説明

へちま石けんとその製造方法

【課題】たわし用のへちまの中に溶融石けんを充填し固化してなるへちま石けんとその製造方法に関し、使用時にへちまの切断面が露出せず、自然のへちまの繊維質の天然の外面のみが露出した均質なへちま石けんを効率的にかつ確実に充填製造可能なへちま石けんとその製造方法を実現する。
【解決手段】円柱状の繊維質へちまの輪切り方向カット部を上にして立て、立った状態の空洞中に上から溶融石けんを充填するため、空洞中に充填された溶融石けんが自重で繊維質部に迅速かつ確実に浸透する。その結果、短時間に効率的にへちま石けんを製造でき、かつ溶融石けんが繊維質の全体に確実に浸透した高品質の製品を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たわし用のへちまの中に溶融石けんを充填し固化してなるへちま石けんとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平11−228999によると、へちまと石鹸との効用が相俟って容易に身体を洗浄することができ、皮膚の強化と共に、浴室の装飾性もよいへちま収容石鹸の製造方法が提案されている。その詳細は、へちまの果実の外皮や果肉を腐敗させて水洗し、繊維組織だけを残してから乾燥してたわし状へちまを形成し、該へちまを長手方向に沿ってその中央部で切断して、へちまの中央部の目の細かい繊維組織の硬質部とへちまの表面部の目の荒い繊維組織の軟質部とを現出させ、ついで該へちまを型枠体に収納してから型枠体の上部から加熱溶融された透明石鹸を所定量流入した後、冷却固化した透明石鹸を型枠体から抜き取り、該へちま収容石鹸を複数個に切断したことを特徴とするへちま収容石鹸の製造方法である。
【特許文献1】特開平11−228999
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1のように、乾燥したへちまを長手方向に沿ってその中央部で切断するため、へちまの中央部の目の細かい繊維組織の硬質部が切断面として現れ、使用時に硬質の切断繊維が露出した場合に皮膚を刺すなどの問題があり、皮膚の弱い子供や女性には適しない。また、へちまを長手方向の中央部で分割した半円柱の状態で型枠内に収納し、加熱溶融された透明石けんを上部から充填して内部にへちまを内蔵するため、冷却固化してから型枠中から取り出し、複数個に切断した製品状態では、繊維の露出部と石けんのみの露出部が不規則に現れ、或いは二つの領域に分かれるので、外観が不均一でしかも容易に分離し易い製品となる。
【0004】
したがって、新品の間は石けん部の露出面積が多いので、常に石けんを皮膚に擦りつけることになり、使用を繰り返して露出石けんが消耗した後は繊維部のみが残るので、以後はへちまたわしのみで皮膚を擦ることになり、石けんとの併用は不可能となる。その結果、常に一定の状態で最後まで使用することができない。図1(4)に示すように、へちまの輪切り状態では、約120度や90度間隔に空洞があるため、長手方向の中央部で縦割りにした面においても、空洞部中の石けんが露出して先に溶けて消失したり、へちまたわし部か分離してしまう。
【0005】
型枠体に入れた半円柱状のへちまの上から、加熱溶融された透明石けんを充填するため、へちまの繊維質全体の中に確実に浸透させるのに時間を要し、生産効率が悪い。しかも、最終的に縦横にカットするので、皮膚を刺す切断繊維の露出面が増えると共に、在来のへちまたわしとしての機能が失われてしまう。本発明の技術的課題は、このような問題に着目し、使用時にへちまの切断面が露出せず、自然のへちまの繊維質の天然の外面のみが露出した均質なへちま石けんを効率的にかつ確実に充填製造可能なへちま石けんとその製造方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の技術的課題は次のような手段によって解決される。請求項1は、へちまたわしのように繊維質のみを残した円柱状の繊維質へちまを使用し、その輪切り方向にカットした部分を上にして立て、空洞の中に溶融石けんを流し込んで充填することを特徴とするへちま石けんの製造方法である。このように、円柱状の繊維質へちまの輪切り方向カット部を上にして立て、立った状態の空洞中に上から溶融石けんを充填するため、空洞中に充填された溶融石けんが自重で繊維質部に迅速かつ確実に浸透する。その結果、短時間に効率的にへちま石けんを製造でき、かつ溶融石けんが繊維質の全体に確実に浸透した高品質の製品を実現できる。
【0007】
