説明

めっき装置及びめっき方法

【課題】表面の凹凸量が7μm以下であるフィルドビアを形成できるめっき方法を提案する。
【解決手段】 可撓性を有する絶縁性接触体が直接接触することにより、バブリングやめっき液を基板に噴射する攪拌方法に比べて拡散層(めっき成分や添加剤濃度が薄い領域)を薄くすることができる。このため、バイアホール内部(凹内)を除く被めっき表面には、攪拌方法よりめっき液成分中に含まれている抑制剤が多くつきやすい。それに対し、バイアホールの内部(凹内)はバイアホール(凹)の深さ分拡散層の厚さが厚いので、攪拌方法と同様に抑制剤が付き難い。それ故、バイアホール内部(凹部)はそれ以外の部分に比してめっき膜の成長速度が速くなり、入り込み量の小さいめっき層ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非貫通孔や貫通孔内へめっきを行う際、均一な孔内へのめっき膜の形成とフィルド性を有するスルーホールめっき、ビアホールめっきを形成することができるめっき方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2000−239892号は、めっき槽と、めっき槽に帯状基板を進入させる進入手段と、めっき槽内に設けられるとともに下降してきた連続帯を上方へ折り返す下折り返し手段と、下折り返し手段へ向けて下降する帯状基板にめっきを施す下降めっき区間と、下折り返し手段から上昇する帯状基板にめっきを施さずにこれを通過させる非めっき区間と、非めっき区間を通過した直後の帯状基板をめっき槽から引き出す引き出し手段とからなるめっき装置を開示している。また、特許文献2には、Si基板表面の非貫通孔にポリビニールアルコールからなる接触パッドを当ててめっきを行うめっき方法が開示されている。特許文献3には、Si基板表面の非貫通孔に微少孔を有する接触体を当ててめっきを行うめっき方法が開示されている。
【特許文献1】特開2000−239892号
【特許文献2】特開2000−232078号
【特許文献3】特開2004−225119号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、帯状基板にめっきを施す場合、めっき槽数や、めっき槽長を増すことなく生産性を上げたいという要望から電流密度を高くする。このため、フィルドビアを形成しようとすると、1製品内において図17(A)に示すようなビアホール44中央に深い凹み37が残ったり、反対に凸部が出来たりすることがあった。
【0004】
ここで、特許文献2、特許文献3に示されているように、絶縁体をめっき面に接触させながらめっきを行うことで、ビアホールの表面の平滑化を図ることも考えられる。しかしながら、特許文献2、特許文献3は、半導体の製造技術であり、平滑度が高いシリコン基板上での配線形成であり、この技術を転用した場合には、図17(C)に示すように、凹凸があるプリント配線板30上に平坦な回路を形成してしまう。導体回路46に、厚みの薄い部分Eと、厚い部分Fとができ、熱応力が加わった際に厚みの薄い部分で断線が生じ易い。また、インピーダンス整合性が下がり、電気特性が低下する。また、半導体では、ビアホール径が15〜400nmであるのに対して、プリント配線板では10μm以上であり、径が100〜1000倍異なるので、フィルド性が悪化し易い。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、フィルドビア及びスルーホール導体を形成するにあたり、表面の凹凸量が7μm以下であるめっき導体を形成できるめっき方法及びめっき装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明は、プリント配線板、帯状基板のめっき表面に、少なくとも表面に可撓性を有する接触体の少なくとも一部を接触させながらめっきを行うめっき装置、めっき方法である。
【0007】
接触体が可撓性を備えるので、プリント配線板にうねり、凹凸があっても、接触体がうねり、凹凸に追従し、プリント配線板の表面に均一な厚さのめっき膜を形成し易い。また、接触体が屈曲するので、基板の断面方向(ビアホールやスルーホール内の方向)へ加わる力が弱まり、ビアホール、スルーホール内に接触体が入り込み難くなる。ここで、接触体としては、ビアホール、スルーホール内に入り込む入り込み量(図18(A)中のX)が10μm以下となる接触体を用いることが望ましい。
【0008】
