説明

ごみ収集車

【課題】分別されたごみから収集するごみを人力なしで選別でき、複数の種類のごみを同時に分別収集することができるごみ収集車を提供する。
【解決手段】複数のごみ袋が存在する所定のごみ集積場所から特定の識別子の付いたごみ袋を収集するごみ収集車。車両10と、ごみ投入口23と複数のごみ収容空間に区画する隔壁22とごみ投入口を一つのごみ収容空間に択一的に連通させうる弁24とを有しごみ袋を収容可能なごみ収容槽20と、ごみ収容槽の内部の空気を吸引することのできる吸引装置30と、その一端をごみ投入口に連通し、その他端にごみ取り入れ口を有するフレキシブルな輸送管41とを備える。弁24は、ごみ投入口23に連通する弁入口とごみ収容空間に連通する複数の弁出口28とを有する弁箱25と、各弁出口を閉止しうる複数のフラップ弁体26とを有し、一つの弁出口を開放する様に弁を駆動しうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ごみ収集車に係る。更に詳しくは、ごみ吸引方式の構造を有するごみ収集車に関する。
【背景技術】
【0002】
ごみは近代社会の重要問題である。この問題の解決のため、組織的なごみの収集と処理をおこなってきた。家庭等からでるごみを収集するためにごみ収集車が用いられる。そして、近年のごみの量の増大に伴って、ごみの処理を効率的におこなう必要から、ごみの分別収集が行なわれる。例えば、生ごみ等の可燃ごみとプラスチック等の不燃ごみと回収資源であるアルミ缶やガラス瓶やペットボトルとにわけて回収が行なわれる場合を例にとり説明する。
【0003】
ごみの収集を効率良く行うために、規則が定められている。ごみの種類により集積場所と回収日とが定められる。例えば、可燃ゴミと不燃ごみの収集日は月曜日で、アルミ缶の収集日は火曜日と定められる。また、ごみの種類毎にこん包方法が定められている。例えば、生ごみや分別ごみは透明や黒色の袋にまとめて入れることが求められ、さらに可燃ゴミと不燃ごみとを区別するために所定のステッカを貼ることが義務づけられる。また、ごみの種類により回収の費用が定められている。例えば、冷蔵庫等の大型ごみの回収費用は可燃ゴミの回収費用よりも割高になっている。また、そのごみ種類に特定の費用を支払って入手したステッカを、ごみ袋等に貼ることが義務づけられる。
【0004】
前記回収日に前記集積場所へごみ収集車がやってきて、所定のごみの収集をおこない、ごみ処理場へ移送する。しかし、ごみが上記の規則に従って集積場所に出されていない場合がある。例えば、ごみがそのごみの回収日と異なる日に集積場所へ置かれることがある。また、ごみが所定の袋に収められなかったり、所定のステッカーが貼られていなかったりする。また、ごみがそのごみの集積場所ではない場所に出される場合もある。この様に、ごみが規則を守らずに集積場所に出された場合は、そのごみを回収することができない。従来のごみ収集車を使用したごみの収集方法では、上記の様に規則を守られずに集積場所に出されたごみは、人力により選別している。
【0005】
異なる種類のごみの回収日と集積場所が同一である場合がある。または、集積場所が隣りあっていて、異なる種類のごみが混在する場合がある。従来のごみ収集車を使用したごみの収集方法では、この異なる種類のごみを、人力により選別している。
【0006】
従来のごみ収集車の一例を説明する。例えば、車台枠に搭載され、後方に開口する排出口を開閉する開閉扉を備えたごみ収容タンクと、ごみ収容タンクの上面前部に設けられた導入口に基端部が連設され、外部のごみ貯留用ベッセルに連通させる吸引管と、上記ごみ収容タンクを負圧化して、ごみ貯留用ベッセルから吸引管を介してごみ収容タンク内にごみを吸引輸送する吸引装置と、ごみ収容タンク内を前方のごみ吸引位置と後方の排出位置との間で摺動自在に設けられ、そのごみ吸引位置から排出位置への摺動によりごみ収容タンク内のごみを排出口から排出する排出板とを備えたごみ収集車が、特許文献1に開示されている。
【0007】
