ばね製造機
【課題】コイルばねの製造のみに適するばね巻き機により脚ばねを製造する。
【解決手段】ばね製造機(1)は線材進入部と、線材(10)を供給方向(s)に供給するための線材案内部(5)と、その後段に設けられた供給された線材(10)に対して直交するように上下方向にも機枠に対して垂直方向にも移動可能なスピンドル(16)と、その後段で線材供給方向に対して平行に(t)、線材供給方向に対して直交する2方向に移動可能な成形ツール(15)とを備えた機枠(2)を有する。線材案内路(27)はスピンドル内でスピンドルの機枠と反対に向けられた外側の側壁(31)から離間する。供給された線材はスピンドルを経て成形ツールに移動可能であり、スピンドル内の開口部(46)を介して線材案内路(27)に導入可能である。
【解決手段】ばね製造機(1)は線材進入部と、線材(10)を供給方向(s)に供給するための線材案内部(5)と、その後段に設けられた供給された線材(10)に対して直交するように上下方向にも機枠に対して垂直方向にも移動可能なスピンドル(16)と、その後段で線材供給方向に対して平行に(t)、線材供給方向に対して直交する2方向に移動可能な成形ツール(15)とを備えた機枠(2)を有する。線材案内路(27)はスピンドル内でスピンドルの機枠と反対に向けられた外側の側壁(31)から離間する。供給された線材はスピンドルを経て成形ツールに移動可能であり、スピンドル内の開口部(46)を介して線材案内路(27)に導入可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線材進入部と、線材を供給方向に案内するための線材案内部と、さらに線材案内部の後段に設けられている、供給された線材に対して直交するように上下方向にも機枠に対して直交する方向にも移動可能なスピンドルと、このスピンドルの後段で線材供給方向に対して平行に、互いに、かつ、それぞれ線材供給方向に対して直交な2つの方向に移動可能な成形ツールとが取り付けられている機枠を有するばね製造機に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮ばねを製造するために、相応の機械が各種知られている。この場合、1フィンガーシステムの、すなわち1本の移動可能なコイリングフィンガーが線材をばねに形成するばね製造機と、2フィンガーシステムの機械(2本の移動可能なコイリングフィンガーが線材をばねに形成する)に大別される。
【0003】
これらの公知の機械の中で、1フィンガーシステムの機械は特にフレキシブルに使用でき、多様な形式のばねをカバーできる。しかしこのような機械で製造されたばねの精度は、機械そのものの時間生産量と同様に、たいてい2フィンガーシステム機械に比べて劣る。
【0004】
2フィンガーシステムの機械も屈曲した脚のない純粋なコイルばねの製造のみに適している。なぜならば、線材は1度到着すると常にコイリングフィンガーの線材案内溝内に位置決めされたままだからである。2フィンガーシステムによって、1フィンガーシステムより多くの個数およびより正確なばね形状を製造することはできない。
【0005】
特許文献1により公知のばね製造機は、1フィンガーシステムによる作業にも、2フィンガーシステムによる作業にも使用可能で適宜切り替えることができる。この機械に設けられている2フィンガーシステムの両駆動装置は、1フィンガーシステムの操作にも使用できる。この公知の機械ではスピンドルは通常の切断スピンドルとして使用される。機械が1フィンガーシステムで作業するときには、成形ツールは機械壁に対して垂直に移動できない。そのためばねを前方に曲げることはできない。
【0006】
特許文献2により公知のばね製造機は1フィンガーシステムの原理で作業し、成形ツールは2つの方向に移動可能である。この場合、切断部、ピッチ部材および曲げ部材は成形ツールの運動方向に対して垂直に移動可能であるが、前方に曲げることは可能ではない。
【0007】
特許文献3には、1フィンガーシステムで作業し、コイリングツールが互いに垂直な3方向に移動可能なばね製造機が開示されている。この公知の機械では、分離されたツールが曲げに使用されるが、前方に曲げるにはこの分離されたツールを上から下降させなければならないという短所がある。
【0008】
この他にも1フィンガーシステムで作業し、成形ツールが種々の仕方で操作され動かされる多数のばね製造機が公知であるが(特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7)、これらはすべて前方への曲折を形成できないという短所を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第20080264132A号明細書
【特許文献2】米国特許第4873854号明細書
【特許文献3】米国特許5706687号明細書
【特許文献4】特開平11―285758号公報
【特許文献5】特開2002―059233号公報
【特許文献6】特開2004―209527号公報
【特許文献7】米国特許7107806号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記から出発して、本発明の課題は、通常は2フィンガーシステムで純粋なコイルばね(圧縮ばね)の製造のみに適しているばね巻き機を改良して、1フィンガーシステムで単純な脚ばねを製造する目的にも使用できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、本発明により冒頭に記載した種類のばね製造機において、スピンドルが線材案内路を有しており、この線材案内路はスピンドル内にこのスピンドルの機枠と反対に向けられた外側の側壁から離間して形成されており、供給された線材はスピンドルを通って成形ツールに案内され、さらにスピンドルが線材を線材案内路に導入するための開口部を有することによって解決される。
【0012】
本発明において、スピンドルは線材送り方向に対して垂直な面上で上下方向にも前後方向にも移動可能であることによって、さらに互いに、かつ、それぞれ線材供給方向に対して垂直な2つの方向に移動可能な成形ツール(「3Dコイリングフィンガー」)を使用することによって、線材のコイリングの他に曲げも各任意の方向(上下、前後)に行うことができる。これにより脚ばねの製造はほとんど任意の脚の位置および形状で製造することが可能である。前方に屈曲された脚の製造も追加のツールユニットまたはツールスライドを使用することなく行うことができる。同時に2フィンガーコイリング法で精度の高いばねを大きい時間生産量で製造する可能性も維持される。
【0013】
本発明により2フィンガーシステムで作業する従来型のばね巻き機を、1フィンガーシステムに面倒なく切り替えることができる。この場合、成形ユニット、スピンドルユニットおよび場合によってはカッターならびに線材案内部を交換することにより、機械で製造可能な製品種類を全体として大幅に拡張できる。本発明によって達成される経済的効果は非常に注目すべきものである。
【0014】
本発明に従うばね製造機において特に好ましくは線材案内路が案内溝の形式で形成され、さらに好ましくは溝深さが少なくとも供給される線材の直径に等しくされて、線材が案内溝を通過するときに案内溝から飛び出さないようになっている。このことは線材案内路を閉じられた断面で形成する可能性を提供する。
【0015】
線材案内路が、閉じられずに片側が開いた断面を有する案内溝の形式で形成されている場合に特に有利には、案内溝が機枠と反対に向けられた側辺部で線材案内路の長手方向中心面に対して垂直に、かつ線材供給方向に対して平行に延びる平坦な境界壁を介してスピンドルの外側の側壁と接続されており、好ましくはこの平坦な境界壁が線材供給方向に対して垂直な方向で線材の直径より大きい幅を有する。
【0016】
本発明の別の有利な構成において、線材を線材案内路に導入するための開口部は境界壁の直ぐ横に延びていて、線材供給方向でスピンドルの全長を越えて延びている。好ましくはこの開口部が平坦な境界壁に対して垂直な方向で線材の直径に等しいか、わずかに大きい開口幅を有しており、線材を外側から容易に開口部に通して線材案内路に導入することが困難なく可能である。
【0017】
本発明に従うばね製造機において有利には、線材案内路が案内溝として形成されている場合に、案内溝の長手方向中心面が平坦な境界壁に対して垂直に延びるように構成されている。
【0018】
本発明に従うばね製造機の他の有利な構成において、スピンドルが2部分から構成されて、上側スピンドル部分と下側スピンドル部分とを有する。この場合に好ましくは両スピンドル部分は、線材を線材案内路に導入するための開口部を作り出すために、両スピンドル部分の一方のスピンドル部分に形成されて両スピンドル部分の間の分離面に向かって開いている線材案内路が他方のスピンドル部分によって完全に覆われて閉鎖された閉じた位置から、線材案内路が開かれていて線材を両スピンドル部分の間の線材案内路に導入するための開口部が作り出される開いた位置にもたらすことができる。本発明に従いスピンドルを2つのスピンドル部分から構成すると、線材を線材案内路に導入するための開口部は、線材を線材案内路から導出するか、または線材案内路内に導入する場合のみ作り出され、それ以外のときは線材案内のための両スピンドル部分を互いに上下に重ねることによって案内路断面が閉じているようにすることが可能である。これは片側が常に開いている案内溝の枠内で、線材案内路が開いている構成よりもはるかに選好される。
【0019】
