てこ式検出器、スタイラス、及びスタイラス自動交換装置
【課題】てこ式検出器に対して複数種のスタイラスを交換する作業の負担を軽減でき、複数種のスタイラスを自動で交換できるてこ式検出器、スタイラスおよびスタイラス自動交換装置を提供する。
【解決手段】スタイラスホルダにスタイラス31を装着するため、ホルダの軸体36の中心軸に直交する方向にスタイラス本体33の長尺方向を合わせて、かつ軸体36の中心軸に直交する方向にスタイラス本体33に設けた着座板体34を移動させた場合に、この着座板体34に位置するスタイラス31全体の重心(重心軸)まで軸体36を案内する略U字状の切欠部を、当該着座板体34に形成する。切欠部によって軸体36が重心まで案内された状態で、板状揺動体37が着座板体34を着脱可能に保持する。
【解決手段】スタイラスホルダにスタイラス31を装着するため、ホルダの軸体36の中心軸に直交する方向にスタイラス本体33の長尺方向を合わせて、かつ軸体36の中心軸に直交する方向にスタイラス本体33に設けた着座板体34を移動させた場合に、この着座板体34に位置するスタイラス31全体の重心(重心軸)まで軸体36を案内する略U字状の切欠部を、当該着座板体34に形成する。切欠部によって軸体36が重心まで案内された状態で、板状揺動体37が着座板体34を着脱可能に保持する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
表面性状測定装置に用いられるてこ式検出器、スタイラス及び自動交換装置に関する。詳しくは、スタイラスが着脱自在に装着されたてこ式検出器、およびこの検出器からスタイラスを自動的に着脱させるスタイラス自動交換装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
被測定物の表面にスタイラスを接触させた状態において、スタイラスを被測定物の表面に沿って移動させ、このとき、被測定物の表面粗さによって生じるスタイラスの変位を検出し、このスタイラスの変位から被測定物の表面粗さを測定する表面粗さ測定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の図3および図9に記載の表面粗さ測定装置に取り付けられているてこ式検出器は、被測定物に接触するスタイラス、および該スタイラスを着脱自在に保持するスタイラスホルダを備える。
表面粗さ測定装置を使用するにあたっては、予め、通常のスタイラスのほかに、被測定物の測定部位形状に対応して用意された各種形状のスタイラスが用意されているから、被測定物の測定部位形状に適したスタイラスに交換したのち、測定を行う。例えば、小孔の表面粗さを測定する場合には、小孔測定用スタイラスに、あるいは、深い溝の表面粗さを測定する場合には、スタイラス長さが長い深溝測定用スタイラスなどに交換したのち、測定を行う。
【0004】
表面粗さ測定装置に限らず、真円度測定装置や輪郭形状測定装置などの表面性状測定装置においても、測定内容の多様化に対応すべく、被測定物の測定部位に対応して用意された各種形状のスタイラスが用意されている。
スタイラスの交換作業は、従来、測定者によって行われている。これには、測定者が、測定作業を一旦中断し、現在使用中のスタイラスを検出器から取り外したのち、新たなスタイラスを検出器に装着して、測定作業を再開していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−74616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のようなスタイラスの交換作業では、測定作業を一旦中断し、測定者が手動で、スタイラスの取外作業およびスタイラスの装着作業を行わなければならないため、測定作業の中断時間が長いうえ、スタイラスの取外作業および装着作業に伴う測定者への負担も大きい。このような状況に対し、近年、表面性状測定装置における測定の無人化、自動化の要求が増加してきた。
そこで、三次元測定機などで利用されているオートプローブチェンジャーを表面性状測定装置に適用することが考えられる。つまり、複数種のスタイラスを格納した交換ラックを測定装置に設置して、検出器のスタイラスを自動的に交換するというものである。
【0007】
しかし、従来のように手動でスタイラスを交換する場合であっても、交換ラックを用いて自動的に交換する場合であっても、異なる種類のスタイラスに交換することによって、てこ式検出器のバランスが崩れ、検出器の測定力が変化してしまうという共通の課題があった。測定力とは測定中にスタイラスが被測定物に付与する力を示す。特に精密測定の際は、交換後のスタイラスのバランス調整が必要となる。そのため、交換ラックを用いてスタイラスを自動交換するには、バランス調整をも自動で行えるような機構を検出器に内蔵させなくてはならなかった。
【0008】
本発明は、前記従来技術に対する要求に応えるためのものであり、その解決すべき課題は、
被測定物と接触する接触部を有したスタイラスと、
前記スタイラスを揺動自在に支持するスタイラスホルダと、
前記スタイラスの揺動変位を検出する変位検出手段と、を備え、被測定物の表面性状を測定するために前記スタイラスの揺動変位を取得するてこ式検出器であって、
前記スタイラスは、先端に前記接触部を有する長尺状のスタイラス本体と、該スタイラス本体の基端に設けられ前記スタイラスホルダに着脱自在な着座体とを有する場合に、
複数種のスタイラスを手動で交換する作業の負担を軽減できるてこ式検出器、およびそのスタイラス、さらには、てこ式検出器に対して複数種のスタイラスを自動で交換できるスタイラス自動交換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために本発明の請求項1に係るてこ式検出器においては、
前記スタイラスホルダには、前記スタイラスの揺動中心となる軸体が設けられ、
前記着座体には、前記スタイラスホルダから切り離された状態の前記スタイラス全体の重心が位置しており、かつ前記スタイラスを装着する際に前記スタイラスの重心まで前記軸体を案内する切欠部が形成されている。この切欠部の形状は、略U字、略V字、略L字など特に限定されない。
そして、該切欠部によって前記軸体が前記重心まで案内された状態で、前記スタイラスホルダに前記着座体が着脱自在に保持され、前記スタイラスが軸体周りに揺動自在となることを特徴とする。
なお、本発明においてスタイラスホルダに設けられる軸体は、このホルダに回転自在に支持されたものでもよく、ホルダに固定支持されたものでもよい、後者の場合、固定された軸体の中心軸周りに後述の揺動体が回転することになる。
【0010】
本発明に係るてこ式検出器において、前記スタイラスの着座体には、該着座体の切欠部に前記スタイラス全体の重心が含まれるように、前記重心の位置を調整するカウンタバランス部が設けられていることが好ましい。
【0011】
本発明に係るてこ式検出器において、被測定物の測定部位に対応して用意された複数種の前記スタイラスには、該スタイラスを取出可能かつ格納可能に収容する交換ラックに設けられた被係止片部を係止可能な係止片部が設けられている。そして、前記係止片部は、前記スタイラスの着座体に設けられ、かつ前記カウンタバランス部に対して前記軸体の中心軸方向にオフセットした位置に設けられていることが好ましい。
ここで、着座体の係止片部が交換ラックの被係止片部を係止する動作と、保持されたスタイラスがスタイラスホルダから離脱する動作とは連係して実行される。つまり、スタイラスをスタイラスホルダから離脱させる際、スタイラスホルダを交換ラックに接近させて、まず被係止片部に係止片部を係止させる。この係止状態を保って検出器を交換ラックから離間させると、着座体がスタイラスホルダから離脱するから、スタイラスを交換ラックに格納できる。反対にスタイラスをスタイラスホルダに装着させる際、スタイラスホルダを交換ラックに接近させてスタイラスホルダの軸体をスタイラスの重心まで案内して、スタイラスの着座体をスタイラスホルダに装着させる。その後、被係止片部と係止片部との係止が解除される方向にスタイラスホルダを移動させて、交換ラックからスタイラスを取り出せばよい。
【0012】
本発明に係るてこ式検出器では、前記スタイラスホルダには、前記軸体に軸支された揺動体が設けられている。そして、前記軸体が前記スタイラスの重心まで案内された状態では、前記揺動体および前記着座体が、前記軸体の軸方向に並んで配置されており、前記揺動体には、弾性力で前記着座体を該揺動体に押し付けて保持する保持用弾性体と、該保持用弾性体を支持する支持体とが設けられていることが好ましい。
この保持用弾性体は、その基端が前記支持体に回転自在に支持され、かつ前記スタイラスを前記スタイラスホルダに装着の際、先端が前記着座体によって押され、回転しながら弾性変形を生じ、発生した弾性力で前記着座体を前記該揺動体に押し付けて保持することが好ましい。
【0013】
または、前記保持用弾性体は、その基端が前記支持体に片持ち支持され、かつ前記スタイラスを前記スタイラスホルダに装着の際、前記着座体によってその先端が前記揺動体から遠くなる方向に押され、曲げによる弾性変形を生じ、発生した弾性力で前記着座体を前記揺動体に押し付けて保持することが好ましい。ここで、前記スタイラスが前記スタイラスホルダに装着された状態で、前記着座体は、前記切欠部を挟んだ位置に、前記保持用弾性体側への2つの凸部を有する。前記保持用弾性体は板状であり、一部分が前記支持体に片持ち支持され、他の部分が前記2つの凸部により前記揺動体から遠くなる方向に押されていることが好ましい。
【0014】
本発明に係るてこ式検出器では、前記スタイラスが前記スタイラスホルダに装着された状態で、前記支持体が、前記切欠部を通って前記揺動体から前記軸体の軸方向に突出して形成され、該突出した先端部で前記保持用弾性体を支持していることが好ましい。
【0015】
本発明に係るてこ式検出器では、前記着座体と前記揺動体との間に複数の球部を一直線上でない少なくとも三箇所に配置し、この球部によって前記揺動体に対する前記着座体の前記軸体の中心軸方向の位置決めを行うことが好ましい。そして、前記複数の球部のうち少なくとも2個は、着座体に回転支持され、かつ装着の際に前記軸体が重心まで案内される方向に沿って形成された前記揺動体の溝上を転動することが好ましい。
【0016】
本発明に係るスタイラスは、前記てこ式検出器に着脱自在に装着されることを特徴とする。
本発明に係るスタイラスの自動交換装置は、被測定物の測定部位に対応して用意された複数種のスタイラスを取出可能かつ格納可能に収容した交換ラックと、
前記てこ式検出器を前記交換ラックに対して接近、離間する方向へ駆動させる検出器駆動機構と、制御装置とを備え、
前記制御装置は、スタイラス交換指令が与えられた際、前記検出器駆動機構を制御しながら、前記スタイラスホルダと前記交換ラックとの間でスタイラス交換動作を実行することを特徴とする。
【0017】
本発明に係るスタイラスの自動交換装置では、前記スタイラスの前記着座体は板状に形成されており、
前記交換ラックは、該着座体の平坦面上で前記軸体が前記スタイラスの重心まで案内される方向に直交する方向へ前記てこ式検出器を移動させる際に、前記着座体に設けられた係止片部と係止しながら前記スタイラスを収納位置まで導くための、前記てこ式検出器の移動方向に延びた被係止片部と、
前記スタイラスが収納位置にある状態で、前記軸体が前記スタイラスの重心まで案内される方向への前記スタイラスの移動を規制する規制片部と、を有し、
前記スタイラスが収納位置にある状態で、前記軸体が前記スタイラスの重心まで案内される方向へ前記検出器が移動することにより、前記スタイラスだけが前記交換ラックに格納されることが好ましい。
【0018】
または、本発明に係るスタイラスの自動交換装置では、前記スタイラスの前記着座体は板状に形成されており、
前記交換ラックは、該着座体の平坦面上で前記軸体が前記スタイラスの重心まで案内される方向へてこ式検出器を移動させる際に、前記着座体に設けられた係止片部と係止しながら、前記スタイラスを収納位置まで導くための、前記てこ式検出器の移動方向に延びた被係止片部と、
前記スタイラスが収納位置にある状態で、前記軸体が前記スタイラスの重心まで案内される方向への前記スタイラスの移動を規制する規制片部と、を有し、
前記規制片部が、前記スタイラスの移動を規制するために前記着座体を係止する係止位置と、前記着座体の係止を解除する解除位置との間を進退可能に設けられ、前記スタイラスが収納位置にある状態で、前記規制片部が係止位置に維持され、前記軸体が前記スタイラスの重心まで案内される方向へ前記検出器が移動することにより、前記スタイラスだけが前記交換ラックに格納されることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明に係るてこ式検出器の構成によれば、スタイラスの接触部とは反対側の基端に、着座体が一体形成されている。このスタイラスの着座体は、スタイラスホルダに対して着脱可能に保持される部材であり、一体形成には、スタイラス本体と着座体とは別個に製作したものを組立てて一体にすることが含まれる。
本発明においては、スタイラスの揺動軸である軸体をスタイラスの重心まで案内する切欠部を前記スタイラスの着座体に形成した。装着の際にこの切欠部を通ることによって、軸体がスタイラスの重心までアクセス可能に構成されている。従って、どのスタイラスの重心も、てこ式検出器の揺動中心である軸体と同軸上に設定されるから、異なる種類のスタイラスに交換した後も、揺動体を含めたスタイラス全体のバランスが崩れず、交換前と同じ測定力で測定を継続できる。特に精密測定において、交換後のスタイラスのバランス調整が不要となり、検出器にバランス調整用機構を内蔵させる必要もない。
【0020】
本発明に係る構成によれば、スタイラス全体の重心が着座体の切欠部に含まれるように、該着座体に重心の位置を調整するカウンタバランス部が設けられている。例えば、第1のスタイラスにおいて、そのスタイラス本体の長さや接触部の形状、これらの材質などを変更した第2のスタイラスがあり、両スタイラスを用いる場合がある。第1のスタイラスの重心に合わせてスタイラスの着座体を形成し、これと異種類の第2のスタイラスの着座体を第1のスタイラスの着座体と同一に形成したとしても、第2のスタイラスの着座体にカウンタバランス部を設けるだけで、第1のスタイラスの着座体と同じ位置に第2のスタイラスの重心を設定できる。すなわち、カウンタバランス部を設けることで、異なる種類のスタイラスの着座体の基本形状を共通化できる。
【0021】
本発明に係る構成によれば、スタイラスの着座体に設けた係止片部が、同じ着座体のカウンタバランス部に対して揺動軸方向にオフセットしているから、特殊な形状のスタイラスを製作する場合にカウンタバランス部を拡張・縮小する自由度が増大して、特殊形状のスタイラスを容易に製作できる。
【0022】
本発明に係る構成によれば、弾性力でスタイラスを保持する機構を採用した。すなわち、揺動体に、弾性力で着座体を揺動体に押し付けて保持させる保持用弾性体を設けたから、スタイラスの保持機構が簡単で、磁力を利用した保持機構と比べて軽量となる。
また、この保持用弾性部材は、その基端が支持体に回転自在に支持され、かつ装着の際、先端が着座体によって押され、回転しながら弾性変形を生じ、発生した弾性力で着座体を該揺動体に押し付けて保持するようになっているから、着座体を挿入するだけで揺動体に保持させることができ、また、着座体を引き抜くだけで揺動体から離脱させることができる。このように、スタイラスの保持機構をいわゆるトグル機構で構成したことで、交換作業が容易となる。
さらに、弾性体の先端が着座体に押されるまでは、弾性体に弾性力が生じず、先端が着座体に押されてから弾性体が回転しながら弾性変形が進み、徐々に着座体に作用する弾性力が増大する。そして、弾性体が所定の回転位置に達したら、所定の保持力で着座体を揺動体に保持するようになっている。このようにトグル機構の動作では、スタイラスの着座体が弾性体の先端に接触した後、短い移動距離を進んでから、揺動体に完全に保持される。この短い移動距離を進む間に、例えば着座体と揺動体との位置決めを実行することで、スタイラスを正確に位置決めしてから、スタイラスを保持することが可能となる。
【0023】
または、スタイラスの保持機構をトグル機構で構成しないで、単純な板バネ式の着脱機構とすれば、軽量化が一層進み、スタイラスの自動交換の確実性と、使い勝手とが更に向上する。
【0024】
本発明に係る構成によれば、スタイラスの着座体と揺動体との間に複数の球部を一直線上でない少なくとも三箇所に配置し、この球部によって前記揺動体に対する前記着座体の位置決めを行うから、軸体の中心軸方向の位置決めを正確に実行できる。
さらに、複数の球部のうち少なくとも2個は、着座体に回転支持され、かつ装着の際に揺動体に形成された溝に沿って案内されるから、軸体を正確にスタイラスの重心まで案内できる。従って、揺動体と着座体の位置関係を正確に再現することができ、スタイラスの交換による測定値のバラツキが減少する。
【0025】
本発明に係るスタイラスの自動交換装置の構成によれば、自動交換の際にスタイラスのバランス調整が不要となり、異なる種類のスタイラスに交換しても同一の測定力で測定を継続できるなど、前述と同様の作用効果が得られる。
【0026】
以上説明したように本発明にかかるてこ式検出器およびスタイラスによれば、複数種のスタイラスを手動で交換する作業の負担を軽減でき、さらには、本発明にかかるスタイラスの自動交換装置によれば、てこ式検出器に対して複数種のスタイラスを自動で交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1実施形態に係る真円度測定装置を示す斜視図である。