この従来のごみ収集車は、一つの種類のごみを収容できるが、複数の種類のごみを同時に収容することができない。従って、同時に複数種類のごみを収集する場合は、ごみ種類の数に対応させて複数のごみ収集車を用意している。さらにごみ集積場では、作業員が人力でごみ種類を識別してごみを選別し、それぞれのごみ収集車に投入している。
【0008】
一方、ごみの分別収集に適したごみ収集車の構造が検討されている。例えば、特許文献2では、車台枠上のゴミ収集タンク内に設けられた排出板に改良を加えて収容タンクのゴミとは異なる異種物を収容可能にしたごみ収集車が開示されている。この改良されたごみ収集車を使用した場合、一つのごみ収集車で2種類のごみを収集可能になる。ただし、作業員が人力でごみ種類を識別してごみを選別し、それぞれのごみ収集車に投入しなければない。
【0009】
次に、従来のごみ収集車の運用を、可燃ごみと不燃ごみとを同日に収集する場合を例に、説明する。可燃ごみをいれた袋と不燃ごみをいれた袋とが、多数集積場に出されている。袋には、定められたステッカが貼られている。可燃ごみ用のステッカと不燃ごみ用のステッカは目視で容易に識別できるように工夫がされている。さらに、少数ではあるが、当日が回収日ではないごみ(例えば、アルミ管)が袋に入れられてごみ集積場に出されている。作業員が、第一のごみ収集車と共にごみ集積場へ来る。作業員は、複数のごみ袋のなかから可燃ごみを入れた袋を識別し、可燃ごみをいれた袋のみを第一のごみ収集車に投入する。可燃ごみの回収を終了すると、作業員は、第一のごみ収集車と共に、立ち去る。次に別の作業員が、第二のごみ収集車と共にごみ集積場へ来る。作業員は、複数のごみ袋のなかから不燃ごみを入れた透明の袋を識別し、不燃ごみをいれた袋のみを第二のごみ収集車に投入する。不燃ごみの回収を終了すると、作業員は、第二のごみ収集車と共に、立ち去る。集積場には、当日が回収日ではないごみ(例えば、アルミ管)をいれた袋が残される。
【0010】
【特許文献1】特開平3−232602号公報
【特許文献2】実開平6−72920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述の様に、従来のごみ収集車を使用したごみ収集では、分別されたごみを収集しようとすると、収集するごみと収集しないごみとを人力で選別しなければならないという不具合があった。またさらに、複数の種類のごみを同時に収集しようとすると、その種類に対応した数のごみ収集車を用意し、その複数の種類のごみを人力で選別してごみ収集車に投入しなければならないという不具合があった。従って、従来のごみ収集車を使用したごみ収集方法では、効率的な分別ごみ収集には限界があるという問題点があった。
【0012】
本発明は以上に述べた問題点に鑑み案出されたものである。すなわち、本発明の目的は、分別されたごみから収集するごみを人力なしで選別でき、複数の種類のごみを同時に分別収集することができる、ごみの分別収集に適した構造を有するごみ収集車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため本発明のごみ収集車は、複数のごみ袋が存在する所定のごみ集積場所から特定の識別子のついたごみ袋を収集しうるごみ収集車であって、
車両と、
ごみ投入口と複数のごみ収容空間に区画する隔壁とごみ投入口を一つのごみ収容空間に択一的に連通させうる弁とを有しごみ袋を収容可能なごみ収容槽と、
ごみ収容槽の内部の空気を吸引することのできる吸引装置と、
その一端をごみ投入口に連通し、その他端にごみ取り入れ口を有するフレキシブルな輸送管と、を備え、
前記弁は、ごみ投入口に連通する弁入口とごみ収容空間に連通する複数の弁出口とを有する弁箱と、各弁出口を閉止しうる複数のフラップ弁体とを有し、一つの弁出口を開放する様に弁を駆動しうるものとした。
【0014】
本発明の好ましい実施形態によれば、さらに、前記ごみ集積場所の上方に位置し、上方からごみ集積場所全体の画像を取り込み、その画像から特定の識別子のついたゴミ袋の識別子情報を生成できる画像処理装置を備え、識別信号に対応して弁を駆動する。