スピンドルの2部分からなる構成において好適な構成は、両スピンドル部分が共通のヒンジを中心にして互いに旋回可能であり、その際に鋏状に開くことができるようになっているので、線材を導入する(または導出する)ための開口部を作り出すために両スピンドル部分を開くことができ、それによって線材案内路に所望通り到達できる。しかし線材の導入または導出が行われた後では、両スピンドル部分は再び閉鎖され、それによって再び閉じた線材案内路が達成される。
【0020】
2部分からなるスピンドルの別の好適な構成は、両スピンドル部分が開いた位置を取るためにそれらの位置関係を維持したまま、したがって互いに平行に向き合いながら互いに離れる方向に移動可能である。
【0021】
さらにスピンドルの2部分からなる構成において、線材案内路が案内溝の形式で形成されているスピンドル部分はスピンドルの閉じた位置で、このスピンドル部分の外側が他方のスピンドル部分から突出している突起部によって被され、この突起部は閉じた位置では線材案内路を有するスピンドル部分の外側の境界面に当接して線材案内路を覆う。このようにすることにより前方に曲げる際に高い剛性が提供される。
【0022】
また、本発明に従うばね製造機の別の好適な構成は、供給された線材を当てて曲げるための円弧状の曲げ面がスピンドルに追加的に形成されており、この曲げ面の曲率軸は線材の供給方向に対して垂直である。この場合に好ましくは、曲げ面は線材案内路の長手方向中心面に対して垂直の方向でずらしてスピンドルに設けられている。さらに有利には、曲げ面の曲率軸は線材案内路の長手方向中心面に対して垂直または平行に位置している。
【0023】
また、本発明の特に好適な構成は、スピンドルが2部分から構成されており、両部分が閉じた位置から開いた位置に(およびその逆に)もたらすことができる場合に、案内溝の深さが線材の直径より小さく選択され、さらにスピンドルはなおも線材の供給方向(および逆方向)に移動可能である。これによりスピンドルは同時に線材の把持部材として使用でき、線材は両スピンドル部分が閉じた位置でこれらの間に締め付けられて固持されている。
【0024】
最後に、本発明は冒頭に記載した種類のばね製造機に使用するための、上述した特徴を備えたスピンドルにも関する。
以下に、本発明を図面に基づき原理的な例示によって詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】1フィンガーシステムに整えられた本発明に従うばね製造機(ばね巻き機)の(斜め前方から見た)斜視図。
【図2】図1に従うばね製造機の成形範囲の拡大図(斜視図)。
【図3】図1に従う機械における成形に関与する構成要素の(個々の要素の間にスペースを空けて示した)概略的な斜視図。
【図4】異なる視点から見たスピンドルの種々の実施形態の原理図。
【図5】異なる視点から見たスピンドルの種々の実施形態の原理図。
【図6】異なる視点から見たスピンドルの種々の実施形態の原理図。
【図7】異なる視点から見たスピンドルの種々の実施形態の原理図。
【図8】異なる視点から見たスピンドルの種々の実施形態の原理図。
【図9】脚ばねの製造開始時に成形に関与する(図3に対応する)要素(のみ)を線材供給方向斜め前方外から見た拡大斜視図。
【図10】線材供給方向斜め後方外から見た図9に対応する斜視図。
【図11A】脚ばねの製造終了時の一段階を示す線材供給方向斜め前方外から見た斜視図。
【図11B】図11Aと同様の段階を示す線材供給方向斜め後方外から見た斜視図。
【図11C】図11Aで示した段階の次の段階を示す線材供給方向斜め前方外から見た斜視図。
【図11D】図11Cと同様の段階を示す線材供給方向斜め後方外から見た斜視図
【図11E】図11Cで示した段階の次の段階を示す線材供給方向斜め前方外から見た斜視図。
【図11F】図11Eと同様の段階を示す線材供給方向斜め後方外から見た斜視図。
【図11G】図11Eで示した段階の次の段階を示す線材供給方向斜め前方外から見た斜視図。
【図11H】図11Gと同様の段階を示す線材供給方向斜め後方外から見た斜視図。
【図11J】図11Gで示した段階の次の段階を示す線材供給方向斜め前方外から見た斜視図。
【図11K】図11Jと同様の段階を示す線材供給方向斜め後方外から見た斜視図
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、1フィンガーシステムで作業するばね製造機1を正面から見た斜視図を示す。ばね製造機1は実質的に1個の(単に原理図として示された)機枠2からなり、その前側(同様に単に原理図として示された)矯正ユニット3、線材進入部4、線材案内部5、スピンドルユニット6、成形ユニット7、ピッチ装置8および切断ユニット9が配置されている。
【0027】
矯正ユニット3および線材進入部4の構造と機能の仕方はそれ自体公知であるから、これについては言及するに留める。
線材10(図9および図10参照)は線材進入部4から、回転可能に駆動される1対以上の進入ローラ11によって図示されない線材ストックから引き出され、矯正ユニット3において幾つかの矯正ローラによってまっすぐに矯正され、進入ローラ11の後段に設けられている成形ユニット7の線材案内部5によって線材供給方向sに供給される。
【0028】
同様にピッチ装置8もそれ自体公知である。ピッチ装置8は外に向かって(線材軸に対して垂直方向で機枠2から前方に垂直に)動くことによって、ばねの個々の巻き条の間に相応に所望されたピッチを生み出すことが可能になる。そのようなピッチ装置の作用の仕方と使用は当業者にとって公知であるから、これについて詳述する必要はない。
【0029】
さらに機枠2には水平スキッド12、すなわち上側スライドと下側が取り付けられており、互いに独立に線材案内方向sに対して平行に方向tu、toに移動できるようになっている。
【0030】
図1に見られるように、水平スキッド12上には2個の成形スライド13(各水平スキッド12上にそれぞれ1個)が斜めに設けられており、それぞれカム駈動14により互いに独立に斜めの軌道上でuもしくはvの方向で移動可能である。この場合、成形ユニット7の運動について、成形面上で成形ツール15(もしくは2フィンガーコイリングシステムに切り替えた場合は複数の成形ツール15)の自由な運動を可能にする任意のバリエーションが考えられる。所望される場合は両水平スキッド12を連結させる可能性もある。
【0031】
2フィンガーシステムにおいては、各成形スライド13の前端部に成形ツール15が装備されているが、図1に示す1フィンガーシステムに切り替えたばね製造機1は下側の成形スライド13のみに成形ツール15がアダプタープレート22を介して設けられている。ここでは成形ツールは成形ユニット7として働く3Dコイリングフィンガー23(「脚ばね装置」とも呼ぶ)である。3Dコイリングフィンガー23はスピンドルユニット6に向けられた端面に線材10を受容、案内および転向するための案内溝28を有している(図9および図10参照)。
【0032】
1フィンガーに切り替えたら必要とされない2フィンガーシステムの(上側)成形スライド13は、1フィンガーシステムに切り替えるときに取り外すか、または退出位置にもたらされてそこに留まっている。
【0033】
成形スピンドル16はスピンドルボックス17内に固定されており(図2の成形範囲を拡大した部分図参照)、スピンドルボックス17はスピンドルスライド18内に摺動可能に挿入されている。スピンドルスライド18はw方向で垂直に(線材10に対して垂直に)移動可能であるため、成形スピンドル16を既に巻かれた線材に常に直接位置決めできる。スピンドルボックス17はx方向で前方および後方に(同様に線材10に対して垂直に)移動可能である。両移動方向は図2に矢印で示されている。
【0034】
スピンドルスライド18には、それぞれ1個のクランクシャフト19を介して操作される切断スライド20が取り付けられており、これに作製されたばねを切断するカッター21がそれぞれ1個(2フィンガーシステムで作業する場合)設けられている。1フィンガーシステムに切り替えた図1に従うばね製造機では、上側切断スライド20のみにカッター21が設けられており、線材案内部5の出口25で直ぐに線材を切断するように構成されている(図3に従う表現参照)。線材出口25を支持するために、下側切断スライド20には線材案内部5に下から当接可能な対向カッター30が設けられている。代替として線材10は、スピンドルユニット6が成形スピンドル26と線材案内部5との間でwまたはx方向に動くことによっても切断でき、このために成形スピンドル26および線材出口25には特殊なエッジ形成が設けられている(図示されていない)。
【0035】
3Dコイリングフィンガー23は本質的に線材供給方向sに対して平行に向けられており、両水平スキッド12が運動方向toおよびtuに動くか、または成形スライド13がv方向で動くことによってコイリング面上で動かすことができる。さらにまた追加的な駆動装置24(図1)を介して、3Dコイリングフィンガー23を追加的にコイリング面に対して垂直にy方向で動かす(旋回)ことが可能である。これにより3Dコイリングフィンガー23の成形ツール15は線材案内部5の線材出口25に対して任意に位置決めでき、あるいは線材出口25から突出している線材10の周囲を動いて上方、下方、後方または前方から線材10に作用できる(図3も参照)。
【0036】
成形に関与するすべての構成要素を原理的な仕方で互いに離れた位置に示した図3の表現から認識できるように、成形スピンドル16は2部分から形成されている。
