説明

ふらつき判定装置

【課題】周辺車両の検出範囲を狭めることなく、周辺車両のふらつき判定の精度を高めることが可能なふらつき判定装置を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係るふらつき判定装置70は、第1の検出手段20によって検出された周辺車両の第1の位置情報(距離、横位置)を求める第1の演算手段20と、第1の検出手段20と異なる検出原理を用いる第2の検出手段30によって検出された周辺車両の第2の位置情報(距離、横位置)を求める第2の演算手段30と、第1及び第2の位置情報を融合して周辺車両の融合位置情報(距離、横位置)を求める融合演算手段74と、周辺車両の存在位置に基づいて、第1及び第2の位置情報、並びに融合位置情報のうちの何れかを選択する選択手段75と、選択された位置情報(距離、横位置)の時間的変動に基づいて周辺車両のふらつき判定を行う判定手段76とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周辺車両のふらつき判定を行うふらつき判定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、先行車両のふらつき(不安定度)判定を行うふらつき判定装置(車両走行状態検出装置)を備え、この判定結果に応じて運転支援を行う運転支援装置(車両走行制御装置)が開示されている。ふらつき判定装置では、CCDカメラによって自車両前方の画像を撮像して画像処理を行うことによって、先行車両の水平方向の横位置を検出する。そして、このふらつき判定装置では、先行車両の横位置を時間的に追ってその変化パターンを検出し、この変化パターンから先行車両のふらつきを判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−220348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、先行車両の横位置の変化のみによるふらつき判定では、判定精度が低い。この点に関し、横位置の変化に加えて、先行車両の前後方向の縦位置の変化、すなわち、自車両と先行車両との距離の変化に基づいてふらつき判定を行うことによって、ふらつき判定の精度を高めることが考えられる。
【0005】
しかしながら、カメラによる検出では、横位置の検出精度は比較的高いものの、先行車両との距離の検出精度は低い。この点に関し、カメラに代えてミリ波レーダを用いることが考えられる。ところが、ミリ波レーダによる検出では、先行車両との距離の検出精度は比較的高いものの、横方向の検出精度は低い。そのため、先行車両のふらつき検出の精度を高めることが困難であった。
【0006】
この点に関し、本願発明者らは、センサフュージョンという手法を考案している。センサフュージョンとは、検出原理の異なる2つのセンサ、例えばミリ波レーダとカメラとを用い、ミリ波レーダで検出した高精度の先行車両との距離とカメラで検出した高精度の先行車両の横位置とを融合(フュージョン)する手法である。これにより、先行車両との距離と先行車両の横位置とを共に高精度に検出することが可能となる。
【0007】
しかしながら、ミリ波レーダによる検出では、水平方向の分解能とアンテナの大きさの制約から、一般に水平方向の検出範囲が狭く、カメラによる検出では、画像精度や解像度、測距方式の関係から、一般に検出距離が短いので、センサフュージョンによる検出が可能な範囲は狭かった。
【0008】
そこで、本発明は、周辺車両の検出範囲を狭めることなく、周辺車両のふらつき判定の精度を高めることが可能なふらつき判定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のふらつき判定装置は、第1の検出手段によって検出された周辺車両の第1の位置情報として周辺車両との距離及び周辺車両の横方向位置を求める第1の演算手段と、第1の検出手段と異なる検出原理を用いる第2の検出手段によって検出された周辺車両の第2の位置情報として周辺車両との距離及び周辺車両の横方向位置を求める第2の演算手段と、第1及び第2の位置情報を融合することによって周辺車両の融合位置情報として周辺車両との距離及び周辺車両の横方向位置を求める融合演算手段と、周辺車両の存在位置に基づいて、第1及び第2の位置情報、並びに融合位置情報のうちの何れかの位置情報を選択する選択手段と、選択手段によって選択された位置情報における周辺車両との距離及び周辺車両の横方向位置それぞれの時間的変動に基づいて、周辺車両のふらつき判定を行う判定手段と、を備える。