本願発明のように、プリント配線板表面へ、可撓性を有する接触体を直接接触させることにより、従来のバブリングやめっき液を基板に噴射する攪拌方法に比べて拡散層(めっき成分や添加剤濃度が薄い領域)を薄くすることができる。このため、ビアホール内部(凹内)やスルーホール内部を除く被めっき表面には、従来の攪拌方法よりめっき液成分中に含まれている抑制剤が多くつきやすい。それに対し、ビアホールの内部(凹内)やスルーホール内部はビアホール(凹)やスルーホール内部の深さ分拡散層の厚さが厚いので、従来の攪拌方法と同様に抑制剤が付き難い。それ故、ビアホール内部(凹部)やスルーホール内部はそれ以外の部分に比してめっき膜の成長速度が速くなる。また、ビアホール(凹)部やスルーホール内部以外の被めっき面はめっきが析出し難いことから、ビアホール(凹)部やスルーホール内部以外でのめっき主成分(銅めっきなら銅、ニッケルめっきならニッケル)の消費が少なくなるので、ビアホール(凹)内やスルーホール内部へのめっき主成分の供給量が多くなる。そのため、ビアホール(凹)内やスルーホール内部は、めっき膜の成長速度自体も速くなる。
【0009】
図4(A)に示すように接触体18は、屈曲性があるので、形成されるめっき層40が厚くなるに従い屈曲度合いが自動的変わる。また、図4(A)中で、Hで示す、接触体18の直前の部分にめっき液を保持して接触体18が移動するので、プリント配線板表面にフレッシュなめっき液を供給できる。また、接触体18は、図4(A)中で、Gで示すように接触体18の前の部分で、屈曲して移動するので、プリント配線板側に向かうめっき液流が出来やすくなる。このため、ビアホール内、スルーホール内を含むプリント配線板表面にフレッシュなめっき液を供給できる。このように、基板表面にフレッシュなめっき液を供給することで、電流密度を上げることが可能となり、めっき成長速度を高めることができる。
【0010】
接触体の材質は、めっき液に対する耐性(耐酸性、特に、耐硫酸銅めっき液性)が有り、可撓性、屈曲性が有ればよく、例えば、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニールアルコール、酢酸ビニール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、フッ素樹脂、塩化ビニール樹脂等を用いることができる。
【0011】
このような樹脂を繊維状にして、束ね、ブラシ、ハケ状の接触体とすることができる。この繊維の太さは、スルーホール、ビアホール径よりも大きいことが、孔内への入り込みを防止する上から望ましい。この繊維の内部に気泡を含めたり、ゴムなどを添加することで、屈曲性を調整することができる。また、上記樹脂を板状にし、ヘラのようにしてプリント配線板に接触させることもできる。さらに、図18(B)に示すように、可撓性を有する接触体を、基板に対して周回運動させることも可能である。接触体をブラシにすると繊維と繊維の間をめっき液が通過できるので、電流密度を高くできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
[実施例1]
まず、図1〜図2を参照して本発明の実施例1に係るめっき装置の構成について説明する。
図1は、実施例1のめっき装置の全体構成を示す説明図である。図2は、めっき槽内の片側の搬送機構の構成を示す説明図である。
めっき装置10は、フレキシブルプリント配線板用の帯状基板にめっきを施すためのもので、幅180mm長さ120mの帯状基板を巻き取ったリール98Aから引き出される帯状基板30Aの片面に電解めっきを施し、巻き取りリール98Bに巻き取る。めっき装置10は、帯状基板30Aのめっき面側に接触している絶縁性筒状の接触体18と、接触体18により帯状基板30Aが撓むのを防ぐ背板28と、めっき液への給電を行う陽極14とを備える。陽極14内には、めっき液に銅分を補給する銅球が収容されている。図2中に示すようにめっき槽12内は、全体で20mのめっきラインを構成している。なお、絶縁性の接触体の代わりに、半導体の接触体を用いることもできる。
【0013】
接触体18は、高さ200mm、直径100mmのPVC(塩化ビニール)製の筒状のブラシからなる。該接触体18では、ブラシの先端がプリント配線板側に接触すると共に屈曲する。接触体18は、ステンレス製の支持桿18Aに支持され、図示しないギアを介して回動される。接触体18は、帯状基板30Aの搬送方向に対して隣接配置されると共に、それぞれで回転方向が異なるように回動される。これは、回転方向が同一であると、帯状基板30Aに回転方向の搬送力を加えることになり、余計なテンションが掛かるからである。実施例1では、回転方向が異なるため、帯状基板30Aに加わる搬送力が相互に打ち消し合い、余計なテンションを掛けることがない。ここで、接触体18の回転方向は、図2中に記載されている矢印の方向である。実施例1では、接触体18の回転軸は帯状基板30Aの搬送方向に対して直行しているが、この代わりに、回転軸が斜め、又は、平行方向になるようにも配置できる。
