説明

はんだ

【課題】強度を大幅に向上させることができるはんだを提供する。
【解決手段】鉛フリーはんだに於て、Biを 2.0〜10wt%含有する。Agを0〜 6.0wt%、Cuを0〜 2.0wt%含有する。かつ、Ni、P、Ga、Ge、Inのうち少なくともひとつを含有する。残部はSnである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題に配慮して、鉛(Pb)を含有しないはんだ(いわゆる鉛フリーはんだ)が広く使用されるようになってきた。この鉛フリーのものは接合信頼性が低下するという問題があった。また、この鉛フリーはんだに於て、強度を改善するために、様々な元素を含有させることが提案されている。なかでも、Sbを含有させたものは、強度が大幅に向上する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、Sbには毒性があり、環境に悪い影響を与えるという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−50286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする課題は、鉛フリーはんだとすることで接合信頼性が低下する点、及び、Sbを含有したはんだが環境に悪い影響を与える点である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明に係るはんだは、鉛フリーはんだに於て、Biを 2.0〜10wt%含有し、残部は主としてSnである。
また、鉛フリーはんだに於て、Agを0〜 6.0wt%、Cuを0〜 2.0wt%、Biを2.0〜10wt%含有し、残部をSnとしたものである。
また、Agを0〜 6.0wt%、Cuを0〜 2.0wt%含有し、かつ、Ni、P、Ga、Ge、Inのうち少なくともひとつを含有するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のはんだによれば、Sn−Ag−Cu系はんだよりも、強度を大幅に向上させることができるとともに、環境に優しいものとすることができる。特に、Sn−Ag−Sbと同程度以上の強度でありながら、毒性がないはんだとすることができる。また、本発明は、Pb,Sbフリーのはんだであって高信頼性を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】熱衝撃試験による接合強度変化を示すグラフ図である。
【図2】熱衝撃試験による接合強度変化を示すグラフ図である。
【図3】熱衝撃試験による接合強度変化を示すグラフ図である。
【図4】熱衝撃試験による接合強度変化を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施の形態のはんだ(はんだ合金)は、Biを 2.0〜10wt%( 2.0wt%以上10wt以下。本発明において、同様の表記方法を用いる。)含有し、残部は主としてSnである。さらに具体的には、Agを0〜 6.0wt%、Cuを0〜 2.0wt%、Biを 2.0〜10wt%含有し、残部がSnである。Biが 2.0wt%未満の場合、強度が極端に低くなる。Biが10wt%を超える場合、はんだが溶け始める温度が低くなり過ぎる。
【0010】
次に、第2の実施の形態について説明する。Agを0〜 6.0wt%、Cuを0〜 2.0wt%、Biを 2.0〜10wt%含有し、さらに、Ni、P、Ga、Ge、Inのうち少なくともひとつを含有する。そして、残部は、Snとする。
【0011】
なお、本発明において、「残部をSnとした」とは、残部にSn以外の不可避的不純物を含有する場合を含むものとする。
【実施例】
【0012】
実施例1、及び、比較例1〜比較例12として、次のようなはんだを製造した。なお、Bi、In、Ga、Ge、Znを用いたのは、Snに比較的多く固溶できることによる。
実施例1:Sn−1.0Ag−0.5Cu−3.0Bi
比較例1:Sn−1.0Ag−0.5Cu−0.5Bi
比較例2:Sn−1.0Ag−0.5Cu−1.0Bi
比較例3:Sn−1.0Ag−0.5Cu−0.05Ga
比較例4:Sn−1.0Ag−0.5Cu−0.1Ga
比較例5:Sn−1.0Ag−0.5Cu−0.1Ge
比較例6:Sn−1.0Ag−0.5Cu−0.1Zn
比較例7:Sn−1.0Ag−0.5Cu−0.7Zn
比較例8:Sn−1.0Ag−0.5Cu−1.0In
比較例9:Sn−1.0Ag−0.5Cu−0.5Bi−0.05Zn