【0010】
このふらつき判定装置によれば、融合演算手段によって、第1の検出手段によって検出された第1の位置情報と第2の検出手段によって検出された第2の位置情報とを融合することによって、検出精度が高い周辺車両との距離と検出精度が高い周辺車両の横方向位置とを有する融合位置情報を求めることができる。したがって、判定手段によって、この融合位置情報における周辺車両との距離の時間的変動及び周辺車両の横方向位置の時間的変動に基づいて周辺車両のふらつき判定を行うことにより、周辺車両のふらつき判定の精度を高めることができる。
【0011】
更に、このふらつき判定装置によれば、周辺車両の存在位置が第1及び第2の検出手段のうちの一方の検出手段の検出不可能領域内である場合には、すなわち、融合位置情報を求めることができない場合には、選択手段によって、他方の検出手段の位置情報を選択することができる。したがって、融合位置情報を求めることができない場合であっても、判定手段によって、第1及び第2の検出手段のうちの何れかの位置情報における周辺車両との距離の時間的変動及び周辺車両の横方向位置の時間的変動に基づいて周辺車両のふらつき判定を行うことができる。故に、このふらつき判定装置によれば、周辺車両の検出範囲を狭めることがない。
【0012】
上記した前記融合演算手段は、前記第1の検出手段による距離の検出精度±ZX1及び横方向位置の検出精度±ZY1、前記第2の検出手段による距離の検出精度±ZX2及び横方向位置の検出精度±ZY2に基づいて、前記第1の位置情報における前記周辺車両との距離X及び前記周辺車両の横方向位置Y、前記第2の位置情報における前記周辺車両との距離X及び前記周辺車両の横方向位置Yである場合に、下式によって融合位置情報における前記周辺車両との距離X及び前記周辺車両の横方向位置Yを求めることが好ましい。
=(ZX2×X+ZX1×X)/(ZX1+ZX2
=(ZY2×Y+ZY1×Y)/(ZY1+ZY2
【0013】
これによれば、上記したように、検出精度が高い周辺車両との距離と検出精度が高い周辺車両の横方向位置とを有する融合位置情報を求めることができる。
【0014】
上記した第1の検出手段はレーダであり、上記した第2の検出手段はカメラであることが好ましい。
【0015】
レーダによる検出では、周辺車両との距離の検出精度が比較的高く、カメラによる検出では、横方向位置の検出精度が比較的高い。したがって、これによれば、融合演算手段によって、レーダによる検出精度が高い周辺車両との距離とカメラによる検出精度が高い周辺車両の横方向位置とを融合した融合位置情報を求めることができる。
【0016】
また、上記した第1の検出手段はミリ波レーダであり、上記した第2の検出手段はレーザレーダであってもよい。
【0017】
レーザレーダでは、ミリ波レーダと比較して波長が短いので、横方向位置の検出精度が比較的高い。したがって、これによれば、融合演算手段によって、ミリ波レーダによる検出精度が高い周辺車両との距離とレーザレーダによる検出精度が高い周辺車両の横方向位置とを融合した融合位置情報を求めることができる。
【0018】
上記した選択手段は、周辺車両が第1及び第2の検出手段の検出可能範囲内に存在する場合には融合位置情報を選択し、周辺車両が第1の検出手段の検出可能範囲外に存在する場合には第2の位置情報を選択し、周辺車両が第2の検出手段の検出可能範囲外に存在する場合には第1の位置情報を選択することが好ましい。
【0019】
これによれば、上記したように、融合位置情報を求めることができない場合であっても、判定手段によって、第1及び第2の検出手段のうちの何れかの位置情報における周辺車両との距離の時間的変動及び周辺車両の横方向位置の時間的変動に基づいて周辺車両のふらつき判定を行うことができるので、周辺車両の検出範囲を狭めることがない。
【0020】
上記したふらつき判定装置は、選択手段の選択結果、第1及び第2の検出手段の検出精度に基づいて、判定手段によるふらつき判定の信頼度を求める信頼度算出手段を更に備えることが好ましい。
