを用いて撮像対象内の第1の領域に対して特徴性を有する磁気共鳴(MR)画像を収集する工程と、該第1の領域のサブ領域である撮像対象の第2の領域を少なくとも該MR画像の特徴性に基づいて画定する工程と、該第2の領域の陽電子放出断層(PET)画像を収集する工程と、を含む。
【0008】
別の実施形態では、PET−MRIシステムにおけるがん撮像のための方法を実行するためのコンピュータ実行可能命令を有するコンピュータ読み取り可能な媒体は、MR撮像プロトコルを用いて撮像対象内の第1の領域に対して特徴性を有する磁気共鳴(MR)画像を収集するためのプログラムコードと、該第1の領域のサブ領域である撮像対象の第2の領域を少なくとも該MR画像の特徴性に基づいて画定するためのプログラムコードと、該第2の領域の陽電子放出断層(PET)画像を収集するためのプログラムコードと、を含む。
【0009】
別の実施形態では、PET−MRI複合システムは、撮像対象からのPET放出を検出するように位置決めされた検出器と該検出器からの出力を受け取るように結合させた同時事象プロセッサを有する陽電子放出断層(PET)撮像アセンブリと、マグネット、複数の傾斜コイル、無線周波数コイル、無線周波数送受信器システム及びパルス発生器モジュールを備えた磁気共鳴(MR)撮像アセンブリと、PET撮像アセンブリ及びMR撮像アセンブリと結合させると共に、MR撮像プロトコル及びMR撮像アセンブリを用いて撮像対象内の第1の領域に対して特徴性を有するMR画像を収集すること、該第1の領域のサブ領域である撮像対象の第2の領域を少なくとも該MR画像の特徴性に基づいて画定すること、並びにPETアセンブリを用いて該第2の領域のPET画像を収集すること、を実行するように構成させたプロセッサと、を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施形態について、同じ参照番号が対応する要素、類似の要素あるいは同様な要素を示している添付の図面において一例として例証しているが、これに限定されるものではない。
【0011】
以下の詳細な説明では、実施形態に対する完全な理解を提供するために多くの特異的な詳細を示している。しかしこの実施形態がこれらの特異的な詳細を伴わずに実施することもできることは当業者であれば理解されよう。別の点として、実施形態を不明瞭にしないようによく知られている方法、手順、構成要素及び回路については詳細に記載していない。
【0012】
がん撮像のコンテキストにおいて全体撮像の有効性を向上させるために、PETとMRIの両方に関する性能特性を活用しているがん撮像のためのPET−MRI複合システムが使用されることがある。先ずMRIが用いられ、がんに対する検出感度が高いMR撮像プロトコルを用いて身体の大きな領域が評価されることがある。MR画像上で位置特定された関心対象エリアを検出した後、次いでPETが用いられ該関心対象エリアを囲繞するさらに限定されたボリュームをスキャンすることがある。PETは、これらのより小さな領域にある組織に関する代謝情報を提供する。任意選択では、MRIを用いて高空間分解能及び追加的な組織コントラストによってこれら位置特定された関心対象エリアを再スキャンし、代謝PET情報を補完する高分解能の解剖情報を提供することがある。PET−MRI複合システムを利用すると、この2つの様式からの撮像データの身体内の同じ部位への正確な基準付けが保証される。
【0013】
図1を参照すると、本発明の実施形態を組み込んでいる例示的なPET−MR複合撮像システム10の主要コンポーネントを表している。このシステムの動作は、キーボードその他の入力デバイス13、制御パネル14及び表示画面16を含むオペレータコンソール12から制御を受けることがある。コンソール12は、オペレータが画像の作成及び表示画面16上への画像表示を制御できるようにする単独のコンピュータシステム20と、リンク18を介して連絡している。コンピュータシステム20は、例えばバックプレーン20aを用いて得られるものなど電気及び/またはデータ接続を介して互いに連絡させた多くのモジュールを含んでいる。データ接続は直接的な有線式リンクとすることがあり、また光ファイバ接続やワイヤレス通信リンク、その他とすることもある。モジュールには、画像プロセッサモジュール22と、CPUモジュール24と、画像データアレイを記憶するためのフレームバッファを含み得るメモリモジュール26と、が含まれる。代替的な一実施形態では、画像プロセッサモジュール22はCPUモジュール24に対する画像処理機能によって置き換えられることがある。コンピュータシステム20はさらに、永続的またはバックアップ記憶装置、ネットワークと接続されることがあり、あるいはリンク34を介して単独のシステム制御部32と連絡させることがある。入力デバイス13は、マウス、ジョイスティック、キーボード、トラックボール、タッチ作動スクリーン、光学読取り棒、音声制御、あるいは同様な任意の入力デバイスや同等の入力デバイスを含むことができ、また入力デバイス13は対話式幾何学指定のために使用することができる。
