がん細胞の細胞殺作用を媒介するヒト化抗TROP−2抗体とキメラ抗TROP−2抗体
約35kDaの膜貫通タンパク質であり、プロテインキナーゼCの基質でもあるTROP-2の発現は、いくつかのがんと結び付いている。TROP-2は、GA733-1、上皮糖タンパク質1(EGP-1)、腫瘍関連カルシウムシグナルトランスデューサ-2としても知られている。カナダ国際寄託機構(IDAC)に受託番号141205-05として寄託されたハイブリドーマAR47A6.4.2に由来してTROP-2に向かうモノクローナル抗体はがん性疾患軽減抗体(CDMAB)であることが以前に示されており、腫瘍の成長を阻止し、いくつかのがんモデル(例えば前立腺がん、膵臓がん、及び乳がん)において腫瘍組織量を細胞傷害作用によって減らす。このモノクローナル抗体の可変領域も単離され、配列が決定され、相補性決定領域(CDR)が決定されている。ここに、親である141205-05モノクローナル抗体と似たTROP-2結合活性を持つキメラ抗体とヒト化抗体が生成された。このモノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体は、毒素、酵素、放射性化合物、サイトカイン、インターフェロン、標的部分、レポーター部分、及び造血細胞と結合してがんを治療することができる。これら抗体は、細胞でのTROP-2の発現を調べる結合アッセイでも使用される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がん性疾患の診断と治療に関するものであり、その中でも特に腫瘍細胞の細胞殺作用の媒介に関係しており、さらに特定するならば、細胞傷害応答を開始させる手段として、がん性疾患軽減抗体(CDMAB)を任意に1又は複数種類のCDMAB/化学療法剤と組み合わせて使用することに関する。本発明はさらに、本発明のCDMABを用いる結合アッセイにも関する。
【背景技術】
【0002】
TROP-2は、たいていの癌腫と正常ないくつかのヒト組織で発現する細胞表面糖タンパク質である。TROP-2は、最初は、ヒト栄養芽層細胞上の抗原を認識するヒト絨毛膜癌腫細胞系BeWoに対して生じる2種類のマウス・モノクローナル抗体によって認識される分子として定義された(Faulk、1978年)。同じ分子が他の研究者たちによっても独立に発見されたため、同じ抗原を表わす複数の名前が存在することになった。したがってTROP-2は、GA733-1や上皮糖タンパク質-1(EGP-1)とも呼ばれた(Basu、1995年;Fornaro、1995年)。
【0003】
TROP-2遺伝子はイントロンのない遺伝子であり、相同な遺伝子GA733-2(上皮糖タンパク質-2、EpCAM、Trop-1としても知られる)がRNA中間体を通じたレトロポジションによって形成されたと考えられた。TROP-2遺伝子は、染色体1p32にマッピングされている(Calabrese、2001年)。TROP-2のタンパク質成分は約35キロダルトンの分子量である。その分子量は、細胞外ドメインのヘテロN結合型グリコシル化で11〜13キロダルトン大きくなる可能性がある。多くのシステイン残基が細胞外ドメインに存在しているため、ジスルフィド架橋部位を形成できる可能性がある。TROP-2は、Ca2+依存性プロテインキナーゼであるプロテインキナーゼCの基質であり、細胞内セリン303残基がリン酸化されていることがわかっている(Basu、1995年)。また、TROP-2を抗TROP-2抗体と架橋させると、細胞質Ca2+の上昇によって示されるようにカルシウム信号が伝わることもわかっている(Ripani、1998年)。これらのデータは、TROP-2の1つの生理学的機能としてのシグナル伝達を支持しているが、現在まで、いかなる生理学的リガンドも同定されていない。TROP-2の発現とがんの関係が、ある報告に示されている。その報告によれば、TROP-2は、cDNAマイクロアレイ技術を用いた大スケールの遺伝子発現分析において、正常な卵巣上皮と比べて卵巣漿液性乳頭状癌で最も過剰発現していると報告された一群の遺伝子の1つのメンバーとして同定された(Santin、2004年)。74個のヒトがんのサンプルを定量的リアル-タイムRT-PCRで分析し、そのサンプルのうちの34個を免疫組織化学で分析した最近の研究では、がんの切片と正常な患者の切片におけるTROP-2の発現レベルが調べられた。TROP-2は、がんにおいて正常な患者のサンプルよりも多く発現していることが見いだされ、この研究ではさらに、TROP-2の発現レベルと生物学的攻撃能力の間に相関があることが証明された。高レベルのTROP-2は、予後の悪さ、患者の生存率の低下、肝臓転移の頻度増加と関係していることが見いだされた(Ohmachi、2006年)。これは、TROP-2が予後の1つの指標として有用である可能性と、魅力的な治療標的である可能性を示している。
【0004】
TROP-2の発現プロファイルは、多くの異なるTROP-2抗体を用いた免疫組織学(IHC)とフローサイトメトリーの研究を通じて明らかにされた。マウスをヒト絨毛膜癌腫細胞系BeWoで免疫化することによって抗TROP-2抗体162-25.3と162-46.2が作り出され、一連の腫瘍細胞系、リンパ球細胞系、及び末梢血単核細胞に対するその抗体の反応性が調べられた。この研究において、どちらの抗体も、調べた4つの絨毛膜癌腫細胞系のうちの3つで染色されたため、栄養膜特異的であるように見えたのに対し、他のリンパ球細胞系も、腫瘍細胞系(すなわち線維肉腫、子宮頸肉腫、大腸肉腫、黒色種、神経芽細胞腫、赤白血病)も、間接的免疫蛍光FACSアッセイでは染色されなかった。それに加え、正常な末梢血細胞のどれも染色されなかった。両方の抗体に関し、ホルマリン固定包埋胎盤組織切片の染色と、凍結させた正常な肝臓組織、腎臓組織、脾臓組織、胸腺組織、リンパ節組織の染色を調べた。胎盤組織は両方の抗体で染色されたが、他の正常組織は染色されなかった(Lipinski、1981年)。これら2つの抗体は、試験管内診断の研究での利用に関してだけ報告されている。
【0005】
抗TROP-2抗体であるMOv16は、よく分化していない卵巣癌腫OvCa4343/83の粗膜調製物でマウスを免疫化することによって作り出された。MOv16の反応性が、良性と悪性の卵巣腫瘍を凍結させた一連の組織切片で調べられた。MOv16は54個の悪性卵巣腫瘍のうちの31個で、16個の良性卵巣腫瘍のうちの2個で反応した。調べた5個のムチン性卵巣腫瘍にはMOv16はまったく反応しなかった。凍結させた悪性卵巣腫瘍の切片に対するMOv16の反応性も調べたところ、189個の乳房癌腫の切片のうちの117個、18個の肺癌腫の切片のうちの12個と結合することが見いだされた。MOv16は、調べた16個の非上皮腫瘍(脂肪肉腫、軟骨肉腫、内皮腫、組織球腫、未分化胚細胞腫など)とはまったく反応しなかった。MOv16は、凍結させた正常組織切片で調べると、乳房、膵臓、腎臓、及び前立腺の切片と反応した。MOv16は、肺、脾臓、皮膚、卵巣、甲状腺、耳下腺、胃、咽頭、子宮、及び大腸の切片とは反応しないが、使用した組織切片の数は報告されていない。著者は、MOv16がパラフィン包埋組織に反応しなかったため凍結させた組織切片を用いたと指摘している(Miotti、1987年)。この抗体も、試験管内診断の研究での利用に関してだけ報告されている。
【0006】
外科手術で取り出したヒト肺の原発性扁平上皮がんに由来する粗膜調製物でマウスを免疫化することによって抗TROP-2抗体Rs7-3G11(RS7)が作り出された。IHCを利用し、ヒトの腫瘍組織と正常組織の凍結切片でRS7の染色が調べられた。RS7は、乳がん、大腸がん、腎臓がん、肺がん、前立腺がん、及び扁平上皮がんの40個の切片のうちの33個と結合した。正常組織の中では、乳房、大腸、腎臓、肝臓、肺、及び前立腺の組織の20個の切片のうちの16個にRS7が結合したが、脾臓組織の5個の切片のどれも染色されなかった。この研究において、著者は、腫瘍中の抗原の密度が正常な上皮組織におけるよりも大きいように見えることを指摘している(Stein、1990年)。
【0007】
RS7の組織特異性に関する別の研究が、腫瘍組織と正常組織の両方で実施された。凍結させた一群の腫瘍切片でRS7が調べられ、肺、胃、腎臓、膀胱、大腸、乳房、卵巣、子宮、及び前立腺の腫瘍を示す77個の切片のうちの65個に結合した。調べられた5個のリンパ腫には結合しなかった。合計で24種類の組織からなる凍結させた一群のヒトの正常組織切片でRS7が調べられた。13種類の正常組織(肺、気管支、気管、食道、大腸、肝臓、膵臓、腎臓、膀胱、皮膚、甲状腺、乳房、及び前立腺)の39個の切片がRS7によって染色された。この研究の著者は、染色が陽性であることが観察された組織では、反応性は一般に上皮細胞(主に管と腺)に限定されるという指摘もなされている。また、RS7はホルマリン固定包埋切片では反応しなかったため、この研究は凍結させた切片に限定されることも指摘されている(Stein、1993年)。
【0008】
ヒトTROP-2の細胞質ドメインのアミノ酸位置169〜182に対応する合成ペプチドでマウスを免疫化することにより、ポリクローナル抗TROP-2抗体が調製された。ホルマリンで固定したヒト食道の過形成組織と癌腫組織を含む組織アレイ・スライドでこのポリクローナル抗体が調べられた。55個の癌腫サンプルのうちの10個がこのポリクローナル抗体で強く染色されたのに対し、軽度の過形成組織は非常に弱く染色された。これは、発現レベルが悪性の形質転換と関係している可能性を示している(Nakashima、2004年)。
【0009】
結局、さまざまな抗TROP-2抗体で得られたIHC反応パターンは、互いに整合していた。がんにおける発現は主に癌腫で見られ、たいていの癌腫が反応した。正常組織では、発現は、上皮起源の細胞に限られているように見えた。そして癌腫の染色は、対応する正常な上皮組織の染色よりも強いことを示すいくらかの証拠が存在していた。
【0010】
抗体RS7は、IHCの研究で使用されるだけでなく、初期の実験で生体内モデルにおいても調べられた。この実験は、ヌードマウス異種移植片モデルでの腫瘍を標的とした研究である。放射性標識をしたRS7を静脈内注射すると、Calu-3腫瘍(肺腺癌)またはGW-39腫瘍(大腸癌腫)を持つマウスの腫瘍にだけ蓄積することがわかった(Stein、1990年)。放射性標識をしたRS7の異種移植片系における生体分布を調べるため、そして免疫複合体としてのRS7の潜在的な治療能力を調べるため、さらに研究が行なわれた。この研究では、Calu-3ヒト肺腺癌異種移植片を持つヌードマウスにおいて、131Iで標識したRS7 F(ab')2の治療効果が調べられた。マウスにCalu-3細胞を接種してから3週間後に腫瘍が約0.3〜0.9gに達したとき、6〜7匹のマウスからなる複数の群を、1.0mCiの131I-RS7-F(ab')2または1.5mCiの131I-RS7-F(ab')2を1回だけ静脈内投与して治療し、無治療の対照マウスからなる同様の群と比較した。1.0mCiの131I-RS7-F(ab')2の1回だけの投与によって腫瘍の成長が約5週間抑制されたのに対し、1.5mCiの131I-RS7-F(ab')2の1回だけの投与では腫瘍が退縮し、腫瘍の平均サイズは、放射性抗体を注射してから8週間目まで治療前のサイズを超えなかった。1.5mCiの131I-RS7-F(ab')2を投与されたマウスは、体重減少の平均が18.7%であった。これは、治療に毒性が伴っていたことを示している。この研究では、裸のRS7、またはRS7のF(ab')2フラグメントを用いた治療効果は調べられなかった(Stein、1994年a)。MDA-MB-468乳がん異種移植片モデルにおける131I-RS7の効果を調べる別の研究が行なわれた。体積約0.1cm3のMDA-MB-468腫瘍を持つ10匹のマウスからなる群を、250マイクロキュリーの131I-RS7、または250マイクロキュリーの131I-Ag8(アイソタイプが一致した対照抗体)を1回だけ静脈内投与することによって治療した。6匹からなるマウスの複数の群を、30μgの標識していないRS7またはAg8を1回だけ静脈内投与することによって治療した。腫瘍の完全な退縮が、131I-RS7で治療したマウスで見られ(ただし、腫瘍が一時的に再び現われた1匹のラットは除く)、それが11週間という観察期間の間続いた。腫瘍の退縮は、131I-Ag8で治療したマウスでも見られたが、2週間〜5週間の間観察されただけであり、腫瘍は実験の残りの期間も存続するか、成長を続けた。標識なしのRS7またはAg8を与えたマウスの腫瘍の成長は抑制されず、Ag8で治療したマウスとRS7で治療したマウスの腫瘍の平均体積にはいかなる違いも見られなかった。より大きな0.2〜0.3cm3というMDA-MB-468腫瘍を持つ10匹のマウスからなる別の2つの群を、わずかに多い275マイクロキュリーの131I-RS7、または275マイクロキュリーの131I-Ag8の1回だけの投与で治療し、治療しないマウスからなる同様の群と比較した。腫瘍の体積を15週間にわたって毎週測定した。この場合には、131I-RS7で治療したマウスを治療しないマウスと比べると腫瘍の成長に有意な差があったが、131I-RS7で治療したマウスを131I-Ag8で治療したマウスと比べると有意な差はなかった。これは、効果の一部が放射線の非特異的効果を原因としていた可能性を示している。標識していない抗体は、0.2〜0.3cm3の腫瘍を持つマウスでは調べられなかった(Shih、1995年)。
【0011】
放射性免疫療法の最適な放射性標識を選択することを目的として、免疫複合体としてのRS7の効果を調べる別の多数の研究が存在している(Stein、2001年a、Stein、2001年b、Stein、2003年)。RS7のヒト化バージョンも作り出されている。しかしそれは、放射性複合体として前臨床異種移植片モデルでだけ調べられた(Govindan、2004年)。これらの研究は、RS7を用いた以前の研究と同様のプラスの効果を示しているが、1つの研究では、放射性標識したRS7を以前決定された許容可能な最大投与量で供給したときでさえ、毒性が起こって何匹かのマウスが死ぬに至った(Stein、2001年a)。これらの研究では、マウスにおける異種移植片腫瘍の有効な治療法が放射性標識したRS7で実現されたが、裸のRS7は評価されなかった。
【0012】
(従来の特許の項で言及するアメリカ合衆国特許第5,840,854号に記載されているように)ノイラミニダーゼであらかじめ処理したH3922ヒト乳房癌腫細胞で免疫化したマウスは抗TROP-2モノクローナル抗体BR110を産生した。凍結させたヒト組織サンプルを用いた免疫組織学により、BR110は、広い範囲のヒト癌腫サンプル(例えば肺、大腸、乳房、卵巣、腎臓、食道、膵臓、皮膚、及び扁桃のがん)と反応することがわかった。ヒトの正常組織切片は調べられなかった。試験管内実験により、BR110は、ヒト癌腫細胞系H3396またはH3922に対するADCC活性またはCDC活性を持たないことが明らかになった。BR110-免疫毒素の細胞傷害作用を分析する試験管内実験がヒトがん細胞系H3619、H2987、MCF-7、H3396、H2981に対して実施された。調べられた細胞系のEC50は、それぞれ0.06、0.001、0.05、0.09、>5μg/mlであった。裸のBR110抗体に関する細胞傷害作用のデータは開示されていない。裸のBR110とBR110免疫複合体に関する生体内実験のデータは開示されていない。
【0013】
TROP-2を標的とする多数の別の抗体が作り出されている。例えば抗体MR54、MR6、MR23がマウスを卵巣がん細胞系Colo 316で免疫化して作り出され(Stein、1994年b)、抗体T16がマウスをT24膀胱がん細胞系で免疫化して作り出された(Fradet、1984年)。これら抗体の利用は、TROP-2抗原の生化学的な特徴を明らかにする研究と、細胞系および組織発現の研究に限定されてきた。試験管内であれ生体内であれ、これら抗体の抗がん効果に関する報告はない。RS7が、前臨床がんモデルにおいて治療効果が調べられた唯一の抗体であり、その用途は放射性同位体の担体に限定されている。裸のTROP-2抗体が、臨床研究で、または試験管内や生体内の前臨床がんモデルで治療効果を示したケースは報告されていない。
【0014】
がんの治療法としてのモノクローナル抗体:がんが存在する各個人はユニークな存在であり、その人のアイデンティティとして他のがんとは異なるがんを持つ。それにもかかわらず、現在の治療法は、同じタイプの同じステージのがんを持つすべての患者を同じ方法で治療する。こうした患者の少なくとも30%は最初の治療で失敗することになるため、その後の治療が行なわれて治療が失敗する確率、転移の確率が大きくなり、最終的に死ぬ確率が大きくなる。より優れた治療法は、特定の個人に対する治療のカスタム化であろう。カスタム化がなされている現在の唯一の治療法は外科手術である。化学療法と放射線治療は患者に合わせることができず、手術そのものは、たいていの場合に治癒をもたらすには不十分である。
【0015】
モノクローナル抗体が出現して各抗体を単一のエピトープに向かわせることができるようになったため、カスタム化された治療法を開発する可能性がより現実的になった。さらに、特定の個人の腫瘍だけに属するエピトープのパターンに向かう抗体の組み合わせを作り出すことが可能である。
【0016】
がん性細胞と正常細胞の間の重要な違いは、がん性細胞が、形質転換された細胞に特異的な抗原を含んでいることであると認識されているため、科学者のコミュニティは、これらがん抗原に特異的に結合させることによって形質転換した細胞を特異的に標的とするモノクローナル抗体を設計できると長らく主張してきた。そのためモノクローナル抗体はがん細胞をなくす“魔法の弾丸”として機能できるという信念が生まれた。しかし1種類だけのモノクローナル抗体があらゆるがんで機能することはありえないこと、そしてモノクローナル抗体を、標的化したがん治療の1つの手段として展開できることが、今では広く認識されている。ここに開示する本発明の教えに従って単離されたモノクローナル抗体は、例えば腫瘍組織量を減らすことにより、患者にとって利益があるようにがん性疾患のプロセスを変化させることがわかった。この明細書では、このモノクローナル抗体をがん性疾患軽減抗体(CDMAB)または“抗がん”抗体と呼ぶ。
【0017】
現在のところ、がん患者には、通常、治療の選択肢がいくつかある。がんの治療法を系統的にすることによって最終的な生存率と死亡率の改善が見られている。しかし特定の個人にとって、こうした改善された統計は必ずしも個人的な状況での改善と相関していない。
【0018】
例えばそれぞれの腫瘍を同じコホート内の他の患者とは独立に治療できる方法が実施されるのであれば、治療法をその1人の人に合わせて調節するという独自の方法が可能になろう。そのような治療法は、理想的には、治癒率を向上させ、よりよい結果を生み出し、そのことによって長く求められてきた要求を満たすことになろう。
【0019】
歴史的には、ポリクローナル抗体が使用されてヒトのがん治療に限られた成功を収めてきた。リンパ腫と白血病はヒト血漿を用いて治療されてきたが、長期の寛解または応答はほとんどなかった。さらに、再現性がないため、化学療法と比べて追加の利益がなかった。固形腫瘍(例えば乳がん、黒色腫、腎細胞癌腫)も、ヒトの血液、チンパンジーの血清、ヒトの血漿、及びウマの血清を用いて治療されてきたが、それに対応して予測できない結果や無効な結果が生じた。
【0020】
固形腫瘍に対するモノクローナル抗体の臨床試験がこれまでに数多く実施されてきた。1980年代、ヒト乳がんに関する少なくとも4つの臨床試験が実施されたが、特定の抗原に対する抗体、または組織選択性に基づいた抗体を用いた少なくとも47人の患者からわずか1人の応答者が出ただけである。ヒト化抗Her2/neu抗体(ハーセプチン(登録商標))をシスプラチンと組み合わせて用いることで臨床試験が成功したのは1998年になってからであった。この臨床試験では37人の患者の応答が検討され、そのうちの約1/4は応答が部分的であり、別の1/4は疾患の進行がわずかであったり安定していたりしたことがわかった。応答者の中での進行時間の中位値は8.4ヶ月であり、応答持続期間の中位値は5.3ヶ月であった。
【0021】
ハーセプチン(登録商標)は、タキソール(登録商標)と組み合わせて際穂に使用する薬として1998年に承認された。臨床試験の結果は、タキソール(登録商標)だけを投与された群(3.0ヶ月)と比較し、抗体療法+タキソール(登録商標)を投与された患者で疾患進行の中位時間が延びること(6.9ヶ月)を示していた。生存期間の中位値もわずかに延びていた。すなわちタキソール(登録商標)治療だけの集団の18ヶ月に対してハーセプチン(登録商標)+タキソール(登録商標)療法での集団は22ヶ月であった。それに加え、抗体とタキソール(登録商標)を組み合わせた群をタキソール(登録商標)だけの群と比べると、完全な応答者(8%対2%)と部分的な応答者(34%対15%)の両方の数が増加した。しかしハーセプチン(登録商標)とタキソール(登録商標)で治療すると、タキソール(登録商標)治療だけの場合と比べて心臓毒性のケースがわずかに多かった(それぞれ13%と1%)。また、ハーセプチン(登録商標)療法は、現在のところ機能がわかっていない受容体、すなわち生物学的に重要なリガンドが知られていない受容体であるヒト上皮増殖因子受容体2(Her2/neu)を過剰発現している(それは、免疫組織化学(IHC)分析によって明らかにされる)患者でだけ有効であり、それは転移性乳がん患者の約25%である。したがって乳がん患者にとってまだ満たされていない大きな要求が存在している。ハーセプチン(登録商標)療法の恩恵を受けられる人でさえ、化学療法を相変わらず必要としているため、この種の治療法の副作用に少なくともある程度まで対処する必要があろう。
【0022】
結腸がんを調べる臨床試験には、糖タンパク質と糖脂質の両方を標的とした抗体が関与する。腺癌に対していくらか特異性を有する17-1Aなどの抗体は、60人を超える患者に対する第2相臨床試験に進んでいるが、部分的に応答した患者が1人だけである。別の臨床試験では、17-1Aとともにシクロホスファミドを追加して用いるプロトコルにおいて、52人の患者のうちで完全な応答があったのは1人だけであり、2人がわずかに応答した。現在まで、17-1Aの第3相臨床試験では、ステージIIIの大腸がんのアジュバント療法としての改善された効果は証明されていない。最初はイメージング用に認可されたヒト化マウス・モノクローナル抗体を用いても腫瘍の退縮は生じなかった。
【0023】
モノクローナル抗体を用いた結腸がんの臨床試験から何らかの肯定的な結果が得られたのはごく最近になってからである。2004年、EGFRを発現していてイリノテカンをベースとした化学療法での治療が難しい転移性結腸がんの患者に対する第2の治療薬としてアービタックス(登録商標)が承認された。2つの患者集団からなる第2相臨床試験と1つだけの患者集団からなる臨床試験の両方からの結果は、応答率がそれぞれ23%と15%であり、疾患進行時間の中位値は、それぞれ4.1ヶ月と6.5ヶ月であった。2つの患者集団からなる同じ第2相臨床試験と1つだけの患者集団からなる別の臨床試験から、アービタックス(登録商標)単独での治療にはそれぞれ11%と9%が応答し、疾患進行時間の中位値は、それぞれ1.5ヶ月と4.2ヶ月であった。
【0024】
その結果、スイスとアメリカ合衆国の両方ではイリノテカンと組み合わせてアービタックス(登録商標)を用いる治療法が、アメリカ合衆国ではアービタックス(登録商標)単独の治療法が、イリノテカンを用いた第1の治療がうまくいかなかった大腸がんの患者の第2の治療法として承認された。したがってスイスにおける治療法は、ハーセプチン(登録商標)と同様、モノクローナル抗体と化学療法の組み合わせとしてだけ承認されている。それに加え、スイスとアメリカ合衆国の両方における治療法は、患者に対する第2の治療法としてだけ承認されている。また、2004年、アバスチン(登録商標)が承認され、転移性結腸がんの第1の治療法としての5-フルオロウラシルの静脈内投与をベースとした化学療法と組み合わせて用いられることになった。第3相臨床試験の結果は、アバスチン(登録商標)+5-フルオロウラシルで治療した患者の生存期間の中位値が、5-フルオロウラシルだけで治療した患者と比べて延びることを示していた(それぞれ20ヶ月と16ヶ月)。しかしここでもハーセプチン(登録商標)およびアービタックス(登録商標)と同様、治療はモノクローナル抗体と化学療法の組み合わせとしてだけ承認された。
【0025】
肺、脳、卵巣、膵臓、前立腺、及び胃のがんに関しては乏しい結果が続いている。非小細胞肺がんに関する最近の最も有望な結果は、第2相臨床試験から得られた。ここでは、細胞殺傷薬ドキソルビシンと結合させたモノクローナル抗体(SGN-15;dox-BR96、抗シアリル-LeX)を化学療法薬タキソテール(登録商標)と組み合わせる治療法が関係する。タキソテール(登録商標)は、肺がんの第2の治療法としてFDAから承認された唯一の化学療法薬である。初期のデータは、タキソテール(登録商標)単独の場合と比べて最終的な生存期間が延びることを示している。この臨床試験のために集められた62人の患者のうち、2/3がタキソテール(登録商標)と組み合わせてSGN-15を投与されたのに対し、残りの1/3はタキソテール(登録商標)だけを投与された。タキソテール(登録商標)と組み合わせてSGN-15を投与された患者では、最終的な生存期間の中位値が7.3ヶ月であったのに対し、タキソテール(登録商標)だけを投与された患者では5.9ヶ月であった。最終的な生存期間が1年、18ヶ月になったのは、SNG-15+タキソテール(登録商標)を投与された患者ではそれぞれ29%と18%であったのに対し、タキソテール(登録商標)だけを投与された患者ではそれぞれ24%と8%であった。さらなる臨床試験が計画されている。
【0026】
臨床試験前に黒色腫でいろいろなモノクローナル抗体を用いていくらかの成功が得られている。これら抗体のうちのほんのわずかのものだけが臨床試験まで到達したが、現在まで、どれについても認可されていないし、第3相臨床試験で好ましい結果も証明されていない。
【0027】
疾患を治療する新しい薬が発見されないのは、疾患の原因に関係する可能性のある既知の30,000個の遺伝子の産物の中で関係する標的が同定されていないからである。腫瘍学における研究では、薬となる可能性のある標的は、その標的が単に腫瘍細胞で過剰発現しているという事実によって選択されることがしばしばある。このようにして同定された標的は、その後、多くの化合物との相互作用に関してスクリーニングされる。可能性のある抗体療法の場合には、これら候補化合物は、通常、KohlerとMilsteinによって提示された基本原理(1975年、Nature、第256巻、495〜497ページ、KohlerとMilstein)に従ったモノクローナル抗体の伝統的な生成法から得られる。抗原(例えば全細胞、細胞画分、精製した抗原)で免疫化したマウスから脾臓細胞が回収され、パートナーとなる不死化されたハイブリドーマと融合される。得られたハイブリドーマのスクリーニングが行なわれ、標的に最も強く結合する抗体を分泌するものが選択される。こうした方法を用いてがん細胞に向かう多くの治療用抗体と診断用抗体(例えばハーセプチン(登録商標)やリツキシマブ)が製造され、その親和性に基づいて選択されている。この戦略の欠点は2つある。第1に、治療用抗体または診断用抗体が結合する適切な標的の選択法は、組織特異的がん生成プロセスにまつわる知識が不足していることと、その結果としてその標的を同定するための方法が非常に単純であること(例えば過剰発現による選択)によって限定されている。第2に、大きな親和性で受容体に結合する薬分子は、通常、信号を発生または抑制する確率が最も大きい、という仮定は必ずしも正しくない可能性がある。
【0028】
乳がんと大腸がんの治療はいくらか進歩したにもかかわらず、効果的な抗体療法を突き止めることと開発することは、単一の薬としてであれ、組み合わせる治療法であれ、あらゆるタイプのがんに関して不十分なままである。
【0029】
これまでの特許:
【0030】
アメリカ合衆国特許第5,750,102号には、患者の腫瘍からの細胞をMHC遺伝子とともにトランスフェクトする方法が開示されている。MHC遺伝子は、患者からの細胞または組織からクローニングすることができる。
【0031】
アメリカ合衆国特許第4,861,581号には、哺乳動物の腫瘍細胞と正常細胞の内部細胞成分に対して特異的で外部成分に対しては特異的でないモノクローナル抗体を取得するステップと、そのモノクローナル抗体を標識するステップと、標識したその抗体を、腫瘍細胞を殺す治療を受けた哺乳動物の細胞と接触させるステップと、退縮している腫瘍細胞の細胞内成分への標識したその抗体の結合を測定することによって治療法の有効性を明らかにするステップを含む方法が開示されている。特許権者は、ヒト細胞内抗原に向かう抗体を調製するにあたって悪性腫瘍細胞がそのような抗原の便利な供給源であることを認識している。
【0032】
アメリカ合衆国特許第5,171,665号では、新規な抗体とその製造方法が提供される。より詳細には、この特許は、ヒト腫瘍(例えば大腸腫瘍や肺腫瘍)に関係するタンパク質抗原と強く結合するが、正常細胞にははるかに少ない程度しか結合しない性質を持ったモノクローナル抗体の形成を教示している。
【0033】
アメリカ合衆国特許第5,484,596号では、がん患者から腫瘍組織を外科的に取り出すステップと、その腫瘍組織を処理して腫瘍細胞を得るステップと、その腫瘍細胞に放射線を照射して生きているが腫瘍は発生させないようにするステップと、その細胞を用いて原発性腫瘍の再発を抑制できると同時に転移を抑制できる患者用ワクチンを調製するステップを含むがんの治療法が提供される。この特許は、腫瘍細胞の表面抗原と反応するモノクローナル抗体の開発を教示している。特許権者は、第4欄、45行以下に記載しているように、ヒト新生物においてモノクローナル抗体を発現する能動的かつ特異的な免疫療法を開発するために自己由来の腫瘍細胞を利用する。
【0034】
アメリカ合衆国特許第5,693,763号は、ヒト癌腫に特徴的で発生源の上皮組織には依存しない糖タンパク質抗原を教示している。
【0035】
アメリカ合衆国特許第5,783,186号は、Her2を発現している細胞でアポトーシスを誘導する抗Her2抗体と、その抗体を産生するハイブリドーマ細胞系と、その抗体を用いてがんを治療する方法と、その抗体を含む医薬組成物に関する。
【0036】
アメリカ合衆国特許第5,849,876号には、腫瘍組織供給源と非腫瘍組織供給源から精製したムチン抗原に対するモノクローナル抗体を産生させるための新しいハイブリドーマ細胞系が記載されている。
【0037】
アメリカ合衆国特許第5,869,268号は、望む抗原に特異的な抗体を産生させるヒト・リンパ球を作り出す方法と、モノクローナル抗体の製造法と、その方法によって製造されたモノクローナル抗体に関する。この特許は特に、がんの診断と治療に役立つ抗HDヒト・モノクローナル抗体の製造に関する。
【0038】
アメリカ合衆国特許第5,869,045号は、ヒトがん細胞と反応する抗体、抗体フラグメント、抗体複合体、一本鎖免疫毒素に関する。これらの抗体が機能するメカニズムは2通りある。それは、その抗体分子がヒト癌腫の表面に存在する細胞膜抗原と反応することと、その抗体が、そのがん細胞の中に内部化される能力を持つことである。そのためこの抗体は、結合した後に抗体-薬複合体と抗体-毒素複合体を形成するのに特に役立つ。抗体は、修飾されていない形態でも、特定の濃度で細胞傷害特性を示す。
【0039】
アメリカ合衆国特許第5,780,033号には、自己抗体を利用した腫瘍の治療法と予防法が開示されている。しかしこの抗体は、年老いた哺乳動物からの抗核自己抗体である。この場合には、この自己抗体は、免疫系で見いだされる自然抗体の1つのタイプであると言われる。この自己抗体は“年老いた哺乳動物”に由来するため、自己抗体が実際に治療している患者からのものである必要はない。それに加え、この特許には、年老いた哺乳動物からの自然かつモノクローナルな抗核自己抗体と、モノクローナル抗核自己抗体を産生するハイブリドーマ細胞系が開示されている。
【0040】
アメリカ合衆国特許第5,840,854号には、GA733-1に対する特異的抗体BR110が開示されている。この特許には、免疫毒素複合体としてのBR110の試験管内での機能が開示されている。この抗体に関して裸の抗体としての試験管内での機能は開示されていない。この抗体に関する生体内の機能も開示されていない。
【0041】
アメリカ合衆国特許第6,653,104号は、抗原のホスト(例えばEGP-1)に対する免疫毒素複合抗体(例えばRS7)の権利を主張している。免疫毒素は、リボ核酸の活性を持つものに限られる。しかし実施例には、CD22に対して特異的な免疫毒素複合抗体LL2だけが開示されている。この明細書には、試験管内または生体内でのRS7の機能は開示されていない。
【0042】
アメリカ合衆国特許出願公開2004/0001825A1には、EGP-1に対する特異的抗体RS7が開示されている。この出願には、放射性標識をした複合体としてのRS7の試験管内での機能が開示されている。この抗体に関して裸の抗体としての試験管内での機能は開示されていない。この出願には、放射性標識した複合体と標識していない複合体を順番に投与した結果として得られるRS7の生体内機能も開示されている。しかしこの研究は1人の患者に限られているため、観察された機能が標識していない抗体を原因としているかどうかはわからない。裸の抗体を投与して得られるRS7の生体内機能も開示されていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0043】
本願では、がん性疾患軽減モノクローナル抗体をコードしているハイブリドーマ細胞系を単離するため、アメリカ合衆国特許第6,180,357号に教示されている患者特異的抗がん抗体を製造する方法を利用する。これら抗体は1種類の腫瘍専用の抗体にできるため、がん療法のカスタム化が可能になる。本願の文脈では、細胞殺傷(細胞傷害)特性または細胞成長抑制(細胞分裂抑制)特性を持つ抗がん抗体を今後は細胞傷害性抗体と呼ぶことにする。これらの抗体は、がんのステージ決定と診断に役立つとともに、腫瘍の転移の治療にも使用できる。これらの抗体は、予防的治療法としてがんの予防にも使用できる。従来の薬発見パラダイムに従って作り出された抗体とは異なり、この方法で作り出された抗体は、悪性腫瘍組織の成長および/または生存と一体化していることが以前に示されていない分子と経路を標的とすることができる。さらに、これら抗体の結合親和性は細胞傷害イベントの開始条件に合っているため、より強い親和性相互作用には至らない可能性がある。また、標準的な化学療法剤(例えば放射性核種)を本発明のCDMABと結合させ、その化学療法を利用する対象を明確にすることも本発明の範囲である。CDMABを毒素、細胞傷害作用部分、酵素(例えばビオチンが結合した酵素)、サイトカイン、インターフェロン、標的部分またはレポータ部分、造血細胞のいずれかと結合させて抗体複合体を形成することもできる。CDMABは、単独で使用すること、または1種類以上のCDMAB/化学療法剤と組み合わせて使用することができる。
【0044】
個別化された抗がん治療の見通しがあることで、患者を管理する方法に変化がもたらされるであろう。同様の臨床でのシナリオは、最初に腫瘍サンプルを取得して登録するというものである。このサンプルをもとにして、すでに存在する一群のがん性疾患軽減抗体から腫瘍のタイプを明らかにすることができる。患者は従来のようにステージが判断されるが、利用可能な抗体は患者のステージを詳しく判断するのに役立つ。既存の抗体を用いて患者を直ちに治療することができ、この明細書に概略を示した方法を利用して、またはファージ提示ライブラリをこの明細書に開示したスクリーニング法と組み合わせて利用して、その患者の腫瘍に特異的な一群の抗体を作り出すことができる。治療しているのと同じエピトープのうちのいくつかを他の腫瘍も持っている可能性があるため、作り出されたすべての抗体が抗がん抗体のライブラリに追加されることになる。この方法に従って作り出された抗体は、これら抗体に結合するがんを持つ患者全員のがん性疾患を治療するのに役立つ可能性がある。
【0045】
患者は、抗がん抗体に加え、現在勧められている治療法を、数種類の方法を組み合わせる治療計画の一環として受けることを選択できる。本発明の方法で単離された抗体は非がん細胞に対して比較的毒性がないという事実により、抗体を大きな投与量で組み合わせ、単独で、または従来の治療法と組み合わせて使用することができる。治療指数が大きいことで短い時間スケールでの再治療も可能になるため、治療抵抗性の細胞が現われる可能性が低下するはずである。
【0046】
患者が最初の一連の治療に対して抵抗性である場合や、転移が進行している場合には、その腫瘍に特異的な抗体を製造する方法を繰り返して再治療することができる。さらに、転移を治療するため、抗がん抗体をその患者から取得した赤血球細胞と結合させて再注輸することができる。転移性がんの有効な治療法はほとんどないため、転移は通常は結果がよくなく、その結果として死に至ることの予告であった。しかし転移性がんは通常は血管網がよく発達しているため、赤血球による抗がん抗体の送達は、腫瘍部位にその抗体を集中させる効果を持つ可能性がある。転移前でさえ、たいていのがん細胞は、生存を宿主の血液供給に依存しているため、赤血球と結合した抗がん抗体は、その場所の腫瘍にも有効である可能性がある。あるいはこの抗体は、他の造血細胞(例えばリンパ球、マクロファージ、単球、ナチュラルキラー細胞など)と結合させることができる。
【0047】
5つのクラスの抗体が存在していて、そのそれぞれには、重鎖によって与えられる機能が付随している。一般に、裸の抗体によるがん細胞の殺傷は、抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)または補体依存性細胞傷害作用(CDC)を通じて媒介されると考えられている。例えばマウスのIgM抗体とIgG2a抗体は、補体系のC-1成分と結合することによってヒトの補体を活性化することができるため、補体活性化の古典的な経路が活性化されて腫瘍の溶解につながる可能性がある。ヒト抗体に関しては、最も有効な補体活性化抗体は、一般にIgMとIgG1である。マウスの抗体のIgG2aとIgG3というアイソタイプは、Fc受容体を持つ細胞傷害細胞をリクルートするのに有効であり、単球、マクロファージ、顆粒球や、ある種のリンパ球による細胞の殺傷につながる。ヒト抗体のIgG1とIgG3というアイソタイプの両方ともADCCを媒介する。
【0048】
Fc領域を通じて媒介される細胞傷害作用は、エフェクター細胞、それに対応する受容体、タンパク質のいずれか(例えばNK細胞、T細胞、補体)の存在を必要とする。これらエフェクター機構がないと、抗体のFc部分は不活性である。抗体のFc部分は、生体内における抗体の薬理動態に影響する性質を与える可能性があるが、試験管内ではこれは作動しない。
【0049】
抗体を媒介としてがんを殺傷することの可能な別のメカニズムは、細胞膜とそれに関連する糖タンパク質または糖脂質に含まれるさまざまな化学結合の加水分解を触媒する機能を持つ抗体(いわゆる触媒抗体)の利用を通じて起こる可能性がある。
【0050】
抗体を媒介としたがん細胞の殺傷には別の3つのメカニズムがある。第1は、抗体をワクチンとして使用し、がん細胞上に存在する仮想的抗原に対する免疫応答を身体に誘導する。第2は、増殖受容体を標的とする抗体を使用してその機能を妨げる、またはその受容体を下方調節してその機能を失わせるというものである。第3は、そのような抗体を細胞表面部分に直接連結させて(例えば、TRAIL R1やTRAIL R2といった死受容体、またはαVβ3などのインテグリン分子を連結させて)細胞死を引き起こす効果である。
【0051】
がん治療薬の臨床上の有用性は、その薬が患者にとって許容可能なリスク・プロファイルのもとで利益をもたらすことに基づいている。がんの治療では、一般に生存が最も求められる利益だが、寿命を延ばすことに加え、よく知られている他の多くの利益がある。そうした他の利益として、治療が生存に悪影響を及ぼさない場合には、症状の緩和、好ましくない事象からの保護、再発までの時間の延長、疾患なしの生存、進行するまでの時間の延長などがある。これらの基準は一般に受け入れられており、規制機関(例えばアメリカ合衆国食品医薬品局(FDA))は、こうした利益を生み出す薬を承認している(Hirschfeld他、Critical Reviews in Oncology/Hematology、第42巻、137〜143ページ、2002年)。こうした基準に加え、こうしたタイプの利益が予想される可能性のある他の目標もよく知られている。その一環として、アメリカ合衆国のFDAによる承認プロセスが加速されているのは、同様に患者の利益になることが予想される代替物があると認識されているためである。2003年末の時点で、16種類の薬がこのプロセスのもとで承認され、そのうちの4種類が完全承認された。すなわち追跡調査により、代替目標によって予測されたように直接的な患者の利益になることが証明された。固形腫瘍において薬の効果を明らかにするための重要な1つの目標は、治療に対する応答を測定することによる腫瘍組織量の評価である(Therasse他、Journal of the National Cancer Institute、第92巻(3)、205〜216ページ、2000年)。このような評価のための臨床上の基準(RECIST基準)が、がんの国際的な専門家の集団である固形腫瘍ワーキング・グループの応答評価基準として公表されている。RECIST基準に従う客観的な応答によって示されるように、腫瘍組織量に対して証明された効果を持つ薬は、適切な対照群と比べたとき、最終的に患者に直接的な利益をもたらす傾向がある。前臨床試験では、一般に腫瘍組織量がより直接的に評価され記録される。前臨床試験を臨床での設定に翻訳できるため、前臨床モデルで生存期間を延ばした薬は、臨床上の有用性が最大であることが予想される。前臨床試験で腫瘍組織量を減らす薬は、臨床治療にプラスの効果があるのと同じように、疾患に対する大きな直接的な影響も持つ可能性がある。生存期間の延長は、がんの薬剤治療で最も求められる臨床上の結果であるとはいえ、臨床上の有用性がある他の利益も存在しており、それが腫瘍組織量の減少であることは明らかである。腫瘍組織量の減少は、疾患の進行遅延と生存期間延長の一方または両方と相関している可能性があるため、直接的な利益につながる可能性もあり、臨床的な影響を持つ(Eckhardt他、『治療薬の開発:標的化合物の臨床試験設計の成功と失敗』、ASCOエデュケーショナル・ブック、第39回年会、2003年、209〜219ページ)。
【0052】
アメリカ合衆国特許第6,180,357号とアメリカ合衆国特許特許出願11/709,676に開示されている方法(そのそれぞれの内容は、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)を実質的に利用し、マウスをヒト卵巣腫瘍組織からの細胞で免疫化することによってマウスのモノクローナル抗体AR47A6.4.2を取得した。AR47A6.4.2抗原は、さまざまな起源の組織に由来する広い範囲のヒト細胞系の細胞表面で発現していた。卵巣がん細胞系OVCAR-3は、試験管内でAR47A6.4.2の細胞傷害効果に感受性があった。
【0053】
試験管内におけるヒトがん細胞に対するAR47A6.4.2細胞傷害作用の結果は、(アメリカ合衆国特許特許出願11/709,676に開示されているように)生体内における抗腫瘍活性が証明されることによってさらに拡張された。AR47A6.4.2は、ヒト膵臓がんの生体内予防BxPC-3モデルにおいて腫瘍の成長を抑制し、腫瘍組織量を減らした。治療の最終日である移植後49日目、AR47A6.4.2で治療した群の腫瘍の体積の平均は、緩衝液で処理した対照群よりも53%小さかった(p<0.05)。実験を通じて毒性の臨床的徴候はなかった。まとめると、AR47A6.4.2は、このヒト膵臓がん異種移植片モデルでよく許容され、腫瘍組織量を減らした。
【0054】
ヒト膵臓がんのBxPC-3モデルに関するAR47A6.4.2の効果をさらに調べるため、(アメリカ合衆国特許特許出願11/709,676に開示されているようにして)この抗体を確立されたBxPC-3異種移植片モデルでテストした。AR47A6.4.2は、ヒト膵臓がんの確立されたモデルにおいて腫瘍組織量を有意に減らした。抗体を最後に投与した1日後である54日目、AR47A6.4.2で治療した動物は、腫瘍の体積の平均が、対照となる処理群の動物の40%であった(p<0.0001)。これらの結果は、AR47A6.4.に関して平均T/Cが30%であることに対応している。実験を通じて毒性の臨床的徴候はなかった。まとめると、AR47A6.4.2は、この確立されたヒト膵臓がん異種移植片モデルでよく許容され、腫瘍組織量を減らした。AR47A6.4.2は、ヒト膵臓がんの予防モデルと確立されたモデルの両方で効果を示した。
【0055】
AR47A6.4.2は、ヒト膵臓がんモデルに対して抗がん効果を持つことが証明された。この知見を拡張するため、(アメリカ合衆国特許特許出願11/709,676に開示されているようにして)PL45ヒト膵臓がんの異種移植片モデルでAR47A6.4.2を調べた。AR47A6.4.2は、ヒト膵臓がんのPL45生体内予防モデルで腫瘍の成長を完全に抑制した。ARIUS抗体AR47A6.4.2を用いた治療により、抗体を最後に投与してから20日後で対照群と抗体治療群のほぼすべてのマウスが生きていた77日目には、PL45腫瘍の成長が緩衝液で処理した群と比べてほぼ100%少なくなった(p=0.0005、t検定)。最後の投与から45日後の102日目、腫瘍の体積が原因で対照群のすべてのマウスが実験から取り除かれていた。しかしAR47A6.4.2は腫瘍の成長をほぼ完全に抑制することがやはり証明され、その群の4匹のマウスはまだ生きていた(何匹かのマウスはがんと無関係の事件のために死んでいた)。実験を通じて毒性の明らかな臨床的徴候はなかった。まとめると、AR47A6.4.2は、このヒト膵臓がん異種移植片モデルでよく許容され、腫瘍の成長をほぼ完全に抑制した。AR47A6.4.2を用いた治療により、緩衝液で処理した場合と比べて生存期間が延びることも証明された。したがってAR47A6.4.2は、ヒト膵臓がんの2つの異なるモデルで効果が証明された。
【0056】
AR47A6.4.2は、2つの異なるヒト膵臓がん異種移植片モデルで抗がん特性を示した。異なるヒトがん異種移植片モデルに対するAR47A6.4.2の効果を調べるため、(アメリカ合衆国特許特許出願11/709,676に開示されているようにして)この抗体をPC-3前立腺がん異種移植片モデルでテストした。AR47A6.4.2は、ヒト前立腺腺癌細胞のPC-3生体内予防モデルで腫瘍の成長を抑制した。ARIUS抗体AR47A6.4.2を用いた治療により、抗体を5回投与した後で対照群と抗体治療群のほぼすべてのマウスが生きていた32日目には、緩衝液で処理した群と比べてPC-3腫瘍の成長が60.9%減った(p=0.00037、t検定)。抗体を最後に投与する3日前である47日目までに、腫瘍の体積/病変のため、対照群のすべてのマウスが実験から取り除かれていた。抗体を最後に投与してから27日後の77日目、AR47A6.4.2治療群のマウスの40%がまだ生きていた。実験を通じて毒性の明らかな臨床的徴候はなかった。まとめると、AR47A6.4.2は、このヒト前立腺がん異種移植片モデルでよく許容され、腫瘍の成長を有意に抑制した。抗体を用いた治療により、対照群と比べて生存期間の利益があることも証明された。AR47A6.4.2は、2つの異なるヒトがん症状、すなわち膵臓がんと前立腺がんで効果が証明された。
【0057】
AR47A6.4.2は、ヒトの膵臓がんと前立腺がんという2つの異なるがん異種移植片モデルに対して抗がん特性を示した。別のヒトがん異種移植片モデルに対するAR47A6.4.2の効果を調べるため、(アメリカ合衆国特許特許出願11/709,676に開示されているようにして)この抗体をMCF-7がん異種移植片モデルでテストした。AR47A6.4.2は、ヒト乳がんのMCF-7生体内予防モデルで腫瘍の成長を減らした。ARIUS抗体AR47A6.4.2を用いた治療により、腫瘍の成長が顕著に遅延した。AR47A6.4.2は、治療の18日目から35日目に42%よりも小さいT/C%値を誘導し、49日目までは42%に近かった(最適なT/C%値は18日目の10.9%)。治療が終了した後の53日目、AR47A6.4.2を用いた治療の効果はまだ観察され、T/Cは57%であった。実験終了時(91日目)に、AR47A6.4.2治療群の2匹のマウスは腫瘍がないままであった。治療後の生存という利益は、AR47A6.4.2の投与と関係していた。緩衝液を用いた対照群は、治療後の85日目までに100%死亡したのに対し、AR47A6.4.2で治療したマウスの33.3%が治療後の91日目にまだ生きていた。実験を通じて毒性の臨床的徴候はなかった。まとめると、AR47A6.4.2は、このヒト乳がん異種移植片モデルにおいてよく許容され、腫瘍の成長を減らし、生存という利益をもたらした。AR47A6.4.2は、3つの異なるヒトがん症状、すなわち膵臓がん、前立腺がん、及び乳がんで効果が証明された。
【0058】
AR47A6.4.2は、ヒトの膵臓がん、前立腺がん、乳がんという3つの異なるがん異種移植片モデルに対して抗がん特性を示した。別のヒトがん異種移植片モデルに対するAR47A6.4.2の効果を調べるため、(アメリカ合衆国特許特許出願11/709,676に開示されているようにして)この抗体をColo 205大腸がん異種移植片モデルでテストした。AR47A6.4.2は、ヒト結腸癌腫細胞のColo 205生体内予防モデルで腫瘍の成長を抑制した。ARIUS抗体AR47A6.4.2を用いた治療により、抗体を最後に投与する4日前である27日目には、緩衝液で処理した群と比べてColo 205腫瘍の成長が60.2%減った(p=0.0003851、t検定)。実験を通じて毒性の明らかな臨床的徴候はなかった。まとめると、AR47A6.4.2は、このヒト大腸がん異種移植片モデルでよく許容され、腫瘍の成長を有意に抑制した。AR47A6.4.2は、4つの異なるヒトがん症状、すなわち膵臓がん、前立腺がん、乳がん、大腸がんで効果が証明された。治療による利益が、ヒトがん疾患のよく知られているいくつかのモデルで観察された。これは、ヒトを含む他の哺乳動物における治療でのこの抗体の薬理学的な恩恵と医薬としての恩恵を示唆している。要するに、このデータは、AR47A6.4.2抗原ががん関連抗原であり、ヒトがん細胞で発現し、病理学的に重要ながんの標的であることを示している。
【0059】
以前に開示されているように(アメリカ合衆国特許特許出願11/709,676)、生化学的データは、AR47A6.4.2によって認識される抗原がTROP-2であることを示していた。これは、TROP-2に反応するモノクローナル抗体(クローン77220.11、R&Dシステムズ社、ミネアポリス、ミネソタ州)が、免疫沈降によってAR47A6.4.2に結合したタンパク質と同じであることを示す研究によって支持された。それに加え、AR47A6.4.2は、ウエスタン・イムノブロット法によってヒトTROP-2の組み換え形態を特異的に認識した。AR47A6.4.2エピトープは炭水化物に依存するようには見えず、コンホメーションに依存するように見える。AR47A6.4.2は、別の抗TROP-2抗体であるAR52A301.5からの明確に異なるエピトープと結合することも明らかにされた。