【0015】
さらに、前記画像処理装置は、その画像から特定の識別子のついたゴミ袋の位置情報を生成でき、
位置情報に対応する所定位置にごみ取り入れ口を移動可能な輸送管移動機構を備える。
【0016】
前記隔壁は、ごみ収容槽を左右方向に区画する。
【発明の効果】
【0017】
上記本発明の構成により、本発明のごみ収集車は車両により移動可能である。ごみ収容槽は、ごみ投入口と隔壁と弁とを有し、ごみ投入口から投入したごみ袋を収容可能である。その隔壁は、ごみ収容槽を複数のごみ収容空間に区画し、その弁は、ごみ投入口を一つのごみ収容空間に択一的に連通させることができる。吸引装置は、ごみ収容槽の内部の空気を吸引し、ごみ収容槽の内部を負圧力にできる。輸送管の一端がごみ収容槽のごみ投入口に連通し、輸送管の他端にごみ取り入れ口があり、そのごみ取り入れ口から入ったごみ袋をごみ収容槽のごみ投入口に入れることができる。
【0018】
また上記本発明の構成により、弁が、弁箱とフラップ弁体とを有し、その弁箱の弁入口がごみ投入口に連通し、その弁箱の複数の弁出口が収容空間に連通し、そのフラップ弁体が各弁出口を閉止でき、一つの弁出口を開放する様に弁を駆動し、ごみ投入口に連通する弁入口を一つの弁出口に択一的に連通させることができる。
【0019】
上記本発明の構成により、画像処理装置は、ごみ袋の画像を取り込み、その画像から特定の識別子のついたゴミ袋の識別子情報を生成でき、そのゴミ袋と識別子情報とを関連づけることができる。その識別子情報に対応して弁を駆動して、その弁は、ごみ投入口をその識別子情報に対応したごみ収容空間に択一的に連通させることができる。
【0020】
またさらに、上記本発明の構成により、前記画像処理装置は、その画像から特定の識別子のついたゴミ袋の位置情報を生成でき、そのゴミ袋と位置情報を関連づけることができる。輸送管移動機構は、その位置情報に対応する所定位置にごみ取り入れ口を移動し、ごみ取り入れ口を特定の識別子のついたゴミ袋の位置に移動することができる。
【0021】
またさらに、上記本発明の構成により、隔壁がごみ収容槽を左右方向に区画し、ごみ収容槽内部の左右に配置された複数の収容空間に分けることができる。
【0022】
以上説明したように本発明の特定の識別子のついたごみ袋を収集しうるごみ収集車は、その構成により、以下の効果を有する。
【0023】
車両により移動でき、吸引装置がごみ収容槽の内部を負圧力にでき、輸送管が輸送管のごみ取り入れ口から入ったごみ袋をごみ収容槽のごみ投入口に入れることができ、ごみ投入口から投入したごみ袋をごみ収容槽の複数のごみ収容空間の中の一つのごみ収容空間に択一的に収容できるので、輸送管のごみ取り入れ口から入ったごみ袋をごみ収容槽の負圧力により吸って、複数のごみ収容空間の中の一つのごみ収容空間に択一的に投入して収容し収集できる。
【0024】
また、弁において、その弁箱の弁入口がごみ投入口に連通し、その弁箱の複数の弁出口が収容空間に連通し、そのフラップ弁体が各弁出口を閉止でき、一つの弁出口を開放する様に弁を駆動し、ごみ投入口に連通する弁入口を一つの弁出口に択一的に連通させることができるので、ごみ投入口に投入されたごみ袋を択一的に選択された弁出口から収容空間にスムースに投入し収集できる。
【0025】
さらに、画像処理装置がそのごみ袋と識別子情報とを関連づけることができ、その弁がごみ投入口をその識別子情報に対応したごみ収容空間に択一的に連通させることができるので、輸送管のごみ取り入れ口から入ったごみ袋をごみ収容槽の負圧力により吸って、複数のごみ収容空間の中のその識別子情報に対応したごみ収容空間に択一的に投入して収容し収集できる。
【0026】
さらに、前記画像処理装置がそのごみ袋と位置情報を関連づけることができ、輸送管移動機構がごみ取り入れ口を特定の識別子のついたゴミ袋の位置に移動することができるので、ごみ取り入れ口を特定の識別子のついたゴミ袋の位置に移動して、そのごみ袋をごみ収容槽の負圧力により吸って、複数のごみ収容空間の中の一つのごみ収容空間に択一的に投入して収容し収集できる。