成形スピンドル16は上側スピンドル部分16aと下側スピンドル部分16bとを有しており、これらは機枠2に対して垂直に(x方向に)および線材案内方向sに対して平行に延びる面に沿って互いに上下に位置し、互いに接して(適当な仕方で)固定されている。
【0037】
明確に参照を求める図3に詳細に示すように、下側スピンドル部分16bには上方に開いている案内溝27が形成されていて、線材供給方向sに対して平行に延び、かつ、断面が線材の直径dに適合されている(図7および図9参照)。
【0038】
成形スピンドル16は運動軸wおよびxに沿って動くことが可能であることにより、線材10が案内溝27内に、または成形スピンドル16のいずれか任意の別の個所またはエッジに位置するように、線材10(図9および図10)に対して位置決めできる。成形スピンドル16のこの位置決め可能性と、3Dコイリングフィンガー23の自由度t、v、yにより、線材10はほぼ任意に成形できる。
【0039】
図3に従い案内溝27は機枠2と反対に向けられた側で、下側スピンドル部分16bの同じ側の外面31から突起部29によって隔てられている。突起部29は例えばばねの前方に屈曲された脚を製造することを可能にする(図9および10または図11A〜11Kも参照)。この突起部29の上側には、案内溝27の長手方向中心面M−M(図7参照)に対して垂直に、かつ、線材供給方向sに対して平行に平坦な境界壁32が形成されている。境界壁32は突起部29の上側境界面を形成し、案内溝27の外側の側辺部の上端部と、下側スピンドル部分16bの外面31とを接続している。
【0040】
図6(左図)からよく分かるように、上側境界壁32の幅Bは線材の直径より大きい。案内溝27の深さTは線材の直径よりやや大きい。
さらに図3に示すように、上側スピンドル部分16aの下面は下側スピンドル部分16bの上面から前方の方向に突出することによって、下側スピンドル部分16b内の案内溝27の上に張り出している。
【0041】
さらに上側スピンドル部分16aは前端部に、丸くされた、特に円弧状に湾曲した部分35を装備されており、供給された線材10を相応の面で曲げることができるようになっている。
【0042】
しかしまた、ここに設けられた円弧状の曲げ面35は、成形スピンドル16に別の位置関係で、例えば曲げ面35の曲率軸Aが案内溝27の長手方向中心面M−M(図7参照)内に位置するように、またはこれと平行にずらして取り付けることもできる。
【0043】
複数の図に示されているように、成形スピンドル16の構成において、湾曲面35の曲げ軸Aは線材案内方向sに対して垂直に、かつ、機枠2に対して垂直に(したがって軸xに対して平行に)位置している。
【0044】
図示された曲げ面35の実施形態において、図3に示されているように、曲げ面35は円弧状に四分円をやや越えて、つまり線材供給方向sで見て成形スピンドル16のほぼ全長Lにわたって延びており、図6にも示されているように、完全に上側スピンドル部分16aの上側前端部まで達している。
【0045】
しかし例えば図5または図8に見られるように、他の位置関係および配置も全く可能で
あるが、これについては以下に詳しく説明する。
図3および図9と図10に示された実施例において、成形スピンドル16の外方(前方)に向けられた端部は、下側スピンドル部分16bの境界面32と上側スピンドル部分16aの曲げ面35との間に、この配置構成の外側から到達できる開口部46が作り出される。開口部46の幅h(境界壁に対して垂直)は線材供給方向sで連続的に増えている(図3参照)。
【0046】
この(線材供給方向sに見て)成形スピンドル16の全長Lにわたって延びる開口部46は、線材案内部5の出口25の直ぐ横にある長さLの開始点に位置する最も狭い断面箇所で幅hを有する。幅hの大きさは、送られてきた線材10がその直径dを考慮して外から開口部46に導入され、次いで案内溝27に送り込まれることができるようにされている。この場合、必要なすべての相対運動は、成形スピンドル16がスピンドル16のwもしくはx方向に線材10に対して相対的に動くことによって実施され得る。
【0047】
図4〜図8に、成形スピンドル16の前側から線材供給方向sと反対の方向に見た成形スピンドル16の種々異なる実施形態の概略図を示す。図中、破線は曲げるための線材10の可能な位置を示し、矢印は可能な曲げ方向を示す。
【0048】
図4に示す成形スピンドル16の1部分からなる実施形態では、L字形路33が内部に設けられていて、成形スピンドル16の外側で開口部46に通じている。この開口部46を通して線材が導入されて、案内溝27を形成する路33の、ここでは上方に向けられた脚部に送りこまれることができる。路33に導入された線材の種々異なる位置が破線で示されており、これら種々異なる線材位置の各々に対して可能な曲げ方向が小さい矢印で略示されている。
【0049】
図5に示す類似の成形スピンドル16は、上側スピンドル部分16aと下側スピンドル部分16bの2部分から形成されている。上側の表現は図1と同じ側面図であるが、下側の表現は下側スピンドル部分16bを上から見た(上側スピンドル部分16aを取り除いた)平面図を示す。両スピンドル部分16aおよび16bはやはり共にL字形路33を形成しているが、この場合は案内溝27を形成するL字形路33の脚部は下方に延びている。線材の導入方向で見て案内溝27の前段には丸くされた部分35´が曲げ面として設けられており、その曲げ軸は案内溝27の長手方向中心面M−M(図7参照)に対して平行に位置しており、ばね体コイリングを容易にするようになっている。
【0050】
図6も同様に上側スピンドル部分16aと下側スピンドル部分16bの2部分からなる成形スピンドル16を示している。この構成は、図1〜図3および図9〜図11Kに示されているものと同じである。円弧状の曲げ面35を有する曲げ区域は、図3または図9および図10から明瞭に見て取れるように上方に丸くされている。ここで、図6の右側の表現は上側成形スピンドル部分16aの正面図(左側の表現を左側から見た図)を示している。
【0051】
図示された例は右巻きばねの製造を示す。図には示されていないが、本発明を使用する際には左巻きばねを製造することも言うまでもなく可能である。左巻きばねを製造するために必要なのは、成形スピンドル16および線材案内部5を新しい成形スピンドルと新しい線材案内部に置き換えるだけである。この場合、これらの要素の各々は、図示された表現が長手方向中心面M−Mに対して垂直に、かつ、線材案内路(案内溝27)の長手方向中心軸を通る平面に左右反対に写された配置で構成されている。
【0052】
図7および図8は、それぞれ2部分からなる成形スピンドル16の閉鎖機能を示している。
図7に従う実施形態では、上側スピンドル部分16aと下側スピンドル部分16bが回転軸36(図示されない機構もしくは駆動装置)を中心に互いに鋏状に旋回可能である。閉じた位置(図7の左側の表現)では、線材は閉じられた断面の線材案内路27内にあり、この成形スピンドル16が閉じた位置において線材は通過する際に成形スピンドル16に完全に包囲されている。
【0053】
この閉じた位置では上側スピンドル部分16aはその外側(図7で左側)で下方に突出した突起部37により、案内路27が形成されている下側スピンドル部分16bの外側の面31に被さっている。
【0054】
スピンドルユニット6は回転軸36を中心に鋏状に開くことによって、図7の左側に示された閉じた位置から、図7の右側に示されている開いた位置に移行する。このとき上側スピンドル部分16aの下方に突出する前側の突起部37と境界壁32との間に開口部46が形成され、この開口部46を通って線材10が外から案内溝27に導入され、または案内溝27から導出されることができる。
【0055】
突起部37および29は成形スピンドル16が閉じた位置で互いに外方に支え合っており、それにより前方に(つまり図7で左方向に)曲げる際の剛性を増すことができる。
最後に図8に、2部分からなる成形スピンドル16の別の実施形態が、再び左側は閉じた位置および右側は開いた位置示されている。
【0056】
ここでは開いた位置(図8の右側の表現)では上側スピンドル部分16aと下側スピンドル部分16bはもはや互いに接続されていない。反対に案内溝27に到達するための開口部46を作り出すために両スピンドル部分16aおよび16bは、相互の位置関係を変えずに互いに平行に遠ざかっている。これもやはり単純な機構(例えばベルクランク、開張部材、カム機構および電動機等で、いずれも図示されていない)により行うことができ、当業者にはこれに適した機構もしくは駆動装置はよく知られている。
【0057】
さらに、この実施形態において上側スピンドル部分16aは互いに接続された要素38(スピンドル部材1)および39(スピンドル部材2)から合成されている。そのため例えば丸くされた曲げ面35´´等は、成形スピンドル16の中間部材でも実現できる。
【0058】
成形スピンドル16を複数部分から構成する構造により、個々のスピンドル部材16a、16b、38もしくは39の製造が単純化され、スピンドル部分16a、16bまたはスピンドル部材38もしくは39を交換することによって、路33もしくは成形面28および35の形状の変化が可能になる。
【0059】