【0060】
(アメリカ合衆国特許特許出願11/709,676に開示されているように)AR47A6.4.2エピトープの有用性を明らかにするため、凍結させた正常なヒト組織切片(実験により、この抗体はホルマリン固定組織と反応しないことがわかった)におけるAR47A6.4.2抗原の発現が以前に明らかにされた。ヒト正常組織のスクリーニング・アレイ(バイオチェイン社、カリフォルニア州、アメリカ合衆国)を使用して12個のヒトの正常な器官、すなわち卵巣、膵臓、甲状腺、脳(大脳、小脳)、肺、脾臓、子宮、子宮頸、心臓、皮膚、及び骨格筋に対する結合が調べられた。このアレイは20種類の正常なヒト器官を含んでいた。しかし12種類の器官だけが染色後に解釈可能であった。AR47A6.4.2抗体は上皮組織(血管の内皮、甲状腺の小包上皮、膵臓の細葉上皮と管上皮、肺の肺胞上皮、皮膚の表皮ケラチノサイト)に多く結合した。この抗体は、脾臓のリンパ組織への明確でない結合と、脳の神経組織への結合も示した。細胞での局在場所は細胞質と膜であり、広範な染色パターンを示した。AR47A6.4.2は、抗TROP-2抗体(クローン77220.11)の研究と比べると似た結合パターンを示した。
【0061】
(アメリカ合衆国特許特許出願11/709,676に開示されているように)AR47A6.4.2の治療上の利益をさらに大きなものにするため、さまざまなヒトがん組織とそれに対応する正常組織切片(10個の大腸がんと1個の正常な大腸、7個の卵巣がんと1個の正常な卵巣、11個の乳がんと3個の正常な乳房、14個の肺がんと3個の正常な肺、13個の前立腺がんと3個の正常な前立腺、及び13個の膵臓がんと4個の正常な膵臓)の内部での抗原の頻度と局在も以前に調べられた。AR47A6.4.2は、中程度から強い結合を、5/10(50%)の大腸がん、6/7(86%)の卵巣がん、10/11(91%)の乳がん、11/14(79%)の肺がん、13/13(100%)の前立腺がん、及び2/13(15%)の膵臓がんで示した。調べた腫瘍のすべてで結合は腫瘍細胞に特異的であった。対応する正常組織に関しては、この抗体は、正常な大腸組織の0/1、正常な卵巣組織の0/1、正常な乳房組織の3/3、正常な肺組織の3/3、正常な前立腺組織の3/3、及び正常な膵臓組織の4/4に結合したが、正常な器官の上皮組織に対して多く結合した。
【0062】
(アメリカ合衆国特許特許出願11/709,676に開示されているように)IHC実験が以前に行なわれ、さまざまな種の凍結させた正常組織でのAR47A6.4.2抗原の交差反応性が特徴づけられた。調べたマウス、ラット、モルモット、ヤギ、ヒツジ、ハムスター、ニワトリ、ウシ、ウマ、又はブタの正常組織に対するAR47A6.4.2の結合は検出できなかった。ウサギとイヌの正常組織に関しては、対応するヒト組織で観察されたのとは異なる結合が存在していた。カニクイザルの正常組織に関しては、AR47A6.4.2は、調べたすべての器官のヒトの対応する正常組織で同様の組織特異性が観察されたが、卵巣と精巣は別で、カニクイザルの切片で検出可能な結合は観察されなかった。アカゲザルの正常組織に関しては、AR47A6.4.2は、対応するヒトの正常組織で観察されたのと同様の組織特異性を示した。アカゲザルの正常組織の集団は、カニクイザルで調べたものよりも小さいことに注意すべきである。染色プロファイルに基づくと、カニクイザルとアカゲザルの両方とも、ヒト組織でのAR47A6.4.2抗原の分布と似ている。
【0063】
キメラ抗体の製造を容易にするため、(以前にアメリカ合衆国特許特許出願11/709,676に開示されているようにして)重鎖と軽鎖両方の可変領域をコードしている遺伝子を別々にクローニングし、配列を明らかにした。
【0064】
本発明は、AR47A6.4.2と、キメラAR47A6.4.2((ch)AR47A6.4.2)と、ヒト化変異体(hu)AR47A6.4.2の開発と利用を記述している。AR47A6.4.2は、がん性疾患を患っている哺乳動物における細胞傷害アッセイと、腫瘍成長モデルと、生存期間の延長における効果によって同定された。本発明は、標的分子TROP-2の表面に存在する1つまたは複数のエピトープに特異的に結合する試薬を初めて記載しているという点と、その試薬が、裸の抗体として、正常細胞ではなく悪性腫瘍に対して試験管内の細胞傷害特性も持ち、ヒトがんの生体内モデルにおける腫瘍成長抑制と生存期間延長を直接的に媒介もするという点で、がん治療の分野における進歩を示している。これは、以前に記載された他のあらゆる抗TROP-2抗体との関係で進歩である。なぜなら誰も同様の特性を持つことをこれまで示していないからである。本発明は、ある種の腫瘍の成長と発展に関係するイベントにTROP-2が直接的に関与していることを初めて明確に示したという理由でも進歩している。本発明は、ヒトの患者で同様の抗がん特性を示す可能性があるという理由で、がん治療においても進歩している。さらに別の進歩は、これら抗体を抗がん抗体のライブラリに含めると、腫瘍の成長と発展に狙いを定めて抑制するの最も有効なものを見いだすためにさまざまな抗がん抗体の適切な組み合わせを決定することにより、さまざまな抗原マーカーを発現する腫瘍を標的にできる可能性が大きくなることである。
【0065】
要するに、本発明は、治療薬の標的としてAR47A6.4.2抗原を利用することを教示しており、投与したときに哺乳動物においてその抗原を発現しているがんの腫瘍組織量を小さくすることができ、治療した哺乳動物の生存期間を延ばすことにもなる。本発明は、CDMAB(AR47A6.4.2、キメラAR47A6.4.2((ch)AR47A6.4.2)、ヒト化変異体(hu)AR47A6.4.2)とその誘導体、これらの抗原結合フラグメント、これらの細胞傷害作用誘導リガンドを利用して対応する抗原を標的とし、哺乳動物においてその抗原を発現しているがんの腫瘍組織量を減らすことも教示している。さらに、本発明は、がん細胞中のAR47A6.4.2抗原の検出結果を利用することも教示している。そうすることにより、この抗原を発現する腫瘍を持つ哺乳動物の診断、治療法予測、予後予測に役立てることができる。
【0066】
したがって本発明の1つの目的は、特定の個人、または1つ以上の特定のがん細胞系に由来するがん細胞に対するがん性疾患軽減抗体(CDMAB)として、がん細胞に対して細胞傷害性であると同時に非がん細胞に対しては比較的毒性がないものを製造する方法を利用し、ハイブリドーマ細胞系と、対応する単離されたモノクローナル抗体と、ハイブリドーマ細胞系がコードする対象である、その抗体の抗原結合フラグメントとを単離することである。
【0067】
本発明の別の目的は、がん性疾患軽減抗体と、リガンドと、その抗原結合フラグメントとを提示することである。
【0068】
本発明のさらに別の目的は、細胞傷害作用が抗体依存性細胞毒性を通じて媒介されるがん性疾患軽減抗体を製造することである。
【0069】
本発明のさらに別の目的は、細胞傷害作用が補体依存性細胞毒性を通じて媒介されるがん性疾患軽減抗体を製造することである。
【0070】
本発明のさらに別の目的は、細胞傷害作用が、細胞の化学結合の加水分解を触媒する能力に依存するがん性疾患軽減抗体を製造することである。
【0071】
本発明のさらに別の目的は、がんの診断、予防、監視のための結合アッセイに役立つがん性疾患軽減抗体を製造することである。
【0072】
本発明の他の目的と利点は、本発明のいくつかの実施態様が説明と例示のために記載されている以下の説明から明らかになろう。
【0073】
この特許出願のファイルには、少なくとも1枚のカラー図面が含まれている。カラー図面のあるこの特許出願の刊行物のコピーは、請求して必要な費用を支払うと特許庁から提供されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】予防ヒトMDA-MB-231乳がんモデルにおける腫瘍の成長に対するAR47A6.4.2の効果を示す。縦軸方向の2本の点線は、抗体を腹腔内に投与した期間を示す。データ点は、平均値±SEMを表わす。
【図2】予防MDA-MB-231乳がんモデルにおけるマウスの生存に対するAR47A6.4.2の効果を示す。データ点は生存率を表わす。
【図3】予防MDA-MB-231乳がんモデルにおけるマウスの体重に対するAR47A6.4.2の効果を示す。データ点は、平均値±SEMを表わす。
【図4】確立されたヒトPL45膵臓がんモデルにおける腫瘍の成長に対するAR47A6.4.2の効果が投与量に応じて異なることを示す。縦軸方向の2本の点線は、抗体を腹腔内に投与した期間を示す。データ点は、平均値±SEMを表わす。
【図5】確立されたPL45膵臓がんモデルにおけるマウスの生存に対するAR47A6.4.2の効果を示す。データ点は生存率を表わす。
【図6】確立されたPL45膵臓がんモデルにおけるマウスの体重に対するAR47A6.4.2の効果を示す。データ点は、平均値±SEMを表わす。
【図7】異なる組織のマイクロアレイからのさまざまなヒト腫瘍切片とヒト正常組織切片に対するAR47A6.4.2をIHCで比較した結果を示す表である。
【図8】さまざまなヒト腫瘍組織のマイクロアレイからAR47A6.4.2(A)またはそのアイソタイプの対照抗体(B)を用いて乳房腫瘍組織で得られた結合パターン、AR47A6.4.2(C)またはそのアイソタイプの対照抗体(D)を用いて前立腺腫瘍組織で得られた結合パターン、AR47A6.4.2(E)またはそのアイソタイプの対照抗体(F)を用いて膵臓腫瘍組織で得られた結合パターンを示す代表的な顕微鏡写真である。倍率は、乳房腫瘍組織と膵臓腫瘍組織では400倍、前立腺腫瘍組織では200倍である。
【図9】AR47A6.4.2(A)またはそのアイソタイプの対照抗体(B)を用いて卵巣腫瘍組織で得られた結合パターンを示す代表的な顕微鏡写真である。倍率は200倍である。
【図10】BxPC-3細胞をAR47A6.4.2で処理した後に血清と追加添加物で刺激することによってリン酸化が影響を受けるキナーゼのリストである。
【図11】BxPC-3細胞をAR47A6.4.2で処理することによって影響を受けて分泌される血管新生因子のリストである。
【図12】2つの異なるヒト膵臓がん細胞系PL45とBxPC-3に対するAR47A6.4.2の試験管内CDC活性を示す。
【図13】TROP-2アミノ酸配列に基づいて合成されたCLIPSペプチド(現われる順番に、それぞれ配列番号13〜32)へのAR47A6.4.2の結合。
【図14】TROP-2のアミノ酸配列(配列番号33)。AR47A6.4.2によって認識される不連続なエピトープが下線部の配列に含まれている。アミノ酸位置1〜274はTROP-2の細胞外部分を表わし、アミノ酸位置275〜290はTROP-2の膜貫通部分を表わし、アミノ酸位置291〜323はTROP-2の細胞内部分を表わす。
【図15】軽鎖をPCRで増幅する際に用いるプライマー(現われる順番に、それぞれ配列番号34〜52)である。
【図16】重鎖をPCRで増幅する際に用いるプライマー(現われる順番に、それぞれ配列番号53〜68)である。
【図17】マウスのAR47A6.4.2 VH配列(配列番号69〜70としてそれぞれ開示されているヌクレオチド配列とアミノ酸配列)。
【図18】マウスのAR47A6.4.2 VL配列(配列番号71〜72としてそれぞれ開示されているヌクレオチド配列とアミノ酸配列)。
【図19】キメラAR47A6.4.2 VH配列とヒト化AR47A6.4.2 VH変異体配列(現われる順番に、それぞれ配列番号73〜92)を作り出すのに用いられるオリゴヌクレオチド。
【図20】キメラAR47A6.4.2 VL配列とヒト化AR47A6.4.2 VL変異体配列(現われる順番に、それぞれ配列番号93〜110)を作り出すのに用いられるオリゴヌクレオチド。
【図21】軽鎖発現ベクターと重鎖発現ベクター。
【図22A】ヒト化AR47A6.4.2VH変異体。CDRに下線を引いてある(現われる順番に、それぞれ配列番号111〜113、10、7、114)。
【図22B】ヒト化AR47A6.4.2VH変異体。CDRに下線を引いてある(現われる順番に、それぞれ配列番号111〜113、10、7、114)。
【図22C】ヒト化AR47A6.4.2VH変異体。CDRに下線を引いてある(現われる順番に、それぞれ配列番号111〜113、10、7、114)。
【図23A】ヒト化AR47A6.4.2 VL変異体。CDRに下線を引いてある(現われる順番に、それぞれ配列番号115、9、8、116〜117)。
【図23B】ヒト化AR47A6.4.2 VL変異体。CDRに下線を引いてある(現われる順番に、それぞれ配列番号115、9、8、116〜117)。
【図23C】ヒト化AR47A6.4.2 VL変異体。CDRに下線を引いてある(現われる順番に、それぞれ配列番号115、9、8、116〜117)。
【図24】ヒト化AR47A6.4.2 VH変異体とヒト化AR47A6.4.2 VL変異体の活性。
【図25】rhTROP-2に対するマウスAR47A6.4.2とさまざまな変異体(hu)AR47A6.4.2の結合親和性の会合速度定数(Ka)と解離速度定数(Kd)のまとめ。
【発明を実施するための形態】
【0075】
一般に、以下の用語または表現は、要約、明細書、実施例、請求項で使用されているときに以下に示す定義を持つ。
【0076】
この明細書では、“抗体”という用語は最も広い意味で用いられ、特に、単独のモノクローナル抗体(アゴニスト、アンタゴニスト、中和抗体、脱免疫化抗体、マウス抗体、キメラ抗体、又はヒト化抗体が含まれる)、多エピトープ特異性を持つ抗体組成物、一本鎖抗体、二重特異性抗体、三重特異性抗体、免疫複合体及び抗体フラグメントなどが挙げられる(以下参照)。
【0077】
この明細書では、“モノクローナル抗体”という用語は、実質的に一様な抗体の集団から得られた抗体を意味する。すなわちその集団に含まれる個々の抗体は、わずかな量が存在している可能性のある自然発生の突然変異体を除いて同じである。モノクローナル抗体は特異性が大きく、単一の抗原部位に向かう。さらに、それぞれのモノクローナル抗体は、さまざまな抗体が含まれていてさまざまな決定基(エピトープ)に向かうポリクローナル抗体調製物とは異なり、抗体上の単一の決定基に向かう。モノクローナル抗体は、その特異性に加え、他の抗体によって汚染されていないものを合成できるという利点がある。“モノクローナル”という修飾語は、抗体が、実質的に一様な抗体の集団から得られたものであるという特徴を示しており、何らかの特定の方法でその抗体を作る必要があると考えてはならない。例えば本発明で用いるモノクローナル抗体は、Kohler他、Nature、第256巻、495ページ、1975年によって初めて記載されたハイブリドーマ(マウスまたはヒト)法によって作ること、または組み換えDNA法(例えばアメリカ合衆国特許第4,816,567号を参照のこと)によって作ることができる。“モノクローナル抗体”は、例えばClackson他、Nature、第352巻、624〜628ページ、1991年とMarks他、J. Mol. Biol.、第222巻、581〜597ページ、1991年に記載されている方法を利用してファージ抗体ライブラリから単離することもできる。
【0078】
“抗体フラグメント”は、完全な1つの抗体の一部を含んでおり、その部部にはその抗体の抗原結合領域または可変領域が含まれていることが好ましい。抗体フラグメントの例として、完全長抗体よりも短いFab、Fab'、F(ab')2、Fvフラグメント;二重特異性抗体;線状抗体;一本鎖抗体分子;抗体フラグメントから形成された一本鎖抗体、単一ドメイン抗体分子、融合タンパク質、組み換えタンパク質、及び多重特異性抗体が挙げられる。
【0079】
“完全な”1つの抗体は、抗原結合可変領域と、軽鎖定常領域(CL)と、重鎖定常領域CH1、CH2、及びCH3を含むものである。定常領域として、天然状態の配列の定常領域(例えば天然状態のヒト配列の定常領域)またはそのアミノ酸配列変異体が可能である。完全な1つの抗体は、1つ又は複数のエフェクター機能を持つことが好ましい。
【0080】
完全な抗体は、重鎖の定常領域のアミノ酸配列が何であるかに応じ、異なる“クラス”に分類することができる。完全な抗体には5つの主要なクラスがある。すなわち、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMである。これらのうちのいくつかは、さらに“サブクラス”(アイソタイプ)に分割することができ、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2がある。異なるクラスの抗体に対応する重鎖定常領域は、それぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造と三次元配置はよく知られている。
【0081】
抗体の“エフェクター機能”は、1つの抗体のFc領域(天然状態の配列のFc領域、またはアミノ酸配列変異体のFc領域)に帰することのできる生物活性を意味する。抗体のエフェクター機能の例として、C1qの結合;補体依存性細胞傷害作用;Fc受容体の結合;抗体依存性細胞性細胞傷害作用(ADCC);貪食;細胞表面受容体(例えばB細部受容体;BCR)の下方調節などがある。
【0082】
“抗体依存細胞性細胞傷害作用”と“ADCC”は、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的細胞傷害性細胞(例えばナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、マクロファージ)が標的細胞に結合した抗体を認識し、その後その標的細胞の溶解を引き起こすという、細胞を媒介とした反応を意味する。ADCCを媒介する主要な細胞であるNK細胞は、FcγRIIIだけを発現するのに対し、単球は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞でのFcRの発現は、RavetchとKinet、Annu. Rev. Immunol.、第9巻、457〜492ページ、1991年の464ページにある表3にまとめられている。興味の対象である分子のADCC活性を評価するには、アメリカ合衆国特許第5,500,362号または第5,821,337号に記載されている試験管内ADCCアッセイを実施するとよい。このようなアッセイのための有用なエフェクター細胞として、末梢血単核細胞(PBMC)とナチュラルキラー(NK)細胞がある。あるいは、またはそれに加えて、興味の対象である分子のADCC活性は、例えばClynes他、PNAS (USA)、第95巻、652〜656ページ、1998年に開示されているような動物モデルにおいて、生体内で評価することができる。
【0083】
“エフェクター細胞”は、1つ又は複数のFcRを発現していてエフェクター機能を実行する白血球である。少なくともFcγRIIIを発現していてADCCエフェクター機能を実行する細胞が好ましい。ADCCを媒介するヒト白血球の例として、末梢血単核細胞(PBMC)、ナチュラル・キラー(NK)細胞、単球、細胞傷害性T細胞、及び好中球などがあるが、PBMCとNK細胞が好ましい。エフェクター細胞は、この明細書に記載されているように、その天然の供給源(例えば血液またはPBMC)から単離することができる。
【0084】
“Fc受容体”または“FcR”という用語は、抗体のFc領域に結合する受容体を記述するのに用いられる。好ましいFcRは、天然のヒト配列を持つFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体と結合するもの(γ受容体)であり、受容体のFcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIというサブクラスが挙げられる。その中には、対立遺伝子変異体や、これら受容体の選択的スプライシング形態も含まれる。FcγRII受容体にはFcγRIIA(“活性化受容体”)とFcγRIIB(“抑制受容体”)が含まれ、これらは、主に細胞質ドメインが異なる似たアミノ酸配列を持つ。活性化受容体FcγRIIAは、免疫受容体チロシンをベースとした活性化モチーフ(ITAM)を細胞質ドメインに含んでいる。抑制受容体FcγRIIBは、免疫受容体チロシンをベースとした抑制モチーフ(ITIM)を細胞質ドメインに含んでいる。(M. Daeron、Annu. Rev. Immunol.、第15巻、203〜234ページ、1997年の総説を参照のこと)。FcRは、RavetchとKinet、Annu. Rev. Immunol.、第9巻、457〜492ページ、1991年;Capel他、Immunomethods、第4巻、25〜34ページ、1994年;de Haas他、J. Lab. Clin. Med.、第126巻、330〜341ページ、1995年に概説がある。他のFcRは、将来同定されるものも含め、この明細書の“FcR”という用語に含まれる。この用語には、母親のIgGを胎児に移す上で重要な新生児の受容体RcRnも含まれる(Guyer他、J. Immunol.、第117巻、587ページ、1976年;Kim他、Eur. J. Immunol.、第24巻、2429ページ、1994年)。
【0085】
“補体依存性細胞傷害作用”または“CDC”は、ある分子が補体の存在下で標的を溶解させる能力を意味する。補体活性化経路は、補体系の第1の成分(C1q)が、コグネイト抗原と複合体を形成した分子(例えば抗体)に結合することによって開始される。補体活性化を評価するには、例えばGazzano-Santoro他、J. Immunol. Methods、第202巻、163ページ、1996年に記載されているようにしてCDCアッセイを実施するとよい。
【0086】
“可変”という用語は、可変領域のある部分の配列が抗体同士で大きく異なっていて特定の抗原に対する各抗体の結合と特異性のために用いられるという事実を意味する。しかし可変性は、抗体の可変領域全体に均等に分布しているわけではなく、軽鎖可変領域と重鎖可変領域の両方の超可変領域と呼ばれる3つの区画に集中している。可変領域の非常によく保存されている部分はフレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然状態の重鎖と軽鎖の可変領域は、それぞれ、3つの超可変領域によって接続された4つのFR(たいていβシート構造を採用している)を含んでおり、その超可変領域がβシート構造を接続する(いくつかの場合にはβシート構造の一部を形成する)ループを形成している。それぞれの鎖の超可変領域はFrによって互いに近くにまとめられ、他の鎖の超可変領域とともに抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat他、『免疫学的に興味深いタンパク質の配列』、第5版、公衆衛生サービス、国立衛生研究所、ベセスダ、メリーランド州、1991年を参照のこと)。定常領域は、抗原に対する抗体の結合に直接は関与しないが、さまざまなエフェクター機能(例えば抗体依存性細胞性細胞傷害作用(ADCC)への抗体の参加)を示す。
【0087】
この明細書では、“超可変領域”という用語は、抗体で抗原との結合に重要なアミノ酸残基を意味する。超可変領域は、一般に、“相補性決定領域”または“CDR”からのアミノ酸残基(例えば軽鎖可変領域の残基24〜34(L1)、50〜56(L2)、89〜97(L3)と、重鎖可変領域の31〜35(H1)、50〜65(H2)、95〜102(H3);Kabat他、『免疫学的に興味深いタンパク質の配列』、第5版、公衆衛生サービス、国立衛生研究所、ベセスダ、メリーランド州、1991年)および/または“超可変ループ”からのアミノ酸残基(例えば軽鎖可変領域の残基26〜32(L1)、50〜52(L2)、91〜96(L3)と、重鎖可変領域の26〜32(H1)、53〜55(H2)、96〜101(H3);ChothiaとLesk、J. Mol. Biol.、第196巻、901〜917ページ、1987年)を含んでいる。“フレームワーク領域”または“FR”の残基は、この明細書に記載した超可変領域の残基ではない可変領域の残基である。抗体をパパインで消化させると、“Fab”フラグメントと呼ばれる同じ2つの抗原結合フラグメント(それぞれが1つの抗原結合部位を持つ)と、残る1つの“Fc”フラグメント(この名称は、容易に結晶化する能力を反映している)が生じる。ペプシン処理により、2つの抗原結合部位を持つF(ab')2フラグメントが生じる。このF(ab')2フラグメントは、やはり抗原を架橋させることができる。
【0088】
“Fv”は最小抗体フラグメントであり、抗原の認識と抗原への結合を行なう完全な部位を含んでいる。この領域は、1つの重鎖と1つの軽鎖がきつく非共有結合した二量体からなる。各可変領域の3つの超可変領域が相互作用してVH-VL二量体の表面に抗原結合部位を規定するのは、この構成においてである。6つの超可変領域が合わさり、抗体に対する抗原の結合の特異性を与える。しかし単一の可変領域(または1つの抗原に対して特異的な3つの超可変領域だけを含む半分のFv)でさえ、抗原を認識してその抗原に結合する能力を有する。ただし、完全な結合部位よりも親和性は小さい。Fabフラグメントも、軽鎖の定常領域と重鎖の第1の定常領域(CH1)を含んでいる。Fab'フラグメントがFabフラグメントと異なっているのは、重鎖CH1領域抗体のカルボキシ末端にあってヒンジ領域からの1個以上のシステインを含む領域にいくつかの残基が付加されている点である。Fab'-SHは、この明細書では、定常領域のシステイン残基が少なくとも1個の自由なチオール基を持つFab'を意味する。F(ab')2抗体フラグメントは、元々は、ヒンジ領域のシステインを間に有するペアのFab'フラグメントとして製造された。抗体フラグメントの他の化学的カップリングも知られている。
【0089】
任意の脊椎動物種からの抗体の“軽鎖”は、その定常領域のアミノ酸配列に基づき、カッパ(κ)とラムダ(λ)と呼ばれる2つの明らかに異なるタイプのうちの1つに割り当てることができる。
【0090】
“一本鎖Fv”抗体フラグメントまたは“scFv”抗体フラグメントは、抗体のVH領域とVL領域を含んでいて、これらの領域が1本のポリペプチド鎖の中に存在している。Fvポリペプチドは、VH領域とVL領域の間に、scFvが抗原への結合にとって望ましい構造を形成することを可能にするポリペプチド・リンカーをさらに含んでいることが好ましい。scFvの概説に関しては、RosenburgとMoore編、『モノクローナル抗体の薬理学』、第113巻(シュプリンガー-フェアラーク社、ニューヨーク、1994年)の中のPluckthunによる269〜315ページを参照のこと。
【0091】
“二重特異性抗体”という用語は、2つの抗原結合部位を持つ小さな抗体フラグメントを意味し、そのフラグメントは、軽鎖可変領域(VL)に接続された重鎖可変領域(VH)を同じポリペプチド鎖(VH-VL)の中に含んでいる。同じ鎖上で2つの領域をペアにするには短すぎるリンカーを使用し、その2つの領域を別の鎖の相補的な領域とともに強制的にペアにして2つの抗原結合部位を作り出す。二重特異性抗体は、例えばヨーロッパ特許第404,097号;WO 93/11161;Hollinger他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第90巻、6444〜6448ページ、1993年に、より十分な記載がある。
【0092】
“三重特異性抗体”または“3価三量体”という用語は、3つの一本鎖抗体の組み合わせを意味する。三重特異性抗体は、VL領域またはVH領域のアミノ末端を用いて、すなわちリンカー配列なしで構成される。三重特異性抗体は3つのFv頭部を備えていて、頭部が尾部につながった環状の構成のポリペプチドになっている。三重特異性抗体の可能な1つのコンホメーションは、3つの結合部位が平面内で互いに120°の角度になった平坦なコンホメーションである。三重特異性抗体は、一重特異性、二重特異性、三重特異性のいずれかが可能である。
【0093】
“単離された”抗体は、その自然環境の1つの成分から同定、および/または分離、および/または回収されたものである。単離された抗体の自然環境の汚染成分は、その抗体を診断または治療で利用することを妨げるであろう材料であり、例えば酵素、ホルモンや、他のタンパク質性または非タンパク質性の溶質などがある。単離された抗体には、組み換え細胞内の元々の位置にある抗体が含まれる。なぜならその抗体の自然環境の少なくとも1つの成分は存在しないからである。しかし通常は、単離された抗体は、少なくとも1つの精製ステップによって調製される。
【0094】
興味の対象である抗原(例えばTROP-2抗原)に“結合する”抗体は、その抗原に十分な親和性で結合できるものであるため、その抗原を発現している細胞を標的とした治療剤または診断剤として有用である。抗体がTROP-2に結合する抗体である場合には、その抗体は通常は他の受容体ではなくTROP-2のほうに優先的に結合するため、非特異的Fc接触などの偶発的な結合や、他の抗原で一般的な翻訳後修飾への結合はなく、その抗体は、他のタンパク質と有意な交差反応はしない抗体であろう。興味の対象である抗原と結合する抗体を検出する方法は従来技術でよく知られており、例えばFACS、細胞ELISA、ウエスタン・ブロットといったアッセイが挙げられるが、これだけに限定されるわけではない。
【0095】
この明細書では、“細胞”、“細胞系”、及び“細胞培養物”という用語は同じ意味で用いられ、そのどれにも子孫が含まれる。意図的または非意図的な突然変異のため、すべての子孫はDNA含量が厳密に同じでなくてもよい。元の形質転換された細胞の中でスクリーニングして同じ機能または生物活性を持つとわかった突然変異した子孫が含まれる。文脈から、それぞれの用語が意図するものは明らかであろう。
【0096】
“治療または治療する”は、治療と予防措置の両方を意味し、その目的は、標的とする病的状態または疾患を予防または遅延させる(軽減する)ことである。治療を必要とする者には、疾患をすでに有する者と、疾患になりやすい者または疾患を予防すべき者が含まれる。したがってこの明細書における治療すべき哺乳動物として、疾患を持つとすでに診断されているものや、疾患の傾向があったり疾患になりやすかったりするものが可能である。
【0097】
“がん”と“がん性”という用語は、哺乳動物において細胞の成長または死が調節されていないことを一般に特徴とする生理学的状態を意味または記述している。がんの例として限定されないが、癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫、及び白血病又はリンパ球悪性疾患などがある。このようながんのより特別な例として、扁平細胞がん(例えば扁平上皮細胞がん)、肺がん(小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺の腺癌、肺の扁平癌腫)、腹膜のがん、肝細胞がん、胃がん(胃腸がんを含む)、膵臓がん、グリア芽細胞腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、肝細胞がん、乳がん、大腸がん、直腸がん、結腸がん、子宮内膜癌腫又は子宮癌腫、唾液腺癌腫、腎臓がん、前立腺がん、膣がん、甲状腺がん、肝細胞癌腫、肛門癌腫、陰茎癌腫、頭部と首のがんなどがある。
【0098】
“化学療法剤”は、がんの治療に役立つ化合物である。化学療法剤の例として、アルキル化剤(例えばチオテパ、シクロホスファミド(サイトキサン(登録商標)))、スルホン酸アルキル(例えばブスルファン、イムプロスルファン、ピポスルファン);アジリジン(例えばベンゾドパ、カルボコン、メツレドパ、ウレドパ);エチレンイミンとメチルアメラミン(例えばアルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド、トリメチルオロメラミン);ナイトロジェンマスタード(例えばクロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベムビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード);ニトロスウレア(例えばカルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン);抗生物質(例えばアクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリケアマイシン、カラビシン、カルノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン);抗代謝産物(例えばメトトレキセート、5-フルオロウラシル(5-FU));葉酸類似体(例えばデノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキセート);プリン類似体(例えばフルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン);ピリミジン類似体(例えばアンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスリジン、5-FU);アンドロゲン(例えばカルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン);抗副腎(例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン);葉酸補給物質(例えばフロリン酸);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキセート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジコン;エルフォルミチン;酢酸エリプチニウム;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2',2"-トリクロロトリエチルアミン;ウレサン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(“Ara-C”);シクロホスファミド;チオテパ;タキサン(例えばパクリタキセル(タキソール(登録商標)、ブリストル-マイヤー・スクウィブ・オンコロジー社、プリンストン、ニュージャージー州)、ドセタキセル(タキソテール(登録商標)、アベンティス、ローヌ-プーラン・ロレール社、アントニー、フランス国));クロラムブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;白金類似体(例えばシスプラチン、カルボプラチン);ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;エスペラミシン;カペシタビン;及びこれらのうちの任意のものの薬理学的に許容可能な塩、酸、誘導体がある。この定義に含まれるものとして、腫瘍に対するホルモン作用を調節または抑制する作用を持つ抗ホルモン剤(抗エストロゲンである、例えばタモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼを抑制する4(5)-イミダゾール、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、及びトレミフェン(ファレストン));抗アンドロゲン(例えばフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、ゴセレリン);及びこれらのうちの任意のものの薬理学的に許容可能な塩、酸、誘導体もある。
【0099】
治療を目的とした“哺乳動物”は、哺乳動物として分類されるあらゆる動物を意味する。その中に含まれるのは、ヒト、マウス、SCIDまたはヌードマウスまたはマウスの諸血統、家畜、動物園やスポーツやペットの動物(例えばヒツジ、イヌ、ウマ、ネコ、ウシ)などである。この明細書では、哺乳動物はヒトであることが好ましい。
【0100】
“オリゴヌクレオチド”は、公知の方法(例えば1988年5月4日に公開されたヨーロッパ特許第266,032号に記載されている固相技術を利用したホスホトリエステル法、亜リン酸法、ホスホロアミダイト法、またはFroehler他、Nucl. Acids Res.、第14巻、5399〜5407ページ、1986年に記載されているデオキシヌクレオシドH-ホスホネート中間体を介する方法)で化学的に合成される長さの短い一本鎖または二本鎖のポリデオキシヌクレオチドである。次いでオリゴヌクレオチドはポリアアクリルアミド・ゲル上で精製される。
【0101】
本発明によれば、非ヒト(例えばマウス)免疫グロブリンの“ヒト化”形態および/または“キメラ”形態は、元の抗体と比べてヒト抗マウス抗体(HAMA)応答、ヒト抗キメラ抗体(HACA)応答、ヒト抗ヒト抗体(HAHA)応答を減らす特定のキメラ免疫グロブリン、または免疫グロブリン鎖、またはこれらのフラグメント(例えばFv、Fab、Fab'、F(ab')2又は抗体中の他の抗原結合配列)を含むとともに、その非ヒト免疫グロブリンに由来していて望む効果を再現すると同時にその非ヒト免疫グロブリンに匹敵する結合特性を保持している必要な不可欠な部分(例えばCDR、抗原結合領域、可変領域など)を含む抗体を意味する。たいていの場合、ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)において、このレシピエント抗体の相補性決定領域(CDR)からの残基が、望む特異性、親和性、能力を有する非ヒト種(例えばマウス、ラット、ウサギ)(ドナー抗体)のCDRからの残基で置換されているものである。いくつかの場合には、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非ヒトFR残基で置換されている。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、導入されたCDR配列またはFR配列にも見られない残基を含んでいてもよい。こうした修飾は、抗体の性能をより洗練されたものにして最適化するために行なわれる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つの(典型的には2つの)可変領域の実質的に全体を含んでいて、CDR領域の全体または実質的に全体が非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、FR残基の全体または実質的に全体がヒト免疫グロブリンのコンセンサス配列のFR残基に対応することになろう。ヒト化抗体は、免疫グロブリン(一般にはヒト免疫グロブリン)の定常領域(Fc)の少なくとも一部も含むことが好ましい。
【0102】
“脱免疫化”抗体は、所定の種に対する免疫原性がないかより少ない免疫グロブリンである。脱免疫化は、抗体の構造を変化させることによって実現できる。当業者に知られている任意の脱免疫化法を利用することができる。抗体を脱免疫化するのに適した1つの方法は、例えば2000年6月15日に公開されたWO 00/34317に記載されている。
【0103】
“アポトーシス”を誘導する抗体は、プログラムされた細胞死を任意の手段で誘導する抗体である。手段として、アネキシンV、カスパーゼ活性、DNAの断片化、細胞の収縮、小胞体の膨張、細胞の断片化、及び/又は(アポトーシス小体と呼ばれる)膜小胞の形成などがあるが、これだけに限られるわけではない。
【0104】
この明細書では、“抗体によって誘導される細胞傷害作用”は、IDACに受託番号141205-05として寄託されたハイブリドーマの上清、またはそのハイブリドーマによって産生された抗体、IDACに受託番号141205-05として寄託されたハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体のヒト化抗体、IDACに受託番号141205-05として寄託されたハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体のキメラ抗体、抗原結合フラグメント、これらの抗体リガンドのいずれかに由来する細胞傷害効果を意味するものと理解するが、その効果は必ずしも結合の程度と関係しない。
【0105】
この明細書の全体を通じ、ハイブリドーマ細胞系と、それによって産生されて単離されたモノクローナル抗体は、内部での名称AR47A6.4.2(マウス)、(ch)AR47A6.4.2(キメラ)、(hu)AR47A6.4.2(ヒト化)、寄託名IDAC 141205-05のいずれかで呼ぶ。
【0106】
この明細書では、“抗体-リガンド”に、標的抗原の少なくとも1つのエピトープに対する結合特異性を示す部分が含まれる。その例として、完全な抗体分子、抗体フラグメント、少なくとも1つの抗原結合領域またはその一部(すなわち抗体分子の可変部分)を持つ分子が可能であり、例えばFv分子、Fab分子、Fab'分子、F(ab')2分子、二重特異性抗体、融合タンパク質、IDAC 141205-05と表記されるハイブリドーマ細胞系によって産生されて単離されたモノクローナル抗体に結合する抗原(IDAC 141205-05抗原)の少なくとも1つのエピトープを特異的に認識して結合するあらゆる遺伝子操作された分子、IDACに受託番号141205-05として寄託されたハイブリドーマ細胞系によって産生されて単離されたモノクローナル抗体のヒト化抗体、IDACに受託番号141205-05として寄託されたハイブリドーマ細胞系によって産生されて単離されたモノクローナル抗体のキメラ抗体、及び抗原結合フラグメントがある。
【0107】
この明細書では、“がん性疾患軽減抗体”(CDMAB)は、例えば患者にとって腫瘍組織量を減らしたり、腫瘍のある個人の生存期間を延ばしたりという利益があるようにがん性疾患のプロセスを変化させるモノクローナル抗体と、その抗体-リガンドを意味する。
【0108】
“CDMAB関連結合剤”は、最も広い意味では、ヒト抗体、非ヒト抗体、抗体フラグメント、抗体リガンドなどのうちで、少なくとも1つのCDMAB標的エピトープに競合的に結合する任意の形態のものを含むものと理解する。
【0109】
“競合的バインダ”には、ヒト抗体、非ヒト抗体、抗体フラグメント、抗体リガンドなどのうちで、少なくとも1つのCDMAB標的エピトープに対する結合親和性を持つ任意の形態ものが含まれるものと理解する。
【0110】
治療する腫瘍には、原発腫瘍、転移腫瘍、並びに抵抗性腫瘍が含まれる。抵抗性腫瘍には、化学療法剤だけ、抗体だけ、放射線だけ、またはこれらの組み合わせを用いた治療に反応しなかったりそのような治療に抵抗したりする腫瘍が含まれる。抵抗性腫瘍には、そのような薬剤を用いた治療によって抑制されたように見えるが、治療を中断した5年後に、時には10年間またはそれ以上あとで再発する腫瘍も含まれる。
【0111】
治療できる腫瘍には、血管網が形成されていないかまだ十分に形成されていない腫瘍と、血管網が形成された腫瘍が含まれる。したがって治療可能な固形腫瘍の例として、乳房癌腫、肺癌腫、結腸癌腫、膵臓癌腫、グリオーム、及びリンパ腫などがある。そのような腫瘍のいくつかの例として、類表皮腫瘍、扁平腫瘍(例えば頭部と首部の腫瘍)、結腸腫瘍、前立腺腫瘍、乳房腫瘍、肺腫瘍(小細胞肺腫瘍と非小細胞肺腫瘍が含まれる)、膵臓腫瘍、甲状腺腫瘍、卵巣腫瘍、及び肝臓腫瘍などがある。他の例として、カポジ肉腫、CNS新生物、神経芽細胞腫、毛細血管芽細胞腫、髄膜腫、脳転移、黒色腫、胃腸癌腫、腎臓癌腫、肉腫、横紋筋肉腫、グリア芽細胞腫(多形性グリア芽細胞腫が好ましい)、及び平滑筋肉腫などがある。
【0112】
この明細書では、“抗原結合領域”は、分子のうちで標的抗原を認識する部分を意味する。
【0113】
この明細書では、“競合的に抑制する”は、IDAC 141205-05と表記されるハイブリドーマ細胞系によって産生されたモノクローナル抗体(IDAC 141205-05抗体)、IDACに受託番号141205-05として寄託されたハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体のヒト化抗体、IDACに受託番号141205-05として寄託されたハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体のキメラ抗体、抗原結合フラグメント、これらの抗体リガンドのいずれかが従来の抗体競合アッセイを利用して向かうことになる決定部位を認識して結合できることを意味する。(Belanger, L、Sylvestre, C.、Dufour, D.、1973年、「競合手続きとサンドイッチ手続きによるαフェトプロテインの固相酵素免疫アッセイ」、Clinica Chimica Acta、第48巻、15ページ)
【0114】
この明細書では、“標的抗原”は、IDAC 141205-05抗原またはその一部である。
【0115】
この明細書では、“免疫複合体”は、例えば細胞毒素、放射性物質、サイトカイン、インターフェロン、標的部分、レポータ部分、酵素、毒素、抗腫瘍薬、治療剤のいずれかと化学的または生物学的に結合した抗体などの任意の分子またはCDMAB(例えば抗体)を意味する。抗体またはCDMABは、対象とする標的と結合できるかぎり、その抗体またはCDMABに沿った任意の位置に、細胞毒素、放射性物質、サイトカイン、インターフェロン、標的部分、レポータ部分、酵素、毒素、抗腫瘍薬、治療剤のいずれかを結合させることができる。免疫複合体の例として、抗体毒素化学的複合体や抗体-毒素融合タンパク質などがある。
【0116】
抗腫瘍剤として用いるのに適した放射性物質は当業者には公知である。例えば131Iまたは211Atが使用される。これらアイソトープは、従来法を利用して抗体に付着させる(例えばPedley他、Br. J. Cancer、第68巻、69〜73ページ、1993年)。あるいは抗体に付着させる抗腫瘍剤は、プロドラッグを活性化させる酵素である。プロドラッグを投与すると、腫瘍部位に到達するまで不活性な形態に留まり、抗体複合体が投与されるとその部位で細胞毒素形態に変換される。実際には、抗体-酵素複合体を患者に投与し、治療すべき組織の領域に局在させることができる。そこでプロドラッグを患者に投与し、治療すべき組織の領域で細胞毒性薬への変換が起こるようにする。あるいは抗体と結合した抗腫瘍剤は、サイトカイン(例えばインターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-4(IL-4)、又は腫瘍壊死因子α(TNF-α))である。抗体はそのサイトカインを腫瘍に向かわせ、そのサイトカインが腫瘍に損傷を与えたり腫瘍を破壊したりするのを媒介するが、他の組織に影響が及ぶことはない。サイトカインは、従来の組み換えDNA技術を利用してDNAレベルで抗体と融合させる。インターフェロンも使用できる。
【0117】
この明細書では、“融合タンパク質”は、抗原結合領域が生物活性のある分子(例えば毒素、酵素、蛍光タンパク質、発光マーカー、ポリペプチド・タグ、サイトカイン、インターフェロン、標的部分、レポータ部分、タンパク質薬)に結合されたキメラタンパク質を意味する。
【0118】
本発明ではさらに、標的部分またはレポータ部分が結合する本発明のCDMABを考える。標的部分は、結合ペアの第1のメンバーである。例えば抗腫瘍剤をそのようなペアの第2のメンバーと結合させると、抗腫瘍剤は抗原結合タンパク質が結合している部位に向かう。このような結合ペアの一般的な一例は、アビジンとビオチンである。好ましい一実施態様では、ビオチンを、本発明のCDMABの標的抗原と結合させると、ビオチンは抗腫瘍剤の標的となるか、アビジンまたはストレプトアビジンと結合した他の部分の標的となる。あるいはビオチンまたは別のそのような部分を本発明のCDMABの標的抗原とリンクさせ、例えば、検出可能な信号発生剤をアビジンまたはストレプトアビジンと結合させた診断システムにおいてレポータとして用いる。
【0119】
検出可能な信号発生剤は、生体内と試験管内において診断の目的で有用である。検出可能な信号発生剤は、外部手段によって検出できる測定可能な信号を発生させる。その場合、通常は電磁放射の測定が行なわれる。たいてい、信号発生剤は、酵素または発色団であるか、蛍光、リン光、化学発光によって光を出す。発色団には紫外線領域または可視光領域で光を吸収する染料が含まれている。発色団として、酵素を触媒とした反応の基質または分解産物が可能である。
【0120】
さらに、本発明の範囲には、従来技術でよく知られている検査法または診断法のために本発明のCDMABを生体内と試験管内で用いることが含まれる。この明細書で考える診断法を実施するため、本発明には、本発明のCDMABを含むキットをさらに含めることができる。このようなキットは、ある種のがんのリスクがある個人を、その個人の細胞におけるCDMABの標的抗原の過剰発現を検出することによって特定するのに役立つであろう。
【0121】
診断アッセイ用キット
【0122】
本発明のCDMABは、腫瘍の存在を明らかにするための診断アッセイ用キットの形態で利用することが考えられる。腫瘍は、一般に、患者から得られた生物サンプル(例えば血液、血清、尿、及び/又は腫瘍生検)の中に1つ以上の腫瘍特異的抗原(例えばタンパク質および/またはそのようなタンパク質をコードしているポリヌクレオチド)が存在することに基づいて検出される。
【0123】
上記抗原は、特定の腫瘍(例えば大腸、乳房、肺、又は前立腺の腫瘍)の存在または不在を示すマーカーとして機能する。上記抗原は、他のがん性腫瘍の検出にも役立つであろう。診断アッセイ用キットに本発明のCDMABからなる結合剤、またはCDMABに関係する結合剤が含まれていることで、生物サンプルの中にあってその結合剤と結合する抗原のレベルを検出することができる。ポリヌクレオチドからなるプライマーとプローブを用い、腫瘍タンパク質をコードしているmRNAのレベルを検出することができる。このmRNAのレベルも、がんの存在または不在を示す。結合アッセイが診断アッセイであるためには、抗原のレベルが正常組織に存在する抗原と比べて統計的に有意であることを示すデータが得られているはずである。そこで結合を認識することが、がん性腫瘍の存在の決定的な診断となる。本発明の診断アッセイにおいて当業者に知られている結合剤を用いてサンプル中のポリペプチドを検出するには、複数の形式が有用であると考えられる。その例が、HarlowとLane、『抗体:実験室マニュアル』、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー、1988年に示されている。上に説明した診断アッセイの形式の任意のものと、そのあらゆる組み合わせ、変形、変更もさらに考えられる。
【0124】
患者にがんがあるかないかは、一般に、(a)患者から取得した生物サンプルを結合剤と接触させ;(b)そのサンプルの中でその結合剤と結合するポリペプチドのレベルを検出し;及び(c)そのポリペプチドのレベルを所定のカット-オフ値と比較することによって判断される。
【0125】