【0027】
さらに、隔壁がごみ収容槽内部の左右に配置された複数の収容空間に分けることができるので、輸送管のごみ取り入れ口から入ったごみ袋をごみ収容槽の負圧力により吸って、ごみ収容槽内部の左右に配置された複数の収容空間の中から一つのごみ収容空間に択一的に投入して収容し収集できる。
従って、ごみの分別収集に適した構造を有するごみ収集車を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
実施形態の概要を図を基に説明する。
図1は、本発明の実施形態の側面図(一部断面図)である。図2は、本発明の実施形態の背面断面図である。図3は、本発明の実施形態の部分作動図である。図4は、本発明の実施形態の弁の部分作動図である。図5は、本発明の実施形態の弁駆動装置の部分詳細図である。図6は、本発明の実施形態の吸引装置の部分断面図である。図7は、本発明の実施形態の画像処理装置の機能図である。
【0029】
ごみ収集車1は、車両10とごみ収容槽20と吸引装置30と輸送管装置40と輸送管移動機構50と画像処理装置60とを備える。説明の便宜のため、ごみ収集車の進行方向を前、反対方向を後と呼ぶ。また、進行方向を向いて、左手側を左と、右手側を右と呼ぶ。ごみ収容槽20と吸引装置30と輸送管装置40と輸送管移動機構50と画像処理装置60とは、車両10に搭載される。吸引装置30は、ごみ収容槽20の前方に設けられる。輸送管装置40と輸送管移動機構50はごみ収容槽20の後方に設けられる。画像処理装置60は、その一部が輸送管移動機構50に乗せられる。以下にその詳細を説明する。
【0030】
車両20は、運転室11と荷台12とで構成される。運転室11は、車両20を運転するための部屋で、車両20の前方に設けられる。荷台12は、その上面に荷を乗せられる構造をしており、車両20の後方に設けられる。
【0031】
ごみ収容槽20は、収容槽本体21と隔壁22とごみ投入口23と弁24とを有する。収容槽本体21は、ごみを収容可能な密閉可能な箱であり、荷台12の上に設けられる。隔壁22は、垂直の板であり、その面が左右方向に向く様に収容槽本体21の内部に配置され、複数の収容空間29を左右に区画する。区画された左の空間を、左収容空間29aと、右の空間を右収容空間29bと呼称する。ごみ投入口23は、ごみを収容槽本体21に投入するための穴であり、ごみ収容槽20の後方上部に設けられる。
【0032】
弁24は、そのごみ投入口23に隣接して設けられ、弁箱25とフラップ弁体26と駆動装置27とを有する。弁箱25は、6面体の箱であり、1つの弁入口と、2つの弁出口28を有する。弁入口が弁箱25の後方の壁に設けられ、弁出口28が弁箱の左右の壁に設けられる。弁入口は、ごみ投入口23に連通する。弁出口28は、弁箱に設けられた開口であり、弁左出口28aが左収容空間29aに連通し、弁右出口28bが右収容空間29bに連通する。2つのフラップ弁体26は、弁出口28の開口を開放閉止可能な大きさの板であり、その上端を弁出口28の上端に揺動自在に設けられる。左フラップ弁体26aが弁左出口28aに設けられ、右フラップ弁体26bが弁右出口19bに設けられる。駆動装置27は、連結棒とアクチエータ(図示せず)を有する。連結棒は、軸心を左右方向に延ばして、左フラップ弁体26aと右フラップ弁体26bを繋ぐ。アクチエータは、その連結棒を左右に移動させることができる。連結棒が中央に位置すると、左フラップ弁体26aが弁左出口28aを閉止し、右フラップ弁体26bが弁右出口18bを閉止する。連結棒を左に移動すると、左フラップ弁体26aが左に傾斜して弁左出口28aを解放し、右フラップ弁体26bが左に傾斜したスロープとなる。連結棒を右に移動すると、右フラップ弁体26bが右に傾斜して弁右出口28bを解放し、左フラップ弁26aが右に傾斜したスロープとなる。
【0033】
