説明

めっき装置および配線回路基板の製造方法

【課題】めっき焼けを防止しつつめっきの効率を向上させることが可能なめっき装置および配線回路基板の製造方法を提供する。
【解決手段】めっき装置100は、めっき槽102を備える。めっき槽102内には、めっき液が収容される。長尺状基板10がめっき槽102内を通過するように搬送ロール101a〜101dにより搬送される。めっき槽102内には、長尺状基板10に沿って並ぶように3つ以上の棒状のアノード電極1が設けられる。両端に配置されたアノード電極1の表面積は他のアノード電極1の表面積よりも小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき装置および配線回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な電子機器に高密度化および小型化された配線回路基板が用いられている。配線回路基板の製造時には、例えば配線パターンの形成工程において、めっき装置を用いて、予め形成されたシード層上に電解めっきが施される。
【0003】
例えば特許文献1に記載されためっき装置は、めっき液が収容されるめっき槽を備える。めっき槽内には、アノード電極が配置される。めっき槽の側壁に形成されたスリットを通して、長尺状基板がめっき槽内に搬送される。その状態で、アノード電極と長尺状基板の電解めっきを施すべき領域との間に電圧が印加される。それにより、めっき槽内で長尺状基板に電解めっきが施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−321796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アノード電極に流れる電流が大きすぎると、電解めっきにより析出する金属層の表面が荒れる現象(めっき焼け)が生じる場合がある。したがって、アノード電極に流れる電流をめっき焼けが発生しない電流の上限以下に調整する必要がある。
【0006】
ところで、めっきの効率を向上させるため、めっき槽内に複数のアノード電極が並べて配置される場合がある。しかしながら、その場合、複数のアノード電極に流れる電流にばらつきが生じる。めっき焼けの発生を防止するためには、全てのアノード電極に流れる電流をめっき焼けが発生しない電流の上限以下に調整する必要がある。そのため、一部のアノード電極に流れる電流が著しく小さくなることがある。それにより、効率よくめっきを行うことができない。
【0007】
本発明の目的は、めっき焼けを防止しつつめっきの効率を向上させることが可能なめっき装置および配線回路基板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)第1の発明に係るめっき装置は、長尺状基板をめっきするめっき装置であって、めっき液を収容するめっき液収容部と、めっき液収容部内で長尺状基板を長さ方向に搬送する搬送部と、搬送部により搬送される長尺状基板に沿って並ぶようにめっき液収容部内に配置される3つ以上の複数の陽極と、長尺状基板が陰極となるように長尺状基板と複数の陽極との間に電圧を印加する給電部とを備え、複数の陽極のうち両端に配置される陽極の表面積は、他の少なくとも1つの陽極の表面積よりも小さいものである。
【0009】
そのめっき装置においては、めっき液を収容するめっき液収容部内で、搬送部により長尺状基板が長さ方向に搬送される。めっき液収容部内には、3つ以上の複数の陽極が長尺状基板の搬送される方向に沿って並ぶように配置される。この状態で長尺状基板が陰極となるように給電部により複数の陽極と長尺状基板との間に電圧が印加される。
【0010】
発明者の実験および検討によると、長尺状基板に沿って配置された複数の陽極に一定の電流が供給される場合、両端の陽極から長尺状基板に流れる電流が他の陽極から長尺状基板に流れる電流に比べて大きくなる傾向があることがわかった。そのため、両端の陽極に対向する長尺状基板の部分の電流密度が他の陽極に対向する長尺状基板の部分の電流密度に比べて大きくなる。
【0011】