【0014】
図3を参照して、該めっき装置10によるフィルドビア及び導体回路の形成について説明する。図3(A)は、両面銅張フレキシブル基板である。この基板の片面に市販のドライフィルムを貼りつけ、周知の写真法でビアホール36形成位置の銅箔33をエッチング除去し、銅箔を33マスクとして炭酸ガスレーザでビアホール36を形成した(図3(B)参照)。次いで、銅箔33及びビアホ−ル36の表面に化学銅めっき38を形成し(図3(C)、その後、図1に示すめっき装置10により電解めっき膜40を形成した(図3(D))。この場合、接触体の一部はプリント配線板の表面に少なくとも一部に接触しながらめっき形成している。電気めっき開始時においては、接触体18はプリント配線板の化学銅めっき膜38に接触していて、電解めっっき膜が形成されると、該電解めっっき膜に接する。
【0015】
実施例1のめっき装置、めっき方法では、図4(A)に示すようにビアホール内もしくはスルーホール内で、めっき膜40と接触体18のブラシ毛18Bの先端とは接触し難い。内部にめっき膜が形成されると、他の導体部分とめっき膜の高さの差が小さくなる。高さの差が小さくなった時点で、ブラシ(接触体の一部分を形成)と接触し易くなるために、めっき膜の成長が抑制されるもしくはめっき膜の成長を止めることになる。その結果、ビアホール(もしくはスルーホール)と導体回路と均一の高さとなりやすい。その結果、図4(B)に示すように凹凸量が小さな(7μm以下)フィルドビア44を製造することができる。
【0016】
また、ビアホールやスルーホールの開口した部分のめっきは成長するが、該ビアホール以外の導体部分である導体回路46は、接触体の接触により厚くなりすぎないのである。つまり、ビアホール内のめっきは確実に形成されるが、それ以外の導体回路46部分では、ビアホールの厚みに比べて、また、従来技術(特開2000−239892)でのめっき方法による導体回路部分と比べて相対的に厚みが薄いめっき膜を形成することができる。それにより、従来よりも高密度化した導体回路を形成することができる。特に、導体回路を全面に形成し、エッチングにより導体回路を形成する際(サブトラクティブ法、テンティング法)には、ファインピッチに導体回路を形成でき、高密度化のために有利である。
【0017】
実施例1では、移動している被めっき表面(帯状基板表面)に接触体が接触している。そのため、バブリングや揺動、被めっき面への液流の噴射といった従来の攪拌方法と違って、被めっき面近傍に形成される拡散層(めっき主成分濃度や添加剤濃度が被めっき面に向かって希薄になる領域)を薄くできる。そのため、めっき液中のめっき成長を抑制する添加剤(抑制成分)がビアホール以外(基板表面の被めっき面)には多くつきやすくなる。それに対して、ビアホール内は、その探さの分抑制成分はつき難い(基板表面の被めっき面についている抑制成分量/ビアホール内の被めっき面についている抑制成分量比が、従来技術に比して大きくなる)。その結果、ビアホール内のめっき成長速度/ビアホール以外(基板表面の被めっき面)のめっき成長速度比が大きくなる。また、ビアホール以外でのめっき成分(銅めっきの場合、銅成分)の消費が少なくなるので、ビアホール内でのめっき成分の消費が優先的に行われるため、ビアホール内のめっき成長速度が速くなる。それ故、従来技術に比べて、実施例1では、基板表面のめっき厚みは薄く、ビアホール内の効率よくめっき膜40を形成できる。スルーホールにおいても同様に、基板表面のめっき厚は薄く、スルーホール内にめっき導体を充填できる。
【0018】
また、接触体を被めっき面上に移動あるいは回転、もしくは、移動させながら回転させることによりめっき液の液流を一定方向にすることができる。特に、ビアホール周りの液流を一定方向に供給量を安定にすることができる。そのため、ビアホール周辺でのめっき膜形成のバラツキをなくすことが可能となる。そのために、ビアホールを形成する場合であれば、ビアホールの凹みが小さくなるし、スルーホールを形成する場合であれば、表層であるスルーホールの肩部分における変形がないのである。
【0019】