【0021】
上記したように、前記第1及び第2の検出手段によって検出された第1及び第2の位置情報、並びに融合位置情報の検出精度が異なるので、選択手段によってこれらの何れを選択するかによって判定手段による周辺車両のふらつき判定の精度が異なる。そこで、選択手段の選択結果及び第1及び第2の検出手段の検出精度に基づいて、判定手段によるふらつき判定の信頼度を求めることにより、判定手段によるふらつき判定に加えてその信頼度をも考慮した適切な運転支援を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、周辺車両の検出範囲を狭めることなく、周辺車両のふらつき判定の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態に係る運転支援装置及び本発明の実施形態に係るふらつき判定装置を示す図である。
【図2】図1に示すミリ波レーダ及びステレオカメラの検出範囲を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係るふらつき判定装置によるふらつき判定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0025】
図1は、本実施形態に係る運転支援装置を示す図である。図1に示す運転支援装置1は、車両センサ10と、ミリ波レーダ(第1の検出手段、第1の演算手段)20と、ステレオカメラ(第2の検出手段、第2の演算手段)30と、電子制御ユニット(以下、ECU:Electronic Control Unitという。)40と、各種アクチュエータ50と、報知部60とを備える。
【0026】
車両センサ10は、自車両の速度、加速度(減速度)、ヨーレート、ステアリングホイール操舵角、ブレーキペダル踏量、アクセルペダル踏量などを検出する。車両センサ10は、検出した各信号をECU40へ送信する。
【0027】
ミリ波レーダ20は、ミリ波帯の電波を利用して物体を検出するためのレーダである。ミリ波レーダ20は、自車両の前側の中央に取り付けられる。ミリ波レーダ20では、ミリ波帯の電波を自車両の前方へ向けて送信し、前方車両などの物体表面で反射された電波を受信する。この信号に基づいて、ミリ波レーダ20は、第1の演算手段として機能し、先行車両の有無や、先行車両と自車両との距離及び相対速度、並びに自車両に対する先行車両の横位置などの位置情報を求める。そして、ミリ波レーダ20は、検出された先行車両をレーダ物標と設定し、求めた位置情報をレーダ物標に設定し(レーダ物標設定処理)、ECU40へ送信する。
【0028】
ステレオカメラ30は、2台のCCDカメラからなり、2台のCCDカメラが水平方向に所定間隔離間されて配置されている。ステレオカメラ30も、自車両の前側の中央に取り付けられる。ステレオカメラ30は、第2の演算手段として機能し、2つのCCDカメラで撮像した左右のステレオ画像のデータに基づいて、先行車両の有無や、先行車両と自車両との距離及び相対速度、並びに自車両に対する先行車両の横位置などの位置情報を求める。そして、ステレオカメラ30は、検出された先行車両をステレオ画像物標と設定し、求めた位置情報をステレオ画像物標に設定し(ステレオ画像物標設定処理)、ECU40へ送信する。
【0029】
ECU40は、演算を行うCPU(Central Processing Unit)、CPUに各処理を実行させるためのプログラム等を記憶するROM(ReadOnly Memory)、演算結果などの各種データを記憶するRAM(Random Access Memory)などから構成されている。このような構成により、ECU40には、ふらつき判定ECU(ふらつき判定装置)70と運転支援ECU80とが構築されている。なお、本実施形態では、ふらつき判定ECU70及び運転支援ECU80が一つのECU40で構成される一例を示すが、ふらつき判定ECU70と運転支援ECU80とは別々のECUで構成されてもよい。
【0030】
ふらつき判定ECU70は、ミリ波レーダ20による検出結果、ステレオカメラ30による検出結果、及び、これらの検出結果のセンサフュージョンに基づいて、前方車両のふらつき判定を行う。また、ふらつき判定ECU70は、ミリ波レーダ20及びステレオカメラ30の検出精度に基づいて、ふらつき判定の信頼度を求める。