そこで、本発明に係るめっき装置では、複数の陽極のうち両端に配置される陽極の表面積が他の少なくとも1つの陽極の表面積よりも小さく設定される。この場合、両端に配置される陽極の抵抗値が、他の少なくとも1つの陽極の抵抗値よりも大きくなる。それにより、両端の陽極から長尺状基板に流れる電流が抑制される。したがって、両端の陽極から長尺状基板に流れる電流を他の少なくとも1つの陽極から長尺状基板に流れる電流に等しくすることまたは近づけることが可能となる。それにより、両端の陽極に対向する長尺状基板の部分の電流密度を他の少なくとも1つの陽極に対向する長尺状基板の部分の電流密度に等しくすることまたは近づけることが可能となる。この場合、複数の陽極に供給される一定の電流を増加させることにより、両端の陽極から長尺状基板に流れる電流および他の少なくとも1つの陽極から長尺状基板に流れる電流をめっき焼けが発生しない電流の上限に近づけることが可能となる。その結果、めっき焼けを防止しつつ長尺状基板のめっきの効率を向上させることが可能となる。
【0012】
(2)複数の陽極の各々は棒状の金属からなり、両端に配置される陽極の長さ方向に垂直な断面の面積は、他の少なくとも1つの陽極の長さ方向に垂直な断面の面積よりも小さくてもよい。
【0013】
この場合、各陽極の製造時に、棒状の金属からなる陽極の長さ方向に垂直な断面の面積を調整することにより、各陽極の表面積を精度良く調整することができる。したがって、両端に配置される陽極の長さ方向に垂直な断面の面積を他の少なくとも1つの陽極の長さ方向に垂直な断面の面積よりも小さくすることにより、両端の陽極から長尺状基板に流れる電流を他の少なくとも1つの陽極から長尺状基板に流れる電流に精度良く等しくすることまたは近づけることができる。
【0014】
(3)複数の陽極の各々は、複数の球状金属と、複数の球状金属が収容されるケースとを含み、複数の陽極のうち両端に配置される陽極の球状金属の数は、他の少なくとも1つの陽極の球状金属の数よりも少なくてもよい。
【0015】
この場合、各陽極の球状金属の数を調整することにより、各陽極の表面積を容易に調整することができる。したがって、両端に配置される陽極の球状金属の数を他の少なくとも1つの陽極の球状金属の数よりも少なくすることにより、両端の陽極から長尺状基板に流れる電流を他の少なくとも1つの陽極から長尺状基板に流れる電流に容易に等しくすることまたは近づけることができる。
【0016】
(4)両端に配置される陽極から中央に配置される陽極にかけて段階的に表面積が大きくてもよい。
【0017】
この場合、複数の陽極から長尺状基板に流れる電流を互いに等しくすることまたは近づけることができる。それにより、めっき焼けを防止しつつ長尺状基板のめっきの効率をより十分に向上させることができる。
【0018】
(5)第2の発明に係る配線回路基板の製造方法は、長尺状基板を用意する工程と、長尺状基板に電解めっきを施す工程とを備え、電解めっきを施す工程は、めっき液を収容するめっき液収容部内で長尺状基板を長さ方向に搬送する工程と、搬送される長尺状基板に沿って並ぶようにめっき液収容部内に配置された3つ以上の複数の陽極と長尺状基板との間に電圧を印加する工程とを含み、複数の陽極のうち両端に配置される陽極の表面積は、他の少なくとも1つの陽極の表面積よりも小さいものである。
【0019】
その配線回路基板の製造方法においては、めっき液を収容するめっき液収容部内で、搬送部により長尺状基板が長さ方向に搬送される。また、めっき液収容部内には、3つ以上の複数の陽極が長尺状基板の搬送される方向に沿って並ぶように配置される。この状態で長尺状基板が陰極となるように給電部により複数の陽極と長尺状基板との間に電圧が印加されることにより長尺状基板に電解めっきが施される。
【0020】
この場合、複数の陽極のうち両端に配置される陽極の表面積が他の少なくとも1つの陽極の表面積よりも小さく設定されるため、両端に配置される陽極の抵抗値が他の少なくとも1つの陽極の抵抗値よりも大きくなる。それにより、両端の陽極から長尺状基板に流れる電流が抑制される。したがって、両端の陽極から長尺状基板に流れる電流を他の少なくとも1つの陽極から長尺状基板に流れる電流に等しくすることまたは近づけることが可能となる。それにより、両端の陽極に対向する長尺状基板の部分の電流密度を他の少なくとも1つの陽極に対向する長尺状基板の部分の電流密度に等しくすることまたは近づけることが可能となる。