代表的な一実施態様では、サンプルの残部からのポリペプチドを結合させて除去するため、固体支持体に固定化されたCDMAB主体の結合剤をアッセイに含めることが考えられる。すると結合したポリペプチドは、レポータ基を含んでいて結合剤/ポリペプチド複合体と特異的に結合する検出試薬を用いて検出できる。代表的な検出試薬として、ポリペプチドまたは抗体に特異的に結合するCDMAB主体の結合剤や、結合剤に特異的に結合する他のもの(例えば抗免疫グロブリン、プロテインG、プロテインA、又はレクチン)が挙げられる。別の一実施態様では、競合アッセイを利用することが考えられる。その場合、ポリペプチドをレポータ基で標識し、結合剤をサンプルとともにインキュベートした後にその固定化された結合剤と結合できるようにする。固定化された結合剤に対するサンプルの反応性の指標は、サンプル中のどの成分が、結合剤への標識したポリペプチドの結合をどの程度抑制するかである。このようなアッセイで用いるのに適したポリペプチドとして、結合剤が結合親和性を持つ完全長の腫瘍特異的タンパク質および/またはその一部がある。
【0126】
診断キットは、固体支持体とともに提供されることになる。固体支持体は、タンパク質が結合できるのであれば当業者に公知の任意の形態の材料が可能である。適切な例として、微量滴定プレートの試験ウエル、ニトロセルロースや、他の適切な膜などが挙げられる。あるいは支持体は、ビーズまたは円板でもよい(例えばガラス、ファイバーガラス、ラテックス、又はプラスチック材料(ポリスチレン又はポリ塩化ビニルなど))。支持体は、例えばアメリカ合衆国特許第5,359,681号に開示されているような磁性粒子またはオプティカル・ファイバー・センサーでもよい。
【0127】
特許と学術文献に広く記載されていて当業者に知られているさまざまな方法を用いて結合剤を固体支持体の表面に固定化することが考えられる。“固定化”という用語は、非共有結合(例えば吸着)と共有結合(本発明の文脈では、結合剤と支持体上の官能基の間の直接的な結合、または架橋剤を通じた結合が可能である)の両方を意味する。好ましい一実施態様では、微量滴定プレートのウエルへの吸着、または膜への吸着による固定化が好ましいが、実施態様がこれだけに限られるわけではない。吸着は、適切な緩衝液の中で結合剤を固体支持体と適切な時間にわたって接触させることによって実現できる。接触時間は温度によって変わる可能性があるが、一般に約1時間〜約1日の範囲になろう。
【0128】
固体支持体に対する結合剤の共有結合は、通常、支持体を、その支持体と、結合剤の1つの官能基(例えばヒドロキシル基またはアミノ基)の両方と反応する二官能性試薬と接触させることによって実施されることになろう。例えば結合剤は、ベンゾキノンを用いて、または支持体上のアルデヒド基を結合パートナーのアミンおよび活性水素と縮合させることによって、適切なポリマー被覆を有する支持体に共有結合させることができる(例えばPierce、『免疫技術のカタログとハンドブック』、1991年のA12とA13を参照のこと)。
【0129】
診断アッセイ用キットが2抗体サンドイッチ・アッセイの形態を取ることもさらに考えられる。このアッセイは、最初に抗体(例えばこの明細書に開示してあるCDMABを固体支持体に固定化してあるもの)をサンプルと接触させ、サンプル中のポリペプチドがその固定化された抗体と結合できるようにすることによって実施できる。その後、結合しなかったサンプルを固定化されたポリペプチド-抗体複合体から取り除き、レポータ基を含む検出試薬(そのポリペプチドの異なる部位と結合できる第2の抗体が好ましい)を添加する。次に、その特異的レポータ基に適した方法を利用し、固体支持体に結合したまま残る検出試薬の量を明らかにする。
【0130】
特別な一実施態様では、抗体が上に説明したようにして支持体に固定化された後、当業者に知られている適切な阻止剤(例えばウシ血清アルブミンやトゥイーン20(登録商標)(シグマ・ケミカル社、セントルイス、ミズーリ州))を用いて支持体上の残るタンパク質結合部位をブロックする。次に、固定化された抗体をサンプルとともにインキュベートすると、ポリペプチドは抗体と結合できるであろう。サンプルは、インキュベーションの前に適切な希釈剤(例えばリン酸緩衝化整理食塩水(PBS))で希釈することができよう。一般に、特別に選択された腫瘍を持つ個人から得られたサンプル中のポリペプチドの存在を検出するのに十分な時間に対応するよう、適切な接触時間(すなわちインキュベーションの時間)が選択されることになろう。接触時間は、結合したポリペプチドと結合しなかったポリペプチドが平衡しているときに実現される結合レベルの少なくとも約95%の結合レベルを実現するのに十分であることが好ましい。当業者であれば、ある時間の間に起こる結合レベルを調べることにより、平衡を実現するのに必要な時間を容易に決定できることを認識しているであろう。
【0131】
次に、固体支持体を適切な緩衝液で洗浄することにより、結合しなかったサンプルを除去することがさらに考えられる。次に、レポータ基を含む第2の抗体を固体支持体に添加する。次に、結合したポリペプチドを検出するのに十分な時間の間、検出試薬を固定化された抗体-ポリペプチド複合体とともにインキュベートする。その後、結合しなかった検出試薬を除去し、結合した検出試薬をレポータ試薬を用いて検出する。レポータ基の検出に用いる方法は、必然的に選択したレポータ基のタイプに特異的であり、例えば放射性の基では、シンチレーションの計数または放射能写真法が一般に適している。分光法を利用して染料、発光基、蛍光基を検出することもできる。ビオチンは、異なるレポータ基(一般に、放射性の基、または蛍光基、または酵素)とカップルしたアビジンを用いて検出できる。酵素レポータ基は、一般に、基質を添加した後、反応生成物の分光分析によって、またはそれ以外の分析法によって検出することができる。
【0132】
本発明の診断アッセイ用キットを用いてがん(例えば前立腺がん)の存在または不在を明らかにするには、固体支持体に結合したままのレポータ基から検出された信号を、一般に、所定のカット-オフ値に対応する信号と比較することになる。例えばがん検出のための代表的なカット-オフ値は、固定化された抗体をがんのない患者からのサンプルとともにインキュベートしたときに得られる信号の平均値にすることができる。一般に、所定のカット-オフ値の約3倍の標準偏差を超える信号を発生させるサンプルにはがんがあると見なされるであろう。別の一実施態様では、カット-オフ値は、Sackett他、『臨床疫学:臨床医学のための基本的な科学』(リトル・ブラウン社、1985年、106〜107ページ)の方法に従ってレシーバ・オペレータ曲線を用いることによって決定できよう。このような実施態様では、カット-オフ値は、診断試験の結果に関して可能な各カット-オフ値に対応する真の陽性率(すなわち感受性)と偽の陽性率(100%の特異性)のペアをプロットして決定することができよう。プロット上で左上隈に最も近いカット-オフ値(すなわち最大の面積を取り囲む値)が最も正確なカット-オフ値であり、この方法で決定されたカット-オフ値よりも大きい信号を発生させるサンプルは陽性であると考えることができる。あるいはカット-オフ値をグラフに沿って左に移動させて偽の陽性率を最小にすること、または右に移動させて偽の陰性率を最小にすることができる。一般に、この方法で決定されたカット-オフ値よりも大きい信号を発生させるサンプルは、がんに関して陽性であると考えられる。
【0133】
キットによって可能になる診断アッセイは、結合剤を膜(例えばニトロセルロース)に固定化させ、フロー-スルー試験法またはストリップ試験法で実施することが考えられる。フロー-スルー試験法では、サンプル中のポリペプチドは、サンプルが膜を通過するときに固定化された結合剤と結合する。次に、標識された第2の結合剤が、第2の結合剤を含む溶液が膜を通って流れるときに結合剤-ポリペプチド複合体に結合する。次に、結合した第2の結合剤を上に説明したようにして検出することができる。ストリップ試験法では、結合剤が結合した膜の一端を、サンプルを含む溶液に浸すことになる。サンプルは膜に沿って第2の結合剤を含む領域の中を移動し、固定化された結合剤の領域に到達する。固定化された抗体の領域における第2の結合剤の濃度が、がんの存在を示す。結合部位に生成する目で見えるパターン(例えば線)は、試験結果が陽性であることを示すことになろう。このようなパターンがないというのは、結果が陰性であることを示している。一般に、膜に固定化される結合剤の量は、上に説明した形式の2抗体サンドイッチ・アッセイにおいて生物サンプルが陽性信号を発生させるのに十分なレベルのポリペプチドを含んでいるとき、目で見て識別できるパターンが生成するように選択される。この診断アッセイで用いるのに適した結合剤は、この明細書に開示されている抗体、その抗原結合フラグメント、この明細書に記載した任意のCDMAB関連結合剤である。膜に固定化される抗体の量は、診断アッセイを行なうのに有効な任意の量であり、約25ng〜約1μgの範囲が可能である。一般に、このような試験は非常に少量のサンプルを用いて実施できる。
【0134】
さらに、本発明のCDMABは、標的抗原を同定する能力を有するため研究用の実験室で使用できる。
【0135】
この明細書に記載した本発明がより完全に理解されるようにするため、以下の説明を行なう。
【0136】
本発明により、IDAC 141205-05抗原を特異的に認識して結合するCDMAB(すなわち、IDAC 141205-05 CDMAB、IDACに受託番号141205-05として寄託されたハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体のヒト化抗体、IDACに受託番号141205-05として寄託されたハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体のキメラ抗体、これら抗体の抗原結合フラグメント、これら抗体の抗体リガンド)が提供される。
【0137】
IDACに受託番号141205-05として寄託されたハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体のCDMABは、ハイブリドーマIDAC 141205-05によって産生されて単離されたモノクローナル抗体が標的抗原に免疫特異的に結合するのを競合的に抑制する抗原結合領域を有する限り、任意の形態が可能である。したがって、IDAC 141205-05抗体と同じ結合特異性を持つ任意の組み換えタンパク質(例えば抗体が第2のタンパク質(リンフォカインや腫瘍抑制性増殖因子)と組み合わされた融合タンパク質)が本発明の範囲に入る。
【0138】
本発明の一実施態様では、CDMABは、IDAC 141205-05抗体である。
【0139】
別の実施態様では、CDMABは抗原結合フラグメントであり、その例として、Fv分子(例えば一本鎖Fv分子)、Fab分子、Fab'分子、F(ab')2分子、融合タンパク質、二重特異性抗体、ヘテロ抗体、IDAC 141205-05抗体の抗原結合領域を持つ任意の組み換え分子が可能である。本発明のCDMABは、IDAC 141205-05モノクローナル抗体が向かうエピトープに向かう。
【0140】
本発明のCDMABを修飾することにより、すなわちその分子内のアミノ酸を修飾することにより、誘導体分子を生成させることができる。化学的修飾も可能である。直接的な突然変異による修飾、親和性成熟法、ファージ提示法、鎖シャッフリング法も可能である。
【0141】
親和性と特異性は、CDRおよび/またはフェニルアラニン・トリプトファン(FW)残基の突然変異と、望む特性を持つ抗原結合部位のスクリーニングとによって変更または改善することができる(例えばYang他、J. Mol. Biol.、1995年、第254巻、392〜403ページ)。1つの方法は、個々の残基または残基の組み合わせをランダム化し、そうでなければ同じであった抗原結合部位の集団の中の特定の位置に2〜20個のアミノ酸からの部分集合が見いだされるようにするというものである。あるいはエラーしやすいPCR法によってある範囲の残基に突然変異を誘導することもできる(例えばHawkins他、J. Mol. Biol.、1992年、第226巻、889〜896ページ)。別の一例では、重鎖と軽鎖の可変領域の遺伝子を含むファージ提示ベクターを大腸菌の突然変異株に組み込むことができる(例えばLow他、J. Mol. Biol.、1996年、第250巻、359〜368ページ)。これらの突然変異誘発法は、当業者に知られている多数の方法のうちの代表例である。
【0142】
本発明の抗体の親和性を大きくする別の方法は、鎖シャッフリング法を実施して重鎖または軽鎖を別の重鎖または軽鎖とランダムにペアにすることで、親和性のより大きな抗体を調製するというものである。抗体のさまざまなCDRを他の抗体の対応するCDRとシャッフルすることもできる。
【0143】
誘導体分子は、ポリペプチドの機能特性を保持するであろう。すなわちそのような置換を持つ分子は、ポリペプチドがIDAC 141205-05抗原またはその一部に結合することを相変わらず可能にするであろう。
【0144】
アミノ酸置換には、従来から“保存性”として知られるアミノ酸置換が含まれるが、必ずしもそれだけに限られない。
【0145】
例えば、タンパク質において、“保存性アミノ酸置換”と呼ばれるいくつかのアミノ酸置換を、そのタンパク質のコンホメーションまたは機能を変えることなくしばしば実施できることは、タンパク質化学の原理としてよく確立している。
【0146】
このような変化に含まれるのは、イソロイシン(I)、バリン(V)、ロイシン(L)のいずれかをこれら疎水性アミノ酸とは別の任意のアミノ酸と置換すること;アスパラギン酸(D)をグルタミン酸で置換すること、またはその逆;グルタミン(Q)をアスパラギン(N)で置換すること、またはその逆;及びセリン(S)をトレオニン(T)で置換すること、またはその逆である。タンパク質の三次元構造における個々のアミノ酸とその役割に応じ、別の置換も保存性であると考えられる。例えばグリシン(G)とアラニン(A)、アラニンとバリン(V)は交換可能であることがしばしばある。比較的疎水性であるメチオニン(M)は、ロイシンおよびイソロイシンと交換可能であることがしばしばあり、バリンと交換可能であるときもある。リシン(K)とアルギニン(R)は、アミノ酸残基の重要な特徴が電荷であってしかもこれら2つのアミノ酸のpKの違いは重要ではない位置で交換可能であることがしばしばある。さらに別の変化も、特定の環境では“保存性”であると考えることができる。
【実施例1】
【0147】
ヒトMDA-MB-231乳がん細胞を用いた生体内腫瘍実験
【0148】
AR47A6.4.2は、(アメリカ合衆国特許出願シリアル番号11/709,676に開示されているように)以前に、MCF-7ヒト乳がん異種移植片モデルにおいて有効であることが証明されている。この知見を拡張するため、MCF-7モデルとは異なってHer2/neuが陰性、エストロゲンとプロゲステロンの受容体が陰性のMDA-MB-231ヒト乳がん細胞異種移植片モデルにおいてAR47A6.4.2を調べた。図1、図2、及び図3を参照すると、年齢が8〜10週間のメスSCIDマウスに、100μlのPBS溶液に含まれた500万個のヒト乳がん細胞(MDA-MB-231)をそれぞれのマウスの右脇腹に皮下注射によって移植した結果が示されている。マウスを10匹からなる2つの治療群にランダムに分けた。移植の1日後、20mg/kgのAR47A6.4.2試験抗体または対照である緩衝液を、2.7mMのKCl、1mMのKH2PO4、137mMのNaCl、及び20mMのNa2HPO4を含む希釈剤を用いて貯蔵濃度から希釈した後に、300μlの体積でそれぞれのコホートの腹腔に投与した。次に、抗体サンプルと対照サンプルを、最初の2週間は1週間に1回、その後の3週間は1週間に2回投与した。腫瘍の成長をノギスで1週間に1回測定した。治療は、抗体を8回投与した後に終了した。マウスの体重を腫瘍の測定結果と同時に記録した。すべてのマウスが終点に到達して実験が終わったとき、CCACガイドラインに従って安楽死させた。
【0149】
AR47A6.4.2は、ヒト乳がんのMDA-MB-231生体内予防モデルにおいて腫瘍の成長を有意に抑制した。ARIUS抗体AR47A6.4.2を用いた治療では、抗体を最後に投与してから5日後である55日目に、緩衝液で処理した群と比べてMDA-MB-231腫瘍の成長を91.9%減らした(p<0.00001、t検定)(図1)。対照群のマウスはすべて、抗体を最後に投与してから58日後である108日目に終点に到達したため、実験から取り除いた。しかしAR47A6.4.2で治療した群のマウスの90%はその時点でまだ生きていた(図2)。
【0150】
実験中を通じて毒性の明らかな臨床的徴候はなかった。1週間間隔で測定した体重は、健康であるか成長に失敗したかを代わりに示す指標であった。すべての群で平均体重が実験期間を通じて増加した(図3)。0日目と55日目の間の平均体重の増加は、対照群では1.3g(3.9%)、AR47A6.4.2治療群では1.8g(9.3%)であった。治療期間を通じて両方の群で有意な差はなかった。まとめると、ヒト乳がん異種移植片モデルにおいてAR47A6.4.2はよく許容され、腫瘍の成長を有意に抑制した。
【実施例2】
【0151】
ヒトPL45膵臓がん細胞を用いた生体内腫瘍実験
【0152】
AR47A6.4.2は、(アメリカ合衆国特許出願シリアル番号11/709,676に開示されているように)以前に、PL45膵臓がん異種移植片モデルにおいて有効であることが証明されている。有効な投与レベルを明らかにするため、確立されたPL45モデルにおいてAR47A6.4.2をさまざまな投与量で調べた。図4、図5、及び図6を参照すると、年齢が8〜10週間のメスのSCIDマウスに、100μlのPBS溶液に含まれた400万個のヒト膵臓がん細胞(PL45)を首筋に皮下注射によって移植した結果が示されている。マウスの腫瘍の平均体積が約100mm3に達したとき、マウスを10匹からなる5つの治療群にランダムに分けた。移植してから32日後、20、10、2、0.2mg/kgいずれかのAR47A6.4.2試験抗体または対照である緩衝液を、2.7mMのKCl、1mMのKH2PO4、137mMのNaCl、及び20mMのNa2HPO4を含む希釈剤を用いて貯蔵濃度から希釈した後に、300μlの体積でそれぞれのコホートの腹腔に投与した。次に、抗体サンプルと対照サンプルを、実験期間を通じて週に3回投与した。腫瘍の成長を約4〜7日ごとにノギスで測定した。実験は、抗体を10回投与した後に終了した。実験期間中、週に1回マウスの体重を記録した。すべてのマウスが終点に到達して実験が終わったとき、CCACガイドラインに従って安楽死させた。
【0153】
AR47A6.4.2は、ヒト膵臓がんのPL45生体内確立モデルにおいて投与量に依存した腫瘍の成長を示した。ARIUS抗体AR47A6.4.2を用いた治療では、それぞれ20、10、2、0.2mg/kgの投与量にしたとき、治療用に最後に投与してから14日後の67日目に、PL45腫瘍の成長を緩衝液で処理した群と比べて48.9%(p=0.0001、t検定)、34.6%(p=0.0011、t検定)、17.4%(p=0.1938、t検定)、及び4.7%(p=0.7065、t検定)減らした。これは、対照群と抗体治療群のほとんどすべてのマウスがまだ生きているときであった。すべての群の生存状態を、治療用に最後に投与してから35日後の88日目までモニターした。この時点で対照群の20%(2/10)だけがまだ生きていたのに対し、投与量がそれぞれ20、10、2mg/kgであるAR47A6.4.2治療群のマウスの60%(6/10)、40%(4/10)、及び90%(9/10)がまだ生きていた(図5)。
【0154】
実験中を通じて毒性の明らかな臨床的徴候はなかった。1週間間隔で測定した体重は、健康であるか成長に失敗したかを代わりに示す指標であった。すべての群で平均体重が実験期間を通じて増加した(図6)。32日目と67日目の間の平均体重の増加は、対照群では0.8g(4.1%)、投与量がそれぞれ20、10、2、及び0.2mg/kgであるAR47A6.4.2治療群では、1.5g(7.6%)、1.2g(6.3%)、又は1.9g(9.5%)であった。治療期間を通じて両方の群で有意な差はなかった。
【0155】
まとめると、この確立されたヒト膵臓がん異種移植片モデルにおいてAR47A6.4.2は20と10mg/kgでよく許容され、腫瘍の成長を投与量に依存して有意に抑制した。AR47A6.4.2治療群で投与量が2mg/kgよりも多いマウスも有意な生存期間の延長という利益を示した。要するに、このデータは、AR47A6.4.2が、投与量に依存してヒトがんの治療に有効であることを示している。
【実施例3】
【0156】
ヒトの正常組織と多腫瘍組織の染色
【0157】
追加のIHC実験(以前の研究は、アメリカ合衆国特許出願シリアル番号11/709,676に開示されている)を実施し、ヒトのがんにおけるAR47A6.4.2抗原の広がりの特徴をさらに調べた。スライドを-80℃から-20℃に移した。1時間後、スライドを冷たい(-20℃)のアセトンの中で10分間にわたって事後固定した後、放置して室温に戻した。スライドを4℃の冷たいリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)の中で2分間ずつ3回にわたってリンスした後、3%過酸化水素の中で10分間にわたって洗浄することによって内在性ペルオキシダーゼ活性を阻止した。次にスライドをPBSの中で5分間ずつ3回リンスした後、室温のユニバーサル阻止溶液(ダコ社、トロント、オンタリオ州)の中で5分間にわたってインキュベートした。AR47A6.4.2、抗ヒト筋肉アクチン(クローンHHF35、ダコ社、トロント、オンタリオ州)、抗サイトケラチン-7クローンOV-TL 12/30(ダコ社、トロント、オンタリオ州)、抗TROP-2クローン77220.11(R&Dシステムズ社、ミネアポリス、ミネソタ州)、アイソタイプの対照抗体(哺乳動物の組織に存在せず、しかも哺乳動物の組織では誘導もされない酵素であるアスペルギルス・ニゲールのグルコースオキシダーゼ(ダコ社、トロント、オンタリオ州)に向かう)のいずれかを抗体希釈緩衝液(ダコ社、トロント、オンタリオ州)の中で希釈し(ただし、抗アクチンに関しては0.5μg/mlにし、抗サイトケラチン-7はそのまま使用し、市販の抗TROP-2は1μg/mlにした)、それぞれの抗体の使用濃度である5μg/mlにした後、室温にて1時間にわたってインキュベートした。スライドをPBSで2分間ずつ3回洗浄した。ダコ・エンヴィジョン・システム社(トロント、オンタリオ州)から供給された二次抗体と室温にて30分間にわたって結合させたHRPを用いて一次抗体の免疫反応性を検出/視覚化した。このステップの後、スライドをPBSで5分間ずつ3回洗浄し、イムノペルオキシダーゼ染色のためのDAB(3,3'-ジアミノベンジジンテトラヒドラクロリド、ダコ社、トロント、オンタリオ州)発色団基質溶液を添加することによって室温にて10分間にわたって着色反応を進展させた。スライドを水道水で洗浄して発色反応を終了させた。マイヤーのヘマトキシリン(シグマ・ディアグノスティックス社、オークヴィル、オンタリオ州)を用いて対比染色した後、高品質のエタノール(75〜100%)を用いてスライドを脱水し、キシレンでクリーンにした。取り付け具(ダコ・ファラマウント社、トロント、オンタリオ州)を用いてスライドをカバーガラスで覆った。膵臓アレイ(トライ・スター社、ロックヴィル、メリーランド州)に関して同じプロトコルを実施したが、以下の変更を行なった点が異なっている。組織切片を最初に室温で2時間にわたって乾燥させ、アセトンで固定した後にさらに30分間にわたって風乾させた。3%の過酸化水素を含むメタノールを用いて15分間にわたって内在性過酸化水素をブロックした。このステップは、一次抗体のインキュベーションの後に実施した。
【0158】
Axiovert 200(ツァイス・カナダ社、トロント、オンタリオ州)を用いてスライドを顕微鏡で調べ、ノーザン・エクリプス・イメージング・ソフトウエア(ミシソーガ、オンタリオ州)を用いてディジタル画像を取得して保管した。結果を読み取り、スコア化し、組織病理学者が解釈した。
【0159】
図7は、一群のヒト腫瘍と対応する正常組織に関するAR47A6.4.2染色の結果のまとめを示している(11個の大腸がんと2個の正常な大腸、8個の卵巣がんと2個の正常な卵巣、12個の乳がんと4個の正常な乳房、15個の肺がんと4個の正常な肺、14個の前立腺がんと4個の正常な前立腺、及び14個の膵臓がんと5個の正常な膵臓)。これらの組織は4つの組織マイクロアレイ(トライ・スター社、ロックヴィル、メリーランド州)の上に分布していた。抗体は、中程度から強い結合を、6/11(55%)の大腸がん、6/8(75%)の卵巣がん、11/12(92%)の乳がん、12/15(80%)の肺がん、14/14(100%)の前立腺がん、及び3/14(21%)の膵臓がんで示した(図8と図9)。それに加え、明確でない弱い結合が、2/11(18%)の大腸がん、1/12(8%)の乳がん、3/15(20%)の肺がん、及び2/14(14%)の膵臓がんで観察された。調べた腫瘍のすべてで、結合は腫瘍細胞に特異的であり、いくつかの組織では正常組織と比べて腫瘍で過剰発現していた。対応する正常組織に関しては、この抗体は、正常な大腸組織の0/2、正常な卵巣組織の0/2、正常な乳房組織の4/4、正常な肺組織の4/4、正常な前立腺組織の4/4、及び正常な膵臓組織の5/5に結合した(図9)。結合はこれら器官の上皮組織に対して優勢であった。正の抗体対照として用いた抗サイトケラチン-7または抗アクチンは、予想された正の結合をそれぞれ上皮組織と筋肉組織に対して示した。負の対照であるIgGアイソタイプは、調べた組織に対して負の結合を示した。
【実施例4】
【0160】
ホスホ-MAPK(マイトジェン活性化プロテインキナーゼ)プロテオーム・プロファイラ・ブロット
【0161】
AR47A6.4.2処理によって影響を受ける細胞間シグナル伝達分子を同定するため、AR47A6.4.2で処理した細胞からのライセートを、プロテオーム・プロファイラ・ヒト・ホスホ-MAPK抗体アレイ(ARY002、R&Dシステムズ社、ミネアポリス、ミネソタ州)を用いてスクリーニングした。
【0162】
細胞の処理と調製
【0163】
(アメリカ合衆国特許出願シリアル番号11/709,676に開示されている)以前の研究では、重症複合免疫不全(SCID)マウスで成長させたBxPC-3細胞を用いた膵臓がん異種移植片におけるAR47A6.4.2の生体内効果が証明された。そこでBxPC-3細胞系を利用し、細胞間シグナル伝達分子の活性化のスクリーニングを実施した。BxPC-3細胞を集密に近い状態まで増殖させ、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、次いで血清と追加添加物が欠乏した培地の中で37℃にて4時間にわたって飢餓状態にした。その後、AR47A6.4.2(20μg/ml)または8A3B.6(アイソタイプである対照;IgG2a)(20μg/ml)を細胞に添加し、4℃で20分間放置して結合させた。次に胎仔ウシ血清(FBS)、L-グルタミン、ピルビン酸ナトリウムを細胞に添加して最終濃度を10%のFBS、1%のL-グルタミン、及び1%のピルビン酸ナトリウムにすることによって細胞を刺激した。細胞を37℃のインキュベータに入れ、1時間刺激した後、細胞ライセートを回収した。細胞をPBSで2回洗浄して溶解緩衝液6(品番895561:R&Dシステムズ社の抗体アレイARY002)の中で収穫することによってライセートを回収した。細胞をピペットで移すことによって再び懸濁させ、1.5mlのマイクロフュージ管に移し、4℃にて30分間にわたって回転させることにより混合した。次にライセートを14000×gで5分間にわたって遠心分離し、上清を清浄なチューブに移した。タンパク質の濃度をビシンコニン酸(BCA)タンパク質アッセイ(ピアス社、ロックフォード、イリノイ州)によって明らかにした。
【0164】
ヒト・ホスホ-MAPK抗体アレイ
【0165】
ヒト・ホスホ-MAPK抗体アレイを、製造者が記載しているプロトコル(第4改訂版、2006年5月、R&Dシステムズ社の抗体アレイARY002)に従い、BxPC-3細胞ライセートに対してスクリーニングした。簡単に述べると、揺動プラットフォーム式振盪機の上で、1.5mlのアレイ緩衝液1(品番895477:R&Dシステムズ社の抗体アレイARY002)の中にて1時間にわたってインキュベートすることにより、それぞれのヒト・ホスホ-MAPKプロファイラ膜を調製した。それぞれの処理に関し、合計で150mgのタンパク質を溶解緩衝液6で希釈して最終体積を250μlにし、1.25mlのアレイ緩衝液1と混合した。調製したプロファイラ膜にこの混合物を添加し、揺動プラットフォーム式振盪機の上で4℃にて一晩にわたってインキュベートした。次にそれぞれの膜を(25×貯蔵溶液からの蒸留水(品番号895003:R&Dシステムズ社の抗体アレイARY002)の中で希釈した)1×洗浄緩衝液で3回洗浄し、1×アレイ緩衝液2/3(5×アレイ緩衝液2、品番号895478:R&Dシステムズ社の抗体アレイARY002;アレイ緩衝液3、品番号895008:R&Dシステムズ社の抗体アレイARY002)の中で調製した(ビオチン化されたホスホ特異的抗体を含む)1.5mlの抗ホスホMAPK検出抗体カクテル(品番号893051;R&Dシステムズ社の抗体アレイARY002)とともに2時間にわたってインキュベートした。膜を1×洗浄緩衝液で3回洗浄し、1×アレイ緩衝液2/3の中で1:2000に希釈した1.5mlのストレプトアビジン-HRP(品番号890803:R&Dシステムズ社の抗体アレイARY002)とともに30分間にわたってインキュベートした。膜を1×洗浄緩衝液で3回洗浄し、ECL+ウエスタン検出試薬(GEヘルスケア、ライフサイエンシーズ社、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)に曝露して現像した。膜を化学発光フィルム(コダック社、ロチェスター、ニューヨーク州)に曝露し、X線医用プロセッサを用いて現像した。現像したX線フィルムを透過モードのスキャナーで走査し、イメージJ分析ソフトウエア(イメージJ 1.37v、NIH)を用いてアレイの画像ファイルを分析することにより、その膜上のホスホ-MAPKアレイのデータを定量化した。それぞれのキナーゼについて対応する2通りのスポットの平均画素密度を計算し、膜上の透明な領域の画素密度を用いたバックグラウンド信号から差し引いた。それぞれの対応するホスホ-タンパク質標的について、AR47A6.4.2で処理したサンプルの規格化平均画素密度を8A3B.6で処理した規格化平均画素密度で割って相対変化の比を求めた。ホスホ-タンパク質信号の低下率は、相対変化の比を1から差し引いて100を掛けることによって求めた。
【0166】
AR47A6.4.2または8A3B.6とともにインキュベートしたホスホ-MAPKアレイ膜からの結果を図10に示す。AR47A6.4.2は、8A3B.6と比べると、血清と追加添加物で刺激したBxPC-3細胞の中で以下ののリン酸化を抑制した:p42/p44 MAPK/細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)(ERK1(32%)とERK2(20%)、Akt/プロテインキナーゼB(PKB)(Akt1/PKBα(15%)、Akt2/PKBβ(18%)、Akt3/PKBγ(27%)))。これらキナーゼは、細胞の増殖、成長、生存に影響を与えることのできる細胞内シグナル伝達経路に関与する。血清と追加添加物によって刺激されるとAR47A6.4.2はこれらキナーゼのリン酸化を減らせるという事実は、AR47A6.4.2が、これらキナーゼとそれに関係する細胞内シグナル伝達経路を通してがん細胞の成長と生存を阻止できる可能性のあることを示唆している。
【実施例5】
【0167】
ならし培地のTranSignal(登録商標)血管新生抗体アレイ
【0168】
AR47A6.4.2による処理が血管新生因子の分泌に影響を与えられるかどうかを調べるため、血管新生アレイ(MA6310、パノミクス社、レッドウッド・シティ、カリフォルニア州)を用い、AR47A6.4.2で処理した細胞からのならし培地をスクリーニングした。
【0169】
細胞の処理と調製
【0170】
アメリカ合衆国特許出願シリアル番号11/709,676に開示されているように、重症複合免疫不全(SCID)マウスで成長させたBxPC-3細胞を用いた膵臓がん異種移植片においてAR47A6.4.2の生体内効果が証明された。そこでBxPC-3細胞系を利用して血管新生因子の分泌のスクリーニングを実施した。BxPC-3細胞を集密に近い状態まで増殖させ、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、次いで2mlの血清欠乏培地を補充した。AR47A6.4.2(20μg/ml)または8A3B.6(アイソタイプである対照;IgG2a)(20μg/ml)を細胞に添加し、4℃で20分間放置して結合させた。細胞を37℃のインキュベータの中に24時間にわたって入れた。24時間後、それぞれの培養物からならし培地を回収し、1200回転/分(rpm)で5分間にわたって遠心分離して細胞または細胞屑を除去した。
【0171】
TranSignal(登録商標)血管新生抗体アレイ
【0172】
TranSignal(登録商標)血管新生抗体アレイを、製造者が記載しているプロトコル(2003年10月7日発行、2005年8月3日改訂;MA6310、パノミクス社、レッドウッド・シティ、カリフォルニア州)に従い、BxPC-3細胞を用いてスクリーニングした。簡単に述べると、揺動プラットフォーム式振盪機の上で、3mlの1×阻止緩衝液(MA6310、パノミクス社、レッドウッド・シティ、カリフォルニア州)の中で1時間にわたって室温にてインキュベートすることにより、それぞれのTranSignal(登録商標)血管新生抗体アレイ膜を調製した。次に膜を1mlの洗浄緩衝液II(20×洗浄緩衝液IIを蒸留水(dH2O)で希釈して1×にした;MA6310、パノミクス社、レッドウッド・シティ、カリフォルニア州)で2回洗浄した。洗浄後、回収した全ならし培地(2ml)を膜に添加し、揺動プラットフォーム式振盪機の上で4℃にて一晩にわたってインキュベートした。次に、膜を4mlの1×洗浄緩衝液I(20×洗浄緩衝液をdH2Oの中で希釈して1×にした;MA6310、パノミクス社、レッドウッド・シティ、カリフォルニア州)で3回洗浄した。その後、4mlの1×洗浄緩衝液II(MA6310、パノミクス社、レッドウッド・シティ、カリフォルニア州)で3回洗浄した。次に、揺動プラットフォーム式振盪機の上で、1.5mlのビオチン結合抗血管新生混合物(MA6310、パノミクス社、レッドウッド・シティ、カリフォルニア州)の中で膜を1時間にわたってインキュベートし、4mlの1×洗浄緩衝液I(MA6310、パノミクス社、レッドウッド・シティ、カリフォルニア州)で3回洗浄した後、4mlの1×洗浄緩衝液II(MA6310、パノミクス社、レッドウッド・シティ、カリフォルニア州)で3回洗浄した。1×洗浄緩衝液IIの中で1:1000に希釈したストレプトアビジン-HRPを膜に添加し、室温にて1時間にわたってインキュベートし、4mlの1×洗浄緩衝液I(MA6310、パノミクス社、レッドウッド・シティ、カリフォルニア州)で3回洗浄した後、4mlの1×洗浄緩衝液II(MA6310、パノミクス社、レッドウッド・シティ、カリフォルニア州)で3回洗浄し、Hyperfilm(登録商標)ECL試薬(RPN3114K、GEヘルスケア、ライフ・サイエンシーズ社、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)を用いて現像した。膜を化学発光膜(コダック社、ロチェスター、ニューヨーク州)に曝露し、X線医療用プロセッサを用いて現像した。現像したX線フィルムを透過型スキャナーで走査し、イメージJ分析ソフトウエア(イメージJ 1.37v、NIH)を用いてアレイの画像ファイルを分析することにより、現像したX線フィルム上の血管新生アレイのデータを定量化した。分泌された各因子について、対応する2通りのスポットの平均画素密度を計算し、膜上の透明な領域の画素密度を利用してバックグラウンドの信号から差し引いた。対応する各標的に関し、AR47A6.4.2で処理したサンプルの規格化平均画素密度を、8A3B.6で処理したサンプルの規格化平均画素密度で割り、相対変化の比を得た。信号の低下率は、1から相対変化の比を引いて100を掛けることによって求めた。
【0173】
AR47A6.4.2または8A3B.6とともにインキュベートしたTranSignal(登録商標)血管新生抗体アレイ膜からの結果を図11に示す。AR47A6.4.2は、8A3B.6と比べると、強力な血管新生因子である血管内皮増殖因子(VEGF)と胎盤増殖因子(PLGF)の分泌を抑制した。この観察結果は、BxPC-3膵臓がん細胞系をAR47A6.4.2で処理すると、固形腫瘍において血管の成長を促進する細胞による諸因子の分泌が減ることによって腫瘍の成長とがん細胞の生存を抑制できることを示している。この知見は、AR47A6.4.2の可能な作用メカニズムを示している。
【実施例6】
【0174】
試験管内での抗TROP-2抗体AR47A6.4.2の補体依存性細胞傷害(CDC)活性の証明
【0175】
マウスAR47A6.4.2が治療上有効であることは、(アメリカ合衆国特許出願シリアル番号11/709,676と上記の実施例2に開示されているように)ヒト膵臓がんの異種移植片腫瘍モデルで以前に証明されている。その作用メカニズムを明らかにするため、2つの膵臓がん細胞系PL45とBxPC-3に対するAR47A6.4.2の試験管内でのCDC活性を評価した。プレートでの培養の2日後に確立したPL45細胞とBxPC-3細胞の単層を抗体(2、0.2、及び0.02μg/ml)で処理し、1時間放置して結合させた(37℃;4%CO2)。次にウサギの補体を添加して最終濃度を10%(v/v)にした後、細胞を37℃、4%CO2にてさらに3時間にわたってインキュベートした。防御能力の弱っていない細胞の中に存在する残留乳酸デヒドロゲナーゼをCytotox 96(登録商標)キット(プロメガ社、マディソン、ウィスコンシン州、アメリカ合衆国)を用いて測定することによってCDC活性を評価した。それぞれの試験抗体を3通り評価し、結果をウサギの補体だけで処理したウエルと比べて細胞傷害率として表わした。そのとき以下の式:細胞傷害率=100-[試験抗体(492nm)-バックグラウンド(492nm)]×100/[補体だけ(492nm)-バックグラウンド(492nm)]を用いた。
【0176】
この実験からの結果(図12)は、抗TROP-2抗体AR47A6.4.2が、両方の膵臓がん標的細胞系(PL45とBxPC-3)においてウサギ補体を投与量に依存してリクルートできたことを示している。アイソタイプが一致した対照を最大濃度(20μg/ml)で用いて処理したときには、これらの細胞系でCDC活性は観察されなかった。このデータは、AR47A6.4.2が試験管内で補体をリクルートできること、そしてこの抗体が生体内で効果を及ぼすメカニズムの1つである可能性のあることを示している。
【実施例7】
【0177】
エピトープのマッピング
【0178】
TROP-2分子の中でAR47A6.4.2によって認識される領域を明らかにするため、エピトープのマッピング実験を行なった。TROP-2のアミノ酸配列に基づき、標準的なFmoc法を利用して互いに重なった複数の15量体ペプチドを合成し、トリフルオロ酸をスカベンジャーとともに用いて保護を外した。それに加え、足場上の化学的結合ペプチド(CLIPS)技術を利用して30量体までの二重ループ式ペプチド、三重ループ式ペプチド、シート状ペプチドを化学的足場の上で合成し、TROP-2分子の不連続なエピトープを再構成した。これらループ式ペプチドは、ジシステインを含むように合成し、α,α'-ジブロモキシレンで処理することによってそのジシステインを環化した。間隔が変化する位置にシステイン残基を導入することによってループのサイズを変化させた。新たに導入したシステイン以外の別のシステインが存在している場合には、そのシステインをアラニンで置換した。クレジット-カード形式のポリプロピレン製PEPSCANカード(455ペプチド形式/カード)の上でCLIPS鋳型の0.5mM溶液(例えば1,3-ビス(ブロモメチル)ベンゼンを含む炭酸水素アンモニウム(20mM、pH7.9)/アセトニトリル(1:1(v/v)))と反応させることにより、ペプチド中に多数あるシステインの側鎖をCLIPS鋳型とカップルさせた。カードをその溶液の中で30〜60分間にわたって軽く振盪している間にカードは溶液で完全に覆われた。最後に、カードを過剰なH2Oで徹底的に洗浄し、PBS(pH7.2)の中に1%SDS/0.1%β-メルカプトエタノールを含む中断緩衝液の中で70℃にて30分間にわたって超音波洗浄した後、H2Oの中でさらに45分間にわたって超音波洗浄した。合計で3579種類の異なるペプチドを合成した。PEPSCANをベースとしたELISAによって各ペプチドへの抗体の結合を調べた。共有結合したペプチドを含む455ウエルのクレジット-カード形式のポリプロピレン製カードを、阻止溶液(PBS中の5%(v/v)ウマ血清、5%(v/v)オボアルブミン、及び1%トゥイーン80)で希釈した10μg/mlのAR47A6.4.2を含む一次抗体溶液とともに一晩にわたってインキュベートした。1%トゥイーン80を含むPBSで洗浄した後、ウサギ抗マウス抗体ペルオキシダーゼを阻止溶液(PBS中の5%(v/v)ウマ血清、5%(v/v)オボアルブミン、及び1%トゥイーン80)の中に1/1000に希釈したものとともにペプチドを25℃で1時間インキュベートした。1%トゥイーン80を含むPBSで洗浄した後、ペルオキシダーゼの基質である2,2'-アジノ-ジ-3-エチルベンズチアゾリンスルホネート(ABTS)と、2μlの3%H2O2を添加した。1時間後、色の展開を測定した。電荷結合デバイス(CCD)カメラと画像処理システムを用いて色の展開を0〜4000の対数スケールで定量化した。
【0179】
AR47A6.4.2が最も強く結合した(3579のうちの)20種類のペプチドを図13にリストにして示す。AR47A6.4.2が結合したペプチドの組成を分析することにより、2つのアミノ酸ホットスポットが同定された。ホットスポットのアミノ酸配列LFRERYRLH(配列番号11)が、ペプチド番号1、2、7、8、12、16、17、及び18に存在しており、ホットスポットのアミノ酸配列QVERTLIYY(配列番号12)が、ペプチド番号11と20に存在している。ペプチド3〜6、10、14、15、及び19は偽のエピトープを表わしている可能性が大きい。というのも、これらペプチドの配列はTROP-2分子の細胞内部分に入るからである。結局、これらの結果は、LFRERYRLH(配列番号11)とQVERTLIYY(配列番号12)の周辺の配列からなる不連続なエピトープをAR47A6.4.2が認識することを示している。TROP-2分子全体のアミノ酸配列中におけるこれらアミノ酸配列の位置を図14に示す。
【実施例8】
【0180】
AR47A6.4.2のヒト化
【0181】
従来技術でよく知られている方法と、必要に応じてその方法で用いられる酵素を使用するための供給者の適切な指示を利用し、組み換えDNA法を実施した。実験室での詳細な方法も以下に説明する。
【0182】
ポリAトラクト系1000というmRNA抽出キット(プロメガ社、マディソン、ウィスコンシン州)を用い、製造者の指示に従ってハイブリドーマAR47A6.4.2細胞からmRNAを抽出した。mRNAを以下のようにして逆転写した。すなわち、κ軽鎖に関しては、5.0μlのmRNAを、1.0μlの20ピコモル/μlのMuIgGκVL-3'プライマーOL040(図15)および5.5μlの無ヌクレアーゼ水(プロメガ社、マディソン、ウィスコンシン州)と混合した。λ軽鎖に関しては、5.0μlのmRNAを、1.0μlの20ピコモル/μlのMuIgGλVL-3'プライマーOL042(図15)および5.5μlの無ヌクレアーゼ水(プロメガ社、マディソン、ウィスコンシン州)と混合した。γ重鎖に関しては、5.0μlのmRNAを、1.0μlの20ピコモル/μlのMuIgGVH-3'プライマーOL023(図16)および5.5μlの無ヌクレアーゼ水(プロメガ社、マディソン、ウィスコンシン州)と混合した。これら3つの反応混合物のすべてを熱サイクラーのあらかじめ70℃に加熱したブロックの中に5分間にわたって入れた。これら反応混合物を氷の上で5分間冷やした後、4.0μlのImPromII 5×反応緩衝液(プロメガ社、マディソン、ウィスコンシン州)、0.5μlのPNasinリボヌクレアーゼ阻害剤(プロメガ社、マディソン、ウィスコンシン州)、2.0μlの25mM MgCl2(プロメガ社、マディソン、ウィスコンシン州)、1.0μlの10mM dNTP混合物(インヴィトロジェン社、ペイズリー、イギリス国)、1.0μlのImPromII逆転写酵素(プロメガ社、マディソン、ウィスコンシン州)のそれぞれに添加した。これら反応混合物を室温にて5分間にわたってインキュベートした後、あらかじめ42℃に加熱したPCRブロックに1時間の間移した。この時間が経過した後、PCRブロックの中で70℃にて15分間にわたってインキュベートすることにより、逆転写酵素を熱で不活化した。
【0183】
重鎖配列と軽鎖配列をcDNAから以下のようにして増幅した:37.5μlの10×ハイファイ・エクスパンドPCR緩衝液(ロシュ社、マンハイム、ドイツ国)と、7.5μlの10mM dNTP混合物(インヴィトロジェン社、ペイズリー、イギリス国)と、3.75μlのハイファイ・エクスパンドDNAポリメラーゼ(ロシュ社、マンハイム、ドイツ国)を、273.75μlの無ヌクレアーゼ水に添加することにより、PCRマスター混合物を調製した。このマスター混合物を21.5μlのアリコートに分け、氷の上に載せた壁の薄い15本のPCR反応チューブの中に入れた。これらのチューブのうちの6本には、2.5μlのMuIgVH-3'逆転写反応混合物と、1.0μlの重鎖5'プライマーのプールHA〜HFを添加した(プライマーの配列とプライマーのプールの成分については図16参照)。別の7本のチューブには2.5μlのMuIgKVL-3'逆転写反応混合物と、1.0μlの軽鎖5'プライマーのプールLA〜LGを添加した(図15)。最後のチューブには、2.5μlのMuIgKVL-3'逆転写反応混合物と、1.0μlのλ軽鎖プライマーMuIgλVL5'-LIを添加した。これら反応物を熱サイクラーのブロックの中に入れ、2分間にわたって95℃に加熱した。94℃にて30秒間、55℃にて1分間、72℃にて30秒間というサイクルのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を40回実施した。最後に、PCR産物を72℃にて5分間にわたって加熱した後、4℃に維持した。
【0184】
pGEM-Tイージー・ベクター系I(プロメガ社、マディソン、ウィスコンシン州)キットを用いて増幅産物をクローニングしてpGEM-Tイージー・ベクターに入れ、配列を決定した。得られたVH配列とVL配列をそれぞれ図17と図18に示す。
【0185】
キメラ抗体を生成させるため、VH領域の遺伝子をプライマーOL334とOL335(図19)を用いてPCRによって増幅した。これらVH領域は、鋳型としてのcDNAクローンのうちの1つからのプラスミドDNAを用い、制限酵素部位5'MluIと3'HindIIIに入るように設計した。0.5mlのPCRチューブの中で、5μlの10×ハイファイ・エキスパンドPCR緩衝液(ロシュ社、マンハイム、ドイツ国)と、1.0μlの10mM dNTP混合物(インヴィトロジェン社、ペイズリー、イギリス国)と、0.5μlのプライマーOL330と、0.5μlのプライマーOL331と、1.0μlの鋳型DNAと、0.5μlのハイファイ・エキスパンドDNAポリメラーゼ(ロシュ社、マンハイム、ドイツ国)を41.5μlの無ヌクレアーゼ水に添加した。
【0186】
VL領域を同様の方法でオリゴヌクレオチドOL336とOL337(図20)を用いて増幅し、制限酵素部位BssHIIとBamHIに入れた。反応物を熱サイクラーのブロックの中に入れ、2分間にわたって95℃に加熱した。94℃にて30秒間、55℃にて1分間、及び72℃にて30秒間というサイクルのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を30回実施した。最後に、PCR産物を72℃にて5分間にわたって加熱した後、4℃に維持した。次に、VH領域とVL領域のPCR産物をクローニングし、それぞれベクターpANT15およびpANT13(図21)のそれぞれMluI/HindIII部位およびBssHII/BamHI部位に入れた。pANT15とpANT13の両方とも、pAT153をベースとしていてヒトIg発現カセットを含むプラスミドである。pANT15の重鎖カセットは、hCMVieプロモータによって駆動されるヒトゲノムIgG1定常領域遺伝子からなり、下流にヒトIgGポリA領域を持つ。pANT15は、SV40プロモータによって駆動されるハムスターのdhfr遺伝子も含んでいて、下流にSV40ポリA領域を持つ。pANT13の軽鎖カセットは、hCMVieプロモータによって駆動されるヒトゲノムκ定常領域からなり、下流に軽鎖ポリA領域を持つ。ヒトIgリーダー配列と定常領域の間のクローニング部位により、可変領域の遺伝子を挿入することができる。
【0187】
NS0細胞(ECACC 85110503、ポートン、イギリス国)を電気穿孔によってこれら2つのプラスミドとともにトランスフェクトし、DMEM(インヴィトロジェン社、ペイズリー、イギリス国)+5%FBS(超低IgG、カタログ番号16250-078、インヴィトロジェン社、ペイズリー、イギリス国)+ペニシリン/ストレプトマイシン(インヴィトロジェン社、ペイズリー、イギリス国)+100nMのメトトレキセート(シグマ社、プール、イギリス国)の中で選択した。メトトレキセート抵抗性コロニーを単離した後、1mlのHiTrap MabSelect SuReカラム(GEヘルスケア社、アマーシャム、イギリス国)を製造者が勧める条件に従って用い、抗体をプロテインAアフィニティ・クロマトグラフィによって精製した。
【0188】
ELISAをベースとした競合アッセイにおいて、ビオチンタグ・マイクロビオチニル化キット(シグマ社、プール、イギリス国)を用いてビオチン化したAR47A6.4.2マウス抗体を使用し、キメラ抗体を調べた。ビオチン化されたマウスのAR47A6.4.2を、さまざまな濃度の競合する抗体の存在下でOVCAR-3細胞と結合させた。OVCAR-3細胞を、組織培養処理した平底の96ウエルのプレートの中で集密に近い状態まで培養した後、固定した。ビオチン化されたマウスのAR47A6.4.2を1μg/mlまで希釈し、濃度が0〜5μg/mlの同体積の競合抗体と混合した。100μlの抗体混合物を、OVCAR-3で覆われたプレートのウエルに移し、室温にて1時間にわたってインキュベートした。プレートを洗浄し、(1:500に希釈した)ストレプトアビジン-HRP複合体(シグマ社、プール、イギリス国)とOPD基質(シグマ社、プール、イギリス国)を添加することにより、結合したビオチン化されたマウスのAR47A6.4.2を検出した。このアッセイ結果を暗所で5分間にわたって現像した後、3MのHClを添加することによって停止させた。次にMRX TCIIプレート読み取り機を用い、アッセイ・プレートの490nmにおける吸光度を読み取った。OVCAR-3細胞への結合について、キメラ抗体((ch)AR47A6.4.2)は、ビオチン化されたAR47A6.4.2抗体との競合においてマウスAR47A6.4.2抗体と同じであることがわかった。
