説明

すべり軸受

【解決手段】 すべり軸受1は、その内周面1aと外周面1bとを貫通する油穴2を備えており、潤滑油は油穴2を流通してすべり軸受1の内周面1aに供給されるようになっている。上記油穴2の外周面1b側の開口面積Sbは、内周面1a側の開口面積Saよりも大きく設定してあり、その開口面積SaとSbとを同一に設定した従来品に比較して、すべり軸受1の内周面1aへの供給油量を増大させることができるようにしてある。
【効果】 従来品に比較して供給油量を増大させることができるので、冷却効果を高めることができる。又は、従来品と同一の供給油量でよい場合には、内周面1a側の開口面積Saを従来品よりも小さくできるので、その分負荷能力を増大させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はすべり軸受に関し、より詳しくは、油穴を備えたすべり軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油穴を備えたすべり軸受は、周知である(例えば特許文献1)。この油穴は、平板状の軸受素材を半円筒状に湾曲させえた後、この湾曲させたすべり軸受素材にパンチやドリルで貫通孔を穿設することによって形成している。
そしてすべり軸受の外周面側から供給される潤滑油を上記油穴を介して内周面側に供給して、該内周面で軸支した回転軸に潤滑油を供給するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−151297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記油穴は、供給油量を増大させて冷却効果を高めるためにはその穴径(流路面積)を大きくすることが望ましいが、穴径を大きくすると回転軸との摺動面積が小さくなって負荷能力が低下するので、望ましくない。
つまり従来、油穴によってすべり軸受の負荷能力を増大させることと冷却効果を高めることとはトレードオフの関係にあり、同時に両者を満足させることは困難であった。
本発明はそのような事情に鑑み、すべり軸受の負荷能力の増大と冷却効果の増大とを同時に達成することが可能なすべり軸受を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明は、すべり軸受の外周面と内周面とを貫通する油穴を備えたすべり軸受において、上記油穴における外周面側の開口面積を、内周面側の開口面積よりも大きく設定したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
上記構成によれば、油穴は外周面側の開口面積が内周面側の開口面積よりも大きくなっているので、外周面側の開口面積を内周面側の開口面積と同一とした従来の油穴に比較した場合には、潤滑油の供給油量を大きくすることができ、それによって冷却能力を増大させることができる。
他方、潤滑油の供給油量を従来品と同一とした場合には、内周面側の開口面積を従来品よりも小さくすることができるので、その分摺動面積を大きくすることができる。したがってこの場合には、冷却効果を従来品と同等に保ちながら、すべり軸受の負荷能力を増大させることができる。
このように上記構成によれば、従来品に比較して、供給油量と摺動面積とのいずれか一方又は双方の増大を図ることができ、したがってその設定の仕方によって、すべり軸受の負荷能力の増大と冷却効果の増大とを同時に達成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施例を示す側面図。
【図2】図1の平面図。
【図3】図2のIII−III線に沿う拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図示実施例について本発明を説明すると、図1、図2において、すべり軸受1は半円筒形状を有しており、図示しないが2つのすべり軸受1の両端部を互いにつき合わせて円筒形状とすることにより、その内周面1aで、例えばクランクシャフト等の回転軸を軸支することができるようになっている。
上記すべり軸受1には油穴2を穿設してあり、この油穴2はすべり軸受1の内周面1aと外周面1bとを貫通するように形成してある。
本実施例では、上記油穴2は、すべり軸受1の軸方向が長径となるような楕円状(図2参照)に形成してあり、かつ図3に示すように、内周面1a側の開口面積Saよりも、外周面1b側の開口面積Sbが大きくなるように設定してある。
そのような加工は、例えば円錐状のドリルを用いて該ドリルを軸方向に移動させることによって形成することができる。このときの円錐状ドリルの円錐角は、つまり油穴2の拡開角度は5〜30度の範囲が好ましく、それに伴なって、すべり軸受1の肉厚の大きさによるが、外周面1b側の開口部の大きさは、楕円状の長径方向の寸法も短径方向(摺動方向)の寸法も、内周面1a側の開口部よりも0.1〜0.3mm程度大きくすることが望ましい。また上記楕円状の油穴2は、長径の大きさが短径の大きさに対して最大で1.5倍程度である。
【0009】