この場合、複数の陽極に供給される一定の電流を増加させることにより、両端の陽極から長尺状基板に流れる電流および他の少なくとも1つの陽極から長尺状基板に流れる電流をめっき焼けが発生しない電流の上限に近づけることが可能となる。したがって、めっき焼けを防止しつつ長尺状基板のめっきの効率を向上させることが可能となる。その結果、配線回路基板を良好にかつ効率良く製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、両端の陽極から長尺状基板に流れる電流および他の少なくとも1つの陽極から長尺状基板に流れる電流をめっき焼けが発生しない電流の上限に近づけることが可能となる。したがって、めっき焼けを防止しつつ長尺状基板のめっきの効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係るめっき装置の模式的斜視図である。
【図2】図1のめっき装置のアノード電極を示した図である。
【図3】本実施の形態に係るめっき装置を用いて製造される配線回路基板の製造方法の一例を示した模式的工程断面図である。
【図4】第2の実施の形態に係るめっき装置のアノード電極の構成を示した図である。
【図5】実施例1の各アノード電極1に流れる電流を示した図である。
【図6】比較例1の各アノード電極1に流れる電流を示した図である。
【図7】実施例2、実施例3および比較例2の各アノード電極に流れる電流を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施の形態に係るめっき装置および配線回路基板の製造方法について図面を参照しながら説明する。
【0024】
(1)第1の実施の形態
(1−1)めっき装置の構成
図1は、第1の実施の形態に係るめっき装置100の模式的斜視図である。図1に示すように、めっき装置100は、箱型のめっき槽102を備える。めっき槽102は、底面部および4つの側面部を有する。めっき槽102の互いに対向する2つの側面部には、上下方向に延びる長尺状の開口103がそれぞれ設けられる。
【0025】
一方の開口103を閉塞するように、上下方向に延びる一対の搬送ロール101a,101bが回転可能に設けられ、他方の開口103を閉塞するように、上下方向に延びる一対の搬送ロール101c,101dが回転可能に設けられる。この場合、搬送ロール101a〜101dにより、2つの開口103が液密に封止される。
【0026】
めっき槽102内には、例えば硫酸銅を含むめっき液が収容される。なお、めっき液中の銅イオンが不足する場合、めっき液に粉末状の酸化銅がさらに添加されてもよい。また、めっき槽102の下部に、めっき槽102から漏出するめっき液を受ける収納槽(図示せず)が配置されてもよい。その場合、収納槽に溜まっためっき液はポンプを用いてめっき槽102内に戻される。
【0027】
一対の搬送ロール101a,101bおよび一対の搬送ロール101c,101dにより長尺状基板10が挟持される。そして、搬送ロール101a〜101dが回転することにより、長尺状基板10がめっき槽102内を通過するように矢印MDで示される方向(以下、搬送方向と呼ぶ)に搬送される。それにより、長尺状基板10が連続的にめっき槽102内のめっき液に浸漬される。
【0028】
長尺状基板10の搬送方向における搬送ロール101a,101bよりも上流側の位置に、給電ロール50aが上下方向の軸周りに回転可能に設けられる。また、長尺状基板10の搬送方向における搬送ロール101a,101bよりも下流側の位置に、給電ロール50aが上下方向の軸周りに回転可能に設けられる。
【0029】
給電ロール50a,50bは、長尺状基板10の一面に接触しつつ回転する。長尺状基板10の一面には、電解めっきを行うべきめっき領域が設けられる。給電ロール50,50bが長尺状基板10の一面に接触することにより、給電ロール50,50bが長尺状基板10のめっき領域とそれぞれ電気的に接続される。また、給電ロール50a,50bは、整流器42の負極にそれぞれ接続される。整流器42は、交流電源(図示せず)に接続される。
【0030】
めっき槽102内には、長尺状基板10に沿って並ぶように3つ以上(本例では6つ)の棒状のアノード電極1が設けられる。この場合、複数のアノード電極1は、長尺状基板10の上記一面(めっき領域が設けられた面)に対向しかつ近接するように配置される。各アノード電極1としては、例えば酸化イリジウムにより被覆された棒状のチタンが用いられる。複数のアノード電極1は、互いに並列に整流器42の正極に接続される。