本実施例のめっき方法によれば、接触体の種類、接触体の回転条件、移動条件、めっき液の組成、めっき条件によっては、形成途中のビアホールもしくはスルーホールへめっき液が送られる。それにより、強制的にビアホールもしくはスルーホールへのめっき液が供給されて被めっき面に対してめっき液の接触が増えるために、めっき膜の成長を促進する。
言い換えると、接触体などによりビアホールもしくはスルーホール周辺において、不定期な液流が形成されない。そのために形成されためっき膜の膜の内部結晶構造が整列される。従来に比べると、めっき膜内部での内部抵抗を低減することができるのである。これにより、電気接続性が向上され、高温高湿下やヒートサイクル条件下の信頼性試験を行っても、従来と比べ、長期に渡り信頼性が確保されやすくなるのである。これはスルーホールにおいても同様の傾向がみられる。
【0020】
接触体の移動速度、回転速度(外周での速度)は1.0〜8,0m/min.であることが望ましい。1.0 m/min.未満では、液流を変えることができないので、接触体を用いないのと同様の結果になることがある。8.0m/min.を越えると、接触体の移動速度、回転速度が早くなるために、液流を変えることができないことがある。そのために、移動、回転して得られる結果よりも劣ってしまう。移動速度や回転速度は、3.0〜7.0m/minの間が最も望ましく、その範囲であれば、局所的にも液流を変えられないということがない。
【0021】
接触体の大きさは、被めっき帯状基板のめっき部分幅と同等以上あることが望ましい。接触体の押し込み量(接触体の先端がプリント配線板の表面に接触した時点からさらに押し込む量)は、プリント配線板表面に対して、1.0〜15.0mm押し込むことが望ましい。1.0mm未満では、接触体を用いないのと同様の結果になることがある。15.0mmを越える押し込み量では、めっき液の供給が阻害されるために、ビアホールおよびスルーホールでのめっき膜のバラツキを誘発してしまうことがある。ビアホール内やスルーホール内に接触体が入り込み易くなるからである。2〜8mmの押し込み量が最も望ましい。めっき膜のバラツキが起こしにくいからである。
【0022】
接触体は、可撓性を備えるブラシ、ヘラのいずれかで選ばれるものを用いることが望ましい。可撓性を備えることで、基板の凹凸に追従し、凹凸面に均一な厚みでめっき膜を形成することができる。
【0023】
接触体として樹脂ブラシを用いることができる。この場合、毛先を被めっき面に当接させる。ここで、毛の直径は、スルーホール、ビアホールを形成する孔径よりも大きいことが望ましい。これは、スルーホール、ビアホール形成用の孔内に毛先が入り込まず、穴内にめっき膜を適正に充填できるからである。樹脂ブラシとしては、耐めっき薬液性のあるPP、PVC(塩化ビニール)、PTFE(四弗化エチレン)等を用いることができる。また、樹脂、ゴムを用いてもよい。更に、毛先として塩化ビニール織布、不織布等の樹脂繊維を用いることも可能である。
【0024】
図4(C)は、図4(B)中の円Bで示す電解めっき膜40の部位を拡大したスケッチである。図中に示すように、実施例1のめっき装置では、銅の結晶構造は整列している。これは、接触体18により、ビアホール周りの液流を一定方向にすることができるためと考えられる。
【0025】
図17(B)は、従来技術(特開2000−239892号)のフィルドビアでの電解めっき膜を拡大したスケッチである(図17(A)中の円Dに相当)。従来技術では、図4(C)に示す実施例1の場合と異なり、銅の結晶構造が綺麗に整列していない。
【0026】
引き続き、実施例1のめっき装置を用いるプリント配線板の製造(サブトラクティブ法、テンティング法)について、図3を参照して説明する。
厚さ25μmのポリイミド帯状基板30の表面に9μmの銅箔33が、裏面に12μmの銅箔34がラミネートされている積層帯状基板30Aを出発材料とした(図3(A))。まず、ライトエッチングにより表面の9μmの銅箔33の厚みを7μmに調整した。次に、レーザにより、銅箔33及びポリイミド帯状基板30を貫通し、銅箔34の裏面に至るビアホール36を穿設した(図3(B))。そして、帯状基板30Aの表面にパラジウム触媒を付与することにより、触媒核を付着させた(図示せず)。
【0027】
次に、上村工業製の無電解めっき液(スルカップPEA)中に、触媒を付与した基板を浸漬して、帯状基板30Aのめっき形成面に厚さ1.0μmの化学銅めっき膜38を形成した(図3(C))。
【0028】
ついで、帯状基板30Aを50℃の水で洗浄して脱脂し、25℃の水で水洗後、さらに硫酸で洗浄してから、図1を参照して上述しためっき装置10を用いて、以下の条件で電解めっきを施し電解めっき膜40を形成した(図3(D))。