吸引装置30は、吸引ユニット31と吸引配管32とを有する。吸引ユニット31は、吸引ユニット箱33と吸引ブロア34と仕切り板35とサイレンサ36と排気ダクト37とから成る。吸引ユニット箱33は、密閉された箱であり、その下部に吸気口とその上部に排気口とを有する。吸引ブロア34は、垂直に立てられた送風機であり、下方から空気を吸い、上方に排気する。仕切り板35は、垂直に立てられた板であり、吸引ユニット箱の内部の吸気口と吸引ブロアの間に設けられる。サイレンサ36は、穴のあいた板が多層に重ねられ、吸引ユニット箱33の上部に設けられる。吸引ブロア34の上部は、サイレンサ36に連通している。排気ダクト37は、垂直に立った筒であり、排気口に連通する。吸引配管32は、空気が通る管であり、その一端がごみ収容槽20に連通し、他端が吸気口に連通する。吸引配管32は、左吸引配管32aと右吸引配管32bとから成り、左吸引配管32aは左収容空間29aに連通し、右吸引配管32bは右収容空間29bに連通する。
【0034】
輸送管装置40は、輸送管41と輸送管収納箱42とチャッキングユニット43を有する。輸送管41は、屈曲と伸縮とが可能な管、いわゆるフレキシブルチューブであり、その一端がごみ投入口23に連通し、他端がごみ取り入れ口となっている。輸送管収納箱42は、輸送管41を収納可能な箱であり、ごみ収容槽20の後部に設けられる。チャッキングユニット42は、ごみ袋を把持可能な装置であり、その一端が輸送管のごみ取り入れ口に連通している。
【0035】
輸送管移動機構50は、基礎構造51と水平アーム52とピックアップユニット53と垂直アーム54とを有する。基礎構造51は、輸送管移動機構50の土台であり、ごみ収容槽20の上部に設けられる。水平アーム52は、水平方向に伸縮自在の腕であり、一端が基礎構造51に水平回転自在に取り付けられる。ピックアップユニット53は、垂直アーム54を上下に揺動可能な機構であり、水平アーム52の先端に取り付けられる。垂直アーム54は、上下方向に延びた棒であり、ピックアップユニット53に支えられ、上下に移動可能である。垂直アーム54の下端は、輸送管42の吸い込み口付近を把持している。
【0036】
画像処理装置60は、監視カメラ61と画像処理ユニット62とを有する。監視カメラ61は、映像をとりこみ画像データに変換できるカメラであり、水平アーム52の他端に取り付けられる。監視カメラ61は、下方向を向いて固定される。画像処理ユニット62は、その画像データを処理し、ごみ袋を認識し、特定の識別子を認識して識別子データを生成し、その識別子の添付されたごみ袋の位置データを生成できる。特定の識別子としては、特定の標章や、特定の色彩が選択できる。輸送管移動装置50は、画像処理ユニット62から送られた位置データを基に、輸送管42の吸い込み口を移動できる。弁の駆動装置27は、画像処理ユニット62から送られた識別子データを基に、フラップ弁体26を開閉できる。
【0037】
つぎに、この実施形態の運用方法を説明する。図8はこの実施形態の運用状況の平面図である。ごみ集積場所80に、可燃ごみの入ったごみ袋70aと不燃ごみの入ったごみ袋が70bがある場合を想定する。第一の標章(例えば「A」の文字。)が可燃ごみの入ったごみ袋70aの外面についており、第二の標章(例えば「B」の文字。)が不燃ごみの入ったごみ袋70bの外面についている。それらのごみ袋の他、標章のついていないごみ袋70cが混じっている。また、ごみ収容槽20の左収容空間29aが可燃ごみを収容する収容空間であり、右収容空間29bが不燃ごみを収容する収容空間である。
【0038】
ごみ収集車1がごみ集積場所80に来る。運転手が、スタートボタンを押す。スタートボタンが押されると、吸引装置30の吸引ユニット31が作動する。吸引ユニット31が作動すると、吸引ブロア34が、吸気口から空気を吸引し、排気口から空気を排気する。ごみ収容槽20の内部の空気が、吸入配管32を通り、吸入ユニット箱31に入る。吸入ユニット箱に入った空気が、仕切り板35にぶつかり、勢いが弱められ、吸引ブロア34の吸気口に入る。吸引ブロアに入った空気が、吸引ブロア34の排気口からでて、サイレンサ36を通って排気音を弱められ、排気ダクト37から吸引ユニットの外へ出る。