【0031】
整流器42を介して、複数のアノード電極1と給電ロール50a,50bに接続された長尺状基板10のめっき領域との間に電圧が印加される。この場合、めっき槽102内において、長尺状基板10のめっき領域が陰極(カソード)となる。それにより、長尺状基板10のめっき領域に電解めっき(銅めっき)が施される。
【0032】
なお、整流器42は定電流制御回路を含み、整流器42から複数のアノード電極1に供給される電流(以下、供給電流と呼ぶ)が一定に制御される。
【0033】
ここで、本実施の形態では、複数のアノード電極1のうち両端に配置されるアノード電極1の表面積が、他の少なくとも1つのアノード電極1の表面積よりも小さい。以下、各アノード電極1の表面積について説明する。
【0034】
(1−2)アノード電極の表面積について
図2は、本実施の形態に係るめっき装置100の複数のアノード電極1の拡大図である。以下、複数のアノード電極1のうち、両端に配置された2つのアノード電極1をそれぞれ両端アノード1と呼び、その2つの両端アノード1とそれぞれ隣り合う2つのアノード電極1をそれぞれ中間アノード1と呼び、その2つの中間アノード1の間に配置された2つのアノード電極1をそれぞれ中央アノード1と呼ぶ。また、各アノード電極1の長さ方向に垂直な断面の面積を各アノード電極1の断面積と呼ぶ。
【0035】
図2に示すように、本実施の形態では、2つの両端アノード1は互いに同じ形状であり、2つの中間アノード1は互いに同じ形状であり、2つの中央アノード1は互いに同じ形状である。また、上下方向における両端アノード1、中間アノード1および中央アノード1の長さは互いに等しい。また、各両端アノード1の断面積は各中間アノード1の断面積よりも小さく、各中間アノード1の断面積は各中央アノード1の断面積よりも小さい。
【0036】
そのため、各両端アノード1の表面積は各中間アノード1の表面積よりも小さく、各中間アノード1の表面積は各中央アノード1の表面積よりも小さい。両端アノード1の表面積は例えば300cm以上900cm以下であり、中間アノード1の表面積は例えば500cm以上1500cm以下であり、中央アノード1の表面積は例えば1000cm以上2000cm以下である。また、両端アノード1の表面積は中央アノード1の表面積の例えば30%以上50%以下であり、中間アノード1の表面積は中央アノード1の表面積の例えば50%以上70%以下である。
【0037】
それにより、両端アノード1の抵抗値が中間アノード1の抵抗値よりも大きくなり、中間アノード1の抵抗値が中央アノード1の抵抗値よりも大きくなる。
【0038】
なお、上下方向における各アノード電極1の長さは、例えば100mm以上500mm以下であり、長尺状基板10の搬送方向における各アノード電極1の長さは、例えば20mm以上150mm以下であり、長尺状基板10に垂直な方向における各アノード電極1の長さは、例えば20mm以上80mm以下であることが好ましい。
【0039】
(1−3)配線回路基板の製造方法
図3は、本実施の形態に係るめっき装置を用いて製造される配線回路基板の製造方法の一例を示した模式的工程断面図である。
【0040】
まず、図3(a)に示すように、例えばポリイミドからなる長尺状の絶縁層20を用意する。次に、図3(b)に示すように、絶縁層20上に無電解めっきまたはスパッタリングにより例えばニッケル−クロムからなるシード層21を形成する。次に、図3(c)に示すように、シード層21上にドライフィルム等をラミネートし、露光および現像することにより、後工程で形成される配線パターンとは逆パターンを有するめっきレジスト22を形成する。これにより、長尺状基板10(図1)が形成される。
【0041】
続いて、図1のめっき装置100を用いて上記のように長尺状基板10に電解めっきを施すことにより、図3(d)に示すように、めっきレジスト22が形成されていないシード層21の部分上に例えば銅からなる配線層23を形成する。この場合、めっきレジスト22が形成されていないシード層21の部分が上記のめっき領域に相当する。
【0042】