【0014】
システム制御部32は、電気接続及び/またはデータ接続32aを介して互いに連絡しているモジュールの組を含む。データ接続32aは直接的な有線式リンクとすることがあり、また光ファイバ接続やワイヤレス通信リンク、その他とすることもある。システム制御部32は通信リンク40を介してオペレータコンソール12に接続されている。システム制御部32は、実行すべきスキャンシーケンス(複数のこともある)を指示するオペレータからのコマンドをこのリンク40を介して受け取っている。システム制御コンピュータ32のモジュールには、通信リンク40を介してオペレータコンソール12に接続されたCPUモジュール36及びパルス発生器モジュール57が含まれる。MRデータ収集では、RF送信/受信モジュール38は、データ収集ウィンドウのタイミング及び長さに対応させるように発生させるRFパルス及びパルスシーケンスのタイミング、強度及び形状を記述した命令、コマンド及び/または要求を送信することによって、各スキャナ48に所望のスキャンシーケンスを実行するように指令している。このため送信/受信スイッチ44は増幅器46を介して、スキャナ48へのRF送信モジュール38からのデータの流れ、並びにスキャナ48からRF受信モジュール38へのデータの流れを制御している。システム制御部32はさらに、スキャン中に発生させる傾斜パルスのタイミング及び形状を指示するために1組の傾斜増幅器42と接続させている。
【0015】
システム制御部32が発生させる傾斜波形指令は、Gx増幅器、Gy増幅器及びGz増幅器を有する傾斜増幅器システム42に送られる。傾斜増幅器42はスキャナ48やシステム制御部32の外部にあることや、これと一体化させることがある。各傾斜増幅器は、収集した信号の空間エンコードに使用する磁場傾斜を生成させるように全体を番号50で示す傾斜コイルアセンブリ内の物理的に対応する傾斜コイルを励起させている。傾斜コイルアセンブリ50は、偏向マグネット54及びRFコイルアセンブリ56を含むマグネットアセンブリ52の一部を形成している。別法として、傾斜コイルアセンブリ50の傾斜コイルはマグネットアセンブリ52と独立とすることがある。RFコイルアセンブリ56は、図示した全身用RF送信コイル、表面または並列撮像コイル(図示せず)、あるいはこの両方の組み合わせを含むことがある。RFコイルアセンブリ56のRFコイルは送信用と受信用の両方、あるいは送信用のみや受信用のみとするように構成させることがある。パルス発生器57は、図示したようにシステム制御部32内に組み込まれることやスキャナ装置48内に組み込まれることがあり、傾斜増幅器42及び/またはRFコイルアセンブリ56に対するパルスシーケンスやパルスシーケンス信号を発生させている。別法としてRFコイルアセンブリ56は、表面及び/または並列送信コイルにより置き換えられること、あるいはこれにより増強されることがある。患者内の励起した原子核が放出した励起パルスから得られたMR信号は、全身用コイルによって検知すること、あるいは並列コイルや表面コイルなどの単独の受信コイルによって検知することがあり、またこのMR信号はT/Rスイッチ44を介してRF送信/受信モジュール38に至る。このMR信号は、システム制御部32のデータ処理セクション68内で復調され、フィルタ処理され、かつディジタル化される。
【0016】
1組または複数組の未処理k空間データをデータプロセッサ68内に収集し終わると1回のMRスキャンが完了となる。この未処理のk空間データは、このデータを(フーリエ変換やその他の技法を通じて)画像データにするように動作するデータプロセッサ68内で再構成される。この画像データはリンク34を介してコンピュータシステム20に送られ、コンピュータシステム20において画像データはメモリ26内に格納される。別法として幾つかのシステムでは、コンピュータシステム20はデータプロセッサ68の画像再構成やその他の機能を引き受けることがある。メモリ26内に格納された画像データは、オペレータコンソール12から受け取ったコマンドに応じて、長期記憶内にアーカイブすることや、画像プロセッサ22によりさらに処理してオペレータコンソール12に伝達しディスプレイ16上に表示させることがある。