図7および図8に示す成形スピンドル16は、可動スピンドル部分を使用することにより、線材10、脚部またはばね体を把持および位置決めできる把持部材としても構成できるが、これはそのようなスピンドルユニットを利用する別の可能性として生じるものである。そのために成形スピンドル16は線材の供給方向sにも可動に構成され、案内溝27の深さTは線材の直径dよりやや小さく選択されて、両スピンドル部分16aおよび16bが閉じた位置でそれらの間に線材を固持することが達成される。
【0060】
案内路27の取付け方向、すなわち例えば上方(図4の例)または下方(図5および図6の例)は任意であり、応用もしくは所望されたばね形状に応じて個々に選択できる。
丸くされたスピンドル部分35もしくは35´もしくは35´´を有する上記の実施形態の他にも、多くの別の変化例が考えられる。例えば線材にとって全く障害とならないように、スピンドル16の端面を追加的に研磨すると好都合であることが分かった。この場合、端面はたいてい幾何学的に正確に定義されない相応の自由成形面として構成されてい
る。
【0061】
図9および図10は、図3に示す成形要素を前方に向けられた脚40を曲げる状態において2つの異なる視点から示している。すなわち図9は斜め前方から見た斜視図であり、図10はこの配置構成を斜め後方から見た斜視図である。
【0062】
この場合、線材10は案内溝27を通り、成形ツール15が前方に動くことによって成形ツール15に設けられたくりぬき部15を介して突起部29で折り曲げられる。
案内溝27の端部において案内溝27から外方の曲げ方向への移行は、突起部29に設けられた丸み42によって助長される。
【0063】
最後に図11A〜図11Kに、屈曲された脚44を持つばね43の製造における種々の段階を種々異なる成形要素の原理的な斜視図で示す。それぞれ左右に並べて示した図面は同じ作業ステップを異なる斜視図で示しており、さらに左側の表現では個々のツールの運動順序が矢印でも示されている。
【0064】
図11Aおよび図11Bは、線材10が下側スピンドル部分16bの線材案内部5および案内溝を通って成形スピンドル16を介して搬出された状態を示している。成形ツール15が成形スピンドル16の方向に、かつ、上から下方に動くこと(運動軸tおよびvに沿った運動)によって、線材10は成形スピンドル16の後方エッジで(すなわち下側スピンドル部分16bで)折り曲げられ、それによって最初の屈曲された脚44が作製される。
【0065】
続いて、成形ツール15が線材10から右方向に離れて線材10の後ろに回って下降し、下から再び線材10に当てられる。同時に線材10は少し前に送られ、成形スピンドル16が下降して少し後方にずらされて、丸くされた曲げ面35が線材10に当てられる(図11Cおよび11Dに従う位置)。
【0066】
次に成形ツール15が上昇し、かつ、線材送りが作動することにより、コイリングによってばね体47が作製される。個々の巻き条の間に間隔を生み出すためにピッチ装置8が線材10に対して垂直に動くことができる。この状態は図11Eおよび11Fに示されている。
【0067】
ばね体47が完成した後で成形ツール15は線材10から離れて線材10の後ろに回って下降し、後方からばね体47内に位置決めされる。このとき線材送りが作動し、次いで成形ツール15が下降することによって第2の脚が折り曲げられる。この曲げは新しく(開始時のように)成形スピンドル16の案内溝27内か、または突起部29で行うことができる(図11Gおよび11H参照)。
【0068】
最後に、図11Jおよび図11Kに示されているように、成形スピンドル16と成形ツール15が後退することによってばね43が解放される。線材10を送ることによって相応の脚長さが作製され、完成したばね43は対向カッター30が上昇し、カッター21が下降することによって切断される。
【0069】
続いて新しいばねの製造プロセスが再び開始できる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、線材進入部と、線材を供給方向に案内するための線材案内部と、さらに線材案内部の後段に設けられている、供給された線材に対して直交するように上下方向にも機枠に対して直交する方向にも移動可能なスピンドルと、このスピンドルの後段で線材供給方向に対して平行に、互いに、かつ、それぞれ線材供給方向に対して直交な2つの方向に移動可能な成形ツールとが取り付けられている機枠を有するばね製造機に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮ばねを製造するために、相応の機械が各種知られている。この場合、1フィンガーシステムの、すなわち1本の移動可能なコイリングフィンガーが線材をばねに形成するばね製造機と、2フィンガーシステムの機械(2本の移動可能なコイリングフィンガーが線材をばねに形成する)に大別される。
【0003】
これらの公知の機械の中で、1フィンガーシステムの機械は特にフレキシブルに使用でき、多様な形式のばねをカバーできる。しかしこのような機械で製造されたばねの精度は、機械そのものの時間生産量と同様に、たいてい2フィンガーシステム機械に比べて劣る。
【0004】
2フィンガーシステムの機械も屈曲した脚のない純粋なコイルばねの製造のみに適している。なぜならば、線材は1度到着すると常にコイリングフィンガーの線材案内溝内に位置決めされたままだからである。2フィンガーシステムによって、1フィンガーシステムより多くの個数およびより正確なばね形状を製造することはできない。
【0005】
特許文献1により公知のばね製造機は、1フィンガーシステムによる作業にも、2フィンガーシステムによる作業にも使用可能で適宜切り替えることができる。この機械に設けられている2フィンガーシステムの両駆動装置は、1フィンガーシステムの操作にも使用できる。この公知の機械ではスピンドルは通常の切断スピンドルとして使用される。機械が1フィンガーシステムで作業するときには、成形ツールは機械壁に対して垂直に移動できない。そのためばねを前方に曲げることはできない。
【0006】
特許文献2により公知のばね製造機は1フィンガーシステムの原理で作業し、成形ツールは2つの方向に移動可能である。この場合、切断部、ピッチ部材および曲げ部材は成形ツールの運動方向に対して垂直に移動可能であるが、前方に曲げることは可能ではない。
【0007】
特許文献3には、1フィンガーシステムで作業し、コイリングツールが互いに垂直な3方向に移動可能なばね製造機が開示されている。この公知の機械では、分離されたツールが曲げに使用されるが、前方に曲げるにはこの分離されたツールを上から下降させなければならないという短所がある。
【0008】
この他にも1フィンガーシステムで作業し、成形ツールが種々の仕方で操作され動かされる多数のばね製造機が公知であるが(特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7)、これらはすべて前方への曲折を形成できないという短所を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第20080264132A号明細書
【特許文献2】米国特許第4873854号明細書
【特許文献3】米国特許5706687号明細書
【特許文献4】特開平11―285758号公報
【特許文献5】特開2002―059233号公報
【特許文献6】特開2004―209527号公報
【特許文献7】米国特許7107806号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記から出発して、本発明の課題は、通常は2フィンガーシステムで純粋なコイルばね(圧縮ばね)の製造のみに適しているばね巻き機を改良して、1フィンガーシステムで単純な脚ばねを製造する目的にも使用できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、本発明により冒頭に記載した種類のばね製造機において、スピンドルが線材案内路を有しており、この線材案内路はスピンドル内にこのスピンドルの機枠と反対に向けられた外側の側壁から離間して形成されており、供給された線材はスピンドルを通って成形ツールに案内され、さらにスピンドルが線材を線材案内路に導入するための開口部を有することによって解決される。
【0012】
本発明において、スピンドルは線材送り方向に対して垂直な面上で上下方向にも前後方向にも移動可能であることによって、さらに互いに、かつ、それぞれ線材供給方向に対して垂直な2つの方向に移動可能な成形ツール(「3Dコイリングフィンガー」)を使用することによって、線材のコイリングの他に曲げも各任意の方向(上下、前後)に行うことができる。これにより脚ばねの製造はほとんど任意の脚の位置および形状で製造することが可能である。前方に屈曲された脚の製造も追加のツールユニットまたはツールスライドを使用することなく行うことができる。同時に2フィンガーコイリング法で精度の高いばねを大きい時間生産量で製造する可能性も維持される。
【0013】
本発明により2フィンガーシステムで作業する従来型のばね巻き機を、1フィンガーシステムに面倒なく切り替えることができる。この場合、成形ユニット、スピンドルユニットおよび場合によってはカッターならびに線材案内部を交換することにより、機械で製造可能な製品種類を全体として大幅に拡張できる。本発明によって達成される経済的効果は非常に注目すべきものである。
【0014】
本発明に従うばね製造機において特に好ましくは線材案内路が案内溝の形式で形成され、さらに好ましくは溝深さが少なくとも供給される線材の直径に等しくされて、線材が案内溝を通過するときに案内溝から飛び出さないようになっている。このことは線材案内路を閉じられた断面で形成する可能性を提供する。
