説明

まつ毛用化粧料

【課題】
ビューラーによるまつ毛の折り曲げ、引っ張りや、マスカラ使用後のクレンジング剤によるこすり落とし等の物理的要因によって引き起こされるまつ毛の損傷を改善、補修し、まつ毛にハリやコシを付与することができるまつ毛用化粧料を提供する。
【解決手段】
サクラエキス[ソメイヨシノ(学名:Prunus Yedoensis)の抽出物]をまつ毛用化粧料に配合することにより、まつ毛の損傷を改善、補修し、ハリやコシを付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サクラエキスを含有することを特徴とするまつ毛用化粧料に関する。より具体的には、サクラエキスを含有することにより、傷んだまつ毛に対し損傷改善、補修効果に優れたまつ毛用化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪については、ヘアカラーやブリーチ、パーマネントウェーブといった化学的な要因、ドライヤーやヘアカーラーによる熱によって損傷することが知られている。そして、このような毛髪損傷を改善、補修する方法として、ヒドロキシエチルウレアと特定のポリマーを配合する方法(特許文献1)、ペプチドと特定の有機溶剤を配合する方法(特許文献2)、C3からC5単糖類及びその誘導体を配合する方法(特許文献3)、有機酸と芳香族カルボン酸を配合する方法(特許文献4)、有機酸とポリプロピレングリコールを配合する方法(特許文献5)、塩基性アミノ酸とタンパク質、タンパク加水分解物、タンパク誘導体を配合する方法(特許文献6)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−168310
【特許文献2】特開2009−84168
【特許文献3】特開2008−163037
【特許文献4】特開2007−1953
【特許文献5】特開2002−29938
【特許文献6】特開平9−276630
【0004】
一方、近年アイメイクの流行によりマスカラやつけまつ毛を使用する女性が増え、まつ毛に対する関心が非常に高まっている。それとともに、まつ毛の損傷を訴える女性が増えてきている。しかしながら、まつ毛の場合は毛髪と異なり、ヘアカラーやブリーチ、パーマネントウェーブ、ドライヤー、ヘアカーラーによる処理を行う訳ではない。すなわち、まつ毛と毛髪では損傷のメカニズムが異なる。しかしながら、これまでまつ毛の損傷のメカニズムは明らかにされていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明者らが鋭意研究を行った結果、まつ毛の損傷はビューラーによる折り曲げ、引っ張りやマスカラ使用後のクレンジング剤によるこすり落とし等の物理的要因によって引き起こされることが明らかとなった。しかしながら、上記先行技術では、まつ毛の損傷が改善されるか明らかにされていないのが現状であった。
【0006】
本発明は、傷んだまつ毛に対し損傷改善、補修効果に優れたまつ毛用化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる事情に鑑み、本発明者らは鋭意研究を行った結果、サクラエキスにまつ毛損傷の改善、補修効果があることを見出した。さらに、グルコシルヘスペリジンを配合することにより、サクラエキスによるまつ毛損傷の改善、補修効果が向上することを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0008】
すなわち本発明は、まつ毛損傷の改善、補修効果に優れたまつ毛用化粧料である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明で使用されるサクラエキスは、バラ科に属するソメイヨシノ(学名:Prunus Yedoensis)の抽出物であり、市販されている品種又は自生するものを利用することができる。また使用される部位は特に限定されないが葉が好ましい。市販品としては一丸ファルコス社製のサクラエキスB(一丸ファルコス社製:ソメイヨシノ葉エキス2%、水49%、BG49%の混合溶液)等が挙げられる。
【0011】
また、本発明で使用するサクラエキスの抽出法は特に限定されず、例えば、加熱抽出したものであっても良いし、常温又は低温で抽出したものであっても良い。抽出する溶媒としては、例えば、水、低級1価アルコール類(メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等)、液状多価アルコール(1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール等)、炭化水素(ヘキサン、ペンタン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、エーテル類(エチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテル等)、アセトニトリル等が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。好ましくは、水あるいは水溶性溶媒(水と任意の割合で混合可能な溶媒。例えば、エタノール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール等)のうち1種又は2種以上の溶媒を用いるのが良い。抽出物はそのまま用いても良いし、溶媒を一部、又は全部留去して用いても良い。
【0012】
本発明のまつ毛用化粧料には、上記抽出物をそのまま使用しても良く、必要に応じて、濃縮、希釈及び濾過処理、活性炭等による脱色、脱臭処理等をして用いても良い。更には、抽出した溶液を濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥等の処理を行い、乾燥物として用いても良い。
【0013】
本発明におけるサクラエキスの配合量は特に限定されないが、乾燥物として、0.0001〜0.1重量%の範囲が好ましい。0.0001重量%未満では効果が低く、また0.1重量%を超えても効果に増強はみられず、非経済的である。
【0014】
本発明においては、さらにグルコシルヘスペリジンを配合することにより、本発明の効果をより高めることができる。グルコシルヘスペリジンは、ミカン等の柑橘類の皮に含まれるポリフェノールの一種のヘスペリジンに糖を結合させた糖転移ヘスペリジンである。
【0015】
グルコシルヘスペリジンの例としては、α−モノグルコシルヘスペリジン、α−ジグルコシルヘスペリジン、α−トリグルコシルヘスペリジン、α−テトラグルコシルヘスペリジン及びα−ペンタグルコシルヘスペリジン等が挙げられる。具体例としては、(株)林原生物化学研究所製の林原ヘスペリジンS等が挙げられる。
【0016】
本発明におけるグルコシルヘスペリジンの配合量は特に限定されないが、0.01〜1重量%の範囲が好ましい。0.01重量%未満では効果が低く、また1重量%を超えても効果に増強はみられず、非経済的である。
【0017】
本発明のまつ毛用化粧料には、さらに目的に応じて、本発明の効果を損なわない量的、質的範囲内で、まつ毛用化粧料に通常配合し得る成分を添加してもよい。このような成分としては、例えば、粉体、増粘剤、皮膜形成剤、ファイバー、アルコール類、多価アルコール類、界面活性剤、炭化水素、エステル等の油脂類、シリコーン油、保湿剤、防腐剤、香料、紫外線吸収剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0018】
本発明のまつ毛化粧料をまつ毛に塗布する方法は、均一に塗布できる方法であれば特に制限されない。
【実施例】
【0019】
次に、本発明に用いるサクラエキスの製造例及び本発明の実施例を挙げて詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。配合量はすべて重量%である。
【0020】
製造例1 サクラエキス(ソメイヨシノの葉の50%1,3−ブチレングリコール抽出物)
ソメイヨシノの葉100gを生のまま細かく切断し、1,3−ブチレングリコールの50重量%水溶液を1kg加え、室温で2日間抽出した。抽出後、その抽出液を濾過してソメイヨシノの葉の50%1,3−ブチレングリコール抽出物を950g得た。なお、この抽出物の乾燥重量は、19g(2.0重量%)である。
【0021】
製造例2 サクラエキス(ソメイヨシノの葉の熱水抽出物)
ソメイヨシノの葉100gを生のまま細かく切断し、1kgの精製水を加え、100℃で2時間抽出した。得られた抽出液を濾過し、濃縮した後に凍結乾燥してソメイヨシノの葉の熱水抽出物8.5gを得た。
【0022】
実施例1〜3及び比較例1〜4
下記の表1に示す処方及び下記製法により、まつ毛用化粧料を調製し、以下に示す評価方法及び判定基準により評価し、結果を併せて表1に示した。
【0023】
【表1】