【0017】
PET−MRI複合システム10では、スキャナ48はさらに、対象から放出された陽電子消滅からのガンマ線を検出するように構成された陽電子放出検出器70も包含している。検出器70は、ガントリの周りに配列させた複数のシンチレータ及び光検出器を含むことが好ましい。しかし検出器70は、PETデータを収集するための適当な任意の構成とすることがある。さらに、検出器70のシンチレータ構成要素、光検出器及び別の電子回路は、MR構成要素54、56によって加えられる磁場及び/またはRF磁場からの遮蔽は必要がない。しかし本発明の実施形態は当技術分野で知られるような遮蔽を含むこと、あるいは様々な遮蔽技法と組み合わされることがあることが企図される。
【0018】
検出器70が検出したガンマ線入射は検出器70の光検出器によって電気信号に変換されると共に、一連のフロントエンド電子回路72によって条件付けを受ける。これらの条件付け回路72は、様々な増幅器、フィルタ及びアナログ対ディジタル変換器を含むことがある。フロントエンド電子回路72が出力したディジタル信号は次いで、ガンマ線検出が同時発生事象の可能性があるかについての一致が同時事象プロセッサ74によって処理される。2本のガンマ線が概ね互いに反対にある検出器に当たった場合、ランダムノイズと信号ガンマ線検出との相互作用がなければ、検出器間を結ぶ線に沿ったどこかで陽電子消滅が発生した可能性がある。したがって、同時事象プロセッサ74によって決定された同時事象は真の同時発生事象内にソートされ、最終的にはデータソータ76によって取り込まれる。ソータ76からの同時発生事象データ(すなわち、PETデータ)はPETデータ受信ポート78の位置においてシステム制御部32により受け取られ、プロセッサ68による後続の処理のためにメモリ66内に格納される。次いで画像プロセッサ22によってPET画像が再構成されることがあり、またPET画像をMR画像と組み合わせ混成構造画像や代謝または機能画像が作成されることがある。条件付け回路72、同時事象プロセッサ74及びソータ76はそれぞれ、スキャナ48や制御システム32の外部に存在させることや、これらに組み入れられることがある。
【0019】
図2は、一実施形態に従ったPET−MRI複合システムにおけるがん撮像の方法を表した流れ図である。ブロック202では、撮像対象に造影剤が投与される。この造影剤はPET検査に対してコントラストを提供するような薬剤とすることがある。MRI検査に対してコントラストを提供するような薬剤も投与されることがある。例えば、18F−FDGなどのPET放射性医薬品は単独で、あるいはガドリニウム・ジエチレントリアミン5酢酸(Gd−DTPA)などのMRI造影剤と混合して対象に対して単一式の静脈注入で投与されることがある。注入される典型的な18F−FDGの活量は患者の大きさ及び体重に依存する(例えば175cmで体重が75kgの大きさでは典型的には440MBqの注入活量を受けることがある)。Gd−DTPAの典型的な用量は、撮像対象の体重1キログラムあたりGd−DTPAを0.1〜0.2mmolである。別法として、PET放射性医薬品及びMRI造影剤は、スキャン前に別々の静脈注入で投与されることがある。PET放射性医薬品及びMRI造影剤は、事実上概ね同時に投与されて血流内で混合されるように別々であるが間を置かずに注入されることがある。造影剤(複数のこともある)はPET−MRIシステムによるスキャンの前のある短い時間フレーム以内に投与されることが好ましい。別の実施形態では、PETとMRIの両方に対してコントラストを提供するような放射性核種でラベル付けしたMRI造影剤が投与されることがある。別法として、超常磁性酸化鉄粒子などの別の種類のMR造影剤が使用されることがある。
【0020】
ブロック204では、撮像対象の第1の領域がMRIを用いて撮像またはスキャンされ、画像(複数のこともある)が収集される。例えばその第1の領域は、「全身性」MRIプロトコルが患者の頭の先からつま先までをスキャンするように処方している場合に撮像対象全体とすることがある。別の例ではその第1の領域は、両乳房プロトコルが処方されている場合に患者の両側乳房を包含するボリュームとすることがある。MRIプロトコルは、例えばオペレータコンソール12(図1参照)を介してシステムオペレータにより処方されることがある。MRIプロトコル内には、がんに対して高感度のMRI技法が含まれることがある。例えば、ショートタウIR法(STIR)シーケンスを備えるようなT2重み付け撮像が病変検出のために使用されることがある。別法としてあるいは追加として、常磁性造影剤が集積する病巣部位を検出するためにT1重み付け撮像が使用されることがある。別法としてあるいは追加として、がんの病巣を見つけ出すために位相ずれグラジェントリコールドエコー(out−of−phase gradient−recalled echo)撮像が使用されることがある。MRI検査には、本明細書に記載していないが当技術分野で周知の別のMRI技法が使用されることがある。当技術分野で周知のように、撮像を高速化するために並列撮像技法及びフェーズドアレイコイルが使用されることがある。