【0039】
次に、画像処理装置60では、監視カメラ61が、ごみ集積場所80の全体の映像を取り込み、画像データを作成し、画像処理ユニット62へ送信する。画像処理ユニット62が、その画像データを解析し、ごみ袋の輪郭から個々のごみ袋を識別し、そのごみ袋70に添付された標章データ(識別子データ)と、そのごみ袋の位置データをそのごみ袋に関連づける。
【0040】
次に、輸送管移動装置50が位置データを画像処理ユニット62から受け取る。輸送管移動装置50が、輸送管41を移動し、輸送管収納箱42から輸送管41を引き出す。輸送管移動装置50が、特定の標章データに関連付けられた位置データに基づき、水平アーム52を動かし輸送管41のごみ取り入れ口を特定のごみ袋70の上に移動する。次ぎに、垂直アーム54を下方におろす。垂直アーム54が降りると、チャッキングユニット43がごみ袋を把持する。例えば、その標章データが第一の標章であれば、チャッキングユニット54が把持したごみ袋は可燃ごみの入ったごみ袋70aである。
【0041】
次に、弁が、画像処理ユニット62から識別子データを受け取る。ごみが可燃ごみである場合、弁が、識別子データを基に、弁の駆動装置24を作動させ、連結棒を左に移動する。連結棒を左に移動すると、左フラップ弁体26aが左に傾斜して弁左出口28aを解放し、右フラップ弁体26bが左に傾斜したスロープとなる。ごみ袋70は、輸送管41の内部の負圧力に吸い上げられ、ごみ投入口23を経由して弁24に入る。弁24に入ったごみ袋70は、右フラップ弁体26bが左に傾斜してできたスロープ上を滑り、弁左出口28aを通って、左収容空間29aに入る。ごみが不燃ごみである場合、弁が、識別子データを基に、弁の駆動装置24を作動させ、連結棒を右に移動し、弁24に入ったごみ袋70は、左フラップ弁体26aが右に傾斜してできたスロープ上を滑り、弁右出口28bを通って、右収容空間29bに入る。
【0042】
上記の手順を繰り返して、輸送管移動装置50が輸送管41を移動し、第一の標章の付いたごみ袋70aを左収容空間29aへ入れ、第二の標章のついたごみ袋70bを右収容空間29bへ入れる。さらに、輸送管移動装置50は、第一の標章の付いたごみ袋70aでも第二の標章の付いたごみ袋70bでもないごみ袋70cを飛び越して輸送管41を移動するので、ごみ集積場所80には第一の標章の付いたごみ袋でも第二の標章の付いたごみ袋でもないごみ袋70cだけが残る。
すべての第一の標章の付いたごみ袋でも第二の標章の付いたごみ袋を収容すると、輸送管を輸送管収納箱に収納し、ごみ収容車を移動させる。
【0043】
上述の実施形態のごみ収集車を用いれば、ごみ集積場所に置かれた複数のごみ袋の中から特定のごみ袋だけを収集することができる。
また、分別種類の異なるごみの入ったごみ袋を一台のごみ収集車で分別して収集することができる。
さらに、ごみ袋に付けられた標章を識別して自動的に分別して収集できる。
さらにまた、ごみ収容槽が水平方向に並ぶ収容空間に区画されているので、ごみ収容槽の内部の空間を有効に利用できる。
弁に左フラップ弁と右フラップ弁があり、左フラップ弁が弁左出口を解放にするとき、右フラップ弁がごみ袋を言弁左出口へ誘導するシュートとなるので、ごみ袋をスムースにごみ収容空間に入れることができる。
【0044】
本発明は以上に述べた実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。本発明の実施例として、隔壁が、ごみ収容槽を2つのごみ収容空間に区画する場合を説明したが、これに限定されず、例えば3つのごみ収容空間に区画してもよい。また、輸送管をいわゆるフレキシブルチューブとして説明したが、これに限定されず、例えば、複数の短管を回転継手で繋いだものでもよい。また輸送管と輸送管移動機構を別体のものとして説明したが、これに限定されず、例えば輸送管と輸送管移動機構が一体化したものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施形態の側面図(一部断面図)である。