【0015】
線材案内路が、閉じられずに片側が開いた断面を有する案内溝の形式で形成されている場合に特に有利には、案内溝が機枠と反対に向けられた側辺部で線材案内路の長手方向中心面に対して垂直に、かつ線材供給方向に対して平行に延びる平坦な境界壁を介してスピンドルの外側の側壁と接続されており、好ましくはこの平坦な境界壁が線材供給方向に対して垂直な方向で線材の直径より大きい幅を有する。
【0016】
本発明の別の有利な構成において、線材を線材案内路に導入するための開口部は境界壁の直ぐ横に延びていて、線材供給方向でスピンドルの全長を越えて延びている。好ましくはこの開口部が平坦な境界壁に対して垂直な方向で線材の直径に等しいか、わずかに大きい開口幅を有しており、線材を外側から容易に開口部に通して線材案内路に導入することが困難なく可能である。
【0017】
本発明に従うばね製造機において有利には、線材案内路が案内溝として形成されている場合に、案内溝の長手方向中心面が平坦な境界壁に対して垂直に延びるように構成されている。
【0018】
本発明に従うばね製造機の他の有利な構成において、スピンドルが2部分から構成されて、上側スピンドル部分と下側スピンドル部分とを有する。この場合に好ましくは両スピンドル部分は、線材を線材案内路に導入するための開口部を作り出すために、両スピンドル部分の一方のスピンドル部分に形成されて両スピンドル部分の間の分離面に向かって開いている線材案内路が他方のスピンドル部分によって完全に覆われて閉鎖された閉じた位置から、線材案内路が開かれていて線材を両スピンドル部分の間の線材案内路に導入するための開口部が作り出される開いた位置にもたらすことができる。本発明に従いスピンドルを2つのスピンドル部分から構成すると、線材を線材案内路に導入するための開口部は、線材を線材案内路から導出するか、または線材案内路内に導入する場合のみ作り出され、それ以外のときは線材案内のための両スピンドル部分を互いに上下に重ねることによって案内路断面が閉じているようにすることが可能である。これは片側が常に開いている案内溝の枠内で、線材案内路が開いている構成よりもはるかに選好される。
【0019】
スピンドルの2部分からなる構成において好適な構成は、両スピンドル部分が共通のヒンジを中心にして互いに旋回可能であり、その際に鋏状に開くことができるようになっているので、線材を導入する(または導出する)ための開口部を作り出すために両スピンドル部分を開くことができ、それによって線材案内路に所望通り到達できる。しかし線材の導入または導出が行われた後では、両スピンドル部分は再び閉鎖され、それによって再び閉じた線材案内路が達成される。
【0020】
2部分からなるスピンドルの別の好適な構成は、両スピンドル部分が開いた位置を取るためにそれらの位置関係を維持したまま、したがって互いに平行に向き合いながら互いに離れる方向に移動可能である。
【0021】
さらにスピンドルの2部分からなる構成において、線材案内路が案内溝の形式で形成されているスピンドル部分はスピンドルの閉じた位置で、このスピンドル部分の外側が他方のスピンドル部分から突出している突起部によって被され、この突起部は閉じた位置では線材案内路を有するスピンドル部分の外側の境界面に当接して線材案内路を覆う。このようにすることにより前方に曲げる際に高い剛性が提供される。
【0022】
また、本発明に従うばね製造機の別の好適な構成は、供給された線材を当てて曲げるための円弧状の曲げ面がスピンドルに追加的に形成されており、この曲げ面の曲率軸は線材の供給方向に対して垂直である。この場合に好ましくは、曲げ面は線材案内路の長手方向中心面に対して垂直の方向でずらしてスピンドルに設けられている。さらに有利には、曲げ面の曲率軸は線材案内路の長手方向中心面に対して垂直または平行に位置している。
【0023】
また、本発明の特に好適な構成は、スピンドルが2部分から構成されており、両部分が閉じた位置から開いた位置に(およびその逆に)もたらすことができる場合に、案内溝の深さが線材の直径より小さく選択され、さらにスピンドルはなおも線材の供給方向(および逆方向)に移動可能である。これによりスピンドルは同時に線材の把持部材として使用でき、線材は両スピンドル部分が閉じた位置でこれらの間に締め付けられて固持されている。
【0024】
最後に、本発明は冒頭に記載した種類のばね製造機に使用するための、上述した特徴を備えたスピンドルにも関する。
以下に、本発明を図面に基づき原理的な例示によって詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】1フィンガーシステムに整えられた本発明に従うばね製造機(ばね巻き機)の(斜め前方から見た)斜視図。
【図2】図1に従うばね製造機の成形範囲の拡大図(斜視図)。
【図3】図1に従う機械における成形に関与する構成要素の(個々の要素の間にスペースを空けて示した)概略的な斜視図。
【図4】異なる視点から見たスピンドルの種々の実施形態の原理図。
【図5】異なる視点から見たスピンドルの種々の実施形態の原理図。
【図6】異なる視点から見たスピンドルの種々の実施形態の原理図。
【図7】異なる視点から見たスピンドルの種々の実施形態の原理図。
【図8】異なる視点から見たスピンドルの種々の実施形態の原理図。
【図9】脚ばねの製造開始時に成形に関与する(図3に対応する)要素(のみ)を線材供給方向斜め前方外から見た拡大斜視図。
【図10】線材供給方向斜め後方外から見た図9に対応する斜視図。
【図11A】脚ばねの製造終了時の一段階を示す線材供給方向斜め前方外から見た斜視図。
【図11B】図11Aと同様の段階を示す線材供給方向斜め後方外から見た斜視図。
【図11C】図11Aで示した段階の次の段階を示す線材供給方向斜め前方外から見た斜視図。
【図11D】図11Cと同様の段階を示す線材供給方向斜め後方外から見た斜視図
【図11E】図11Cで示した段階の次の段階を示す線材供給方向斜め前方外から見た斜視図。
【図11F】図11Eと同様の段階を示す線材供給方向斜め後方外から見た斜視図。
【図11G】図11Eで示した段階の次の段階を示す線材供給方向斜め前方外から見た斜視図。
【図11H】図11Gと同様の段階を示す線材供給方向斜め後方外から見た斜視図。
【図11J】図11Gで示した段階の次の段階を示す線材供給方向斜め前方外から見た斜視図。
【図11K】図11Jと同様の段階を示す線材供給方向斜め後方外から見た斜視図
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、1フィンガーシステムで作業するばね製造機1を正面から見た斜視図を示す。ばね製造機1は実質的に1個の(単に原理図として示された)機枠2からなり、その前側(同様に単に原理図として示された)矯正ユニット3、線材進入部4、線材案内部5、スピンドルユニット6、成形ユニット7、ピッチ装置8および切断ユニット9が配置されている。
【0027】
矯正ユニット3および線材進入部4の構造と機能の仕方はそれ自体公知であるから、これについては言及するに留める。
線材10(図9および図10参照)は線材進入部4から、回転可能に駆動される1対以上の進入ローラ11によって図示されない線材ストックから引き出され、矯正ユニット3において幾つかの矯正ローラによってまっすぐに矯正され、進入ローラ11の後段に設けられている成形ユニット7の線材案内部5によって線材供給方向sに供給される。
【0028】
同様にピッチ装置8もそれ自体公知である。ピッチ装置8は外に向かって(線材軸に対して垂直方向で機枠2から前方に垂直に)動くことによって、ばねの個々の巻き条の間に相応に所望されたピッチを生み出すことが可能になる。そのようなピッチ装置の作用の仕方と使用は当業者にとって公知であるから、これについて詳述する必要はない。
【0029】
さらに機枠2には水平スキッド12、すなわち上側スライドと下側が取り付けられており、互いに独立に線材案内方向sに対して平行に方向tu、toに移動できるようになっている。
【0030】
図1に見られるように、水平スキッド12上には2個の成形スライド13(各水平スキッド12上にそれぞれ1個)が斜めに設けられており、それぞれカム駈動14により互いに独立に斜めの軌道上でuもしくはvの方向で移動可能である。この場合、成形ユニット7の運動について、成形面上で成形ツール15(もしくは2フィンガーコイリングシステムに切り替えた場合は複数の成形ツール15)の自由な運動を可能にする任意のバリエーションが考えられる。所望される場合は両水平スキッド12を連結させる可能性もある。
【0031】
2フィンガーシステムにおいては、各成形スライド13の前端部に成形ツール15が装備されているが、図1に示す1フィンガーシステムに切り替えたばね製造機1は下側の成形スライド13のみに成形ツール15がアダプタープレート22を介して設けられている。ここでは成形ツールは成形ユニット7として働く3Dコイリングフィンガー23(「脚ばね装置」とも呼ぶ)である。3Dコイリングフィンガー23はスピンドルユニット6に向けられた端面に線材10を受容、案内および転向するための案内溝28を有している(図9および図10参照)。
【0032】
1フィンガーに切り替えたら必要とされない2フィンガーシステムの(上側)成形スライド13は、1フィンガーシステムに切り替えるときに取り外すか、または退出位置にもたらされてそこに留まっている。
【0033】