【0021】
ブロック206では、ブロック204でMRI検査から収集したMR画像(複数のこともある)を検査または検証し、第1の領域内部の関心対象病巣エリアを特定または検出することがある。関心対象エリア(または、被疑エリア)は、MR画像の特徴性(例えば、収集したMR画像のうちの少なくとも1つに対する高輝度エリアまたはコントラスト強調エリア)に基づいて特定されることがある。例えば、関心対象エリアまたは被疑エリアはSTIR重み付け画像上の高輝度エリアとすることや、常磁性造影剤の投与後に収集したT1重み付け画像上の高輝度エリアとすることがある。被疑エリアまたは関心対象エリアは例えば、がん病変が疑われる第1の領域内のある箇所とすることがある。関心対象エリアは、画像に対する視覚的検査によって、あるいは自動病変識別技法に基づくコンピュータ支援式検出ツールを用いることによって特定されることがある。PET−MRIシステムは、画像に対する視覚的検査を支援する画像操作ツールや画像処理ツール(被疑領域にズームインするため、及び追加のMRIとPET撮像のいずれか、あるいはこれら両者を規定するために使用し得るボリュームをグラフで指示するためのツールなど)を含むことがある。
【0022】
ブロック208では、PETを用いてスキャンしようとする撮像対象の第2の領域が求められる。この第2の領域は第1の領域のサブ領域である。第2の領域は、例えばブロック206で規定した被疑エリアやMR画像内の任意のコントラスト強調エリアを含むように規定されることがある。例えば骨がん用途では、全身性MR撮像からの画像上で規定された被疑強調病変の箇所を含むように第2の領域が規定されることがある。別の例で乳がん検出用途では、MR撮像によって検出された被疑病変を含むように第2の領域が規定されることがある。さらに第2の領域は、例えば別の撮像様式や非撮像臨床検査を用いたがんの存在が疑われる領域に関する事前特定などの別の基準に基づいて規定されることがある。第2の領域は、当技術分野で周知の画像処理技法を用いてPET−MRIシステムにより自動的に規定されることや、オペレータコンソール12(図1参照)を介してシステムオペレータによって規定されることがある。MRIはがんに対して感度が高いためある種の領域で追加の撮像を妥当に不要とすることができ、またPETを用いる領域をターゲット設定することができる。
【0023】
ブロック210では、撮像対象の第2の領域をPET検査を用いてスキャンし、PET画像(複数のこともある)を収集する。言及したように、PETを用いてスキャンする第2の領域はMRIを用いてスキャンした第1の領域のサブ領域である。このため、PETを用いてスキャンしようとする総ボリュームを第1の領域のサイズと比べて小さくすることができる。したがって、PET画像を総収集時間を短縮して取得すること、あるいは全身性その他の大きなボリュームのPET検査に関して実施されるよりもかなり高い空間分解能でPET画像を取得することのいずれかを実現することができる。
【0024】
ブロック212では、ブロック210で収集したPET画像とブロック204で収集したMRI画像とを比較及び評価を容易にするように相互位置合わせすることがある。別法として、PET画像とMRI画像を「融合(fused)」させて評価のための合成画像を形成することがある(すなわち、同じ箇所に由来するPET画像からの情報とMRI画像からの情報とが単一の画像になるように組み合わされることがある)。例えば、グレイスケールの解剖学的MR画像上の半透明のカラーオーバーレイとしてPETからの代謝情報を表示させることがある。
【0025】
図3は、代替的実施形態によるPET−MRI複合システムにおけるがん撮像の方法を表した流れ図である。ブロック302〜310の各処理は図2のブロック202〜210に関連して上で記載した処理と同じである。ブロック302では、造影剤(例えば、PET薬剤)が撮像対象に投与される。ブロック304では、MRI検査を用いて撮像対象の第1の領域が撮像またはスキャンされてMR画像(複数のこともある)が収集される。ブロック306では、ブロック304のMRI検査から収集したMR画像(複数のこともある)が検査または検証され、第1の領域内部にある関心対象病巣エリアが特定または検出されることがある。ブロック308では、PET検査を用いてスキャンしようとする撮像対象の第2の領域が規定される。第2の領域は第1の領域のサブ領域である。ブロック310では、撮像対象の第2の領域がPET検査を用いてスキャンされ、PET画像(複数のこともある)が収集される。
