説明

そっくり人形の制作方法

【課題】 立体形状の顔型に利用者の顔写真が印刷されたそっくり人形を簡単に制作可能な方法を提案すること。
【解決手段】 そっくり人形制作システム200では、撮影ブース210に入った利用者の顔写真をカメラ206により撮影し、これをパーソナルコンピュータ222で編集して、収納部221から供給される顔型212の表面にインクジェットプリンタ1を用いて印刷する。利用者は、人形販売機202から好みの人形210を購入し、その顔部分211に、自分の顔写真が印刷された顔型212を取り付ける。インクジェットプリンタ1を用いて顔型212の立体表面に直接に顔写真を印刷することにより、顔写真シールなどを人形の顔部分に貼り付ける場合に比べて、簡単に自己のそっくり人形を制作できる。顔型は着脱可能であるので、気に入った顔型に交換することも簡単である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェットプリンタを利用したそっくり人形の制作方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、プリントクラブ(登録商標)装置が流行しており、若年層の間では、この装置により自分の顔写真などが印刷された小さなシールを作成して、携帯電話、手帳などに貼ることが広く普及している。このような装置は特許文献1、2などに開示されている。
【0003】
ここで、携帯電話用のストラップなどとして用いられる人形の顔の部分に顔写真シールを貼り付けることが提案されている(特許文献3、4、5)。この場合、人形の顔は立体形状であるので、立体状の表面に沿って顔写真シールを密着状態に貼り付けることができるように、シール素材として伸縮性のあるシートを用いるようにしている。
【特許文献1】特開2001−293938号公報
【特許文献2】特開2001−352505号公報
【特許文献3】特開2002−309202号公報
【特許文献4】特開2002−306857号公報
【特許文献5】特開2003−284872号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、小さな人形の顔部分にシールを貼り付ける作業は面倒であり、位置がずれた状態で貼りついてしまうことが多い。また、平面状のシールに印刷された顔写真を曲面に貼り付けるので、貼り付けられた状態において前方から見た場合には、顔の周囲の部分がゆがんだ状態になってしまい、見た目も悪い。さらには、確実に貼り付けられないと、シールが剥がれ落ちてしまうこともある。
【0005】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、シールを用いることなく、簡単に顔写真が印刷されたそっくり人形を制作可能な方法を提案することになる。
【0006】
また、本発明の課題は、人形に限らず、動物、人気アニメーションのキャラクタなどを模した立体模型の制作方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の写真画像付き立体模型の制作方法は、人間、動物、人気アニメーションのキャラクタなどの対象物の形状を模した立体模型を用意する前工程と、前記対象物の全体あるいは一部を撮影する撮影工程と、撮影画像を、前記立体模型の対応部分に印刷可能な大きさとなるように編集する工程を含む画像編集工程と、編集後の撮影画像を、インクジェットプリンタを用いて、前記立体模型の対応部分に印刷する印刷工程とを有していることを特徴としている。
【0008】
ここで、前記前工程では、複数種類の前記立体模型を用意しておき、前記印刷工程に先立って、これらの立体模型の中から希望する立体模型を利用者に選択させる選択工程を含むことができる。
【0009】
また、前記立体模型における前記撮影画像が印刷される面を立体表面としておくことができる。
【0010】
この代わりに、前記立体模型における前記撮影画像が印刷される面を平面としておき、前記印刷工程の後に、前記立体模型の印刷部分を立体形状に成形してもよい。この場合には、前記画像編集工程において、立体形状に成形することによって印刷画像に発生する歪みを抑制するための修正を、印刷に先立って前記撮影画像に施すようにすればよい。