【図2】(A)は前記真円度測定装置の検出器の斜視図、(B)は内部構造を示す斜視図である。
【図3】(A)は前記検出器の揺動体の斜視図、(B)、(C)は異なる方向から見たスタイラスの斜視図である。
【図4】(A)は前記検出器のスタイラスホルダにスタイラスを装着する前の部分断面図、(B)は装着後の部分断面図である。
【図5】前記スタイラスホルダの板バネが揺動体に支持された状態の斜視図である。
【図6】図4(B)の範囲Iを拡大して示す部分断面図であり、(A)は前記板バネの回転動作における初期状態、(B)は板バネが所定角度回転した状態、(C)は所定の保持力が生じるまで板バネが回転した状態を示す図である。
【図7】各種スタイラスの重心位置を説明する図である。
【図8】図1の真円度測定装置に交換ラックを取り付けた場合を別の方向から模式的に示した斜視図である。
【図9】図8の装置を用いてスタイラスを交換する手順を説明する図であり、(A)は交換ラックからスタイラスを取り出す前、(B)はスタイラスを取り出した後の斜視図。
【図10】第2実施形態に係る検出器のスタイラスホルダの部分側面図であり、(A)はスタイラスを装着する前の図、(B)は装着後の図である。
【図11】本発明の変形例に係る各種スタイラスの着座体を示す図である。
【図12】本発明の第3実施形態に係る検出器のスタイラスの着脱機構を示す斜視図である。
【図13】(A)は、検出器のスタイラスホルダにスタイラスを装着する前の板状揺動体のみの部分側面図であり、(B)は装着後の板状揺動体と着座板体との位置関係を示す部分側面図である。
【図14】図13中の範囲IIの拡大図である。
【図15】ストッカからスタイラスを取り出す前のストッカと検出器との位置関係を示す斜視図である。
【図16】スタイラスを交換する手順を説明する図であり、(A)はストッカからスタイラスを取り出す前、(B)は板状揺動体がスタイラスを装着した状態、(C)はストッカからスタイラスを取り出した後の斜視図である。
【図17】ストッカの上側保持具の動作を説明する図であり、(A)は解除位置、(B)は係止位置を示す斜視図である。
【図18】ストッカの上側保持具の駆動装置を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態の真円度測定装置を示す斜視図である。
本実施形態の真円度測定装置は、図1に示すように、ベース10と、このベース10上の一側に垂直軸線Lを中心に回転可能に設けられ上面に被測定物Wを載置する回転テーブル20と、てこ式検出器30と、この検出器30を垂直軸線L方向および垂直軸線Lに対して直交する方向でかつ回転テーブル20に対して接近、離間する方向へ駆動させる検出器駆動機構40と、制御装置50とを備える。
【0029】
回転テーブル20は、内蔵された図示省略の回転テーブル駆動機構21によって垂直軸線Lを中心に回転可能に設けられている。回転テーブル駆動機構21は、回転テーブル20を回転駆動するモータ、あるいは、モータからの回転を減速器経由で回転テーブル20に伝達する機構などで構成されている。
【0030】
検出器30はてこ式であって、被測定物Wに接触するスタイラス31と、このスタイラス31を着脱自在に保持し、スタイラス31の変位を電気信号として検出する検出器本体としてのスタイラスホルダ32とを有する。また、スタイラス31はスタイラスホルダ32に設けられた揺動軸を中心に揺動自在に支持されている。そのため検出されるスタイラス31の変位はスタイラス31の回転変位量であるが、その変位量がスタイラス31の回転半径に対して微小であるから、検出される変位はスタイラス31の長尺方向に直交する方向の変位量になる。
【0031】
検出器駆動機構40は、ベース10上に他側に立設されたコラム41と、このコラム41に対して昇降スライダ42を上下方向(Z方向)へ駆動させる昇降駆動機構43と、昇降スライダ42に対してスライドアーム44を垂直軸線Lに対して直交する方向でかつ回転テーブル20に対して接近、離間する方向(X方向)へ駆動させる第1スライド駆動機構45と、スライドアーム44の先端に設けられ検出器30を保持する検出器アーム46と、検出器アーム46をスライドアーム44のスライド軸線を中心に旋回させて検出器30の姿勢を変化させる旋回駆動機構47(図示省略)とを備える。
【0032】
昇降駆動機構43は、昇降スライダ42を上下方向へ駆動できる機構であれば、どのような構造でもよい。例えば、コラム41に上下方向へ立設されたボールねじ軸と、このボールねじ軸に回転させるモータと、ボールねじ軸に螺合された昇降スライダ42に連結されたナット部材とを有する送り機構などでもよい。
第1スライド駆動機構45についても、スライドアーム44を垂直軸線Lに対して直交する方向でかつ回転テーブル20に対して近接、離間する方向へ駆動できる機構であれば、どのような機構でもよい。例えば、スライドアーム44の長手方向に沿ってラックを形成し、このラックに噛み合うピニオンおよびこのピニオンを回転させるモータなどを昇降スライダ42内に設けた構成であってもよい。
【0033】
<測定制御の動作>
制御装置50のプログラム記憶部51に記憶された測定プログラムによって、測定指令が制御装置50に与えられると、検出器駆動機構40が駆動される。つまり、昇降駆動機構43および第1スライド駆動機構45の駆動により、検出器30が被測定物Wに接近する方向へ移動され、検出器30のスタイラス31が被測定物Wに接触される。また、必要に応じて旋回駆動機構47の駆動により、検出器30の姿勢が変更される。この状態において、回転テーブル20が回転駆動されると、被測定物Wの真円度に応じて検出器30のスタイラス31が変位されるから、そのスタイラス31の変位がスタイラスホルダ32によって電気信号として検出されたのち、制御装置50に取り込まれる。制御装置50は、とり込んだ測定データをデータ記憶部52に記憶したのち、これらのデータから真円度を演算し、その結果を表示装置53に表示し、かつ、必要に応じてプリントアウトする。
【0034】
<てこ式検出器のスタイラス着脱機構>
以降、本発明において特徴的な検出器30のスタイラス着脱機構について、図2〜7に基づいて説明する。まず、図2(A)に検出器30の斜視図、同図(B)にその内部構造を示す。
検出器30は、図2(A)に示すようにスタイラスホルダ32に設けられた揺動軸受32Aの周りに揺動自在に支持されたスタイラス31を有している。同時に検出器30は、スタイラス31を着脱させる機構も備えている。そのため、検出器30は、図2(B)に示すように揺動軸となる軸体36周りに回転支持され、かつスタイラス31を着脱自在に保持する板状揺動体37を有する構造となっている。
【0035】
スタイラス31(測定子)について、図3(B)、(C)に異なる方向から見た斜視図を示す。スタイラス31は、先端に接触部33Aを有する長尺状のスタイラス本体33と、このスタイラス本体33の基端に一体形成され着座板体34とからなる。
スタイラス本体33は長尺の円柱形状であり、円柱先端に接触部33Aである2つの超鋼球が固定されている。2つの超鋼球は、円柱先端の側周面に180度間隔で半分ほど埋め込まれて固定されている。図示したスタイラス31は、種々あるスタイラス31の一例に過ぎず、スタイラス本体33の長尺方向の長さ寸法、円柱の径寸法はスタイラス31の種類ごとに異なっている。また、接触部33Aについても、例えば、円柱先端に超鋼球が1つだけ固定されたスタイラスもある。また接触部33Aの形状も球に限らず、球状の先端をもつ円錐形状でもよい。また接触部33Aの材質はサファイヤなどでもよい。
【0036】
着座板体34は略矩形の板体であり、その中心軸とスタイラス本体33の中心軸とが同一線上となっている。着座板体34は、本発明の着座体に相当し、本体部34Aと、長さの異なる2つの係止片部34Bと、球部である3つの鋼製の位置決め用ボール34C(図3(C)参照)を含んで構成されている。
【0037】
着座板体34の形状は、図7(A)にも示すように、この着座板体34とスタイラス本体33の両方を含むスタイラス31全体の重心位置を考慮して、着座板体34にスタイラス31全体の重心が位置するように決定されている。図7(A)にはスタイラス31の重心を黒丸印で示した。
着座板体34の本体部34Aには、その平坦面に略U字形の切欠部34Eが形成されている。この切欠部34Eは、図7(A)に示すように、スタイラス31の重心を含む範囲に形成されている。言い換えると、スタイラス31全体の重心が略U字形の切欠部34Eに位置している。また、切欠部34Eの中心軸Mに直交する方向の幅寸法Pは、スタイラスホルダ32の円柱状軸体36の径寸法よりも大きい。さらに、切欠部34Eの中心軸Mはスタイラス本体33の中心軸と一致しているから、スタイラスホルダ32にスタイラス31を装着する際、切欠部34Eは軸体36を重心まで案内できるようになっている。なお、本実施形態では切欠部34Eの形状を略U字形としたが、この形状は、略V字形、略L字形などでもよく、少なくとも軸体36を重心まで案内できる形状であればよい。
【0038】
図3に示すようにスタイラス31全体の重心を通り、着座板体34の厚さ方向に平行な軸をスタイラスの重心軸Nとする。この重心軸Nを用いて前述の切欠部34Eについて説明すると、切欠部34Eは着座板体34の周側面(図中の上面)からスタイラスの重心軸Nに至る範囲までを切り欠いて、少なくとも重心軸Nが着座板体34の本体部34Aと干渉せずに貫通するように形成されていると言える。
切欠部34Eには、その略U字形の内側の互いに向き合う両側面に、一対の窪み部34Fが形成されている。切欠部34Eの幅寸法P(図7(A)参照)に対して、窪み部34Fの幅寸法Qは大きい。窪み部34Fは、切欠部34Eの中心軸Mに沿って切欠部全体に形成されているのではなく、図7(A)の上側の開口部から中心軸Mに沿って切欠部34Eの略中央までの範囲に形成されている。また、窪み部34Fは、図3に示すように重心軸Nに沿って着座板体34の厚さ方向の全体に形成されているのではなく、着座板体34の係止片部34Bが設けられた表面から重心軸Nに沿って着座板体34の厚さ寸法の8割程度までの範囲に形成されている。このため窪み部34Fの内側面として、図6(C)に拡大して示すように、第1当接面34Gと第2当接面34Hとが形成される。第1当接面34Gは、窪み部34Fにおいて切欠部34Eの中心軸Mに直交する面であり、第2当接面34Hは、窪み部34Fにおいてスタイラス31の重心軸Nに直交する面である。
【0039】
位置決め用ボール34Cは、図3(C)に示すように、着座板体34の一方の平坦面に回転自在に支持されている。3つの位置決め用ボール34Cは異なる3個所に配置されており、そのうちの2つが略U字形の切欠部34Eを挟むように配置される。着座板体34をスタイラスホルダ32に挿入して、スタイラス31が装着された状態では、3つの位置決め用ボール34Cが着座板体34とスタイラスホルダ32の板状揺動体37との間に挟まれるから、3つの位置決め用ボール34Cは、着座板体34を板状揺動体37に対して軸体36の中心軸方向の位置決め、および着座板体34と板状揺動体37の平行度を維持する位置決め手段として機能する。
2つの位置決めボール34Cは、略U字形の切欠部34Eの中心軸M(図7参照)に平行に並んで配置されている。スタイラス31の装着の際、これら2つの位置決めボール34Cは、スタイラスホルダ32の板状揺動体37に形成されたV溝37Cに沿って転動するようになっている。
一方、切欠部34Eを挟んで上記の2つの位置決めボール34Cと反対側の着座板体34に配置された1つの位置決めボール34Cは、V溝37Cと平行に形成された位置決め用平面部37Dに沿って転動するようになっている。
【0040】
スタイラスホルダ32は、図2に示すように、ホルダ本体35と、このホルダ本体35に支持された軸体36と、この軸体36周りに回転自在な板状揺動体37と、スタイラス31の着座板体34を保持するための保持用弾性体である板バネ38と、この板バネ38を支持する板バネ支持体39と、板状揺動体37の回転変位を検出する変位検出手段71(図示省略)と、板状揺動体37に回転力を付与する回転力付与手段72(図示省略)とを有する。
【0041】
ホルダ本体35は、略円筒状であり、板状揺動体37、変位検出手段71および回転力付与手段72を収納する内部空間を有する。略円筒の基端(図中の上端)は、図1の検出器アーム46に固定される。また、略円筒の他端は、軸体36を中心に板状揺動体37およびスタイラス31が一体回転しても干渉しない程度に、断面略コ字状に切り欠かれている。断面略コ字状とは、略円筒のホルダ本体35の中心軸および軸体36の揺動軸の両方に平行な平面で切断した場合のホルダ本体35の断面形状である。
【0042】
軸体36の中心軸は、ホルダ本体35の中心軸の直交方向に平行に設けられ、かつ軸体36は、ホルダ本体35の他端付近に回転自在に軸支されている。なお軸体36は、ホルダ本体35に固定支持されたものでもよい。この場合は、軸体36の中心軸周りに板状揺動体37が回転自在に支持される。
【0043】
板状揺動体37について、図3(A)に斜視図を示す。また、図4(A)にスタイラスホルダ32にスタイラス31を装着する前の板状揺動体37および着座板体34の部分断面図、同図(B)に装着後の部分断面図を示す。
板状揺動体37は、スタイラス31の装着部で、かつ軸体36を固定する幅広の板部37Aと、この幅広の板部37Aと一体形成された幅狭の板部37B(図示一部省略)とを有する。図4(B)に示すように装着後の状態では、幅広の板部37Aと着座板体34とが、軸体36の軸方向に並んで配置される。
また、幅狭の板部37Bの回転変位が変位検出手段71によって検出される。変位検出手段71として差動変圧器を用いるが、他に歪みゲージや容量式センサなどスタイラス31の作動の負荷とならないものを選択してもよい。
幅狭の板部37Bには、回転力付与手段72によって軸体36周りの回転力が付与される。回転力付与手段72としてスプリングを用いるが、他に電動モータや、磁石とコイルからなるボイスコイルにより構成したアクチュエータなども選択できる。
【0044】
板バネ支持体39は、図3(A)に示すように、軸体36よりも幅狭の板部37B側に近い幅広の板部37Aに連続形成されている。図4(A)に断面を示すように、板バネ支持体39は、幅広の板部37Aから軸体36の軸方向に突出する第1支持部材39Aと、この第1支持部材39Aの突出端から軸体36に向かって片持ち状に延設された第2支持部材39Bとを有する。第2支持部材39Bの先端には、図5に示すように、板バネ38を回転自在に支持するための板バネ軸材39Cが固定されている。板バネ軸材39Cは、板状揺動体37の揺動軸の直交方向に平行し、かつ幅広の板部37Aの幅方向に対して平行である。
【0045】
板バネ38は、第1バネ片38Aおよび第2バネ片38Bからなり、略L字状に曲げて形成されている。板バネ38が板バネ支持体39に回転自在となるように、第1バネ片38Aの一端部は、板バネ支持体39の板バネ軸材39Cに略一回転分だけ巻かれ、板バネ軸材39Cに対して回転自在になっている。
スタイラス31が装着される前の状態では、第1バネ片38Aは図5で実線で示すように板バネ軸材39Cから幅広の板部37Aに向けて延設されており、第2バネ片38Bは第1バネ片38Aの他端部から幅広の板部37Aの表面と平行に軸体36に向けて延設されている。
【0046】
<スタイラス着脱機構の動作>
図4および図6に基づいて着脱機構の動作を説明する。図6は、図4(B)の範囲Iを拡大したものである。
ここでは、図4(A)、(B)に示すように静止したスタイラス31にスタイラスホルダ32を接近させて、スタイラス31を装着させる場合について説明する。作業者がスタイラス31を手動で装着する場合は、静止したスタイラスホルダ32にスタイラス31を接近させることになるが、着脱機構の動作は実質的に変わらない。
【0047】
図4(A)のように、最初に、ホルダ本体35の中心軸がスタイラス31の切欠部34Eの中心軸M(図7参照)と同一線上になるように、かつ軸体36の揺動軸がスタイラス31の重心軸Nと平行になるように、スタイラス31に対してスタイラスホルダ32を配置する。
まず、スタイラスホルダ32をスタイラス31に接近させて、着座板体34の切欠部34Eの上側開口部に軸体36を挿入させる。この際、着座板体34の位置決め用ボール34Cを板状揺動体37のV溝37Cおよび位置決め平面部37Dに載せて、ボール34CをV溝37Cおよび平面部37Dに沿って転動させれば、軸体36が着座板体34と干渉することなくスムーズに略U字形の切欠部34Eに沿ってスタイラス31の重心まで案内される。
さらに、板状揺動体37の幅広の板部37Aと、板バネ支持体39の第2支持部材39Bとの間に、着座板体34が差込まれる。そして、略U字形の切欠部34Eには、軸体36に続けて、板バネ支持体39の第1支持部材39Aが挿入される(図4(B))。
【0048】
軸体36がスタイラス31の重心に到達する手前で、板バネ38の先端(第2バネ片38Bの先端)に切欠部34Eの窪み部34Fに形成された第1当接面34Gが当接する(図6(A)参照)。すると、板バネ38の先端が第1当接面34Gによって押され、板バネ38が板バネ軸材39C周りに回転を始める。板バネ38が所定角度回転すると板バネ38の先端が第2当接面34Hにも当接する(同図(B))。つまり、板バネ38の先端が第1当接面34Gと第2当接面34Hとの隅部分に移動する。この状態で、さらに板バネ38の先端が第1当接面34Gによって押されると、板バネ38の弾性変形が始まり、第1バネ片38Aと第2バネ片38Bとの成す角が徐々に小さくなる。
【0049】