請求項2は、前記の円柱状の繊維質へちまの外面を筒状の容器又は可撓性シートで包囲してから溶融石けんを充填することを特徴とする請求項1に記載のへちま石けんの製造方法である。可撓性シートには、薄手のフィルムも含まれるものとする。このように、前記の円柱状の繊維質へちまの外面を筒状の容器又は可撓性シートで包囲してから溶融石けんを充填するため、円柱状の繊維質へちまの部分以外に余計に溶融石けんが付着するのを抑制できる。したがって、へちま石けんの使い始めから、石けん部が使い終わって消失するまで、常にほぼ同じ状態でへちまたわしと石けんの併用が持続できる。
【0008】
請求項3は、充填した溶融石けんが固化した状態で、輪切り方向に所定の長さにカットすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のへちま石けんの製造方法である。このように、充填した溶融石けんが固化した状態で、輪切り方向に所定の長さにカットするため、天然のままの長い繊維質へちまの状態で溶融石けんを充填して、長いへちま石けんを製造してから、使い易いサイズにカットすることで、一定サイズの製品を実現できる。
【0009】
請求項4は、溶融石けんを分けて充填する際に、異なる色の溶融石けんを用いることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3に記載のへちま石けんの製造方法である。このように、溶融石けんを分けて充填する際に、異なる色の溶融石けんを順次充填すれば、場所によって色の異なる複数色の美しいへちま石けんとなり、販売時の顧客吸引力が高まると共に使用する楽しみが増える。使用時以外は、美しいへちま石けんを観賞でき、商品価値が上がる。
【0010】
請求項5は、へちま石けんとして使用し、石けん部が消失した後の円柱状のへちまたわしを立てた状態で、空洞中に再び溶融石けんを流し込んで充填することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの項に記載のへちま石けんの製造方法である。このように、へちま石けんとして使用し、石けん部が消失した後は、その円柱状のへちまたわしを立てた状態で、上から空洞中に再び溶融石けんを流し込んで充填すれば、へちま石けんを再生して、繰り返し何度も再利用できる。
【0011】
請求項6は、請求項1に記載の方法により、円柱状の繊維質へちまを立てた状態で、空洞の中に溶融石けんを流し込んで充填し、かつ固化させてなることを特徴とするへちま石けんである。このように、請求項1に記載の方法により、円柱状の繊維質へちまを立てた状態で、空洞の中に溶融石けんを流し込んで充填し、かつ固化させてなるへちま石けんは、通常のへちまたわしと同様に、繊維がソフトな天然のままの表面部をたわしとして使用できるので、繊維の切り口で肌を刺すような刺激は生じない。また、空洞部中に充填された石けんは、使い終わるまで空洞中に閉じ込められているので、従来のように早い段階で容易に繊維質部と分離することがなく、最後までへちま・石けんとして併用できる。
【0012】
請求項7は、所定の長さとなるように、少なくとも一端が輪切り方向にカットされていることを特徴とする請求項6に記載のへちま石けんである。このように、所定の長さとなるように、少なくとも一端が輪切り方向にカットされているため、サイズが一定の製品となり、商品価値が低下することはない。円柱状の繊維質へちまの端部を使用した製品でも、少なくとも一端が輪切り方向にカットされていて空洞が開口しているので、使用後に再生する場合も、溶融石けんの充填が可能となる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1のように、円柱状の繊維質へちまの輪切り方向カット部を上にして立て、立った状態の空洞中に上から溶融石けんを充填するため、空洞中に充填された溶融石けんが自重で繊維質部に迅速かつ確実に浸透する。その結果、短時間に効率的にへちま石けんを製造でき、かつ溶融石けんが繊維質の全体に確実に浸透した高品質の製品を実現できる。
【0014】
請求項2のように、前記の円柱状の繊維質へちまの外面を筒状の容器又は可撓性シートで包囲してから溶融石けんを充填するため、円柱状の繊維質へちまの部分以外に余計に溶融石けんが付着するのを抑制できる。したがって、へちま石けんの使い始めから、石けん部が使い終わって消失するまで、常にほぼ同じ状態でへちまたわしと石けんの併用が持続できる。
【0015】
請求項3のように、充填した溶融石けんが固化した状態で、輪切り方向に所定の長さにカットするため、天然のままの長い繊維質へちまの状態で溶融石けんを充填して、長いへちま石けんを製造してから、使い易いサイズにカットすることで、一定サイズの製品を実現できる。
【0016】
請求項4のように、溶融石けんを分けて充填する際に、異なる色の溶融石けんを順次充填すれば、場所によって色の異なる複数色の美しいへちま石けんとなり、販売時の顧客吸引力が高まると共に使用する楽しみが増える。使用時以外は、美しいへちま石けんを観賞でき、商品価値が上がる。