【0011】
前記立体模型は、皮革製品、プラスチック製品、金属製品、粘土製品、木製品、紙製品、陶器、磁器、および、食用可能な素材からなる製品のうちのいずれか一つとすることができる。勿論、これ以外の立体成形可能な素材からなる製品であればよい。
【0012】
次に、前記撮影画像が印刷される前記立体模型の部位を着脱可能な部品としておくことができる。この場合、前記の着脱可能な部品として複数種類の部品を用意しておき、前記印刷工程に先立って、これらの部品の中から希望する部品を利用者に選択させるようにすることができる。
【0013】
また、前記撮影画像が印刷される前記立体模型の部位を、前側片および後側片を組み合わせた部品とし、前記撮影工程では、当該部品の前側片および後側片に対応する対象物の部位を前側および後側から撮影し、前記印刷工程では、前側からの撮影画像を前記前側片の表面に印刷し、後側からの撮影画像を前記後側片の表面に印刷するようにしてもよい。
【0014】
さらに、前記撮影画像とは別に、予め、前記立体模型の各部分に印刷可能な複数種類の画像を用意しておき、前記印刷工程に先立って、利用者に前記画像を選択させ、前記印刷工程では、前記撮影画像と共に、選択された前記画像を印刷するようにしてもよい。
【0015】
次に、本発明はインクジェットプリンタを用いたそっくり人形の制作方法に関するものであり、少なくとも顔の部分が描かれていない人形を用意する前工程と、少なくとも利用者の顔を撮影する撮影工程と、撮影画像を、前記人形における対応部分に印刷可能な大きさに編集する工程を含む画像編集工程と、編集後の撮影画像を、インクジェットプリンタを用いて、前記人形における対応部分に印刷する印刷工程とを有していることを特徴としている。
【0016】
ここで、前記前工程では、複数種類の人形を用意しておき、前記印刷工程に先立って、利用者に印刷対象の人形を選択させるようにしてもよい。
【0017】
また、前記前工程において、前記人形の顔部分を、丸顔、細面顔、三角顔、四角顔などの変形した顔形に成形しておき、前記編集工程において、撮影画像の顔部分を、変形した顔形に対応する形状に変形させるようにしてもよい。
【0018】
さらに、前記印刷工程の後に、前記人形における少なくとも顔部分の表面を立体形状に成形し、前記画像編集工程では、顔部分を立体形状に成形したことによって印刷画像に発生する歪みを抑制するための修正を、予め前記撮影画像に施すようにしてもよい。
【0019】
次に、前記撮影画像が印刷される前記人形の部位を着脱可能な部品としておくこともできる。この場合、前記の着脱可能な部品として複数種類の部品を用意しておき、前記印刷工程に先立って、これらの部品の中から希望する部品を利用者に選択させるようにしてもよい。
【0020】
また、前記写真画像が印刷される前記人形の部位を、前側片および後側片を組み合わせた部品とし、前記撮影工程では、当該部品の前側片および後側片に対応する対象物の部位を前側および後側から撮影し、前記印刷工程では、前側からの撮影画像を前記前側片の表面に印刷し、後側からの撮影画像を前記後側片の表面に印刷するようにしてもよい。
【0021】
さらに、髪型、目、口、鼻、眉毛、耳、および顔の輪郭のうち、少なくとも一つの画像を複数種類用意しておき、希望するものを利用者に選択させ、前記印刷工程では、選択された画像を前記人形の対応する部位に印刷するようにしてもよい。
【0022】
また、予め用意した複数種類の服装、靴、手袋、あるいはバッグ・ベルトなどの装身具の中から、希望するものを利用者に選択させ、前記印刷工程において、選択された服装などを印刷するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の方法では、人形などの立体模型に、インクジェットプリンタを用いて直接に顔写真画像などを印刷するようにしている。インクジェットプリンタは、ドットインパクト式や熱転写式などの他の形式のプリンタとは異なり、印字ヘッドと印字面のギャップに多少のばらつきがあっても画像の印刷が可能であるので、印刷表面が立体表面であっても問題なく顔写真画像を印刷できる。したがって、プリントクラブ装置によって作成したシールを人形の顔に貼り付ける場合とは異なり、シール貼り付け作業が不要になる。また、貼り付け位置がずれるなどの弊害も発生しない。さらには、立体状(曲面状)の顔にシールを貼り付ける場合とは異なり、周囲の部分に歪みの少ない状態で写真画像を印刷できる。