上記すべり軸受1は、図3に示すようにハウジング3によって支承されており、このハウジング3に、上記油穴2に潤滑油を供給するための潤滑油通路4を形成してある。この潤滑油通路4は、通常、油穴2よりも大径に形成されており、それによって油穴2と潤滑油通路4との連続部に段部2aが形成されることが多い。
なお、上記油穴2の内周面1a側の開口縁部と、外周面1b側の開口縁部とのそれぞれに面取りが施してあるが、それらの面取りは図面上では省略して示してある。
【0010】
上記構成において、潤滑油通路4から供給されてきた潤滑油は、油穴2を流通してすべり軸受1の内周面1aに供給されるようになる。
この際、すべり軸受1の外周面1b側の開口面積Sbは、内周面1a側の開口面積Saよりも大きくなっているので、その開口面積SaとSbとを同一に設定した従来品に比較して、すべり軸受1の内周面1aへの供給油量を増大させることができる。
したがって、従来品に比較して供給油量を増大させることによって、冷却効果を高めることができる。そして内周面1a側の開口面積Saは、従来品と同一であるので摺動面積が小さくなることが無く、したがってすべり軸受1の負荷能力の低下を防止することができる。
【0011】
本実施例においては、従来品に比較してすべり軸受1の内周面1aへの供給油量を増大させることができるようにしてあるが、仮にすべり軸受1の内周面1aへの供給油量を従来品と同一とした場合には、内周面1a側の開口面積Saを従来品よりも小さくすることができる。
この場合には、従来品に比較して摺動面積を大きくすることができるので、冷却効果を従来品と同等に保ちながら、すべり軸受1の負荷能力を増大させることができる。
このように本実施例においては、すべり軸受1の外周面1b側の開口面積Sbを内周面1a側の開口面積Saよりも大きく設定しているので、それらの大きさを適宜に設定することにより、従来品に比較して、供給油量と摺動面積とのいずれか一方又は双方の増大を図ることができ、したがってその設定の仕方によって、すべり軸受の負荷能力の増大と冷却効果の増大とを同時に達成することが可能となる。
【0012】
また本実施例においては、上記油穴2は、すべり軸受1の軸方向が長軸となるような楕円状に形成してあるので、図2の想像線で示す丸穴の油穴に比較して、該油穴2の長軸側の両端部はすべり軸受1の両側部1cに近接することになる。
これにより油穴2から流出する潤滑油は、図2の実線の矢印で示すように、丸穴の油穴から流出する想像線で示す潤滑油に比較して、すべり軸受1の両側部1cに供給され易くなる。
クランクシャフトのような回転軸の軸線は、すべり軸受1の内周面1aに対して常に平行状態のまま回転しているわけではなく、僅かに傾いて回転されることが多く、この場合にはすべり軸受1の両側部1cに大きな負荷が加わることになる。しかるに本実施例の油穴2から流出する潤滑油は、すべり軸受1の両側部1cに供給され易くなっているので、その部分の負荷能力を増大させることができる。
【0013】
さらに上述したように、油穴2と潤滑油通路4との連続部に段部2aが形成されることが多いが、本実施例ではすべり軸受1の外周面1b側の開口面積Sbを内周面1a側の開口面積Saよりも大きく設定しているので、図3の想像線で示す油穴のように両面積を同一に設定した場合に比較して、段部2aの度合いを小さくすることができる。
その結果、潤滑油通路4から油穴2へ流入する潤滑油の流れを相対的に滑らかにして圧力損失を防止でき、それによっても油穴2からすべり軸受1の内周面1aに供給される潤滑油の供給油量の増大を図ることができる。
【0014】
なお、上記実施例では油穴2を楕円状に形成してあるが、円形状であっても良いことは勿論である。また上記実施例では油穴2は楕円状のテーパ状に形成されているが、これに限定されるものではなく、すべり軸受1の外周面1b側の開口面積Sbが内周面1a側の開口面積Saよりも大きければ、その油穴の断面形状はどのような形状であっても良い。
また上記油穴2は、図示しないが、すべり軸受1の内周面1aに円周方向に沿って形成した油溝に連通していても良い。
【符号の説明】
【0015】
1 すべり軸受 1a 内周面
1b 外周面 1c 側部
2 油穴 2a 段部
3 ハウジング 4 潤滑油通路
Sa、Sb 開口面積

【特許請求の範囲】
【請求項1】
すべり軸受の外周面と内周面とを貫通する油穴を備えたすべり軸受において、
上記油穴における外周面側の開口面積を、内周面側の開口面積よりも大きく設定したことを特徴とするすべり軸受。
【請求項2】
上記内周面側の開口部は、円形状であることを特徴とする請求項1に記載のすべり軸受。
【請求項3】
上記内周面側の開口部は、すべり軸受の軸方向が長径となった楕円形状であることを特徴とする請求項1に記載のすべり軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−96419(P2013−96419A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236348(P2011−236348)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000207791)大豊工業株式会社 (152)
【Fターム(参考)】