図6(A)に示す板バネ38の回転中心から板バネ38の先端までの寸法をSとすると、軸体36がスタイラス31の重心まで案内された状態(同図(C))では、寸法Sが減少し、所定の弾性変形が得られる。また、同図(C)では、板バネ38の回転中心と板バネ38の先端とを結ぶ線が、板状揺動体37の平坦面に対して略直交するから、板バネ38の弾性力が着座板体34を板状揺動体37に押し付ける方向に作用し、矢印で示す保持力が発生する。
板バネ38は、着座板体34が挿入される過程で、着座板体34を付勢しない状態と付勢する状態の2つの状態をとり得るようになっているから、板バネ38の弾性力によって板状揺動体37がスムーズに着座板体34を保持できる。
一方、板状揺動体37と第2支持部材39Bとの間から着座板体34を引抜く場合、板バネ38が逆の手順で動作し、着座板体34が板状揺動体37から離脱して、スタイラス31をスタイラスホルダ32から容易に取り外すことができる。
【0050】
本実施形態の構成によれば、装着の際に、軸体36が着座板体34に形成した略U字形の切欠部34Eを通ることによって、軸体36がスタイラス31の重心までアクセス可能となる。つまり、どのような種類のスタイラス31であっても、スタイラスホルダ32に装着されれば、その重心が必ず軸体36と同軸になる。従って、異なる種類のスタイラス31を板状揺動体37に装着したとしても、板状揺動体37を含むスタイラス31全体のバランスが崩れず、交換前と同じ測定力で測定を継続できる。特に、精密測定において、交換後のスタイラス31のバランス調整が不要となる。
【0051】
また、着座板体34を挿入するだけで板状揺動体37に保持させることができ、また着座板体34を引抜くだけで板状揺動体37から離脱させることができるので、スタイラス31をスタイラスホルダ32に着脱自在に装着できる。板状揺動体37が板バネ38の弾性力で着座板体34を保持することができるから、スタイラス31の保持機構が簡単となり、磁力を利用した保持機構と比べて軽量にできる。
【0052】
また、スタイラス31装着の際、まず、板バネ38先端が着座板体34の第1当接面34Gによって押され、回転しながら弾性変形を生じ、発生した弾性力で着座板体34の第2当接面34Hを板状揺動体37に押し付けるようになっている。すなわち、スタイラス31の保持機構がいわゆるトグル機構で構成されているので、スタイラス31の交換作業が容易となる。
このようなトグル機構では、板バネ38の先端が第2当接面34Hに当接されるまでは、板バネ38の弾性力が生じない。また、板バネ38が第2当接面34Hに当接された後、スタイラスホルダ32が短い移動距離を進んでから、第2当接面34Hを押す弾性力が最大になって、スタイラス31の保持が完了する。この短い移動距離をスタイラスホルダ32が進むまでに、着座板体34と板状揺動体37との位置決めを実行できるから、スタイラスホルダ32にスタイラス31を正確に位置決めした状態で、スタイラス31を保持するという手順が可能となる。
【0053】
装着時のスタイラス31の位置決めに関して、着座板体34と板状揺動体37との間に3つの位置決め用ボール34Cを一直線上でない少なくとも三箇所に配置し、このボール34Cによって板状揺動体37に対する着座板体34の位置決めを行うから、軸体36の中心軸方向の位置決めを正確に実行できる。
また、3つのボール34Cのうちの2つは装着の際に板状揺動体37のV溝37Cに沿って案内されるから、軸体36を正確にスタイラス31の重心まで案内できる。つまり、軸体36の中心軸をスタイラス31の重心軸Nに一致させることができ、交換前後での板状揺動体37と着座板体34の位置関係を正確に再現することができる。
なお、位置決め用ボール34Cの数量を3としたが、少なくとも3つのボール34Cを一直線上でない三箇所に配置すればよい。また、複数のボール34Cのうちの少なくとも2つのボール34CをV溝37Cに沿って転動可能に配置すればよい。
また、位置決め用ボール34Cを着座板体34に回転自在に設けるのではなく、位置決め用ボール34Cを着座板体34に圧入、または接着によって固定してもよい。
【0054】
また、図7(B)には種類の異なるスタイラス31Aの重心位置が同図(A)と同様に示されている。このスタイラス31Aには、スタイラス本体33の長尺方向に直交する方向に略U字の切欠部34Eが形成されているが、着座板体34のベースとなる形状は、同図(A)の着座板体34と共通している。そして、このスタイラス31Aにおいても着座板体34の切欠部34Eにスタイラス31A全体の重心が含まれるように、スタイラス31Aの着座板体34には重心の位置を調整するカウンタバランス部34Dが設けられている。着座板体34にカウンタバランス部34Dを設けてスタイラスの重心をスタイラスの種類ごとに調整するので、異なる種類のスタイラス31Aの着座板体34の基本形状を共通化できる。
図7(B)のスタイラス31Aは、クランク形測定子と呼ばれ、狭い円周部溝内の面測定に有効である。クランク形測定子では、スタイラス本体33の先端にさらに小径短尺の棒片33Bがスタイラス本体33と直交して設けられ、この棒片33Bの端部に接触部33Cが形成されている。接触部33Cの形状は、球状先端をもつ円錐形状である。
【0055】
<スタイラスの自動交換装置>
検出器30のスタイラス31を自動交換する場合について説明する。
図8は、図1の真円度測定装置に交換ラック60を取り付けて、それを別方向から見た斜視図である。この真円度測定装置は、図1の装置と比べて検出器アーム46の形状が異なるが、基本的な構成は共通し、本発明のスタイラス自動交換装置に相当する。
図9は、スタイラス31を交換する手順を説明する図であり、図9(A)は交換ラック60からスタイラス31を取り出す前、図9(B)はスタイラス31を取り出した後の斜視図である。
【0056】
交換ラック60は、図8に示すように回転テーブル20とコラム41との間のベース10上に配置されている。この交換ラック60の位置まで、昇降駆動機構43および第1スライド駆動機構45の動作により、検出器30が移動可能に構成されている。
交換ラック60は、ラック台61と、ラック台61上にY方向に移動するラックスライダ62と、このラックスライダ62に立設する3つのストッカ63とを有する。図8には第1ストッカ63Aが着脱位置に位置決めされているが、ラックスライダ62の移動により第2ストッカ63Bおよび第3ストッカ63Cが順次、着脱位置に位置決めされるようになっている。第2ストッカ63Bには異種類のスタイラス31Aが格納されている。
【0057】
各ストッカ63は、図9に示すように、ラックスライダ62に立設された矩形のストッカ本体64と、このストッカ本体64に固定された上側保持具65および下側保持具66とを有して形成される。上側保持具65は本発明の規制片部に相当し、下側保持具66は本発明の被係止片部に相当する。上側保持具65はX−方向に突出する上側突板65Aを有し、下側保持具66は同方向に突出する下側突板66Aを有し、下側突板66Aは上側突板65Aより突出長さが大きい。また両突板65A、66Aは、Z方向に一定間隔で配置されている。つまり両突板は、スタイラス31の着座板体34に設けられた上下一対の係止片部34Bに係止される。
【0058】
スタイラス31の着座板体34には、図3(B)に示すように、上側溝部73と下側溝部74が形成されている。これらの溝部73、74は、着座板体34の本体部34Aに断面L字形の係止片部34Bが一体形成されることによって形成されている。
一対の係止片部34Bが、着座板体34において位置決め用ボール34Cを支持する面とは反対側の面から、重心軸N方向に突出して設けられている。すなわち各係止片部34Bは着座板体34の本体部34Aに対して軸体36の中心軸方向にオフセットして設けられている。2つの係止片部34Bは長さが異なり、長い係止片部34Bが着座板体34のZ−方向に、短い係止片部34BがZ+方向に一定間隔で配置されている。各係止片部34Bの長尺方向は、略U字形の切欠部34Eの中心軸の直交方向に平行である。
【0059】
このように形成されたスタイラス31の上下の溝部73、74に、ストッカ63の上下の突板65A、66Aが挿入されると、スタイラス31のZ方向の移動が規制されるため、スタイラスホルダ32がZ+方向に移動した場合に、スタイラス31のみをストッカ63に格納することができる。
また、スタイラス31の着座板体34に設けた係止片部34Bが、着座板体34の本体部34Aに対して重心軸N方向にオフセットしているから、例えば図7(B)のような特殊な形状のスタイラス31Aを製作する場合にカウンタバランス部34Dを拡張または縮小する自由度が増大して、特殊形状のスタイラス31Aを容易に製作できる。
【0060】
<スタイラス自動交換の動作>
プログラム記憶部に記憶されたスタイラス自動交換プログラムによって、スタイラス交換指令が制御装置50に与えられると、検出器駆動機構40が駆動される。つまり、昇降駆動機構43、第1スライド駆動機構45および旋回駆動機構47の駆動により、検出器30が移動され、スタイラスホルダ32と交換ラック60との間でスタイラス交換動作が実行される。
【0061】
例えば、図8に示すように、検出器30にスタイラス31が装着されている状態において、スタイラス31交換指令が与えられるとする。検出器30が垂直な姿勢でない場合は、旋回駆動機構47の駆動によって検出器30が適宜旋回され、垂直姿勢に設定される。昇降駆動機構43の駆動により、検出器30がこれから格納する交換ラック60のストッカ63の高さ位置に位置決めされ、以下の動作が順次実行される。
【0062】
(A)第1スライド駆動機構45の駆動により、検出器30はX+方向へ移動され、スタイラス31の着座板体34の上下溝部73、74がストッカ63の上下突板65A、66Aと対応する位置までストッカ63に接近される。すると、上下突板部が上下溝部に挿入され両者が係止状態になる。
(B)昇降駆動機構43の駆動により、検出器30はZ+方向へ移動されて、交換ラック60から離間される。すると、スタイラス31は係止によってZ方向の移動が規制されているので、スタイラスホルダ32がスタイラス31をストッカ63に残したままZ+方向へ移動する。これにより、検出器30のスタイラス31が交換ラック60に格納される。
【0063】
次に、スタイラスホルダ32に対して、新たなスタイラス31を装着しようとする場合、ラックスライダ62をスライド移動させて、新たなスタイラス31を格納したストッカ63が装着位置まで位置決めされたのち、次の動作が実行される。
(C)昇降駆動機構43の駆動により、スタイラスホルダ32はZ−方向へ移動されて交換ラック60に接近される。すると、スタイラスホルダ32の軸体36がスタイラス31の重心まで案内されて、スタイラスホルダ32の板状揺動体37に着座板体34が装着される。つまり、スタイラスホルダ32に新たなスタイラス31が装着される(図9(A)参照)。
(D)第1スライド駆動機構45の駆動により、検出器30はX−方向へ移動されて交換ラック60から離間される。すると、スタイラス31の上下溝部73、74からストッカ63の上下突板65A、66Aが外れ、係止が解除されるから、交換ラック60からスタイラス31が取り出される(図9(B)参照)。
(E)昇降駆動機構43の駆動により、検出器30はZ+方向へ移動され、元の位置に復帰される。こののち、旋回駆動機構47の駆動によって検出器30が所定の姿勢に旋回されたのち、新たな測定部位の測定が実行される。
このようにスタイラス31はストッカ63に取出可能かつ格納可能に収容される。ここでは、標準的なスタイラス31のほかに、長さの異なるスタイラスなど、被測定物Wの測定部位に対応して用意された複数種のスタイラスが収納される。
【0064】
本実施形態によれば、スタイラス交換指令が与えられると、検出器駆動機構40の駆動により、スタイラスホルダ32が相対移動され、スタイラスホルダ32とストッカ63との間でスタイラス交換動作が実行されるから、被測定物Wの測定部位形状に応じて、スタイラス交換動作を指令するようにしておけば、ホルダ32とストッカ63との間でスタイラス交換動作が自動的に実行される。従って、測定作業を中断することなく連続的に行うことができるため、測定者への負担を軽減できるとともに、測定作業を効率化できる。
【0065】
<第2実施形態>
図10は、本発明の第2実施形態に係る検出器のスタイラスホルダの部分側面図であり、(A)はスタイラスを装着する前の図、(B)は装着後の図である。図10は第1実施形態の図4に対応している。
検出器は前述と略同じ構成であるが、スタイラスの保持機構が異なり、以下にスタイラスの着座板体34を保持するための保持用弾性体と、この保持用弾性体を支持する支持体との構成を説明する。
支持体81は、板状揺動体37に連続形成されており、板状揺動体37から軸体36の軸方向に突出して設けられている。この支持体81の突出端には保持用弾性体である板バネ82の一端が留めネジ83で固定されている。
【0066】
板バネ82は略L字状に曲げられており、長い第1バネ片82Aおよび短い第2バネ片82Bで構成される。本実施形態においても板バネ82の弾性変形によって、着座板体34を板状揺動体37に押し付ける保持力が生じるという点で前述の実施形態と共通する。
第1バネ片82Aの一端は支持体81に固定され、その他端が図中下側に配置された軸体36(図示省略)に向かって延設されている。第2バネ片82Bは、第1バネ片82Aの他端から板状揺動体37に向かって延設されている。この板バネ82の折り曲げ部の内側には、軸材85が板状揺動体37の幅方向と平行に設けられている。軸材85は、板バネ82とは別体のL字部材84を回転自在に支持する。
【0067】
L字部材84は、第1部材84Aおよび第2部材84Bからなり、板バネ82よりも大きな剛性を有する。L字部材84の第1部材84Aの一端は、軸材85によって軸支されている。スタイラスが装着される前の状態では、図10(A)のように第1部材84Aの他端は、板バネ82の第2バネ片82Bと平行になり、第2部材84Bは板状揺動体37と平行になる。
【0068】
スタイラスを装着する際、前述の実施形態と同様にスタイラスホルダをスタイラスに接近させて、板状揺動体37と板バネ82の隙間に着座板体34を差し込む。すると、L字部材84の先端(第2部材84Bの先端)に着座板体34の窪み部34Fに形成された第1当接面34Gが当接して、L字部材84の先端が第1当接面34Gによって押され軸材85周りに回転する。L字部材84が所定角度回転すると第2部材84Bの先端が第2当接面34Hにも当接する。つまり、L字部材84の先端が第1当接面34Gと第2当接面34Hとの隅部分に移動する。この状態で、さらに第1当接面34Gによって押されると、L字部材84はその形状を維持したまま、軸材85を板状揺動体37から離れる方向に押す。これにより、板バネ82に弾性変形が生じて軸材85を元の位置へ押し戻そうとする力が生じる。この力はL字部材84を介して着座板体34を板状揺動体37に押し付ける方向に作用し、図10(B)中に矢印で示す保持力となる。このように本実施形態においても、スタイラスの保持機構がトグル機構を構成するため、スタイラス31の交換作業が容易となる。
【0069】
<変形例>
前記実施形態では、弾性体の弾性力によって板状揺動体37が着座板体34を着脱自在に保持する機構について説明したが、これに限らず、マグネットによって着脱可能に着座板体34を板状揺動体37に結合するようにしてもよい。または、エアーの吸引によって、着座板体34を揺動体37に着脱可能に保持する構造であってもよい。
【0070】
図11は、本発明の変形例に係る各種スタイラス31B、31Cの着座板体34を示す図である。着座板体34には同図(A)のスタイラス31Bのように中心軸Mが湾曲した切欠部34Eを形成してもよく、同図(B)のスタイラス31Cのように略V字形の切欠部34Eを形成してもよい。
【0071】
また、前記実施形態では、保持用弾性体として板バネ38、82を用いて、着脱機構をトグル機構として構成した場合を説明したが、これに限らず他の構成の保持用弾性体を用いて同様にトグル機構を構成してもよい。
例えば、保持用弾性体としてスプリングプランジャーのような弾性部材を含んで構成された弾性力発生部品を採用してもよい。スプリングプランジャーは、コイルばねと、コイルばねを内部に収納する円筒状ケースと、ケース内の軸方向に進退自在に収納された進退部材とからなる。進退部材の先端部は円筒状ケースから突出しており、突出した先端部が外力を受けてケース内に押し込まれると、コイルばねが圧縮されて、進退部材にはその反発力が作用するようになっている。
このようなスプリングプランジャーの一端を、前記実施形態の板バネ38の一端の代わりに、回転自在に支持させれば、板バネ38と同様にトグル機構の動作をする。すなわち、進退部材の先端部が着座板体34に押されることにより、スプリングプランジャーが回転しながら、コイルばねが圧縮される。そして、圧縮による弾性力で進退部材が着座板体34を揺動体37に押し付けるようにすればよい。
【0072】
<第3実施形態>
前記実施形態では、トグル機構を利用したスタイラスの着脱機構について説明したが、図12〜図14に示すようなトグル機構を用いない着脱機構でもよい。図12は、本発明の第3実施形態に係る検出器のスタイラスの着脱機構を示す斜視図である。また、図13(A)は、検出器のスタイラスホルダにスタイラスを装着する前の、板状揺動体137のみの部分側面図であり、同(B)は装着後の、板状揺動体137と着座板体134との位置関係を示す部分側面図であり、第1実施形態の図4に対応する。図14は、図13中の範囲IIの拡大図である。
【0073】
検出器は前述と略同じ構成であるが、スタイラス131の保持機構が異なる。以下にスタイラス131の着座板体134を保持するために、板状揺動体137に設けられた板バネ138と、この板バネ138を支持する板バネ支持体139とを説明する。