比較例10:Sn−1.0Ag−0.5Cu−0.05Ga−0.05Ge
比較例11:Sn−Ag−Sb系
比較例12:Sn−3.0Ag−0.5Cu
【0013】
評価方法は、次のとおりとした。使用する基板は、1608、2012、3216、5025チップ部品を実装できるガラエポ基板(ガラスエポキシ基板)(FR−4)を用い、メタルマスクを用いてクリームフラックスを印刷した。はんだは、まず箔を作成し、それを、17.2± 2.0mgの重量に細く切ったものを作製した。基板の3216チップ電極部分にはんだ箔の小片を乗せ、更にクリームフラックスを少量塗布した。この上にチップ部品を乗せ、リフロー炉で実装した。リフロー温度条件は、通常の鉛フリーはんだで使用している条件とした。信頼性試験は、タバイエスペック株式会社製熱衝撃試験器(TSV− 350)を用いて、−40℃と 125℃を各10分ずつ繰り返すという条件で熱衝撃試験をおこなった。そして、1000サイクル毎に接合強度測定をおこない、試験は3000サイクルまでおこなった。
【0014】
図1〜図4は、各はんだで実装した3216チップ抵抗部品の熱衝撃試験後接合強度測定結果を示す。この結果より、実施例1が、比較例1〜比較例12よりも接合信頼性が高いこと、すなわち、耐熱衝撃試験特性が優れることが分かった。具体的には、1000サイクルでの強度は、13.6kgfである。
【0015】
比較例11(Sn−Ag−Sb系)の耐熱衝撃試験特性が優れる理由を推測すると、SbはSn中に多く固溶することができ、Sn中に異種元素を固溶させることで固溶硬化させ、剛性を高めることで熱応力に耐える強度が向上したのではないかと考えられる。すなわち、これまではんだはできるだけ軟らかくして、はんだが歪みを吸収しやすくなるほど、信頼性は高いと考えられていたが、ある程度はんだ強度を向上させることで、部品接合部の熱応力耐性がさらに向上できるのではないかと考えられる。本発明では、毒性のあるSbを含有する比較例11のはんだよりも、さらに耐熱衝撃試験特性が優れ、かつ、毒性がないはんだを発明したものである。
【0016】
本発明は、設計変更可能であって、例えば、上記以外の元素を少量含有するも良い。
【0017】
以上のように、本発明は、鉛フリーはんだに於て、Biを 2.0〜10wt%含有し、残部は主としてSnであるので、強度(耐熱衝撃試験特性)を大幅に向上させることができるとともに、環境に優しいものとすることができる。特に、Sn−Ag−Sb系と同程度以上の強度でありながら、毒性がなく、かつ、高信頼性はんだとすることができる(すなわち、Biには毒性がない)。
【0018】
また、鉛フリーはんだに於て、Agを0〜 6.0wt%、Cuを0〜 2.0wt%、Biを 2.0〜10wt%含有し、残部をSnとしたので、強度を大幅に向上させることができるとともに、環境に優しいものとすることができる。特に、Sn−Ag−Sb系と同程度以上の強度でありながら、毒性がなく、かつ、高信頼性のはんだとすることができる。
【0019】
また、Biを 2.0〜10wt%含有すると共に、Agを0〜 6.0wt%、Cuを0〜 2.0wt%含有し、かつ、Ni、P、Ga、Ge、Inのうち少なくともひとつを含有するので、強度を大幅に向上させることができるとともに、環境に優しいものとすることができる。特に、Sn−Ag−Sb系と同程度以上の強度でありながら、毒性がなく、かつ、高信頼性のはんだとすることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛フリーはんだに於て、Biを 2.0〜10wt%含有し、残部は主としてSnであることを特徴とするはんだ。
【請求項2】
鉛フリーはんだに於て、Agを0〜 6.0wt%、Cuを0〜 2.0wt%、Biを 2.0〜10wt%含有し、残部をSnとしたことを特徴とするはんだ。
【請求項3】
Agを0〜 6.0wt%、Cuを0〜 2.0wt%含有し、かつ、Ni、P、Ga、Ge、Inのうち少なくともひとつを含有する請求項1記載のはんだ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−183430(P2011−183430A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50933(P2010−50933)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(391002443)株式会社ニホンゲンマ (8)
【Fターム(参考)】