【0024】
これに加えて、顔型などを人形本体から着脱可能としておけば、これらの組み合わせを変えることにより、利用者の希望する人形を簡単に制作することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したそっくり人形の制作システムの一例を説明する。
【0026】
図1は、本例のそっくり人形の制作システムの全体構成を示す概略構成図であり、図2は人形を示す説明図である。本例の制作システム200は、利用者を撮影するための撮影ブース201と、この撮影ブース201に隣接配置されている人形販売機202および印刷ステーション203とを備えている。
【0027】
撮影ブース201には、操作パネル205、カメラ206などが設置されている。利用者は撮影ブース201内の所定の位置に立ち(あるいは座り)、操作パネル205の撮影ボタン207を操作することにより、顔写真を撮影することができるようになっている。また、人形販売機202には複数種類の人形が展示および収納されており、利用者は、操作パネル205の人形選択ボタン208を操作することにより、気に入った人形を選択して購入することが可能となっている。
【0028】
人形販売機202から購入可能な人形210は、その顔部分211は平坦な面となっており、ここに、印刷ステーション203において撮影画像が印刷された後の顔型212を着脱可能な状態で取り付けることができるようになっている。顔型212はその表面側の部分は立体面とされ、目に対応する部位に窪みが形成され、唇に対応する部位が盛り上がっており、また、鼻に対応する部位も同様に隆起している。顔型212の裏面は、人形210の顔部分211に対応する平坦面とされており、この中心には垂直に突起213が形成されている。この突起213を差込可能な差込穴214が人形210の顔部分211の中心に形成されている。
【0029】
印刷ステーション203は、印刷媒体である顔型212の収納部221と、顔型212の表面に印刷を行うためのインクジェットプリンタ1と、このインクジェットプリンタ1を駆動制御する駆動制御装置としてのパーソナルコンピュータ222とを有している。パーソナルコンピュータ222は、CPU、ROM、RAMおよびデータおよび制御信号を送受するバスを備え、カメラ206から得られる撮影画像を編集する編集機能と、編集された撮影画像を印刷データとしてインクジェットプリンタ1に供給する印刷データ生成機能を有している。
【0030】
図3には、収納部221における顔型212の収納状態を示してある。顔型212は、長方形の顔型保持ベース231の表面に保持されている。顔型保持ベース231の上面には、一定の間隔で顔型212の取付面232が形成されており、各取付面232の中心には、顔型212の突起213を差し込み可能な取付孔233が形成されている。本例では、10個の取付面232が形成されている。
【0031】
次に、インクジェットプリンタ1は、図1に示すように、そのインクジェットヘッドによる印刷位置を経由して搬送される媒体搬送トレー7を備えている。この媒体搬送トレー7の上面には、上記の顔型保持ベース231を担持可能な担持面74が形成されており、この担持面74には、顔型保持ベース231を位置決めするために、当該顔型保持ベース231を嵌め込み固定可能な浅い凹部が形成されている。インクジェットプリンタ1の詳細な構成については後述する。
【0032】
