説明

はっ酵乳入り野菜飲料およびその製造方法

【課題】良好な風味を有し、保存しても野菜由来のパルプ分や乳蛋白質が凝集・沈殿を生じることのない、優れた品質安定性を有するはっ酵乳入り野菜飲料およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】トマトジュース、トマトピューレおよびトマトペーストからなる群から選ばれたトマト加工食品素材の少なくとも1種以上を含む野菜汁と、はっ酵乳とを混合後、均質化して得られることを特徴とするはっ酵乳入り野菜飲料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はっ酵乳入り野菜飲料に関し、更に詳細には、野菜汁由来のパルプ分やはっ酵乳由来の乳蛋白等の凝集や沈殿を生じることがなく、品質安定性に優れ、且つ風味良好なはっ酵乳入り野菜飲料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
野菜は、各種ビタミン、ミネラル等の栄養素や植物性繊維を豊富に含み、低カロリーであることから、健康指向型の食品として利用が拡大しており、更に、これを摂取し易いジュース(野菜汁)とすることも広く行われている。
【0003】
一般に、野菜汁の多くは、青臭みや苦味などの好ましくない風味を有することから、これらを利用した食品の製造、例えば、野菜ジュースの製造においては、これらの課題を解決するために様々な手段が用いられている。具体的には、野菜搾汁液をプロテアーゼで処理する方法(特許文献1)、野菜搾汁液にトレハロースを添加する方法(特許文献2)、野菜汁を弱塩基性陰イオン交換樹脂で処理する方法(特許文献3)等を挙げることができる。
【0004】
しかしながら、野菜搾汁液をプロテアーゼで処理する方法は、苦味の除去には効果があるものの青臭みの除去効果は充分でなく、また、野菜搾汁液にトレハロースを添加する方法についても、渋み・エグ味の軽減効果はあるが、やはり青臭みの除去効果は充分でない。
【0005】
また、野菜汁 を弱塩基性陰イオン交換樹脂で処理する方法は有効な方法ではあるものの、それなりの規模の装置が必要であり、経済性において問題のある方法である。
【0006】
一方で、野菜汁に、はっ酵乳を混合するとマイルドな風味となり、飲みやすくなることは古くから知られており(特許文献4)、近年、同技術を利用した製品が上市されるようになってきている。
【0007】
しかしながら、一般に、はっ酵乳を混合した飲料は保存すると乳蛋白質が凝集して沈降し、沈殿物が発生するという問題があることから、はっ酵乳を飲料等に利用する場合には、乳蛋白質の分散安定性を向上させる目的で、増粘安定剤を使用することが一般的に知られている(特許文献5および6)。
【0008】
また、野菜汁に、はっ酵乳を混合した場合、乳蛋白質が野菜汁中のポリフェノールなどの成分と凝集することもあり、野菜汁を含まない、はっ酵乳入り飲料(乳性飲料等)よりも安定化は困難であった。更に、野菜汁の種類、パルプ物質の量、混合比率、製品比重などの条件によっても安定性が異なるという問題もある。この野菜汁にはっ酵乳を混合した場合の安定性を改善する方法としては、ジェランガムとペクチンおよび/又は大豆食物繊維を安定剤として使用する方法(特許文献7)が提案されている。
【0009】
しかしながら、上記のように工夫したはっ酵乳入り野菜汁であっても、品質安定性が低く、保存した場合に野菜由来のパルプ分や乳蛋白質が凝集・沈殿を生じてしまい、商品価値が損なわれることがあった。
【0010】
【特許文献1】特開平3−191767号公報
【特許文献2】特開2000−116362号公報
【特許文献3】特開平8−242826号公報
【特許文献4】特開昭62−36168号公報
【特許文献5】特開平8−56567号公報
【特許文献6】特開平9−94060号公報