【0031】
運転支援ECU80は、車両センサ10によって検出された各種情報に基づいて、スロットルアクチュエータやブレーキアクチュエータなどの各種アクチュエータ50を制御して、ACC(Adaptive Cruise Control)走行制御を行うものである。又は、運転支援ECU80は、ディスプレイによる画像表示報知や、スピーカ又はブザー等による音声報知などの報知部60を制御して、ドライバに安全な運転操作を誘導するものである。運転支援ECU80は、ふらつき判定ECU70のふらつき判定結果及びその信頼度に基づいて、例えば、各種アクチュエータ50を制御して、ACC走行制御において車間距離を空ける制御を行ったり、ACC走行制御のキャンセルを行ったりする。又は、運転支援ECU80は、報知部60を制御して、ドライバに安全な運転操作を誘導する。
【0032】
次に、本発明の実施形態に係るふらつき判定ECU(ふらつき判定装置)70について説明する。ふらつき判定ECU70は、照合部73と、フュージョン演算部(融合演算部)74と、選択部75と、判定部76と、信頼度算出部77とを備える。
【0033】
例えば、ミリ波レーダ(第1の演算手段)20は、ミリ波の送信から受信までの時間によって自車両と先行車両との距離を求める。また、ミリ波レーダ20は、ドップラ効果を利用して先行車両との相対速度を求める。また、ミリ波レーダ20は、反射してきたミリ波の中で最も強く反射してきたミリ波の方向を検出し、その方向から自車両の進行方向と先行車両の方向とのなす角度を求め、その角度から横位置を求める。そして、ミリ波レーダ20は、これらの距離、相対速度、横位置をレーダ物標に設定する。
【0034】
なお、ミリ波レーダ20による検出では、距離及び相対速度の精度が高く、角度(すなわち横位置)の精度が低い。ミリ波レーダ20では、送信したミリ波が反射して戻るまでの時間により距離を演算するので、距離の精度が高い。また、ミリ波レーダ20では、ドップラ効果を利用して相対速度を演算するので、相対速度の精度が高い。しかし、ミリ波は検出対象の物体の幅方向のいずれの箇所で最も強く反射してきたかが判らないので、幅方向の位置(横位置)が変動し、角度の精度は低くなる。
【0035】
例えば、ステレオカメラ(第2の演算手段)30は、撮像した画像から画像認識(エッジ抽出やパターン認識処理など)によって先行車両を抽出する。また、ステレオカメラ30は、左右のステレオ画像における物体の見え方のずれを利用して三角測量方式により自車両と先行車両との距離を求める。また、ステレオカメラ30は、その算出した距離の時間変化から相対速度を求める。また、ステレオカメラ30は、検出した物体の幅方向の両端部を検出し、自車の進行方向と2つの端部の方向とのなす角度を求め、その角度から横位置を求める。そして、ステレオカメラ30は、これらの距離、相対速度、横位置をステレオ画像物標に設定する。
【0036】
なお、ステレオカメラ30による検出では、距離及び相対速度の精度が低く、角度(すなわち横位置)の精度が高い。左右の画像データから検出対象の物体の幅方向の両端部を高精度に検出できるので、角度(すなわち横位置)の精度は高くなる。しかし、例えば数10cm程度離間した左右のCCDカメラによる画像データを利用しているので、距離を計算する際に非常に鋭角な三角測量となり、距離及び相対速度の精度は低くなる。
【0037】
照合部73は、一定時間毎に、後述する選択部75によって選択された前回選択物標と今回レーダ物標とが同一の先行車両を検出したものであるか否かの照合を行う。例えば、照合部73は、前回選択物標の位置(距離、横位置)及び相対速度に基づいて、前回選択物標の位置(距離、横位置)と今回レーダ物標の位置(距離、横位置)との差分がしきい値以内であるか否か、及び、前回選択物標の相対速度と今回レーダ物標の相対速度との差分がしきい値以内であるか否か、を判定する。この判定において全ての閾値内に入っている場合に今回レーダ物標が前回選択物標と類似性があると判定し、1つでも閾値内に入っていない場合には類似性がないと判定する。
【0038】