【0026】
ブロック312では、第2のMRI検査を実施し、ブロック310でPET検査を用いてスキャンした第2の領域に対する再スキャンを行うことがある。したがってより高空間分解能を取得するためかつ/または追加の画像コントラストを収集するために、第2の領域に対するMRI検査が使用されることがある。MRIを用いて得られるような軟部組織コントラスト及び解剖学的詳細によって、PET画像からの代謝情報が補完され、また例えばPET画像上で放射性医薬品取り込みが増大しているが正常である領域をより高信頼性に特定することが可能となる。代替的な一実施形態では、第2の領域に対するブロック310でのPETスキャンと第2の領域に対するブロック312でのMRIスキャンとが同時に実施されることがある。ブロック314では、ブロック310で収集したPET画像と、ブロック304で収集したMR画像及び/またはブロック312で収集したMR画像とが、比較及び評価を容易にするために相互位置合わせされるかつ/または融合されることがある。
【0027】
上述した方法に従ってPET−MRIシステムを用いてがんを撮像させるコンピュータ実行可能命令は、コンピュータ読み取り可能媒体の形態で保存されることがある。コンピュータ読み取り可能媒体には、コンピュータ読み取り可能命令、データ構造、プログラムモジュールその他のデータなどの情報を保存するための任意の方法またはテクノロジーにより実現された揮発性と不揮発性、取外し可能と取外し不可能の媒体が含まれる。コンピュータ読み取り可能媒体には、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、電気消去可能なプログラム可能ROM(EEPROM)、フラッシュメモリその他のメモリテクノロジー、コンパクトディスクROM(CD−ROM)、ディジタル多機能ディスク(DVD)その他の光学式記憶装置、磁気カセッテ、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置その他の磁気記憶デバイス、あるいは所望の命令を格納するために使用可能であり、かつインターネットや別のコンピュータネットワーク形式のアクセスを含めPET−MRIシステム10(図1参照)によるアクセスを受け得る別の任意の媒体(ただし、これらに限らない)が含まれる。
【0028】
この記載した説明では、本発明(最適の形態を含む)を開示するため、並びに当業者による本発明の製作及び使用を可能にするために例を使用している。本発明の特許性のある範囲は添付の特許請求の範囲によって規定していると共に、当業者により行われる別の例を含むことができる。こうした別の例は、本特許請求の範囲の文字表記と異ならない構造要素を有する場合や、本特許請求の範囲の文字表記と実質的に差がない等価的な構造要素を有する場合があるが、本特許請求の範囲の域内にあるように意図したものである。任意の処理法や方法の各工程の順序及びシーケンスは、代替的な実施形態に応じて変更されるまたは順序構成し直されることがある。
【0029】
本発明に対してその精神を逸脱することなく別の多くの変更形態や修正形態を実施することができる。こうした趣旨及び別の変更形態は添付の特許請求の範囲から明らかとなろう。また、図面の符号に対応する特許請求の範囲中の符号は、単に本願発明の理解をより容易にするために用いられているものであり、本願発明の範囲を狭める意図で用いられたものではない。そして、本願の特許請求の範囲に記載した事項は、明細書に組み込まれ、明細書の記載事項の一部となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】一実施形態によるPET−MRI複合システムのブロック概要図である。
【図2】PET−MRI複合システムにおける一実施形態によるがん撮像の方法を表した流れ図である。
【図3】PET−MRI複合システムにおける代替的実施形態によるがん撮像の方法を表した流れ図である。
【符号の説明】
【0031】
10 PET−MRI複合システム
12 オペレータコンソール
13 入力デバイス
14 制御パネル
16 表示画面
18 リンク
20 コンピュータシステム
20a バックプレーン
22 画像プロセッサモジュール