次に、図4を参照して、本例のシステム200による顔型印刷動作を説明する。まず、顔型212がプラスチックなどの撥水性素材から形成されている場合には、その表面にあらかじめ水性インク受像層を形成するためのアンダーコート剤を塗布しておく。利用者が所定料金を支払い(ステップST1)、撮影ブース201において撮影ボタン207を操作すると(ステップST2)、利用者の顔写真が撮影される(ステップST3)。利用者は操作パネル205の表示画面206に表示されている操作案内に従って操作を行う。撮影画像はパーソナルコンピュータ222に取り込まれて、所定の画像編集が行われる。画像編集にあたっては、一般的なプリントクラブ装置のように、編集画面上において利用者の好みによって撮影画像に各種の装飾を施すことができるようにしてもよい(ステップST4)。
【0033】
次に、編集後の撮影画像に対応する印刷データが生成されて(ステップST5)、これがインクジェットプリンタ1に供給される。パーソナルコンピュータ222の制御により、収納部221から顔型212がインクジェットプリンタ1の搬送トレー7に供給され、そこに設置される。図3に示すように、本例では、10枚一組の顔型212が顔型保持ベース231に取り付けられており、1枚の顔型保持ベース231が搬送トレー7に供給される。顔型保持ベース231が担持された搬送トレー7はインクジェットプリンタ1の印字位置を経由して搬送される。印字位置を通過する間に、各顔型212に、撮影画像が印刷される(ステップST6)。本例では10枚の顔型に顔写真が印刷されるので、それら1枚毎に異なった修飾が施された顔写真を印刷してもよいし、同一の顔写真画像を複数枚の顔型に印刷するようにしてもよい。これらの操作は、操作パネル205上において、利用者の好みに応じて選択設定できるようにしておくことが望ましい。
【0034】
印刷終了後には、予め定められている排出口204から、顔写真が印刷された10枚の顔型212が取り付けられた状態の顔型保持ベース231が利用者に払い出される(ステップST7)。
【0035】
ここで、印刷動作中においては、操作パネル205の表示画面206上に、人形の選択を促す指示が表示される。利用者が、人形販売機202に展示されている人形の種類を選択して操作パネル205上の人形選択ボタン208を押すと、選択された人形が人形販売機202の販売口209から利用者に払い出される。利用者が購入した人形210の顔部分に印刷済みの顔型212の一つを取り付けることにより、利用者自身とそっくりの人形が得られる。
【0036】
(その他の実施の形態)
上記のシステム200では、利用者の顔写真をとり、得られた撮影画像を人形の顔型に印刷している。顔以外の部分を撮影して、人形の対応する部位に印刷するようにしてもよい。この場合には、例えば、人形販売機202で販売される人形を、直接に印刷システム203の側に搬送して、インクジェットプリンタ1によって印刷すればよい。
【0037】
また、上記の例では、印刷後の顔型を人形に取り付けるようにしているが、人形の顔部分に直接に撮影画像を印刷してそっくり人形を制作するようにしてもよい。
【0038】
さらに、丸顔、細面顔、三角顔、四角顔などの変形した顔部分を備えた人形あるいは顔型を用意しておき、好みの形状の顔部分を備えた人形あるいは顔型を利用者に選択させ、選択された人形の顔部分あるいは顔型に、変形した顔形に対応する形状となるように撮影画像を編集することにより生成した印刷データを、インクジェットプリンタ1により印刷してもよい。
【0039】
また、人形の顔部分を平坦面としておき、そこに撮影画像を印刷し、印刷後の顔部分を立体形状となるように成形してもよい。この場合には、顔部分を立体形状に成形したことによって印刷画像に発生する歪みを抑制するための修正を、予め撮影画像に施すようにすればよい。
【0040】
次に、上記の例では顔型が着脱可能となっているが、これ以外の部分を着脱可能としておくこともできる。また、そのような着脱可能な部分に対応する画像を撮影して、当該部分に印刷を施すようにしてもよい。この場合、人形の髪の毛、目、鼻、耳、唇などの着脱可能な部品として、それぞれ異なる形状をした複数種類の部品を用意しておき、印刷に先立って、これらの部品の中から希望する部品を利用者に選択させるようにしてもよい。
【0041】
また、人形全体、あるいはそこに着脱可能に取り付けた部品を、前側片および後側片を組み合わせた部品とし、撮影時には、当該部品の前側片および後側片に対応する利用者の部位を前側および後側から撮影し、前側からの撮影画像を前側片の表面に印刷し、後側からの撮影画像を後側片の表面に印刷し、これらを背中合わせの状態で組み合わせ可能としてもよい。