【0017】
請求項5のように、へちま石けんとして使用し、石けん部が消失した後は、その円柱状のへちまたわしを立てた状態で、上から空洞中に再び溶融石けんを流し込んで充填すれば、へちま石けんを再生して、繰り返し何度も再利用できる。
【0018】
請求項6のように、請求項1に記載の方法により、円柱状の繊維質へちまを立てた状態で、空洞の中に溶融石けんを流し込んで充填し、かつ固化させてなるへちま石けんは、通常のへちまたわしと同様に、繊維がソフトな天然のままの表面部をたわしとして使用できるので、繊維の切り口で肌を刺すような刺激は生じない。また、空洞部中に充填された石けんは、使い終わるまで空洞中に閉じ込められているので、従来のように早い段階で容易に繊維質部と分離することがなく、最後までへちま・石けんとして併用できる。
【0019】
請求項7のように、所定の長さとなるように、少なくとも一端が輪切り方向にカットされているため、サイズが一定の製品となり、商品価値が低下することはない。円柱状の繊維質へちまの端部を使用した製品でも、少なくとも一端が輪切り方向にカットされていて空洞が開口しているので、使用後に再生する場合も、溶融石けんの充填が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に本発明によるへちま石けんとその製造方法が実際上どのように具体化されるか実施形態を説明する。図1は製造方法を順次示す図である。(1)は充分に成熟した1本の円柱状のへちま果実で、A、B位置で両端を切除した状態で、或いはA位置のみを切除した状態で、その果肉や外皮は腐敗させ、かつ3又は4個の空洞の中の種子も除去して、水洗し乾燥させると、(2)のような長い繊維質へちま1fとなる。これを所定のサイズにカットすると、通常のへちまたわしとなる。
【0021】
本発明では、カットしない状態の長い繊維質へちま1fを(3)のように立てた状態で、(4)のような上端の3個又は4個の空洞2の中に溶融石けんを流し込んで固化させる。この際に、溶融石けんが柔らかすぎると、繊維質の部分を通過して、繊維質へちま1fの外に漏れだしてしまうので、繊維質へちま1fの外面辺りで固化する程度の柔らかさとする。そして、一度に空洞2中を満たすのでなく、少しずつ徐々に流し込むと、繊維質部を通過して繊維質へちま1fの外面に到達する頃には冷えて固化するので、このように、繊維質へちま1fの外面に到達して固化するように調節しながら、溶融石けんの流し込み速度を加減する。
【0022】
3〜4個の各空洞2について、このような調節をしながら、溶融石けんを流し込み、最終的に繊維質へちま1fのすべての繊維質部の中に溶融石けんが浸透するように充填し、固化すると充填工程は完了である。冷却し固化した後、図2のように、C、D位置で輪切り方向にカットして、一定のサイズにすると、完成である。しかしながら、裸状態の繊維質へちま1fに溶融石けんを流し込む方法だと、前記のように冷却固化状態を目視確認しながら流し込む速度を加減する必要があり、熟練を要する。
【0023】
そこで、図3(1)は、繊維質へちま1fの外面に、鎖線で示すように、熱に強い可撓性のフィルムやシート3を巻き付けて、溶融石けんが漏れださないようにしておく。この状態で、上端から各空洞2の中に溶融石けんを流し込むと、溶融石けんの柔らかさや充填速度を特に考慮したり調節する必要はない。したがって、製造は容易である。シート3やフィルムを剥がして、図2のように、所定の長さにカットし、1個ずつ包装すると完成である。
【0024】
(2)図のように、円筒状の容器4の中に前記の繊維質へちま1fを挿入して立てた状態で、上端から空洞2中に溶融石けんを充填してもよい。円筒状容器4の内径は、繊維質へちま1fの外形と同程度がよい。繊維質へちま1fは可撓性があるので、剛体の円筒状容器4の中に強引に挿入することもでき、その結果、へちま石けんの外径寸法が円筒状容器4の内径で決まり、外径寸法を一定に揃えることができる。
【0025】
この円筒状容器4は、半円筒体を突き合わせて連結固定できる構造が望ましい。例えば、(3)図のように、半円筒状の両端に連結用の鍔を出しておいて、互いにネジ5、6でネジ止めしてもよいし、クリップで挟んでおいてもよい。輪ゴムを巻き付けて、分離不能にしてもよい。充填した溶融石けんが固化した後に、ネジ5、6やクリップ、輪ゴムを外して、円筒状容器4を2分割すれば、容易に内部のへちま石けんを取り出すことができる。
【0026】
前記のようにして、空洞2の中に溶融石けんを流し込む際に、全部一度に流し込むのでなく、数回に分けて流し込むこともできる。このように、分割して流し込む際に、各回ごとに赤色の溶融石けん、緑色の溶融石けんというように、異なる色の溶融石けんを流し込むと、赤色や緑色というように、色模様のついたカラフルなへちま石けんを実現でき、デザイン的な価値が高まる。使用する楽しみも増える。