次に、図3(e)に示すように、めっきレジスト22を剥離等により除去した後、配線層23の下の領域を除いてシード層21をエッチング液を用いて除去する。これにより、絶縁層20上にシード層21および配線層23からなる配線パターン24が形成された配線回路基板25が形成される。
【0043】
(1−5)効果
発明者の実験および検討によると、長尺状基板10に沿って配置された複数のアノード電極1に一定の電流が供給される場合、両端のアノード電極1から長尺状基板10に流れる電流が他のアノード電極1から長尺状基板10に流れる電流に比べて大きくなる傾向があることがわかった。そのため、両端のアノード電極1に対向する長尺状基板10の部分の電流密度が他のアノード電極1に対向する長尺状基板10の部分の電流密度に比べて大きくなる。
【0044】
そこで、第1の実施の形態に係るめっき装置100においては、複数のアノード電極1のうち各両端アノード1の表面積が他のアノード電極1の表面積よりも小さい。この場合、両端アノード1の抵抗値が他のアノード電極1の抵抗値よりも大きくなる。
【0045】
それにより、両端アノード1から長尺状基板10に流れる電流が抑制される。したがって、両端アノード1から長尺状基板10に流れる電流を他のアノード電極1から長尺状基板10に流れる電流に等しくすることまたは近づけることが可能となる。それにより、両端アノード1に対向する長尺状基板10の部分の電流密度を他のアノード電極1に対向する長尺状基板10の部分の電流密度に等しくすることまたは近づけることが可能となる。
【0046】
この場合、複数のアノード電極1に供給される一定の電流(供給電流)を増加させることにより、両端アノード1から長尺状基板10に流れる電流および他のアノード電極1から長尺状基板10に流れる電流をめっき焼けが発生しない電流の上限に近づけることが可能となる。その結果、めっき焼けを防止しつつ長尺状基板10のめっきの効率を向上させることが可能となる。
【0047】
また、本実施の形態のめっき装置100においては、複数のアノード電極1が棒状の金属から形成されるため、各アノード電極1の製造時に棒状の金属からなるアノード電極1の長さ方向に垂直な断面の面積を調整することにより、各アノード電極1の表面積を精度良く調整することができる。したがって、両端アノード1から長尺状基板10に流れる電流を他のアノード電極1から長尺状基板10に流れる電流に精度良く等しくすることまたは近づけることができる。
【0048】
また、本実施の形態のめっき装置100においては、複数のアノード電極1のうち両端アノード1から中央アノード1かけて段階的に表面積が大きくなるように設定される。したがって、全てのアノード電極1から長尺状基板10に流れる電流をより精度よく互いに等しくすることまたは近づけることができる。それにより、めっき焼けを防止しつつ長尺状基板10のめっきの効率をより十分に向上させることができる。
【0049】
なお、複数のアノード電極1から長尺状基板10に流れる電流を互いに等しくすることまたは近づけることが可能であれば、各中間アノード1の表面積が各中央アノード1の表面積と等しいまたは各中央アノード1の表面積よりも小さくてもよい。
【0050】
また、2つの両端アノード1の形状が互いに異なってもよく、2つの中間アノード1の形状が互いに異なってもよく、2つの中央アノード1の形状が互いに異なってもよい。
【0051】
(2)第2の実施の形態
本発明の第2の実施の形態に係るめっき装置100について、上記第1の実施の形態のめっき装置100と異なる点を説明する。
【0052】
図4は、第2の実施の形態に係るめっき装置100の複数のアノード電極2の構成を示した図である。図4に示すように、第2の実施の形態に係るめっき装置100は、3つ以上のアノード電極1の代わりに、3つ以上(本例では6つ)のアノード電極2を備える。各アノード電極2は、例えばチタンからなるメッシュ状のケース110内に例えば銅からなる複数の球状のアノードボール112が収容された構成を有する。各アノード電極2は、耐酸性のアノードバック113内に収容された状態でめっき槽102内に配置される。
【0053】
以下、複数のアノード電極2のうち、両端に配置された2つのアノード電極2をそれぞれ両端アノード2と呼び、その2つの両端アノード2とそれぞれ隣り合う2つのアノード電極2をそれぞれ中間アノード2と呼び、その2つの中間アノード2の間に配置された2つのアノード電極2をそれぞれ中央アノード2と呼ぶ。