【0074】
まず、板状揺動体137は、図12に示すように、前述の板状揺動体37と同様に、幅広の板部37Aと、幅狭の板部37Bとを有し、幅広の板部37Aに軸体36が固定されている。この板状揺動体137に対して、板バネ支持体139は、軸体36よりも幅狭の板部37B側に近い幅広の板部37Aに連続形成されている。
【0075】
板バネ支持体139は、幅広の板部37Aから軸体36の軸方向と平行に突出して形成されている。この板バネ支持体139の突出した先端部に、板バネ138がネジ止めされ片持ち状態で支持されている。
【0076】
板バネ138は、幅広の板部37Aと略平行な状態で、その基端が板バネ支持体139にネジ止めされている。また、板バネ138は、その基端から軸体36に向けて延びている。板バネ138の先端は、外側に曲げられている。また、先端は、基端よりも幅広であり、先端の幅寸法は、着座板体134の切欠部34Eの幅寸法よりも広い。
【0077】
スタイラス131が装着された状態では、幅広の板部37Aと着座板体134とが、軸体36の軸方向に並んで配置される。そして、前述の実施形態と同様に、幅広の板部37Aと着座板体134との間には、着座板体134の位置決め及び平行度を維持するため、また、装着の際に軸体36をスタイラス131の重心までスムーズに案内するための、3つの位置決め用ボールが設けられている。
【0078】
一方、位置決め用ボールとは反対側の着座板体134の表面には、切欠部34Eを挟んだ位置に、2つの凸部34Jが形成されている。2つの凸部34Jは、それぞれ1個の鋼球からなり、着座板体134の表面に一部分が埋め込まれている。凸部34Jは、位置決め用ボールと同様に超鋼球としてもよいが、これに限られない。なお、板バネ138は着座板体134の凸部34Jに当接してスタイラス131を保持するため、着座板体134には第1実施形態で示したような窪み部34Fが不要になる。
【0079】
<スタイラス着脱機構の動作>
着脱機構の動作については、基本的な動作は、前記実施形態と共通する。ここでは、図13(A)、(B)に基づいて異なる点を中心に説明する。スタイラス131の装着の際、軸体36は、着座板体134の切欠部34Eに沿って、スタイラス131の重心まで案内される。前述の実施形態と同様に、軸体36と板バネ支持体139は、軸体が案内される方向(案内方向)に沿って並んで配置されている。そのため、切欠部34Eには、軸体36に続けて、板バネ支持体139も挿入される。
【0080】
軸体36がスタイラス31の重心に到達する手前で、板バネ138の先端(外側に曲げられている部分)に2つの凸部34Jが当接する。すると、板バネ138が曲がり、先端が凸部34Jによって外側に押される。軸体36がスタイラス31の重心まで案内された状態では、幅広の板部37Aと板バネ138の先端との間隔が広がり、板バネ138の弾性変形によって生じる弾性力が、2つの凸部34Jに作用して、着座板体134を板状揺動体137に押し付ける。このようにして、スタイラス131を保持する保持力が発生する。ここで、板バネ138の先端が外側に押されるとは、先端が板状揺動体137から遠くなる方向に押されることを言う。
【0081】
本実施形態によれば、単純な板バネ式の着脱機構を用いることにより、着脱機構の軽量化が一層進み、スタイラス131の自動交換の確実性と、使い勝手とが更に向上する。
【0082】
図14に示すように、板バネ支持体139の突出した先端部には、さらに僅かに突出する突部139Aが形成されている。この突部139Aは、板バネ支持体139の突出した先端部において、最も軸体36に近い部分にのみ形成されている。そのため、板バネ138は、この突部139Aにより外側に僅かに曲げられた状態で板バネ支持体139にネジ止めされている。なお、板バネ138を、基端を含む狭幅部138Aと、広幅部138Bと、外側に曲げられた先端部138Cとに区分して説明すると、板バネ138が突部139Aと当接する位置は、広幅部138Bの略中央になる。
【0083】
このように突部139Aを設けることで、スタイラスが装着される前の状態でも、板バネ138が弾性変形しているので、スタイラスを装着すると、板バネ138がさらに弾性変形して、スタイラスには大きな弾性力が作用することになる。従って、スタイラスの装着による板バネ138の弾性変形が微小であっても、所定の保持力でスタイラスを保持することができる。
【0084】
<スタイラスの自動交換装置>
本実施形態のスタイラス131の自動交換装置は、前述の実施形態と同様に、図8で示した交換ラック60を有する真円度測定装置であるが、交換ラック60を構成するストッカ163の構成が異なっている。このストッカ163について、図15〜図18に基づいて説明する。図15は、ストッカ163からスタイラス131を取り出す前のストッカ163と検出器130との位置関係を示す斜視図であり、第1実施形態の図9(A)に対応する。図16は、スタイラス131を交換する手順を説明する図であり、(A)はストッカ163からスタイラス131を取り出す前、(B)は板状揺動体137がスタイラス131を装着した状態、(C)はストッカ163からスタイラス131を取り出した後の斜視図である。
【0085】
ストッカ163は、矩形のストッカ本体164と、このストッカ本体164に対して移動可能に支持された上側保持具165と、下側保持具166とを有して形成される。上側保持具165は本発明の進退可能な規制片部に相当し、下側保持具166は本発明の被係止片部に相当する。
【0086】
まず、図16(C)を参照して下側保持具166を説明する。下側保持具166は、ストッカ本体164からX−方向に突出し、その突出部分は板状である。本実施形態では下側保持具166の平坦面が、X−Z平面に平行となっている。下側保持具166には、Z+方向の端部からZ−方向に略正方形状の切欠きが形成されている。ここでは、下側保持具166を、切欠きの両側となる側板166A、166Bと、これらを接続する下板166Cとに分けて説明する。
【0087】
図15に示すように、スタイラス131の着座板体134には、断面L字形の2つの上側係止片部34Lと、1つの下側係止片部34Kとが設けられ、それぞれ着座板体134に一体形成されている。2つの上側係止片部34Lは、着座板体134の切欠部34Eを挟んだ位置に設けられている。この係止片部34Lには、側板166A、166Bを係止するZ方向に延びる溝部が形成されている。下側係止片部34Kは、切欠部34EよりもZ−側に設けられている。この係止片部34Kには、3方向の溝部が形成されている。すなわち、側板166A、166Bを係止するZ方向に延びる溝部と、下板166Cを係止するX方向に延びる溝部とである。
【0088】
一方、上側保持具165は、下側保持具165とともにZ方向に並んで配置され、ストッカ本体164からX−方向に突出している。その突出量は、下側保持具165の側板166Aの突出量と略同じである。
【0089】
また、上側保持具165は、図17に示すように、X方向へ進退可能に設けられている。図17は、ストッカ163からスタイラス131を取り出す際の、上側保持具165の動作を説明する図であり、(A)は上側保持具165が解除位置まで後退した状態、(B)は上側保持具165が係止位置まで前進した状態の斜視図である。図18は、ストッカ本体164の側蓋168を外した状態の図であり、上側保持具165の駆動装置172を示す背面図である。つまり、上側保持具165は、ソレノイド型の駆動装置172の駆動軸174の先端に支持され、X方向に進退可能である。係止位置では、上側保持具165の先端が一方の上側係止片部34Lに係止する。駆動軸174の移動ストロークは、数mmであり、係止位置では、図17(B)のように上側係止片部34Lと引っ掛かるようになっている。
【0090】
<スタイラス自動交換の動作>
前述の実施形態と同様に、スタイラス自動交換プログラムによって、スタイラス交換指令が制御装置50に与えられると、検出器駆動機構40が駆動して、スタイラスホルダ132と交換ラック60との間でスタイラス交換動作が実行される。
【0091】
本実施形態では、図15に示すように、スタイラス131が未装着の検出器130は、ストッカ163に収納されたスタイラス131に対して、スタイラス131の長手方向と、スタイラスホルダ132の中心軸とが一致するような位置関係になっている。
【0092】
スタイラスホルダ132に対して、新たなスタイラス131を装着しようとする場合、図16(A)に示すように、昇降駆動機構43の駆動により、検出器130がZ−方向へ移動して、ストッカ163に接近する。すると、スタイラスホルダ132の軸体36がスタイラス131の重心まで案内されて、スタイラスホルダ132の板状揺動体137に着座板体134が装着される(図16(B)参照)。
【0093】
次に、昇降駆動機構43の駆動により、検出器30はZ+方向へ移動されて交換ラック60から離間される。すると、スタイラス131の各係止片部34L、34Kの各溝部からストッカ163の側板166A、166Bおよび下板166Cが外れて、交換ラック60からスタイラス131が取り出される(図16(C)参照)。
【0094】
一方、ストッカ163にスタイラス131を格納する場合は、図16(C)→(B)→(A)の順に検出器130を移動させればよいが、図16(B)のようにスタイラス131がストッカ163の収納位置まで案内されたら、ソレノイド型の駆動装置172により、上側保持具165を解除位置から係止位置まで移動させる。その後、昇降駆動機構43の駆動により、検出器30はZ+方向へ移動されて、交換ラック60から離間される。すると、スタイラス131の係止片部34Lが上側保持具165の先端に係止されるから、スタイラス131はZ方向の移動が規制されるので、スタイラスホルダ132がスタイラス131をストッカ163に残したままZ+方向へ移動する。これにより、検出器130のスタイラス131が交換ラック60に格納される。
【0095】
本実施形態によれば、スタイラス交換の際の検出器130の移動方向をZ方向のみとすることができるため、X方向への移動が不要となるので、スタイラスの交換装置の構成を簡略化できる。
【0096】
本発明は、真円度測定装置に限らず、表面粗さ測定装置や輪郭形状測定装置などの表面性状測定装置に広く適用できる。
【符号の説明】
【0097】
10 :ベース
20 :回転テーブル
30、130 :てこ式検出器
31、131 :スタイラス(測定子)
32、132 :スタイラスホルダ
33 :スタイラス本体
33A:接触部
34、134 :着座板体(着座体)
34A:本体部
34B、34L、34K:係止片部
34C:位置決め用ボール(球部)
34D:カウンタバランス部
34E:切欠部
34J:凸部
35 :ホルダ本体
36 :軸体
37、137 :板状揺動体
38、82、138:板バネ(保持用弾性体)
39、81、139:板バネ支持体(保持用弾性体を支持する支持体)
40 :検出器駆動機構
50 :制御装置
60 :交換ラック(スタイラスストッカ)
65、165 :上側保持具(規制片部)
66、166 :下側保持具(被係止片部)
71 :変位検出手段
72 :回転力付与手段
L :垂直軸線方向
【技術分野】
【0001】
表面性状測定装置に用いられるてこ式検出器、スタイラス及び自動交換装置に関する。詳しくは、スタイラスが着脱自在に装着されたてこ式検出器、およびこの検出器からスタイラスを自動的に着脱させるスタイラス自動交換装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
被測定物の表面にスタイラスを接触させた状態において、スタイラスを被測定物の表面に沿って移動させ、このとき、被測定物の表面粗さによって生じるスタイラスの変位を検出し、このスタイラスの変位から被測定物の表面粗さを測定する表面粗さ測定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の図3および図9に記載の表面粗さ測定装置に取り付けられているてこ式検出器は、被測定物に接触するスタイラス、および該スタイラスを着脱自在に保持するスタイラスホルダを備える。
表面粗さ測定装置を使用するにあたっては、予め、通常のスタイラスのほかに、被測定物の測定部位形状に対応して用意された各種形状のスタイラスが用意されているから、被測定物の測定部位形状に適したスタイラスに交換したのち、測定を行う。例えば、小孔の表面粗さを測定する場合には、小孔測定用スタイラスに、あるいは、深い溝の表面粗さを測定する場合には、スタイラス長さが長い深溝測定用スタイラスなどに交換したのち、測定を行う。
【0004】
表面粗さ測定装置に限らず、真円度測定装置や輪郭形状測定装置などの表面性状測定装置においても、測定内容の多様化に対応すべく、被測定物の測定部位に対応して用意された各種形状のスタイラスが用意されている。
スタイラスの交換作業は、従来、測定者によって行われている。これには、測定者が、測定作業を一旦中断し、現在使用中のスタイラスを検出器から取り外したのち、新たなスタイラスを検出器に装着して、測定作業を再開していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−74616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のようなスタイラスの交換作業では、測定作業を一旦中断し、測定者が手動で、スタイラスの取外作業およびスタイラスの装着作業を行わなければならないため、測定作業の中断時間が長いうえ、スタイラスの取外作業および装着作業に伴う測定者への負担も大きい。このような状況に対し、近年、表面性状測定装置における測定の無人化、自動化の要求が増加してきた。
そこで、三次元測定機などで利用されているオートプローブチェンジャーを表面性状測定装置に適用することが考えられる。つまり、複数種のスタイラスを格納した交換ラックを測定装置に設置して、検出器のスタイラスを自動的に交換するというものである。
【0007】
しかし、従来のように手動でスタイラスを交換する場合であっても、交換ラックを用いて自動的に交換する場合であっても、異なる種類のスタイラスに交換することによって、てこ式検出器のバランスが崩れ、検出器の測定力が変化してしまうという共通の課題があった。測定力とは測定中にスタイラスが被測定物に付与する力を示す。特に精密測定の際は、交換後のスタイラスのバランス調整が必要となる。そのため、交換ラックを用いてスタイラスを自動交換するには、バランス調整をも自動で行えるような機構を検出器に内蔵させなくてはならなかった。
【0008】
本発明は、前記従来技術に対する要求に応えるためのものであり、その解決すべき課題は、
被測定物と接触する接触部を有したスタイラスと、
前記スタイラスを揺動自在に支持するスタイラスホルダと、
前記スタイラスの揺動変位を検出する変位検出手段と、を備え、被測定物の表面性状を測定するために前記スタイラスの揺動変位を取得するてこ式検出器であって、
前記スタイラスは、先端に前記接触部を有する長尺状のスタイラス本体と、該スタイラス本体の基端に設けられ前記スタイラスホルダに着脱自在な着座体とを有する場合に、
複数種のスタイラスを手動で交換する作業の負担を軽減できるてこ式検出器、およびそのスタイラス、さらには、てこ式検出器に対して複数種のスタイラスを自動で交換できるスタイラス自動交換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために本発明の請求項1に係るてこ式検出器においては、
前記スタイラスホルダには、前記スタイラスの揺動中心となる軸体が設けられ、
前記着座体には、前記スタイラスホルダから切り離された状態の前記スタイラス全体の重心が位置しており、かつ前記スタイラスを装着する際に前記スタイラスの重心まで前記軸体を案内する切欠部が形成されている。この切欠部の形状は、略U字、略V字、略L字など特に限定されない。
そして、該切欠部によって前記軸体が前記重心まで案内された状態で、前記スタイラスホルダに前記着座体が着脱自在に保持され、前記スタイラスが軸体周りに揺動自在となることを特徴とする。
なお、本発明においてスタイラスホルダに設けられる軸体は、このホルダに回転自在に支持されたものでもよく、ホルダに固定支持されたものでもよい、後者の場合、固定された軸体の中心軸周りに後述の揺動体が回転することになる。
【0010】
本発明に係るてこ式検出器において、前記スタイラスの着座体には、該着座体の切欠部に前記スタイラス全体の重心が含まれるように、前記重心の位置を調整するカウンタバランス部が設けられていることが好ましい。
【0011】
本発明に係るてこ式検出器において、被測定物の測定部位に対応して用意された複数種の前記スタイラスには、該スタイラスを取出可能かつ格納可能に収容する交換ラックに設けられた被係止片部を係止可能な係止片部が設けられている。そして、前記係止片部は、前記スタイラスの着座体に設けられ、かつ前記カウンタバランス部に対して前記軸体の中心軸方向にオフセットした位置に設けられていることが好ましい。
ここで、着座体の係止片部が交換ラックの被係止片部を係止する動作と、保持されたスタイラスがスタイラスホルダから離脱する動作とは連係して実行される。つまり、スタイラスをスタイラスホルダから離脱させる際、スタイラスホルダを交換ラックに接近させて、まず被係止片部に係止片部を係止させる。この係止状態を保って検出器を交換ラックから離間させると、着座体がスタイラスホルダから離脱するから、スタイラスを交換ラックに格納できる。反対にスタイラスをスタイラスホルダに装着させる際、スタイラスホルダを交換ラックに接近させてスタイラスホルダの軸体をスタイラスの重心まで案内して、スタイラスの着座体をスタイラスホルダに装着させる。その後、被係止片部と係止片部との係止が解除される方向にスタイラスホルダを移動させて、交換ラックからスタイラスを取り出せばよい。