【特許文献7】特開平11−262379号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の課題は、良好な風味を有し、保存しても野菜由来のパルプ分や乳蛋白質が凝集・沈殿を生じることのない、優れた品質安定性を有するはっ酵乳を含有する野菜飲料およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、トマト加工食品素材を含む野菜汁とはっ酵乳とを混合後、均質化して製品の粘度を調整することにより、長期間に渡って野菜汁由来のパルプ分や乳蛋白質の凝集・沈殿が生じることのない、品質安定性に優れ、且つ風味良好なはっ酵乳入り野菜飲料が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明は、トマトジュース、トマトピューレおよびトマトペーストからなる群から選ばれたトマト加工食品素材の少なくとも1種以上を含む野菜汁と、はっ酵乳とを含み、これらを混合後、均質化して得られるものであることを特徴とするはっ酵乳入り野菜飲料である。
【0014】
また、本発明は、トマトジュース、トマトピューレおよびトマトペーストからなる群から選ばれたトマト加工食品素材の少なくとも1種以上を含む野菜汁と、はっ酵乳とを混合し、次いで均質化することを特徴とするはっ酵乳入り野菜飲料の製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のはっ酵乳入り野菜飲料は、長期間に渡って野菜汁由来のパルプ分や乳蛋白質の凝集・沈殿が生じることのない、品質安定性に優れ、且つ風味良好なものである。
【0016】
従って、本発明のはっ酵乳入り野菜飲料は商品価値が高いものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明のはっ酵乳入り野菜飲料に使用される野菜汁は、トマトジュース、トマトピューレおよびトマトペーストから選ばれたトマト加工食品素材(以下、これらを単に「トマト加工食品素材」という)の少なくとも1種以上を必須成分として含有するものである。これらトマト加工食品素材としては日本農林規格(JAS)で定められたトマト加工品の中のトマトジュース、トマトピューレおよびトマトペーストの規格に適合するものを用いればよい。具体的にトマトジュースとはトマトを破砕後、パルパーやフィニッシャーで裏ごししたものをいう。また、トマトピューレとは、トマトを破砕後、裏ごしして濃縮したものであって、無塩可溶性固形分が24質量%(以下、単に「%」という)未満のものをいう。更に、トマトペーストとは、トマトを破砕後、裏ごしして高度に濃縮したもので、無塩可溶性固形分が24%以上のものをいう。本発明においては、上記規格を満足するものであれば、特に制限されることなく使用することが可能である。
【0018】
また、上記野菜汁には、上記トマト加工食品素材の少なくとも1種以上を必須成分として含有するほかに、一般に野菜ジュース等で使用する各種野菜の搾汁液を含んでもよい。前記搾汁液の原料となる野菜としては、カボチャ、ピーマンなどの果菜類、キャベツ、ほうれんそう、レタス、パセリ、クレソン、小松菜などの葉菜類、ニンジン、大根、牛蒡などの根菜類、アスパラガス、セロリ、三つ葉などの茎菜類、ブロッコリー、カリフラワーなどの花菜類を挙げられる。これらの野菜は1種または2種以上を組み合わせてもよい。
【0019】
前記の野菜を使用して搾汁液を製造する方法としては、特に制限されるわけではなく、常法に従って行えばよい。具体的には、野菜をブランチング処理した後、破砕し、搾汁する方法や、低温搾汁する方法などを挙げることができるが、得られる搾汁液の酸化による品質劣化を防止するため、野菜をアスコルビン酸存在下、低温で破砕・搾汁し、これを加熱して生体酵素を失活させる方法を用いることが好ましい。
【0020】
また、複数種の野菜を用いて野菜汁を製造する場合には、各野菜を個別に処理して搾汁液を調製した後、これらにトマト加工食品素材を加え混合してもよく、また、複数種の野菜を一緒に処理して搾汁液を調製し、これとトマト加工食品素材とを混合して調製してもよい。
【0021】