〔電解めっき液〕
硫酸 2.24 mol/l
硫酸銅 0.26 mol/l
添加剤 19.5 ml/l
レベリング剤 50 mg/l
光沢剤 50 mg/l
〔電解めっき条件〕
電流密度 5.0〜30 mA/cm2
時間 10〜90 分
温度 22±2 ℃
ここで、電流密度は、5.0〜30mA/cm2、特に、10mA/cm2以上が望ましい。
【0029】
このとき、図1を参照して上述したように接触体18として、被めっき面に接触させながら、ビアホール36内に凹凸量:5〜7μm、銅箔33上に4μm、即ち、銅箔33側の導体回路の厚みが銅箔34と同じ12μmとなり、開口にフィルドビア44ができるように電解めっき膜40を形成した。このとき、接触体の速度7m/min、帯状基板30Aの搬送速度0.36m/min、接触体18の押し込み量は15mmである。
【0030】
そして、所定パターンのレジストを設け、エッチングを行うことにより、導体回路46及び導体回路42を形成した(図3(E))。いわゆるサブトラクティブ法、テンティング法である。
【0031】
[実施例2]
引き続き、実施例2に係る製造工程について、図5、図6を参照して説明する。
図1を参照して上述した実施例1では、めっき装置10を用いて片面にフィルドビア44を製造した。これに対して、実施例2では、積層の帯状基板130の両面からめっきを行いスルーホールを形成する。また、実施例2では、接触体18としてプリント配線板側に毛の先端が当接するPVC(塩化ビニール)製の筒状のブラシを用いた。
【0032】
図5は、実施例2に係るめっき装置のめっき槽の構成を示している。実施例2では、背板28が省かれ、対向配置された接触体18が帯状基板130を挟むように構成されている。
【0033】
(1)先ず、導体回路42の形成されたコアとなる帯状基板30A、30B、30Cを積層して成る積層基板130にスルーホール用通孔136aを穿設する(図6(A))。
【0034】
(2)次に、積層基板130全体及びスルーホール用通孔136a内に化学銅めっき膜38を形成する(図6(B))。
【0035】
(3)図5を参照して上述した実施例2のめっき装置10により、積層基板130の表面に電解めっき膜40を形成すると共に、スルーホール用通孔136a内を電解めっき膜40で充填する(図6(C))。
【0036】
(4)エッチングレジストを形成した後、エッチングレジスト非形成部の電解めっき膜40及び化学銅めっき膜38をエッチングで除去した後、エッチングレジストを除去し、独立の上層導体回路46(スルーホール136を含む)とした(図6(D))。いわゆるテンティング法、サブトラクティブ法である。
【0037】
[実施例3]
図1を参照して上述した実施例1のめっき装置では、接触体18を樹脂ブラシで構成した。これに対して、実施例3では、接触体18をへら状の塩化ビニール織布で構成した。
実施例3では、めっきレジストを形成してめっき層を設けた。この製造工程について、図7を参照して説明する。
【0038】
ポリイミド帯状基板30の裏面に銅箔34がラミネートされている積層帯状基板に、レーザによりポリイミド帯状基板30を貫通し、銅箔34の裏面に至るビアホール36を穿設する(図7(A))。そして、帯状基板30Aの表面に化学銅めっき膜38を形成する(図7(B))。その後、所定パターンのめっきレジスト層39を形成する(図7(C))。図1を参照して上述しためっき装置10で、塩化ビニール織布の接触体18を用いて電解めっきを施し電解めっき膜40を形成する(図7(D))。最後に、レジスト層39を剥離し、レジスト層39下の化学銅めっき膜38を除去することで、フィルドビア44を形成する(図7(E))。この場合、接触体の一部は、少なくともレジスト層(めっきレジスト)の表面に接しながらめっきを行っている。
【0039】
[実施例4]
実施例4では多層プリント配線板を製造した。
まず、図8を参照して本発明の実施例4に係るめっき装置の構成について説明する。
上述した第1〜第3実施例では、帯状基板30Aにめっきを施した。これに対して、実施例4では、1枚取りのプリント配線板にめっきを施す。第4実施例のめっき装置110は、めっき液114を満たしためっき槽112と、めっき液114を循環させるための循環装置116と、プリント配線板30の表面側のめっき面に当接するブラシ118Bを植設した絶縁板118Aから成る接触体118と、接触体118を昇降桿122を介してプリント配線板30に沿って上下動させる昇降装置124とから成る。
【0040】