【0012】
本発明に係るてこ式検出器では、前記スタイラスホルダには、前記軸体に軸支された揺動体が設けられている。そして、前記軸体が前記スタイラスの重心まで案内された状態では、前記揺動体および前記着座体が、前記軸体の軸方向に並んで配置されており、前記揺動体には、弾性力で前記着座体を該揺動体に押し付けて保持する保持用弾性体と、該保持用弾性体を支持する支持体とが設けられていることが好ましい。
この保持用弾性体は、その基端が前記支持体に回転自在に支持され、かつ前記スタイラスを前記スタイラスホルダに装着の際、先端が前記着座体によって押され、回転しながら弾性変形を生じ、発生した弾性力で前記着座体を前記該揺動体に押し付けて保持することが好ましい。
【0013】
または、前記保持用弾性体は、その基端が前記支持体に片持ち支持され、かつ前記スタイラスを前記スタイラスホルダに装着の際、前記着座体によってその先端が前記揺動体から遠くなる方向に押され、曲げによる弾性変形を生じ、発生した弾性力で前記着座体を前記揺動体に押し付けて保持することが好ましい。ここで、前記スタイラスが前記スタイラスホルダに装着された状態で、前記着座体は、前記切欠部を挟んだ位置に、前記保持用弾性体側への2つの凸部を有する。前記保持用弾性体は板状であり、一部分が前記支持体に片持ち支持され、他の部分が前記2つの凸部により前記揺動体から遠くなる方向に押されていることが好ましい。
【0014】
本発明に係るてこ式検出器では、前記スタイラスが前記スタイラスホルダに装着された状態で、前記支持体が、前記切欠部を通って前記揺動体から前記軸体の軸方向に突出して形成され、該突出した先端部で前記保持用弾性体を支持していることが好ましい。
【0015】
本発明に係るてこ式検出器では、前記着座体と前記揺動体との間に複数の球部を一直線上でない少なくとも三箇所に配置し、この球部によって前記揺動体に対する前記着座体の前記軸体の中心軸方向の位置決めを行うことが好ましい。そして、前記複数の球部のうち少なくとも2個は、着座体に回転支持され、かつ装着の際に前記軸体が重心まで案内される方向に沿って形成された前記揺動体の溝上を転動することが好ましい。
【0016】
本発明に係るスタイラスは、前記てこ式検出器に着脱自在に装着されることを特徴とする。
本発明に係るスタイラスの自動交換装置は、被測定物の測定部位に対応して用意された複数種のスタイラスを取出可能かつ格納可能に収容した交換ラックと、
前記てこ式検出器を前記交換ラックに対して接近、離間する方向へ駆動させる検出器駆動機構と、制御装置とを備え、
前記制御装置は、スタイラス交換指令が与えられた際、前記検出器駆動機構を制御しながら、前記スタイラスホルダと前記交換ラックとの間でスタイラス交換動作を実行することを特徴とする。
【0017】
本発明に係るスタイラスの自動交換装置では、前記スタイラスの前記着座体は板状に形成されており、
前記交換ラックは、該着座体の平坦面上で前記軸体が前記スタイラスの重心まで案内される方向に直交する方向へ前記てこ式検出器を移動させる際に、前記着座体に設けられた係止片部と係止しながら前記スタイラスを収納位置まで導くための、前記てこ式検出器の移動方向に延びた被係止片部と、
前記スタイラスが収納位置にある状態で、前記軸体が前記スタイラスの重心まで案内される方向への前記スタイラスの移動を規制する規制片部と、を有し、
前記スタイラスが収納位置にある状態で、前記軸体が前記スタイラスの重心まで案内される方向へ前記検出器が移動することにより、前記スタイラスだけが前記交換ラックに格納されることが好ましい。
【0018】
または、本発明に係るスタイラスの自動交換装置では、前記スタイラスの前記着座体は板状に形成されており、
前記交換ラックは、該着座体の平坦面上で前記軸体が前記スタイラスの重心まで案内される方向へてこ式検出器を移動させる際に、前記着座体に設けられた係止片部と係止しながら、前記スタイラスを収納位置まで導くための、前記てこ式検出器の移動方向に延びた被係止片部と、
前記スタイラスが収納位置にある状態で、前記軸体が前記スタイラスの重心まで案内される方向への前記スタイラスの移動を規制する規制片部と、を有し、
前記規制片部が、前記スタイラスの移動を規制するために前記着座体を係止する係止位置と、前記着座体の係止を解除する解除位置との間を進退可能に設けられ、前記スタイラスが収納位置にある状態で、前記規制片部が係止位置に維持され、前記軸体が前記スタイラスの重心まで案内される方向へ前記検出器が移動することにより、前記スタイラスだけが前記交換ラックに格納されることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明に係るてこ式検出器の構成によれば、スタイラスの接触部とは反対側の基端に、着座体が一体形成されている。このスタイラスの着座体は、スタイラスホルダに対して着脱可能に保持される部材であり、一体形成には、スタイラス本体と着座体とは別個に製作したものを組立てて一体にすることが含まれる。
本発明においては、スタイラスの揺動軸である軸体をスタイラスの重心まで案内する切欠部を前記スタイラスの着座体に形成した。装着の際にこの切欠部を通ることによって、軸体がスタイラスの重心までアクセス可能に構成されている。従って、どのスタイラスの重心も、てこ式検出器の揺動中心である軸体と同軸上に設定されるから、異なる種類のスタイラスに交換した後も、揺動体を含めたスタイラス全体のバランスが崩れず、交換前と同じ測定力で測定を継続できる。特に精密測定において、交換後のスタイラスのバランス調整が不要となり、検出器にバランス調整用機構を内蔵させる必要もない。
【0020】
本発明に係る構成によれば、スタイラス全体の重心が着座体の切欠部に含まれるように、該着座体に重心の位置を調整するカウンタバランス部が設けられている。例えば、第1のスタイラスにおいて、そのスタイラス本体の長さや接触部の形状、これらの材質などを変更した第2のスタイラスがあり、両スタイラスを用いる場合がある。第1のスタイラスの重心に合わせてスタイラスの着座体を形成し、これと異種類の第2のスタイラスの着座体を第1のスタイラスの着座体と同一に形成したとしても、第2のスタイラスの着座体にカウンタバランス部を設けるだけで、第1のスタイラスの着座体と同じ位置に第2のスタイラスの重心を設定できる。すなわち、カウンタバランス部を設けることで、異なる種類のスタイラスの着座体の基本形状を共通化できる。
【0021】
本発明に係る構成によれば、スタイラスの着座体に設けた係止片部が、同じ着座体のカウンタバランス部に対して揺動軸方向にオフセットしているから、特殊な形状のスタイラスを製作する場合にカウンタバランス部を拡張・縮小する自由度が増大して、特殊形状のスタイラスを容易に製作できる。
【0022】
本発明に係る構成によれば、弾性力でスタイラスを保持する機構を採用した。すなわち、揺動体に、弾性力で着座体を揺動体に押し付けて保持させる保持用弾性体を設けたから、スタイラスの保持機構が簡単で、磁力を利用した保持機構と比べて軽量となる。
また、この保持用弾性部材は、その基端が支持体に回転自在に支持され、かつ装着の際、先端が着座体によって押され、回転しながら弾性変形を生じ、発生した弾性力で着座体を該揺動体に押し付けて保持するようになっているから、着座体を挿入するだけで揺動体に保持させることができ、また、着座体を引き抜くだけで揺動体から離脱させることができる。このように、スタイラスの保持機構をいわゆるトグル機構で構成したことで、交換作業が容易となる。
さらに、弾性体の先端が着座体に押されるまでは、弾性体に弾性力が生じず、先端が着座体に押されてから弾性体が回転しながら弾性変形が進み、徐々に着座体に作用する弾性力が増大する。そして、弾性体が所定の回転位置に達したら、所定の保持力で着座体を揺動体に保持するようになっている。このようにトグル機構の動作では、スタイラスの着座体が弾性体の先端に接触した後、短い移動距離を進んでから、揺動体に完全に保持される。この短い移動距離を進む間に、例えば着座体と揺動体との位置決めを実行することで、スタイラスを正確に位置決めしてから、スタイラスを保持することが可能となる。
【0023】
または、スタイラスの保持機構をトグル機構で構成しないで、単純な板バネ式の着脱機構とすれば、軽量化が一層進み、スタイラスの自動交換の確実性と、使い勝手とが更に向上する。
【0024】
本発明に係る構成によれば、スタイラスの着座体と揺動体との間に複数の球部を一直線上でない少なくとも三箇所に配置し、この球部によって前記揺動体に対する前記着座体の位置決めを行うから、軸体の中心軸方向の位置決めを正確に実行できる。
さらに、複数の球部のうち少なくとも2個は、着座体に回転支持され、かつ装着の際に揺動体に形成された溝に沿って案内されるから、軸体を正確にスタイラスの重心まで案内できる。従って、揺動体と着座体の位置関係を正確に再現することができ、スタイラスの交換による測定値のバラツキが減少する。
【0025】
本発明に係るスタイラスの自動交換装置の構成によれば、自動交換の際にスタイラスのバランス調整が不要となり、異なる種類のスタイラスに交換しても同一の測定力で測定を継続できるなど、前述と同様の作用効果が得られる。
【0026】
以上説明したように本発明にかかるてこ式検出器およびスタイラスによれば、複数種のスタイラスを手動で交換する作業の負担を軽減でき、さらには、本発明にかかるスタイラスの自動交換装置によれば、てこ式検出器に対して複数種のスタイラスを自動で交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1実施形態に係る真円度測定装置を示す斜視図である。
【図2】(A)は前記真円度測定装置の検出器の斜視図、(B)は内部構造を示す斜視図である。
【図3】(A)は前記検出器の揺動体の斜視図、(B)、(C)は異なる方向から見たスタイラスの斜視図である。
【図4】(A)は前記検出器のスタイラスホルダにスタイラスを装着する前の部分断面図、(B)は装着後の部分断面図である。
【図5】前記スタイラスホルダの板バネが揺動体に支持された状態の斜視図である。
【図6】図4(B)の範囲Iを拡大して示す部分断面図であり、(A)は前記板バネの回転動作における初期状態、(B)は板バネが所定角度回転した状態、(C)は所定の保持力が生じるまで板バネが回転した状態を示す図である。
【図7】各種スタイラスの重心位置を説明する図である。
【図8】図1の真円度測定装置に交換ラックを取り付けた場合を別の方向から模式的に示した斜視図である。
【図9】図8の装置を用いてスタイラスを交換する手順を説明する図であり、(A)は交換ラックからスタイラスを取り出す前、(B)はスタイラスを取り出した後の斜視図。
【図10】第2実施形態に係る検出器のスタイラスホルダの部分側面図であり、(A)はスタイラスを装着する前の図、(B)は装着後の図である。
【図11】本発明の変形例に係る各種スタイラスの着座体を示す図である。
【図12】本発明の第3実施形態に係る検出器のスタイラスの着脱機構を示す斜視図である。
【図13】(A)は、検出器のスタイラスホルダにスタイラスを装着する前の板状揺動体のみの部分側面図であり、(B)は装着後の板状揺動体と着座板体との位置関係を示す部分側面図である。
【図14】図13中の範囲IIの拡大図である。
【図15】ストッカからスタイラスを取り出す前のストッカと検出器との位置関係を示す斜視図である。
【図16】スタイラスを交換する手順を説明する図であり、(A)はストッカからスタイラスを取り出す前、(B)は板状揺動体がスタイラスを装着した状態、(C)はストッカからスタイラスを取り出した後の斜視図である。
【図17】ストッカの上側保持具の動作を説明する図であり、(A)は解除位置、(B)は係止位置を示す斜視図である。
【図18】ストッカの上側保持具の駆動装置を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態の真円度測定装置を示す斜視図である。
本実施形態の真円度測定装置は、図1に示すように、ベース10と、このベース10上の一側に垂直軸線Lを中心に回転可能に設けられ上面に被測定物Wを載置する回転テーブル20と、てこ式検出器30と、この検出器30を垂直軸線L方向および垂直軸線Lに対して直交する方向でかつ回転テーブル20に対して接近、離間する方向へ駆動させる検出器駆動機構40と、制御装置50とを備える。
【0029】
回転テーブル20は、内蔵された図示省略の回転テーブル駆動機構21によって垂直軸線Lを中心に回転可能に設けられている。回転テーブル駆動機構21は、回転テーブル20を回転駆動するモータ、あるいは、モータからの回転を減速器経由で回転テーブル20に伝達する機構などで構成されている。
【0030】
検出器30はてこ式であって、被測定物Wに接触するスタイラス31と、このスタイラス31を着脱自在に保持し、スタイラス31の変位を電気信号として検出する検出器本体としてのスタイラスホルダ32とを有する。また、スタイラス31はスタイラスホルダ32に設けられた揺動軸を中心に揺動自在に支持されている。そのため検出されるスタイラス31の変位はスタイラス31の回転変位量であるが、その変位量がスタイラス31の回転半径に対して微小であるから、検出される変位はスタイラス31の長尺方向に直交する方向の変位量になる。
【0031】
検出器駆動機構40は、ベース10上に他側に立設されたコラム41と、このコラム41に対して昇降スライダ42を上下方向(Z方向)へ駆動させる昇降駆動機構43と、昇降スライダ42に対してスライドアーム44を垂直軸線Lに対して直交する方向でかつ回転テーブル20に対して接近、離間する方向(X方向)へ駆動させる第1スライド駆動機構45と、スライドアーム44の先端に設けられ検出器30を保持する検出器アーム46と、検出器アーム46をスライドアーム44のスライド軸線を中心に旋回させて検出器30の姿勢を変化させる旋回駆動機構47(図示省略)とを備える。
【0032】
昇降駆動機構43は、昇降スライダ42を上下方向へ駆動できる機構であれば、どのような構造でもよい。例えば、コラム41に上下方向へ立設されたボールねじ軸と、このボールねじ軸に回転させるモータと、ボールねじ軸に螺合された昇降スライダ42に連結されたナット部材とを有する送り機構などでもよい。
第1スライド駆動機構45についても、スライドアーム44を垂直軸線Lに対して直交する方向でかつ回転テーブル20に対して近接、離間する方向へ駆動できる機構であれば、どのような機構でもよい。例えば、スライドアーム44の長手方向に沿ってラックを形成し、このラックに噛み合うピニオンおよびこのピニオンを回転させるモータなどを昇降スライダ42内に設けた構成であってもよい。
【0033】
<測定制御の動作>
制御装置50のプログラム記憶部51に記憶された測定プログラムによって、測定指令が制御装置50に与えられると、検出器駆動機構40が駆動される。つまり、昇降駆動機構43および第1スライド駆動機構45の駆動により、検出器30が被測定物Wに接近する方向へ移動され、検出器30のスタイラス31が被測定物Wに接触される。また、必要に応じて旋回駆動機構47の駆動により、検出器30の姿勢が変更される。この状態において、回転テーブル20が回転駆動されると、被測定物Wの真円度に応じて検出器30のスタイラス31が変位されるから、そのスタイラス31の変位がスタイラスホルダ32によって電気信号として検出されたのち、制御装置50に取り込まれる。制御装置50は、とり込んだ測定データをデータ記憶部52に記憶したのち、これらのデータから真円度を演算し、その結果を表示装置53に表示し、かつ、必要に応じてプリントアウトする。
【0034】
<てこ式検出器のスタイラス着脱機構>
以降、本発明において特徴的な検出器30のスタイラス着脱機構について、図2〜7に基づいて説明する。まず、図2(A)に検出器30の斜視図、同図(B)にその内部構造を示す。
検出器30は、図2(A)に示すようにスタイラスホルダ32に設けられた揺動軸受32Aの周りに揺動自在に支持されたスタイラス31を有している。同時に検出器30は、スタイラス31を着脱させる機構も備えている。そのため、検出器30は、図2(B)に示すように揺動軸となる軸体36周りに回転支持され、かつスタイラス31を着脱自在に保持する板状揺動体37を有する構造となっている。
【0035】
スタイラス31(測定子)について、図3(B)、(C)に異なる方向から見た斜視図を示す。スタイラス31は、先端に接触部33Aを有する長尺状のスタイラス本体33と、このスタイラス本体33の基端に一体形成され着座板体34とからなる。
スタイラス本体33は長尺の円柱形状であり、円柱先端に接触部33Aである2つの超鋼球が固定されている。2つの超鋼球は、円柱先端の側周面に180度間隔で半分ほど埋め込まれて固定されている。図示したスタイラス31は、種々あるスタイラス31の一例に過ぎず、スタイラス本体33の長尺方向の長さ寸法、円柱の径寸法はスタイラス31の種類ごとに異なっている。また、接触部33Aについても、例えば、円柱先端に超鋼球が1つだけ固定されたスタイラスもある。また接触部33Aの形状も球に限らず、球状の先端をもつ円錐形状でもよい。また接触部33Aの材質はサファイヤなどでもよい。
【0036】
着座板体34は略矩形の板体であり、その中心軸とスタイラス本体33の中心軸とが同一線上となっている。着座板体34は、本発明の着座体に相当し、本体部34Aと、長さの異なる2つの係止片部34Bと、球部である3つの鋼製の位置決め用ボール34C(図3(C)参照)を含んで構成されている。
【0037】