成形スピンドル16はスピンドルボックス17内に固定されており(図2の成形範囲を拡大した部分図参照)、スピンドルボックス17はスピンドルスライド18内に摺動可能に挿入されている。スピンドルスライド18はw方向で垂直に(線材10に対して垂直に)移動可能であるため、成形スピンドル16を既に巻かれた線材に常に直接位置決めできる。スピンドルボックス17はx方向で前方および後方に(同様に線材10に対して垂直に)移動可能である。両移動方向は図2に矢印で示されている。
【0034】
スピンドルスライド18には、それぞれ1個のクランクシャフト19を介して操作される切断スライド20が取り付けられており、これに作製されたばねを切断するカッター21がそれぞれ1個(2フィンガーシステムで作業する場合)設けられている。1フィンガーシステムに切り替えた図1に従うばね製造機では、上側切断スライド20のみにカッター21が設けられており、線材案内部5の出口25で直ぐに線材を切断するように構成されている(図3に従う表現参照)。線材出口25を支持するために、下側切断スライド20には線材案内部5に下から当接可能な対向カッター30が設けられている。代替として線材10は、スピンドルユニット6が成形スピンドル26と線材案内部5との間でwまたはx方向に動くことによっても切断でき、このために成形スピンドル26および線材出口25には特殊なエッジ形成が設けられている(図示されていない)。
【0035】
3Dコイリングフィンガー23は本質的に線材供給方向sに対して平行に向けられており、両水平スキッド12が運動方向toおよびtuに動くか、または成形スライド13がv方向で動くことによってコイリング面上で動かすことができる。さらにまた追加的な駆動装置24(図1)を介して、3Dコイリングフィンガー23を追加的にコイリング面に対して垂直にy方向で動かす(旋回)ことが可能である。これにより3Dコイリングフィンガー23の成形ツール15は線材案内部5の線材出口25に対して任意に位置決めでき、あるいは線材出口25から突出している線材10の周囲を動いて上方、下方、後方または前方から線材10に作用できる(図3も参照)。
【0036】
成形に関与するすべての構成要素を原理的な仕方で互いに離れた位置に示した図3の表現から認識できるように、成形スピンドル16は2部分から形成されている。
成形スピンドル16は上側スピンドル部分16aと下側スピンドル部分16bとを有しており、これらは機枠2に対して垂直に(x方向に)および線材案内方向sに対して平行に延びる面に沿って互いに上下に位置し、互いに接して(適当な仕方で)固定されている。
【0037】
明確に参照を求める図3に詳細に示すように、下側スピンドル部分16bには上方に開いている案内溝27が形成されていて、線材供給方向sに対して平行に延び、かつ、断面が線材の直径dに適合されている(図7および図9参照)。
【0038】
成形スピンドル16は運動軸wおよびxに沿って動くことが可能であることにより、線材10が案内溝27内に、または成形スピンドル16のいずれか任意の別の個所またはエッジに位置するように、線材10(図9および図10)に対して位置決めできる。成形スピンドル16のこの位置決め可能性と、3Dコイリングフィンガー23の自由度t、v、yにより、線材10はほぼ任意に成形できる。
【0039】
図3に従い案内溝27は機枠2と反対に向けられた側で、下側スピンドル部分16bの同じ側の外面31から突起部29によって隔てられている。突起部29は例えばばねの前方に屈曲された脚を製造することを可能にする(図9および10または図11A〜11Kも参照)。この突起部29の上側には、案内溝27の長手方向中心面M−M(図7参照)に対して垂直に、かつ、線材供給方向sに対して平行に平坦な境界壁32が形成されている。境界壁32は突起部29の上側境界面を形成し、案内溝27の外側の側辺部の上端部と、下側スピンドル部分16bの外面31とを接続している。
【0040】
図6(左図)からよく分かるように、上側境界壁32の幅Bは線材の直径より大きい。案内溝27の深さTは線材の直径よりやや大きい。
さらに図3に示すように、上側スピンドル部分16aの下面は下側スピンドル部分16bの上面から前方の方向に突出することによって、下側スピンドル部分16b内の案内溝27の上に張り出している。
【0041】
さらに上側スピンドル部分16aは前端部に、丸くされた、特に円弧状に湾曲した部分35を装備されており、供給された線材10を相応の面で曲げることができるようになっている。
【0042】
しかしまた、ここに設けられた円弧状の曲げ面35は、成形スピンドル16に別の位置関係で、例えば曲げ面35の曲率軸Aが案内溝27の長手方向中心面M−M(図7参照)内に位置するように、またはこれと平行にずらして取り付けることもできる。
【0043】
複数の図に示されているように、成形スピンドル16の構成において、湾曲面35の曲げ軸Aは線材案内方向sに対して垂直に、かつ、機枠2に対して垂直に(したがって軸xに対して平行に)位置している。
【0044】
図示された曲げ面35の実施形態において、図3に示されているように、曲げ面35は円弧状に四分円をやや越えて、つまり線材供給方向sで見て成形スピンドル16のほぼ全長Lにわたって延びており、図6にも示されているように、完全に上側スピンドル部分16aの上側前端部まで達している。
【0045】
しかし例えば図5または図8に見られるように、他の位置関係および配置も全く可能で
あるが、これについては以下に詳しく説明する。
図3および図9と図10に示された実施例において、成形スピンドル16の外方(前方)に向けられた端部は、下側スピンドル部分16bの境界面32と上側スピンドル部分16aの曲げ面35との間に、この配置構成の外側から到達できる開口部46が作り出される。開口部46の幅h(境界壁に対して垂直)は線材供給方向sで連続的に増えている(図3参照)。
【0046】
この(線材供給方向sに見て)成形スピンドル16の全長Lにわたって延びる開口部46は、線材案内部5の出口25の直ぐ横にある長さLの開始点に位置する最も狭い断面箇所で幅hを有する。幅hの大きさは、送られてきた線材10がその直径dを考慮して外から開口部46に導入され、次いで案内溝27に送り込まれることができるようにされている。この場合、必要なすべての相対運動は、成形スピンドル16がスピンドル16のwもしくはx方向に線材10に対して相対的に動くことによって実施され得る。
【0047】
図4〜図8に、成形スピンドル16の前側から線材供給方向sと反対の方向に見た成形スピンドル16の種々異なる実施形態の概略図を示す。図中、破線は曲げるための線材10の可能な位置を示し、矢印は可能な曲げ方向を示す。
【0048】
図4に示す成形スピンドル16の1部分からなる実施形態では、L字形路33が内部に設けられていて、成形スピンドル16の外側で開口部46に通じている。この開口部46を通して線材が導入されて、案内溝27を形成する路33の、ここでは上方に向けられた脚部に送りこまれることができる。路33に導入された線材の種々異なる位置が破線で示されており、これら種々異なる線材位置の各々に対して可能な曲げ方向が小さい矢印で略示されている。
【0049】
図5に示す類似の成形スピンドル16は、上側スピンドル部分16aと下側スピンドル部分16bの2部分から形成されている。上側の表現は図1と同じ側面図であるが、下側の表現は下側スピンドル部分16bを上から見た(上側スピンドル部分16aを取り除いた)平面図を示す。両スピンドル部分16aおよび16bはやはり共にL字形路33を形成しているが、この場合は案内溝27を形成するL字形路33の脚部は下方に延びている。線材の導入方向で見て案内溝27の前段には丸くされた部分35´が曲げ面として設けられており、その曲げ軸は案内溝27の長手方向中心面M−M(図7参照)に対して平行に位置しており、ばね体コイリングを容易にするようになっている。
【0050】
図6も同様に上側スピンドル部分16aと下側スピンドル部分16bの2部分からなる成形スピンドル16を示している。この構成は、図1〜図3および図9〜図11Kに示されているものと同じである。円弧状の曲げ面35を有する曲げ区域は、図3または図9および図10から明瞭に見て取れるように上方に丸くされている。ここで、図6の右側の表現は上側成形スピンドル部分16aの正面図(左側の表現を左側から見た図)を示している。
【0051】
図示された例は右巻きばねの製造を示す。図には示されていないが、本発明を使用する際には左巻きばねを製造することも言うまでもなく可能である。左巻きばねを製造するために必要なのは、成形スピンドル16および線材案内部5を新しい成形スピンドルと新しい線材案内部に置き換えるだけである。この場合、これらの要素の各々は、図示された表現が長手方向中心面M−Mに対して垂直に、かつ、線材案内路(案内溝27)の長手方向中心軸を通る平面に左右反対に写された配置で構成されている。
【0052】
図7および図8は、それぞれ2部分からなる成形スピンドル16の閉鎖機能を示している。
図7に従う実施形態では、上側スピンドル部分16aと下側スピンドル部分16bが回転軸36(図示されない機構もしくは駆動装置)を中心に互いに鋏状に旋回可能である。閉じた位置(図7の左側の表現)では、線材は閉じられた断面の線材案内路27内にあり、この成形スピンドル16が閉じた位置において線材は通過する際に成形スピンドル16に完全に包囲されている。
【0053】
この閉じた位置では上側スピンドル部分16aはその外側(図7で左側)で下方に突出した突起部37により、案内路27が形成されている下側スピンドル部分16bの外側の面31に被さっている。
【0054】