実施例4の製造方法を図9を参照して説明する。実施例1の基板(図3(E);下層基板)のフィルドビア44側には25μm厚のエポキシフィルム130を、銅箔34からなる導体回路42側には各導体回路を短絡する目的でアルミ箔43を積層した(図9(A))。その後、フィルドビア44の直上にレーザでビアホール36を形成した(図9(B))。続いて、実施例1と同様のめっき条件でエポキシフィルム上とビアホール内に化学銅めっき膜38、電解めっき膜40を形成した(図9(C))。アルミ箔43を剥離し、エポキシフィルム130上のめっき膜をパターニングしてフィルドビア44、導体回路46を形成し、多層プリント配線板とした(図9(D))。
【0041】
[実施例5]
実施例5では、実施例4と同様なめっき装置を用いてプリント配線板を形成した。但し、実施例4では、実施例4のブラシの代わりに、図10中に示すようにプリント配線板30の表面側のめっき面に当接するゴムへら(ゴム板)218Bを設けた絶縁板218Aから成る接触体218を用いた。また、実施例5では、化学銅めっき膜を形成せずに、電解めっき膜を形成した。実施例4,5では、プリント配線板の片面に銅めき膜を形成したが、図19に示すプリント配線板30を挟むように接触体118を一対備えるめっき装置によりめっきを行うことも可能である。
【0042】
実施例5の製造方法を図11を参照して説明する。図11(A)に示すポリイミド帯状基板30の裏面に銅箔34がラミネートされている積層帯状基板に、レーザによりポリイミド帯状基板30を貫通し、銅箔34の裏面に至るビアホール36を穿設する(図11(B))。そして、図1を参照して上述しためっき装置10で、電解めっきを施しビアホール36内に電解めっき膜40を形成する(図11(C))。最後に、銅箔34をエッチングして導体回路42を形成する(図11(D))。この場合、接触体の一部は、銅箔34の貼り付けられていない側の基板30の表面の一部に接しながらめっきを行う。
【0043】
[実施例6]
実施例6では、実施例5と同様に化学銅めっき膜を形成せずに、電解めっき膜を形成した。この実施例6の製造方法を図12を参照して説明する。
【0044】
図12(A)に示すポリイミド帯状基板30の裏面に銅箔34がラミネートされている積層帯状基板に、レーザによりポリイミド帯状基板30を貫通し、銅箔34の裏面に至るビアホール36を穿設する(図12(B))。そして、図1を参照して上述しためっき装置10で、電解めっきを施しビアホール36内及び基板30の表面に電解めっき膜40を形成する(図12(C))。最後に、基板30の表面の電解めっき膜40及び裏面の銅箔34をエッチングして導体回路46、42を形成する(図12(E))。
【0045】
なお、図8及び図10のめっき装置によるめっきにおいても、接触体118、218の接触部(ブラシ毛)118A、ゴムへら218Bの押し込み量は、接触体の押し込み量と同様に、ブラシ毛118A、ゴムへら218Bの先端がプリント配線板の表面に接してから更に押し込まれる量である。また、接触体118、218は、プリント配線板30と平行に図中上下方向の他、左右方向、斜め方向にも移動させることができ、更に、プリント配線板30に対して垂直方向を回転軸として回転させることもできる。
【0046】
接触体の移動速度は1.0〜8,0m/min.であることが望ましい。1.0 m/min.未満では、液流を変えることができないので、接触体を用いないのと同様の結果になることがある。8.0m/min.を越えると、接触体の移動速度が早くなるために、液流を変えることができないことがある。そのために、移動して得られる結果よりも劣ってしまう。移動速度は、3.0〜7.0m/minの間が最も望ましく、その範囲であれば、局所的にも液流を変えられないということがない。
【0047】
接触体の大きさは、被めっき帯状基板のめっき部分幅と同等以上あることが望ましい。接触体の押し込み量(接触体の先端がプリント配線板の表面に接触した時からさらに押し込む量)は、プリント配線板表面に対して、1.0〜15.0mm押し込むことが望ましい。1.0mm未満では、接触体を用いないのと同様の結果になることがある。15.0mmを越える押し込み量では、めっき液の供給が阻害されるために、ビアホールおよびスルーホールでのめっき膜のバラツキを誘発してしまうことがある。ビアホール内やスルーホール内に接触体が入り込み易くなるからである。2〜8mmの押し込み量が最も望ましい。めっき膜のバラツキが起こしにくいからである。
【0048】
[試験]