【0189】
マウスAR47A6.4.2配列と、相同なヒトのVH配列およびVL配列とを比較することにより、ヒト化したVHとVLの配列を設計した。VH変異体の配列を図22に、VL変異体の配列を図23に示す。ヒト化V領域遺伝子を構成するにあたり、PCR用にマウスAR47A6.4.2のVHとVLの鋳型を利用し、互いに重なった長い複数のオリゴヌクレオチドを用いて相同なヒトのVH配列およびVL配列からのアミノ酸配列を導入した。ヒト化したVH配列とVL配列の変異体を生成させるのに用いたオリゴヌクレオチドをそれぞれ図19と図20に示す。アメリカ合衆国特許公開2004/260069(Hellendoorn、Carr、Baker)に詳細に記載されているようにして変異体遺伝子をクローニングし、発現ベクターpSVgptとpSVhygに直接入れた。
【0190】
ヒト化した重鎖と軽鎖のあらゆる組み合わせ(キメラ・コンストラクトを含む)を一時的にCHO-K1細胞(ECACC 85051005、ポートン、イギリス国)にトランスフェクトし、48時間後に上清を回収した。精製したヒトIgG1/κ(シグマ社、プール、イギリス国)を基準として使用し、IgG Fc/κELISAにより、その上清における抗体の発現を定量化した。1×PBS(pH7.4)の中に1:1500に希釈したマウス抗ヒトIgG Fc特異的抗体(I6260、シグマ社、プール、イギリス国)でイムノソーブ96ウエル・プレート(ナルゲ・ナンク社、ヒアフォード、イギリス国)を37℃にて1時間にわたって覆った。プレートをPBS+0.05%トゥイーン20の中で3回洗浄した後、サンプルと基準を2%BSA/PBSの中で希釈したものを添加した。プレートを室温にて1時間にわたってインキュベートした後、PBS/トゥイーンの中で3回洗浄し、2%BSA/PBSの中に1:1000に希釈した検出抗体ヤギ抗ヒトκ軽鎖ペルオキシダーゼ複合体(A7164、シグマ社、プール、イギリス国)を100μl/ウエルのの割合で添加した。プレートを室温にて1時間にわたってインキュベートした後、PBS/トゥイーンで5回洗浄した。結合した抗体を、OPD基質(シグマ社、プール、イギリス国)を用いて検出した。このアッセイ結果を暗所で5分間にわたって現像した後、3MのHClを添加することによって停止させた。次にMRX TCIIプレート読み取り機(ダイネックス・テクノロジーズ社、ワーシング、イギリス国)を用い、アッセイ・プレートの490nmにおける吸光度を読み取った。
【0191】
上記の競合結合ELISAにおいてヒト化変異体の結合を調べた。96ウエルの微量滴定プレートに固定されたOVCAR-3細胞への結合がマウスAR47A6.4.2と競合する精製キメラ抗体((ch)AR47A6.4.2)を用いて基準曲線を作った。ヤギ抗マウスIgG:HPR複合体(A2179、シグマ社、プール、イギリス国)をさまざまな濃度(156.25ng/ml〜5μg/ml)で用いてOVCAR-3細胞へのマウスAR47A6.4.2の結合を検出し、TMB基質(シグマ社、プール、イギリス国)を用いて現像した。それぞれの変異体について、キメラの基準曲線を用い、調べた濃度で予想される抑制率を計算し、実際の観測値と比較した。次に、さまざまな重鎖/軽鎖の組み合わせのそれぞれについて、試験サンプルの観測された抑制率を予想される抑制率で割ることによって結果を規格化した。したがって観測値/予想値の比=1.0であるサンプルはキメラ抗体と同じ結合親和性を持つのに対し、比>1.0は、TROP-2への結合が減っており、比<1.0のサンプルはTROP-2への結合が増大している。結果を図24に示す。
【0192】
VH遺伝子とVL遺伝子の組み合わせをクローニングして二重ベクターpANT18(pANT18ベクターは、すでに説明したプラスミドpANT15をベースとしていて、pANT13からの軽鎖カセットがクローニングされてSpeI/PciI制限酵素部位に入れられている)に入れ、電気穿孔によってCHO/dhfr細胞(ECACC、94090607)にトランスフェクトし、培地(高グルコースDMEM(インヴィトロジェン社、ペイズリー、イギリス国)にL-グルタミン+ピルビン酸Na+5%透析FBS(カタログ番号26400-044、インヴィトロジェン社、ペイズリー、イギリス国)+プロリン(シグマ社、プール、イギリス国)+ペニシリン/ストレプトマイシン(インヴィトロジェン社、ペイズリー、イギリス国)が含まれているが、ヒポキサンチンとチミジンが欠乏しているもの)の中で選択した。抗体を上記のプロテインAアフィニティ・クロマトグラフィによって精製した。精製した抗体を濾過殺菌した後、+4℃で(pH7.4のPBSの中に)貯蔵した。抗体の濃度は、上記のヒトIgG1/κ捕獲ELISAによって計算した。
【0193】
精製した抗体サンプルのうちの4つに関し、ヒトTROP-2を発現しているOVCAR-3細胞への結合を上記の競合ELISAで調べた。さまざまな濃度の各抗体(156ng/ml〜5μg/ml)を精製したマウスAR47A6.4.2と混合し、固定されたOVCAR-3細胞で被覆された微量滴定プレートに添加した。上記のヤギ抗マウスIgG(Fc):HRP複合体を用いてマウスAR47A6.4.2の結合を検出した。450nmでの吸光度をプレート読取装置で測定し、試験抗体の濃度に対してプロットした。選択した変異体がOVCAR-3細胞へのマウスAR47A6.4.2の結合を50%抑制するのに必要な濃度(IC50)を計算し、キメラ抗体と比較した。
【0194】
4種類のヒト化抗体変異体とキメラ抗体のIC50は以下の通りである:
(ch)AR47A6.4.2 =1.71μg/ml
(hu)AR47A6.4.2変異体HV2/KV3=2.24μg/ml
(hu)AR47A6.4.2変異体HV2/KV4=3.04μg/ml
(hu)AR47A6.4.2変異体HV3/KV3=2.04μg/ml
(hu)AR47A6.4.2変異体HV3/KV4=1.02μg/ml。
【実施例9】
【0195】
rhTROP-2に対するAR47A6.4.2と(hu)AR47A6.4.2の結合親和性の決定
【0196】
AR47A6.4.2、(hu)AR47A6.4.2変異体HV2/KV3、(hu)AR47A6.4.2変異体HV2/KV4、(hu)AR47A6.4.2変異体HV3/KV3、及び(hu)AR47A6.4.2変異体HV3/KV4の結合親和性を、組み換えヒトTROP-2(rhTROP-2)に結合させた後にそれぞれの解離定数(KD)を決定することによって比較した。
【0197】
標準的なアミン・カップリング手続きを利用し、抗ポリヒスチジン・モノクローナル抗体(R&Dシステムズ社、ミネアポリス、ミネソタ州)を固定化した。0.4MのEDCと0.1MのNHSの1:1混合物を104μl(流速10μl/分)注入することによってCM5センサー・チップ(GEヘルスケア社、ピスカタウェイ、ニュージャージー州、アメリカ合衆国。以前のバイアコア社)の表面を活性化した。(10mMの酢酸ナトリウム(pH5.5)で希釈した)抗ポリヒスチジン抗体を20μg/mlの濃度で注入して約2000RUにした。最後に119μlの1.0Mエタノールアミン-HCl(pH8.5)を表面に注入し、センサー・チップの表面上の占拠されていないすべての活性化部位をブロックした。HISタグを付けたrhTROP-2(R&Dシステムズ社、ミネアポリス、ミネソタ州)を1μg/ml注入し、チップの表面上のHISタグに捕獲させた後、R47A6.4.2、(hu)AR47A6.4.2変異体HV2/KV3、(hu)AR47A6.4.2変異体HV2/KV4、(hu)AR47A6.4.2変異体HV3/KV3、(hu)AR47A6.4.2変異体HV3/KV4を注入した。その後の注入のためにセンサー・チップの表面を再生する操作は、10mMのグリシン-HCl(pH2.0)を流速50μl/分で60秒間注入することによって実現した。抗体をランニング緩衝液(HBS-EP+、GEヘルスケア社、ピスカタウェイ、ニュージャージー州、アメリカ合衆国。以前のバイアコア社)の中で希釈し、0.67〜333nMの範囲の濃度で順番に注入し、表面を各サイクルの間に再生させた。対照として、各濃度の抗体も、表面に固定化した抗ポリヒスチジン抗体を有するが、rhTROP-2は捕獲されていない参照表面に注入した。バイアコアT100評価ソフトウエアのバージョン1.1を利用し、得られたセンサーグラムについて単純な1:1相互作用モデルで動的分析を行なった。会合と解離の速度定数の測定値を利用して抗体のKDを計算した。実験は、バイアコアT100システム(GEヘルスケア社、ピスカタウェイ、ニュージャージー州、アメリカ合衆国。以前のバイアコア社)を用いて実施した。実験結果から、マウスAR47A6.4.2では3.03nMが得られたのに対し、4種類の(hu)AR47A6.4.2では0.613〜0.697nMであった(図25)。これは、すべての抗体がナノモル〜ナノモル未満の範囲であることと、ヒト化抗体の親和性が親であるマウスAR47A6.4.2の親和性よりも大きいことを示している。会合速度定数(Ka)と解離速度定数(Kd)も表に示してある(図25)。
【実施例10】
【0198】
競合バインダの単離
【0199】
当業者は、抗体が1つ与えられると、その抗体を競合的に抑制するCDMAB(例えば競合抗体)を生成させることができる(Belanger, L.他、Clinica Chimica Acta、第48巻、15〜18ページ、1973年)。このCDMABは、同じエピトープを認識する抗体である。1つの方法では、抗体が認識する抗原を発現する免疫原を用いて免疫化する。サンプルは、組織、単離されたタンパク質、細胞系などを含んでいてもよい。得られるハイブリドーマは、競合アッセイを利用してスクリーニングできよう。競合アッセイは、試験抗体の結合を抑制する抗体を同定するELISA、FACS、ウエスタン・ブロッティングなどの方法の1つである。別の方法では、ファージ提示抗体ライブラリを利用して、抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する抗体を選別する(Rubinstein, J.L.他、Anal Biochem、第314巻、294〜300ページ、2003年)。どちらの場合にも、抗体は、標的抗原の少なくとも1つのエピトープに対する標識された元の抗体の結合に取って代わる能力に基づいて選択される。したがってこのような抗体は、元の抗体のように抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する特性を有するであろう。
【実施例11】
【0200】
AR47A6.4.2モノクローナル抗体の可変領域のクローニング
【0201】
AR47A6.4.2ハイブリドーマ細胞系が産生するモノクローナル抗体の重鎖(VH)と軽鎖(VL)からの可変領域の配列は、(アメリカ合衆国特許出願シリアル番号11/709,676に開示されているように)以前に決定された。キメラIgGとヒト化IgGを生成させるため、(上記の実施例8に開示されているようにして)可変軽鎖ドメインと可変重鎖ドメインをサブクローニングして適切な発現ベクターに入れることができる。
【0202】
別の一実施態様では、AR47A6.4.2、またはその脱免疫化されたもの、キメラ形態のもの、ヒト化されたものを、抗体をコードしている核酸をトランスジェニック動物の中で発現させることによって作る。その結果として抗体が発現され、その抗体を回収することができる。例えば抗体は、回収と精製が容易になる組織特異的なやり方で発現させることができる。そのような一実施態様では、本発明の抗体は乳腺で発現し、授乳の間に分泌される。トランスジェニック動物として、マウス、ヤギ、及びウサギなどがあるが、これだけに限定されない。
【0203】
(i)モノクローナル抗体
【0204】
(アメリカ合衆国特許出願シリアル番号11/709,676に開示されている)モノクローナル抗体をコードしているDNAは、従来法(例えばモノクローナル抗体の重鎖と軽鎖をコードしている遺伝子に特異的に結合するオリゴヌクレオチド・プローブ)を利用して容易に単離して配列を明らかにすることができる。ハイブリドーマ細胞はそのようなDNAの好ましい供給源として機能する。DNAは、一度単離されると発現ベクターの中に入れることができ、今度はその発現ベクターを宿主細胞(例えば大腸菌細胞、サルのCOS細胞、チャイニーズ・ハムスターの卵巣(CHO)細胞、ミエローマ細胞)にトランスフェクトし、その組み換え宿主細胞の中でモノクローナル抗体を合成させる(発現ベクターをトランスフェクトしなければその組み換え宿主細胞が免疫グロブリン・タンパク質を産生することはない)。DNAは、例えばヒト重鎖と軽鎖の定常領域のコード配列を相同なマウス配列の代わりに用いて変更することができる。キメラ抗体またはハイブリッド抗体も、合成タンパク質化学で知られている方法(例えば架橋剤の使用を含む方法)を利用して試験管内で調製することができる。免疫毒素は、例えばジスルフィド交換反応を利用して、またはチオエーテル結合を形成することにより、構成することができる。この目的に適した試薬の例として、イミノチオレートやメチル-4-メルカプトブチルイミデートなどがある。
【0205】
(ii)ヒト化抗体
【0206】
ヒト化抗体は、非ヒト供給源からの1つ以上のアミノ酸残基が導入されている。その非ヒトアミノ酸残基は、“輸入”残基と呼ばれることがしばしばあり、その残基は“輸入”可変領域から取られることが一般的である。ヒト化は、Winterとその共同研究者の方法を利用して囓歯類のCDRまたはCDR配列を対応するヒト抗体の配列で置換することによって実現できる(Jones他、Nature、第321巻、522〜525ページ、1986年;Riechmann他、Nature、第332巻、323〜327ページ、1988年;Verhoeyen他、Science、第239巻、1534〜1536ページ、1988年;Clark、Immunol. Today、第21巻、397〜402ページ、2000年の概説)。
【0207】
ヒト化抗体は、親配列とヒト化配列の三次元モデルを用いて親配列とさまざまな理論的ヒト化産物を分析することによって調製できる。三次元免疫グロブリン・モデルが一般に利用可能であり、当業者はそのモデルに馴染みがある。選択された候補免疫グロブリン配列の可能な三次元コンホメーション構造を描いて表示するコンピュータ・プログラムが利用できる。その表示を検討することで、その候補免疫グロブリン配列が機能する際の残基の可能な役割を分析すること、すなわちその候補免疫グロブリンが抗原に結合する能力に影響を与える残基を分析することができる。このようにして、FR残基をコンセンサス配列と輸入配列から選択して組み合わせ、望む抗体特性(例えば標的抗原に対する親和性の増大)を実現する。一般に、CDR残基は、抗原の結合に影響を与えるのに直接的かつ実質的に最も関与する。
【0208】
(iii)抗体フラグメント
【0209】
抗体フラグメントを作るのにさまざまな方法が開発されている。抗体フラグメントは、組み換え宿主細胞によって産生させることができる(Hudson、Curr. Opin. Immunol.、第11巻、548〜557ページ;Little他、Immunol. Today、第21巻、364〜370ページ、2000年に概説がある)。例えばFab'-SHフラグメントは大腸菌から直接回収することができ、化学的にカップルさせてF(ab')2フラグメントを形成する(Carter他、Biotechnology、第10巻、163〜167ページ、1992年)。別の一実施態様では、F(ab')2は、F(ab')2分子が組み立てられるのを促進するロイシン・ジッパーGCN4を用いて形成される。別の1つの方法によれば、Fv、Fab、F(ab')2という各フラグメントは、組み換え宿主細胞培養物から直接単離することができる。
【実施例12】
【0210】
本発明の抗体を含む組成物
【0211】
がんを予防/治療するための組成物として本発明の抗体を用いることができる。がんを予防/治療するためのこの組成物は本発明の抗体を含んでおり、そのまま液体調製物の形態で投与することや、ヒトまたは哺乳動物(例えばラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に適した調製物の医薬組成物として、経口または非経口(例えば静脈内、腹腔内、皮下など)で投与することができる。本発明の抗体は、そのままで、または適切な組成物として投与することができる。投与に用いる組成物は、本発明の抗体またはその塩にとって薬理学的に許容可能な基剤、希釈剤、賦形剤を含むことができる。このような組成物は、経口投与または非経口投与に適した医薬調製物の形態で提供される。
【0212】
非経口投与のための組成物の例は、注射可能な調製物、座薬などである。注射可能な調製物には、静脈内注射液、皮下注射液、皮内注射液、筋肉内注射液、点滴液、関節内注射液などの投与形態が含まれる。注射可能な調製物は公知の方法によって調製できる。注射可能な調製物は、例えば本発明の抗体またはその塩を、注射で通常用いられる無菌の水性媒体または油性媒体の中に溶かすこと、または懸濁させること、または乳化することによって調製できる。注射用の水性媒体として、例えば生理食塩水や、グルコースと他の助剤を含む等張溶液などがあり、これらは、適切な可溶剤(アルコール(例えばエタノール)、ポリアルコール(例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例えばポリソルベート80、水素化したヒマシ油のHCO-50(ポリオキシエチレン(50モル))付加物など)と組み合わせて使用できる。油性媒体としては、例えばゴマ油、ダイズ油などが使用され、これらは可溶剤(例えば安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなど)と組み合わせて使用することができる。このようにして調製された注射液は、通常は適切なアンプルに充填される。直腸投与に用いられる座薬は、本発明の抗体またはその塩を従来からある座薬用ベースと混合することによって調製できる。経口投与用の組成物としては固体または液体の調製物があり、特に錠剤(ドラジェやフィルムで包まれた錠剤を含む)、ピル、顆粒、粉末調製物、カプセル(軟質カプセルを含む)、シロップ、エマルジョン、懸濁液などが挙げられる。このような組成物は公知の方法で製造され、医薬調製物の分野で従来から使用されているビヒクル、希釈剤、又は賦形剤を含むことができる。錠剤用のビヒクルまたは賦形剤の例は、ラクトース、デンプン、スクロース、ステアリン酸マグネシウムなどである。
【0213】
経口または非経口で用いる上記の組成物は、活性成分の1回用量に適した単位用量の医薬調製物にされることが望ましい。そのような単位用量調製物として、例えば錠剤、ピル、カプセル、注射物(アンプル)、座薬などがある。含まれる上記化合物の量は、一般に、単位用量の形態1つにつき5〜500mgである。上記の抗体は、約5〜約100mgが特に注射物の形態で含まれることが好ましく、他の形態では10〜250mgが含まれることが好ましい。
【0214】
本発明の抗体を含む上記の予防/治療剤または調節剤の用量は、投与する対象、標的とする疾患、状態、投与経路などによって異なる可能性がある。例えば成人の乳がんの治療/予防を目的として用いるときには、本発明の抗体を体重1kg当たり約0.01〜約20mgの用量(約0.1〜約10mgが好ましく、約0.1〜約5mgがより好ましい)で1日に約1〜5回(約1〜3回が好ましい)投与することが有利である。他の非経口投与と経口投与では、薬剤は、上記の用量に対応する用量で投与することができる。状態が特に厳しいときには、用量をその状態に応じて増やすことができる。
【0215】
本発明の抗体は、そのままで、または適切な組成物の形態で投与することができる。投与に用いる組成物は、上記の抗体にとって薬理学的に許容可能な基剤またはその塩、希釈剤、又は賦形剤を含んでいてもよい。このような組成物は、経口投与または非経口投与(例えば静脈内注射、皮下注射など)に適した医薬調製物の形態で提供される。上記の各組成物はさらに、他の活性成分も含んでいてよい。さらに、本発明の抗体は、他の薬と組み合わせて使用することができる。そのような薬として、例えばアルキル化剤(例えばシクロホスファミド、イホスファミドなど)、代謝アンタゴニスト(例えばメトトレキセート、5-フルオロウラシルなど)、抗腫瘍抗生物質(例えばマイトマイシン、アドリアマイシンなど)、植物由来の抗腫瘍剤(例えばビンクリスチン、ビンデシン、タキソールなど)、シスプラチン、カルボプラチン、エトポシド、イリノテカンなどがある。本発明の抗体とこれらの薬は、患者に同時に投与すること、または時間をずらして投与することができる。
【0216】
この明細書に記載した治療法、その中でも特にがんの治療法は、他の抗体または化学療法剤の投与と合わせて実施することもできる。例えば特に大腸がんを治療するとき、EGFRに対する抗体(例えばアービタックス(登録商標)(セツキシマブ))を投与することができる。アービタックス(登録商標)は、乾癬の治療にも有効であることがわかっている。組み合わせて使用する他の抗体として、特に乳がんを治療するときのハーセプチン(登録商標)(トラスツズマブ)、特に大腸がんを治療するときのアバスチン(登録商標)、特に非小細胞肺がんを治療するときのSGN-15がある。本発明の抗体を他の抗体/化学療法剤と組み合わせた投与は、同じ経路または別の経路で同時に、または別々に行なうことができる。
【0217】
化学療法剤/他の抗体を用いて治療計画には、患者の疾患を治療するのに最適であると考えられるあらゆる治療計画が含まれる。悪性腫瘍の種類が異なれば特異的な抗腫瘍抗体と特異的な化学療法剤を必要とする可能性があり、それが患者ごとに決定されることになる。本発明の好ましい一実施態様では、化学療法を抗体療法と同時に、または抗体療法の後に実施するが、後者が好ましい。しかし本発明が特定の方法または投与経路に限定されないことを強調する必要がある。
【0218】
有力な証拠から、AR47A6.4.2が抗がん効果を媒介していて、TROP-2の表面に存在するエピトープとの結合を通じて生存期間が延びることがわかる。(アメリカ合衆国特許特許出願11/709,676に開示されているように)発現細胞(例えばMDA-MB-231細胞)からコグネイト抗原を免疫沈降させるのにAR47A6.4.2抗体を使用できることが以前に示されている。さらに、FACS、細胞ELISA、IHCなどによって示される方法を利用し、AR47A6.4.2、キメラAR47A6.4.2((ch)AR47A6.4.2)、又はヒト化変異体((hu)AR47A6.4.2)を使用して、これらに特異的に結合するTROP-2抗原部分を発現する細胞および/または組織を検出できることを示せるであろう。
【0219】
AR47A6.4.2抗体と同様、他の抗TROP-2抗体も、TROP-2抗原の他の形態を免疫沈降させて単離するのに使用できよう。この抗原は、この抗原を発現する細胞または組織にこれらの抗体が結合するのを同じタイプのアッセイを利用して抑制するのに用いることもできる。
【0220】
【表1】
【0221】
この明細書で言及したあらゆる特許と刊行物は、本発明が関係する当業者のレベルを示すものである。この明細書に記載したあらゆる特許と刊行物は、個々の刊行物が特別かつ個別に指示されて参考として組み込まれているかのようにして、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする。
【0222】
本発明のある1つの形態を示してあるが、本発明がここに説明したり示したりした部分の特定の形態または配置に限定されないことを理解されたい。当業者には、本発明の範囲を逸脱することなくさまざまな変更が可能であること、そして本発明がこの明細書に示したり説明したりしたものに限定されるとは見なされないことは明らかであろう。当業者であれば、本発明が、目標を実現するのによく適していること、そして記載してある目的と利点、ならびに固有の目的と利点を得るのによく適していることが容易に理解できよう。この明細書に記載したあらゆるオリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、生物関連化合物、方法、手続き、及び技術は、現在の好ましい実施態様の代表であって例示であることを意図しており、本発明の範囲を制限することは意図していない。本発明の精神に含まれていて添付の請求項の範囲によって規定される変更や他の用途が当業者には思い浮かぶであろう。本発明を特に好ましい実施態様に関して説明してきたが、請求項の本発明がそのような特別な実施態様に限定されるはずはないことを理解すべきである。実際、本発明を実施するために説明した態様のさまざまな変更で当業者に明らかなものは、以下の請求項の範囲に含まれるものとする。
【表2】
【表3】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がん性疾患の診断と治療に関するものであり、その中でも特に腫瘍細胞の細胞殺作用の媒介に関係しており、さらに特定するならば、細胞傷害応答を開始させる手段として、がん性疾患軽減抗体(CDMAB)を任意に1又は複数種類のCDMAB/化学療法剤と組み合わせて使用することに関する。本発明はさらに、本発明のCDMABを用いる結合アッセイにも関する。
【背景技術】
【0002】
TROP-2は、たいていの癌腫と正常ないくつかのヒト組織で発現する細胞表面糖タンパク質である。TROP-2は、最初は、ヒト栄養芽層細胞上の抗原を認識するヒト絨毛膜癌腫細胞系BeWoに対して生じる2種類のマウス・モノクローナル抗体によって認識される分子として定義された(Faulk、1978年)。同じ分子が他の研究者たちによっても独立に発見されたため、同じ抗原を表わす複数の名前が存在することになった。したがってTROP-2は、GA733-1や上皮糖タンパク質-1(EGP-1)とも呼ばれた(Basu、1995年;Fornaro、1995年)。
【0003】
TROP-2遺伝子はイントロンのない遺伝子であり、相同な遺伝子GA733-2(上皮糖タンパク質-2、EpCAM、Trop-1としても知られる)がRNA中間体を通じたレトロポジションによって形成されたと考えられた。TROP-2遺伝子は、染色体1p32にマッピングされている(Calabrese、2001年)。TROP-2のタンパク質成分は約35キロダルトンの分子量である。その分子量は、細胞外ドメインのヘテロN結合型グリコシル化で11〜13キロダルトン大きくなる可能性がある。多くのシステイン残基が細胞外ドメインに存在しているため、ジスルフィド架橋部位を形成できる可能性がある。TROP-2は、Ca2+依存性プロテインキナーゼであるプロテインキナーゼCの基質であり、細胞内セリン303残基がリン酸化されていることがわかっている(Basu、1995年)。また、TROP-2を抗TROP-2抗体と架橋させると、細胞質Ca2+の上昇によって示されるようにカルシウム信号が伝わることもわかっている(Ripani、1998年)。これらのデータは、TROP-2の1つの生理学的機能としてのシグナル伝達を支持しているが、現在まで、いかなる生理学的リガンドも同定されていない。TROP-2の発現とがんの関係が、ある報告に示されている。その報告によれば、TROP-2は、cDNAマイクロアレイ技術を用いた大スケールの遺伝子発現分析において、正常な卵巣上皮と比べて卵巣漿液性乳頭状癌で最も過剰発現していると報告された一群の遺伝子の1つのメンバーとして同定された(Santin、2004年)。74個のヒトがんのサンプルを定量的リアル-タイムRT-PCRで分析し、そのサンプルのうちの34個を免疫組織化学で分析した最近の研究では、がんの切片と正常な患者の切片におけるTROP-2の発現レベルが調べられた。TROP-2は、がんにおいて正常な患者のサンプルよりも多く発現していることが見いだされ、この研究ではさらに、TROP-2の発現レベルと生物学的攻撃能力の間に相関があることが証明された。高レベルのTROP-2は、予後の悪さ、患者の生存率の低下、肝臓転移の頻度増加と関係していることが見いだされた(Ohmachi、2006年)。これは、TROP-2が予後の1つの指標として有用である可能性と、魅力的な治療標的である可能性を示している。
【0004】
TROP-2の発現プロファイルは、多くの異なるTROP-2抗体を用いた免疫組織学(IHC)とフローサイトメトリーの研究を通じて明らかにされた。マウスをヒト絨毛膜癌腫細胞系BeWoで免疫化することによって抗TROP-2抗体162-25.3と162-46.2が作り出され、一連の腫瘍細胞系、リンパ球細胞系、及び末梢血単核細胞に対するその抗体の反応性が調べられた。この研究において、どちらの抗体も、調べた4つの絨毛膜癌腫細胞系のうちの3つで染色されたため、栄養膜特異的であるように見えたのに対し、他のリンパ球細胞系も、腫瘍細胞系(すなわち線維肉腫、子宮頸肉腫、大腸肉腫、黒色種、神経芽細胞腫、赤白血病)も、間接的免疫蛍光FACSアッセイでは染色されなかった。それに加え、正常な末梢血細胞のどれも染色されなかった。両方の抗体に関し、ホルマリン固定包埋胎盤組織切片の染色と、凍結させた正常な肝臓組織、腎臓組織、脾臓組織、胸腺組織、リンパ節組織の染色を調べた。胎盤組織は両方の抗体で染色されたが、他の正常組織は染色されなかった(Lipinski、1981年)。これら2つの抗体は、試験管内診断の研究での利用に関してだけ報告されている。
【0005】
抗TROP-2抗体であるMOv16は、よく分化していない卵巣癌腫OvCa4343/83の粗膜調製物でマウスを免疫化することによって作り出された。MOv16の反応性が、良性と悪性の卵巣腫瘍を凍結させた一連の組織切片で調べられた。MOv16は54個の悪性卵巣腫瘍のうちの31個で、16個の良性卵巣腫瘍のうちの2個で反応した。調べた5個のムチン性卵巣腫瘍にはMOv16はまったく反応しなかった。凍結させた悪性卵巣腫瘍の切片に対するMOv16の反応性も調べたところ、189個の乳房癌腫の切片のうちの117個、18個の肺癌腫の切片のうちの12個と結合することが見いだされた。MOv16は、調べた16個の非上皮腫瘍(脂肪肉腫、軟骨肉腫、内皮腫、組織球腫、未分化胚細胞腫など)とはまったく反応しなかった。MOv16は、凍結させた正常組織切片で調べると、乳房、膵臓、腎臓、及び前立腺の切片と反応した。MOv16は、肺、脾臓、皮膚、卵巣、甲状腺、耳下腺、胃、咽頭、子宮、及び大腸の切片とは反応しないが、使用した組織切片の数は報告されていない。著者は、MOv16がパラフィン包埋組織に反応しなかったため凍結させた組織切片を用いたと指摘している(Miotti、1987年)。この抗体も、試験管内診断の研究での利用に関してだけ報告されている。
【0006】
外科手術で取り出したヒト肺の原発性扁平上皮がんに由来する粗膜調製物でマウスを免疫化することによって抗TROP-2抗体Rs7-3G11(RS7)が作り出された。IHCを利用し、ヒトの腫瘍組織と正常組織の凍結切片でRS7の染色が調べられた。RS7は、乳がん、大腸がん、腎臓がん、肺がん、前立腺がん、及び扁平上皮がんの40個の切片のうちの33個と結合した。正常組織の中では、乳房、大腸、腎臓、肝臓、肺、及び前立腺の組織の20個の切片のうちの16個にRS7が結合したが、脾臓組織の5個の切片のどれも染色されなかった。この研究において、著者は、腫瘍中の抗原の密度が正常な上皮組織におけるよりも大きいように見えることを指摘している(Stein、1990年)。
【0007】
RS7の組織特異性に関する別の研究が、腫瘍組織と正常組織の両方で実施された。凍結させた一群の腫瘍切片でRS7が調べられ、肺、胃、腎臓、膀胱、大腸、乳房、卵巣、子宮、及び前立腺の腫瘍を示す77個の切片のうちの65個に結合した。調べられた5個のリンパ腫には結合しなかった。合計で24種類の組織からなる凍結させた一群のヒトの正常組織切片でRS7が調べられた。13種類の正常組織(肺、気管支、気管、食道、大腸、肝臓、膵臓、腎臓、膀胱、皮膚、甲状腺、乳房、及び前立腺)の39個の切片がRS7によって染色された。この研究の著者は、染色が陽性であることが観察された組織では、反応性は一般に上皮細胞(主に管と腺)に限定されるという指摘もなされている。また、RS7はホルマリン固定包埋切片では反応しなかったため、この研究は凍結させた切片に限定されることも指摘されている(Stein、1993年)。
【0008】
ヒトTROP-2の細胞質ドメインのアミノ酸位置169〜182に対応する合成ペプチドでマウスを免疫化することにより、ポリクローナル抗TROP-2抗体が調製された。ホルマリンで固定したヒト食道の過形成組織と癌腫組織を含む組織アレイ・スライドでこのポリクローナル抗体が調べられた。55個の癌腫サンプルのうちの10個がこのポリクローナル抗体で強く染色されたのに対し、軽度の過形成組織は非常に弱く染色された。これは、発現レベルが悪性の形質転換と関係している可能性を示している(Nakashima、2004年)。
【0009】
結局、さまざまな抗TROP-2抗体で得られたIHC反応パターンは、互いに整合していた。がんにおける発現は主に癌腫で見られ、たいていの癌腫が反応した。正常組織では、発現は、上皮起源の細胞に限られているように見えた。そして癌腫の染色は、対応する正常な上皮組織の染色よりも強いことを示すいくらかの証拠が存在していた。
【0010】
抗体RS7は、IHCの研究で使用されるだけでなく、初期の実験で生体内モデルにおいても調べられた。この実験は、ヌードマウス異種移植片モデルでの腫瘍を標的とした研究である。放射性標識をしたRS7を静脈内注射すると、Calu-3腫瘍(肺腺癌)またはGW-39腫瘍(大腸癌腫)を持つマウスの腫瘍にだけ蓄積することがわかった(Stein、1990年)。放射性標識をしたRS7の異種移植片系における生体分布を調べるため、そして免疫複合体としてのRS7の潜在的な治療能力を調べるため、さらに研究が行なわれた。この研究では、Calu-3ヒト肺腺癌異種移植片を持つヌードマウスにおいて、131Iで標識したRS7 F(ab')2の治療効果が調べられた。マウスにCalu-3細胞を接種してから3週間後に腫瘍が約0.3〜0.9gに達したとき、6〜7匹のマウスからなる複数の群を、1.0mCiの131I-RS7-F(ab')2または1.5mCiの131I-RS7-F(ab')2を1回だけ静脈内投与して治療し、無治療の対照マウスからなる同様の群と比較した。1.0mCiの131I-RS7-F(ab')2の1回だけの投与によって腫瘍の成長が約5週間抑制されたのに対し、1.5mCiの131I-RS7-F(ab')2の1回だけの投与では腫瘍が退縮し、腫瘍の平均サイズは、放射性抗体を注射してから8週間目まで治療前のサイズを超えなかった。1.5mCiの131I-RS7-F(ab')2を投与されたマウスは、体重減少の平均が18.7%であった。これは、治療に毒性が伴っていたことを示している。この研究では、裸のRS7、またはRS7のF(ab')2フラグメントを用いた治療効果は調べられなかった(Stein、1994年a)。MDA-MB-468乳がん異種移植片モデルにおける131I-RS7の効果を調べる別の研究が行なわれた。体積約0.1cm3のMDA-MB-468腫瘍を持つ10匹のマウスからなる群を、250マイクロキュリーの131I-RS7、または250マイクロキュリーの131I-Ag8(アイソタイプが一致した対照抗体)を1回だけ静脈内投与することによって治療した。6匹からなるマウスの複数の群を、30μgの標識していないRS7またはAg8を1回だけ静脈内投与することによって治療した。腫瘍の完全な退縮が、131I-RS7で治療したマウスで見られ(ただし、腫瘍が一時的に再び現われた1匹のラットは除く)、それが11週間という観察期間の間続いた。腫瘍の退縮は、131I-Ag8で治療したマウスでも見られたが、2週間〜5週間の間観察されただけであり、腫瘍は実験の残りの期間も存続するか、成長を続けた。標識なしのRS7またはAg8を与えたマウスの腫瘍の成長は抑制されず、Ag8で治療したマウスとRS7で治療したマウスの腫瘍の平均体積にはいかなる違いも見られなかった。より大きな0.2〜0.3cm3というMDA-MB-468腫瘍を持つ10匹のマウスからなる別の2つの群を、わずかに多い275マイクロキュリーの131I-RS7、または275マイクロキュリーの131I-Ag8の1回だけの投与で治療し、治療しないマウスからなる同様の群と比較した。腫瘍の体積を15週間にわたって毎週測定した。この場合には、131I-RS7で治療したマウスを治療しないマウスと比べると腫瘍の成長に有意な差があったが、131I-RS7で治療したマウスを131I-Ag8で治療したマウスと比べると有意な差はなかった。これは、効果の一部が放射線の非特異的効果を原因としていた可能性を示している。標識していない抗体は、0.2〜0.3cm3の腫瘍を持つマウスでは調べられなかった(Shih、1995年)。
【0011】
放射性免疫療法の最適な放射性標識を選択することを目的として、免疫複合体としてのRS7の効果を調べる別の多数の研究が存在している(Stein、2001年a、Stein、2001年b、Stein、2003年)。RS7のヒト化バージョンも作り出されている。しかしそれは、放射性複合体として前臨床異種移植片モデルでだけ調べられた(Govindan、2004年)。これらの研究は、RS7を用いた以前の研究と同様のプラスの効果を示しているが、1つの研究では、放射性標識したRS7を以前決定された許容可能な最大投与量で供給したときでさえ、毒性が起こって何匹かのマウスが死ぬに至った(Stein、2001年a)。これらの研究では、マウスにおける異種移植片腫瘍の有効な治療法が放射性標識したRS7で実現されたが、裸のRS7は評価されなかった。
【0012】
(従来の特許の項で言及するアメリカ合衆国特許第5,840,854号に記載されているように)ノイラミニダーゼであらかじめ処理したH3922ヒト乳房癌腫細胞で免疫化したマウスは抗TROP-2モノクローナル抗体BR110を産生した。凍結させたヒト組織サンプルを用いた免疫組織学により、BR110は、広い範囲のヒト癌腫サンプル(例えば肺、大腸、乳房、卵巣、腎臓、食道、膵臓、皮膚、及び扁桃のがん)と反応することがわかった。ヒトの正常組織切片は調べられなかった。試験管内実験により、BR110は、ヒト癌腫細胞系H3396またはH3922に対するADCC活性またはCDC活性を持たないことが明らかになった。BR110-免疫毒素の細胞傷害作用を分析する試験管内実験がヒトがん細胞系H3619、H2987、MCF-7、H3396、H2981に対して実施された。調べられた細胞系のEC50は、それぞれ0.06、0.001、0.05、0.09、>5μg/mlであった。裸のBR110抗体に関する細胞傷害作用のデータは開示されていない。裸のBR110とBR110免疫複合体に関する生体内実験のデータは開示されていない。
【0013】
TROP-2を標的とする多数の別の抗体が作り出されている。例えば抗体MR54、MR6、MR23がマウスを卵巣がん細胞系Colo 316で免疫化して作り出され(Stein、1994年b)、抗体T16がマウスをT24膀胱がん細胞系で免疫化して作り出された(Fradet、1984年)。これら抗体の利用は、TROP-2抗原の生化学的な特徴を明らかにする研究と、細胞系および組織発現の研究に限定されてきた。試験管内であれ生体内であれ、これら抗体の抗がん効果に関する報告はない。RS7が、前臨床がんモデルにおいて治療効果が調べられた唯一の抗体であり、その用途は放射性同位体の担体に限定されている。裸のTROP-2抗体が、臨床研究で、または試験管内や生体内の前臨床がんモデルで治療効果を示したケースは報告されていない。
【0014】
がんの治療法としてのモノクローナル抗体:がんが存在する各個人はユニークな存在であり、その人のアイデンティティとして他のがんとは異なるがんを持つ。それにもかかわらず、現在の治療法は、同じタイプの同じステージのがんを持つすべての患者を同じ方法で治療する。こうした患者の少なくとも30%は最初の治療で失敗することになるため、その後の治療が行なわれて治療が失敗する確率、転移の確率が大きくなり、最終的に死ぬ確率が大きくなる。より優れた治療法は、特定の個人に対する治療のカスタム化であろう。カスタム化がなされている現在の唯一の治療法は外科手術である。化学療法と放射線治療は患者に合わせることができず、手術そのものは、たいていの場合に治癒をもたらすには不十分である。
【0015】
モノクローナル抗体が出現して各抗体を単一のエピトープに向かわせることができるようになったため、カスタム化された治療法を開発する可能性がより現実的になった。さらに、特定の個人の腫瘍だけに属するエピトープのパターンに向かう抗体の組み合わせを作り出すことが可能である。
【0016】
がん性細胞と正常細胞の間の重要な違いは、がん性細胞が、形質転換された細胞に特異的な抗原を含んでいることであると認識されているため、科学者のコミュニティは、これらがん抗原に特異的に結合させることによって形質転換した細胞を特異的に標的とするモノクローナル抗体を設計できると長らく主張してきた。そのためモノクローナル抗体はがん細胞をなくす“魔法の弾丸”として機能できるという信念が生まれた。しかし1種類だけのモノクローナル抗体があらゆるがんで機能することはありえないこと、そしてモノクローナル抗体を、標的化したがん治療の1つの手段として展開できることが、今では広く認識されている。ここに開示する本発明の教えに従って単離されたモノクローナル抗体は、例えば腫瘍組織量を減らすことにより、患者にとって利益があるようにがん性疾患のプロセスを変化させることがわかった。この明細書では、このモノクローナル抗体をがん性疾患軽減抗体(CDMAB)または“抗がん”抗体と呼ぶ。
【0017】
現在のところ、がん患者には、通常、治療の選択肢がいくつかある。がんの治療法を系統的にすることによって最終的な生存率と死亡率の改善が見られている。しかし特定の個人にとって、こうした改善された統計は必ずしも個人的な状況での改善と相関していない。
【0018】
例えばそれぞれの腫瘍を同じコホート内の他の患者とは独立に治療できる方法が実施されるのであれば、治療法をその1人の人に合わせて調節するという独自の方法が可能になろう。そのような治療法は、理想的には、治癒率を向上させ、よりよい結果を生み出し、そのことによって長く求められてきた要求を満たすことになろう。
【0019】
歴史的には、ポリクローナル抗体が使用されてヒトのがん治療に限られた成功を収めてきた。リンパ腫と白血病はヒト血漿を用いて治療されてきたが、長期の寛解または応答はほとんどなかった。さらに、再現性がないため、化学療法と比べて追加の利益がなかった。固形腫瘍(例えば乳がん、黒色腫、腎細胞癌腫)も、ヒトの血液、チンパンジーの血清、ヒトの血漿、及びウマの血清を用いて治療されてきたが、それに対応して予測できない結果や無効な結果が生じた。
【0020】
固形腫瘍に対するモノクローナル抗体の臨床試験がこれまでに数多く実施されてきた。1980年代、ヒト乳がんに関する少なくとも4つの臨床試験が実施されたが、特定の抗原に対する抗体、または組織選択性に基づいた抗体を用いた少なくとも47人の患者からわずか1人の応答者が出ただけである。ヒト化抗Her2/neu抗体(ハーセプチン(登録商標))をシスプラチンと組み合わせて用いることで臨床試験が成功したのは1998年になってからであった。この臨床試験では37人の患者の応答が検討され、そのうちの約1/4は応答が部分的であり、別の1/4は疾患の進行がわずかであったり安定していたりしたことがわかった。応答者の中での進行時間の中位値は8.4ヶ月であり、応答持続期間の中位値は5.3ヶ月であった。
【0021】
ハーセプチン(登録商標)は、タキソール(登録商標)と組み合わせて際穂に使用する薬として1998年に承認された。臨床試験の結果は、タキソール(登録商標)だけを投与された群(3.0ヶ月)と比較し、抗体療法+タキソール(登録商標)を投与された患者で疾患進行の中位時間が延びること(6.9ヶ月)を示していた。生存期間の中位値もわずかに延びていた。すなわちタキソール(登録商標)治療だけの集団の18ヶ月に対してハーセプチン(登録商標)+タキソール(登録商標)療法での集団は22ヶ月であった。それに加え、抗体とタキソール(登録商標)を組み合わせた群をタキソール(登録商標)だけの群と比べると、完全な応答者(8%対2%)と部分的な応答者(34%対15%)の両方の数が増加した。しかしハーセプチン(登録商標)とタキソール(登録商標)で治療すると、タキソール(登録商標)治療だけの場合と比べて心臓毒性のケースがわずかに多かった(それぞれ13%と1%)。また、ハーセプチン(登録商標)療法は、現在のところ機能がわかっていない受容体、すなわち生物学的に重要なリガンドが知られていない受容体であるヒト上皮増殖因子受容体2(Her2/neu)を過剰発現している(それは、免疫組織化学(IHC)分析によって明らかにされる)患者でだけ有効であり、それは転移性乳がん患者の約25%である。したがって乳がん患者にとってまだ満たされていない大きな要求が存在している。ハーセプチン(登録商標)療法の恩恵を受けられる人でさえ、化学療法を相変わらず必要としているため、この種の治療法の副作用に少なくともある程度まで対処する必要があろう。
【0022】
結腸がんを調べる臨床試験には、糖タンパク質と糖脂質の両方を標的とした抗体が関与する。腺癌に対していくらか特異性を有する17-1Aなどの抗体は、60人を超える患者に対する第2相臨床試験に進んでいるが、部分的に応答した患者が1人だけである。別の臨床試験では、17-1Aとともにシクロホスファミドを追加して用いるプロトコルにおいて、52人の患者のうちで完全な応答があったのは1人だけであり、2人がわずかに応答した。現在まで、17-1Aの第3相臨床試験では、ステージIIIの大腸がんのアジュバント療法としての改善された効果は証明されていない。最初はイメージング用に認可されたヒト化マウス・モノクローナル抗体を用いても腫瘍の退縮は生じなかった。
【0023】
モノクローナル抗体を用いた結腸がんの臨床試験から何らかの肯定的な結果が得られたのはごく最近になってからである。2004年、EGFRを発現していてイリノテカンをベースとした化学療法での治療が難しい転移性結腸がんの患者に対する第2の治療薬としてアービタックス(登録商標)が承認された。2つの患者集団からなる第2相臨床試験と1つだけの患者集団からなる臨床試験の両方からの結果は、応答率がそれぞれ23%と15%であり、疾患進行時間の中位値は、それぞれ4.1ヶ月と6.5ヶ月であった。2つの患者集団からなる同じ第2相臨床試験と1つだけの患者集団からなる別の臨床試験から、アービタックス(登録商標)単独での治療にはそれぞれ11%と9%が応答し、疾患進行時間の中位値は、それぞれ1.5ヶ月と4.2ヶ月であった。
【0024】
その結果、スイスとアメリカ合衆国の両方ではイリノテカンと組み合わせてアービタックス(登録商標)を用いる治療法が、アメリカ合衆国ではアービタックス(登録商標)単独の治療法が、イリノテカンを用いた第1の治療がうまくいかなかった大腸がんの患者の第2の治療法として承認された。したがってスイスにおける治療法は、ハーセプチン(登録商標)と同様、モノクローナル抗体と化学療法の組み合わせとしてだけ承認されている。それに加え、スイスとアメリカ合衆国の両方における治療法は、患者に対する第2の治療法としてだけ承認されている。また、2004年、アバスチン(登録商標)が承認され、転移性結腸がんの第1の治療法としての5-フルオロウラシルの静脈内投与をベースとした化学療法と組み合わせて用いられることになった。第3相臨床試験の結果は、アバスチン(登録商標)+5-フルオロウラシルで治療した患者の生存期間の中位値が、5-フルオロウラシルだけで治療した患者と比べて延びることを示していた(それぞれ20ヶ月と16ヶ月)。しかしここでもハーセプチン(登録商標)およびアービタックス(登録商標)と同様、治療はモノクローナル抗体と化学療法の組み合わせとしてだけ承認された。
【0025】
肺、脳、卵巣、膵臓、前立腺、及び胃のがんに関しては乏しい結果が続いている。非小細胞肺がんに関する最近の最も有望な結果は、第2相臨床試験から得られた。ここでは、細胞殺傷薬ドキソルビシンと結合させたモノクローナル抗体(SGN-15;dox-BR96、抗シアリル-LeX)を化学療法薬タキソテール(登録商標)と組み合わせる治療法が関係する。タキソテール(登録商標)は、肺がんの第2の治療法としてFDAから承認された唯一の化学療法薬である。初期のデータは、タキソテール(登録商標)単独の場合と比べて最終的な生存期間が延びることを示している。この臨床試験のために集められた62人の患者のうち、2/3がタキソテール(登録商標)と組み合わせてSGN-15を投与されたのに対し、残りの1/3はタキソテール(登録商標)だけを投与された。タキソテール(登録商標)と組み合わせてSGN-15を投与された患者では、最終的な生存期間の中位値が7.3ヶ月であったのに対し、タキソテール(登録商標)だけを投与された患者では5.9ヶ月であった。最終的な生存期間が1年、18ヶ月になったのは、SNG-15+タキソテール(登録商標)を投与された患者ではそれぞれ29%と18%であったのに対し、タキソテール(登録商標)だけを投与された患者ではそれぞれ24%と8%であった。さらなる臨床試験が計画されている。
【0026】
臨床試験前に黒色腫でいろいろなモノクローナル抗体を用いていくらかの成功が得られている。これら抗体のうちのほんのわずかのものだけが臨床試験まで到達したが、現在まで、どれについても認可されていないし、第3相臨床試験で好ましい結果も証明されていない。
【0027】
疾患を治療する新しい薬が発見されないのは、疾患の原因に関係する可能性のある既知の30,000個の遺伝子の産物の中で関係する標的が同定されていないからである。腫瘍学における研究では、薬となる可能性のある標的は、その標的が単に腫瘍細胞で過剰発現しているという事実によって選択されることがしばしばある。このようにして同定された標的は、その後、多くの化合物との相互作用に関してスクリーニングされる。可能性のある抗体療法の場合には、これら候補化合物は、通常、KohlerとMilsteinによって提示された基本原理(1975年、Nature、第256巻、495〜497ページ、KohlerとMilstein)に従ったモノクローナル抗体の伝統的な生成法から得られる。抗原(例えば全細胞、細胞画分、精製した抗原)で免疫化したマウスから脾臓細胞が回収され、パートナーとなる不死化されたハイブリドーマと融合される。得られたハイブリドーマのスクリーニングが行なわれ、標的に最も強く結合する抗体を分泌するものが選択される。こうした方法を用いてがん細胞に向かう多くの治療用抗体と診断用抗体(例えばハーセプチン(登録商標)やリツキシマブ)が製造され、その親和性に基づいて選択されている。この戦略の欠点は2つある。第1に、治療用抗体または診断用抗体が結合する適切な標的の選択法は、組織特異的がん生成プロセスにまつわる知識が不足していることと、その結果としてその標的を同定するための方法が非常に単純であること(例えば過剰発現による選択)によって限定されている。第2に、大きな親和性で受容体に結合する薬分子は、通常、信号を発生または抑制する確率が最も大きい、という仮定は必ずしも正しくない可能性がある。