同様に、照合部73は、一定時間毎に、前回選択物標と今回ステレオ画像物標とが同一の先行車両を検出したものであるか否かの照合を行う。例えば、照合部73は、前回選択物標の位置(距離、横位置)及び相対速度に基づいて、前回選択物標の位置(距離、横位置)と今回ステレオ画像物標の位置(距離、横位置)との差分がしきい値以内であるか否か、及び、前回選択物標の相対速度と今回ステレオ画像物標の相対速度との差分がしきい値以内であるか否か、を判定する。この判定において全ての閾値内に入っている場合に今回ステレオ画像物標が前回選択物標と類似性があると判定し、1つでも閾値内に入っていない場合には類似性がないと判定する。
【0039】
更に、照合部73は、前回選択物標に対して類似性のある今回レーダ物標と今回ステレオ画像物標とがそれぞれ存在する場合、その今回レーダ物標と今回ステレオ画像物標とが同一の先行車両を検出したものであるか否かの照合を行う。例えば、照合部73は、今回レーダ物標の位置(距離、横位置)と今回ステレオ画像物標の位置(距離、横位置)との差分がしきい値以内であるか否か、及び、今回レーダ物標の相対速度と今回ステレオ画像物標の相対速度との差分がしきい値以内であるか否か、を判定する。この判定において全ての閾値内に入っている場合に今回レーダ物標と今回ステレオ画像物標とが類似性があると判定し、1つでも閾値内に入っていない場合に類似性がないと判定する。
【0040】
フュージョン演算部74は、照合部73による全ての照合において類似性がある場合に、ミリ波レーダ20によって求められた位置情報とステレオカメラ30によって求められた位置情報とを融合(フュージョン)し、先行車両の有無や、先行車両と自車両との距離及び相対速度、並びに自車両に対する先行車両の横位置などのフュージョン位置情報(融合位置情報)を求める。そして、フュージョン演算部74は、ミリ波レーダ20及びステレオカメラ30によって検出された先行車両をフュージョン物標と設定し、求めたフュージョン位置情報をフュージョン物標に設定する(フュージョン物標設定処理)。
【0041】
例えば、フュージョン演算部74は、ミリ波レーダ20による距離の検出精度±ZX1及び横位置の検出精度±ZY1、ステレオカメラ30による距離の検出精度±ZX2及び横位置の検出精度±ZY2に基づいて、ミリ波レーダ20によって求めた周辺車両との距離X及び周辺車両の横位置Y、ステレオカメラ30によって求めた周辺車両との距離X及び周辺車両の横位置Yである場合に、下式によってフュージョン位置情報における周辺車両との距離X及び周辺車両の横位置Yを求める。
=(ZX2×X+ZX1×X)/(ZX1+ZX2
=(ZY2×Y+ZY1×Y)/(ZY1+ZY2
【0042】
例えば、ミリ波レーダ20による距離Xの検出精度が±ZX1=±10cm、横位置Yの検出精度が±ZY1=±100cmであり、ステレオカメラ30による距離Xの検出精度が±ZX2=±50cm、横位置Yの検出精度が±ZY2=±10cmである場合、フュージョン位置情報における距離X及び横位置Yは、以下のように求められることとなる。
=(5×X+X)/6
=(Y+10×Y)/11
【0043】
このようにして、フュージョン演算部74は、先行車両と自車両との距離及び相対速度、並びに自車両に対する先行車両の横位置が何れも高精度であるフュージョン位置情報を求めることとなる。
【0044】
選択部75は、先行車両の存在位置に基づいて、レーダ物標(第1の位置情報)、ステレオ画像物標(第2の位置情報)、及び、フュージョン物標(フュージョン位置情報)のうちの何れかの物標(位置情報)を選択する。
【0045】
図2に、ミリ波レーダ20及びステレオカメラ30の検出範囲を示す。ミリ波レーダ20による検出では、検出可能な距離は比較的長いものの、検出可能な横方向範囲が比較的狭い。一方、ステレオカメラ30による検出では、検出可能な横方向範囲は比較的広いものの、検出可能な距離が比較的短い。
【0046】
そこで、選択部75は、先行車両がステレオカメラ30の検出限界距離を越える領域R1に存在する場合にはレーダ物標を選択し、先行車両がミリ波レーダ20の検出限界幅を超える領域R2に存在する場合にはステレオ画像物標を選択する。そして、選択部75は、先行車両がステレオカメラ30の検出限界距離以内、かつ、ミリ波レーダ20の検出限界幅以内の領域R3に存在する場合にはフュージョン物標を選択する。