着座板体34の形状は、図7(A)にも示すように、この着座板体34とスタイラス本体33の両方を含むスタイラス31全体の重心位置を考慮して、着座板体34にスタイラス31全体の重心が位置するように決定されている。図7(A)にはスタイラス31の重心を黒丸印で示した。
着座板体34の本体部34Aには、その平坦面に略U字形の切欠部34Eが形成されている。この切欠部34Eは、図7(A)に示すように、スタイラス31の重心を含む範囲に形成されている。言い換えると、スタイラス31全体の重心が略U字形の切欠部34Eに位置している。また、切欠部34Eの中心軸Mに直交する方向の幅寸法Pは、スタイラスホルダ32の円柱状軸体36の径寸法よりも大きい。さらに、切欠部34Eの中心軸Mはスタイラス本体33の中心軸と一致しているから、スタイラスホルダ32にスタイラス31を装着する際、切欠部34Eは軸体36を重心まで案内できるようになっている。なお、本実施形態では切欠部34Eの形状を略U字形としたが、この形状は、略V字形、略L字形などでもよく、少なくとも軸体36を重心まで案内できる形状であればよい。
【0038】
図3に示すようにスタイラス31全体の重心を通り、着座板体34の厚さ方向に平行な軸をスタイラスの重心軸Nとする。この重心軸Nを用いて前述の切欠部34Eについて説明すると、切欠部34Eは着座板体34の周側面(図中の上面)からスタイラスの重心軸Nに至る範囲までを切り欠いて、少なくとも重心軸Nが着座板体34の本体部34Aと干渉せずに貫通するように形成されていると言える。
切欠部34Eには、その略U字形の内側の互いに向き合う両側面に、一対の窪み部34Fが形成されている。切欠部34Eの幅寸法P(図7(A)参照)に対して、窪み部34Fの幅寸法Qは大きい。窪み部34Fは、切欠部34Eの中心軸Mに沿って切欠部全体に形成されているのではなく、図7(A)の上側の開口部から中心軸Mに沿って切欠部34Eの略中央までの範囲に形成されている。また、窪み部34Fは、図3に示すように重心軸Nに沿って着座板体34の厚さ方向の全体に形成されているのではなく、着座板体34の係止片部34Bが設けられた表面から重心軸Nに沿って着座板体34の厚さ寸法の8割程度までの範囲に形成されている。このため窪み部34Fの内側面として、図6(C)に拡大して示すように、第1当接面34Gと第2当接面34Hとが形成される。第1当接面34Gは、窪み部34Fにおいて切欠部34Eの中心軸Mに直交する面であり、第2当接面34Hは、窪み部34Fにおいてスタイラス31の重心軸Nに直交する面である。
【0039】
位置決め用ボール34Cは、図3(C)に示すように、着座板体34の一方の平坦面に回転自在に支持されている。3つの位置決め用ボール34Cは異なる3個所に配置されており、そのうちの2つが略U字形の切欠部34Eを挟むように配置される。着座板体34をスタイラスホルダ32に挿入して、スタイラス31が装着された状態では、3つの位置決め用ボール34Cが着座板体34とスタイラスホルダ32の板状揺動体37との間に挟まれるから、3つの位置決め用ボール34Cは、着座板体34を板状揺動体37に対して軸体36の中心軸方向の位置決め、および着座板体34と板状揺動体37の平行度を維持する位置決め手段として機能する。
2つの位置決めボール34Cは、略U字形の切欠部34Eの中心軸M(図7参照)に平行に並んで配置されている。スタイラス31の装着の際、これら2つの位置決めボール34Cは、スタイラスホルダ32の板状揺動体37に形成されたV溝37Cに沿って転動するようになっている。
一方、切欠部34Eを挟んで上記の2つの位置決めボール34Cと反対側の着座板体34に配置された1つの位置決めボール34Cは、V溝37Cと平行に形成された位置決め用平面部37Dに沿って転動するようになっている。
【0040】
スタイラスホルダ32は、図2に示すように、ホルダ本体35と、このホルダ本体35に支持された軸体36と、この軸体36周りに回転自在な板状揺動体37と、スタイラス31の着座板体34を保持するための保持用弾性体である板バネ38と、この板バネ38を支持する板バネ支持体39と、板状揺動体37の回転変位を検出する変位検出手段71(図示省略)と、板状揺動体37に回転力を付与する回転力付与手段72(図示省略)とを有する。
【0041】
ホルダ本体35は、略円筒状であり、板状揺動体37、変位検出手段71および回転力付与手段72を収納する内部空間を有する。略円筒の基端(図中の上端)は、図1の検出器アーム46に固定される。また、略円筒の他端は、軸体36を中心に板状揺動体37およびスタイラス31が一体回転しても干渉しない程度に、断面略コ字状に切り欠かれている。断面略コ字状とは、略円筒のホルダ本体35の中心軸および軸体36の揺動軸の両方に平行な平面で切断した場合のホルダ本体35の断面形状である。
【0042】
軸体36の中心軸は、ホルダ本体35の中心軸の直交方向に平行に設けられ、かつ軸体36は、ホルダ本体35の他端付近に回転自在に軸支されている。なお軸体36は、ホルダ本体35に固定支持されたものでもよい。この場合は、軸体36の中心軸周りに板状揺動体37が回転自在に支持される。
【0043】
板状揺動体37について、図3(A)に斜視図を示す。また、図4(A)にスタイラスホルダ32にスタイラス31を装着する前の板状揺動体37および着座板体34の部分断面図、同図(B)に装着後の部分断面図を示す。
板状揺動体37は、スタイラス31の装着部で、かつ軸体36を固定する幅広の板部37Aと、この幅広の板部37Aと一体形成された幅狭の板部37B(図示一部省略)とを有する。図4(B)に示すように装着後の状態では、幅広の板部37Aと着座板体34とが、軸体36の軸方向に並んで配置される。
また、幅狭の板部37Bの回転変位が変位検出手段71によって検出される。変位検出手段71として差動変圧器を用いるが、他に歪みゲージや容量式センサなどスタイラス31の作動の負荷とならないものを選択してもよい。
幅狭の板部37Bには、回転力付与手段72によって軸体36周りの回転力が付与される。回転力付与手段72としてスプリングを用いるが、他に電動モータや、磁石とコイルからなるボイスコイルにより構成したアクチュエータなども選択できる。
【0044】
板バネ支持体39は、図3(A)に示すように、軸体36よりも幅狭の板部37B側に近い幅広の板部37Aに連続形成されている。図4(A)に断面を示すように、板バネ支持体39は、幅広の板部37Aから軸体36の軸方向に突出する第1支持部材39Aと、この第1支持部材39Aの突出端から軸体36に向かって片持ち状に延設された第2支持部材39Bとを有する。第2支持部材39Bの先端には、図5に示すように、板バネ38を回転自在に支持するための板バネ軸材39Cが固定されている。板バネ軸材39Cは、板状揺動体37の揺動軸の直交方向に平行し、かつ幅広の板部37Aの幅方向に対して平行である。
【0045】
板バネ38は、第1バネ片38Aおよび第2バネ片38Bからなり、略L字状に曲げて形成されている。板バネ38が板バネ支持体39に回転自在となるように、第1バネ片38Aの一端部は、板バネ支持体39の板バネ軸材39Cに略一回転分だけ巻かれ、板バネ軸材39Cに対して回転自在になっている。
スタイラス31が装着される前の状態では、第1バネ片38Aは図5で実線で示すように板バネ軸材39Cから幅広の板部37Aに向けて延設されており、第2バネ片38Bは第1バネ片38Aの他端部から幅広の板部37Aの表面と平行に軸体36に向けて延設されている。
【0046】
<スタイラス着脱機構の動作>
図4および図6に基づいて着脱機構の動作を説明する。図6は、図4(B)の範囲Iを拡大したものである。
ここでは、図4(A)、(B)に示すように静止したスタイラス31にスタイラスホルダ32を接近させて、スタイラス31を装着させる場合について説明する。作業者がスタイラス31を手動で装着する場合は、静止したスタイラスホルダ32にスタイラス31を接近させることになるが、着脱機構の動作は実質的に変わらない。
【0047】
図4(A)のように、最初に、ホルダ本体35の中心軸がスタイラス31の切欠部34Eの中心軸M(図7参照)と同一線上になるように、かつ軸体36の揺動軸がスタイラス31の重心軸Nと平行になるように、スタイラス31に対してスタイラスホルダ32を配置する。
まず、スタイラスホルダ32をスタイラス31に接近させて、着座板体34の切欠部34Eの上側開口部に軸体36を挿入させる。この際、着座板体34の位置決め用ボール34Cを板状揺動体37のV溝37Cおよび位置決め平面部37Dに載せて、ボール34CをV溝37Cおよび平面部37Dに沿って転動させれば、軸体36が着座板体34と干渉することなくスムーズに略U字形の切欠部34Eに沿ってスタイラス31の重心まで案内される。
さらに、板状揺動体37の幅広の板部37Aと、板バネ支持体39の第2支持部材39Bとの間に、着座板体34が差込まれる。そして、略U字形の切欠部34Eには、軸体36に続けて、板バネ支持体39の第1支持部材39Aが挿入される(図4(B))。
【0048】
軸体36がスタイラス31の重心に到達する手前で、板バネ38の先端(第2バネ片38Bの先端)に切欠部34Eの窪み部34Fに形成された第1当接面34Gが当接する(図6(A)参照)。すると、板バネ38の先端が第1当接面34Gによって押され、板バネ38が板バネ軸材39C周りに回転を始める。板バネ38が所定角度回転すると板バネ38の先端が第2当接面34Hにも当接する(同図(B))。つまり、板バネ38の先端が第1当接面34Gと第2当接面34Hとの隅部分に移動する。この状態で、さらに板バネ38の先端が第1当接面34Gによって押されると、板バネ38の弾性変形が始まり、第1バネ片38Aと第2バネ片38Bとの成す角が徐々に小さくなる。
【0049】
図6(A)に示す板バネ38の回転中心から板バネ38の先端までの寸法をSとすると、軸体36がスタイラス31の重心まで案内された状態(同図(C))では、寸法Sが減少し、所定の弾性変形が得られる。また、同図(C)では、板バネ38の回転中心と板バネ38の先端とを結ぶ線が、板状揺動体37の平坦面に対して略直交するから、板バネ38の弾性力が着座板体34を板状揺動体37に押し付ける方向に作用し、矢印で示す保持力が発生する。
板バネ38は、着座板体34が挿入される過程で、着座板体34を付勢しない状態と付勢する状態の2つの状態をとり得るようになっているから、板バネ38の弾性力によって板状揺動体37がスムーズに着座板体34を保持できる。
一方、板状揺動体37と第2支持部材39Bとの間から着座板体34を引抜く場合、板バネ38が逆の手順で動作し、着座板体34が板状揺動体37から離脱して、スタイラス31をスタイラスホルダ32から容易に取り外すことができる。
【0050】
本実施形態の構成によれば、装着の際に、軸体36が着座板体34に形成した略U字形の切欠部34Eを通ることによって、軸体36がスタイラス31の重心までアクセス可能となる。つまり、どのような種類のスタイラス31であっても、スタイラスホルダ32に装着されれば、その重心が必ず軸体36と同軸になる。従って、異なる種類のスタイラス31を板状揺動体37に装着したとしても、板状揺動体37を含むスタイラス31全体のバランスが崩れず、交換前と同じ測定力で測定を継続できる。特に、精密測定において、交換後のスタイラス31のバランス調整が不要となる。
【0051】
また、着座板体34を挿入するだけで板状揺動体37に保持させることができ、また着座板体34を引抜くだけで板状揺動体37から離脱させることができるので、スタイラス31をスタイラスホルダ32に着脱自在に装着できる。板状揺動体37が板バネ38の弾性力で着座板体34を保持することができるから、スタイラス31の保持機構が簡単となり、磁力を利用した保持機構と比べて軽量にできる。
【0052】
また、スタイラス31装着の際、まず、板バネ38先端が着座板体34の第1当接面34Gによって押され、回転しながら弾性変形を生じ、発生した弾性力で着座板体34の第2当接面34Hを板状揺動体37に押し付けるようになっている。すなわち、スタイラス31の保持機構がいわゆるトグル機構で構成されているので、スタイラス31の交換作業が容易となる。
このようなトグル機構では、板バネ38の先端が第2当接面34Hに当接されるまでは、板バネ38の弾性力が生じない。また、板バネ38が第2当接面34Hに当接された後、スタイラスホルダ32が短い移動距離を進んでから、第2当接面34Hを押す弾性力が最大になって、スタイラス31の保持が完了する。この短い移動距離をスタイラスホルダ32が進むまでに、着座板体34と板状揺動体37との位置決めを実行できるから、スタイラスホルダ32にスタイラス31を正確に位置決めした状態で、スタイラス31を保持するという手順が可能となる。
【0053】
装着時のスタイラス31の位置決めに関して、着座板体34と板状揺動体37との間に3つの位置決め用ボール34Cを一直線上でない少なくとも三箇所に配置し、このボール34Cによって板状揺動体37に対する着座板体34の位置決めを行うから、軸体36の中心軸方向の位置決めを正確に実行できる。
また、3つのボール34Cのうちの2つは装着の際に板状揺動体37のV溝37Cに沿って案内されるから、軸体36を正確にスタイラス31の重心まで案内できる。つまり、軸体36の中心軸をスタイラス31の重心軸Nに一致させることができ、交換前後での板状揺動体37と着座板体34の位置関係を正確に再現することができる。
なお、位置決め用ボール34Cの数量を3としたが、少なくとも3つのボール34Cを一直線上でない三箇所に配置すればよい。また、複数のボール34Cのうちの少なくとも2つのボール34CをV溝37Cに沿って転動可能に配置すればよい。
また、位置決め用ボール34Cを着座板体34に回転自在に設けるのではなく、位置決め用ボール34Cを着座板体34に圧入、または接着によって固定してもよい。
【0054】
また、図7(B)には種類の異なるスタイラス31Aの重心位置が同図(A)と同様に示されている。このスタイラス31Aには、スタイラス本体33の長尺方向に直交する方向に略U字の切欠部34Eが形成されているが、着座板体34のベースとなる形状は、同図(A)の着座板体34と共通している。そして、このスタイラス31Aにおいても着座板体34の切欠部34Eにスタイラス31A全体の重心が含まれるように、スタイラス31Aの着座板体34には重心の位置を調整するカウンタバランス部34Dが設けられている。着座板体34にカウンタバランス部34Dを設けてスタイラスの重心をスタイラスの種類ごとに調整するので、異なる種類のスタイラス31Aの着座板体34の基本形状を共通化できる。
図7(B)のスタイラス31Aは、クランク形測定子と呼ばれ、狭い円周部溝内の面測定に有効である。クランク形測定子では、スタイラス本体33の先端にさらに小径短尺の棒片33Bがスタイラス本体33と直交して設けられ、この棒片33Bの端部に接触部33Cが形成されている。接触部33Cの形状は、球状先端をもつ円錐形状である。
【0055】
<スタイラスの自動交換装置>
検出器30のスタイラス31を自動交換する場合について説明する。
図8は、図1の真円度測定装置に交換ラック60を取り付けて、それを別方向から見た斜視図である。この真円度測定装置は、図1の装置と比べて検出器アーム46の形状が異なるが、基本的な構成は共通し、本発明のスタイラス自動交換装置に相当する。
図9は、スタイラス31を交換する手順を説明する図であり、図9(A)は交換ラック60からスタイラス31を取り出す前、図9(B)はスタイラス31を取り出した後の斜視図である。
【0056】
交換ラック60は、図8に示すように回転テーブル20とコラム41との間のベース10上に配置されている。この交換ラック60の位置まで、昇降駆動機構43および第1スライド駆動機構45の動作により、検出器30が移動可能に構成されている。
交換ラック60は、ラック台61と、ラック台61上にY方向に移動するラックスライダ62と、このラックスライダ62に立設する3つのストッカ63とを有する。図8には第1ストッカ63Aが着脱位置に位置決めされているが、ラックスライダ62の移動により第2ストッカ63Bおよび第3ストッカ63Cが順次、着脱位置に位置決めされるようになっている。第2ストッカ63Bには異種類のスタイラス31Aが格納されている。
【0057】
各ストッカ63は、図9に示すように、ラックスライダ62に立設された矩形のストッカ本体64と、このストッカ本体64に固定された上側保持具65および下側保持具66とを有して形成される。上側保持具65は本発明の規制片部に相当し、下側保持具66は本発明の被係止片部に相当する。上側保持具65はX−方向に突出する上側突板65Aを有し、下側保持具66は同方向に突出する下側突板66Aを有し、下側突板66Aは上側突板65Aより突出長さが大きい。また両突板65A、66Aは、Z方向に一定間隔で配置されている。つまり両突板は、スタイラス31の着座板体34に設けられた上下一対の係止片部34Bに係止される。
【0058】
スタイラス31の着座板体34には、図3(B)に示すように、上側溝部73と下側溝部74が形成されている。これらの溝部73、74は、着座板体34の本体部34Aに断面L字形の係止片部34Bが一体形成されることによって形成されている。
一対の係止片部34Bが、着座板体34において位置決め用ボール34Cを支持する面とは反対側の面から、重心軸N方向に突出して設けられている。すなわち各係止片部34Bは着座板体34の本体部34Aに対して軸体36の中心軸方向にオフセットして設けられている。2つの係止片部34Bは長さが異なり、長い係止片部34Bが着座板体34のZ−方向に、短い係止片部34BがZ+方向に一定間隔で配置されている。各係止片部34Bの長尺方向は、略U字形の切欠部34Eの中心軸の直交方向に平行である。
【0059】