スピンドルユニット6は回転軸36を中心に鋏状に開くことによって、図7の左側に示された閉じた位置から、図7の右側に示されている開いた位置に移行する。このとき上側スピンドル部分16aの下方に突出する前側の突起部37と境界壁32との間に開口部46が形成され、この開口部46を通って線材10が外から案内溝27に導入され、または案内溝27から導出されることができる。
【0055】
突起部37および29は成形スピンドル16が閉じた位置で互いに外方に支え合っており、それにより前方に(つまり図7で左方向に)曲げる際の剛性を増すことができる。
最後に図8に、2部分からなる成形スピンドル16の別の実施形態が、再び左側は閉じた位置および右側は開いた位置示されている。
【0056】
ここでは開いた位置(図8の右側の表現)では上側スピンドル部分16aと下側スピンドル部分16bはもはや互いに接続されていない。反対に案内溝27に到達するための開口部46を作り出すために両スピンドル部分16aおよび16bは、相互の位置関係を変えずに互いに平行に遠ざかっている。これもやはり単純な機構(例えばベルクランク、開張部材、カム機構および電動機等で、いずれも図示されていない)により行うことができ、当業者にはこれに適した機構もしくは駆動装置はよく知られている。
【0057】
さらに、この実施形態において上側スピンドル部分16aは互いに接続された要素38(スピンドル部材1)および39(スピンドル部材2)から合成されている。そのため例えば丸くされた曲げ面35´´等は、成形スピンドル16の中間部材でも実現できる。
【0058】
成形スピンドル16を複数部分から構成する構造により、個々のスピンドル部材16a、16b、38もしくは39の製造が単純化され、スピンドル部分16a、16bまたはスピンドル部材38もしくは39を交換することによって、路33もしくは成形面28および35の形状の変化が可能になる。
【0059】
図7および図8に示す成形スピンドル16は、可動スピンドル部分を使用することにより、線材10、脚部またはばね体を把持および位置決めできる把持部材としても構成できるが、これはそのようなスピンドルユニットを利用する別の可能性として生じるものである。そのために成形スピンドル16は線材の供給方向sにも可動に構成され、案内溝27の深さTは線材の直径dよりやや小さく選択されて、両スピンドル部分16aおよび16bが閉じた位置でそれらの間に線材を固持することが達成される。
【0060】
案内路27の取付け方向、すなわち例えば上方(図4の例)または下方(図5および図6の例)は任意であり、応用もしくは所望されたばね形状に応じて個々に選択できる。
丸くされたスピンドル部分35もしくは35´もしくは35´´を有する上記の実施形態の他にも、多くの別の変化例が考えられる。例えば線材にとって全く障害とならないように、スピンドル16の端面を追加的に研磨すると好都合であることが分かった。この場合、端面はたいてい幾何学的に正確に定義されない相応の自由成形面として構成されてい
る。
【0061】
図9および図10は、図3に示す成形要素を前方に向けられた脚40を曲げる状態において2つの異なる視点から示している。すなわち図9は斜め前方から見た斜視図であり、図10はこの配置構成を斜め後方から見た斜視図である。
【0062】
この場合、線材10は案内溝27を通り、成形ツール15が前方に動くことによって成形ツール15に設けられたくりぬき部15を介して突起部29で折り曲げられる。
案内溝27の端部において案内溝27から外方の曲げ方向への移行は、突起部29に設けられた丸み42によって助長される。
【0063】
最後に図11A〜図11Kに、屈曲された脚44を持つばね43の製造における種々の段階を種々異なる成形要素の原理的な斜視図で示す。それぞれ左右に並べて示した図面は同じ作業ステップを異なる斜視図で示しており、さらに左側の表現では個々のツールの運動順序が矢印でも示されている。
【0064】
図11Aおよび図11Bは、線材10が下側スピンドル部分16bの線材案内部5および案内溝を通って成形スピンドル16を介して搬出された状態を示している。成形ツール15が成形スピンドル16の方向に、かつ、上から下方に動くこと(運動軸tおよびvに沿った運動)によって、線材10は成形スピンドル16の後方エッジで(すなわち下側スピンドル部分16bで)折り曲げられ、それによって最初の屈曲された脚44が作製される。
【0065】
続いて、成形ツール15が線材10から右方向に離れて線材10の後ろに回って下降し、下から再び線材10に当てられる。同時に線材10は少し前に送られ、成形スピンドル16が下降して少し後方にずらされて、丸くされた曲げ面35が線材10に当てられる(図11Cおよび11Dに従う位置)。
【0066】
次に成形ツール15が上昇し、かつ、線材送りが作動することにより、コイリングによってばね体47が作製される。個々の巻き条の間に間隔を生み出すためにピッチ装置8が線材10に対して垂直に動くことができる。この状態は図11Eおよび11Fに示されている。
【0067】
ばね体47が完成した後で成形ツール15は線材10から離れて線材10の後ろに回って下降し、後方からばね体47内に位置決めされる。このとき線材送りが作動し、次いで成形ツール15が下降することによって第2の脚が折り曲げられる。この曲げは新しく(開始時のように)成形スピンドル16の案内溝27内か、または突起部29で行うことができる(図11Gおよび11H参照)。
【0068】
最後に、図11Jおよび図11Kに示されているように、成形スピンドル16と成形ツール15が後退することによってばね43が解放される。線材10を送ることによって相応の脚長さが作製され、完成したばね43は対向カッター30が上昇し、カッター21が下降することによって切断される。
【0069】
続いて新しいばねの製造プロセスが再び開始できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材進入部(4)と、線材(10)を供給方向(s)に案内するための線材案内部(5)と、さらに線材案内部(5)の後段に設けられている、供給された線材(10)に対して直交するように上下方向(w)にも機枠(2)に対して直交する方向(x)にも移動可能なスピンドル(16)と、このスピンドル(16)の後段で線材供給方向(s)に対して平行に(t)、互いに、かつ、それぞれ線材供給方向(s)に対して直交する2つの方向(y、v)に移動可能な成形ツール(15)とが取り付けられている機枠(2)を有するばね製造機(1)において、
前記スピンドル(16)が線材案内路(27)を有しており、この線材案内路(27)はスピンドル(16)内にこのスピンドルの機枠(2)と反対に向けられた外側の側壁(31)から離間して形成されており、供給された線材(10)はスピンドル(16)を通って成形ツール(15)に移動可能であり、さらにスピンドル(16)の開口部(46)を介して線材案内路(27)に導入可能であることを特徴とするばね製造機(1)。
【請求項2】
前記線材案内路が案内溝(27)の形式で形成されていることを特徴とする請求項1に記載のばね製造機。
【請求項3】
案内溝(27)が少なくとも線材(10)の直径(d)に等しい溝深さ(T)を有していることを特徴とする請求項2に記載のばね製造機。
【請求項4】
案内溝(27)は機枠(2)と反対に向けられた側辺部で線材案内路(27)の長手方向中心面(M−M)に対して垂直に、かつ線材供給方向(s)に対して平行に(t)延びる平坦な境界壁(32)を介してスピンドル(16)の外側の側壁(31)と接続されていることを特徴とする請求項2または3に記載のばね製造機。
【請求項5】
壁(32)は線材供給方向(s)に対して垂直な方向で線材の直径(d)より大きい幅(B)を有することを特徴とする請求項4に記載のばね製造機。
【請求項6】
線材(10)を線材案内路(27)に導入するための開口部(46)は境界壁(32)の直ぐ横に延びていて、線材供給方向(s)でスピンドル(16)の全長(L)を越えて延びていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のばね製造機。
【請求項7】
線材(10)を線材案内路(27)に導入するための開口部(46)は、平坦な境界壁(32)に対して垂直な方向で少なくとも線材の直径(d)に等しい開口幅(h)を有することを特徴とする請求項6に記載のばね製造機。
【請求項8】
スピンドル(16)は2部分から構成され、上側スピンドル部分(16a)と下側スピンドル部分(16b)とを有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のばね製造機。
【請求項9】
両スピンドル部分(16a、16b)は、線材(10)を線材案内路(27)に導入するための開口部(46)を作り出すために、両スピンドル部分の一方のスピンドル部分(16b)に形成されて両スピンドル部分(16a、16b)の間の分離面に向かって開いている線材案内路(27)が他方のスピンドル部分(16a)によって完全に覆われて閉鎖されている閉じた位置から、線材案内路(27)が開かれていて線材(10)を両スピンドル部分(16a、16b)の間の線材案内路(27)に導入するための開口部(46)が作り出される開いた位置にもたらすことができることを特徴とする請求項8に記載のばね製造機。
【請求項10】
両スピンドル部分(16a、16b)は共通のヒンジ(36)を中心にして互いに旋回可能であり、その際に鋏状に開くことができることを特徴とする請求項9に記載のばね製造機