樹脂層(厚さ30、45、60、90μm)の片面に銅箔が貼り付けられたプリント配線板にビアホール孔(直径40μm、60μm、80μm、120μm)を形成し、ビアホール孔側の樹脂層表面に0.3μmの化学銅めっき膜を形成した。化学銅めっき膜まで形成したプリント配線板に、図1に示すめっき装置を用いてビアホール内と樹脂層表面にめっき膜を形成し、その後、パターンを形成した(図17(D)参照)。その基板のフィルドビアの凹凸量(図4(B)参照)、導体層の厚み(図17(D))を測定(レーザ干渉計、目盛り付き顕微鏡)し、その結果を図13(A)中に示す。そして、接触体を用いない従来技術のめっき装置を用いて製造したプリント配線板を比較例として図13(B)中に示す。なお、めっき条件は、凹凸量が±7μm以下になるようめっき条件を設定した。
【0049】
図13(A)中で、ビア径40μmで層間厚30μmの欄での5/−3における5は、樹脂層に形成した導体層の厚み(図17(D)参照)を、−3はビアの凹み量(図4(B))参照)を表している。また、ビア径60μmで層間厚60μmの欄での12/+7における+7はビアの凸量(図4(B))参照)を表している。この例では、ビアホールの凹凸量を7μm以下にできているため、例えば、図9を参照して上述したように、多層プリント配線板(フィルドビアの直上にビア導体を形成した多層プリント配線板)を形成しても、ビアホールの接続性に信頼性を持たせることができる。
【0050】
[評価試験]
参考例1として、接触体として可撓性を有さないガラスを用いた。
実験例1及び参考例1として、図9(D)に示すような多層プリント配線板を作製した。この多層プリント配線板内には、ビアホール径60μm(樹脂厚さ60μm)のビアホール導体が100穴連結した配線が形成されている。この配線の抵抗値を測定して初期値とした。その後、−55度×5分⇔125度×5分を1サイクルとして、1000回ヒートサイクルを繰り返した。1000サイクル終了後、再度配線抵抗を測定した。抵抗変化率:(1000サイクル後の配線抵抗値−初期値の配線抵抗値)/初期値の配線抵抗値×100が±10%以内なら合格である。その結果を図14中に示す。参考例1では、導体層の厚みの薄い部分で破損しているものと推測される。
【0051】
上述した試験において、ビアホールの凹凸量を±7以下にするのに必要な導体層の厚みを図15に示し、図16に図表の内容をグラフにして示す。ここで、接触体を用いることで、導体厚(導体層の厚み)をほぼ半分にできることが分かる。それ故、ファイン化に有利である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
上述した実施例では、本実施例のめっき装置をビアホール、スルーホールの製造に用いる例を挙げたが、本実施例のめっき装置は、プリント配線板の種々の部位の製造に好適に適用することができる。また、上述した実施例では、電解めっきを例示したが、化学銅めっきにも本願の構成は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】めっき槽内の搬送機構の全体構成を示す説明図である。
【図2】めっき槽内の片側の搬送機構の構成を示す説明図である。
【図3】実施例1のめっき装置を用いるフレキシブルプリント配線板の製造工程を示す工程図である。
【図4】図4(A)、図4(B)は実施例1のめっき装置によるフィルドビア製造の説明図であり、図4(C)は、図4(B)中の円Dで示す部位を拡大したスケッチである。
【図5】実施例2のめっき装置のめっき槽内の搬送機構を示す斜視図である。
【図6】実施例2のめっき装置を用いるフレキシブルプリント配線板の製造工程を示す工程図である。
【図7】実施例3のめっき装置を用いるフレキシブルプリント配線板の製造工程を示す工程図である。
【図8】実施例4のめっき装置を示す説明図である。
【図9】実施例4の多層プリント配線板の製造工程を示す工程図である。
【図10】実施例5のめっき装置を示す説明図である。
【図11】実施例5のプリント配線板の製造工程を示す工程図である。
【図12】実施例6のプリント配線板の製造工程を示す工程図である。
【図13】実施例と比較例との評価結果を示す図表である。
【図14】実験例1と参考例1との評価結果を示す図表である。
【図15】ビアホールの凹凸量を±7以下にするのに必要な導体厚を示す図表である。
【図16】ビアホールの凹凸量を±7以下にするのに必要な導体厚を示すグラフである。
【図17】図17(A)は従来技術のフレキシブルプリント配線板を示す断面図であり、図17(B)は、図17(A)中の円Dで示す部位を拡大したスケッチであり、図17(C)は先行技術で形成したプリント配線板の断面図であり、図17(D)は、試験用に形成したビアホールの説明図である。