【0028】
乳がんと大腸がんの治療はいくらか進歩したにもかかわらず、効果的な抗体療法を突き止めることと開発することは、単一の薬としてであれ、組み合わせる治療法であれ、あらゆるタイプのがんに関して不十分なままである。
【0029】
これまでの特許:
【0030】
アメリカ合衆国特許第5,750,102号には、患者の腫瘍からの細胞をMHC遺伝子とともにトランスフェクトする方法が開示されている。MHC遺伝子は、患者からの細胞または組織からクローニングすることができる。
【0031】
アメリカ合衆国特許第4,861,581号には、哺乳動物の腫瘍細胞と正常細胞の内部細胞成分に対して特異的で外部成分に対しては特異的でないモノクローナル抗体を取得するステップと、そのモノクローナル抗体を標識するステップと、標識したその抗体を、腫瘍細胞を殺す治療を受けた哺乳動物の細胞と接触させるステップと、退縮している腫瘍細胞の細胞内成分への標識したその抗体の結合を測定することによって治療法の有効性を明らかにするステップを含む方法が開示されている。特許権者は、ヒト細胞内抗原に向かう抗体を調製するにあたって悪性腫瘍細胞がそのような抗原の便利な供給源であることを認識している。
【0032】
アメリカ合衆国特許第5,171,665号では、新規な抗体とその製造方法が提供される。より詳細には、この特許は、ヒト腫瘍(例えば大腸腫瘍や肺腫瘍)に関係するタンパク質抗原と強く結合するが、正常細胞にははるかに少ない程度しか結合しない性質を持ったモノクローナル抗体の形成を教示している。
【0033】
アメリカ合衆国特許第5,484,596号では、がん患者から腫瘍組織を外科的に取り出すステップと、その腫瘍組織を処理して腫瘍細胞を得るステップと、その腫瘍細胞に放射線を照射して生きているが腫瘍は発生させないようにするステップと、その細胞を用いて原発性腫瘍の再発を抑制できると同時に転移を抑制できる患者用ワクチンを調製するステップを含むがんの治療法が提供される。この特許は、腫瘍細胞の表面抗原と反応するモノクローナル抗体の開発を教示している。特許権者は、第4欄、45行以下に記載しているように、ヒト新生物においてモノクローナル抗体を発現する能動的かつ特異的な免疫療法を開発するために自己由来の腫瘍細胞を利用する。
【0034】
アメリカ合衆国特許第5,693,763号は、ヒト癌腫に特徴的で発生源の上皮組織には依存しない糖タンパク質抗原を教示している。
【0035】
アメリカ合衆国特許第5,783,186号は、Her2を発現している細胞でアポトーシスを誘導する抗Her2抗体と、その抗体を産生するハイブリドーマ細胞系と、その抗体を用いてがんを治療する方法と、その抗体を含む医薬組成物に関する。
【0036】
アメリカ合衆国特許第5,849,876号には、腫瘍組織供給源と非腫瘍組織供給源から精製したムチン抗原に対するモノクローナル抗体を産生させるための新しいハイブリドーマ細胞系が記載されている。
【0037】
アメリカ合衆国特許第5,869,268号は、望む抗原に特異的な抗体を産生させるヒト・リンパ球を作り出す方法と、モノクローナル抗体の製造法と、その方法によって製造されたモノクローナル抗体に関する。この特許は特に、がんの診断と治療に役立つ抗HDヒト・モノクローナル抗体の製造に関する。
【0038】
アメリカ合衆国特許第5,869,045号は、ヒトがん細胞と反応する抗体、抗体フラグメント、抗体複合体、一本鎖免疫毒素に関する。これらの抗体が機能するメカニズムは2通りある。それは、その抗体分子がヒト癌腫の表面に存在する細胞膜抗原と反応することと、その抗体が、そのがん細胞の中に内部化される能力を持つことである。そのためこの抗体は、結合した後に抗体-薬複合体と抗体-毒素複合体を形成するのに特に役立つ。抗体は、修飾されていない形態でも、特定の濃度で細胞傷害特性を示す。
【0039】
アメリカ合衆国特許第5,780,033号には、自己抗体を利用した腫瘍の治療法と予防法が開示されている。しかしこの抗体は、年老いた哺乳動物からの抗核自己抗体である。この場合には、この自己抗体は、免疫系で見いだされる自然抗体の1つのタイプであると言われる。この自己抗体は“年老いた哺乳動物”に由来するため、自己抗体が実際に治療している患者からのものである必要はない。それに加え、この特許には、年老いた哺乳動物からの自然かつモノクローナルな抗核自己抗体と、モノクローナル抗核自己抗体を産生するハイブリドーマ細胞系が開示されている。
【0040】
アメリカ合衆国特許第5,840,854号には、GA733-1に対する特異的抗体BR110が開示されている。この特許には、免疫毒素複合体としてのBR110の試験管内での機能が開示されている。この抗体に関して裸の抗体としての試験管内での機能は開示されていない。この抗体に関する生体内の機能も開示されていない。
【0041】
アメリカ合衆国特許第6,653,104号は、抗原のホスト(例えばEGP-1)に対する免疫毒素複合抗体(例えばRS7)の権利を主張している。免疫毒素は、リボ核酸の活性を持つものに限られる。しかし実施例には、CD22に対して特異的な免疫毒素複合抗体LL2だけが開示されている。この明細書には、試験管内または生体内でのRS7の機能は開示されていない。
【0042】
アメリカ合衆国特許出願公開2004/0001825A1には、EGP-1に対する特異的抗体RS7が開示されている。この出願には、放射性標識をした複合体としてのRS7の試験管内での機能が開示されている。この抗体に関して裸の抗体としての試験管内での機能は開示されていない。この出願には、放射性標識した複合体と標識していない複合体を順番に投与した結果として得られるRS7の生体内機能も開示されている。しかしこの研究は1人の患者に限られているため、観察された機能が標識していない抗体を原因としているかどうかはわからない。裸の抗体を投与して得られるRS7の生体内機能も開示されていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0043】
本願では、がん性疾患軽減モノクローナル抗体をコードしているハイブリドーマ細胞系を単離するため、アメリカ合衆国特許第6,180,357号に教示されている患者特異的抗がん抗体を製造する方法を利用する。これら抗体は1種類の腫瘍専用の抗体にできるため、がん療法のカスタム化が可能になる。本願の文脈では、細胞殺傷(細胞傷害)特性または細胞成長抑制(細胞分裂抑制)特性を持つ抗がん抗体を今後は細胞傷害性抗体と呼ぶことにする。これらの抗体は、がんのステージ決定と診断に役立つとともに、腫瘍の転移の治療にも使用できる。これらの抗体は、予防的治療法としてがんの予防にも使用できる。従来の薬発見パラダイムに従って作り出された抗体とは異なり、この方法で作り出された抗体は、悪性腫瘍組織の成長および/または生存と一体化していることが以前に示されていない分子と経路を標的とすることができる。さらに、これら抗体の結合親和性は細胞傷害イベントの開始条件に合っているため、より強い親和性相互作用には至らない可能性がある。また、標準的な化学療法剤(例えば放射性核種)を本発明のCDMABと結合させ、その化学療法を利用する対象を明確にすることも本発明の範囲である。CDMABを毒素、細胞傷害作用部分、酵素(例えばビオチンが結合した酵素)、サイトカイン、インターフェロン、標的部分またはレポータ部分、造血細胞のいずれかと結合させて抗体複合体を形成することもできる。CDMABは、単独で使用すること、または1種類以上のCDMAB/化学療法剤と組み合わせて使用することができる。
【0044】
個別化された抗がん治療の見通しがあることで、患者を管理する方法に変化がもたらされるであろう。同様の臨床でのシナリオは、最初に腫瘍サンプルを取得して登録するというものである。このサンプルをもとにして、すでに存在する一群のがん性疾患軽減抗体から腫瘍のタイプを明らかにすることができる。患者は従来のようにステージが判断されるが、利用可能な抗体は患者のステージを詳しく判断するのに役立つ。既存の抗体を用いて患者を直ちに治療することができ、この明細書に概略を示した方法を利用して、またはファージ提示ライブラリをこの明細書に開示したスクリーニング法と組み合わせて利用して、その患者の腫瘍に特異的な一群の抗体を作り出すことができる。治療しているのと同じエピトープのうちのいくつかを他の腫瘍も持っている可能性があるため、作り出されたすべての抗体が抗がん抗体のライブラリに追加されることになる。この方法に従って作り出された抗体は、これら抗体に結合するがんを持つ患者全員のがん性疾患を治療するのに役立つ可能性がある。
【0045】
患者は、抗がん抗体に加え、現在勧められている治療法を、数種類の方法を組み合わせる治療計画の一環として受けることを選択できる。本発明の方法で単離された抗体は非がん細胞に対して比較的毒性がないという事実により、抗体を大きな投与量で組み合わせ、単独で、または従来の治療法と組み合わせて使用することができる。治療指数が大きいことで短い時間スケールでの再治療も可能になるため、治療抵抗性の細胞が現われる可能性が低下するはずである。
【0046】
患者が最初の一連の治療に対して抵抗性である場合や、転移が進行している場合には、その腫瘍に特異的な抗体を製造する方法を繰り返して再治療することができる。さらに、転移を治療するため、抗がん抗体をその患者から取得した赤血球細胞と結合させて再注輸することができる。転移性がんの有効な治療法はほとんどないため、転移は通常は結果がよくなく、その結果として死に至ることの予告であった。しかし転移性がんは通常は血管網がよく発達しているため、赤血球による抗がん抗体の送達は、腫瘍部位にその抗体を集中させる効果を持つ可能性がある。転移前でさえ、たいていのがん細胞は、生存を宿主の血液供給に依存しているため、赤血球と結合した抗がん抗体は、その場所の腫瘍にも有効である可能性がある。あるいはこの抗体は、他の造血細胞(例えばリンパ球、マクロファージ、単球、ナチュラルキラー細胞など)と結合させることができる。
【0047】
5つのクラスの抗体が存在していて、そのそれぞれには、重鎖によって与えられる機能が付随している。一般に、裸の抗体によるがん細胞の殺傷は、抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)または補体依存性細胞傷害作用(CDC)を通じて媒介されると考えられている。例えばマウスのIgM抗体とIgG2a抗体は、補体系のC-1成分と結合することによってヒトの補体を活性化することができるため、補体活性化の古典的な経路が活性化されて腫瘍の溶解につながる可能性がある。ヒト抗体に関しては、最も有効な補体活性化抗体は、一般にIgMとIgG1である。マウスの抗体のIgG2aとIgG3というアイソタイプは、Fc受容体を持つ細胞傷害細胞をリクルートするのに有効であり、単球、マクロファージ、顆粒球や、ある種のリンパ球による細胞の殺傷につながる。ヒト抗体のIgG1とIgG3というアイソタイプの両方ともADCCを媒介する。
【0048】
Fc領域を通じて媒介される細胞傷害作用は、エフェクター細胞、それに対応する受容体、タンパク質のいずれか(例えばNK細胞、T細胞、補体)の存在を必要とする。これらエフェクター機構がないと、抗体のFc部分は不活性である。抗体のFc部分は、生体内における抗体の薬理動態に影響する性質を与える可能性があるが、試験管内ではこれは作動しない。
【0049】
抗体を媒介としてがんを殺傷することの可能な別のメカニズムは、細胞膜とそれに関連する糖タンパク質または糖脂質に含まれるさまざまな化学結合の加水分解を触媒する機能を持つ抗体(いわゆる触媒抗体)の利用を通じて起こる可能性がある。
【0050】
抗体を媒介としたがん細胞の殺傷には別の3つのメカニズムがある。第1は、抗体をワクチンとして使用し、がん細胞上に存在する仮想的抗原に対する免疫応答を身体に誘導する。第2は、増殖受容体を標的とする抗体を使用してその機能を妨げる、またはその受容体を下方調節してその機能を失わせるというものである。第3は、そのような抗体を細胞表面部分に直接連結させて(例えば、TRAIL R1やTRAIL R2といった死受容体、またはαVβ3などのインテグリン分子を連結させて)細胞死を引き起こす効果である。
【0051】
がん治療薬の臨床上の有用性は、その薬が患者にとって許容可能なリスク・プロファイルのもとで利益をもたらすことに基づいている。がんの治療では、一般に生存が最も求められる利益だが、寿命を延ばすことに加え、よく知られている他の多くの利益がある。そうした他の利益として、治療が生存に悪影響を及ぼさない場合には、症状の緩和、好ましくない事象からの保護、再発までの時間の延長、疾患なしの生存、進行するまでの時間の延長などがある。これらの基準は一般に受け入れられており、規制機関(例えばアメリカ合衆国食品医薬品局(FDA))は、こうした利益を生み出す薬を承認している(Hirschfeld他、Critical Reviews in Oncology/Hematology、第42巻、137〜143ページ、2002年)。こうした基準に加え、こうしたタイプの利益が予想される可能性のある他の目標もよく知られている。その一環として、アメリカ合衆国のFDAによる承認プロセスが加速されているのは、同様に患者の利益になることが予想される代替物があると認識されているためである。2003年末の時点で、16種類の薬がこのプロセスのもとで承認され、そのうちの4種類が完全承認された。すなわち追跡調査により、代替目標によって予測されたように直接的な患者の利益になることが証明された。固形腫瘍において薬の効果を明らかにするための重要な1つの目標は、治療に対する応答を測定することによる腫瘍組織量の評価である(Therasse他、Journal of the National Cancer Institute、第92巻(3)、205〜216ページ、2000年)。このような評価のための臨床上の基準(RECIST基準)が、がんの国際的な専門家の集団である固形腫瘍ワーキング・グループの応答評価基準として公表されている。RECIST基準に従う客観的な応答によって示されるように、腫瘍組織量に対して証明された効果を持つ薬は、適切な対照群と比べたとき、最終的に患者に直接的な利益をもたらす傾向がある。前臨床試験では、一般に腫瘍組織量がより直接的に評価され記録される。前臨床試験を臨床での設定に翻訳できるため、前臨床モデルで生存期間を延ばした薬は、臨床上の有用性が最大であることが予想される。前臨床試験で腫瘍組織量を減らす薬は、臨床治療にプラスの効果があるのと同じように、疾患に対する大きな直接的な影響も持つ可能性がある。生存期間の延長は、がんの薬剤治療で最も求められる臨床上の結果であるとはいえ、臨床上の有用性がある他の利益も存在しており、それが腫瘍組織量の減少であることは明らかである。腫瘍組織量の減少は、疾患の進行遅延と生存期間延長の一方または両方と相関している可能性があるため、直接的な利益につながる可能性もあり、臨床的な影響を持つ(Eckhardt他、『治療薬の開発:標的化合物の臨床試験設計の成功と失敗』、ASCOエデュケーショナル・ブック、第39回年会、2003年、209〜219ページ)。
【0052】
アメリカ合衆国特許第6,180,357号とアメリカ合衆国特許特許出願11/709,676に開示されている方法(そのそれぞれの内容は、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)を実質的に利用し、マウスをヒト卵巣腫瘍組織からの細胞で免疫化することによってマウスのモノクローナル抗体AR47A6.4.2を取得した。AR47A6.4.2抗原は、さまざまな起源の組織に由来する広い範囲のヒト細胞系の細胞表面で発現していた。卵巣がん細胞系OVCAR-3は、試験管内でAR47A6.4.2の細胞傷害効果に感受性があった。
【0053】
試験管内におけるヒトがん細胞に対するAR47A6.4.2細胞傷害作用の結果は、(アメリカ合衆国特許特許出願11/709,676に開示されているように)生体内における抗腫瘍活性が証明されることによってさらに拡張された。AR47A6.4.2は、ヒト膵臓がんの生体内予防BxPC-3モデルにおいて腫瘍の成長を抑制し、腫瘍組織量を減らした。治療の最終日である移植後49日目、AR47A6.4.2で治療した群の腫瘍の体積の平均は、緩衝液で処理した対照群よりも53%小さかった(p<0.05)。実験を通じて毒性の臨床的徴候はなかった。まとめると、AR47A6.4.2は、このヒト膵臓がん異種移植片モデルでよく許容され、腫瘍組織量を減らした。
【0054】
ヒト膵臓がんのBxPC-3モデルに関するAR47A6.4.2の効果をさらに調べるため、(アメリカ合衆国特許特許出願11/709,676に開示されているようにして)この抗体を確立されたBxPC-3異種移植片モデルでテストした。AR47A6.4.2は、ヒト膵臓がんの確立されたモデルにおいて腫瘍組織量を有意に減らした。抗体を最後に投与した1日後である54日目、AR47A6.4.2で治療した動物は、腫瘍の体積の平均が、対照となる処理群の動物の40%であった(p<0.0001)。これらの結果は、AR47A6.4.に関して平均T/Cが30%であることに対応している。実験を通じて毒性の臨床的徴候はなかった。まとめると、AR47A6.4.2は、この確立されたヒト膵臓がん異種移植片モデルでよく許容され、腫瘍組織量を減らした。AR47A6.4.2は、ヒト膵臓がんの予防モデルと確立されたモデルの両方で効果を示した。
【0055】
AR47A6.4.2は、ヒト膵臓がんモデルに対して抗がん効果を持つことが証明された。この知見を拡張するため、(アメリカ合衆国特許特許出願11/709,676に開示されているようにして)PL45ヒト膵臓がんの異種移植片モデルでAR47A6.4.2を調べた。AR47A6.4.2は、ヒト膵臓がんのPL45生体内予防モデルで腫瘍の成長を完全に抑制した。ARIUS抗体AR47A6.4.2を用いた治療により、抗体を最後に投与してから20日後で対照群と抗体治療群のほぼすべてのマウスが生きていた77日目には、PL45腫瘍の成長が緩衝液で処理した群と比べてほぼ100%少なくなった(p=0.0005、t検定)。最後の投与から45日後の102日目、腫瘍の体積が原因で対照群のすべてのマウスが実験から取り除かれていた。しかしAR47A6.4.2は腫瘍の成長をほぼ完全に抑制することがやはり証明され、その群の4匹のマウスはまだ生きていた(何匹かのマウスはがんと無関係の事件のために死んでいた)。実験を通じて毒性の明らかな臨床的徴候はなかった。まとめると、AR47A6.4.2は、このヒト膵臓がん異種移植片モデルでよく許容され、腫瘍の成長をほぼ完全に抑制した。AR47A6.4.2を用いた治療により、緩衝液で処理した場合と比べて生存期間が延びることも証明された。したがってAR47A6.4.2は、ヒト膵臓がんの2つの異なるモデルで効果が証明された。
【0056】
AR47A6.4.2は、2つの異なるヒト膵臓がん異種移植片モデルで抗がん特性を示した。異なるヒトがん異種移植片モデルに対するAR47A6.4.2の効果を調べるため、(アメリカ合衆国特許特許出願11/709,676に開示されているようにして)この抗体をPC-3前立腺がん異種移植片モデルでテストした。AR47A6.4.2は、ヒト前立腺腺癌細胞のPC-3生体内予防モデルで腫瘍の成長を抑制した。ARIUS抗体AR47A6.4.2を用いた治療により、抗体を5回投与した後で対照群と抗体治療群のほぼすべてのマウスが生きていた32日目には、緩衝液で処理した群と比べてPC-3腫瘍の成長が60.9%減った(p=0.00037、t検定)。抗体を最後に投与する3日前である47日目までに、腫瘍の体積/病変のため、対照群のすべてのマウスが実験から取り除かれていた。抗体を最後に投与してから27日後の77日目、AR47A6.4.2治療群のマウスの40%がまだ生きていた。実験を通じて毒性の明らかな臨床的徴候はなかった。まとめると、AR47A6.4.2は、このヒト前立腺がん異種移植片モデルでよく許容され、腫瘍の成長を有意に抑制した。抗体を用いた治療により、対照群と比べて生存期間の利益があることも証明された。AR47A6.4.2は、2つの異なるヒトがん症状、すなわち膵臓がんと前立腺がんで効果が証明された。
【0057】
AR47A6.4.2は、ヒトの膵臓がんと前立腺がんという2つの異なるがん異種移植片モデルに対して抗がん特性を示した。別のヒトがん異種移植片モデルに対するAR47A6.4.2の効果を調べるため、(アメリカ合衆国特許特許出願11/709,676に開示されているようにして)この抗体をMCF-7がん異種移植片モデルでテストした。AR47A6.4.2は、ヒト乳がんのMCF-7生体内予防モデルで腫瘍の成長を減らした。ARIUS抗体AR47A6.4.2を用いた治療により、腫瘍の成長が顕著に遅延した。AR47A6.4.2は、治療の18日目から35日目に42%よりも小さいT/C%値を誘導し、49日目までは42%に近かった(最適なT/C%値は18日目の10.9%)。治療が終了した後の53日目、AR47A6.4.2を用いた治療の効果はまだ観察され、T/Cは57%であった。実験終了時(91日目)に、AR47A6.4.2治療群の2匹のマウスは腫瘍がないままであった。治療後の生存という利益は、AR47A6.4.2の投与と関係していた。緩衝液を用いた対照群は、治療後の85日目までに100%死亡したのに対し、AR47A6.4.2で治療したマウスの33.3%が治療後の91日目にまだ生きていた。実験を通じて毒性の臨床的徴候はなかった。まとめると、AR47A6.4.2は、このヒト乳がん異種移植片モデルにおいてよく許容され、腫瘍の成長を減らし、生存という利益をもたらした。AR47A6.4.2は、3つの異なるヒトがん症状、すなわち膵臓がん、前立腺がん、及び乳がんで効果が証明された。
【0058】
AR47A6.4.2は、ヒトの膵臓がん、前立腺がん、乳がんという3つの異なるがん異種移植片モデルに対して抗がん特性を示した。別のヒトがん異種移植片モデルに対するAR47A6.4.2の効果を調べるため、(アメリカ合衆国特許特許出願11/709,676に開示されているようにして)この抗体をColo 205大腸がん異種移植片モデルでテストした。AR47A6.4.2は、ヒト結腸癌腫細胞のColo 205生体内予防モデルで腫瘍の成長を抑制した。ARIUS抗体AR47A6.4.2を用いた治療により、抗体を最後に投与する4日前である27日目には、緩衝液で処理した群と比べてColo 205腫瘍の成長が60.2%減った(p=0.0003851、t検定)。実験を通じて毒性の明らかな臨床的徴候はなかった。まとめると、AR47A6.4.2は、このヒト大腸がん異種移植片モデルでよく許容され、腫瘍の成長を有意に抑制した。AR47A6.4.2は、4つの異なるヒトがん症状、すなわち膵臓がん、前立腺がん、乳がん、大腸がんで効果が証明された。治療による利益が、ヒトがん疾患のよく知られているいくつかのモデルで観察された。これは、ヒトを含む他の哺乳動物における治療でのこの抗体の薬理学的な恩恵と医薬としての恩恵を示唆している。要するに、このデータは、AR47A6.4.2抗原ががん関連抗原であり、ヒトがん細胞で発現し、病理学的に重要ながんの標的であることを示している。
【0059】
以前に開示されているように(アメリカ合衆国特許特許出願11/709,676)、生化学的データは、AR47A6.4.2によって認識される抗原がTROP-2であることを示していた。これは、TROP-2に反応するモノクローナル抗体(クローン77220.11、R&Dシステムズ社、ミネアポリス、ミネソタ州)が、免疫沈降によってAR47A6.4.2に結合したタンパク質と同じであることを示す研究によって支持された。それに加え、AR47A6.4.2は、ウエスタン・イムノブロット法によってヒトTROP-2の組み換え形態を特異的に認識した。AR47A6.4.2エピトープは炭水化物に依存するようには見えず、コンホメーションに依存するように見える。AR47A6.4.2は、別の抗TROP-2抗体であるAR52A301.5からの明確に異なるエピトープと結合することも明らかにされた。
【0060】
(アメリカ合衆国特許特許出願11/709,676に開示されているように)AR47A6.4.2エピトープの有用性を明らかにするため、凍結させた正常なヒト組織切片(実験により、この抗体はホルマリン固定組織と反応しないことがわかった)におけるAR47A6.4.2抗原の発現が以前に明らかにされた。ヒト正常組織のスクリーニング・アレイ(バイオチェイン社、カリフォルニア州、アメリカ合衆国)を使用して12個のヒトの正常な器官、すなわち卵巣、膵臓、甲状腺、脳(大脳、小脳)、肺、脾臓、子宮、子宮頸、心臓、皮膚、及び骨格筋に対する結合が調べられた。このアレイは20種類の正常なヒト器官を含んでいた。しかし12種類の器官だけが染色後に解釈可能であった。AR47A6.4.2抗体は上皮組織(血管の内皮、甲状腺の小包上皮、膵臓の細葉上皮と管上皮、肺の肺胞上皮、皮膚の表皮ケラチノサイト)に多く結合した。この抗体は、脾臓のリンパ組織への明確でない結合と、脳の神経組織への結合も示した。細胞での局在場所は細胞質と膜であり、広範な染色パターンを示した。AR47A6.4.2は、抗TROP-2抗体(クローン77220.11)の研究と比べると似た結合パターンを示した。
【0061】
(アメリカ合衆国特許特許出願11/709,676に開示されているように)AR47A6.4.2の治療上の利益をさらに大きなものにするため、さまざまなヒトがん組織とそれに対応する正常組織切片(10個の大腸がんと1個の正常な大腸、7個の卵巣がんと1個の正常な卵巣、11個の乳がんと3個の正常な乳房、14個の肺がんと3個の正常な肺、13個の前立腺がんと3個の正常な前立腺、及び13個の膵臓がんと4個の正常な膵臓)の内部での抗原の頻度と局在も以前に調べられた。AR47A6.4.2は、中程度から強い結合を、5/10(50%)の大腸がん、6/7(86%)の卵巣がん、10/11(91%)の乳がん、11/14(79%)の肺がん、13/13(100%)の前立腺がん、及び2/13(15%)の膵臓がんで示した。調べた腫瘍のすべてで結合は腫瘍細胞に特異的であった。対応する正常組織に関しては、この抗体は、正常な大腸組織の0/1、正常な卵巣組織の0/1、正常な乳房組織の3/3、正常な肺組織の3/3、正常な前立腺組織の3/3、及び正常な膵臓組織の4/4に結合したが、正常な器官の上皮組織に対して多く結合した。
【0062】
(アメリカ合衆国特許特許出願11/709,676に開示されているように)IHC実験が以前に行なわれ、さまざまな種の凍結させた正常組織でのAR47A6.4.2抗原の交差反応性が特徴づけられた。調べたマウス、ラット、モルモット、ヤギ、ヒツジ、ハムスター、ニワトリ、ウシ、ウマ、又はブタの正常組織に対するAR47A6.4.2の結合は検出できなかった。ウサギとイヌの正常組織に関しては、対応するヒト組織で観察されたのとは異なる結合が存在していた。カニクイザルの正常組織に関しては、AR47A6.4.2は、調べたすべての器官のヒトの対応する正常組織で同様の組織特異性が観察されたが、卵巣と精巣は別で、カニクイザルの切片で検出可能な結合は観察されなかった。アカゲザルの正常組織に関しては、AR47A6.4.2は、対応するヒトの正常組織で観察されたのと同様の組織特異性を示した。アカゲザルの正常組織の集団は、カニクイザルで調べたものよりも小さいことに注意すべきである。染色プロファイルに基づくと、カニクイザルとアカゲザルの両方とも、ヒト組織でのAR47A6.4.2抗原の分布と似ている。
【0063】
キメラ抗体の製造を容易にするため、(以前にアメリカ合衆国特許特許出願11/709,676に開示されているようにして)重鎖と軽鎖両方の可変領域をコードしている遺伝子を別々にクローニングし、配列を明らかにした。
【0064】
本発明は、AR47A6.4.2と、キメラAR47A6.4.2((ch)AR47A6.4.2)と、ヒト化変異体(hu)AR47A6.4.2の開発と利用を記述している。AR47A6.4.2は、がん性疾患を患っている哺乳動物における細胞傷害アッセイと、腫瘍成長モデルと、生存期間の延長における効果によって同定された。本発明は、標的分子TROP-2の表面に存在する1つまたは複数のエピトープに特異的に結合する試薬を初めて記載しているという点と、その試薬が、裸の抗体として、正常細胞ではなく悪性腫瘍に対して試験管内の細胞傷害特性も持ち、ヒトがんの生体内モデルにおける腫瘍成長抑制と生存期間延長を直接的に媒介もするという点で、がん治療の分野における進歩を示している。これは、以前に記載された他のあらゆる抗TROP-2抗体との関係で進歩である。なぜなら誰も同様の特性を持つことをこれまで示していないからである。本発明は、ある種の腫瘍の成長と発展に関係するイベントにTROP-2が直接的に関与していることを初めて明確に示したという理由でも進歩している。本発明は、ヒトの患者で同様の抗がん特性を示す可能性があるという理由で、がん治療においても進歩している。さらに別の進歩は、これら抗体を抗がん抗体のライブラリに含めると、腫瘍の成長と発展に狙いを定めて抑制するの最も有効なものを見いだすためにさまざまな抗がん抗体の適切な組み合わせを決定することにより、さまざまな抗原マーカーを発現する腫瘍を標的にできる可能性が大きくなることである。
【0065】
要するに、本発明は、治療薬の標的としてAR47A6.4.2抗原を利用することを教示しており、投与したときに哺乳動物においてその抗原を発現しているがんの腫瘍組織量を小さくすることができ、治療した哺乳動物の生存期間を延ばすことにもなる。本発明は、CDMAB(AR47A6.4.2、キメラAR47A6.4.2((ch)AR47A6.4.2)、ヒト化変異体(hu)AR47A6.4.2)とその誘導体、これらの抗原結合フラグメント、これらの細胞傷害作用誘導リガンドを利用して対応する抗原を標的とし、哺乳動物においてその抗原を発現しているがんの腫瘍組織量を減らすことも教示している。さらに、本発明は、がん細胞中のAR47A6.4.2抗原の検出結果を利用することも教示している。そうすることにより、この抗原を発現する腫瘍を持つ哺乳動物の診断、治療法予測、予後予測に役立てることができる。
【0066】
したがって本発明の1つの目的は、特定の個人、または1つ以上の特定のがん細胞系に由来するがん細胞に対するがん性疾患軽減抗体(CDMAB)として、がん細胞に対して細胞傷害性であると同時に非がん細胞に対しては比較的毒性がないものを製造する方法を利用し、ハイブリドーマ細胞系と、対応する単離されたモノクローナル抗体と、ハイブリドーマ細胞系がコードする対象である、その抗体の抗原結合フラグメントとを単離することである。
【0067】
本発明の別の目的は、がん性疾患軽減抗体と、リガンドと、その抗原結合フラグメントとを提示することである。
【0068】
本発明のさらに別の目的は、細胞傷害作用が抗体依存性細胞毒性を通じて媒介されるがん性疾患軽減抗体を製造することである。
【0069】
本発明のさらに別の目的は、細胞傷害作用が補体依存性細胞毒性を通じて媒介されるがん性疾患軽減抗体を製造することである。
【0070】
本発明のさらに別の目的は、細胞傷害作用が、細胞の化学結合の加水分解を触媒する能力に依存するがん性疾患軽減抗体を製造することである。
【0071】
本発明のさらに別の目的は、がんの診断、予防、監視のための結合アッセイに役立つがん性疾患軽減抗体を製造することである。
【0072】
本発明の他の目的と利点は、本発明のいくつかの実施態様が説明と例示のために記載されている以下の説明から明らかになろう。
【0073】
この特許出願のファイルには、少なくとも1枚のカラー図面が含まれている。カラー図面のあるこの特許出願の刊行物のコピーは、請求して必要な費用を支払うと特許庁から提供されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】予防ヒトMDA-MB-231乳がんモデルにおける腫瘍の成長に対するAR47A6.4.2の効果を示す。縦軸方向の2本の点線は、抗体を腹腔内に投与した期間を示す。データ点は、平均値±SEMを表わす。
【図2】予防MDA-MB-231乳がんモデルにおけるマウスの生存に対するAR47A6.4.2の効果を示す。データ点は生存率を表わす。
【図3】予防MDA-MB-231乳がんモデルにおけるマウスの体重に対するAR47A6.4.2の効果を示す。データ点は、平均値±SEMを表わす。
【図4】確立されたヒトPL45膵臓がんモデルにおける腫瘍の成長に対するAR47A6.4.2の効果が投与量に応じて異なることを示す。縦軸方向の2本の点線は、抗体を腹腔内に投与した期間を示す。データ点は、平均値±SEMを表わす。
【図5】確立されたPL45膵臓がんモデルにおけるマウスの生存に対するAR47A6.4.2の効果を示す。データ点は生存率を表わす。
【図6】確立されたPL45膵臓がんモデルにおけるマウスの体重に対するAR47A6.4.2の効果を示す。データ点は、平均値±SEMを表わす。
【図7】異なる組織のマイクロアレイからのさまざまなヒト腫瘍切片とヒト正常組織切片に対するAR47A6.4.2をIHCで比較した結果を示す表である。
【図8】さまざまなヒト腫瘍組織のマイクロアレイからAR47A6.4.2(A)またはそのアイソタイプの対照抗体(B)を用いて乳房腫瘍組織で得られた結合パターン、AR47A6.4.2(C)またはそのアイソタイプの対照抗体(D)を用いて前立腺腫瘍組織で得られた結合パターン、AR47A6.4.2(E)またはそのアイソタイプの対照抗体(F)を用いて膵臓腫瘍組織で得られた結合パターンを示す代表的な顕微鏡写真である。倍率は、乳房腫瘍組織と膵臓腫瘍組織では400倍、前立腺腫瘍組織では200倍である。
【図9】AR47A6.4.2(A)またはそのアイソタイプの対照抗体(B)を用いて卵巣腫瘍組織で得られた結合パターンを示す代表的な顕微鏡写真である。倍率は200倍である。
【図10】BxPC-3細胞をAR47A6.4.2で処理した後に血清と追加添加物で刺激することによってリン酸化が影響を受けるキナーゼのリストである。
【図11】BxPC-3細胞をAR47A6.4.2で処理することによって影響を受けて分泌される血管新生因子のリストである。
【図12】2つの異なるヒト膵臓がん細胞系PL45とBxPC-3に対するAR47A6.4.2の試験管内CDC活性を示す。
【図13】TROP-2アミノ酸配列に基づいて合成されたCLIPSペプチド(現われる順番に、それぞれ配列番号13〜32)へのAR47A6.4.2の結合。
【図14】TROP-2のアミノ酸配列(配列番号33)。AR47A6.4.2によって認識される不連続なエピトープが下線部の配列に含まれている。アミノ酸位置1〜274はTROP-2の細胞外部分を表わし、アミノ酸位置275〜290はTROP-2の膜貫通部分を表わし、アミノ酸位置291〜323はTROP-2の細胞内部分を表わす。
【図15】軽鎖をPCRで増幅する際に用いるプライマー(現われる順番に、それぞれ配列番号34〜52)である。
【図16】重鎖をPCRで増幅する際に用いるプライマー(現われる順番に、それぞれ配列番号53〜68)である。
【図17】マウスのAR47A6.4.2 VH配列(配列番号69〜70としてそれぞれ開示されているヌクレオチド配列とアミノ酸配列)。
【図18】マウスのAR47A6.4.2 VL配列(配列番号71〜72としてそれぞれ開示されているヌクレオチド配列とアミノ酸配列)。
【図19】キメラAR47A6.4.2 VH配列とヒト化AR47A6.4.2 VH変異体配列(現われる順番に、それぞれ配列番号73〜92)を作り出すのに用いられるオリゴヌクレオチド。
【図20】キメラAR47A6.4.2 VL配列とヒト化AR47A6.4.2 VL変異体配列(現われる順番に、それぞれ配列番号93〜110)を作り出すのに用いられるオリゴヌクレオチド。
【図21】軽鎖発現ベクターと重鎖発現ベクター。
【図22A】ヒト化AR47A6.4.2VH変異体。CDRに下線を引いてある(現われる順番に、それぞれ配列番号111〜113、10、7、114)。
【図22B】ヒト化AR47A6.4.2VH変異体。CDRに下線を引いてある(現われる順番に、それぞれ配列番号111〜113、10、7、114)。
【図22C】ヒト化AR47A6.4.2VH変異体。CDRに下線を引いてある(現われる順番に、それぞれ配列番号111〜113、10、7、114)。
【図23A】ヒト化AR47A6.4.2 VL変異体。CDRに下線を引いてある(現われる順番に、それぞれ配列番号115、9、8、116〜117)。
【図23B】ヒト化AR47A6.4.2 VL変異体。CDRに下線を引いてある(現われる順番に、それぞれ配列番号115、9、8、116〜117)。
【図23C】ヒト化AR47A6.4.2 VL変異体。CDRに下線を引いてある(現われる順番に、それぞれ配列番号115、9、8、116〜117)。
【図24】ヒト化AR47A6.4.2 VH変異体とヒト化AR47A6.4.2 VL変異体の活性。
【図25】rhTROP-2に対するマウスAR47A6.4.2とさまざまな変異体(hu)AR47A6.4.2の結合親和性の会合速度定数(Ka)と解離速度定数(Kd)のまとめ。
【発明を実施するための形態】
【0075】
一般に、以下の用語または表現は、要約、明細書、実施例、請求項で使用されているときに以下に示す定義を持つ。
【0076】
この明細書では、“抗体”という用語は最も広い意味で用いられ、特に、単独のモノクローナル抗体(アゴニスト、アンタゴニスト、中和抗体、脱免疫化抗体、マウス抗体、キメラ抗体、又はヒト化抗体が含まれる)、多エピトープ特異性を持つ抗体組成物、一本鎖抗体、二重特異性抗体、三重特異性抗体、免疫複合体及び抗体フラグメントなどが挙げられる(以下参照)。
【0077】
この明細書では、“モノクローナル抗体”という用語は、実質的に一様な抗体の集団から得られた抗体を意味する。すなわちその集団に含まれる個々の抗体は、わずかな量が存在している可能性のある自然発生の突然変異体を除いて同じである。モノクローナル抗体は特異性が大きく、単一の抗原部位に向かう。さらに、それぞれのモノクローナル抗体は、さまざまな抗体が含まれていてさまざまな決定基(エピトープ)に向かうポリクローナル抗体調製物とは異なり、抗体上の単一の決定基に向かう。モノクローナル抗体は、その特異性に加え、他の抗体によって汚染されていないものを合成できるという利点がある。“モノクローナル”という修飾語は、抗体が、実質的に一様な抗体の集団から得られたものであるという特徴を示しており、何らかの特定の方法でその抗体を作る必要があると考えてはならない。例えば本発明で用いるモノクローナル抗体は、Kohler他、Nature、第256巻、495ページ、1975年によって初めて記載されたハイブリドーマ(マウスまたはヒト)法によって作ること、または組み換えDNA法(例えばアメリカ合衆国特許第4,816,567号を参照のこと)によって作ることができる。“モノクローナル抗体”は、例えばClackson他、Nature、第352巻、624〜628ページ、1991年とMarks他、J. Mol. Biol.、第222巻、581〜597ページ、1991年に記載されている方法を利用してファージ抗体ライブラリから単離することもできる。
【0078】
“抗体フラグメント”は、完全な1つの抗体の一部を含んでおり、その部部にはその抗体の抗原結合領域または可変領域が含まれていることが好ましい。抗体フラグメントの例として、完全長抗体よりも短いFab、Fab'、F(ab')2、Fvフラグメント;二重特異性抗体;線状抗体;一本鎖抗体分子;抗体フラグメントから形成された一本鎖抗体、単一ドメイン抗体分子、融合タンパク質、組み換えタンパク質、及び多重特異性抗体が挙げられる。
【0079】
“完全な”1つの抗体は、抗原結合可変領域と、軽鎖定常領域(CL)と、重鎖定常領域CH1、CH2、及びCH3を含むものである。定常領域として、天然状態の配列の定常領域(例えば天然状態のヒト配列の定常領域)またはそのアミノ酸配列変異体が可能である。完全な1つの抗体は、1つ又は複数のエフェクター機能を持つことが好ましい。
【0080】
完全な抗体は、重鎖の定常領域のアミノ酸配列が何であるかに応じ、異なる“クラス”に分類することができる。完全な抗体には5つの主要なクラスがある。すなわち、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMである。これらのうちのいくつかは、さらに“サブクラス”(アイソタイプ)に分割することができ、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2がある。異なるクラスの抗体に対応する重鎖定常領域は、それぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造と三次元配置はよく知られている。
【0081】
抗体の“エフェクター機能”は、1つの抗体のFc領域(天然状態の配列のFc領域、またはアミノ酸配列変異体のFc領域)に帰することのできる生物活性を意味する。抗体のエフェクター機能の例として、C1qの結合;補体依存性細胞傷害作用;Fc受容体の結合;抗体依存性細胞性細胞傷害作用(ADCC);貪食;細胞表面受容体(例えばB細部受容体;BCR)の下方調節などがある。
【0082】
“抗体依存細胞性細胞傷害作用”と“ADCC”は、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的細胞傷害性細胞(例えばナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、マクロファージ)が標的細胞に結合した抗体を認識し、その後その標的細胞の溶解を引き起こすという、細胞を媒介とした反応を意味する。ADCCを媒介する主要な細胞であるNK細胞は、FcγRIIIだけを発現するのに対し、単球は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞でのFcRの発現は、RavetchとKinet、Annu. Rev. Immunol.、第9巻、457〜492ページ、1991年の464ページにある表3にまとめられている。興味の対象である分子のADCC活性を評価するには、アメリカ合衆国特許第5,500,362号または第5,821,337号に記載されている試験管内ADCCアッセイを実施するとよい。このようなアッセイのための有用なエフェクター細胞として、末梢血単核細胞(PBMC)とナチュラルキラー(NK)細胞がある。あるいは、またはそれに加えて、興味の対象である分子のADCC活性は、例えばClynes他、PNAS (USA)、第95巻、652〜656ページ、1998年に開示されているような動物モデルにおいて、生体内で評価することができる。
【0083】
“エフェクター細胞”は、1つ又は複数のFcRを発現していてエフェクター機能を実行する白血球である。少なくともFcγRIIIを発現していてADCCエフェクター機能を実行する細胞が好ましい。ADCCを媒介するヒト白血球の例として、末梢血単核細胞(PBMC)、ナチュラル・キラー(NK)細胞、単球、細胞傷害性T細胞、及び好中球などがあるが、PBMCとNK細胞が好ましい。エフェクター細胞は、この明細書に記載されているように、その天然の供給源(例えば血液またはPBMC)から単離することができる。
【0084】
“Fc受容体”または“FcR”という用語は、抗体のFc領域に結合する受容体を記述するのに用いられる。好ましいFcRは、天然のヒト配列を持つFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体と結合するもの(γ受容体)であり、受容体のFcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIというサブクラスが挙げられる。その中には、対立遺伝子変異体や、これら受容体の選択的スプライシング形態も含まれる。FcγRII受容体にはFcγRIIA(“活性化受容体”)とFcγRIIB(“抑制受容体”)が含まれ、これらは、主に細胞質ドメインが異なる似たアミノ酸配列を持つ。活性化受容体FcγRIIAは、免疫受容体チロシンをベースとした活性化モチーフ(ITAM)を細胞質ドメインに含んでいる。抑制受容体FcγRIIBは、免疫受容体チロシンをベースとした抑制モチーフ(ITIM)を細胞質ドメインに含んでいる。(M. Daeron、Annu. Rev. Immunol.、第15巻、203〜234ページ、1997年の総説を参照のこと)。FcRは、RavetchとKinet、Annu. Rev. Immunol.、第9巻、457〜492ページ、1991年;Capel他、Immunomethods、第4巻、25〜34ページ、1994年;de Haas他、J. Lab. Clin. Med.、第126巻、330〜341ページ、1995年に概説がある。他のFcRは、将来同定されるものも含め、この明細書の“FcR”という用語に含まれる。この用語には、母親のIgGを胎児に移す上で重要な新生児の受容体RcRnも含まれる(Guyer他、J. Immunol.、第117巻、587ページ、1976年;Kim他、Eur. J. Immunol.、第24巻、2429ページ、1994年)。
【0085】
“補体依存性細胞傷害作用”または“CDC”は、ある分子が補体の存在下で標的を溶解させる能力を意味する。補体活性化経路は、補体系の第1の成分(C1q)が、コグネイト抗原と複合体を形成した分子(例えば抗体)に結合することによって開始される。補体活性化を評価するには、例えばGazzano-Santoro他、J. Immunol. Methods、第202巻、163ページ、1996年に記載されているようにしてCDCアッセイを実施するとよい。
【0086】
“可変”という用語は、可変領域のある部分の配列が抗体同士で大きく異なっていて特定の抗原に対する各抗体の結合と特異性のために用いられるという事実を意味する。しかし可変性は、抗体の可変領域全体に均等に分布しているわけではなく、軽鎖可変領域と重鎖可変領域の両方の超可変領域と呼ばれる3つの区画に集中している。可変領域の非常によく保存されている部分はフレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然状態の重鎖と軽鎖の可変領域は、それぞれ、3つの超可変領域によって接続された4つのFR(たいていβシート構造を採用している)を含んでおり、その超可変領域がβシート構造を接続する(いくつかの場合にはβシート構造の一部を形成する)ループを形成している。それぞれの鎖の超可変領域はFrによって互いに近くにまとめられ、他の鎖の超可変領域とともに抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat他、『免疫学的に興味深いタンパク質の配列』、第5版、公衆衛生サービス、国立衛生研究所、ベセスダ、メリーランド州、1991年を参照のこと)。定常領域は、抗原に対する抗体の結合に直接は関与しないが、さまざまなエフェクター機能(例えば抗体依存性細胞性細胞傷害作用(ADCC)への抗体の参加)を示す。
【0087】
この明細書では、“超可変領域”という用語は、抗体で抗原との結合に重要なアミノ酸残基を意味する。超可変領域は、一般に、“相補性決定領域”または“CDR”からのアミノ酸残基(例えば軽鎖可変領域の残基24〜34(L1)、50〜56(L2)、89〜97(L3)と、重鎖可変領域の31〜35(H1)、50〜65(H2)、95〜102(H3);Kabat他、『免疫学的に興味深いタンパク質の配列』、第5版、公衆衛生サービス、国立衛生研究所、ベセスダ、メリーランド州、1991年)および/または“超可変ループ”からのアミノ酸残基(例えば軽鎖可変領域の残基26〜32(L1)、50〜52(L2)、91〜96(L3)と、重鎖可変領域の26〜32(H1)、53〜55(H2)、96〜101(H3);ChothiaとLesk、J. Mol. Biol.、第196巻、901〜917ページ、1987年)を含んでいる。“フレームワーク領域”または“FR”の残基は、この明細書に記載した超可変領域の残基ではない可変領域の残基である。抗体をパパインで消化させると、“Fab”フラグメントと呼ばれる同じ2つの抗原結合フラグメント(それぞれが1つの抗原結合部位を持つ)と、残る1つの“Fc”フラグメント(この名称は、容易に結晶化する能力を反映している)が生じる。ペプシン処理により、2つの抗原結合部位を持つF(ab')2フラグメントが生じる。このF(ab')2フラグメントは、やはり抗原を架橋させることができる。
【0088】
“Fv”は最小抗体フラグメントであり、抗原の認識と抗原への結合を行なう完全な部位を含んでいる。この領域は、1つの重鎖と1つの軽鎖がきつく非共有結合した二量体からなる。各可変領域の3つの超可変領域が相互作用してVH-VL二量体の表面に抗原結合部位を規定するのは、この構成においてである。6つの超可変領域が合わさり、抗体に対する抗原の結合の特異性を与える。しかし単一の可変領域(または1つの抗原に対して特異的な3つの超可変領域だけを含む半分のFv)でさえ、抗原を認識してその抗原に結合する能力を有する。ただし、完全な結合部位よりも親和性は小さい。Fabフラグメントも、軽鎖の定常領域と重鎖の第1の定常領域(CH1)を含んでいる。Fab'フラグメントがFabフラグメントと異なっているのは、重鎖CH1領域抗体のカルボキシ末端にあってヒンジ領域からの1個以上のシステインを含む領域にいくつかの残基が付加されている点である。Fab'-SHは、この明細書では、定常領域のシステイン残基が少なくとも1個の自由なチオール基を持つFab'を意味する。F(ab')2抗体フラグメントは、元々は、ヒンジ領域のシステインを間に有するペアのFab'フラグメントとして製造された。抗体フラグメントの他の化学的カップリングも知られている。
【0089】
任意の脊椎動物種からの抗体の“軽鎖”は、その定常領域のアミノ酸配列に基づき、カッパ(κ)とラムダ(λ)と呼ばれる2つの明らかに異なるタイプのうちの1つに割り当てることができる。
【0090】
“一本鎖Fv”抗体フラグメントまたは“scFv”抗体フラグメントは、抗体のVH領域とVL領域を含んでいて、これらの領域が1本のポリペプチド鎖の中に存在している。Fvポリペプチドは、VH領域とVL領域の間に、scFvが抗原への結合にとって望ましい構造を形成することを可能にするポリペプチド・リンカーをさらに含んでいることが好ましい。scFvの概説に関しては、RosenburgとMoore編、『モノクローナル抗体の薬理学』、第113巻(シュプリンガー-フェアラーク社、ニューヨーク、1994年)の中のPluckthunによる269〜315ページを参照のこと。
【0091】
“二重特異性抗体”という用語は、2つの抗原結合部位を持つ小さな抗体フラグメントを意味し、そのフラグメントは、軽鎖可変領域(VL)に接続された重鎖可変領域(VH)を同じポリペプチド鎖(VH-VL)の中に含んでいる。同じ鎖上で2つの領域をペアにするには短すぎるリンカーを使用し、その2つの領域を別の鎖の相補的な領域とともに強制的にペアにして2つの抗原結合部位を作り出す。二重特異性抗体は、例えばヨーロッパ特許第404,097号;WO 93/11161;Hollinger他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第90巻、6444〜6448ページ、1993年に、より十分な記載がある。
【0092】