【0047】
判定部76は、選択部75によって選択された物標における位置情報(距離、横位置)に基づいて、先行車両との距離及び先行車両の横位置それぞれについてふらつき度の判定を行う。ふらつき度としては、例えば、ふらつきの振幅やふらつきの周期である。
【0048】
信頼度算出部77は、選択部75によって選択された物標を検出したセンサの検出精度、すなわちミリ波レーダ20及びステレオカメラ30の検出精度に基づいて、判定部76によるふらつき度判定の信頼度を求める。
【0049】
例えば、信頼度算出部77は、選択部75によってレーダ物標が選択された場合には、ミリ波レーダ20の検出精度に基づいて、先行車両との距離のふらつき度判定の信頼度を「高」とし、先行車両の横位置のふらつき度判定の信頼度を「低」とする。一方、選択部75によってステレオ画像物標が選択された場合には、信頼度算出部77は、ステレオカメラ30の検出精度に基づいて、先行車両との距離のふらつき度判定の信頼度を「低」とし、先行車両の横位置のふらつき度判定の信頼度を「高」とする。そして、選択部75によってフュージョン物標が選択された場合には、信頼度算出部77は、ミリ波レーダ20及びステレオカメラ30の検出精度に基づいて、先行車両との距離のふらつき度判定及び先行車両の横位置についてのふらつき度判定の信頼度を共に「高+α」とする。
【0050】
次に、本実施形態のふらつき判定ECU70の動作について説明する。図3は、本実施形態のふらつき判定ECU70によるふらつき判定処理を示すフローチャートである。
【0051】
ミリ波レーダ20、ステレオカメラ30、照合部73、及び、フュージョン演算部74によって、センサフュージョンを行う。
【0052】
具体的には、ミリ波レーダ(第1の演算手段)20によって、先行車両の有無や、先行車両と自車両との距離及び相対速度、並びに自車両に対する先行車両の横位置などの位置情報を求め、レーダ物標に設定する(レーダ物標設定処理)(S01)。また、ステレオカメラ(第2の演算手段)30によって、先行車両の有無や、先行車両と自車両との距離及び相対速度、並びに自車両に対する先行車両の横位置などの位置情報を求め、ステレオ画像物標に設定する(ステレオ画像物標設定処理)(S02)。
【0053】
次に、照合部73によって、前回選択物標と今回レーダ物標とが同一の先行車両を検出したものであるか否か、及び、前回選択物標と今回ステレオ画像物標とが同一の先行車両を検出したものであるか否か、並びに、今回レーダ物標と今回ステレオ画像物標とが同一の先行車両を検出したものであるか否か、の照合を行う(S03)。そして、全ての照合において類似性がある場合に、フュージョン演算部74によって、ミリ波レーダ20によって求められた位置情報とステレオカメラ30によって求められた位置情報とを融合し、先行車両の有無や、先行車両と自車両との距離及び相対速度、並びに自車両に対する先行車両の横位置などのフュージョン位置情報を求め、フュージョン物標に設定する(フュージョン物標設定処理)(S04)。
【0054】
次に、選択部75によって、先行車両の存在位置に基づいて、レーダ物標(第1の位置情報)、ステレオ画像物標(第2の位置情報)、及び、フュージョン物標(フュジョン位置情報)のうちの何れかの物標(位置情報)を選択する。具体的には、選択部75によって、先行車両がミリ波レーダ20のみで検出されたか否か、すなわち、先行車両の位置情報がミリ波レーダ20のみで求められたか否かの判定を行い(S05)、先行車両の位置情報がミリ波レーダ20のみで求められた場合に、先行車両はステレオカメラ30の検出限界距離を越える領域R1に存在すると判断し、レーダ物標(第1の位置情報)を選択する。すると、判定部76によって、レーダ物標における位置情報(距離、横位置)に基づいて、先行車両との距離及び先行車両の横位置それぞれについてふらつき度の判定を行う(S06)。また、信頼度算出部77によって、ミリ波レーダ20の検出精度に基づいて、判定部76によるふらつき度判定の信頼度を求める(ミリ波レーダ単独検出用ふらつき判定)(S07)。
【0055】