【0042】
あるいは、髪型、目、口、鼻、眉毛、耳、および顔の輪郭などの人形の部分のデザインをそれぞれ複数種類用意しておき、希望するものを利用者に選択させ、選択された画像を人形の対応する部位に印刷するようにしてもよい。
【0043】
同様に、複数種類の服装、靴、手袋、あるいはバッグ・ベルトなどの装身具や手持ち品などのデータを用意しておき、希望するものを利用者に選択させ、選択された服装などのデザインを印刷するようにしてもよい。
【0044】
なお、人形、顔型の素材としては、皮革、プラスチック、粘土、紙、金属、食用素材など、立体成形可能な素材であればよい。
【0045】
次に、本発明は、そっくり人形だけでなく、ペットなどの動物、漫画のキャラクタを模した立体模型を用意しておき、そこの顔部分に利用者のペットの顔写真、利用者自身の顔写真などを印刷する場合などにも適用できる。
【0046】
このような場合においても、印刷に先立って、複数種類の立体模型の中から希望する立体模型を利用者に選択させるようにすることができる。また、撮影画像が印刷される立体模型の面は立体表面としておくことができる。この代わりに、立体模型における撮影画像が印刷される面を平面としておき、印刷後に、立体模型の印刷部分を立体形状に成形するようにしてもよい。この場合には、立体形状に成形することによって印刷画像に発生する歪みを抑制するための修正を、印刷に先立って撮影画像に施しておくことが望ましい。
【0047】
また、撮影画像が印刷される立体模型の部位を着脱可能な部品としておくことができる。この場合、着脱可能な部品として複数種類の部品を用意しておき、印刷に先立って、これらの部品の中から希望する部品を利用者に選択させるようにしてもよい。
【0048】
さらに、撮影画像が印刷される立体模型の部位を、前側片および後側片を組み合わせた部品とし、撮影時に、当該部品の前側片および後側片に対応する対象物の部位を前側および後側から撮影し、前側からの撮影画像を前側片の表面に印刷し、後側からの撮影画像を後側片の表面に印刷してもよい。
【0049】
さらには、撮影画像とは別に、予め、立体模型の各部分に印刷可能な複数種類の画像を用意しておき、印刷に先立って、利用者にこれらの画像を選択させ、撮影画像と共に、選択された画像を立体模型に印刷してもよい。
【0050】
(インクジェットプリンタの例)
次に、図5は本例の印刷システム200に用いることのできるインクジェットプリンタ1の概略構成図である。図示のインクジェットプリンタ1はトレー搬送ユニット2を有し、このトレー搬送ユニット2の上面3には、媒体搬送トレー7を所定方向に搬送するための送りローラ4と、複数個のガイドローラ5とが配列されている。トレー搬送ユニット2の上面3の上方にはヘッドユニット6が配置されている。ヘッドユニット6は、トレー搬送方向に直交する方向にインクジェットヘッドを往復移動させ、当該ヘッドユニット6の直下を通過する媒体搬送トレー7に搭載されている媒体に対して印刷を行う。
【0051】
ヘッドユニット6には、左右に、それぞれ、押さえばね8が取り付けられており、各押さえばね8の先端には回転自在の状態で押さえローラ9が取り付けられている。左右の押さえローラ9は、媒体搬送トレー7の両側の上面部分7a、7bを下方に押し付けている。従って、媒体搬送トレー7の裏面は送りローラ4に押し付けられた状態に保持され、送りローラ4によって当該媒体搬送トレー7が確実に搬送される。
【0052】
媒体搬送トレー7の左右の上面部分7a、7bの間には高さ調整可能な支持板10が配置されており、この支持板10の高さは、その裏面側に配置するスペーサ(図示せず)の高さ寸法によって決まるようになっている。したがって、支持板10に乗せた顔型ベース231に搭載されている顔型212と、ヘッドユニット6のインクジェットヘッド(図示せず)とのギャップが適切な寸法となるように、スペーサにより支持板10の高さを調節すればよい。
【0053】