【0054】
本実施の形態に係るめっき装置100においては、2つの両端アノード2のアノードボール112の数が互いに等しく、2つの中間アノード2のアノードボール112の数が互いに等しく、2つの中央アノード2のアノードボール112の数が互いに等しい。また、各両端アノード2のアノードボール112の数は各中間アノード2のアノードボール112の数よりも少なく、各中間アノード2のアノードボールの数は各中央アノード2のアノードボール112の数よりも少ない。
【0055】
各アノード電極2のアノードボール112の数は、各アノード電極2の表面積の大きさに対応する。すなわち、アノードボール112の数が多いほど、アノード電極2の表面積が大きい。したがって、各両端アノード2の表面積は各中間アノード2の表面積よりも小さく、各中間アノード2の表面積は各中央アノード2の表面積よりも小さい。例えば直径が27mmのアノードボール112を用いた場合、各両端アノード2のアノードボール112の数は例えば10個以上40個以下であり、各中間アノード2のアノードボール112の数は例えば30個以上80個以下であり、各中央アノード2のアノードボール112の数は例えば60個以上120個以下である。
【0056】
第2の実施の形態に係るめっき装置100においては、複数のアノード電極2のうち各両端アノード2のアノードボール112の数が他のアノード電極2のアノードボール112の数よりも少ない。この場合、両端アノード2の抵抗値が他のアノード電極2の抵抗値よりも大きくなる。
【0057】
それにより、両端アノード2から長尺状基板10に流れる電流が抑制される。したがって、両端アノード2から長尺状基板10に流れる電流を他のアノード電極2から長尺状基板10に流れる電流に等しくすることまたは近づけることが可能となる。それにより、両端アノード2に対向する長尺状基板10の部分の電流密度を他のアノード電極2に対向する長尺状基板10の部分の電流密度に等しくすることまたは近づけることが可能となる。
【0058】
この場合、複数のアノード電極2に供給される一定の電流(供給電流)を増加させることにより、両端アノード2から長尺状基板10に流れる電流および他のアノード電極2から長尺状基板10に流れる電流をめっき焼けが発生しない電流の上限に近づけることが可能となる。その結果、めっき焼けを防止しつつ長尺状基板10のめっきの効率を向上させることが可能となる。
【0059】
また、本実施の形態のめっき装置100においては、複数のアノード電極2がケース110とそのケース110内に収容されるアノードボール112とから構成されるため、各アノード電極2のアノードボール112の数を調整することにより、各アノード電極2の表面積を容易に調整することができる。したがって、両端アノード2から長尺状基板10に流れる電流を他のアノード電極2から長尺状基板10に流れる電流に容易に等しくすることまたは近づけることができる。
【0060】
なお、各アノードボール112の直径は、例えば10mm以上30mm以下である。上下方向における各ケース110の長さは、例えば100mm以上500mm以下であり、長尺状基板10の搬送方向におけるケース110の長さは、例えば20mm以上150mm以下であり、長尺状基板10に垂直な方向における各ケース110の長さは、例えば20mm以上80mm以下である。
【0061】
なお、複数のアノード電極2から長尺状基板10に流れる電流を互いに等しくすることまたは近づけることが可能であれば、2つの両端アノード2のアノードボール112の数が互いに異なってもよく、2つの中間アノード2のアノードボール112の数が互いに異なってもよく、2つの中央アノード2のアノードボール112の数が互いに異なってもよい。
【0062】
また、複数のアノード電極2のケース110の形状は、互いに同じであってもよく、または互いに異なってもよい。ただし、複数のアノード電極2において、上下方向における複数のアノードボール112の配置幅が等しいことが好ましい。
【0063】
(3)変形例
上記第1および第2の実施の形態では、めっき槽102内に6つのアノード電極1,2が設けられるが、これに限らず、3〜5つまたは7つ以上のアノード電極1,2がめっき槽102内に設けられてもよい。