一方、ステップ05において、先行車両の位置情報がミリ波レーダ20のみで求められていない場合には、選択部75によって、先行車両がステレオカメラ30のみで検出されたか否か、すなわち、先行車両の位置情報がステレオカメラ30のみで求められたか否かの判定を行い(S08)、先行車両の位置情報がステレオカメラ30のみで求められた場合に、先行車両はミリ波レーダ20の検出限界幅を超える領域R2に存在すると判断し、ステレオ画像物標(第2の位置情報)を選択する。すると、判定部76によって、ステレオ画像物標における位置情報(距離、横位置)に基づいて、先行車両との距離及び先行車両の横位置それぞれについてふらつき度の判定を行う(S09)。また、信頼度算出部77によって、ステレオカメラ30の検出精度に基づいて、判定部76によるふらつき度判定の信頼度を求める(ステレオカメラ単独検出用ふらつき判定)(S10)。
【0056】
一方、ステップ08において、先行車両の位置情報がステレオカメラ30のみで求められていない場合、すなわち、先行車両の位置情報がミリ波レーダ20及びステレオカメラ30で求められた場合、選択部75によって、先行車両はステレオカメラ30の検出限界距離以内、かつ、ミリ波レーダ20の検出限界幅以内の領域R3に存在すると判断し、フュージョン物標(フュージョン位置情報)を選択する。すると、判定部76によって、フュージョン物標におけるフュージョン位置情報(距離、横位置)に基づいて、先行車両との距離及び先行車両の横位置それぞれについてふらつき度の判定を行う(S11)。また、信頼度算出部77によって、ミリ波レーダ20及びステレオカメラ30の検出精度に基づいて、判定部76によるふらつき度判定の信頼度を求める(ミリ波レーダ及びステレオカメラ検出用ふらつき判定)(S12)。
【0057】
なお、上述したように、図3に示す各処理は一定時間毎に繰り返されるので、2回目以降のフローよりふらつき判定が可能となる。
【0058】
その後、このふらつき判定結果及びその信頼度に基づいて、上述したように、運転支援ECU80による運転支援が行われることとなる。
【0059】
このように、本実施形態のふらつき判定ECU70によれば、フュージョン演算部74によって、ミリ波レーダ20によって検出された位置情報とステレオカメラ30によって検出された位置情報とを融合することによって、検出精度が高い先行車両との距離と検出精度が高い先行車両の横位置とを有するフュージョン位置情報を求めることができる。したがって、判定部76によって、このフュージョン位置情報における先行車両との距離の時間的変動及び先行車両の横位置の時間的変動に基づいて先行車両のふらつき判定を行うことにより、先行車両のふらつき判定の精度を高めることができる。
【0060】
更に、本実施形態のふらつき判定ECU70によれば、先行車両の存在位置がミリ波レーダ20及びステレオカメラ30のうちの一方のセンサの検出不可能領域内である場合には、すなわち、フュージョン位置情報を求めることができない場合には、選択部75によって、他方のセンサの位置情報を選択することができる。したがって、フュージョン位置情報を求めることができない場合であっても、判定部76によって、ミリ波レーダ20及びステレオカメラ30のうちの何れかの位置情報における先行車両との距離の時間的変動及び先行車両の横位置の時間的変動に基づいて先行車両のふらつき判定を行うことができる。故に、本実施形態のふらつき判定ECU70によれば、先行車両の検出範囲を狭めることがない。
【0061】
上述したように、ミリ波レーダ20及びステレオカメラ30によって検出された第1及び第2の位置情報、並びにフュージョン位置情報の検出精度が異なるので、選択部75によってこれらの何れを選択するかによって判定部76による周辺車両のふらつき判定の精度が異なる。そこで、選択部75の選択結果、ミリ波レーダ20及びステレオカメラ30の検出精度に基づいて、判定部76によるふらつき判定の信頼度を求めることにより、判定部76によるふらつき判定に加えてその信頼度をも考慮した適切な運転支援を行うことが可能となる。
【0062】
なお、本発明は上記した本実施形態に限定されることなく種々の変形が可能である。例えば、本実施形態では、先行車両のふらつき検出センサの組合せとして、ミリ波レーダとステレオカメラとを例示したが、ミリ波帯以外の電波センサ、レーザレーダ、単眼画像カメラなど様々なセンサの組合せが適用可能である。例えば、レーザレーダでは、ミリ波レーダと比較して波長が短いので、横方向位置の検出精度が比較的高く、横方向の検出範囲が比較的広いので、ミリ波レーダとレーザレーダとの組合せであっても、本実施形態と同様の利点を得ることができる。