注1:林原ヘスペリジンS((株)林原生物化学研究所製)
【0024】
(製法)
成分(4)を除くすべての成分を室温にて均一混合した後、成分(4)を添加してまつ毛用化粧料を得た。
【0025】
(評価方法1:まつ毛補修効果)
健常なまつ毛に対して、ビューラーで折り曲げながら50回引っ張り、ダメージ毛を得た。このダメージ毛を実施例、比較例のまつ毛用化粧料に1時間浸漬した後、水洗、乾燥した。このようにして得られたまつ毛を走査型電子顕微鏡にて観察し、上記のダメージ毛と比較して補修効果が認められるか、以下に示す判定基準に従って判定した。
<判定基準>
◎:明らかに補修効果が認められた(健常なまつ毛と同等)
○:補修効果が認められた
△:少し補修効果が認められた
×:補修効果が認められなかった
【0026】
(評価方法2:ハリ、コシ実感効果)
20〜40代の女性被験者5名に、上記実施例及び比較例のまつ毛用化粧料を一日一回連続して30日間、洗顔後のまつ毛に根元から先端に向かって塗布する使用試験を行った。試験終了後、ハリ、コシ実感効果の有無について、以下の評価基準により評点を付し、実施例及び比較例のまつ毛用化粧料ごとに評点の平均点を算出して、以下に示す判定基準に従って判定した。
<評価基準>
〔使用感〕 〔評点〕
ハリ、コシを実感する :5
ハリ、コシを少し実感する :4
ハリ、コシをほんの少し実感する :3
ハリ、コシをあまり実感しない :2
ハリ、コシを実感しない :1
<判定基準>
〔評点の平均点〕 〔判定〕
4以上 ◎
3以上4未満 ○
2以上3未満 △
2未満 ×
【0027】
実施例1、2はいずれも、まつ毛補修効果、ハリ、コシ実感効果ともに良好であった。また、実施例1にグルコシルヘスペリジンを配合した実施例3は、実施例1からハリ、コシ実感効果がさらに上がった。それに対して、サクラエキスを配合していない比較例1は、まつ毛補修効果、ハリ、コシ実感効果ともに認められなかった。また、毛髪補修成分として知られている加水分解コラーゲン液を配合した比較例2及びD−キシロースを配合した比較例3は、まつ毛補修効果は不十分であり、ハリ、コシ実感効果は認められなかった。グルコシルヘスペリジンを単独で配合した比較例4は、まつ毛補修効果、ハリ、コシ実感効果ともに認められず、サクラエキスと併用することでまつ毛補修効果、ハリ、コシ実感効果が得られることが明らかとなった。
【0028】
実施例1及び実施例4〜7
下記表2に示す処方によりまつ毛用化粧料を調製し、上記評価方法及び判定基準により評価し、結果を併せて表2に示した。
【0029】
【表2】