【0027】
以上のようにして製造したへちま石けんを消費者が使用する際は、円柱状の外周面を肌に擦り付けて使用する。そのため、外面の薄い石けんが消失して繊維質へちま1fの部分が露出した場合は、天然の円柱状の繊維質へちま1fの外面が肌と接することになるので、切断部が接する場合と違って、切断繊維で皮膚を刺すような刺激を受ける恐れはなく、皮膚の弱い女性や子供でも安心して使用できる。使用を繰り返して、繊維質の部分の石けんが溶けだして消失すると、空洞2中の石けんが溶けだすことになり、空洞部中の石けんも全部消失すると、繊維質へちま1fのみの状態となって残る。
【0028】
このようにして石けん部が全部消失した後の繊維質へちま1fを回収して、再度前記のような方法で溶融石けんを空洞2の中に充填して固化させれば、再びへちま石けんとして再生できるので、繊維質へちま1fは繰り返しへちま石けんとして再生して何度も使用でき、経済的である。なお、へちま石けんの原料となるへちまは、サイズが小型の種類や大型の種類があるが、何れの種類にも本発明を適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
以上のように、本発明によると、円柱状の繊維質へちまの輪切り方向カット部を上にして立て、立った状態の空洞中に上から溶融石けんを充填して製造するため、天然の繊維質へちまの外周面を肌に擦りつけて使用することになり、使用時にへちまの切断面が露出しないので、肌を刺すような刺激を受ける危険がなく、皮膚の弱い女性や子供でも安心して使用できる。しかも、空洞部中に上から溶融石けんを流し込むだけであるから、容易にかつ効率的に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】へちま石けんの製造方法を工程順に示す図である。
【図2】サイズを揃えるための切断位置を示す側面図である。
【図3】(1)は可撓性シートで包囲して充填する方法、(2)(3)は筒状容器中に繊維質へちまを挿入して充填する方法を示す縦断面図と平面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 充分に成熟へちま果実
1f 繊維質へちま
2 空洞
3 可撓性のシート乃至フィルム
4 円筒状容器
5・6 連結ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
へちまたわしのように繊維質のみを残した円柱状の繊維質へちまを使用し、その輪切り方向にカットした部分を上にして立て、空洞の中に溶融石けんを流し込んで充填することを特徴とするへちま石けんの製造方法。
【請求項2】
前記の円柱状の繊維質へちまの外面を筒状の容器又は可撓性シートで包囲してから溶融石けんを充填することを特徴とする請求項1に記載のへちま石けんの製造方法。
【請求項3】
充填した溶融石けんが固化した状態で、輪切り方向に所定の長さにカットすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のへちま石けんの製造方法。
【請求項4】
溶融石けんを分割して充填する際に、異なる色の溶融石けんを用いることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3に記載のへちま石けんの製造方法。
【請求項5】
へちま石けんとして使用し、石けん部が消失した後の円柱状のへちまたわしを立てた状態で、空洞中に再び溶融石けんを流し込んで充填することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの項に記載のへちま石けんの製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法により、円柱状の繊維質へちまを立てた状態で、空洞の中に溶融石けんを流し込んで充填し、かつ固化させてなることを特徴とするへちま石けん。
【請求項7】
所定の長さとなるように、少なくとも一端が輪切り方向にカットされていることを特徴とする請求項6に記載のへちま石けん。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−127480(P2008−127480A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−314855(P2006−314855)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【出願人】(506172883)株式会社琉美産業 (1)
【Fターム(参考)】