本発明のはっ酵乳入り野菜飲料において、野菜汁の配合量は、製品あたりのトマト加工食品素材の含有量が、ストレート換算の重量で15%〜50%、より好ましくは、20%〜40%となるように設定することが好ましい。また、製品あたりのトマト加工食品素材の含有量が、ストレート換算で15%よりも少ないと、後述するように、はっ酵乳を配合して、均質化処理した場合であっても野菜汁由来のパルプ分や乳蛋白質の凝集・沈殿を抑制する効果が十分に得られず、結果として製品の品質劣化を招くこととなるため好ましくない。また、製品あたりのトマト加工食品素材の含有量がストレート換算の重量比で50%よりも多くなると、はっ酵乳を配合して均質化することにより、必要以上に製品の粘度が高くなってしまい、食感(のど越し)や風味を著しく損なうため、好ましくない。なお、本発明におけるトマト加工食品素材のストレート換算とは、ストレートトマト(濃縮していないもの)の無塩可溶性固形分を4.5%として、トマト加工食品素材の質量をストレートトマトの質量に換算することである。
【0022】
一方、本発明のはっ酵乳入り野菜飲料に使用されるはっ酵乳は、乳等省令で定められているはっ酵乳に該当するものであれば特に制限されない。すなわち、はっ酵乳としては、牛乳、山羊乳等の生乳、脱脂粉乳、全脂粉乳、生クリーム等の乳製品をそのまま或いは必要に応じて希釈した溶液(原料乳)中で、乳酸菌やビフィドバクテリウム属細菌などを培養した溶液を使用することができる。
【0023】
ここで、はっ酵乳の製造に用いられる乳酸菌やビフィドバクテリウム属細菌としては、通常、食品製造に使用される微生物であれば特に限定されず、例えば、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・サリバリウス、ラクトバチルス・ユーグルティ、ラクトバチルス・デルブルッキィ サブスピーシーズ.ブルガリカス、ラクトバチルス・ジョンソニー等のラクトバチルス属細菌、ストレプトコッカス・サーモフィルス等のストレプトコッカス属細菌、ラクトコッカス・ラクチス サブスピーシーズ.ラクチス、ラクトコッカス・ラクチス サブスピーシーズ.クレモリス、ラクトコッカス・プランタラム、ラクトコッカス・ラフィノラクチス等のラクトコッカス属細菌、エンテロコッカス・フェカーリス、エンテロコッカス・フェシウム等のエンテロコッカス属細菌、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・インファンティス、ビフィドバクテリウム・アドレスセンティス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・カテヌラータム、ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータム、ビフィドバクテリウム・アングラータム、ビフィドバクテリウム・ラクチス、ビフィドバクテリウム・アニマリス等のビフィドバクテリウム属細菌を挙げることができる。なお、これらの乳酸菌やビフィドバクテリウム属細菌は、単独で用いても、あるいは2種以上を併用してもよい。
【0024】
上記微生物を原料乳に作用させるための条件や発酵方法は、通常のはっ酵乳の製造に使用される条件および方法を適用すればよく、特に限定されない。例えば、微生物の発酵条件としては、30〜40℃の温度で、pHが3.5〜5.5になるまで発酵させる等の条件が挙げられ、発酵方法としては、静置発酵、攪拌発酵、振盪発酵、通気発酵等から発酵に用いる微生物に適したものを適宜選択する方法が挙げられる。
【0025】
本発明のはっ酵乳入り野菜飲料におけるはっ酵乳の配合量は、製品あたり、無脂乳固形分として0.1%〜2.5%程度、好ましくは0.4%〜1.6%程度とするのがよい。製品あたりのはっ酵乳の配合量が、無脂乳固形分として0.1%よりも少ないとはっ酵乳入り野菜飲料に特有のまろやかなで飲みやすい風味を与えることができず、また、2.5%よりも多くなると、乳蛋白質の凝集・沈殿を生じる可能性があるため、好ましくない。
【0026】
また、本発明のはっ酵乳入り野菜飲料には、より好ましい風味とするため、果汁を添加することができる。ここで、配合される果汁としては、一般的な果汁であれば特に制限されることなく使用することができ、例えば、オレンジ、レモン、ライム、パイナップル、アップル、マスカット、グレープフルーツから選ばれた果実の少なくとも1種以上含有する果汁を挙げることができるが、特に、風味の面でトマトとの相性がよいアップルを主体とする果汁を使用することが好ましい。
【0027】