【図2】本発明の実施形態の背面断面図である。
【図3】本発明の実施形態の部分作動図である。
【図4】本発明の実施形態の部分作動図である。
【図5】本発明の実施形態の部分詳細図である。
【図6】本発明の実施形態の部分断面図である。
【図7】本発明の実施形態の機能図である。
【図8】本発明の実施形態の運用概念図である。
【符号の説明】
【0046】
1 ごみ収集車
10 車両
11 運転室
20 ごみ収容槽
21 収容槽本体
22 隔壁
23 ごみ投入口
24 弁
25 弁箱
26 フラップ弁体
26a 左フラップ弁体
26b 右フラップ弁体
27 駆動装置
28 弁出口
28a 弁左出口
28b 弁右出口
29 収容空間
29a 左収容空間
29b 右収容空間
30 吸引装置
31 吸引ユニット
32 吸引配管
32a 左吸引配管
32b 右吸引配管
33 吸引ユニット箱
34 吸引ブロア
35 仕切り板
36 サイレンサ
37 排気ダクト
40 輸送管装置
41 油送管
42 輸送管収納箱
43 チャッキングユニット
50 輸送管移動装置
51 基礎構造
52 水平アーム
53 ピックアップユニット
54 垂直アーム
60 画像処理装置
61 監視カメラ
62 画像処理ユニット
70 ごみの入ったごみ袋
70a 可燃ごみの入ったごみ袋
70b 不燃ごみの入ったごみ袋
70c その他のごみの入ったごみ袋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のごみ袋が存在する所定のごみ集積場所から特定の識別子のついたごみ袋を収集しうるごみ収集車であって、
車両と、
ごみ投入口と複数のごみ収容空間に区画する隔壁とごみ投入口を一つのごみ収容空間に択一的に連通させうる弁とを有しごみ袋を収容可能なごみ収容槽と、
ごみ収容槽の内部の空気を吸引することのできる吸引装置と、
その一端をごみ投入口に連通し、その他端にごみ取り入れ口を有するフレキシブルな輸送管と、を備え、
前記弁は、ごみ投入口に連通する弁入口とごみ収容空間に連通する複数の弁出口とを有する弁箱と、各弁出口を閉止しうる複数のフラップ弁体とを有し、一つの弁出口を開放する様に弁を駆動しうる、ことを特徴とするごみ収集車。
【請求項2】
さらに、前記ごみ集積場所の上方に位置し、上方からごみ集積場所全体の画像を取り込み、その画像から特定の識別子のついたゴミ袋の識別子情報を生成できる画像処理装置を備え、
識別信号に対応して弁を駆動することを特徴とする請求項1に記載のごみ収集車。
【請求項3】
さらに、前記画像処理装置は、その画像から特定の識別子のついたゴミ袋の位置情報を生成でき、
位置情報に対応する所定位置にごみ取り入れ口を移動可能な輸送管移動機構を備えることを特徴とする請求項2に記載のごみ収集車。
【請求項4】
前記隔壁は、ごみ収容槽を左右方向に区画することを特徴とする請求項1に記載のごみ収集車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−96561(P2006−96561A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−309798(P2005−309798)
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【分割の表示】特願2000−323752(P2000−323752)の分割
【原出願日】平成12年10月24日(2000.10.24)
【出願人】(591140776)ミタチパッケージ株式会社 (2)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【Fターム(参考)】