“三重特異性抗体”または“3価三量体”という用語は、3つの一本鎖抗体の組み合わせを意味する。三重特異性抗体は、VL領域またはVH領域のアミノ末端を用いて、すなわちリンカー配列なしで構成される。三重特異性抗体は3つのFv頭部を備えていて、頭部が尾部につながった環状の構成のポリペプチドになっている。三重特異性抗体の可能な1つのコンホメーションは、3つの結合部位が平面内で互いに120°の角度になった平坦なコンホメーションである。三重特異性抗体は、一重特異性、二重特異性、三重特異性のいずれかが可能である。
【0093】
“単離された”抗体は、その自然環境の1つの成分から同定、および/または分離、および/または回収されたものである。単離された抗体の自然環境の汚染成分は、その抗体を診断または治療で利用することを妨げるであろう材料であり、例えば酵素、ホルモンや、他のタンパク質性または非タンパク質性の溶質などがある。単離された抗体には、組み換え細胞内の元々の位置にある抗体が含まれる。なぜならその抗体の自然環境の少なくとも1つの成分は存在しないからである。しかし通常は、単離された抗体は、少なくとも1つの精製ステップによって調製される。
【0094】
興味の対象である抗原(例えばTROP-2抗原)に“結合する”抗体は、その抗原に十分な親和性で結合できるものであるため、その抗原を発現している細胞を標的とした治療剤または診断剤として有用である。抗体がTROP-2に結合する抗体である場合には、その抗体は通常は他の受容体ではなくTROP-2のほうに優先的に結合するため、非特異的Fc接触などの偶発的な結合や、他の抗原で一般的な翻訳後修飾への結合はなく、その抗体は、他のタンパク質と有意な交差反応はしない抗体であろう。興味の対象である抗原と結合する抗体を検出する方法は従来技術でよく知られており、例えばFACS、細胞ELISA、ウエスタン・ブロットといったアッセイが挙げられるが、これだけに限定されるわけではない。
【0095】
この明細書では、“細胞”、“細胞系”、及び“細胞培養物”という用語は同じ意味で用いられ、そのどれにも子孫が含まれる。意図的または非意図的な突然変異のため、すべての子孫はDNA含量が厳密に同じでなくてもよい。元の形質転換された細胞の中でスクリーニングして同じ機能または生物活性を持つとわかった突然変異した子孫が含まれる。文脈から、それぞれの用語が意図するものは明らかであろう。
【0096】
“治療または治療する”は、治療と予防措置の両方を意味し、その目的は、標的とする病的状態または疾患を予防または遅延させる(軽減する)ことである。治療を必要とする者には、疾患をすでに有する者と、疾患になりやすい者または疾患を予防すべき者が含まれる。したがってこの明細書における治療すべき哺乳動物として、疾患を持つとすでに診断されているものや、疾患の傾向があったり疾患になりやすかったりするものが可能である。
【0097】
“がん”と“がん性”という用語は、哺乳動物において細胞の成長または死が調節されていないことを一般に特徴とする生理学的状態を意味または記述している。がんの例として限定されないが、癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫、及び白血病又はリンパ球悪性疾患などがある。このようながんのより特別な例として、扁平細胞がん(例えば扁平上皮細胞がん)、肺がん(小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺の腺癌、肺の扁平癌腫)、腹膜のがん、肝細胞がん、胃がん(胃腸がんを含む)、膵臓がん、グリア芽細胞腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、肝細胞がん、乳がん、大腸がん、直腸がん、結腸がん、子宮内膜癌腫又は子宮癌腫、唾液腺癌腫、腎臓がん、前立腺がん、膣がん、甲状腺がん、肝細胞癌腫、肛門癌腫、陰茎癌腫、頭部と首のがんなどがある。
【0098】
“化学療法剤”は、がんの治療に役立つ化合物である。化学療法剤の例として、アルキル化剤(例えばチオテパ、シクロホスファミド(サイトキサン(登録商標)))、スルホン酸アルキル(例えばブスルファン、イムプロスルファン、ピポスルファン);アジリジン(例えばベンゾドパ、カルボコン、メツレドパ、ウレドパ);エチレンイミンとメチルアメラミン(例えばアルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド、トリメチルオロメラミン);ナイトロジェンマスタード(例えばクロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベムビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード);ニトロスウレア(例えばカルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン);抗生物質(例えばアクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリケアマイシン、カラビシン、カルノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン);抗代謝産物(例えばメトトレキセート、5-フルオロウラシル(5-FU));葉酸類似体(例えばデノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキセート);プリン類似体(例えばフルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン);ピリミジン類似体(例えばアンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスリジン、5-FU);アンドロゲン(例えばカルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン);抗副腎(例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン);葉酸補給物質(例えばフロリン酸);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキセート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジコン;エルフォルミチン;酢酸エリプチニウム;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2',2"-トリクロロトリエチルアミン;ウレサン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(“Ara-C”);シクロホスファミド;チオテパ;タキサン(例えばパクリタキセル(タキソール(登録商標)、ブリストル-マイヤー・スクウィブ・オンコロジー社、プリンストン、ニュージャージー州)、ドセタキセル(タキソテール(登録商標)、アベンティス、ローヌ-プーラン・ロレール社、アントニー、フランス国));クロラムブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;白金類似体(例えばシスプラチン、カルボプラチン);ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;エスペラミシン;カペシタビン;及びこれらのうちの任意のものの薬理学的に許容可能な塩、酸、誘導体がある。この定義に含まれるものとして、腫瘍に対するホルモン作用を調節または抑制する作用を持つ抗ホルモン剤(抗エストロゲンである、例えばタモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼを抑制する4(5)-イミダゾール、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、及びトレミフェン(ファレストン));抗アンドロゲン(例えばフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、ゴセレリン);及びこれらのうちの任意のものの薬理学的に許容可能な塩、酸、誘導体もある。
【0099】
治療を目的とした“哺乳動物”は、哺乳動物として分類されるあらゆる動物を意味する。その中に含まれるのは、ヒト、マウス、SCIDまたはヌードマウスまたはマウスの諸血統、家畜、動物園やスポーツやペットの動物(例えばヒツジ、イヌ、ウマ、ネコ、ウシ)などである。この明細書では、哺乳動物はヒトであることが好ましい。
【0100】
“オリゴヌクレオチド”は、公知の方法(例えば1988年5月4日に公開されたヨーロッパ特許第266,032号に記載されている固相技術を利用したホスホトリエステル法、亜リン酸法、ホスホロアミダイト法、またはFroehler他、Nucl. Acids Res.、第14巻、5399〜5407ページ、1986年に記載されているデオキシヌクレオシドH-ホスホネート中間体を介する方法)で化学的に合成される長さの短い一本鎖または二本鎖のポリデオキシヌクレオチドである。次いでオリゴヌクレオチドはポリアアクリルアミド・ゲル上で精製される。
【0101】
本発明によれば、非ヒト(例えばマウス)免疫グロブリンの“ヒト化”形態および/または“キメラ”形態は、元の抗体と比べてヒト抗マウス抗体(HAMA)応答、ヒト抗キメラ抗体(HACA)応答、ヒト抗ヒト抗体(HAHA)応答を減らす特定のキメラ免疫グロブリン、または免疫グロブリン鎖、またはこれらのフラグメント(例えばFv、Fab、Fab'、F(ab')2又は抗体中の他の抗原結合配列)を含むとともに、その非ヒト免疫グロブリンに由来していて望む効果を再現すると同時にその非ヒト免疫グロブリンに匹敵する結合特性を保持している必要な不可欠な部分(例えばCDR、抗原結合領域、可変領域など)を含む抗体を意味する。たいていの場合、ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)において、このレシピエント抗体の相補性決定領域(CDR)からの残基が、望む特異性、親和性、能力を有する非ヒト種(例えばマウス、ラット、ウサギ)(ドナー抗体)のCDRからの残基で置換されているものである。いくつかの場合には、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非ヒトFR残基で置換されている。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、導入されたCDR配列またはFR配列にも見られない残基を含んでいてもよい。こうした修飾は、抗体の性能をより洗練されたものにして最適化するために行なわれる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つの(典型的には2つの)可変領域の実質的に全体を含んでいて、CDR領域の全体または実質的に全体が非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、FR残基の全体または実質的に全体がヒト免疫グロブリンのコンセンサス配列のFR残基に対応することになろう。ヒト化抗体は、免疫グロブリン(一般にはヒト免疫グロブリン)の定常領域(Fc)の少なくとも一部も含むことが好ましい。
【0102】
“脱免疫化”抗体は、所定の種に対する免疫原性がないかより少ない免疫グロブリンである。脱免疫化は、抗体の構造を変化させることによって実現できる。当業者に知られている任意の脱免疫化法を利用することができる。抗体を脱免疫化するのに適した1つの方法は、例えば2000年6月15日に公開されたWO 00/34317に記載されている。
【0103】
“アポトーシス”を誘導する抗体は、プログラムされた細胞死を任意の手段で誘導する抗体である。手段として、アネキシンV、カスパーゼ活性、DNAの断片化、細胞の収縮、小胞体の膨張、細胞の断片化、及び/又は(アポトーシス小体と呼ばれる)膜小胞の形成などがあるが、これだけに限られるわけではない。
【0104】
この明細書では、“抗体によって誘導される細胞傷害作用”は、IDACに受託番号141205-05として寄託されたハイブリドーマの上清、またはそのハイブリドーマによって産生された抗体、IDACに受託番号141205-05として寄託されたハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体のヒト化抗体、IDACに受託番号141205-05として寄託されたハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体のキメラ抗体、抗原結合フラグメント、これらの抗体リガンドのいずれかに由来する細胞傷害効果を意味するものと理解するが、その効果は必ずしも結合の程度と関係しない。
【0105】
この明細書の全体を通じ、ハイブリドーマ細胞系と、それによって産生されて単離されたモノクローナル抗体は、内部での名称AR47A6.4.2(マウス)、(ch)AR47A6.4.2(キメラ)、(hu)AR47A6.4.2(ヒト化)、寄託名IDAC 141205-05のいずれかで呼ぶ。
【0106】
この明細書では、“抗体-リガンド”に、標的抗原の少なくとも1つのエピトープに対する結合特異性を示す部分が含まれる。その例として、完全な抗体分子、抗体フラグメント、少なくとも1つの抗原結合領域またはその一部(すなわち抗体分子の可変部分)を持つ分子が可能であり、例えばFv分子、Fab分子、Fab'分子、F(ab')2分子、二重特異性抗体、融合タンパク質、IDAC 141205-05と表記されるハイブリドーマ細胞系によって産生されて単離されたモノクローナル抗体に結合する抗原(IDAC 141205-05抗原)の少なくとも1つのエピトープを特異的に認識して結合するあらゆる遺伝子操作された分子、IDACに受託番号141205-05として寄託されたハイブリドーマ細胞系によって産生されて単離されたモノクローナル抗体のヒト化抗体、IDACに受託番号141205-05として寄託されたハイブリドーマ細胞系によって産生されて単離されたモノクローナル抗体のキメラ抗体、及び抗原結合フラグメントがある。
【0107】
この明細書では、“がん性疾患軽減抗体”(CDMAB)は、例えば患者にとって腫瘍組織量を減らしたり、腫瘍のある個人の生存期間を延ばしたりという利益があるようにがん性疾患のプロセスを変化させるモノクローナル抗体と、その抗体-リガンドを意味する。
【0108】
“CDMAB関連結合剤”は、最も広い意味では、ヒト抗体、非ヒト抗体、抗体フラグメント、抗体リガンドなどのうちで、少なくとも1つのCDMAB標的エピトープに競合的に結合する任意の形態のものを含むものと理解する。
【0109】
“競合的バインダ”には、ヒト抗体、非ヒト抗体、抗体フラグメント、抗体リガンドなどのうちで、少なくとも1つのCDMAB標的エピトープに対する結合親和性を持つ任意の形態ものが含まれるものと理解する。
【0110】
治療する腫瘍には、原発腫瘍、転移腫瘍、並びに抵抗性腫瘍が含まれる。抵抗性腫瘍には、化学療法剤だけ、抗体だけ、放射線だけ、またはこれらの組み合わせを用いた治療に反応しなかったりそのような治療に抵抗したりする腫瘍が含まれる。抵抗性腫瘍には、そのような薬剤を用いた治療によって抑制されたように見えるが、治療を中断した5年後に、時には10年間またはそれ以上あとで再発する腫瘍も含まれる。
【0111】
治療できる腫瘍には、血管網が形成されていないかまだ十分に形成されていない腫瘍と、血管網が形成された腫瘍が含まれる。したがって治療可能な固形腫瘍の例として、乳房癌腫、肺癌腫、結腸癌腫、膵臓癌腫、グリオーム、及びリンパ腫などがある。そのような腫瘍のいくつかの例として、類表皮腫瘍、扁平腫瘍(例えば頭部と首部の腫瘍)、結腸腫瘍、前立腺腫瘍、乳房腫瘍、肺腫瘍(小細胞肺腫瘍と非小細胞肺腫瘍が含まれる)、膵臓腫瘍、甲状腺腫瘍、卵巣腫瘍、及び肝臓腫瘍などがある。他の例として、カポジ肉腫、CNS新生物、神経芽細胞腫、毛細血管芽細胞腫、髄膜腫、脳転移、黒色腫、胃腸癌腫、腎臓癌腫、肉腫、横紋筋肉腫、グリア芽細胞腫(多形性グリア芽細胞腫が好ましい)、及び平滑筋肉腫などがある。
【0112】
この明細書では、“抗原結合領域”は、分子のうちで標的抗原を認識する部分を意味する。
【0113】
この明細書では、“競合的に抑制する”は、IDAC 141205-05と表記されるハイブリドーマ細胞系によって産生されたモノクローナル抗体(IDAC 141205-05抗体)、IDACに受託番号141205-05として寄託されたハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体のヒト化抗体、IDACに受託番号141205-05として寄託されたハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体のキメラ抗体、抗原結合フラグメント、これらの抗体リガンドのいずれかが従来の抗体競合アッセイを利用して向かうことになる決定部位を認識して結合できることを意味する。(Belanger, L、Sylvestre, C.、Dufour, D.、1973年、「競合手続きとサンドイッチ手続きによるαフェトプロテインの固相酵素免疫アッセイ」、Clinica Chimica Acta、第48巻、15ページ)
【0114】
この明細書では、“標的抗原”は、IDAC 141205-05抗原またはその一部である。
【0115】
この明細書では、“免疫複合体”は、例えば細胞毒素、放射性物質、サイトカイン、インターフェロン、標的部分、レポータ部分、酵素、毒素、抗腫瘍薬、治療剤のいずれかと化学的または生物学的に結合した抗体などの任意の分子またはCDMAB(例えば抗体)を意味する。抗体またはCDMABは、対象とする標的と結合できるかぎり、その抗体またはCDMABに沿った任意の位置に、細胞毒素、放射性物質、サイトカイン、インターフェロン、標的部分、レポータ部分、酵素、毒素、抗腫瘍薬、治療剤のいずれかを結合させることができる。免疫複合体の例として、抗体毒素化学的複合体や抗体-毒素融合タンパク質などがある。
【0116】
抗腫瘍剤として用いるのに適した放射性物質は当業者には公知である。例えば131Iまたは211Atが使用される。これらアイソトープは、従来法を利用して抗体に付着させる(例えばPedley他、Br. J. Cancer、第68巻、69〜73ページ、1993年)。あるいは抗体に付着させる抗腫瘍剤は、プロドラッグを活性化させる酵素である。プロドラッグを投与すると、腫瘍部位に到達するまで不活性な形態に留まり、抗体複合体が投与されるとその部位で細胞毒素形態に変換される。実際には、抗体-酵素複合体を患者に投与し、治療すべき組織の領域に局在させることができる。そこでプロドラッグを患者に投与し、治療すべき組織の領域で細胞毒性薬への変換が起こるようにする。あるいは抗体と結合した抗腫瘍剤は、サイトカイン(例えばインターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-4(IL-4)、又は腫瘍壊死因子α(TNF-α))である。抗体はそのサイトカインを腫瘍に向かわせ、そのサイトカインが腫瘍に損傷を与えたり腫瘍を破壊したりするのを媒介するが、他の組織に影響が及ぶことはない。サイトカインは、従来の組み換えDNA技術を利用してDNAレベルで抗体と融合させる。インターフェロンも使用できる。
【0117】
この明細書では、“融合タンパク質”は、抗原結合領域が生物活性のある分子(例えば毒素、酵素、蛍光タンパク質、発光マーカー、ポリペプチド・タグ、サイトカイン、インターフェロン、標的部分、レポータ部分、タンパク質薬)に結合されたキメラタンパク質を意味する。
【0118】
本発明ではさらに、標的部分またはレポータ部分が結合する本発明のCDMABを考える。標的部分は、結合ペアの第1のメンバーである。例えば抗腫瘍剤をそのようなペアの第2のメンバーと結合させると、抗腫瘍剤は抗原結合タンパク質が結合している部位に向かう。このような結合ペアの一般的な一例は、アビジンとビオチンである。好ましい一実施態様では、ビオチンを、本発明のCDMABの標的抗原と結合させると、ビオチンは抗腫瘍剤の標的となるか、アビジンまたはストレプトアビジンと結合した他の部分の標的となる。あるいはビオチンまたは別のそのような部分を本発明のCDMABの標的抗原とリンクさせ、例えば、検出可能な信号発生剤をアビジンまたはストレプトアビジンと結合させた診断システムにおいてレポータとして用いる。
【0119】
検出可能な信号発生剤は、生体内と試験管内において診断の目的で有用である。検出可能な信号発生剤は、外部手段によって検出できる測定可能な信号を発生させる。その場合、通常は電磁放射の測定が行なわれる。たいてい、信号発生剤は、酵素または発色団であるか、蛍光、リン光、化学発光によって光を出す。発色団には紫外線領域または可視光領域で光を吸収する染料が含まれている。発色団として、酵素を触媒とした反応の基質または分解産物が可能である。
【0120】
さらに、本発明の範囲には、従来技術でよく知られている検査法または診断法のために本発明のCDMABを生体内と試験管内で用いることが含まれる。この明細書で考える診断法を実施するため、本発明には、本発明のCDMABを含むキットをさらに含めることができる。このようなキットは、ある種のがんのリスクがある個人を、その個人の細胞におけるCDMABの標的抗原の過剰発現を検出することによって特定するのに役立つであろう。
【0121】
診断アッセイ用キット
【0122】
本発明のCDMABは、腫瘍の存在を明らかにするための診断アッセイ用キットの形態で利用することが考えられる。腫瘍は、一般に、患者から得られた生物サンプル(例えば血液、血清、尿、及び/又は腫瘍生検)の中に1つ以上の腫瘍特異的抗原(例えばタンパク質および/またはそのようなタンパク質をコードしているポリヌクレオチド)が存在することに基づいて検出される。
【0123】
上記抗原は、特定の腫瘍(例えば大腸、乳房、肺、又は前立腺の腫瘍)の存在または不在を示すマーカーとして機能する。上記抗原は、他のがん性腫瘍の検出にも役立つであろう。診断アッセイ用キットに本発明のCDMABからなる結合剤、またはCDMABに関係する結合剤が含まれていることで、生物サンプルの中にあってその結合剤と結合する抗原のレベルを検出することができる。ポリヌクレオチドからなるプライマーとプローブを用い、腫瘍タンパク質をコードしているmRNAのレベルを検出することができる。このmRNAのレベルも、がんの存在または不在を示す。結合アッセイが診断アッセイであるためには、抗原のレベルが正常組織に存在する抗原と比べて統計的に有意であることを示すデータが得られているはずである。そこで結合を認識することが、がん性腫瘍の存在の決定的な診断となる。本発明の診断アッセイにおいて当業者に知られている結合剤を用いてサンプル中のポリペプチドを検出するには、複数の形式が有用であると考えられる。その例が、HarlowとLane、『抗体:実験室マニュアル』、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー、1988年に示されている。上に説明した診断アッセイの形式の任意のものと、そのあらゆる組み合わせ、変形、変更もさらに考えられる。
【0124】
患者にがんがあるかないかは、一般に、(a)患者から取得した生物サンプルを結合剤と接触させ;(b)そのサンプルの中でその結合剤と結合するポリペプチドのレベルを検出し;及び(c)そのポリペプチドのレベルを所定のカット-オフ値と比較することによって判断される。
【0125】
代表的な一実施態様では、サンプルの残部からのポリペプチドを結合させて除去するため、固体支持体に固定化されたCDMAB主体の結合剤をアッセイに含めることが考えられる。すると結合したポリペプチドは、レポータ基を含んでいて結合剤/ポリペプチド複合体と特異的に結合する検出試薬を用いて検出できる。代表的な検出試薬として、ポリペプチドまたは抗体に特異的に結合するCDMAB主体の結合剤や、結合剤に特異的に結合する他のもの(例えば抗免疫グロブリン、プロテインG、プロテインA、又はレクチン)が挙げられる。別の一実施態様では、競合アッセイを利用することが考えられる。その場合、ポリペプチドをレポータ基で標識し、結合剤をサンプルとともにインキュベートした後にその固定化された結合剤と結合できるようにする。固定化された結合剤に対するサンプルの反応性の指標は、サンプル中のどの成分が、結合剤への標識したポリペプチドの結合をどの程度抑制するかである。このようなアッセイで用いるのに適したポリペプチドとして、結合剤が結合親和性を持つ完全長の腫瘍特異的タンパク質および/またはその一部がある。
【0126】
診断キットは、固体支持体とともに提供されることになる。固体支持体は、タンパク質が結合できるのであれば当業者に公知の任意の形態の材料が可能である。適切な例として、微量滴定プレートの試験ウエル、ニトロセルロースや、他の適切な膜などが挙げられる。あるいは支持体は、ビーズまたは円板でもよい(例えばガラス、ファイバーガラス、ラテックス、又はプラスチック材料(ポリスチレン又はポリ塩化ビニルなど))。支持体は、例えばアメリカ合衆国特許第5,359,681号に開示されているような磁性粒子またはオプティカル・ファイバー・センサーでもよい。
【0127】
特許と学術文献に広く記載されていて当業者に知られているさまざまな方法を用いて結合剤を固体支持体の表面に固定化することが考えられる。“固定化”という用語は、非共有結合(例えば吸着)と共有結合(本発明の文脈では、結合剤と支持体上の官能基の間の直接的な結合、または架橋剤を通じた結合が可能である)の両方を意味する。好ましい一実施態様では、微量滴定プレートのウエルへの吸着、または膜への吸着による固定化が好ましいが、実施態様がこれだけに限られるわけではない。吸着は、適切な緩衝液の中で結合剤を固体支持体と適切な時間にわたって接触させることによって実現できる。接触時間は温度によって変わる可能性があるが、一般に約1時間〜約1日の範囲になろう。
【0128】
固体支持体に対する結合剤の共有結合は、通常、支持体を、その支持体と、結合剤の1つの官能基(例えばヒドロキシル基またはアミノ基)の両方と反応する二官能性試薬と接触させることによって実施されることになろう。例えば結合剤は、ベンゾキノンを用いて、または支持体上のアルデヒド基を結合パートナーのアミンおよび活性水素と縮合させることによって、適切なポリマー被覆を有する支持体に共有結合させることができる(例えばPierce、『免疫技術のカタログとハンドブック』、1991年のA12とA13を参照のこと)。
【0129】
診断アッセイ用キットが2抗体サンドイッチ・アッセイの形態を取ることもさらに考えられる。このアッセイは、最初に抗体(例えばこの明細書に開示してあるCDMABを固体支持体に固定化してあるもの)をサンプルと接触させ、サンプル中のポリペプチドがその固定化された抗体と結合できるようにすることによって実施できる。その後、結合しなかったサンプルを固定化されたポリペプチド-抗体複合体から取り除き、レポータ基を含む検出試薬(そのポリペプチドの異なる部位と結合できる第2の抗体が好ましい)を添加する。次に、その特異的レポータ基に適した方法を利用し、固体支持体に結合したまま残る検出試薬の量を明らかにする。
【0130】
特別な一実施態様では、抗体が上に説明したようにして支持体に固定化された後、当業者に知られている適切な阻止剤(例えばウシ血清アルブミンやトゥイーン20(登録商標)(シグマ・ケミカル社、セントルイス、ミズーリ州))を用いて支持体上の残るタンパク質結合部位をブロックする。次に、固定化された抗体をサンプルとともにインキュベートすると、ポリペプチドは抗体と結合できるであろう。サンプルは、インキュベーションの前に適切な希釈剤(例えばリン酸緩衝化整理食塩水(PBS))で希釈することができよう。一般に、特別に選択された腫瘍を持つ個人から得られたサンプル中のポリペプチドの存在を検出するのに十分な時間に対応するよう、適切な接触時間(すなわちインキュベーションの時間)が選択されることになろう。接触時間は、結合したポリペプチドと結合しなかったポリペプチドが平衡しているときに実現される結合レベルの少なくとも約95%の結合レベルを実現するのに十分であることが好ましい。当業者であれば、ある時間の間に起こる結合レベルを調べることにより、平衡を実現するのに必要な時間を容易に決定できることを認識しているであろう。
【0131】
次に、固体支持体を適切な緩衝液で洗浄することにより、結合しなかったサンプルを除去することがさらに考えられる。次に、レポータ基を含む第2の抗体を固体支持体に添加する。次に、結合したポリペプチドを検出するのに十分な時間の間、検出試薬を固定化された抗体-ポリペプチド複合体とともにインキュベートする。その後、結合しなかった検出試薬を除去し、結合した検出試薬をレポータ試薬を用いて検出する。レポータ基の検出に用いる方法は、必然的に選択したレポータ基のタイプに特異的であり、例えば放射性の基では、シンチレーションの計数または放射能写真法が一般に適している。分光法を利用して染料、発光基、蛍光基を検出することもできる。ビオチンは、異なるレポータ基(一般に、放射性の基、または蛍光基、または酵素)とカップルしたアビジンを用いて検出できる。酵素レポータ基は、一般に、基質を添加した後、反応生成物の分光分析によって、またはそれ以外の分析法によって検出することができる。
【0132】
本発明の診断アッセイ用キットを用いてがん(例えば前立腺がん)の存在または不在を明らかにするには、固体支持体に結合したままのレポータ基から検出された信号を、一般に、所定のカット-オフ値に対応する信号と比較することになる。例えばがん検出のための代表的なカット-オフ値は、固定化された抗体をがんのない患者からのサンプルとともにインキュベートしたときに得られる信号の平均値にすることができる。一般に、所定のカット-オフ値の約3倍の標準偏差を超える信号を発生させるサンプルにはがんがあると見なされるであろう。別の一実施態様では、カット-オフ値は、Sackett他、『臨床疫学:臨床医学のための基本的な科学』(リトル・ブラウン社、1985年、106〜107ページ)の方法に従ってレシーバ・オペレータ曲線を用いることによって決定できよう。このような実施態様では、カット-オフ値は、診断試験の結果に関して可能な各カット-オフ値に対応する真の陽性率(すなわち感受性)と偽の陽性率(100%の特異性)のペアをプロットして決定することができよう。プロット上で左上隈に最も近いカット-オフ値(すなわち最大の面積を取り囲む値)が最も正確なカット-オフ値であり、この方法で決定されたカット-オフ値よりも大きい信号を発生させるサンプルは陽性であると考えることができる。あるいはカット-オフ値をグラフに沿って左に移動させて偽の陽性率を最小にすること、または右に移動させて偽の陰性率を最小にすることができる。一般に、この方法で決定されたカット-オフ値よりも大きい信号を発生させるサンプルは、がんに関して陽性であると考えられる。
【0133】
キットによって可能になる診断アッセイは、結合剤を膜(例えばニトロセルロース)に固定化させ、フロー-スルー試験法またはストリップ試験法で実施することが考えられる。フロー-スルー試験法では、サンプル中のポリペプチドは、サンプルが膜を通過するときに固定化された結合剤と結合する。次に、標識された第2の結合剤が、第2の結合剤を含む溶液が膜を通って流れるときに結合剤-ポリペプチド複合体に結合する。次に、結合した第2の結合剤を上に説明したようにして検出することができる。ストリップ試験法では、結合剤が結合した膜の一端を、サンプルを含む溶液に浸すことになる。サンプルは膜に沿って第2の結合剤を含む領域の中を移動し、固定化された結合剤の領域に到達する。固定化された抗体の領域における第2の結合剤の濃度が、がんの存在を示す。結合部位に生成する目で見えるパターン(例えば線)は、試験結果が陽性であることを示すことになろう。このようなパターンがないというのは、結果が陰性であることを示している。一般に、膜に固定化される結合剤の量は、上に説明した形式の2抗体サンドイッチ・アッセイにおいて生物サンプルが陽性信号を発生させるのに十分なレベルのポリペプチドを含んでいるとき、目で見て識別できるパターンが生成するように選択される。この診断アッセイで用いるのに適した結合剤は、この明細書に開示されている抗体、その抗原結合フラグメント、この明細書に記載した任意のCDMAB関連結合剤である。膜に固定化される抗体の量は、診断アッセイを行なうのに有効な任意の量であり、約25ng〜約1μgの範囲が可能である。一般に、このような試験は非常に少量のサンプルを用いて実施できる。
【0134】
さらに、本発明のCDMABは、標的抗原を同定する能力を有するため研究用の実験室で使用できる。
【0135】
この明細書に記載した本発明がより完全に理解されるようにするため、以下の説明を行なう。
【0136】
本発明により、IDAC 141205-05抗原を特異的に認識して結合するCDMAB(すなわち、IDAC 141205-05 CDMAB、IDACに受託番号141205-05として寄託されたハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体のヒト化抗体、IDACに受託番号141205-05として寄託されたハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体のキメラ抗体、これら抗体の抗原結合フラグメント、これら抗体の抗体リガンド)が提供される。
【0137】
IDACに受託番号141205-05として寄託されたハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体のCDMABは、ハイブリドーマIDAC 141205-05によって産生されて単離されたモノクローナル抗体が標的抗原に免疫特異的に結合するのを競合的に抑制する抗原結合領域を有する限り、任意の形態が可能である。したがって、IDAC 141205-05抗体と同じ結合特異性を持つ任意の組み換えタンパク質(例えば抗体が第2のタンパク質(リンフォカインや腫瘍抑制性増殖因子)と組み合わされた融合タンパク質)が本発明の範囲に入る。
【0138】
本発明の一実施態様では、CDMABは、IDAC 141205-05抗体である。
【0139】
別の実施態様では、CDMABは抗原結合フラグメントであり、その例として、Fv分子(例えば一本鎖Fv分子)、Fab分子、Fab'分子、F(ab')2分子、融合タンパク質、二重特異性抗体、ヘテロ抗体、IDAC 141205-05抗体の抗原結合領域を持つ任意の組み換え分子が可能である。本発明のCDMABは、IDAC 141205-05モノクローナル抗体が向かうエピトープに向かう。
【0140】
本発明のCDMABを修飾することにより、すなわちその分子内のアミノ酸を修飾することにより、誘導体分子を生成させることができる。化学的修飾も可能である。直接的な突然変異による修飾、親和性成熟法、ファージ提示法、鎖シャッフリング法も可能である。
【0141】
親和性と特異性は、CDRおよび/またはフェニルアラニン・トリプトファン(FW)残基の突然変異と、望む特性を持つ抗原結合部位のスクリーニングとによって変更または改善することができる(例えばYang他、J. Mol. Biol.、1995年、第254巻、392〜403ページ)。1つの方法は、個々の残基または残基の組み合わせをランダム化し、そうでなければ同じであった抗原結合部位の集団の中の特定の位置に2〜20個のアミノ酸からの部分集合が見いだされるようにするというものである。あるいはエラーしやすいPCR法によってある範囲の残基に突然変異を誘導することもできる(例えばHawkins他、J. Mol. Biol.、1992年、第226巻、889〜896ページ)。別の一例では、重鎖と軽鎖の可変領域の遺伝子を含むファージ提示ベクターを大腸菌の突然変異株に組み込むことができる(例えばLow他、J. Mol. Biol.、1996年、第250巻、359〜368ページ)。これらの突然変異誘発法は、当業者に知られている多数の方法のうちの代表例である。
【0142】
本発明の抗体の親和性を大きくする別の方法は、鎖シャッフリング法を実施して重鎖または軽鎖を別の重鎖または軽鎖とランダムにペアにすることで、親和性のより大きな抗体を調製するというものである。抗体のさまざまなCDRを他の抗体の対応するCDRとシャッフルすることもできる。
【0143】
誘導体分子は、ポリペプチドの機能特性を保持するであろう。すなわちそのような置換を持つ分子は、ポリペプチドがIDAC 141205-05抗原またはその一部に結合することを相変わらず可能にするであろう。
【0144】
アミノ酸置換には、従来から“保存性”として知られるアミノ酸置換が含まれるが、必ずしもそれだけに限られない。
【0145】
例えば、タンパク質において、“保存性アミノ酸置換”と呼ばれるいくつかのアミノ酸置換を、そのタンパク質のコンホメーションまたは機能を変えることなくしばしば実施できることは、タンパク質化学の原理としてよく確立している。
【0146】
このような変化に含まれるのは、イソロイシン(I)、バリン(V)、ロイシン(L)のいずれかをこれら疎水性アミノ酸とは別の任意のアミノ酸と置換すること;アスパラギン酸(D)をグルタミン酸で置換すること、またはその逆;グルタミン(Q)をアスパラギン(N)で置換すること、またはその逆;及びセリン(S)をトレオニン(T)で置換すること、またはその逆である。タンパク質の三次元構造における個々のアミノ酸とその役割に応じ、別の置換も保存性であると考えられる。例えばグリシン(G)とアラニン(A)、アラニンとバリン(V)は交換可能であることがしばしばある。比較的疎水性であるメチオニン(M)は、ロイシンおよびイソロイシンと交換可能であることがしばしばあり、バリンと交換可能であるときもある。リシン(K)とアルギニン(R)は、アミノ酸残基の重要な特徴が電荷であってしかもこれら2つのアミノ酸のpKの違いは重要ではない位置で交換可能であることがしばしばある。さらに別の変化も、特定の環境では“保存性”であると考えることができる。
【実施例1】
【0147】
ヒトMDA-MB-231乳がん細胞を用いた生体内腫瘍実験
【0148】
AR47A6.4.2は、(アメリカ合衆国特許出願シリアル番号11/709,676に開示されているように)以前に、MCF-7ヒト乳がん異種移植片モデルにおいて有効であることが証明されている。この知見を拡張するため、MCF-7モデルとは異なってHer2/neuが陰性、エストロゲンとプロゲステロンの受容体が陰性のMDA-MB-231ヒト乳がん細胞異種移植片モデルにおいてAR47A6.4.2を調べた。図1、図2、及び図3を参照すると、年齢が8〜10週間のメスSCIDマウスに、100μlのPBS溶液に含まれた500万個のヒト乳がん細胞(MDA-MB-231)をそれぞれのマウスの右脇腹に皮下注射によって移植した結果が示されている。マウスを10匹からなる2つの治療群にランダムに分けた。移植の1日後、20mg/kgのAR47A6.4.2試験抗体または対照である緩衝液を、2.7mMのKCl、1mMのKH2PO4、137mMのNaCl、及び20mMのNa2HPO4を含む希釈剤を用いて貯蔵濃度から希釈した後に、300μlの体積でそれぞれのコホートの腹腔に投与した。次に、抗体サンプルと対照サンプルを、最初の2週間は1週間に1回、その後の3週間は1週間に2回投与した。腫瘍の成長をノギスで1週間に1回測定した。治療は、抗体を8回投与した後に終了した。マウスの体重を腫瘍の測定結果と同時に記録した。すべてのマウスが終点に到達して実験が終わったとき、CCACガイドラインに従って安楽死させた。
【0149】
AR47A6.4.2は、ヒト乳がんのMDA-MB-231生体内予防モデルにおいて腫瘍の成長を有意に抑制した。ARIUS抗体AR47A6.4.2を用いた治療では、抗体を最後に投与してから5日後である55日目に、緩衝液で処理した群と比べてMDA-MB-231腫瘍の成長を91.9%減らした(p<0.00001、t検定)(図1)。対照群のマウスはすべて、抗体を最後に投与してから58日後である108日目に終点に到達したため、実験から取り除いた。しかしAR47A6.4.2で治療した群のマウスの90%はその時点でまだ生きていた(図2)。
【0150】
実験中を通じて毒性の明らかな臨床的徴候はなかった。1週間間隔で測定した体重は、健康であるか成長に失敗したかを代わりに示す指標であった。すべての群で平均体重が実験期間を通じて増加した(図3)。0日目と55日目の間の平均体重の増加は、対照群では1.3g(3.9%)、AR47A6.4.2治療群では1.8g(9.3%)であった。治療期間を通じて両方の群で有意な差はなかった。まとめると、ヒト乳がん異種移植片モデルにおいてAR47A6.4.2はよく許容され、腫瘍の成長を有意に抑制した。
【実施例2】
【0151】
ヒトPL45膵臓がん細胞を用いた生体内腫瘍実験
【0152】
AR47A6.4.2は、(アメリカ合衆国特許出願シリアル番号11/709,676に開示されているように)以前に、PL45膵臓がん異種移植片モデルにおいて有効であることが証明されている。有効な投与レベルを明らかにするため、確立されたPL45モデルにおいてAR47A6.4.2をさまざまな投与量で調べた。図4、図5、及び図6を参照すると、年齢が8〜10週間のメスのSCIDマウスに、100μlのPBS溶液に含まれた400万個のヒト膵臓がん細胞(PL45)を首筋に皮下注射によって移植した結果が示されている。マウスの腫瘍の平均体積が約100mm3に達したとき、マウスを10匹からなる5つの治療群にランダムに分けた。移植してから32日後、20、10、2、0.2mg/kgいずれかのAR47A6.4.2試験抗体または対照である緩衝液を、2.7mMのKCl、1mMのKH2PO4、137mMのNaCl、及び20mMのNa2HPO4を含む希釈剤を用いて貯蔵濃度から希釈した後に、300μlの体積でそれぞれのコホートの腹腔に投与した。次に、抗体サンプルと対照サンプルを、実験期間を通じて週に3回投与した。腫瘍の成長を約4〜7日ごとにノギスで測定した。実験は、抗体を10回投与した後に終了した。実験期間中、週に1回マウスの体重を記録した。すべてのマウスが終点に到達して実験が終わったとき、CCACガイドラインに従って安楽死させた。
【0153】
AR47A6.4.2は、ヒト膵臓がんのPL45生体内確立モデルにおいて投与量に依存した腫瘍の成長を示した。ARIUS抗体AR47A6.4.2を用いた治療では、それぞれ20、10、2、0.2mg/kgの投与量にしたとき、治療用に最後に投与してから14日後の67日目に、PL45腫瘍の成長を緩衝液で処理した群と比べて48.9%(p=0.0001、t検定)、34.6%(p=0.0011、t検定)、17.4%(p=0.1938、t検定)、及び4.7%(p=0.7065、t検定)減らした。これは、対照群と抗体治療群のほとんどすべてのマウスがまだ生きているときであった。すべての群の生存状態を、治療用に最後に投与してから35日後の88日目までモニターした。この時点で対照群の20%(2/10)だけがまだ生きていたのに対し、投与量がそれぞれ20、10、2mg/kgであるAR47A6.4.2治療群のマウスの60%(6/10)、40%(4/10)、及び90%(9/10)がまだ生きていた(図5)。
【0154】
実験中を通じて毒性の明らかな臨床的徴候はなかった。1週間間隔で測定した体重は、健康であるか成長に失敗したかを代わりに示す指標であった。すべての群で平均体重が実験期間を通じて増加した(図6)。32日目と67日目の間の平均体重の増加は、対照群では0.8g(4.1%)、投与量がそれぞれ20、10、2、及び0.2mg/kgであるAR47A6.4.2治療群では、1.5g(7.6%)、1.2g(6.3%)、又は1.9g(9.5%)であった。治療期間を通じて両方の群で有意な差はなかった。
【0155】
まとめると、この確立されたヒト膵臓がん異種移植片モデルにおいてAR47A6.4.2は20と10mg/kgでよく許容され、腫瘍の成長を投与量に依存して有意に抑制した。AR47A6.4.2治療群で投与量が2mg/kgよりも多いマウスも有意な生存期間の延長という利益を示した。要するに、このデータは、AR47A6.4.2が、投与量に依存してヒトがんの治療に有効であることを示している。
【実施例3】
【0156】
ヒトの正常組織と多腫瘍組織の染色
【0157】
追加のIHC実験(以前の研究は、アメリカ合衆国特許出願シリアル番号11/709,676に開示されている)を実施し、ヒトのがんにおけるAR47A6.4.2抗原の広がりの特徴をさらに調べた。スライドを-80℃から-20℃に移した。1時間後、スライドを冷たい(-20℃)のアセトンの中で10分間にわたって事後固定した後、放置して室温に戻した。スライドを4℃の冷たいリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)の中で2分間ずつ3回にわたってリンスした後、3%過酸化水素の中で10分間にわたって洗浄することによって内在性ペルオキシダーゼ活性を阻止した。次にスライドをPBSの中で5分間ずつ3回リンスした後、室温のユニバーサル阻止溶液(ダコ社、トロント、オンタリオ州)の中で5分間にわたってインキュベートした。AR47A6.4.2、抗ヒト筋肉アクチン(クローンHHF35、ダコ社、トロント、オンタリオ州)、抗サイトケラチン-7クローンOV-TL 12/30(ダコ社、トロント、オンタリオ州)、抗TROP-2クローン77220.11(R&Dシステムズ社、ミネアポリス、ミネソタ州)、アイソタイプの対照抗体(哺乳動物の組織に存在せず、しかも哺乳動物の組織では誘導もされない酵素であるアスペルギルス・ニゲールのグルコースオキシダーゼ(ダコ社、トロント、オンタリオ州)に向かう)のいずれかを抗体希釈緩衝液(ダコ社、トロント、オンタリオ州)の中で希釈し(ただし、抗アクチンに関しては0.5μg/mlにし、抗サイトケラチン-7はそのまま使用し、市販の抗TROP-2は1μg/mlにした)、それぞれの抗体の使用濃度である5μg/mlにした後、室温にて1時間にわたってインキュベートした。スライドをPBSで2分間ずつ3回洗浄した。ダコ・エンヴィジョン・システム社(トロント、オンタリオ州)から供給された二次抗体と室温にて30分間にわたって結合させたHRPを用いて一次抗体の免疫反応性を検出/視覚化した。このステップの後、スライドをPBSで5分間ずつ3回洗浄し、イムノペルオキシダーゼ染色のためのDAB(3,3'-ジアミノベンジジンテトラヒドラクロリド、ダコ社、トロント、オンタリオ州)発色団基質溶液を添加することによって室温にて10分間にわたって着色反応を進展させた。スライドを水道水で洗浄して発色反応を終了させた。マイヤーのヘマトキシリン(シグマ・ディアグノスティックス社、オークヴィル、オンタリオ州)を用いて対比染色した後、高品質のエタノール(75〜100%)を用いてスライドを脱水し、キシレンでクリーンにした。取り付け具(ダコ・ファラマウント社、トロント、オンタリオ州)を用いてスライドをカバーガラスで覆った。膵臓アレイ(トライ・スター社、ロックヴィル、メリーランド州)に関して同じプロトコルを実施したが、以下の変更を行なった点が異なっている。組織切片を最初に室温で2時間にわたって乾燥させ、アセトンで固定した後にさらに30分間にわたって風乾させた。3%の過酸化水素を含むメタノールを用いて15分間にわたって内在性過酸化水素をブロックした。このステップは、一次抗体のインキュベーションの後に実施した。
【0158】
Axiovert 200(ツァイス・カナダ社、トロント、オンタリオ州)を用いてスライドを顕微鏡で調べ、ノーザン・エクリプス・イメージング・ソフトウエア(ミシソーガ、オンタリオ州)を用いてディジタル画像を取得して保管した。結果を読み取り、スコア化し、組織病理学者が解釈した。
【0159】
図7は、一群のヒト腫瘍と対応する正常組織に関するAR47A6.4.2染色の結果のまとめを示している(11個の大腸がんと2個の正常な大腸、8個の卵巣がんと2個の正常な卵巣、12個の乳がんと4個の正常な乳房、15個の肺がんと4個の正常な肺、14個の前立腺がんと4個の正常な前立腺、及び14個の膵臓がんと5個の正常な膵臓)。これらの組織は4つの組織マイクロアレイ(トライ・スター社、ロックヴィル、メリーランド州)の上に分布していた。抗体は、中程度から強い結合を、6/11(55%)の大腸がん、6/8(75%)の卵巣がん、11/12(92%)の乳がん、12/15(80%)の肺がん、14/14(100%)の前立腺がん、及び3/14(21%)の膵臓がんで示した(図8と図9)。それに加え、明確でない弱い結合が、2/11(18%)の大腸がん、1/12(8%)の乳がん、3/15(20%)の肺がん、及び2/14(14%)の膵臓がんで観察された。調べた腫瘍のすべてで、結合は腫瘍細胞に特異的であり、いくつかの組織では正常組織と比べて腫瘍で過剰発現していた。対応する正常組織に関しては、この抗体は、正常な大腸組織の0/2、正常な卵巣組織の0/2、正常な乳房組織の4/4、正常な肺組織の4/4、正常な前立腺組織の4/4、及び正常な膵臓組織の5/5に結合した(図9)。結合はこれら器官の上皮組織に対して優勢であった。正の抗体対照として用いた抗サイトケラチン-7または抗アクチンは、予想された正の結合をそれぞれ上皮組織と筋肉組織に対して示した。負の対照であるIgGアイソタイプは、調べた組織に対して負の結合を示した。
【実施例4】
【0160】
ホスホ-MAPK(マイトジェン活性化プロテインキナーゼ)プロテオーム・プロファイラ・ブロット
【0161】
AR47A6.4.2処理によって影響を受ける細胞間シグナル伝達分子を同定するため、AR47A6.4.2で処理した細胞からのライセートを、プロテオーム・プロファイラ・ヒト・ホスホ-MAPK抗体アレイ(ARY002、R&Dシステムズ社、ミネアポリス、ミネソタ州)を用いてスクリーニングした。
【0162】
細胞の処理と調製
【0163】
(アメリカ合衆国特許出願シリアル番号11/709,676に開示されている)以前の研究では、重症複合免疫不全(SCID)マウスで成長させたBxPC-3細胞を用いた膵臓がん異種移植片におけるAR47A6.4.2の生体内効果が証明された。そこでBxPC-3細胞系を利用し、細胞間シグナル伝達分子の活性化のスクリーニングを実施した。BxPC-3細胞を集密に近い状態まで増殖させ、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、次いで血清と追加添加物が欠乏した培地の中で37℃にて4時間にわたって飢餓状態にした。その後、AR47A6.4.2(20μg/ml)または8A3B.6(アイソタイプである対照;IgG2a)(20μg/ml)を細胞に添加し、4℃で20分間放置して結合させた。次に胎仔ウシ血清(FBS)、L-グルタミン、ピルビン酸ナトリウムを細胞に添加して最終濃度を10%のFBS、1%のL-グルタミン、及び1%のピルビン酸ナトリウムにすることによって細胞を刺激した。細胞を37℃のインキュベータに入れ、1時間刺激した後、細胞ライセートを回収した。細胞をPBSで2回洗浄して溶解緩衝液6(品番895561:R&Dシステムズ社の抗体アレイARY002)の中で収穫することによってライセートを回収した。細胞をピペットで移すことによって再び懸濁させ、1.5mlのマイクロフュージ管に移し、4℃にて30分間にわたって回転させることにより混合した。次にライセートを14000×gで5分間にわたって遠心分離し、上清を清浄なチューブに移した。タンパク質の濃度をビシンコニン酸(BCA)タンパク質アッセイ(ピアス社、ロックフォード、イリノイ州)によって明らかにした。