24 CPUモジュール
26 メモリモジュール
32 システム制御部
32a データ接続
34 リンク
36 CPUモジュール
38 RF送信/受信モジュール
40 通信リンク
42 傾斜増幅器
44 送信/受信スイッチ
46 増幅器
48 スキャナ
50 傾斜コイルアセンブリ
52 マグネットアセンブリ
54 マグネット
56 RFコイルアセンブリ
57 パルス発生器モジュール
66 メモリ
68 データプロセッサ
70 陽電子放出検出器
72 フロントエンド電子回路/条件付け回路
74 同時事象プロセッサ
76 データソータ
78 PETデータ受信ポート
202 撮像対象への造影剤の投与
204 MRIを用いた対象の第1の領域の撮像
206 MR画像内の関心対象病巣エリアの検出
208 PETスキャンのための第2の領域の画定
210 PETを用いた第2の領域のスキャン
212 MRI画像とPET画像との相互位置合わせ
302 撮像対象への造影剤の投与
304 MRIを用いた対象の第1の領域の撮像
306 MR画像内の関心対象病巣エリアの検出
308 PETスキャンのための第2の領域の画定
310 PETを用いた第2の領域のスキャン
312 MRIを用いた第2の領域のスキャン
314 MRI画像とPET画像の相互位置合わせ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PET−MRIシステム10におけるがん撮像のための方法であって、
MR撮像プロトコルを用いて撮像対象内の第1の領域に対して特徴性を有する磁気共鳴(MR)画像を収集する工程(204)と、
前記第1の領域のサブ領域である撮像対象の第2の領域を少なくとも前記MR画像の特徴性に基づいて画定する工程(208)と、
前記第2の領域の陽電子放出断層(PET)画像を収集する工程(210)と、
を含む方法。
【請求項2】
前記第2の領域に対して追加のMR画像を収集する工程(312)をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つのMR画像を少なくとも1つのPET画像と相互位置合わせする工程(212、314)をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の領域に対するMR画像の収集工程(204)の前に、撮像対象に造影剤を投与する工程(202、302)をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記造影剤はMR撮像造影剤と組み合わせられたPET造影剤を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
撮像対象からのPET放出を検出するように位置決めされた検出器70と該検出器70からの出力を受け取るように結合させた同時事象プロセッサ74とを備える陽電子放出断層(PET)撮像アセンブリと、
マグネット54、複数の傾斜コイル50、無線周波数コイル56、無線周波数送受信器システム38及びパルス発生器モジュール57を備える磁気共鳴(MR)撮像アセンブリと、
前記PET撮像アセンブリ及び前記MR撮像アセンブリと結合させたプロセッサ32であって、
MR撮像プロトコル及びMR撮像アセンブリを用いて撮像対象内の第1の領域に対して特徴性を有するMR画像を収集すること(204)、
前記第1の領域のサブ領域である撮像対象の第2の領域を少なくとも前記MR画像の特徴性に基づいて画定すること(208)、
前記PET撮像アセンブリを用いて前記第2の領域のPET画像を収集すること(210)、
を実行するように構成されたプロセッサ32と、
を備えるPET−MRI複合システム10。
【請求項7】
前記プロセッサ32はさらに、MR撮像プロトコル及びMR撮像アセンブリを用いて第2の領域のMR画像を収集する(312)ように構成されている、請求項6に記載のPET−MRI複合システム。
【請求項8】
前記プロセッサ32はさらに、少なくとも1つのMR画像を少なくとも1つのPET画像と相互位置合わせ(212、314)するように構成されている、請求項6に記載のPET−MRI複合システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−149147(P2008−149147A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−324111(P2007−324111)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】