図6はインクジェットプリンタ1の代わりに用いることのできるインクジェットプリンタの例を示す概略構成図である。図示のインクジェットプリンタ11は、トレー搬送ユニット12と、この上方に配置されたヘッドユニット13とを有している。トレー搬送ユニト12には、トレー搬送方向に延びるリニアガイド14が配置されており、このリニアガイド14に沿って、媒体搬送トレー7Aが往復移動可能である。
【0054】
媒体搬送トレー7Aは、全体として扁平な厚さの直方体形状の箱であり、その一方の側面15には、一定の間隔で搬送方向に延びる垂直板16が取り付けられている。垂直板16を挟み、その内側には、垂直に配置した送りローラ17が位置し、その外側には、ばね力によって垂直板16を当該送りローラ17に押し付けている複数個の押さえローラ18が配置されている。したがって、垂直板16は送りローラ17に押し付けられているので、送りローラ17の回転によって、搬送方向に送られる。よって、垂直板16が取り付けられている媒体搬送トレー7Aがリニアガイド14に沿って、搬送方向に搬送される。
【0055】
また、媒体搬送トレー7Aは昇降ステージ19を備えており、調整ダイヤル20によって昇降させることが可能となっている。したがって、この昇降ステージ19に顔型ベース231を乗せ、そこに搭載されている顔型212とヘッドユニット13側のインクジェットヘッドとのギャップが適切な寸法となるように調節し、顔型212に印刷を行うことができる。
【0056】
この構成のインクジェットプリンタ11の媒体搬送トレー7Aは、一方の側に送りローラ17によって送られる垂直板16を備えている。したがって、図5の媒体搬送トレー7のように、その上面の両側にばね押さえのスペースが不要となり、その分、媒体搬送トレー7Aの上面を広く使うことができるという利点がある。
【0057】
次に、図7は、インクジェットプリンタ1の代わりに用いることのできるインクジェットプリンタの別の例を示す説明図である。図示のインクジェットプリンタ21は、トレー搬送ユニット22と、この上方に配置したヘッドユニット23とを有しており、トレー搬送ユニット22の上面に沿って媒体搬送トレー7Bが往復移動可能となっている。トレー搬送ユニット22の上面には、搬送方向に沿って、複数個のガイドローラ24が配列されている。また、モータ駆動される送りローラ25と、この送りローラ25に対して上側からばね力によって押し付けられている押さえローラ26とが配置されている。
【0058】
媒体搬送トレー7Bは扁平な箱型形状をしており、その裏面27に一定の間隔で平行に延びる水平板28が取り付けられている。この水平板28の表面には摩擦係数の大きなフィルムあるいはシートが貼り付けられており、この水平板28が、送りローラ25と押さえローラ26の間に挟まれている。したがって、送りローラ25の回転により、水平板28が搬送され、これが取り付けられている媒体搬送トレー7Bが搬送される。
【0059】
媒体搬送トレー7Bの上面は昇降板29によって規定されており、昇降板29は前後一対の平行なリンク31、32と、これらを下端を中心として前後に揺動させるための直動機構33からなる平行クランク機構によって支持されている。調整ダイヤル34を回すと、ボールねじ・ナットなどから構成されている直動機構33によって平行なリンク31、32が前後に揺動して、昇降板29が同一姿勢を保持したまま昇降する。したがって、この上に乗せた顔型保持ベース231に搭載されている顔型212と、ヘッドユニット23のインクジェットヘッド23aとのギャップを適切な寸法に調節することができる。
【0060】
ここで、媒体搬送トレー7Bは、一般的な紙葉類とは異なり重量があるので、慣性力によって所定の位置に止まらず、行き過ぎてしまうことがある。媒体搬送トレー7Bの搬送位置を精度良く制御できないと、印刷ドット間隔が搬送方向に広がって、印刷画像が部分的に搬送方向に伸びて変形してしまう。この弊害を防止するためには、図7(c)に概念図を示すように、媒体搬送トレー7Bに対して、搬送方向に向けて常に一定のブレーキ力を加える負荷機構40を取り付けておくことが望ましい。例えば、引き出し量が変わっても常に一定のトルクを発生させることのできる定荷重ばね、たとえばコンストン(登録商標)ばね40を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明を適用した印刷システムの全体構成図である。