本発明のはっ酵乳入り野菜飲料にこれらの果汁を配合する場合、その配合量は、製品あたりストレート換算の質量で10%〜70%、より好ましくは、30%〜70%程度とすればよい。なお、本発明における果汁のストレート換算とは、果実飲料の日本農林規格第24条第1項の規格の表示の方法の1の(1)に準じたものである。
【0028】
本発明のはっ酵乳入り野菜飲料は、上述のトマト加工食品素材の少なくとも1種以上を含む野菜汁とはっ酵乳を混合後、これを均質化処理する以外は通常の野菜飲料の製造方法により製造することができる。すなわち、本発明のはっ酵乳入り野菜飲料は、上述のトマト加工食品素材の少なくとも1種以上を含む野菜汁とはっ酵乳に、必要に応じて果汁や任意の成分を添加し、pH調整等を行った後、混合し、均質化処理する。次いで、均質化処理したものをプレート式熱交換器等で加熱殺菌し、PETボトル等の容器に充填して製品化する。なお、上記製造方法において均質化処理は、トマト加工食品素材の少なくとも1種以上を含有する野菜汁とはっ酵乳とをそれぞれ別個に均質化処理した後に両者を混合した場合には、本発明が課題とする品質安定性を十分に満足することができないため好ましくない。
【0029】
上記製造方法において均質化処理とは、液体分散媒中に存在する乳濁物質、粒子状物質を機械的に破砕し、液分離(分離浮上、沈殿等)を抑え、均一な乳化状態を作り出す操作、いわゆる「ホモジナイズ」をいうが、本発明においての均質化処理とは、見かけ上均質になり固液分離を生じない状態をいう。なお、本発明において、均質化処理は、機械的分散により物理的に均質化できる方法であれば、特に制限されることなく行うことができるが、操作上、バルブ式ホモジナイザーを使用して行うことが好ましい。
【0030】
上記均質化処理において、均質化処理する際の圧力は、使用する野菜汁、はっ酵乳の配合量などによって異なるため、実験的に確かめて設定することが好ましいが、得られるはっ酵乳入り野菜飲料の製品粘度が、30〜150mPa・s、好ましくは50〜110mPa・sとなるように、およそ2〜15MPa程度とすればよい。均質化処理により、製品粘度が30mPa・sよりも低くなると、野菜汁由来のパルプ分や乳蛋白質の凝集・沈殿が生じやすくなり、保存による品質の劣化を招くことから好ましくない。また逆に、製品粘度が、150mPa・sよりも大きくなると、製品の粘度が高くなりすぎて食感(テクスチャー)を著しく損なうとともに風味も劣化するため、好ましくない。
【0031】
本発明のポイントは均質化することによって、トマトパルプを破砕して、パルプに含まれるペクチン等の粘性物質を適度に溶出させ、飲料の粘度を適当な範囲に調整するところにある。すなわち、トマトパルプからの粘性物質の溶出が少ないと飲料の粘度増加が小さく、保存中の乳蛋白質の沈殿を抑制できないばかりでなく、トマトパルプの沈降も生じる。逆に、トマトパルプからの粘性物質の溶出が多いと飲料の粘度増加が大きくなり、重たいテクスチャーの飲みにくい飲料となる。
【0032】
なお、本発明における製品粘度は、B型粘度計(BL型)によって測定した値を意味する(試料容器:500mlビーカー(標準タイプ)、測定温度20±1℃、ローター:No.1、ローターの回転速度:30rpm、測定値:測定開始20秒後(ローターが10回転したとき)の値)。
【0033】
本発明のはっ酵乳入り野菜飲料に添加される前記以外の任意の成分としては、通常各種飲食品へ配合される各種食品素材、例えば、各種糖質、増粘剤、乳化剤、各種ビタミン剤等の任意成分が挙げられる。これらの食品素材として具体的なものとしては、ショ糖、グルコース、フルクトース、パラチノース、トレハロース、ラクトース、キシロース、麦芽糖等の糖質、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、ラクチトール、パラチニット、還元水飴、還元麦芽糖水飴等の糖アルコール、アスパルテーム、ソーマチン、スクラロース、アセスルファムK、ステビア等の高甘味度甘味料、寒天、ゼラチン、カラギーナン、グァーガム、キサンタンガム、ペクチン、ローカストビーンガム、ジェランガム、カルボキシメチルセルロース、大豆多糖類、アルギン酸プロピレングリコール等の各種増粘(安定)剤、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤、クリーム、バター、サワークリームなどの乳脂肪、クエン酸、乳酸、酢酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸等の酸味料、ビタミンA、ビタミンB類、ビタミンC、ビタミンE類等の各種ビタミン類、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、マンガン等のミネラル分、ヨーグルト系、ベリー系、オレンジ系、花梨系、シソ系、シトラス系、アップル系、ミント系、グレープ系、アプリコット系、ペア、カスタードクリーム、ピーチ、メロン、バナナ、トロピカル、ハーブ系、紅茶、コーヒー系等のフレーバー類が挙げられる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例を挙げて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等になんら制約されるものではない。
【0035】
実 施 例 1
はっ酵乳入り野菜飲料の製造(1):
表1の処方で調合したものを、バルブ式ホモジナイザーを用いて5MPaの圧力で均質化処理した。次いで、これを90℃に加熱後、ガラス壜透明容器に熱時充填し、冷却してはっ酵乳入り野菜飲料を得た。このはっ酵乳入り野菜飲料を室温に2週間保存して沈殿を観察し、同時に風味の評価も行った。これらの結果を表2に示した。
【0036】
【表1】

*1:無塩可溶性固形分18%
*2:Bx糖度36°
*3:ストレート汁(ほうれんそう、ピーマン、アスパラガス、ブロッコリー、
パセリ、クレソン、ラディッシュ、小松菜、レタス)
*4:無脂乳固形分8%(使用乳酸菌:ラクトバチルス・カゼイ)
*5:SM−YT(三栄源エフ・エフ・アイ(株))
*6:製品pHを3.8に調整する量
【0037】
【表2】

【0038】
表2に示したとおり、実施品Aおよび比較品Bはともに、はっ酵乳の添加によって野菜臭さが軽減されていたが、沈殿の発生状況は異なり、トマトピューレを含む実施品Aは保存後も沈殿がほとんどなかったが、人参濃縮汁を含む(トマトピューレを含まない)比較品Bは保存後の沈殿が多く認められた。
【0039】
実 施 例 2
はっ酵乳入り野菜飲料の製造(2):
表3の処方で調合したものを、バルブ式ホモジナイザーを用いて5MPa(2次圧)の圧力で均質化処理した。次いで、チューブ式熱交換器で110℃、5秒間の殺菌を行い、滅菌したガラス壜透明容器に無菌充填してはっ酵乳入り野菜飲料を得た。このはっ酵乳入り野菜飲料の充填製品を室温に2週間保存して沈殿を観察し、同時に風味の評価も行った。なお、沈殿と風味は以下の基準に従い評価した。これらの結果を表4に示した。
【0040】
<沈殿評価基準>
(評価) (内容)
◎ : 沈殿なし
○ : 沈殿ほとんどなし
△ : 沈殿少しあり
× : 沈殿多い
【0041】
<風味評価基準>
(評価) (内容)
◎ : 良好
○ : やや粘度感があるが、野菜臭さが少なく、飲みやすい
× : トマト感または粘度感が強すぎる
【0042】
【表3】

*1:無塩可溶性固形分28%
*2:ストレート汁(ほうれんそう、ピーマン、アスパラガス、ブロッコリー、パセリ、
クレソン、ラディッシュ、小松菜、レタス)
*3:無脂乳固形分20%(使用乳酸菌:ストレプトコッカス・サーモフィルス)
*4:Bx糖度70°
*5:SM−YT(三栄源エフ・エフ・アイ(株))
*6:製品のpHを3.9に調整するための量
【0043】
【表4】

【0044】
表4から明らかなとおり、均質化処理を施しても、製品の粘度が30mPa・sよりも低い場合には、十分に沈殿を抑制する効果を得ることはできないが、製品粘度が高くなる(具体的には、30mPa・s以上)と沈殿を抑制する効果が得られることが認められた。また、一方で、製品の風味に関しては、トマト含量に依存する傾向が認められ、トマト含量が50%よりも多くなると風味が悪くなった。
【0045】
実 施 例 3
はっ酵乳入り野菜飲料の製造(3):
均質化処理を15MPa(1次圧:10MPa、2次圧:5Mpa)で行う以外は、実施例2と同様にしてはっ酵乳入り野菜飲料を得た。このはっ酵乳入り野菜飲料の充填製品を室温に2週間保存して沈殿と風味を実施例2と同様に評価した。これらの結果を表5に示した。