【0064】
その場合、両端のアノード電極1,2の表面積が他の少なくとも1つのアノード電極1,2の表面積よりも小さくなるように設定される。また、両端のアノード電極1,2から中央のアノード電極1,2にかけて段階的に表面積が大きくなるように設定されることが好ましい。
【0065】
(4)実施例および比較例
種々の条件でめっき装置100により長尺状基板10に電解めっきを行い、各アノード電極に流れる電流を測定した。
【0066】
(4−1)実施例1
実施例1では、上記第1の実施の形態に係るめっき装置100を用いた。なお、各両端アノード1の表面積を450cmとし、各中間アノード1の表面積を750cmとし、各中央アノード1の表面積を1500cmとした。この場合、両端アノード1の表面積が中央アノード1の表面積の30%となり、中間アノード1の表面積が中央アノード1の表面積の50%となる。
【0067】
(4−2)実施例2および実施例3
実施例2および実施例3では、上記第2の実施の形態に係るめっき装置100を用いた。実施例2では、直径が27mmのアノードボール112を用い、各両端アノード2のアノードボール112の数を25個とし、各中間アノード2のアノードボール112の数を45個とし、各中央アノード2のアノードボール112の数を80個とした。実施例3では、直径が27mmのアノードボール112を用い、各両端アノード2のアノードボール112の数を25個とし、長尺状基板10の搬送方向における上流側の中間アノード2のアノードボール112の数を45個とし、長尺状基板10の搬送方向における下流側の中間アノード2のアノードボール112の数を50個とし、各中央アノード2のアノードボール112の数を80個とした。
【0068】
(4−3)比較例1
比較例1では、6つのアノード電極1の表面積が全て1500cmである点を除いて上記実施例1と同様の構成のめっき装置100を用いた。
【0069】
(4−4)比較例2
比較例2では、6つのアノード電極2のアノードボール112の数がそれぞれ80個である点を除いて、上記実施例2,3と同様の構成のめっき装置100を用いた。
【0070】
(4−5)実施例1および比較例1の評価
実施例1および比較例1においては、整流器42から複数のアノード電極1に流れる定電流(供給電流)を30A、45Aおよび60Aに調整し、各アノード電極1に流れる電流を調べた。図5には、実施例1において各アノード電極1に流れる電流が示される。図6には、比較例1において各アノード電極1に流れる電流が示される。
【0071】
図5および図6においては、横軸が長尺状基板10の搬送方向(矢印MDで示される方向)に関する各アノード電極1の位置を示し、縦軸が各アノード電極1に流れる電流[A]を示す。
【0072】
図5に示すように、実施例1では、供給電流が30A、45Aおよび60Aのいずれである場合でも、6つのアノード電極1に流れる電流がほぼ均一であった。一方、図6に示すように、比較例1では、供給電流が30A、45Aおよび60Aのいずれである場合でも、両端アノード1に流れる電流が中央アノード1および中間アノード1に流れる電流に比べて大きくなった。すなわち、6つのアノード電極1に流れる電流が不均一であった。
【0073】
(4−6)実施例2,3および比較例2の評価
実施例2,3および比較例2においては、整流器42から複数のアノード電極2に流れる定電流(供給電流)を45Aに調整し、各アノード電極2に流れる電流を調べた。図7には、実施例2、実施例3および比較例2において各アノード電極2に流れる電流が示される。
【0074】
図7においては、横軸が長尺状基板10の搬送方向(矢印MDで示される方向)に関する各アノード電極2の位置を示し、縦軸が各アノード電極2に流れる電流[A]を示す。
【0075】
図7に示すように、実施例2および実施例3では、6つのアノード電極2に流れる電流がほぼ均一であった。一方、比較例2では、両端アノード2に流れる電流が中央アノード1および中間アノード2に比べて大きくなった。すなわち、6つのアノード電極2に流れる電流が不均一であった。
【0076】
これらの結果から、複数のアノード電極1,2のうち両端に配置されるアノード電極1,2の表面積が他のアノード電極1,2の表面積よりも小さく設定されることにより、両端アノード1,2から長尺状基板10に流れる電流を他のアノード電極1,2から長尺状基板10に流れる電流に等しくすることまたは近づけることができることがわかった。