【図2】図1の印刷システムに用いる人形および顔型を示す説明図である。
【図3】顔型を保持している保持ベースを示す斜視図および断面図である。
【図4】図1の印刷システムにおける印刷動作を示す概略フローチャートである。
【図5】図1のインクジェットプリンタの一例を示す説明図である。
【図6】図1のインクジェットプリンタの他の例を示す概略構成図および部分説明図である。
【図7】図1のインクジェットプリンタの他の例を示す図であり、(a)は搬送方向に直交する断面構成を示す説明図、(b)は搬送方向に平行な断面を示す説明図、(c)は媒体搬送トレーの負荷機構を示す概念図である。
【符号の説明】
【0062】
1、11、21 インクジェットプリンタ
7、7A、7B 搬送トレー
200 制作システム
201 撮影ブース
202 人形販売機
203 印刷ステーション
204 排出口
205 操作パネル
206 カメラ
207 撮影ボタン
208 人形選択ボタン
209 排出口
210 人形
211 顔部分
212 顔型
213 突起
214 差込穴
221 収納部
222 パーソナルコンピュータ
231 顔型保持ベース
232 取付部
233 取付孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間、動物、人気アニメーションのキャラクタなどの対象物の形状を模した立体模型を用意する前工程と、
前記対象物の全体あるいは一部を撮影する撮影工程と、
撮影画像を、前記立体模型の対応部分に印刷可能な大きさとなるように編集する工程を含む画像編集工程と、
編集後の撮影画像を、インクジェットプリンタを用いて、前記立体模型の対応部分に印刷する印刷工程とを有している写真画像付き立体模型の制作方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記前工程では、複数種類の前記立体模型を用意しておき、
前記印刷工程に先立って、これらの立体模型の中から希望する立体模型を利用者に選択させる選択工程を含むことを特徴とする写真画像付き立体模型の制作方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記立体模型における前記撮影画像が印刷される面は立体表面であることを特徴とする写真画像付き立体模型の制作方法。
【請求項4】
請求項1または2において、
前記立体模型における前記撮影画像が印刷される面は平面であり、
前記印刷工程の後に、前記立体模型の印刷部分を立体形状に成形する成形工程を含み、
前記画像編集工程では、立体形状に成形することによって印刷画像に発生する歪みを抑制するための修正を、印刷に先立って前記撮影画像に施すことを特徴とする写真画像付き立体模型の制作方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のうちのいずれかの項において、
前記立体模型は、皮革製品、プラスチック製品、金属製品、粘土製品、木製品、紙製品、陶器、磁器、および、食用可能な素材からなる製品のうちのいずれか一つであることを特徴とする写真画像付き立体模型の制作方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のうちのいずれかの項において、
前記撮影画像が印刷される前記立体模型の部位が着脱可能な部品となっていることを特徴とする写真画像付き立体模型の制作方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記の着脱可能な部品として複数種類の部品を用意しておき、
前記印刷工程の先立って、これらの部品の中から希望する部品を利用者に選択させる部品選択工程を含むことを特徴とする写真画像付き立体模型の制作方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のうちのいずれかの項において、
前記撮影画像が印刷される前記立体模型の部位を、前側片および後側片を組み合わせた部品とし、