【0046】
【表5】

【0047】
表5から明らかなとおり、均質化処理の条件を変えても、製品中の沈殿を抑制する効果は、表4の結果と同様の傾向が認められた。また、均質化条件を厳しく(均質化圧力を高く)設定した場合には、トマト含量が30%よりも多くなると風味が悪くなった。
【0048】
実 施 例 4
はっ酵乳入り野菜飲料の製造(4):
実施例2の実施品4と同じ処方で調合したものを、バルブ式ホモジナイザーを用いて表5に示した各圧力で均質化処理した後、チューブ式熱交換器で110℃で5秒間の殺菌を行い、滅菌したガラス壜透明容器に無菌充填してはっ酵乳入り野菜飲料を得た。このはっ酵乳入り野菜飲料の充填製品を室温に2週間保存して沈殿と風味を実施例2と同様に評価した。これらの結果を表6に示した。
【0049】
【表6】

【0050】
表6に示したとおり、均質化圧力を2〜15MPaの条件に設定した場合には、風味が良好で沈殿も少ないはっ酵乳入り野菜飲料が得られた。実施例2および実施例3の結果(表4および表5)と合わせて考えると、製品粘度を30〜150mPa・sになるように均質化圧力を設定したときに風味良好で沈殿の少ない製品が得られる。
【0051】
実 施 例 5
はっ酵乳入り野菜飲料の製造(5):
表7の処方で調合したものを、バルブ式ホモジナイザーを用いて5MPaで均質化処理した。次いで、チューブ式熱交換器で110℃、5秒間の殺菌を行い、滅菌したガラス壜透明容器に無菌充填し、はっ酵乳入り野菜飲料(実施品C、DおよびE)を得た。これらのはっ酵乳入り野菜飲料は野菜の青臭みがなく良好な風味であり、室温で2週間保存後も沈殿などの外観変化は認められなかった。
【0052】
【表7】

*1:無塩可溶性固形分28%
*2:無塩可溶性固形分18%
*3:Bx糖度36°
*4:ほうれんそう、ピーマン、アスパラガス、ブロッコリー、パセリ、クレソン、
ラディッシュ、小松菜、レタス
*5:無脂乳固形分20%(使用乳酸菌:ラクトバチルス・カゼイ及びストレプト
コッカス・サーモフィルス)
*6:無脂乳固形分8%(使用乳酸菌:ラクトバチルス・カゼイ及びストレプトコッ
カス・サーモフィルス)
*7:製品のpHを3.9に調整する量
*8:SM−YT(三栄源エフ・エフ・アイ(株))
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のはっ酵乳入り野菜飲料は、野菜由来の各種ビタミン、ミネラル等の栄養素や植物性繊維を豊富に含むので、広く健康増進に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トマトジュース、トマトピューレおよびトマトペーストからなる群から選ばれたトマト加工食品素材の少なくとも1種以上を含む野菜汁と、はっ酵乳と含み、これらを混合後、均質化して得られるものであることを特徴とするはっ酵乳入り野菜飲料。
【請求項2】
はっ酵乳の配合量が、無脂乳固形分として0.1質量%〜2.5質量%である請求項1に記載のはっ酵乳入り野菜飲料。
【請求項3】
製品の粘度が、30〜150mPa・sである請求項1または2に記載のはっ酵乳入り野菜飲料。
【請求項4】
更に、果汁を含むものである請求項1〜3のいずれかに記載のはっ酵乳入り野菜飲料。
【請求項5】
果汁の配合量が、ストレート換算で30質量%〜70質量%である請求項1〜4のいずれかに記載のはっ酵乳入り野菜飲料。
【請求項6】
容器入りである請求項第1〜5のいずれかに記載のはっ酵乳入り野菜飲料。
【請求項7】
トマトジュース、トマトピューレおよびトマトペーストからなる群から選ばれたトマト加工食品素材の少なくとも1種以上を含む野菜汁と、はっ酵乳とを混合し、次いで均質化することを特徴とするはっ酵乳入り野菜飲料の製造方法。

【公開番号】特開2007−61060(P2007−61060A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−254308(P2005−254308)
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【出願人】(000006884)株式会社ヤクルト本社 (132)
【Fターム(参考)】