【0077】
したがって、複数のアノード電極1,2への供給電流を増加させることにより、両端のアノード電極1,2から長尺状基板に流れる電流および他のアノード電極1,2から長尺状基板に流れる電流をめっき焼けが発生しない電流の上限に近づけることが可能となる。
【0078】
(5)請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0079】
上記実施の形態においては、長尺状基板10が長尺状基板の例であり、めっき装置100がめっき装置の例であり、めっき槽102がめっき液収容部の例であり、搬送ロール101a〜101dが搬送部の例であり、整流器42および給電ロール50a,50bが給電部の例であり、アノード電極1,2が陽極の例であり、アノード電極1が棒状の金属の例であり、アノードボール112が球状金属の例であり、ケース110がケースの例であり、配線回路基板25が配線回路基板の例である。
【0080】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は種々の配線回路基板の製造に有効に利用できる。
【符号の説明】
【0082】
1,2 アノード電極
10 長尺状基板
20 絶縁層
21 シード層
22 めっきレジスト
23 配線層
24 配線パターン
25 配線回路基板
41 ケーブル
42 整流器
50a,50b 給電ロール
100 めっき装置
101a,101b,101c,101d 搬送ロール
102 めっき槽
103 開口
110 ケース
112 アノードボール
113 アノードバッグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状基板をめっきするめっき装置であって、
めっき液を収容するめっき液収容部と、
前記めっき液収容部内で前記長尺状基板を長さ方向に搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送される前記長尺状基板に沿って並ぶように前記めっき液収容部内に配置される3つ以上の複数の陽極と、
前記長尺状基板が陰極となるように前記長尺状基板と前記複数の陽極との間に電圧を印加する給電部とを備え、
前記複数の陽極のうち両端に配置される陽極の表面積は、他の少なくとも1つの陽極の表面積よりも小さいことを特徴とするめっき装置。
【請求項2】
前記複数の陽極の各々は棒状の金属からなり、
前記両端に配置される陽極の長さ方向に垂直な断面の面積は、他の少なくとも1つの陽極の長さ方向に垂直な断面の面積よりも小さいことを特徴とする請求項1記載のめっき装置。
【請求項3】
前記複数の陽極の各々は、
複数の球状金属と、
前記複数の球状金属が収容されるケースとを含み、
前記複数の陽極のうち両端に配置される陽極の前記球状金属の数は、他の少なくとも1つの陽極の前記球状金属の数よりも少ないことを特徴とする請求項1記載のめっき装置。
【請求項4】
前記両端に配置される陽極から中央に配置される陽極にかけて段階的に表面積が大きくなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のめっき装置。
【請求項5】
長尺状基板を用意する工程と、
前記長尺状基板に電解めっきを施す工程とを備え、
前記電解めっきを施す工程は、
めっき液を収容するめっき液収容部内で前記長尺状基板を長さ方向に搬送する工程と、
搬送される前記長尺状基板に沿って並ぶように前記めっき液収容部内に配置された3つ以上の複数の陽極と前記長尺状基板との間に電圧を印加する工程とを含み、
前記複数の陽極のうち両端に配置される陽極の表面積は、他の少なくとも1つの陽極の表面積よりも小さいことを特徴とする配線回路基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−127172(P2011−127172A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286193(P2009−286193)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】