前記撮影工程では、当該部品の前側片および後側片に対応する対象物の部位を前側および後側から撮影し、
前記印刷工程では、前側からの撮影画像を前記前側片の表面に印刷し、後側からの撮影画像を前記後側片の表面に印刷することを特徴とする写真画像付き立体模型の制作方法。
【請求項9】
請求項1ないし8のうちのいずれかの項において、
前記撮影画像とは別に、予め、前記立体模型の各部分に印刷可能な複数種類の画像を用意しておき、
前記印刷工程に先立って、利用者に前記画像を選択させ、
前記印刷工程では、前記撮影画像と共に、選択された前記画像を印刷することを特徴とする写真画像付き立体模型の制作方法。
【請求項10】
少なくとも顔の部分が描かれていない人形を用意する前工程と、
少なくとも利用者の顔を撮影する撮影工程と、
撮影画像を、前記人形における対応部分に印刷可能な大きさに編集する工程を含む画像編集工程と、
編集後の撮影画像を、インクジェットプリンタを用いて、前記人形における対応部分に印刷する印刷工程とを有しているそっくり人形の制作方法。
【請求項11】
請求項10において、
前記前工程では、複数種類の人形を用意しておき、
前記印刷工程に先立って、利用者に印刷対象の人形を選択させる選択工程を有していることを特徴とするそっくり人形の制作方法。
【請求項12】
請求項10または11において、
前記前工程において、前記人形の顔部分は、丸顔、細面顔、三角顔、四角顔などの変形した顔形に成形しておき、
前記編集工程では、撮影画像の顔部分を、変形した顔形に対応する形状に変形させることを特徴とするそっくり人形の制作方法。
【請求項13】
請求項10または11において、
前記印刷工程の後に、前記人形における少なくとも顔部分の表面を立体形状に成形する成形工程を含み、
前記画像編集工程では、顔部分を立体形状に成形したことによって印刷画像に発生する歪みを抑制するための修正を、予め前記撮影画像に施すことを特徴とするそっくり人形の制作方法。
【請求項14】
請求項10ないし13のうちのいずれかの項において、
前記撮影画像が印刷される前記人形の部位が着脱可能な部品となっていることを特徴とするそっくり人形の制作方法。
【請求項15】
請求項14において、
前記の着脱可能な部品として複数種類の部品を用意しておき、
前記印刷工程に先立って、これらの部品の中から希望する部品を利用者に選択させる部品選択工程を含むことを特徴とするそっくり人形の制作方法。
【請求項16】
請求項10ないし15のうちのいずれかの項において、
前記写真画像が印刷される前記人形の部位を、前側片および後側片を組み合わせた部品とし、
前記撮影工程では、当該部品の前側片および後側片に対応する対象物の部位を前側および後側から撮影し、
前記印刷工程では、前側からの撮影画像を前記前側片の表面に印刷し、後側からの撮影画像を前記後側片の表面に印刷することを特徴とするそっくり人形の制作方法。
【請求項17】
請求項10ないし16のうちのいずれかの項において、
髪型、目、口、鼻、眉毛、耳、および顔の輪郭のうち、少なくとも一つの画像を複数種類用意しておき、希望するものを利用者に選択させる部位選択工程を含み、
前記印刷工程では、選択された画像を前記人形の対応する部位に印刷することを特徴とするそっくり人形の制作方法。
【請求項18】
請求項10ないし17のうちのいずれかの項において、
予め用意した複数種類の服装、靴、手袋、あるいはバッグ・ベルトなどの装身具の中から、希望するものを利用者に選択させる選択工程と、
前記印刷工程では、選択された服装などを印刷することを特徴とするそっくり人形の制作方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−35562(P2006−35562A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−217144(P2004−217144)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(594106911)株式会社マスターマインド (12)
【Fターム(参考)】