【0063】
また、本実施形態では、先行車両のふらつき判定を例示したが、各種センサの搭載位置によって、後続車両などの周辺車両のふらつき判定を行うことができる。
【0064】
また、本実施形態では、距離や横位置の短期的な変動を用いてふらつき判定を行ったが、ドライバの意識低下に相関する様々な物理量を用いてふらつき判定が行われてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1…運転支援装置、10…車両センサ、20…ミリ波レーダ(第1の検出手段、第1の演算手段)、30…ステレオカメラ(第2の検出手段、第2の演算手段)、40…ECU、50…各種アクチュエータ、60…報知部、70…ふらつき判定ECU(ふらつき判定装置)、73…照合部、74…フュージョン演算部(融合演算手段)、75…選択部(選択手段)、76…判定部(判定手段)、77…信頼度算出部(信頼度算出手段)、80…運転支援ECU。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の検出手段によって検出された周辺車両の第1の位置情報として前記周辺車両との距離及び前記周辺車両の横方向位置を求める第1の演算手段と、
前記第1の検出手段と異なる検出原理を用いる第2の検出手段によって検出された前記周辺車両の第2の位置情報として前記周辺車両との距離及び前記周辺車両の横方向位置を求める第2の演算手段と、
前記第1及び第2の位置情報を融合することによって前記周辺車両の融合位置情報として前記周辺車両との距離及び前記周辺車両の横方向位置を求める融合演算手段と、
前記周辺車両の存在位置に基づいて、前記第1及び第2の位置情報、並びに前記融合位置情報のうちの何れかの位置情報を選択する選択手段と、
前記選択手段によって選択された位置情報における前記周辺車両との距離及び前記周辺車両の横方向位置それぞれの時間的変動に基づいて、前記周辺車両のふらつき判定を行う判定手段と、
を備える、ふらつき判定装置。
【請求項2】
前記融合演算手段は、前記第1の検出手段による距離の検出精度±ZX1及び横方向位置の検出精度±ZY1、前記第2の検出手段による距離の検出精度±ZX2及び横方向位置の検出精度±ZY2に基づいて、前記第1の位置情報における前記周辺車両との距離X及び前記周辺車両の横方向位置Y、前記第2の位置情報における前記周辺車両との距離X及び前記周辺車両の横方向位置Yである場合に、下式によって融合位置情報における前記周辺車両との距離X及び前記周辺車両の横方向位置Yを求める、
=(ZX2×X+ZX1×X)/(ZX1+ZX2
=(ZY2×Y+ZY1×Y)/(ZY1+ZY2
請求項1に記載のふらつき判定装置。
【請求項3】
前記第1の検出手段はレーダであり、
前記第2の検出手段はカメラである、
請求項1又は2に記載のふらつき判定装置。
【請求項4】
前記第1の検出手段はミリ波レーダであり、
前記第2の検出手段はレーザレーダである、
請求項1又は2に記載のふらつき判定装置。
【請求項5】
前記選択手段は、前記周辺車両が前記第1及び第2の検出手段の検出可能範囲内に存在する場合には前記融合位置情報を選択し、前記周辺車両が前記第1の検出手段の検出可能範囲外に存在する場合には前記第2の位置情報を選択し、前記周辺車両が前記第2の検出手段の検出可能範囲外に存在する場合には前記第1の位置情報を選択する、
請求項1に記載のふらつき判定装置。
【請求項6】
前記選択手段の選択結果、前記第1及び第2の検出手段の検出精度に基づいて、前記判定手段によるふらつき判定の信頼度を求める信頼度算出手段を更に備える、
請求項1又は2に記載のふらつき判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−164989(P2011−164989A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27910(P2010−27910)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】