【0030】
実施例1及び実施例4〜7はいずれも、まつ毛補修効果、ハリ、コシ実感効果ともに良好であった。特に、実施例1及び実施例5〜7がまつ毛補修効果において非常に良好であった。このことから、特に効果があるのは、サクラエキスを乾燥物として0.0001重量%以上配合したときであることが明らかとなった。
【0031】
実施例8
成分 配合量(重量%)
(1)カルボキシビニルポリマー 1.0
(2)ヒドロキシエチルセルロース 0.5
(3)1,3−ブチレングリコール 5.0
(4)水酸化カリウム 0.5
(5)95エタノール 5.0
(6)エデト酸三ナトリウム 0.02
(7)メチルパラベン 0.2
(8)サクラエキス(注2) 0.1
(9)精製水 87.68
合計 100.0
注2:サクラエキスB(一丸ファルコス社製、乾燥物として2.0重量%)
(製法)
成分(4)を除くすべての成分を室温にて均一混合した後、成分(4)を添加してまつ毛用化粧料を得た。
【0032】
実施例9
成分 配合量(重量%)
(1)カルボキシビニルポリマー 1.0
(2)ヒドロキシエチルセルロース 0.5
(3)1,3−ブチレングリコール 5.0
(4)トリエタノールアミン 0.2
(5)95エタノール 5.0
(6)エデト酸三ナトリウム 0.02
(7)メチルパラベン 0.2
(8)サクラエキス(注2) 0.1
(9)グルコシルヘスペリジン(注1) 0.1
(9)精製水 87.88
合計 100.0
(製法)
成分(4)を除くすべての成分を室温にて均一混合した後、成分(4)を添加してまつ毛用化粧料を得た。
【0033】
実施例8及び9ともに、まつ毛の補修効果に優れたまつ毛用化粧料であった。

【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明のまつ毛用化粧料は、ビューラーによる折り曲げ、引っ張りやマスカラ使用後のクレンジング剤によるこすり落とし等の物理的要因によって引き起こされるまつ毛の損傷を改善、補修することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サクラエキス[ソメイヨシノ(学名:Prunus Yedoensis)の抽出物]を含有することを特徴とするまつ毛用化粧料。
【請求項2】
サクラエキスの含有量が乾燥物として0.0001〜0.1重量%であることを特徴とする請求項1記載のまつ毛用化粧料。
【請求項3】
グルコシルヘスペリジンを含有することを特徴とする請求項1又は2記載のまつ毛用化粧料。
【請求項4】
グルコシルヘスペリジンの含有量が0.01〜1重量%であることを特徴とする請求項3記載のまつ毛用化粧料。


【公開番号】特開2012−193143(P2012−193143A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57864(P2011−57864)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(592262543)日本メナード化粧品株式会社 (223)
【Fターム(参考)】