【0164】
ヒト・ホスホ-MAPK抗体アレイ
【0165】
ヒト・ホスホ-MAPK抗体アレイを、製造者が記載しているプロトコル(第4改訂版、2006年5月、R&Dシステムズ社の抗体アレイARY002)に従い、BxPC-3細胞ライセートに対してスクリーニングした。簡単に述べると、揺動プラットフォーム式振盪機の上で、1.5mlのアレイ緩衝液1(品番895477:R&Dシステムズ社の抗体アレイARY002)の中にて1時間にわたってインキュベートすることにより、それぞれのヒト・ホスホ-MAPKプロファイラ膜を調製した。それぞれの処理に関し、合計で150mgのタンパク質を溶解緩衝液6で希釈して最終体積を250μlにし、1.25mlのアレイ緩衝液1と混合した。調製したプロファイラ膜にこの混合物を添加し、揺動プラットフォーム式振盪機の上で4℃にて一晩にわたってインキュベートした。次にそれぞれの膜を(25×貯蔵溶液からの蒸留水(品番号895003:R&Dシステムズ社の抗体アレイARY002)の中で希釈した)1×洗浄緩衝液で3回洗浄し、1×アレイ緩衝液2/3(5×アレイ緩衝液2、品番号895478:R&Dシステムズ社の抗体アレイARY002;アレイ緩衝液3、品番号895008:R&Dシステムズ社の抗体アレイARY002)の中で調製した(ビオチン化されたホスホ特異的抗体を含む)1.5mlの抗ホスホMAPK検出抗体カクテル(品番号893051;R&Dシステムズ社の抗体アレイARY002)とともに2時間にわたってインキュベートした。膜を1×洗浄緩衝液で3回洗浄し、1×アレイ緩衝液2/3の中で1:2000に希釈した1.5mlのストレプトアビジン-HRP(品番号890803:R&Dシステムズ社の抗体アレイARY002)とともに30分間にわたってインキュベートした。膜を1×洗浄緩衝液で3回洗浄し、ECL+ウエスタン検出試薬(GEヘルスケア、ライフサイエンシーズ社、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)に曝露して現像した。膜を化学発光フィルム(コダック社、ロチェスター、ニューヨーク州)に曝露し、X線医用プロセッサを用いて現像した。現像したX線フィルムを透過モードのスキャナーで走査し、イメージJ分析ソフトウエア(イメージJ 1.37v、NIH)を用いてアレイの画像ファイルを分析することにより、その膜上のホスホ-MAPKアレイのデータを定量化した。それぞれのキナーゼについて対応する2通りのスポットの平均画素密度を計算し、膜上の透明な領域の画素密度を用いたバックグラウンド信号から差し引いた。それぞれの対応するホスホ-タンパク質標的について、AR47A6.4.2で処理したサンプルの規格化平均画素密度を8A3B.6で処理した規格化平均画素密度で割って相対変化の比を求めた。ホスホ-タンパク質信号の低下率は、相対変化の比を1から差し引いて100を掛けることによって求めた。
【0166】
AR47A6.4.2または8A3B.6とともにインキュベートしたホスホ-MAPKアレイ膜からの結果を図10に示す。AR47A6.4.2は、8A3B.6と比べると、血清と追加添加物で刺激したBxPC-3細胞の中で以下ののリン酸化を抑制した:p42/p44 MAPK/細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)(ERK1(32%)とERK2(20%)、Akt/プロテインキナーゼB(PKB)(Akt1/PKBα(15%)、Akt2/PKBβ(18%)、Akt3/PKBγ(27%)))。これらキナーゼは、細胞の増殖、成長、生存に影響を与えることのできる細胞内シグナル伝達経路に関与する。血清と追加添加物によって刺激されるとAR47A6.4.2はこれらキナーゼのリン酸化を減らせるという事実は、AR47A6.4.2が、これらキナーゼとそれに関係する細胞内シグナル伝達経路を通してがん細胞の成長と生存を阻止できる可能性のあることを示唆している。
【実施例5】
【0167】
ならし培地のTranSignal(登録商標)血管新生抗体アレイ
【0168】
AR47A6.4.2による処理が血管新生因子の分泌に影響を与えられるかどうかを調べるため、血管新生アレイ(MA6310、パノミクス社、レッドウッド・シティ、カリフォルニア州)を用い、AR47A6.4.2で処理した細胞からのならし培地をスクリーニングした。
【0169】
細胞の処理と調製
【0170】
アメリカ合衆国特許出願シリアル番号11/709,676に開示されているように、重症複合免疫不全(SCID)マウスで成長させたBxPC-3細胞を用いた膵臓がん異種移植片においてAR47A6.4.2の生体内効果が証明された。そこでBxPC-3細胞系を利用して血管新生因子の分泌のスクリーニングを実施した。BxPC-3細胞を集密に近い状態まで増殖させ、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、次いで2mlの血清欠乏培地を補充した。AR47A6.4.2(20μg/ml)または8A3B.6(アイソタイプである対照;IgG2a)(20μg/ml)を細胞に添加し、4℃で20分間放置して結合させた。細胞を37℃のインキュベータの中に24時間にわたって入れた。24時間後、それぞれの培養物からならし培地を回収し、1200回転/分(rpm)で5分間にわたって遠心分離して細胞または細胞屑を除去した。
【0171】
TranSignal(登録商標)血管新生抗体アレイ
【0172】
TranSignal(登録商標)血管新生抗体アレイを、製造者が記載しているプロトコル(2003年10月7日発行、2005年8月3日改訂;MA6310、パノミクス社、レッドウッド・シティ、カリフォルニア州)に従い、BxPC-3細胞を用いてスクリーニングした。簡単に述べると、揺動プラットフォーム式振盪機の上で、3mlの1×阻止緩衝液(MA6310、パノミクス社、レッドウッド・シティ、カリフォルニア州)の中で1時間にわたって室温にてインキュベートすることにより、それぞれのTranSignal(登録商標)血管新生抗体アレイ膜を調製した。次に膜を1mlの洗浄緩衝液II(20×洗浄緩衝液IIを蒸留水(dH2O)で希釈して1×にした;MA6310、パノミクス社、レッドウッド・シティ、カリフォルニア州)で2回洗浄した。洗浄後、回収した全ならし培地(2ml)を膜に添加し、揺動プラットフォーム式振盪機の上で4℃にて一晩にわたってインキュベートした。次に、膜を4mlの1×洗浄緩衝液I(20×洗浄緩衝液をdH2Oの中で希釈して1×にした;MA6310、パノミクス社、レッドウッド・シティ、カリフォルニア州)で3回洗浄した。その後、4mlの1×洗浄緩衝液II(MA6310、パノミクス社、レッドウッド・シティ、カリフォルニア州)で3回洗浄した。次に、揺動プラットフォーム式振盪機の上で、1.5mlのビオチン結合抗血管新生混合物(MA6310、パノミクス社、レッドウッド・シティ、カリフォルニア州)の中で膜を1時間にわたってインキュベートし、4mlの1×洗浄緩衝液I(MA6310、パノミクス社、レッドウッド・シティ、カリフォルニア州)で3回洗浄した後、4mlの1×洗浄緩衝液II(MA6310、パノミクス社、レッドウッド・シティ、カリフォルニア州)で3回洗浄した。1×洗浄緩衝液IIの中で1:1000に希釈したストレプトアビジン-HRPを膜に添加し、室温にて1時間にわたってインキュベートし、4mlの1×洗浄緩衝液I(MA6310、パノミクス社、レッドウッド・シティ、カリフォルニア州)で3回洗浄した後、4mlの1×洗浄緩衝液II(MA6310、パノミクス社、レッドウッド・シティ、カリフォルニア州)で3回洗浄し、Hyperfilm(登録商標)ECL試薬(RPN3114K、GEヘルスケア、ライフ・サイエンシーズ社、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)を用いて現像した。膜を化学発光膜(コダック社、ロチェスター、ニューヨーク州)に曝露し、X線医療用プロセッサを用いて現像した。現像したX線フィルムを透過型スキャナーで走査し、イメージJ分析ソフトウエア(イメージJ 1.37v、NIH)を用いてアレイの画像ファイルを分析することにより、現像したX線フィルム上の血管新生アレイのデータを定量化した。分泌された各因子について、対応する2通りのスポットの平均画素密度を計算し、膜上の透明な領域の画素密度を利用してバックグラウンドの信号から差し引いた。対応する各標的に関し、AR47A6.4.2で処理したサンプルの規格化平均画素密度を、8A3B.6で処理したサンプルの規格化平均画素密度で割り、相対変化の比を得た。信号の低下率は、1から相対変化の比を引いて100を掛けることによって求めた。
【0173】
AR47A6.4.2または8A3B.6とともにインキュベートしたTranSignal(登録商標)血管新生抗体アレイ膜からの結果を図11に示す。AR47A6.4.2は、8A3B.6と比べると、強力な血管新生因子である血管内皮増殖因子(VEGF)と胎盤増殖因子(PLGF)の分泌を抑制した。この観察結果は、BxPC-3膵臓がん細胞系をAR47A6.4.2で処理すると、固形腫瘍において血管の成長を促進する細胞による諸因子の分泌が減ることによって腫瘍の成長とがん細胞の生存を抑制できることを示している。この知見は、AR47A6.4.2の可能な作用メカニズムを示している。
【実施例6】
【0174】
試験管内での抗TROP-2抗体AR47A6.4.2の補体依存性細胞傷害(CDC)活性の証明
【0175】
マウスAR47A6.4.2が治療上有効であることは、(アメリカ合衆国特許出願シリアル番号11/709,676と上記の実施例2に開示されているように)ヒト膵臓がんの異種移植片腫瘍モデルで以前に証明されている。その作用メカニズムを明らかにするため、2つの膵臓がん細胞系PL45とBxPC-3に対するAR47A6.4.2の試験管内でのCDC活性を評価した。プレートでの培養の2日後に確立したPL45細胞とBxPC-3細胞の単層を抗体(2、0.2、及び0.02μg/ml)で処理し、1時間放置して結合させた(37℃;4%CO2)。次にウサギの補体を添加して最終濃度を10%(v/v)にした後、細胞を37℃、4%CO2にてさらに3時間にわたってインキュベートした。防御能力の弱っていない細胞の中に存在する残留乳酸デヒドロゲナーゼをCytotox 96(登録商標)キット(プロメガ社、マディソン、ウィスコンシン州、アメリカ合衆国)を用いて測定することによってCDC活性を評価した。それぞれの試験抗体を3通り評価し、結果をウサギの補体だけで処理したウエルと比べて細胞傷害率として表わした。そのとき以下の式:細胞傷害率=100-[試験抗体(492nm)-バックグラウンド(492nm)]×100/[補体だけ(492nm)-バックグラウンド(492nm)]を用いた。
【0176】
この実験からの結果(図12)は、抗TROP-2抗体AR47A6.4.2が、両方の膵臓がん標的細胞系(PL45とBxPC-3)においてウサギ補体を投与量に依存してリクルートできたことを示している。アイソタイプが一致した対照を最大濃度(20μg/ml)で用いて処理したときには、これらの細胞系でCDC活性は観察されなかった。このデータは、AR47A6.4.2が試験管内で補体をリクルートできること、そしてこの抗体が生体内で効果を及ぼすメカニズムの1つである可能性のあることを示している。
【実施例7】
【0177】
エピトープのマッピング
【0178】
TROP-2分子の中でAR47A6.4.2によって認識される領域を明らかにするため、エピトープのマッピング実験を行なった。TROP-2のアミノ酸配列に基づき、標準的なFmoc法を利用して互いに重なった複数の15量体ペプチドを合成し、トリフルオロ酸をスカベンジャーとともに用いて保護を外した。それに加え、足場上の化学的結合ペプチド(CLIPS)技術を利用して30量体までの二重ループ式ペプチド、三重ループ式ペプチド、シート状ペプチドを化学的足場の上で合成し、TROP-2分子の不連続なエピトープを再構成した。これらループ式ペプチドは、ジシステインを含むように合成し、α,α'-ジブロモキシレンで処理することによってそのジシステインを環化した。間隔が変化する位置にシステイン残基を導入することによってループのサイズを変化させた。新たに導入したシステイン以外の別のシステインが存在している場合には、そのシステインをアラニンで置換した。クレジット-カード形式のポリプロピレン製PEPSCANカード(455ペプチド形式/カード)の上でCLIPS鋳型の0.5mM溶液(例えば1,3-ビス(ブロモメチル)ベンゼンを含む炭酸水素アンモニウム(20mM、pH7.9)/アセトニトリル(1:1(v/v)))と反応させることにより、ペプチド中に多数あるシステインの側鎖をCLIPS鋳型とカップルさせた。カードをその溶液の中で30〜60分間にわたって軽く振盪している間にカードは溶液で完全に覆われた。最後に、カードを過剰なH2Oで徹底的に洗浄し、PBS(pH7.2)の中に1%SDS/0.1%β-メルカプトエタノールを含む中断緩衝液の中で70℃にて30分間にわたって超音波洗浄した後、H2Oの中でさらに45分間にわたって超音波洗浄した。合計で3579種類の異なるペプチドを合成した。PEPSCANをベースとしたELISAによって各ペプチドへの抗体の結合を調べた。共有結合したペプチドを含む455ウエルのクレジット-カード形式のポリプロピレン製カードを、阻止溶液(PBS中の5%(v/v)ウマ血清、5%(v/v)オボアルブミン、及び1%トゥイーン80)で希釈した10μg/mlのAR47A6.4.2を含む一次抗体溶液とともに一晩にわたってインキュベートした。1%トゥイーン80を含むPBSで洗浄した後、ウサギ抗マウス抗体ペルオキシダーゼを阻止溶液(PBS中の5%(v/v)ウマ血清、5%(v/v)オボアルブミン、及び1%トゥイーン80)の中に1/1000に希釈したものとともにペプチドを25℃で1時間インキュベートした。1%トゥイーン80を含むPBSで洗浄した後、ペルオキシダーゼの基質である2,2'-アジノ-ジ-3-エチルベンズチアゾリンスルホネート(ABTS)と、2μlの3%H2O2を添加した。1時間後、色の展開を測定した。電荷結合デバイス(CCD)カメラと画像処理システムを用いて色の展開を0〜4000の対数スケールで定量化した。
【0179】
AR47A6.4.2が最も強く結合した(3579のうちの)20種類のペプチドを図13にリストにして示す。AR47A6.4.2が結合したペプチドの組成を分析することにより、2つのアミノ酸ホットスポットが同定された。ホットスポットのアミノ酸配列LFRERYRLH(配列番号11)が、ペプチド番号1、2、7、8、12、16、17、及び18に存在しており、ホットスポットのアミノ酸配列QVERTLIYY(配列番号12)が、ペプチド番号11と20に存在している。ペプチド3〜6、10、14、15、及び19は偽のエピトープを表わしている可能性が大きい。というのも、これらペプチドの配列はTROP-2分子の細胞内部分に入るからである。結局、これらの結果は、LFRERYRLH(配列番号11)とQVERTLIYY(配列番号12)の周辺の配列からなる不連続なエピトープをAR47A6.4.2が認識することを示している。TROP-2分子全体のアミノ酸配列中におけるこれらアミノ酸配列の位置を図14に示す。
【実施例8】
【0180】
AR47A6.4.2のヒト化
【0181】
従来技術でよく知られている方法と、必要に応じてその方法で用いられる酵素を使用するための供給者の適切な指示を利用し、組み換えDNA法を実施した。実験室での詳細な方法も以下に説明する。
【0182】
ポリAトラクト系1000というmRNA抽出キット(プロメガ社、マディソン、ウィスコンシン州)を用い、製造者の指示に従ってハイブリドーマAR47A6.4.2細胞からmRNAを抽出した。mRNAを以下のようにして逆転写した。すなわち、κ軽鎖に関しては、5.0μlのmRNAを、1.0μlの20ピコモル/μlのMuIgGκVL-3'プライマーOL040(図15)および5.5μlの無ヌクレアーゼ水(プロメガ社、マディソン、ウィスコンシン州)と混合した。λ軽鎖に関しては、5.0μlのmRNAを、1.0μlの20ピコモル/μlのMuIgGλVL-3'プライマーOL042(図15)および5.5μlの無ヌクレアーゼ水(プロメガ社、マディソン、ウィスコンシン州)と混合した。γ重鎖に関しては、5.0μlのmRNAを、1.0μlの20ピコモル/μlのMuIgGVH-3'プライマーOL023(図16)および5.5μlの無ヌクレアーゼ水(プロメガ社、マディソン、ウィスコンシン州)と混合した。これら3つの反応混合物のすべてを熱サイクラーのあらかじめ70℃に加熱したブロックの中に5分間にわたって入れた。これら反応混合物を氷の上で5分間冷やした後、4.0μlのImPromII 5×反応緩衝液(プロメガ社、マディソン、ウィスコンシン州)、0.5μlのPNasinリボヌクレアーゼ阻害剤(プロメガ社、マディソン、ウィスコンシン州)、2.0μlの25mM MgCl2(プロメガ社、マディソン、ウィスコンシン州)、1.0μlの10mM dNTP混合物(インヴィトロジェン社、ペイズリー、イギリス国)、1.0μlのImPromII逆転写酵素(プロメガ社、マディソン、ウィスコンシン州)のそれぞれに添加した。これら反応混合物を室温にて5分間にわたってインキュベートした後、あらかじめ42℃に加熱したPCRブロックに1時間の間移した。この時間が経過した後、PCRブロックの中で70℃にて15分間にわたってインキュベートすることにより、逆転写酵素を熱で不活化した。
【0183】
重鎖配列と軽鎖配列をcDNAから以下のようにして増幅した:37.5μlの10×ハイファイ・エクスパンドPCR緩衝液(ロシュ社、マンハイム、ドイツ国)と、7.5μlの10mM dNTP混合物(インヴィトロジェン社、ペイズリー、イギリス国)と、3.75μlのハイファイ・エクスパンドDNAポリメラーゼ(ロシュ社、マンハイム、ドイツ国)を、273.75μlの無ヌクレアーゼ水に添加することにより、PCRマスター混合物を調製した。このマスター混合物を21.5μlのアリコートに分け、氷の上に載せた壁の薄い15本のPCR反応チューブの中に入れた。これらのチューブのうちの6本には、2.5μlのMuIgVH-3'逆転写反応混合物と、1.0μlの重鎖5'プライマーのプールHA〜HFを添加した(プライマーの配列とプライマーのプールの成分については図16参照)。別の7本のチューブには2.5μlのMuIgKVL-3'逆転写反応混合物と、1.0μlの軽鎖5'プライマーのプールLA〜LGを添加した(図15)。最後のチューブには、2.5μlのMuIgKVL-3'逆転写反応混合物と、1.0μlのλ軽鎖プライマーMuIgλVL5'-LIを添加した。これら反応物を熱サイクラーのブロックの中に入れ、2分間にわたって95℃に加熱した。94℃にて30秒間、55℃にて1分間、72℃にて30秒間というサイクルのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を40回実施した。最後に、PCR産物を72℃にて5分間にわたって加熱した後、4℃に維持した。
【0184】
pGEM-Tイージー・ベクター系I(プロメガ社、マディソン、ウィスコンシン州)キットを用いて増幅産物をクローニングしてpGEM-Tイージー・ベクターに入れ、配列を決定した。得られたVH配列とVL配列をそれぞれ図17と図18に示す。
【0185】
キメラ抗体を生成させるため、VH領域の遺伝子をプライマーOL334とOL335(図19)を用いてPCRによって増幅した。これらVH領域は、鋳型としてのcDNAクローンのうちの1つからのプラスミドDNAを用い、制限酵素部位5'MluIと3'HindIIIに入るように設計した。0.5mlのPCRチューブの中で、5μlの10×ハイファイ・エキスパンドPCR緩衝液(ロシュ社、マンハイム、ドイツ国)と、1.0μlの10mM dNTP混合物(インヴィトロジェン社、ペイズリー、イギリス国)と、0.5μlのプライマーOL330と、0.5μlのプライマーOL331と、1.0μlの鋳型DNAと、0.5μlのハイファイ・エキスパンドDNAポリメラーゼ(ロシュ社、マンハイム、ドイツ国)を41.5μlの無ヌクレアーゼ水に添加した。
【0186】
VL領域を同様の方法でオリゴヌクレオチドOL336とOL337(図20)を用いて増幅し、制限酵素部位BssHIIとBamHIに入れた。反応物を熱サイクラーのブロックの中に入れ、2分間にわたって95℃に加熱した。94℃にて30秒間、55℃にて1分間、及び72℃にて30秒間というサイクルのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を30回実施した。最後に、PCR産物を72℃にて5分間にわたって加熱した後、4℃に維持した。次に、VH領域とVL領域のPCR産物をクローニングし、それぞれベクターpANT15およびpANT13(図21)のそれぞれMluI/HindIII部位およびBssHII/BamHI部位に入れた。pANT15とpANT13の両方とも、pAT153をベースとしていてヒトIg発現カセットを含むプラスミドである。pANT15の重鎖カセットは、hCMVieプロモータによって駆動されるヒトゲノムIgG1定常領域遺伝子からなり、下流にヒトIgGポリA領域を持つ。pANT15は、SV40プロモータによって駆動されるハムスターのdhfr遺伝子も含んでいて、下流にSV40ポリA領域を持つ。pANT13の軽鎖カセットは、hCMVieプロモータによって駆動されるヒトゲノムκ定常領域からなり、下流に軽鎖ポリA領域を持つ。ヒトIgリーダー配列と定常領域の間のクローニング部位により、可変領域の遺伝子を挿入することができる。
【0187】
NS0細胞(ECACC 85110503、ポートン、イギリス国)を電気穿孔によってこれら2つのプラスミドとともにトランスフェクトし、DMEM(インヴィトロジェン社、ペイズリー、イギリス国)+5%FBS(超低IgG、カタログ番号16250-078、インヴィトロジェン社、ペイズリー、イギリス国)+ペニシリン/ストレプトマイシン(インヴィトロジェン社、ペイズリー、イギリス国)+100nMのメトトレキセート(シグマ社、プール、イギリス国)の中で選択した。メトトレキセート抵抗性コロニーを単離した後、1mlのHiTrap MabSelect SuReカラム(GEヘルスケア社、アマーシャム、イギリス国)を製造者が勧める条件に従って用い、抗体をプロテインAアフィニティ・クロマトグラフィによって精製した。
【0188】
ELISAをベースとした競合アッセイにおいて、ビオチンタグ・マイクロビオチニル化キット(シグマ社、プール、イギリス国)を用いてビオチン化したAR47A6.4.2マウス抗体を使用し、キメラ抗体を調べた。ビオチン化されたマウスのAR47A6.4.2を、さまざまな濃度の競合する抗体の存在下でOVCAR-3細胞と結合させた。OVCAR-3細胞を、組織培養処理した平底の96ウエルのプレートの中で集密に近い状態まで培養した後、固定した。ビオチン化されたマウスのAR47A6.4.2を1μg/mlまで希釈し、濃度が0〜5μg/mlの同体積の競合抗体と混合した。100μlの抗体混合物を、OVCAR-3で覆われたプレートのウエルに移し、室温にて1時間にわたってインキュベートした。プレートを洗浄し、(1:500に希釈した)ストレプトアビジン-HRP複合体(シグマ社、プール、イギリス国)とOPD基質(シグマ社、プール、イギリス国)を添加することにより、結合したビオチン化されたマウスのAR47A6.4.2を検出した。このアッセイ結果を暗所で5分間にわたって現像した後、3MのHClを添加することによって停止させた。次にMRX TCIIプレート読み取り機を用い、アッセイ・プレートの490nmにおける吸光度を読み取った。OVCAR-3細胞への結合について、キメラ抗体((ch)AR47A6.4.2)は、ビオチン化されたAR47A6.4.2抗体との競合においてマウスAR47A6.4.2抗体と同じであることがわかった。
【0189】
マウスAR47A6.4.2配列と、相同なヒトのVH配列およびVL配列とを比較することにより、ヒト化したVHとVLの配列を設計した。VH変異体の配列を図22に、VL変異体の配列を図23に示す。ヒト化V領域遺伝子を構成するにあたり、PCR用にマウスAR47A6.4.2のVHとVLの鋳型を利用し、互いに重なった長い複数のオリゴヌクレオチドを用いて相同なヒトのVH配列およびVL配列からのアミノ酸配列を導入した。ヒト化したVH配列とVL配列の変異体を生成させるのに用いたオリゴヌクレオチドをそれぞれ図19と図20に示す。アメリカ合衆国特許公開2004/260069(Hellendoorn、Carr、Baker)に詳細に記載されているようにして変異体遺伝子をクローニングし、発現ベクターpSVgptとpSVhygに直接入れた。
【0190】
ヒト化した重鎖と軽鎖のあらゆる組み合わせ(キメラ・コンストラクトを含む)を一時的にCHO-K1細胞(ECACC 85051005、ポートン、イギリス国)にトランスフェクトし、48時間後に上清を回収した。精製したヒトIgG1/κ(シグマ社、プール、イギリス国)を基準として使用し、IgG Fc/κELISAにより、その上清における抗体の発現を定量化した。1×PBS(pH7.4)の中に1:1500に希釈したマウス抗ヒトIgG Fc特異的抗体(I6260、シグマ社、プール、イギリス国)でイムノソーブ96ウエル・プレート(ナルゲ・ナンク社、ヒアフォード、イギリス国)を37℃にて1時間にわたって覆った。プレートをPBS+0.05%トゥイーン20の中で3回洗浄した後、サンプルと基準を2%BSA/PBSの中で希釈したものを添加した。プレートを室温にて1時間にわたってインキュベートした後、PBS/トゥイーンの中で3回洗浄し、2%BSA/PBSの中に1:1000に希釈した検出抗体ヤギ抗ヒトκ軽鎖ペルオキシダーゼ複合体(A7164、シグマ社、プール、イギリス国)を100μl/ウエルのの割合で添加した。プレートを室温にて1時間にわたってインキュベートした後、PBS/トゥイーンで5回洗浄した。結合した抗体を、OPD基質(シグマ社、プール、イギリス国)を用いて検出した。このアッセイ結果を暗所で5分間にわたって現像した後、3MのHClを添加することによって停止させた。次にMRX TCIIプレート読み取り機(ダイネックス・テクノロジーズ社、ワーシング、イギリス国)を用い、アッセイ・プレートの490nmにおける吸光度を読み取った。
【0191】
上記の競合結合ELISAにおいてヒト化変異体の結合を調べた。96ウエルの微量滴定プレートに固定されたOVCAR-3細胞への結合がマウスAR47A6.4.2と競合する精製キメラ抗体((ch)AR47A6.4.2)を用いて基準曲線を作った。ヤギ抗マウスIgG:HPR複合体(A2179、シグマ社、プール、イギリス国)をさまざまな濃度(156.25ng/ml〜5μg/ml)で用いてOVCAR-3細胞へのマウスAR47A6.4.2の結合を検出し、TMB基質(シグマ社、プール、イギリス国)を用いて現像した。それぞれの変異体について、キメラの基準曲線を用い、調べた濃度で予想される抑制率を計算し、実際の観測値と比較した。次に、さまざまな重鎖/軽鎖の組み合わせのそれぞれについて、試験サンプルの観測された抑制率を予想される抑制率で割ることによって結果を規格化した。したがって観測値/予想値の比=1.0であるサンプルはキメラ抗体と同じ結合親和性を持つのに対し、比>1.0は、TROP-2への結合が減っており、比<1.0のサンプルはTROP-2への結合が増大している。結果を図24に示す。
【0192】
VH遺伝子とVL遺伝子の組み合わせをクローニングして二重ベクターpANT18(pANT18ベクターは、すでに説明したプラスミドpANT15をベースとしていて、pANT13からの軽鎖カセットがクローニングされてSpeI/PciI制限酵素部位に入れられている)に入れ、電気穿孔によってCHO/dhfr細胞(ECACC、94090607)にトランスフェクトし、培地(高グルコースDMEM(インヴィトロジェン社、ペイズリー、イギリス国)にL-グルタミン+ピルビン酸Na+5%透析FBS(カタログ番号26400-044、インヴィトロジェン社、ペイズリー、イギリス国)+プロリン(シグマ社、プール、イギリス国)+ペニシリン/ストレプトマイシン(インヴィトロジェン社、ペイズリー、イギリス国)が含まれているが、ヒポキサンチンとチミジンが欠乏しているもの)の中で選択した。抗体を上記のプロテインAアフィニティ・クロマトグラフィによって精製した。精製した抗体を濾過殺菌した後、+4℃で(pH7.4のPBSの中に)貯蔵した。抗体の濃度は、上記のヒトIgG1/κ捕獲ELISAによって計算した。
【0193】
精製した抗体サンプルのうちの4つに関し、ヒトTROP-2を発現しているOVCAR-3細胞への結合を上記の競合ELISAで調べた。さまざまな濃度の各抗体(156ng/ml〜5μg/ml)を精製したマウスAR47A6.4.2と混合し、固定されたOVCAR-3細胞で被覆された微量滴定プレートに添加した。上記のヤギ抗マウスIgG(Fc):HRP複合体を用いてマウスAR47A6.4.2の結合を検出した。450nmでの吸光度をプレート読取装置で測定し、試験抗体の濃度に対してプロットした。選択した変異体がOVCAR-3細胞へのマウスAR47A6.4.2の結合を50%抑制するのに必要な濃度(IC50)を計算し、キメラ抗体と比較した。
【0194】
4種類のヒト化抗体変異体とキメラ抗体のIC50は以下の通りである:
(ch)AR47A6.4.2 =1.71μg/ml
(hu)AR47A6.4.2変異体HV2/KV3=2.24μg/ml
(hu)AR47A6.4.2変異体HV2/KV4=3.04μg/ml
(hu)AR47A6.4.2変異体HV3/KV3=2.04μg/ml
(hu)AR47A6.4.2変異体HV3/KV4=1.02μg/ml。
【実施例9】
【0195】
rhTROP-2に対するAR47A6.4.2と(hu)AR47A6.4.2の結合親和性の決定
【0196】
AR47A6.4.2、(hu)AR47A6.4.2変異体HV2/KV3、(hu)AR47A6.4.2変異体HV2/KV4、(hu)AR47A6.4.2変異体HV3/KV3、及び(hu)AR47A6.4.2変異体HV3/KV4の結合親和性を、組み換えヒトTROP-2(rhTROP-2)に結合させた後にそれぞれの解離定数(KD)を決定することによって比較した。
【0197】
標準的なアミン・カップリング手続きを利用し、抗ポリヒスチジン・モノクローナル抗体(R&Dシステムズ社、ミネアポリス、ミネソタ州)を固定化した。0.4MのEDCと0.1MのNHSの1:1混合物を104μl(流速10μl/分)注入することによってCM5センサー・チップ(GEヘルスケア社、ピスカタウェイ、ニュージャージー州、アメリカ合衆国。以前のバイアコア社)の表面を活性化した。(10mMの酢酸ナトリウム(pH5.5)で希釈した)抗ポリヒスチジン抗体を20μg/mlの濃度で注入して約2000RUにした。最後に119μlの1.0Mエタノールアミン-HCl(pH8.5)を表面に注入し、センサー・チップの表面上の占拠されていないすべての活性化部位をブロックした。HISタグを付けたrhTROP-2(R&Dシステムズ社、ミネアポリス、ミネソタ州)を1μg/ml注入し、チップの表面上のHISタグに捕獲させた後、R47A6.4.2、(hu)AR47A6.4.2変異体HV2/KV3、(hu)AR47A6.4.2変異体HV2/KV4、(hu)AR47A6.4.2変異体HV3/KV3、(hu)AR47A6.4.2変異体HV3/KV4を注入した。その後の注入のためにセンサー・チップの表面を再生する操作は、10mMのグリシン-HCl(pH2.0)を流速50μl/分で60秒間注入することによって実現した。抗体をランニング緩衝液(HBS-EP+、GEヘルスケア社、ピスカタウェイ、ニュージャージー州、アメリカ合衆国。以前のバイアコア社)の中で希釈し、0.67〜333nMの範囲の濃度で順番に注入し、表面を各サイクルの間に再生させた。対照として、各濃度の抗体も、表面に固定化した抗ポリヒスチジン抗体を有するが、rhTROP-2は捕獲されていない参照表面に注入した。バイアコアT100評価ソフトウエアのバージョン1.1を利用し、得られたセンサーグラムについて単純な1:1相互作用モデルで動的分析を行なった。会合と解離の速度定数の測定値を利用して抗体のKDを計算した。実験は、バイアコアT100システム(GEヘルスケア社、ピスカタウェイ、ニュージャージー州、アメリカ合衆国。以前のバイアコア社)を用いて実施した。実験結果から、マウスAR47A6.4.2では3.03nMが得られたのに対し、4種類の(hu)AR47A6.4.2では0.613〜0.697nMであった(図25)。これは、すべての抗体がナノモル〜ナノモル未満の範囲であることと、ヒト化抗体の親和性が親であるマウスAR47A6.4.2の親和性よりも大きいことを示している。会合速度定数(Ka)と解離速度定数(Kd)も表に示してある(図25)。
【実施例10】
【0198】
競合バインダの単離
【0199】
当業者は、抗体が1つ与えられると、その抗体を競合的に抑制するCDMAB(例えば競合抗体)を生成させることができる(Belanger, L.他、Clinica Chimica Acta、第48巻、15〜18ページ、1973年)。このCDMABは、同じエピトープを認識する抗体である。1つの方法では、抗体が認識する抗原を発現する免疫原を用いて免疫化する。サンプルは、組織、単離されたタンパク質、細胞系などを含んでいてもよい。得られるハイブリドーマは、競合アッセイを利用してスクリーニングできよう。競合アッセイは、試験抗体の結合を抑制する抗体を同定するELISA、FACS、ウエスタン・ブロッティングなどの方法の1つである。別の方法では、ファージ提示抗体ライブラリを利用して、抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する抗体を選別する(Rubinstein, J.L.他、Anal Biochem、第314巻、294〜300ページ、2003年)。どちらの場合にも、抗体は、標的抗原の少なくとも1つのエピトープに対する標識された元の抗体の結合に取って代わる能力に基づいて選択される。したがってこのような抗体は、元の抗体のように抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する特性を有するであろう。
【実施例11】
【0200】
AR47A6.4.2モノクローナル抗体の可変領域のクローニング
【0201】
AR47A6.4.2ハイブリドーマ細胞系が産生するモノクローナル抗体の重鎖(VH)と軽鎖(VL)からの可変領域の配列は、(アメリカ合衆国特許出願シリアル番号11/709,676に開示されているように)以前に決定された。キメラIgGとヒト化IgGを生成させるため、(上記の実施例8に開示されているようにして)可変軽鎖ドメインと可変重鎖ドメインをサブクローニングして適切な発現ベクターに入れることができる。
【0202】
別の一実施態様では、AR47A6.4.2、またはその脱免疫化されたもの、キメラ形態のもの、ヒト化されたものを、抗体をコードしている核酸をトランスジェニック動物の中で発現させることによって作る。その結果として抗体が発現され、その抗体を回収することができる。例えば抗体は、回収と精製が容易になる組織特異的なやり方で発現させることができる。そのような一実施態様では、本発明の抗体は乳腺で発現し、授乳の間に分泌される。トランスジェニック動物として、マウス、ヤギ、及びウサギなどがあるが、これだけに限定されない。
【0203】
(i)モノクローナル抗体
【0204】
(アメリカ合衆国特許出願シリアル番号11/709,676に開示されている)モノクローナル抗体をコードしているDNAは、従来法(例えばモノクローナル抗体の重鎖と軽鎖をコードしている遺伝子に特異的に結合するオリゴヌクレオチド・プローブ)を利用して容易に単離して配列を明らかにすることができる。ハイブリドーマ細胞はそのようなDNAの好ましい供給源として機能する。DNAは、一度単離されると発現ベクターの中に入れることができ、今度はその発現ベクターを宿主細胞(例えば大腸菌細胞、サルのCOS細胞、チャイニーズ・ハムスターの卵巣(CHO)細胞、ミエローマ細胞)にトランスフェクトし、その組み換え宿主細胞の中でモノクローナル抗体を合成させる(発現ベクターをトランスフェクトしなければその組み換え宿主細胞が免疫グロブリン・タンパク質を産生することはない)。DNAは、例えばヒト重鎖と軽鎖の定常領域のコード配列を相同なマウス配列の代わりに用いて変更することができる。キメラ抗体またはハイブリッド抗体も、合成タンパク質化学で知られている方法(例えば架橋剤の使用を含む方法)を利用して試験管内で調製することができる。免疫毒素は、例えばジスルフィド交換反応を利用して、またはチオエーテル結合を形成することにより、構成することができる。この目的に適した試薬の例として、イミノチオレートやメチル-4-メルカプトブチルイミデートなどがある。
【0205】
(ii)ヒト化抗体
【0206】
ヒト化抗体は、非ヒト供給源からの1つ以上のアミノ酸残基が導入されている。その非ヒトアミノ酸残基は、“輸入”残基と呼ばれることがしばしばあり、その残基は“輸入”可変領域から取られることが一般的である。ヒト化は、Winterとその共同研究者の方法を利用して囓歯類のCDRまたはCDR配列を対応するヒト抗体の配列で置換することによって実現できる(Jones他、Nature、第321巻、522〜525ページ、1986年;Riechmann他、Nature、第332巻、323〜327ページ、1988年;Verhoeyen他、Science、第239巻、1534〜1536ページ、1988年;Clark、Immunol. Today、第21巻、397〜402ページ、2000年の概説)。
【0207】
ヒト化抗体は、親配列とヒト化配列の三次元モデルを用いて親配列とさまざまな理論的ヒト化産物を分析することによって調製できる。三次元免疫グロブリン・モデルが一般に利用可能であり、当業者はそのモデルに馴染みがある。選択された候補免疫グロブリン配列の可能な三次元コンホメーション構造を描いて表示するコンピュータ・プログラムが利用できる。その表示を検討することで、その候補免疫グロブリン配列が機能する際の残基の可能な役割を分析すること、すなわちその候補免疫グロブリンが抗原に結合する能力に影響を与える残基を分析することができる。このようにして、FR残基をコンセンサス配列と輸入配列から選択して組み合わせ、望む抗体特性(例えば標的抗原に対する親和性の増大)を実現する。一般に、CDR残基は、抗原の結合に影響を与えるのに直接的かつ実質的に最も関与する。
【0208】
(iii)抗体フラグメント
【0209】
抗体フラグメントを作るのにさまざまな方法が開発されている。抗体フラグメントは、組み換え宿主細胞によって産生させることができる(Hudson、Curr. Opin. Immunol.、第11巻、548〜557ページ;Little他、Immunol. Today、第21巻、364〜370ページ、2000年に概説がある)。例えばFab'-SHフラグメントは大腸菌から直接回収することができ、化学的にカップルさせてF(ab')2フラグメントを形成する(Carter他、Biotechnology、第10巻、163〜167ページ、1992年)。別の一実施態様では、F(ab')2は、F(ab')2分子が組み立てられるのを促進するロイシン・ジッパーGCN4を用いて形成される。別の1つの方法によれば、Fv、Fab、F(ab')2という各フラグメントは、組み換え宿主細胞培養物から直接単離することができる。
【実施例12】
【0210】
本発明の抗体を含む組成物
【0211】
がんを予防/治療するための組成物として本発明の抗体を用いることができる。がんを予防/治療するためのこの組成物は本発明の抗体を含んでおり、そのまま液体調製物の形態で投与することや、ヒトまたは哺乳動物(例えばラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に適した調製物の医薬組成物として、経口または非経口(例えば静脈内、腹腔内、皮下など)で投与することができる。本発明の抗体は、そのままで、または適切な組成物として投与することができる。投与に用いる組成物は、本発明の抗体またはその塩にとって薬理学的に許容可能な基剤、希釈剤、賦形剤を含むことができる。このような組成物は、経口投与または非経口投与に適した医薬調製物の形態で提供される。
【0212】
非経口投与のための組成物の例は、注射可能な調製物、座薬などである。注射可能な調製物には、静脈内注射液、皮下注射液、皮内注射液、筋肉内注射液、点滴液、関節内注射液などの投与形態が含まれる。注射可能な調製物は公知の方法によって調製できる。注射可能な調製物は、例えば本発明の抗体またはその塩を、注射で通常用いられる無菌の水性媒体または油性媒体の中に溶かすこと、または懸濁させること、または乳化することによって調製できる。注射用の水性媒体として、例えば生理食塩水や、グルコースと他の助剤を含む等張溶液などがあり、これらは、適切な可溶剤(アルコール(例えばエタノール)、ポリアルコール(例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例えばポリソルベート80、水素化したヒマシ油のHCO-50(ポリオキシエチレン(50モル))付加物など)と組み合わせて使用できる。油性媒体としては、例えばゴマ油、ダイズ油などが使用され、これらは可溶剤(例えば安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなど)と組み合わせて使用することができる。このようにして調製された注射液は、通常は適切なアンプルに充填される。直腸投与に用いられる座薬は、本発明の抗体またはその塩を従来からある座薬用ベースと混合することによって調製できる。経口投与用の組成物としては固体または液体の調製物があり、特に錠剤(ドラジェやフィルムで包まれた錠剤を含む)、ピル、顆粒、粉末調製物、カプセル(軟質カプセルを含む)、シロップ、エマルジョン、懸濁液などが挙げられる。このような組成物は公知の方法で製造され、医薬調製物の分野で従来から使用されているビヒクル、希釈剤、又は賦形剤を含むことができる。錠剤用のビヒクルまたは賦形剤の例は、ラクトース、デンプン、スクロース、ステアリン酸マグネシウムなどである。
【0213】
経口または非経口で用いる上記の組成物は、活性成分の1回用量に適した単位用量の医薬調製物にされることが望ましい。そのような単位用量調製物として、例えば錠剤、ピル、カプセル、注射物(アンプル)、座薬などがある。含まれる上記化合物の量は、一般に、単位用量の形態1つにつき5〜500mgである。上記の抗体は、約5〜約100mgが特に注射物の形態で含まれることが好ましく、他の形態では10〜250mgが含まれることが好ましい。
【0214】
本発明の抗体を含む上記の予防/治療剤または調節剤の用量は、投与する対象、標的とする疾患、状態、投与経路などによって異なる可能性がある。例えば成人の乳がんの治療/予防を目的として用いるときには、本発明の抗体を体重1kg当たり約0.01〜約20mgの用量(約0.1〜約10mgが好ましく、約0.1〜約5mgがより好ましい)で1日に約1〜5回(約1〜3回が好ましい)投与することが有利である。他の非経口投与と経口投与では、薬剤は、上記の用量に対応する用量で投与することができる。状態が特に厳しいときには、用量をその状態に応じて増やすことができる。
【0215】
本発明の抗体は、そのままで、または適切な組成物の形態で投与することができる。投与に用いる組成物は、上記の抗体にとって薬理学的に許容可能な基剤またはその塩、希釈剤、又は賦形剤を含んでいてもよい。このような組成物は、経口投与または非経口投与(例えば静脈内注射、皮下注射など)に適した医薬調製物の形態で提供される。上記の各組成物はさらに、他の活性成分も含んでいてよい。さらに、本発明の抗体は、他の薬と組み合わせて使用することができる。そのような薬として、例えばアルキル化剤(例えばシクロホスファミド、イホスファミドなど)、代謝アンタゴニスト(例えばメトトレキセート、5-フルオロウラシルなど)、抗腫瘍抗生物質(例えばマイトマイシン、アドリアマイシンなど)、植物由来の抗腫瘍剤(例えばビンクリスチン、ビンデシン、タキソールなど)、シスプラチン、カルボプラチン、エトポシド、イリノテカンなどがある。本発明の抗体とこれらの薬は、患者に同時に投与すること、または時間をずらして投与することができる。
【0216】
この明細書に記載した治療法、その中でも特にがんの治療法は、他の抗体または化学療法剤の投与と合わせて実施することもできる。例えば特に大腸がんを治療するとき、EGFRに対する抗体(例えばアービタックス(登録商標)(セツキシマブ))を投与することができる。アービタックス(登録商標)は、乾癬の治療にも有効であることがわかっている。組み合わせて使用する他の抗体として、特に乳がんを治療するときのハーセプチン(登録商標)(トラスツズマブ)、特に大腸がんを治療するときのアバスチン(登録商標)、特に非小細胞肺がんを治療するときのSGN-15がある。本発明の抗体を他の抗体/化学療法剤と組み合わせた投与は、同じ経路または別の経路で同時に、または別々に行なうことができる。
【0217】
化学療法剤/他の抗体を用いて治療計画には、患者の疾患を治療するのに最適であると考えられるあらゆる治療計画が含まれる。悪性腫瘍の種類が異なれば特異的な抗腫瘍抗体と特異的な化学療法剤を必要とする可能性があり、それが患者ごとに決定されることになる。本発明の好ましい一実施態様では、化学療法を抗体療法と同時に、または抗体療法の後に実施するが、後者が好ましい。しかし本発明が特定の方法または投与経路に限定されないことを強調する必要がある。
【0218】
有力な証拠から、AR47A6.4.2が抗がん効果を媒介していて、TROP-2の表面に存在するエピトープとの結合を通じて生存期間が延びることがわかる。(アメリカ合衆国特許特許出願11/709,676に開示されているように)発現細胞(例えばMDA-MB-231細胞)からコグネイト抗原を免疫沈降させるのにAR47A6.4.2抗体を使用できることが以前に示されている。さらに、FACS、細胞ELISA、IHCなどによって示される方法を利用し、AR47A6.4.2、キメラAR47A6.4.2((ch)AR47A6.4.2)、又はヒト化変異体((hu)AR47A6.4.2)を使用して、これらに特異的に結合するTROP-2抗原部分を発現する細胞および/または組織を検出できることを示せるであろう。
【0219】
AR47A6.4.2抗体と同様、他の抗TROP-2抗体も、TROP-2抗原の他の形態を免疫沈降させて単離するのに使用できよう。この抗原は、この抗原を発現する細胞または組織にこれらの抗体が結合するのを同じタイプのアッセイを利用して抑制するのに用いることもできる。
【0220】
【表1】
【0221】
この明細書で言及したあらゆる特許と刊行物は、本発明が関係する当業者のレベルを示すものである。この明細書に記載したあらゆる特許と刊行物は、個々の刊行物が特別かつ個別に指示されて参考として組み込まれているかのようにして、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする。
【0222】
本発明のある1つの形態を示してあるが、本発明がここに説明したり示したりした部分の特定の形態または配置に限定されないことを理解されたい。当業者には、本発明の範囲を逸脱することなくさまざまな変更が可能であること、そして本発明がこの明細書に示したり説明したりしたものに限定されるとは見なされないことは明らかであろう。当業者であれば、本発明が、目標を実現するのによく適していること、そして記載してある目的と利点、ならびに固有の目的と利点を得るのによく適していることが容易に理解できよう。この明細書に記載したあらゆるオリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、生物関連化合物、方法、手続き、及び技術は、現在の好ましい実施態様の代表であって例示であることを意図しており、本発明の範囲を制限することは意図していない。本発明の精神に含まれていて添付の請求項の範囲によって規定される変更や他の用途が当業者には思い浮かぶであろう。本発明を特に好ましい実施態様に関して説明してきたが、請求項の本発明がそのような特別な実施態様に限定されるはずはないことを理解すべきである。実際、本発明を実施するために説明した態様のさまざまな変更で当業者に明らかなものは、以下の請求項の範囲に含まれるものとする。
【表2】
【表3】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物において、ヒトの膵臓、乳房、前立腺、卵巣、又は大腸の腫瘍を小さくする方法であって、前記ヒトの膵臓、乳房、前立腺、卵巣、又は大腸の腫瘍が、IDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマ細胞系によって産生されて単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMABに特異的に結合する抗原の少なくとも1種類のエピトープを発現していて、前記CDMABが、前記単離されたモノクローナル抗体がそのモノクローナル抗体の標的となる抗原に結合するのを競合的に抑制する能力によって特徴づけられる場合に、前記哺乳動物に、前記モノクローナル抗体またはそのCDMABを、前記哺乳動物の膵臓、乳房、前立腺、卵巣、又は大腸の腫瘍の腫瘍組織量を減らすのに有効な量投与する操作を含む方法。
【請求項2】
前記単離されたモノクローナル抗体を細胞傷害作用部分と結合させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞傷害作用部分が放射性同位体である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMABが補体を活性化する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMABが、抗体依存性細胞傷害作用を媒介する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記単離されたモノクローナル抗体が、IDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体のヒト化抗体、または前記ヒト化抗体から生成された抗原結合フラグメントである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記単離されたモノクローナル抗体が、IDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体のキメラ抗体、または前記キメラ抗体から生成された抗原結合フラグメントである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