このように形成されたスタイラス31の上下の溝部73、74に、ストッカ63の上下の突板65A、66Aが挿入されると、スタイラス31のZ方向の移動が規制されるため、スタイラスホルダ32がZ+方向に移動した場合に、スタイラス31のみをストッカ63に格納することができる。
また、スタイラス31の着座板体34に設けた係止片部34Bが、着座板体34の本体部34Aに対して重心軸N方向にオフセットしているから、例えば図7(B)のような特殊な形状のスタイラス31Aを製作する場合にカウンタバランス部34Dを拡張または縮小する自由度が増大して、特殊形状のスタイラス31Aを容易に製作できる。
【0060】
<スタイラス自動交換の動作>
プログラム記憶部に記憶されたスタイラス自動交換プログラムによって、スタイラス交換指令が制御装置50に与えられると、検出器駆動機構40が駆動される。つまり、昇降駆動機構43、第1スライド駆動機構45および旋回駆動機構47の駆動により、検出器30が移動され、スタイラスホルダ32と交換ラック60との間でスタイラス交換動作が実行される。
【0061】
例えば、図8に示すように、検出器30にスタイラス31が装着されている状態において、スタイラス31交換指令が与えられるとする。検出器30が垂直な姿勢でない場合は、旋回駆動機構47の駆動によって検出器30が適宜旋回され、垂直姿勢に設定される。昇降駆動機構43の駆動により、検出器30がこれから格納する交換ラック60のストッカ63の高さ位置に位置決めされ、以下の動作が順次実行される。
【0062】
(A)第1スライド駆動機構45の駆動により、検出器30はX+方向へ移動され、スタイラス31の着座板体34の上下溝部73、74がストッカ63の上下突板65A、66Aと対応する位置までストッカ63に接近される。すると、上下突板部が上下溝部に挿入され両者が係止状態になる。
(B)昇降駆動機構43の駆動により、検出器30はZ+方向へ移動されて、交換ラック60から離間される。すると、スタイラス31は係止によってZ方向の移動が規制されているので、スタイラスホルダ32がスタイラス31をストッカ63に残したままZ+方向へ移動する。これにより、検出器30のスタイラス31が交換ラック60に格納される。
【0063】
次に、スタイラスホルダ32に対して、新たなスタイラス31を装着しようとする場合、ラックスライダ62をスライド移動させて、新たなスタイラス31を格納したストッカ63が装着位置まで位置決めされたのち、次の動作が実行される。
(C)昇降駆動機構43の駆動により、スタイラスホルダ32はZ−方向へ移動されて交換ラック60に接近される。すると、スタイラスホルダ32の軸体36がスタイラス31の重心まで案内されて、スタイラスホルダ32の板状揺動体37に着座板体34が装着される。つまり、スタイラスホルダ32に新たなスタイラス31が装着される(図9(A)参照)。
(D)第1スライド駆動機構45の駆動により、検出器30はX−方向へ移動されて交換ラック60から離間される。すると、スタイラス31の上下溝部73、74からストッカ63の上下突板65A、66Aが外れ、係止が解除されるから、交換ラック60からスタイラス31が取り出される(図9(B)参照)。
(E)昇降駆動機構43の駆動により、検出器30はZ+方向へ移動され、元の位置に復帰される。こののち、旋回駆動機構47の駆動によって検出器30が所定の姿勢に旋回されたのち、新たな測定部位の測定が実行される。
このようにスタイラス31はストッカ63に取出可能かつ格納可能に収容される。ここでは、標準的なスタイラス31のほかに、長さの異なるスタイラスなど、被測定物Wの測定部位に対応して用意された複数種のスタイラスが収納される。
【0064】
本実施形態によれば、スタイラス交換指令が与えられると、検出器駆動機構40の駆動により、スタイラスホルダ32が相対移動され、スタイラスホルダ32とストッカ63との間でスタイラス交換動作が実行されるから、被測定物Wの測定部位形状に応じて、スタイラス交換動作を指令するようにしておけば、ホルダ32とストッカ63との間でスタイラス交換動作が自動的に実行される。従って、測定作業を中断することなく連続的に行うことができるため、測定者への負担を軽減できるとともに、測定作業を効率化できる。
【0065】
<第2実施形態>
図10は、本発明の第2実施形態に係る検出器のスタイラスホルダの部分側面図であり、(A)はスタイラスを装着する前の図、(B)は装着後の図である。図10は第1実施形態の図4に対応している。
検出器は前述と略同じ構成であるが、スタイラスの保持機構が異なり、以下にスタイラスの着座板体34を保持するための保持用弾性体と、この保持用弾性体を支持する支持体との構成を説明する。
支持体81は、板状揺動体37に連続形成されており、板状揺動体37から軸体36の軸方向に突出して設けられている。この支持体81の突出端には保持用弾性体である板バネ82の一端が留めネジ83で固定されている。
【0066】
板バネ82は略L字状に曲げられており、長い第1バネ片82Aおよび短い第2バネ片82Bで構成される。本実施形態においても板バネ82の弾性変形によって、着座板体34を板状揺動体37に押し付ける保持力が生じるという点で前述の実施形態と共通する。
第1バネ片82Aの一端は支持体81に固定され、その他端が図中下側に配置された軸体36(図示省略)に向かって延設されている。第2バネ片82Bは、第1バネ片82Aの他端から板状揺動体37に向かって延設されている。この板バネ82の折り曲げ部の内側には、軸材85が板状揺動体37の幅方向と平行に設けられている。軸材85は、板バネ82とは別体のL字部材84を回転自在に支持する。
【0067】
L字部材84は、第1部材84Aおよび第2部材84Bからなり、板バネ82よりも大きな剛性を有する。L字部材84の第1部材84Aの一端は、軸材85によって軸支されている。スタイラスが装着される前の状態では、図10(A)のように第1部材84Aの他端は、板バネ82の第2バネ片82Bと平行になり、第2部材84Bは板状揺動体37と平行になる。
【0068】
スタイラスを装着する際、前述の実施形態と同様にスタイラスホルダをスタイラスに接近させて、板状揺動体37と板バネ82の隙間に着座板体34を差し込む。すると、L字部材84の先端(第2部材84Bの先端)に着座板体34の窪み部34Fに形成された第1当接面34Gが当接して、L字部材84の先端が第1当接面34Gによって押され軸材85周りに回転する。L字部材84が所定角度回転すると第2部材84Bの先端が第2当接面34Hにも当接する。つまり、L字部材84の先端が第1当接面34Gと第2当接面34Hとの隅部分に移動する。この状態で、さらに第1当接面34Gによって押されると、L字部材84はその形状を維持したまま、軸材85を板状揺動体37から離れる方向に押す。これにより、板バネ82に弾性変形が生じて軸材85を元の位置へ押し戻そうとする力が生じる。この力はL字部材84を介して着座板体34を板状揺動体37に押し付ける方向に作用し、図10(B)中に矢印で示す保持力となる。このように本実施形態においても、スタイラスの保持機構がトグル機構を構成するため、スタイラス31の交換作業が容易となる。
【0069】
<変形例>
前記実施形態では、弾性体の弾性力によって板状揺動体37が着座板体34を着脱自在に保持する機構について説明したが、これに限らず、マグネットによって着脱可能に着座板体34を板状揺動体37に結合するようにしてもよい。または、エアーの吸引によって、着座板体34を揺動体37に着脱可能に保持する構造であってもよい。
【0070】
図11は、本発明の変形例に係る各種スタイラス31B、31Cの着座板体34を示す図である。着座板体34には同図(A)のスタイラス31Bのように中心軸Mが湾曲した切欠部34Eを形成してもよく、同図(B)のスタイラス31Cのように略V字形の切欠部34Eを形成してもよい。
【0071】
また、前記実施形態では、保持用弾性体として板バネ38、82を用いて、着脱機構をトグル機構として構成した場合を説明したが、これに限らず他の構成の保持用弾性体を用いて同様にトグル機構を構成してもよい。
例えば、保持用弾性体としてスプリングプランジャーのような弾性部材を含んで構成された弾性力発生部品を採用してもよい。スプリングプランジャーは、コイルばねと、コイルばねを内部に収納する円筒状ケースと、ケース内の軸方向に進退自在に収納された進退部材とからなる。進退部材の先端部は円筒状ケースから突出しており、突出した先端部が外力を受けてケース内に押し込まれると、コイルばねが圧縮されて、進退部材にはその反発力が作用するようになっている。
このようなスプリングプランジャーの一端を、前記実施形態の板バネ38の一端の代わりに、回転自在に支持させれば、板バネ38と同様にトグル機構の動作をする。すなわち、進退部材の先端部が着座板体34に押されることにより、スプリングプランジャーが回転しながら、コイルばねが圧縮される。そして、圧縮による弾性力で進退部材が着座板体34を揺動体37に押し付けるようにすればよい。
【0072】
<第3実施形態>
前記実施形態では、トグル機構を利用したスタイラスの着脱機構について説明したが、図12〜図14に示すようなトグル機構を用いない着脱機構でもよい。図12は、本発明の第3実施形態に係る検出器のスタイラスの着脱機構を示す斜視図である。また、図13(A)は、検出器のスタイラスホルダにスタイラスを装着する前の、板状揺動体137のみの部分側面図であり、同(B)は装着後の、板状揺動体137と着座板体134との位置関係を示す部分側面図であり、第1実施形態の図4に対応する。図14は、図13中の範囲IIの拡大図である。
【0073】
検出器は前述と略同じ構成であるが、スタイラス131の保持機構が異なる。以下にスタイラス131の着座板体134を保持するために、板状揺動体137に設けられた板バネ138と、この板バネ138を支持する板バネ支持体139とを説明する。
【0074】
まず、板状揺動体137は、図12に示すように、前述の板状揺動体37と同様に、幅広の板部37Aと、幅狭の板部37Bとを有し、幅広の板部37Aに軸体36が固定されている。この板状揺動体137に対して、板バネ支持体139は、軸体36よりも幅狭の板部37B側に近い幅広の板部37Aに連続形成されている。
【0075】
板バネ支持体139は、幅広の板部37Aから軸体36の軸方向と平行に突出して形成されている。この板バネ支持体139の突出した先端部に、板バネ138がネジ止めされ片持ち状態で支持されている。
【0076】
板バネ138は、幅広の板部37Aと略平行な状態で、その基端が板バネ支持体139にネジ止めされている。また、板バネ138は、その基端から軸体36に向けて延びている。板バネ138の先端は、外側に曲げられている。また、先端は、基端よりも幅広であり、先端の幅寸法は、着座板体134の切欠部34Eの幅寸法よりも広い。
【0077】
スタイラス131が装着された状態では、幅広の板部37Aと着座板体134とが、軸体36の軸方向に並んで配置される。そして、前述の実施形態と同様に、幅広の板部37Aと着座板体134との間には、着座板体134の位置決め及び平行度を維持するため、また、装着の際に軸体36をスタイラス131の重心までスムーズに案内するための、3つの位置決め用ボールが設けられている。
【0078】
一方、位置決め用ボールとは反対側の着座板体134の表面には、切欠部34Eを挟んだ位置に、2つの凸部34Jが形成されている。2つの凸部34Jは、それぞれ1個の鋼球からなり、着座板体134の表面に一部分が埋め込まれている。凸部34Jは、位置決め用ボールと同様に超鋼球としてもよいが、これに限られない。なお、板バネ138は着座板体134の凸部34Jに当接してスタイラス131を保持するため、着座板体134には第1実施形態で示したような窪み部34Fが不要になる。
【0079】
<スタイラス着脱機構の動作>
着脱機構の動作については、基本的な動作は、前記実施形態と共通する。ここでは、図13(A)、(B)に基づいて異なる点を中心に説明する。スタイラス131の装着の際、軸体36は、着座板体134の切欠部34Eに沿って、スタイラス131の重心まで案内される。前述の実施形態と同様に、軸体36と板バネ支持体139は、軸体が案内される方向(案内方向)に沿って並んで配置されている。そのため、切欠部34Eには、軸体36に続けて、板バネ支持体139も挿入される。
【0080】
軸体36がスタイラス31の重心に到達する手前で、板バネ138の先端(外側に曲げられている部分)に2つの凸部34Jが当接する。すると、板バネ138が曲がり、先端が凸部34Jによって外側に押される。軸体36がスタイラス31の重心まで案内された状態では、幅広の板部37Aと板バネ138の先端との間隔が広がり、板バネ138の弾性変形によって生じる弾性力が、2つの凸部34Jに作用して、着座板体134を板状揺動体137に押し付ける。このようにして、スタイラス131を保持する保持力が発生する。ここで、板バネ138の先端が外側に押されるとは、先端が板状揺動体137から遠くなる方向に押されることを言う。
【0081】
本実施形態によれば、単純な板バネ式の着脱機構を用いることにより、着脱機構の軽量化が一層進み、スタイラス131の自動交換の確実性と、使い勝手とが更に向上する。
【0082】
図14に示すように、板バネ支持体139の突出した先端部には、さらに僅かに突出する突部139Aが形成されている。この突部139Aは、板バネ支持体139の突出した先端部において、最も軸体36に近い部分にのみ形成されている。そのため、板バネ138は、この突部139Aにより外側に僅かに曲げられた状態で板バネ支持体139にネジ止めされている。なお、板バネ138を、基端を含む狭幅部138Aと、広幅部138Bと、外側に曲げられた先端部138Cとに区分して説明すると、板バネ138が突部139Aと当接する位置は、広幅部138Bの略中央になる。
【0083】
このように突部139Aを設けることで、スタイラスが装着される前の状態でも、板バネ138が弾性変形しているので、スタイラスを装着すると、板バネ138がさらに弾性変形して、スタイラスには大きな弾性力が作用することになる。従って、スタイラスの装着による板バネ138の弾性変形が微小であっても、所定の保持力でスタイラスを保持することができる。
【0084】
<スタイラスの自動交換装置>
本実施形態のスタイラス131の自動交換装置は、前述の実施形態と同様に、図8で示した交換ラック60を有する真円度測定装置であるが、交換ラック60を構成するストッカ163の構成が異なっている。このストッカ163について、図15〜図18に基づいて説明する。図15は、ストッカ163からスタイラス131を取り出す前のストッカ163と検出器130との位置関係を示す斜視図であり、第1実施形態の図9(A)に対応する。図16は、スタイラス131を交換する手順を説明する図であり、(A)はストッカ163からスタイラス131を取り出す前、(B)は板状揺動体137がスタイラス131を装着した状態、(C)はストッカ163からスタイラス131を取り出した後の斜視図である。
【0085】
ストッカ163は、矩形のストッカ本体164と、このストッカ本体164に対して移動可能に支持された上側保持具165と、下側保持具166とを有して形成される。上側保持具165は本発明の進退可能な規制片部に相当し、下側保持具166は本発明の被係止片部に相当する。
【0086】
まず、図16(C)を参照して下側保持具166を説明する。下側保持具166は、ストッカ本体164からX−方向に突出し、その突出部分は板状である。本実施形態では下側保持具166の平坦面が、X−Z平面に平行となっている。下側保持具166には、Z+方向の端部からZ−方向に略正方形状の切欠きが形成されている。ここでは、下側保持具166を、切欠きの両側となる側板166A、166Bと、これらを接続する下板166Cとに分けて説明する。
【0087】
図15に示すように、スタイラス131の着座板体134には、断面L字形の2つの上側係止片部34Lと、1つの下側係止片部34Kとが設けられ、それぞれ着座板体134に一体形成されている。2つの上側係止片部34Lは、着座板体134の切欠部34Eを挟んだ位置に設けられている。この係止片部34Lには、側板166A、166Bを係止するZ方向に延びる溝部が形成されている。下側係止片部34Kは、切欠部34EよりもZ−側に設けられている。この係止片部34Kには、3方向の溝部が形成されている。すなわち、側板166A、166Bを係止するZ方向に延びる溝部と、下板166Cを係止するX方向に延びる溝部とである。
【0088】
一方、上側保持具165は、下側保持具165とともにZ方向に並んで配置され、ストッカ本体164からX−方向に突出している。その突出量は、下側保持具165の側板166Aの突出量と略同じである。
【0089】
また、上側保持具165は、図17に示すように、X方向へ進退可能に設けられている。図17は、ストッカ163からスタイラス131を取り出す際の、上側保持具165の動作を説明する図であり、(A)は上側保持具165が解除位置まで後退した状態、(B)は上側保持具165が係止位置まで前進した状態の斜視図である。図18は、ストッカ本体164の側蓋168を外した状態の図であり、上側保持具165の駆動装置172を示す背面図である。つまり、上側保持具165は、ソレノイド型の駆動装置172の駆動軸174の先端に支持され、X方向に進退可能である。係止位置では、上側保持具165の先端が一方の上側係止片部34Lに係止する。駆動軸174の移動ストロークは、数mmであり、係止位置では、図17(B)のように上側係止片部34Lと引っ掛かるようになっている。
【0090】
<スタイラス自動交換の動作>
前述の実施形態と同様に、スタイラス自動交換プログラムによって、スタイラス交換指令が制御装置50に与えられると、検出器駆動機構40が駆動して、スタイラスホルダ132と交換ラック60との間でスタイラス交換動作が実行される。