【図18】図18(A)は、接触体の入り込み量の説明図であり、図18(B)は、接触体の周回運動の説明図である。
【図19】実施例4の改変例めっき装置を示す説明図である。
【符号の説明】
【0054】
10 めっき装置
12 めっき槽
14 アノード
18 接触体
20 背板ベルト装置
22 無端ベルト
24 タイミングプーリ
26 タイミングプーリ
28 背板
30A 帯状基板
30 ポリイミド帯状基板(プリント配線板)
33、34 銅箔
36 ビアホール
38 化学銅めっき膜
40 電解めっき膜
42 導体回路
44 フィルドビア
46 導体回路
98A、98B リール
110 めっき装置
112 めっき槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非貫通孔又は貫通孔の少なくとも一方を有するプリント配線板の非貫通孔又は貫通孔内にめっき導体を形成してビアホール導体又はスルーホール導体とするめっき装置であって、
めっき液が入っているめっき槽と、
プリント配線板の表面に、少なくとも一部が接触し可撓性を有する接触体と、を備えることを特徴とするるめっき装置。
【請求項2】
前記プリント配線板の表面が被めっき面であることを特徴とする請求項1のめっき装置。
【請求項3】
前記プリント配線板の表面がめっきレジスト表面であることを特徴とする請求項1のめっき装置。
【請求項4】
前記接触体は、前記非貫通孔又は貫通孔内に入り込む量が10μm以下に調整されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1のめっき装置。
【請求項5】
前記接触体は、回転することを特徴とする請求項1又は請求項4のめっき装置。
【請求項6】
前記接触体は、前記プリント配線板に対して平行に移動することを特徴とする請求項1又は請求項4のめっき装置。
【請求項7】
前記プリント配線板が、前記めっき層内を搬送される帯状基板であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1のめっき装置。
【請求項8】
前記接触体は、ブラシ又はヘラである請求項1〜請求項7のいずれか1に記載のめっき装置。
【請求項9】
非貫通孔又は貫通孔の少なくとも一方を有するプリント配線板の非貫通孔又は貫通孔内にめっき導体を形成してビアホール導体又はスルーホール導体とするめっき方法において、少なくとも以下の(a)〜(b)工程を含むめっき方法:
(a)非貫通孔又は貫通孔を有するプリント配線板をめっき成分が入っているめっき液に接触させ;
(b)前記プリント配線板の表面に可撓性を有する接触体の少なくとも一部を接触させながらめっきする。
【請求項10】
帯状プリント配線板にめっきを施すめっき方法であって、
1以上の可撓性を備える接触体を前記帯状プリント配線板の表面に接触させながらめっきすることを特徴とするめっき方法。
【請求項11】
前記プリント配線板の表面が被めっき面であることを特徴とする請求項9又は請求項10のめっき方法。
【請求項12】
前記プリント配線板の表面がめっきレジスト表面であることを特徴とする請求項9又は請求項10のめっき方法。
【請求項13】
前記(b)工程において、前記プリント配線板又は前記接触体の少なくとも一方を移動させながらめっきすることを特徴とする請求項9又は請求項10のめっき方法。
【請求項14】
前記(b)工程において、前記接触体の表面を前記プリント配線板の表面に対して移動させながらめっきすることを特徴とする請求項9、請求項11,請求項12のいずれか1のめっき方法。
【請求項15】
前記接触体が回転していることを特徴とする請求項9又は請求項10のめっき方法。
【請求項16】
前記接触体の回転方向は、前記帯状プリント配線板の搬送方向に対して平行、斜め、垂直のいずれかであることを特徴とする請求項9又は請求項10のめっき方法。
【請求項17】
前記接触体が周回運動していることを特徴とする請求項9又は請求項10のめっき方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2007−224347(P2007−224347A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−45358(P2006−45358)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】