哺乳動物において、抗体によって誘導される細胞傷害作用に感受性のあるヒトの膵臓、乳房、前立腺、卵巣、又は大腸の腫瘍を小さくする方法であって、前記ヒトの膵臓、乳房、前立腺、卵巣瘍、又は大腸の腫瘍が、IDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマ細胞系によって産生されて単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMABに特異的に結合する抗原の少なくとも1種類のエピトープを発現していて、前記CDMABが、前記単離されたモノクローナル抗体がそのモノクローナル抗体の標的となる抗原に結合するのを競合的に抑制する能力によって特徴づけられる場合に、前記哺乳動物に、前記モノクローナル抗体またはそのCDMABを、前記哺乳動物の膵臓、乳房、前立腺、卵巣、又は大腸の腫瘍の腫瘍組織量を減らすのに有効な量投与する操作を含む方法。
【請求項9】
前記単離されたモノクローナル抗体を細胞傷害作用部分と結合させる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞傷害作用部分が放射性同位体である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMABが補体を活性化する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMABが、抗体依存性細胞傷害作用を媒介する、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記単離されたモノクローナル抗体が、IDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体のヒト化抗体、またはそのヒト化抗体から生成された抗原結合フラグメントである、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記単離されたモノクローナル抗体が、IDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体のキメラ抗体、またはそのキメラ抗体から生成された抗原結合フラグメントである、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
哺乳動物において、ヒトの膵臓、乳房、前立腺、卵巣、又は大腸の腫瘍を小さくする方法であって、前記ヒトの膵臓、乳房、前立腺、卵巣、又は大腸の腫瘍が、IDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマ細胞系によって産生されて単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMABに特異的に結合する抗原の少なくとも1種類のエピトープを発現していて、前記CDMABが、前記単離されたモノクローナル抗体がそのモノクローナル抗体の標的となる抗原に結合するのを競合的に抑制する能力によって特徴づけられる場合に、前記哺乳動物に、前記モノクローナル抗体またはそのCDMABを、少なくとも1種類の化学療法剤と組み合わせ、その哺乳動物の膵臓、乳房、前立腺、卵巣、又は大腸の腫瘍の腫瘍組織量を減らすのに有効な量投与する操作を含む方法。
【請求項16】
前記単離されたモノクローナル抗体を細胞傷害作用部分と結合させる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記細胞傷害作用部分が放射性同位体である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMABが補体を活性化する、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMABが、抗体依存性細胞傷害作用を媒介する、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記単離されたモノクローナル抗体が、IDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体のヒト化抗体、またはそのヒト化抗体から生成された抗原結合フラグメントである、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記単離されたモノクローナル抗体が、IDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体のキメラ抗体、またはそのキメラ抗体から生成された抗原結合フラグメントである、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
ヒトの膵臓、乳房、前立腺、卵巣、又は大腸の腫瘍の体積を小さくするためのモノクローナル抗体の使用であって、前記ヒトの膵臓、乳房、前立腺、卵巣、又は大腸の腫瘍が、IDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMABに特異的に結合する抗原の少なくとも1種類のエピトープを発現していて、前記CDMABが、前記単離されたモノクローナル抗体がそのモノクローナル抗体の標的となる抗原に結合するのを競合的に抑制する能力によって特徴づけられる場合に、前記哺乳動物に、前記モノクローナル抗体またはそのCDMABを、その哺乳動物のヒトの膵臓、乳房、前立腺、卵巣、又は大腸の腫瘍の腫瘍組織量を減らすのに有効な量投与する操作を含む使用。
【請求項23】
前記単離されたモノクローナル抗体を細胞傷害作用部分と結合させる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記細胞傷害作用部分が放射性同位体である、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
前記単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMABが補体を活性化する、請求項22に記載の使用。
【請求項26】
前記単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMABが、抗体依存性細胞傷害作用を媒介する、請求項22に記載の使用。
【請求項27】
前記単離されたモノクローナル抗体が、IDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体のヒト化抗体である、請求項22に記載の使用。
【請求項28】
前記単離されたモノクローナル抗体が、IDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体のキメラ抗体である、請求項22に記載の使用。
【請求項29】
ヒトの膵臓、乳房、前立腺、卵巣、又は大腸の腫瘍の体積を小さくするためのモノクローナル抗体の使用であって、前記ヒト膵臓腫瘍、ヒト乳房腫瘍、ヒト前立腺腫瘍、ヒト卵巣腫瘍、又はヒト大腸腫瘍が、IDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMABに特異的に結合する抗原の少なくとも1種類のエピトープを発現していて、前記CDMABが、前記単離されたモノクローナル抗体がそのモノクローナル抗体の標的となる抗原に結合するのを競合的に抑制する能力によって特徴づけられる場合に、前記哺乳動物に、前記モノクローナル抗体またはそのCDMABを、少なくとも1種類の化学療法剤と組み合わせ、前記哺乳動物のヒトの膵臓、乳房、前立腺、卵巣、又は大腸の腫瘍の腫瘍組織量を減らすのに有効な量投与する操作を含む使用。
【請求項30】
前記単離されたモノクローナル抗体を細胞傷害作用部分と結合させる、請求項29に記載の使用。
【請求項31】
前記細胞傷害作用部分が放射性同位体である、請求項30に記載の使用。
【請求項32】
前記単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMABが補体を活性化する、請求項29に記載の使用。
【請求項33】
前記単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMABが、抗体依存性細胞傷害作用を媒介する、請求項29に記載の使用。
【請求項34】
前記単離されたモノクローナル抗体が、IDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体のヒト化抗体である、請求項29に記載の使用。
【請求項35】
前記単離されたモノクローナル抗体が、IDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマ細胞系によって産生されて単離されたモノクローナル抗体のキメラ抗体である、請求項29に記載の使用。
【請求項36】
IDAC受託番号141205-05を持つハイブリドーマ細胞系AR47A6.4.2によって産生されて単離されたモノクローナル抗体が特異的に結合するヒトTROP-2抗原の少なくとも1種類のエピトープを発現しているヒトの乳房、膵臓、卵巣、前立腺、又は大腸の腫瘍の体積を小さくする方法であって、
前記ヒト腫瘍に苦しんでいる個人に、IDAC受託番号141205-05を持つハイブリドーマ細胞系AR47A6.4.2によって産生されて単離された前記モノクローナル抗体が結合するのと同じ1つまたは複数のエピトープと結合する少なくとも1種類の単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMABを投与する操作を含んでいて;
前記1つまたは複数のエピトープが結合する結果として、乳房、膵臓、卵巣、前立腺、又は大腸の腫瘍の腫瘍組織量が減る方法。
【請求項37】
IDAC受託番号141205-05を持つハイブリドーマ細胞系AR47A6.4.2によって産生されて単離されたモノクローナル抗体が特異的に結合するヒトTROP-2抗原の少なくとも1種類のエピトープを発現しているヒトの乳房、膵臓、卵巣、前立腺、又は大腸の腫瘍の体積を小さくする方法であって、
前記ヒト腫瘍に苦しんでいる個人に、IDAC受託番号141205-05を持つハイブリドーマ細胞系AR47A6.4.2によって産生されて単離された前記モノクローナル抗体が結合するのと同じ1つまたは複数のエピトープと結合する少なくとも1種類の単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMABを、少なくとも1種類の化学療法剤と組み合わせて投与する操作を含んでいて;
その投与の結果として腫瘍組織量が減る方法。
【請求項38】
IDAC受託番号141205-05を持つハイブリドーマ細胞系AR47A6.4.2によって産生されて単離されたモノクローナル抗体、またはIDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマ細胞系によって産生されて単離されたモノクローナル抗体のヒト化抗体、またはIDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマ細胞系によって産生されて単離されたモノクローナル抗体のキメラ抗体が特異的に結合するヒト腫瘍から選択された組織サンプル中にがん性細胞が存在していることを判定する結合アッセイであって、
前記ヒト腫瘍からの組織サンプルを用意し;
前記単離されたモノクローナル抗体、前記ヒト化抗体、前記キメラ抗体、又はこれら抗体のCDMABの中から、IDAC受託番号141205-05を持つハイブリドーマ細胞系AR47A6.4.2によって産生されて単離されたモノクローナル抗体が認識するのと同じ1つまたは複数のエピトープを認識するものを少なくとも1種類用意し;
用意した前記少なくとも1種類の抗体またはCDMABを前記組織サンプルと接触させ;前記少なくとも1種類の抗体またはCDMABと前記組織サンプルの結合を判定する操作を含んでいて;
そのことによって前記組織サンプル中に前記がん性細胞の存在が示されるアッセイ。
【請求項39】
IDAC受託番号141205-05を持つハイブリドーマ細胞系AR47A6.4.2によって産生されて単離されたモノクローナル抗体、またはIDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマ細胞系によって産生されて単離されたモノクローナル抗体のヒト化抗体、またはIDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマ細胞系によって産生されて単離されたモノクローナル抗体のキメラ抗体が特異的に認識するTROP-2を発現している細胞の存在を判定する結合アッセイであって、
細胞サンプルを用意し;
IDAC受託番号141205-05を持つハイブリドーマ細胞系AR47A6.4.2によって産生されて単離された前記モノクローナル抗体、前記ヒト化抗体、前記キメラ抗体、又はこれら抗体のCDMABを用意し;
前記単離されたモノクローナル抗体または前記抗原結合フラグメントを前記細胞サンプルと接触させ;
前記単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMABと前記細胞サンプルの結合を判定する操作を含んでいて、
そのことによって前記単離されたモノクローナル抗体または前記CDMABに特異的に結合するTROP-2の抗原を発現する細胞の存在を判定するアッセイ。
【請求項40】
細胞の表面にTROP-2の少なくとも1つのエピトープを発現していて、その少なくとも1つのエピトープに、IDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体、または前記単離されたモノクローナル抗体から生成された抗原結合フラグメントが結合するときに細胞傷害作用が起こるがん性細胞に補体依存性細胞傷害作用を誘導する方法であって、
IDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体、または前記単離されたモノクローナル抗体から生成された抗原結合フラグメントを用意し、及び
前記がん性細胞を前記単離されたモノクローナル抗体または前記抗原結合フラグメントと接触させる操作を含んでいて;
そのことによって前記単離されたモノクローナル抗体または前記抗原結合フラグメントがTROP-2の前記少なくとも1つのエピトープと結合する結果として細胞傷害作用が発生する方法。
【請求項41】
前記単離されたモノクローナル抗体を細胞傷害作用部分と結合させる、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記細胞傷害作用部分が放射性同位体である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記単離されたモノクローナル抗体が補体を活性化する、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記単離されたモノクローナル抗体が細胞傷害作用を媒介する、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
前記モノクローナル抗体が、IDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体のヒト化抗体、またはそのヒト化抗体から生成された抗原結合フラグメントである、請求項40に記載の方法。
【請求項46】
前記モノクローナル抗体が、IDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体のキメラ抗体、またはそのキメラ抗体から生成された抗原結合フラグメントである、請求項40に記載の方法。
【請求項47】
細胞の表面にTROP-2の少なくとも1つのエピトープを発現していて、その少なくとも1つのエピトープに、IDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体、または前記単離されたモノクローナル抗体から生成された抗原結合フラグメントが結合するときに細胞傷害作用が起こるがん性細胞に補体依存性細胞傷害作用を誘導する方法であって、
IDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体、または前記単離されたモノクローナル抗体から生成された抗原結合フラグメントがTROP-2の前記少なくとも1つのエピトープに結合するのを競合的に抑制する単離されたモノクローナル抗体であって、TROP-2の前記少なくとも1つのエピトープに結合したときに細胞傷害作用を起こす単離されたモノクローナル抗体を用意し;
前記がん性細胞を、ハイブリドーマによって産生されて単離された前記モノクローナル抗体または前記抗原結合フラグメントと接触させる操作を含んでいて;
そのことによってハイブリドーマによって産生されて単離された前記モノクローナル抗体または前記抗原結合フラグメントがTROP-2の前記少なくとも1つのエピトープと結合する結果として細胞傷害作用が発生する方法。
【請求項48】
IDAC受託番号141205-05として寄託されたハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体と同じ1つまたは複数のエピトープと特異的に結合するモノクローナル抗体。
【請求項49】
単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMABであって、ヒトTROP-2に特異的に結合し、その単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMABは、IDAC受託番号141205-05を持つハイブリドーマ細胞系AR47A6.4.2によって産生されて単離されたモノクローナル抗体と同じヒトTROP-2の1つまたは複数のエピトープと反応し;前記単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMABは、前記モノクローナル抗体が、そのモノクローナル抗体の標的ヒトTROP-2抗原に結合するのを競合的に抑制する能力によって特徴づけられる、単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMAB。
【請求項50】
単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMABであって、IDAC受託番号141205-05を持つハイブリドーマ細胞系AR47A6.4.2によって産生されて単離されたそのモノクローナル抗体によって認識されるのと同じ1つまたは複数のエピトープを認識し;前記モノクローナル抗体またはそのCDMABは、単離された前記モノクローナル抗体が、そのモノクローナル抗体の標的となる1つまたは複数のエピトープに結合するのを競合的に抑制する能力によって特徴づけられる、単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMAB。
【請求項51】
IDAC受託番号141205-05を持つハイブリドーマ細胞系AR47A6.4.2によって産生されて単離されたモノクローナル抗体と同じヒトTROP-2の1つまたは複数のエピトープと特異的に結合し、
配列番号1、配列番号2、及び配列番号3の相補性決定領域アミノ酸配列を含む重鎖可変領域と;配列番号4、配列番号5、又は配列番号6の相補性決定領域アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含むヒト化抗体;
またはそのヒトTROP-2結合フラグメント。
【請求項52】
IDAC受託番号141205-05を持つハイブリドーマ細胞系AR47A6.4.2によって産生されて単離されたモノクローナル抗体と同じヒトTROP-2の1つまたは複数のエピトープと特異的に結合し、
配列番号1、配列番号2、及び配列番号3の相補性決定領域アミノ酸配列を含む重鎖可変領域と;配列番号4、配列番号5、又は配列番号6の相補性決定領域アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と;ヒト抗体またはヒト抗体コンセンサス・フレームワークの重鎖と軽鎖からの可変領域フレームワーク領域とを含むヒト化抗体;
またはそのヒトTROP-2結合フラグメント。
【請求項53】
前記モノクローナル抗体が配列番号7の重鎖可変領域アミノ酸配列と、配列番号8の中から選択された軽鎖可変領域アミノ酸配列とを含んでいて、ヒトTROP-2に特異的に結合するヒト化抗体、
またはそのヒトTROP-2結合フラグメント。
【請求項54】
前記モノクローナル抗体が配列番号7の重鎖可変領域アミノ酸配列と、配列番号9の中から選択された軽鎖可変領域アミノ酸配列とを含んでいて、ヒトTROP-2に特異的に結合するヒト化抗体、
またはそのヒトTROP-2結合フラグメント。
【請求項55】
前記モノクローナル抗体が配列番号10の重鎖可変領域アミノ酸配列と、配列番号8の中から選択された軽鎖可変領域アミノ酸配列とを含んでいて、ヒトTROP-2に特異的に結合するヒト化抗体、
またはそのヒトTROP-2結合フラグメント。
【請求項56】
前記モノクローナル抗体が配列番号10の重鎖可変領域アミノ酸配列と、配列番号9の中から選択された軽鎖可変領域アミノ酸配列とを含んでいて、ヒトTROP-2に特異的に結合するヒト化抗体、
またはそのヒトTROP-2結合フラグメント。
【請求項57】
ヒトの膵臓、前立腺、卵巣、乳房、又は大腸の腫瘍を治療するのに有効な組成物であって、
請求項1、2、3、6、7、8、17、49、50、54、55、又は56いずれか1項に記載の抗体またはCDMABと;
その抗体またはその抗原結合フラグメントと、細胞傷害作用部分、酵素、放射性化合物、サイトカイン、インターフェロン、標的部分、レポーター部分、及び造血細胞からなるグループの中から選択したメンバーとの複合体と;
必要量の薬理学的に許容可能な担体とを組み合わせて含んでいて;
前記組成物が、ヒトの前記膵臓、乳房、前立腺、卵巣、又は大腸の腫瘍を治療するのに有効である組成物。
【請求項58】
ヒトの膵臓、前立腺、卵巣、乳房、又は大腸の腫瘍を治療するのに有効な組成物であって、
請求項1、2、3、6、7、8、17、49、50、54、55、又は56いずれか1項に記載の抗体またはCDMABと;必要量の薬理学的に許容可能な担体とを組み合わせて含んでいて;
前記組成物が、ヒトの前記膵臓、乳房、前立腺、卵巣、又は大腸の腫瘍を治療するのに有効である組成物。
【請求項59】
ヒトの膵臓、乳房、前立腺、卵巣、又は大腸の腫瘍を治療するのに有効な組成物であって、
請求項1、2、3、6、7、8、17、49、50、54、55、又は56いずれか1項に記載の抗体、抗原結合フラグメント、又はCDMABと;細胞傷害作用部分、酵素、放射性化合物、サイトカイン、インターフェロン、標的部分、レポーター部分、及び造血細胞からなるグループの中から選択したメンバーとの複合体と;
必要量の薬理学的に許容可能な担体とを組み合わせて含んでいて;
この組成物が、前記ヒト膵臓腫瘍、ヒト乳房腫瘍、ヒト前立腺腫瘍、ヒト卵巣腫瘍、又はヒト大腸腫瘍を治療するのに有効である組成物。
【請求項60】
ヒトがん性腫瘍の存在を検出するアッセイ用キットであって、前記ヒトがん性腫瘍が、IDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMABに特異的に結合する抗原の少なくとも1種類のエピトープを発現していて、前記CDMABは、前記単離されたモノクローナル抗体が、そのモノクローナル抗体の標的となる抗原に結合するのを競合的に抑制する能力によって特徴づけられる場合に、IDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMABと、特定のカット-オフ・レベルで存在することが前記ヒトがん性腫瘍の存在の診断となるポリペプチドに前記モノクローナル抗体またはそのCDMABが結合しているかどうかを検出する手段とを含むキット。
【請求項1】
哺乳動物において、ヒトの膵臓、乳房、前立腺、卵巣、又は大腸の腫瘍を小さくする方法であって、前記ヒトの膵臓、乳房、前立腺、卵巣、又は大腸の腫瘍が、IDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマ細胞系によって産生されて単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMABに特異的に結合する抗原の少なくとも1種類のエピトープを発現していて、前記CDMABが、前記単離されたモノクローナル抗体がそのモノクローナル抗体の標的となる抗原に結合するのを競合的に抑制する能力によって特徴づけられる場合に、前記哺乳動物に、前記モノクローナル抗体またはそのCDMABを、前記哺乳動物の膵臓、乳房、前立腺、卵巣、又は大腸の腫瘍の腫瘍組織量を減らすのに有効な量投与する操作を含む方法。
【請求項2】
前記単離されたモノクローナル抗体を細胞傷害作用部分と結合させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞傷害作用部分が放射性同位体である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMABが補体を活性化する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMABが、抗体依存性細胞傷害作用を媒介する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記単離されたモノクローナル抗体が、IDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体のヒト化抗体、または前記ヒト化抗体から生成された抗原結合フラグメントである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記単離されたモノクローナル抗体が、IDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体のキメラ抗体、または前記キメラ抗体から生成された抗原結合フラグメントである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
哺乳動物において、抗体によって誘導される細胞傷害作用に感受性のあるヒトの膵臓、乳房、前立腺、卵巣、又は大腸の腫瘍を小さくする方法であって、前記ヒトの膵臓、乳房、前立腺、卵巣瘍、又は大腸の腫瘍が、IDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマ細胞系によって産生されて単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMABに特異的に結合する抗原の少なくとも1種類のエピトープを発現していて、前記CDMABが、前記単離されたモノクローナル抗体がそのモノクローナル抗体の標的となる抗原に結合するのを競合的に抑制する能力によって特徴づけられる場合に、前記哺乳動物に、前記モノクローナル抗体またはそのCDMABを、前記哺乳動物の膵臓、乳房、前立腺、卵巣、又は大腸の腫瘍の腫瘍組織量を減らすのに有効な量投与する操作を含む方法。
【請求項9】
前記単離されたモノクローナル抗体を細胞傷害作用部分と結合させる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞傷害作用部分が放射性同位体である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMABが補体を活性化する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMABが、抗体依存性細胞傷害作用を媒介する、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記単離されたモノクローナル抗体が、IDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体のヒト化抗体、またはそのヒト化抗体から生成された抗原結合フラグメントである、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記単離されたモノクローナル抗体が、IDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体のキメラ抗体、またはそのキメラ抗体から生成された抗原結合フラグメントである、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
哺乳動物において、ヒトの膵臓、乳房、前立腺、卵巣、又は大腸の腫瘍を小さくする方法であって、前記ヒトの膵臓、乳房、前立腺、卵巣、又は大腸の腫瘍が、IDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマ細胞系によって産生されて単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMABに特異的に結合する抗原の少なくとも1種類のエピトープを発現していて、前記CDMABが、前記単離されたモノクローナル抗体がそのモノクローナル抗体の標的となる抗原に結合するのを競合的に抑制する能力によって特徴づけられる場合に、前記哺乳動物に、前記モノクローナル抗体またはそのCDMABを、少なくとも1種類の化学療法剤と組み合わせ、その哺乳動物の膵臓、乳房、前立腺、卵巣、又は大腸の腫瘍の腫瘍組織量を減らすのに有効な量投与する操作を含む方法。
【請求項16】
前記単離されたモノクローナル抗体を細胞傷害作用部分と結合させる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記細胞傷害作用部分が放射性同位体である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMABが補体を活性化する、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMABが、抗体依存性細胞傷害作用を媒介する、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記単離されたモノクローナル抗体が、IDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体のヒト化抗体、またはそのヒト化抗体から生成された抗原結合フラグメントである、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記単離されたモノクローナル抗体が、IDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体のキメラ抗体、またはそのキメラ抗体から生成された抗原結合フラグメントである、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
ヒトの膵臓、乳房、前立腺、卵巣、又は大腸の腫瘍の体積を小さくするためのモノクローナル抗体の使用であって、前記ヒトの膵臓、乳房、前立腺、卵巣、又は大腸の腫瘍が、IDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMABに特異的に結合する抗原の少なくとも1種類のエピトープを発現していて、前記CDMABが、前記単離されたモノクローナル抗体がそのモノクローナル抗体の標的となる抗原に結合するのを競合的に抑制する能力によって特徴づけられる場合に、前記哺乳動物に、前記モノクローナル抗体またはそのCDMABを、その哺乳動物のヒトの膵臓、乳房、前立腺、卵巣、又は大腸の腫瘍の腫瘍組織量を減らすのに有効な量投与する操作を含む使用。
【請求項23】
前記単離されたモノクローナル抗体を細胞傷害作用部分と結合させる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記細胞傷害作用部分が放射性同位体である、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
前記単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMABが補体を活性化する、請求項22に記載の使用。
【請求項26】
前記単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMABが、抗体依存性細胞傷害作用を媒介する、請求項22に記載の使用。
【請求項27】
前記単離されたモノクローナル抗体が、IDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体のヒト化抗体である、請求項22に記載の使用。
【請求項28】
前記単離されたモノクローナル抗体が、IDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体のキメラ抗体である、請求項22に記載の使用。
【請求項29】
ヒトの膵臓、乳房、前立腺、卵巣、又は大腸の腫瘍の体積を小さくするためのモノクローナル抗体の使用であって、前記ヒト膵臓腫瘍、ヒト乳房腫瘍、ヒト前立腺腫瘍、ヒト卵巣腫瘍、又はヒト大腸腫瘍が、IDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMABに特異的に結合する抗原の少なくとも1種類のエピトープを発現していて、前記CDMABが、前記単離されたモノクローナル抗体がそのモノクローナル抗体の標的となる抗原に結合するのを競合的に抑制する能力によって特徴づけられる場合に、前記哺乳動物に、前記モノクローナル抗体またはそのCDMABを、少なくとも1種類の化学療法剤と組み合わせ、前記哺乳動物のヒトの膵臓、乳房、前立腺、卵巣、又は大腸の腫瘍の腫瘍組織量を減らすのに有効な量投与する操作を含む使用。
【請求項30】
前記単離されたモノクローナル抗体を細胞傷害作用部分と結合させる、請求項29に記載の使用。
【請求項31】
前記細胞傷害作用部分が放射性同位体である、請求項30に記載の使用。
【請求項32】
前記単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMABが補体を活性化する、請求項29に記載の使用。
【請求項33】
前記単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMABが、抗体依存性細胞傷害作用を媒介する、請求項29に記載の使用。
【請求項34】
前記単離されたモノクローナル抗体が、IDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体のヒト化抗体である、請求項29に記載の使用。
【請求項35】
前記単離されたモノクローナル抗体が、IDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマ細胞系によって産生されて単離されたモノクローナル抗体のキメラ抗体である、請求項29に記載の使用。
【請求項36】
IDAC受託番号141205-05を持つハイブリドーマ細胞系AR47A6.4.2によって産生されて単離されたモノクローナル抗体が特異的に結合するヒトTROP-2抗原の少なくとも1種類のエピトープを発現しているヒトの乳房、膵臓、卵巣、前立腺、又は大腸の腫瘍の体積を小さくする方法であって、
前記ヒト腫瘍に苦しんでいる個人に、IDAC受託番号141205-05を持つハイブリドーマ細胞系AR47A6.4.2によって産生されて単離された前記モノクローナル抗体が結合するのと同じ1つまたは複数のエピトープと結合する少なくとも1種類の単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMABを投与する操作を含んでいて;
前記1つまたは複数のエピトープが結合する結果として、乳房、膵臓、卵巣、前立腺、又は大腸の腫瘍の腫瘍組織量が減る方法。
【請求項37】
IDAC受託番号141205-05を持つハイブリドーマ細胞系AR47A6.4.2によって産生されて単離されたモノクローナル抗体が特異的に結合するヒトTROP-2抗原の少なくとも1種類のエピトープを発現しているヒトの乳房、膵臓、卵巣、前立腺、又は大腸の腫瘍の体積を小さくする方法であって、
前記ヒト腫瘍に苦しんでいる個人に、IDAC受託番号141205-05を持つハイブリドーマ細胞系AR47A6.4.2によって産生されて単離された前記モノクローナル抗体が結合するのと同じ1つまたは複数のエピトープと結合する少なくとも1種類の単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMABを、少なくとも1種類の化学療法剤と組み合わせて投与する操作を含んでいて;
その投与の結果として腫瘍組織量が減る方法。
【請求項38】
IDAC受託番号141205-05を持つハイブリドーマ細胞系AR47A6.4.2によって産生されて単離されたモノクローナル抗体、またはIDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマ細胞系によって産生されて単離されたモノクローナル抗体のヒト化抗体、またはIDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマ細胞系によって産生されて単離されたモノクローナル抗体のキメラ抗体が特異的に結合するヒト腫瘍から選択された組織サンプル中にがん性細胞が存在していることを判定する結合アッセイであって、
前記ヒト腫瘍からの組織サンプルを用意し;
前記単離されたモノクローナル抗体、前記ヒト化抗体、前記キメラ抗体、又はこれら抗体のCDMABの中から、IDAC受託番号141205-05を持つハイブリドーマ細胞系AR47A6.4.2によって産生されて単離されたモノクローナル抗体が認識するのと同じ1つまたは複数のエピトープを認識するものを少なくとも1種類用意し;
用意した前記少なくとも1種類の抗体またはCDMABを前記組織サンプルと接触させ;前記少なくとも1種類の抗体またはCDMABと前記組織サンプルの結合を判定する操作を含んでいて;
そのことによって前記組織サンプル中に前記がん性細胞の存在が示されるアッセイ。
【請求項39】
IDAC受託番号141205-05を持つハイブリドーマ細胞系AR47A6.4.2によって産生されて単離されたモノクローナル抗体、またはIDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマ細胞系によって産生されて単離されたモノクローナル抗体のヒト化抗体、またはIDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマ細胞系によって産生されて単離されたモノクローナル抗体のキメラ抗体が特異的に認識するTROP-2を発現している細胞の存在を判定する結合アッセイであって、
細胞サンプルを用意し;
IDAC受託番号141205-05を持つハイブリドーマ細胞系AR47A6.4.2によって産生されて単離された前記モノクローナル抗体、前記ヒト化抗体、前記キメラ抗体、又はこれら抗体のCDMABを用意し;
前記単離されたモノクローナル抗体または前記抗原結合フラグメントを前記細胞サンプルと接触させ;
前記単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMABと前記細胞サンプルの結合を判定する操作を含んでいて、
そのことによって前記単離されたモノクローナル抗体または前記CDMABに特異的に結合するTROP-2の抗原を発現する細胞の存在を判定するアッセイ。
【請求項40】
細胞の表面にTROP-2の少なくとも1つのエピトープを発現していて、その少なくとも1つのエピトープに、IDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体、または前記単離されたモノクローナル抗体から生成された抗原結合フラグメントが結合するときに細胞傷害作用が起こるがん性細胞に補体依存性細胞傷害作用を誘導する方法であって、
IDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体、または前記単離されたモノクローナル抗体から生成された抗原結合フラグメントを用意し、及び
前記がん性細胞を前記単離されたモノクローナル抗体または前記抗原結合フラグメントと接触させる操作を含んでいて;
そのことによって前記単離されたモノクローナル抗体または前記抗原結合フラグメントがTROP-2の前記少なくとも1つのエピトープと結合する結果として細胞傷害作用が発生する方法。
【請求項41】
前記単離されたモノクローナル抗体を細胞傷害作用部分と結合させる、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記細胞傷害作用部分が放射性同位体である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記単離されたモノクローナル抗体が補体を活性化する、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記単離されたモノクローナル抗体が細胞傷害作用を媒介する、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
前記モノクローナル抗体が、IDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体のヒト化抗体、またはそのヒト化抗体から生成された抗原結合フラグメントである、請求項40に記載の方法。
【請求項46】
前記モノクローナル抗体が、IDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体のキメラ抗体、またはそのキメラ抗体から生成された抗原結合フラグメントである、請求項40に記載の方法。
【請求項47】
細胞の表面にTROP-2の少なくとも1つのエピトープを発現していて、その少なくとも1つのエピトープに、IDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体、または前記単離されたモノクローナル抗体から生成された抗原結合フラグメントが結合するときに細胞傷害作用が起こるがん性細胞に補体依存性細胞傷害作用を誘導する方法であって、
IDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体、または前記単離されたモノクローナル抗体から生成された抗原結合フラグメントがTROP-2の前記少なくとも1つのエピトープに結合するのを競合的に抑制する単離されたモノクローナル抗体であって、TROP-2の前記少なくとも1つのエピトープに結合したときに細胞傷害作用を起こす単離されたモノクローナル抗体を用意し;
前記がん性細胞を、ハイブリドーマによって産生されて単離された前記モノクローナル抗体または前記抗原結合フラグメントと接触させる操作を含んでいて;
そのことによってハイブリドーマによって産生されて単離された前記モノクローナル抗体または前記抗原結合フラグメントがTROP-2の前記少なくとも1つのエピトープと結合する結果として細胞傷害作用が発生する方法。
【請求項48】
IDAC受託番号141205-05として寄託されたハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体と同じ1つまたは複数のエピトープと特異的に結合するモノクローナル抗体。
【請求項49】
単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMABであって、ヒトTROP-2に特異的に結合し、その単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMABは、IDAC受託番号141205-05を持つハイブリドーマ細胞系AR47A6.4.2によって産生されて単離されたモノクローナル抗体と同じヒトTROP-2の1つまたは複数のエピトープと反応し;前記単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMABは、前記モノクローナル抗体が、そのモノクローナル抗体の標的ヒトTROP-2抗原に結合するのを競合的に抑制する能力によって特徴づけられる、単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMAB。
【請求項50】
単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMABであって、IDAC受託番号141205-05を持つハイブリドーマ細胞系AR47A6.4.2によって産生されて単離されたそのモノクローナル抗体によって認識されるのと同じ1つまたは複数のエピトープを認識し;前記モノクローナル抗体またはそのCDMABは、単離された前記モノクローナル抗体が、そのモノクローナル抗体の標的となる1つまたは複数のエピトープに結合するのを競合的に抑制する能力によって特徴づけられる、単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMAB。
【請求項51】
IDAC受託番号141205-05を持つハイブリドーマ細胞系AR47A6.4.2によって産生されて単離されたモノクローナル抗体と同じヒトTROP-2の1つまたは複数のエピトープと特異的に結合し、
配列番号1、配列番号2、及び配列番号3の相補性決定領域アミノ酸配列を含む重鎖可変領域と;配列番号4、配列番号5、又は配列番号6の相補性決定領域アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含むヒト化抗体;
またはそのヒトTROP-2結合フラグメント。
【請求項52】
IDAC受託番号141205-05を持つハイブリドーマ細胞系AR47A6.4.2によって産生されて単離されたモノクローナル抗体と同じヒトTROP-2の1つまたは複数のエピトープと特異的に結合し、
配列番号1、配列番号2、及び配列番号3の相補性決定領域アミノ酸配列を含む重鎖可変領域と;配列番号4、配列番号5、又は配列番号6の相補性決定領域アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と;ヒト抗体またはヒト抗体コンセンサス・フレームワークの重鎖と軽鎖からの可変領域フレームワーク領域とを含むヒト化抗体;
またはそのヒトTROP-2結合フラグメント。
【請求項53】
前記モノクローナル抗体が配列番号7の重鎖可変領域アミノ酸配列と、配列番号8の中から選択された軽鎖可変領域アミノ酸配列とを含んでいて、ヒトTROP-2に特異的に結合するヒト化抗体、
またはそのヒトTROP-2結合フラグメント。
【請求項54】
前記モノクローナル抗体が配列番号7の重鎖可変領域アミノ酸配列と、配列番号9の中から選択された軽鎖可変領域アミノ酸配列とを含んでいて、ヒトTROP-2に特異的に結合するヒト化抗体、
またはそのヒトTROP-2結合フラグメント。
【請求項55】
前記モノクローナル抗体が配列番号10の重鎖可変領域アミノ酸配列と、配列番号8の中から選択された軽鎖可変領域アミノ酸配列とを含んでいて、ヒトTROP-2に特異的に結合するヒト化抗体、
またはそのヒトTROP-2結合フラグメント。
【請求項56】
前記モノクローナル抗体が配列番号10の重鎖可変領域アミノ酸配列と、配列番号9の中から選択された軽鎖可変領域アミノ酸配列とを含んでいて、ヒトTROP-2に特異的に結合するヒト化抗体、
またはそのヒトTROP-2結合フラグメント。
【請求項57】
ヒトの膵臓、前立腺、卵巣、乳房、又は大腸の腫瘍を治療するのに有効な組成物であって、
請求項1、2、3、6、7、8、17、49、50、54、55、又は56いずれか1項に記載の抗体またはCDMABと;
その抗体またはその抗原結合フラグメントと、細胞傷害作用部分、酵素、放射性化合物、サイトカイン、インターフェロン、標的部分、レポーター部分、及び造血細胞からなるグループの中から選択したメンバーとの複合体と;
必要量の薬理学的に許容可能な担体とを組み合わせて含んでいて;
前記組成物が、ヒトの前記膵臓、乳房、前立腺、卵巣、又は大腸の腫瘍を治療するのに有効である組成物。
【請求項58】
ヒトの膵臓、前立腺、卵巣、乳房、又は大腸の腫瘍を治療するのに有効な組成物であって、
請求項1、2、3、6、7、8、17、49、50、54、55、又は56いずれか1項に記載の抗体またはCDMABと;必要量の薬理学的に許容可能な担体とを組み合わせて含んでいて;
前記組成物が、ヒトの前記膵臓、乳房、前立腺、卵巣、又は大腸の腫瘍を治療するのに有効である組成物。
【請求項59】
ヒトの膵臓、乳房、前立腺、卵巣、又は大腸の腫瘍を治療するのに有効な組成物であって、
請求項1、2、3、6、7、8、17、49、50、54、55、又は56いずれか1項に記載の抗体、抗原結合フラグメント、又はCDMABと;細胞傷害作用部分、酵素、放射性化合物、サイトカイン、インターフェロン、標的部分、レポーター部分、及び造血細胞からなるグループの中から選択したメンバーとの複合体と;
必要量の薬理学的に許容可能な担体とを組み合わせて含んでいて;
この組成物が、前記ヒト膵臓腫瘍、ヒト乳房腫瘍、ヒト前立腺腫瘍、ヒト卵巣腫瘍、又はヒト大腸腫瘍を治療するのに有効である組成物。
【請求項60】
ヒトがん性腫瘍の存在を検出するアッセイ用キットであって、前記ヒトがん性腫瘍が、IDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMABに特異的に結合する抗原の少なくとも1種類のエピトープを発現していて、前記CDMABは、前記単離されたモノクローナル抗体が、そのモノクローナル抗体の標的となる抗原に結合するのを競合的に抑制する能力によって特徴づけられる場合に、IDACに受託番号141205-05として寄託したハイブリドーマによって産生されて単離されたモノクローナル抗体またはそのCDMABと、特定のカット-オフ・レベルで存在することが前記ヒトがん性腫瘍の存在の診断となるポリペプチドに前記モノクローナル抗体またはそのCDMABが結合しているかどうかを検出する手段とを含むキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図8F】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22A】
【図22B】
【図22C】
【図23A】
【図23B】
【図23C】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図8F】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22A】
【図22B】
【図22C】
【図23A】
【図23B】
【図23C】
【図24】
【図25】
【公表番号】特表2010−528056(P2010−528056A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509640(P2010−509640)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【国際出願番号】PCT/CA2008/000979
【国際公開番号】WO2008/144891
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【国際出願番号】PCT/CA2008/000979
【国際公開番号】WO2008/144891
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】
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