【請求項11】
両スピンドル部分(16a、16b)は開いた位置を取るために、それらの位置関係を維持したまま互いに離れる方向に移動可能であることを特徴とする請求項9に記載のばね製造機。
【請求項12】
線材案内路(27)が形成されているスピンドル部分(16b)はスピンドル(16)の閉じた位置で、このスピンドル部分(16b)の外側が他方のスピンドル部分(16b)から突出している突起部(37)によって被され、この突起部(37)は閉じた位置では線材案内路(27)を有するスピンドル部分(16b)の外側の境界面(31)に当接して線材案内路(27)を覆っていることを特徴とする請求項8乃至11のいずれか1項に記載のばね製造機。
【請求項13】
供給された線材(10)を当てて曲げるための円弧状の曲げ面(35;35´;35´´)がスピンドル(16)に追加的に形成されており、曲げ面(35;35´;35´´)の曲率軸(A)は線材(10)の供給方向(s)に対して垂直であることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載のばね製造機。
【請求項14】
曲げ面(35;35´;35´´)は線材案内路(27)の長手方向中心面(M−M)に対して垂直の方向でずらしてスピンドル(16)に設けられていることを特徴とする請求項13に記載のばね製造機。
【請求項15】
曲げ面(35;35´´)の曲率軸(A)は線材案内路(27)の長手方向中心面(M−M)に対して垂直に位置していることを特徴とする請求項14に記載のばね製造機。
【請求項16】
曲げ面(35´´)の曲率軸(A)は線材案内路(27)の長手方向中心面(M−M)に対して平行に位置していることを特徴とする請求項14に記載のばね製造機。
【請求項17】
案内溝(27)の深さ(T)は線材(10)の直径(d)より小さく、スピンドル(16)はなおも線材(10)の供給方向(s)に移動可能であることを特徴とする請求項9乃至12のいずれか1項、または請求項9乃至12のいずれか1項に基づいている限りで請求項13乃至16のいずれか1項に記載のばね製造機。
【請求項18】
請求項1の前提部に従うばね製造機(1)に使用するための、請求項1乃至17のいずれか1項に記載の特徴を有するスピンドル(16)。
【請求項1】
線材進入部(4)と、線材(10)を供給方向(s)に案内するための線材案内部(5)と、さらに線材案内部(5)の後段に設けられている、供給された線材(10)に対して直交するように上下方向(w)にも機枠(2)に対して直交する方向(x)にも移動可能なスピンドル(16)と、このスピンドル(16)の後段で線材供給方向(s)に対して平行に(t)、互いに、かつ、それぞれ線材供給方向(s)に対して直交する2つの方向(y、v)に移動可能な成形ツール(15)とが取り付けられている機枠(2)を有するばね製造機(1)において、
前記スピンドル(16)が線材案内路(27)を有しており、この線材案内路(27)はスピンドル(16)内にこのスピンドルの機枠(2)と反対に向けられた外側の側壁(31)から離間して形成されており、供給された線材(10)はスピンドル(16)を通って成形ツール(15)に移動可能であり、さらにスピンドル(16)の開口部(46)を介して線材案内路(27)に導入可能であることを特徴とするばね製造機(1)。
【請求項2】
前記線材案内路が案内溝(27)の形式で形成されていることを特徴とする請求項1に記載のばね製造機。
【請求項3】
案内溝(27)が少なくとも線材(10)の直径(d)に等しい溝深さ(T)を有していることを特徴とする請求項2に記載のばね製造機。
【請求項4】
案内溝(27)は機枠(2)と反対に向けられた側辺部で線材案内路(27)の長手方向中心面(M−M)に対して垂直に、かつ線材供給方向(s)に対して平行に(t)延びる平坦な境界壁(32)を介してスピンドル(16)の外側の側壁(31)と接続されていることを特徴とする請求項2または3に記載のばね製造機。
【請求項5】
壁(32)は線材供給方向(s)に対して垂直な方向で線材の直径(d)より大きい幅(B)を有することを特徴とする請求項4に記載のばね製造機。
【請求項6】
線材(10)を線材案内路(27)に導入するための開口部(46)は境界壁(32)の直ぐ横に延びていて、線材供給方向(s)でスピンドル(16)の全長(L)を越えて延びていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のばね製造機。
【請求項7】
線材(10)を線材案内路(27)に導入するための開口部(46)は、平坦な境界壁(32)に対して垂直な方向で少なくとも線材の直径(d)に等しい開口幅(h)を有することを特徴とする請求項6に記載のばね製造機。
【請求項8】
スピンドル(16)は2部分から構成され、上側スピンドル部分(16a)と下側スピンドル部分(16b)とを有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のばね製造機。
【請求項9】
両スピンドル部分(16a、16b)は、線材(10)を線材案内路(27)に導入するための開口部(46)を作り出すために、両スピンドル部分の一方のスピンドル部分(16b)に形成されて両スピンドル部分(16a、16b)の間の分離面に向かって開いている線材案内路(27)が他方のスピンドル部分(16a)によって完全に覆われて閉鎖されている閉じた位置から、線材案内路(27)が開かれていて線材(10)を両スピンドル部分(16a、16b)の間の線材案内路(27)に導入するための開口部(46)が作り出される開いた位置にもたらすことができることを特徴とする請求項8に記載のばね製造機。
【請求項10】
両スピンドル部分(16a、16b)は共通のヒンジ(36)を中心にして互いに旋回可能であり、その際に鋏状に開くことができることを特徴とする請求項9に記載のばね製造機
【請求項11】
両スピンドル部分(16a、16b)は開いた位置を取るために、それらの位置関係を維持したまま互いに離れる方向に移動可能であることを特徴とする請求項9に記載のばね製造機。
【請求項12】
線材案内路(27)が形成されているスピンドル部分(16b)はスピンドル(16)の閉じた位置で、このスピンドル部分(16b)の外側が他方のスピンドル部分(16b)から突出している突起部(37)によって被され、この突起部(37)は閉じた位置では線材案内路(27)を有するスピンドル部分(16b)の外側の境界面(31)に当接して線材案内路(27)を覆っていることを特徴とする請求項8乃至11のいずれか1項に記載のばね製造機。
【請求項13】
供給された線材(10)を当てて曲げるための円弧状の曲げ面(35;35´;35´´)がスピンドル(16)に追加的に形成されており、曲げ面(35;35´;35´´)の曲率軸(A)は線材(10)の供給方向(s)に対して垂直であることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載のばね製造機。
【請求項14】
曲げ面(35;35´;35´´)は線材案内路(27)の長手方向中心面(M−M)に対して垂直の方向でずらしてスピンドル(16)に設けられていることを特徴とする請求項13に記載のばね製造機。
【請求項15】
曲げ面(35;35´´)の曲率軸(A)は線材案内路(27)の長手方向中心面(M−M)に対して垂直に位置していることを特徴とする請求項14に記載のばね製造機。
【請求項16】
曲げ面(35´´)の曲率軸(A)は線材案内路(27)の長手方向中心面(M−M)に対して平行に位置していることを特徴とする請求項14に記載のばね製造機。
【請求項17】
案内溝(27)の深さ(T)は線材(10)の直径(d)より小さく、スピンドル(16)はなおも線材(10)の供給方向(s)に移動可能であることを特徴とする請求項9乃至12のいずれか1項、または請求項9乃至12のいずれか1項に基づいている限りで請求項13乃至16のいずれか1項に記載のばね製造機。
【請求項18】
請求項1の前提部に従うばね製造機(1)に使用するための、請求項1乃至17のいずれか1項に記載の特徴を有するスピンドル(16)。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図11E】
【図11F】
【図11G】
【図11H】
【図11J】
【図11K】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図11E】
【図11F】
【図11G】
【図11H】
【図11J】
【図11K】
【公開番号】特開2010−240738(P2010−240738A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39886(P2010−39886)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(500146945)ヴァフィオス アクチェンゲゼルシャフト (11)
【氏名又は名称原語表記】WAFIOS Aktiengesellschaft
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(500146945)ヴァフィオス アクチェンゲゼルシャフト (11)
【氏名又は名称原語表記】WAFIOS Aktiengesellschaft
【Fターム(参考)】
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