【0091】
本実施形態では、図15に示すように、スタイラス131が未装着の検出器130は、ストッカ163に収納されたスタイラス131に対して、スタイラス131の長手方向と、スタイラスホルダ132の中心軸とが一致するような位置関係になっている。
【0092】
スタイラスホルダ132に対して、新たなスタイラス131を装着しようとする場合、図16(A)に示すように、昇降駆動機構43の駆動により、検出器130がZ−方向へ移動して、ストッカ163に接近する。すると、スタイラスホルダ132の軸体36がスタイラス131の重心まで案内されて、スタイラスホルダ132の板状揺動体137に着座板体134が装着される(図16(B)参照)。
【0093】
次に、昇降駆動機構43の駆動により、検出器30はZ+方向へ移動されて交換ラック60から離間される。すると、スタイラス131の各係止片部34L、34Kの各溝部からストッカ163の側板166A、166Bおよび下板166Cが外れて、交換ラック60からスタイラス131が取り出される(図16(C)参照)。
【0094】
一方、ストッカ163にスタイラス131を格納する場合は、図16(C)→(B)→(A)の順に検出器130を移動させればよいが、図16(B)のようにスタイラス131がストッカ163の収納位置まで案内されたら、ソレノイド型の駆動装置172により、上側保持具165を解除位置から係止位置まで移動させる。その後、昇降駆動機構43の駆動により、検出器30はZ+方向へ移動されて、交換ラック60から離間される。すると、スタイラス131の係止片部34Lが上側保持具165の先端に係止されるから、スタイラス131はZ方向の移動が規制されるので、スタイラスホルダ132がスタイラス131をストッカ163に残したままZ+方向へ移動する。これにより、検出器130のスタイラス131が交換ラック60に格納される。
【0095】
本実施形態によれば、スタイラス交換の際の検出器130の移動方向をZ方向のみとすることができるため、X方向への移動が不要となるので、スタイラスの交換装置の構成を簡略化できる。
【0096】
本発明は、真円度測定装置に限らず、表面粗さ測定装置や輪郭形状測定装置などの表面性状測定装置に広く適用できる。
【符号の説明】
【0097】
10 :ベース
20 :回転テーブル
30、130 :てこ式検出器
31、131 :スタイラス(測定子)
32、132 :スタイラスホルダ
33 :スタイラス本体
33A:接触部
34、134 :着座板体(着座体)
34A:本体部
34B、34L、34K:係止片部
34C:位置決め用ボール(球部)
34D:カウンタバランス部
34E:切欠部
34J:凸部
35 :ホルダ本体
36 :軸体
37、137 :板状揺動体
38、82、138:板バネ(保持用弾性体)
39、81、139:板バネ支持体(保持用弾性体を支持する支持体)
40 :検出器駆動機構
50 :制御装置
60 :交換ラック(スタイラスストッカ)
65、165 :上側保持具(規制片部)
66、166 :下側保持具(被係止片部)
71 :変位検出手段
72 :回転力付与手段
L :垂直軸線方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物と接触する接触部を有したスタイラスと、
前記スタイラスを揺動自在に支持するスタイラスホルダと、
前記スタイラスの揺動変位を検出する変位検出手段と、を備え、被測定物の表面性状を測定するために前記スタイラスの揺動変位を取得するてこ式検出器であって、
前記スタイラスは、先端に前記接触部を有する長尺状のスタイラス本体と、該スタイラス本体の基端に設けられ前記スタイラスホルダに着脱自在な着座体とを有し、
前記スタイラスホルダには、前記スタイラスの揺動中心となる軸体が設けられ、
前記着座体には、前記スタイラスホルダから切り離された状態の前記スタイラス全体の重心が位置しており、かつ前記スタイラスを装着する際に前記スタイラスの重心まで前記軸体を案内する切欠部が形成されており、
該切欠部によって前記軸体が前記重心まで案内された状態で、前記スタイラスホルダに前記着座体が着脱自在に保持され、前記スタイラスが軸体周りに揺動自在になることを特徴とするてこ式検出器。
【請求項2】
請求項1記載のてこ式検出器において、
前記スタイラスの着座体には、該着座体の切欠部に前記スタイラス全体の重心が含まれるように、前記重心の位置を調整するカウンタバランス部が設けられていることを特徴とするてこ式検出器。
【請求項3】
請求項2記載のてこ式検出器において、
被測定物の測定部位に対応して用意された複数種の前記スタイラスには、
該スタイラスを取出可能かつ格納可能に収容する交換ラックに設けられた被係止片部を係止可能な係止片部が設けられており、
前記係止片部は、前記スタイラスの着座体に設けられ、かつ前記カウンタバランス部に対して前記軸体の揺動軸方向にオフセットした位置に設けられていることを特徴とする測定装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のてこ式検出器において、
前記スタイラスホルダには、前記軸体に軸支された揺動体が設けられ、
前記軸体が前記スタイラスの重心まで案内された状態では、
前記揺動体および前記着座体が、前記軸体の軸方向に並んで配置されており、
前記揺動体には、弾性力で前記着座体を該揺動体に押し付けて保持する保持用弾性体と、該保持用弾性体を支持する支持体とが設けられていることを特徴とするてこ式検出器。
【請求項5】
請求項4記載のてこ式検出器において、
前記保持用弾性体は、その基端が前記支持体に回転自在に支持され、かつ前記スタイラスを前記スタイラスホルダに装着の際、先端が前記着座体によって押され、回転しながら弾性変形を生じ、発生した弾性力で前記着座体を前記揺動体に押し付けて保持することを特徴とするてこ式検出器。
【請求項6】
請求項4記載のてこ式検出器において、
前記保持用弾性体は、その基端が前記支持体に片持ち支持され、かつ前記スタイラスを前記スタイラスホルダに装着の際、前記着座体によってその先端が前記揺動体から遠くなる方向に押され、曲げによる弾性変形を生じ、発生した弾性力で前記着座体を前記揺動体に押し付けて保持することを特徴とするてこ式検出器。
【請求項7】
請求項6記載のてこ式検出器において、
前記スタイラスが前記スタイラスホルダに装着された状態で、
前記着座体は、前記切欠部を挟んだ位置に前記保持用弾性体側への2つの凸部を有し、
前記保持用弾性体は板状であり、一部分が前記支持体に片持ち支持され、他の部分が前記2つの凸部により前記揺動体から遠くなる方向に押されていることを特徴とするてこ式検出器。
【請求項8】
請求項4〜8のいずれかに記載のてこ式検出器において、
前記スタイラスが前記スタイラスホルダに装着された状態で、
前記支持体が前記切欠部を通って前記揺動体から前記軸体の軸方向に突出して形成され、該突出した先端部で前記保持用弾性体を支持していることを特徴とするてこ式検出器。
【請求項9】
請求項4から8のいずれかに記載のてこ式検出器において、
前記着座体と前記揺動体との間に複数の球部を一直線上でない少なくとも三箇所に配置し、この球部によって前記揺動体に対する前記着座体の前記軸体の揺動軸方向の位置決めを行うことを特徴とするてこ式検出器。
【請求項10】
請求項9記載のてこ式検出器において、
前記複数の球部のうち少なくとも2個は、前記着座体に回転支持され、かつ装着の際に前記軸体が重心まで案内される方向に沿って形成された前記揺動体の溝上を転動することを特徴とするてこ式検出器。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載のてこ式検出器に着脱自在に装着されることを特徴とするスタイラス。
【請求項12】
請求項1から10のいずれかに記載のてこ式検出器と、
被測定物の測定部位に対応して用意された複数種のスタイラスを取出可能かつ格納可能に収容した交換ラックと、
前記てこ式検出器を前記交換ラックに対して接近、離間する方向へ駆動させる検出器駆動機構と、制御装置とを備え、
前記制御装置は、スタイラス交換指令が与えられた際、前記検出器駆動機構を制御しながら、前記スタイラスホルダと前記交換ラックとの間でスタイラス交換動作を実行することを特徴とするスタイラスの自動交換装置。
【請求項13】
請求項12記載のスタイラスの自動交換装置において、
前記スタイラスの前記着座体は板状に形成されており、
前記交換ラックは、
該着座体の平坦面上で前記軸体が前記スタイラスの重心まで案内される方向に直交する方向へ前記てこ式検出器を移動させる際に、前記着座体に設けられた係止片部と係止しながら前記スタイラスを収納位置まで導くための、前記てこ式検出器の移動方向に延びた被係止片部と、
前記スタイラスが収納位置にある状態で、前記軸体が前記スタイラスの重心まで案内される方向への前記スタイラスの移動を規制する規制片部と、
を有し、
前記スタイラスが収納位置にある状態で、前記軸体が前記スタイラスの重心まで案内される方向へ前記検出器が移動することにより、前記スタイラスだけが前記交換ラックに格納されることを特徴とするスタイラスの自動交換装置。
【請求項14】
請求項12記載のスタイラスの自動交換装置において、
前記スタイラスの前記着座体は板状に形成されており、
前記交換ラックは、
該着座体の平坦面上で前記軸体が前記スタイラスの重心まで案内される方向へてこ式検出器を移動させる際に、前記着座体に設けられた係止片部と係止しながら、前記スタイラスを収納位置まで導くための、前記てこ式検出器の移動方向に延びた被係止片部と、
前記スタイラスが収納位置にある状態で、前記軸体が前記スタイラスの重心まで案内される方向への前記スタイラスの移動を規制する規制片部と、
を有し、
前記規制片部が、前記スタイラスの移動を規制するために前記着座体を係止する係止位置と、前記着座体の係止を解除する解除位置との間を進退可能に設けられ、
前記スタイラスが収納位置にある状態で、前記規制片部が係止位置に維持され、前記軸体が前記スタイラスの重心まで案内される方向へ前記検出器が移動することにより、前記スタイラスだけが前記交換ラックに格納されることを特徴とするスタイラスの自動交換装置。
【請求項1】
被測定物と接触する接触部を有したスタイラスと、
前記スタイラスを揺動自在に支持するスタイラスホルダと、
前記スタイラスの揺動変位を検出する変位検出手段と、を備え、被測定物の表面性状を測定するために前記スタイラスの揺動変位を取得するてこ式検出器であって、
前記スタイラスは、先端に前記接触部を有する長尺状のスタイラス本体と、該スタイラス本体の基端に設けられ前記スタイラスホルダに着脱自在な着座体とを有し、
前記スタイラスホルダには、前記スタイラスの揺動中心となる軸体が設けられ、
前記着座体には、前記スタイラスホルダから切り離された状態の前記スタイラス全体の重心が位置しており、かつ前記スタイラスを装着する際に前記スタイラスの重心まで前記軸体を案内する切欠部が形成されており、
該切欠部によって前記軸体が前記重心まで案内された状態で、前記スタイラスホルダに前記着座体が着脱自在に保持され、前記スタイラスが軸体周りに揺動自在になることを特徴とするてこ式検出器。
【請求項2】
請求項1記載のてこ式検出器において、
前記スタイラスの着座体には、該着座体の切欠部に前記スタイラス全体の重心が含まれるように、前記重心の位置を調整するカウンタバランス部が設けられていることを特徴とするてこ式検出器。
【請求項3】
請求項2記載のてこ式検出器において、
被測定物の測定部位に対応して用意された複数種の前記スタイラスには、
該スタイラスを取出可能かつ格納可能に収容する交換ラックに設けられた被係止片部を係止可能な係止片部が設けられており、
前記係止片部は、前記スタイラスの着座体に設けられ、かつ前記カウンタバランス部に対して前記軸体の揺動軸方向にオフセットした位置に設けられていることを特徴とする測定装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のてこ式検出器において、
前記スタイラスホルダには、前記軸体に軸支された揺動体が設けられ、
前記軸体が前記スタイラスの重心まで案内された状態では、
前記揺動体および前記着座体が、前記軸体の軸方向に並んで配置されており、
前記揺動体には、弾性力で前記着座体を該揺動体に押し付けて保持する保持用弾性体と、該保持用弾性体を支持する支持体とが設けられていることを特徴とするてこ式検出器。
【請求項5】
請求項4記載のてこ式検出器において、
前記保持用弾性体は、その基端が前記支持体に回転自在に支持され、かつ前記スタイラスを前記スタイラスホルダに装着の際、先端が前記着座体によって押され、回転しながら弾性変形を生じ、発生した弾性力で前記着座体を前記揺動体に押し付けて保持することを特徴とするてこ式検出器。
【請求項6】
請求項4記載のてこ式検出器において、
前記保持用弾性体は、その基端が前記支持体に片持ち支持され、かつ前記スタイラスを前記スタイラスホルダに装着の際、前記着座体によってその先端が前記揺動体から遠くなる方向に押され、曲げによる弾性変形を生じ、発生した弾性力で前記着座体を前記揺動体に押し付けて保持することを特徴とするてこ式検出器。
【請求項7】
請求項6記載のてこ式検出器において、
前記スタイラスが前記スタイラスホルダに装着された状態で、
前記着座体は、前記切欠部を挟んだ位置に前記保持用弾性体側への2つの凸部を有し、
前記保持用弾性体は板状であり、一部分が前記支持体に片持ち支持され、他の部分が前記2つの凸部により前記揺動体から遠くなる方向に押されていることを特徴とするてこ式検出器。
【請求項8】
請求項4〜8のいずれかに記載のてこ式検出器において、
前記スタイラスが前記スタイラスホルダに装着された状態で、
前記支持体が前記切欠部を通って前記揺動体から前記軸体の軸方向に突出して形成され、該突出した先端部で前記保持用弾性体を支持していることを特徴とするてこ式検出器。
【請求項9】
請求項4から8のいずれかに記載のてこ式検出器において、
前記着座体と前記揺動体との間に複数の球部を一直線上でない少なくとも三箇所に配置し、この球部によって前記揺動体に対する前記着座体の前記軸体の揺動軸方向の位置決めを行うことを特徴とするてこ式検出器。
【請求項10】
請求項9記載のてこ式検出器において、
前記複数の球部のうち少なくとも2個は、前記着座体に回転支持され、かつ装着の際に前記軸体が重心まで案内される方向に沿って形成された前記揺動体の溝上を転動することを特徴とするてこ式検出器。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載のてこ式検出器に着脱自在に装着されることを特徴とするスタイラス。
【請求項12】
請求項1から10のいずれかに記載のてこ式検出器と、
被測定物の測定部位に対応して用意された複数種のスタイラスを取出可能かつ格納可能に収容した交換ラックと、
前記てこ式検出器を前記交換ラックに対して接近、離間する方向へ駆動させる検出器駆動機構と、制御装置とを備え、
前記制御装置は、スタイラス交換指令が与えられた際、前記検出器駆動機構を制御しながら、前記スタイラスホルダと前記交換ラックとの間でスタイラス交換動作を実行することを特徴とするスタイラスの自動交換装置。
【請求項13】
請求項12記載のスタイラスの自動交換装置において、
前記スタイラスの前記着座体は板状に形成されており、
前記交換ラックは、
該着座体の平坦面上で前記軸体が前記スタイラスの重心まで案内される方向に直交する方向へ前記てこ式検出器を移動させる際に、前記着座体に設けられた係止片部と係止しながら前記スタイラスを収納位置まで導くための、前記てこ式検出器の移動方向に延びた被係止片部と、
前記スタイラスが収納位置にある状態で、前記軸体が前記スタイラスの重心まで案内される方向への前記スタイラスの移動を規制する規制片部と、
を有し、
前記スタイラスが収納位置にある状態で、前記軸体が前記スタイラスの重心まで案内される方向へ前記検出器が移動することにより、前記スタイラスだけが前記交換ラックに格納されることを特徴とするスタイラスの自動交換装置。
【請求項14】
請求項12記載のスタイラスの自動交換装置において、
前記スタイラスの前記着座体は板状に形成されており、
前記交換ラックは、
該着座体の平坦面上で前記軸体が前記スタイラスの重心まで案内される方向へてこ式検出器を移動させる際に、前記着座体に設けられた係止片部と係止しながら、前記スタイラスを収納位置まで導くための、前記てこ式検出器の移動方向に延びた被係止片部と、
前記スタイラスが収納位置にある状態で、前記軸体が前記スタイラスの重心まで案内される方向への前記スタイラスの移動を規制する規制片部と、
を有し、
前記規制片部が、前記スタイラスの移動を規制するために前記着座体を係止する係止位置と、前記着座体の係止を解除する解除位置との間を進退可能に設けられ、
前記スタイラスが収納位置にある状態で、前記規制片部が係止位置に維持され、前記軸体が前記スタイラスの重心まで案内される方向へ前記検出器が移動することにより、前記スタイラスだけが前記交換ラックに格納されることを特徴とするスタイラスの自動交換装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−158466(P2011−158466A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269929(P2010−269929)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】
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