説明

めっき装置及びめっき方法

【課題】シード層が薄膜化され、シード層のシート抵抗値が10Ω/□以上になったり、電気抵抗が極端に大きなバリア層の表面に直接めっきを行ったりする場合であっても、基板への給電部であるカソード接点やその周辺部品を発熱から守ることができるようにする。
【解決手段】基板Wを保持する基板ホルダ36と、基板ホルダ36で保持した基板Wと接触して通電させるカソード接点44を備え該基板ホルダ36と一体に回転するカソード部38と、基板Wの表面に対向するように配置されたアノード66と、カソード接点44を冷却する冷却機構58を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき装置及びめっき方法に係り、特に、半導体ウェーハ等の基板の表面に設けた配線用凹部に銅や銀等の導電体(配線材料)を埋込んで埋込み配線を形成するのに使用されるめっき装置及びめっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体基板上に配線回路を形成するための金属材料として、アルミニウムまたはアルミニウム合金に代えて、電気抵抗率が低くエレクトロマイグレーション耐性が高い銅(Cu)を用いる動きが顕著になっている。この種の銅配線は、基板の表面に設けた微細な配線用凹部の内部に銅を埋込むことによって一般に形成される。この銅配線を形成する方法としては、CVD、スパッタリング及びめっきといった手法があるが、いずれにしても、基板のほぼ全表面に銅を成膜し、化学的機械的研磨(CMP)により不要の銅を除去するようにしている。
【0003】
図1は、この種の銅配線基板Wの一製造例を工程順に示す。先ず、図1(a)に示すように、半導体素子を形成した半導体基材1上の導電層1aの上にSiOからなる酸化膜やLow−k材膜等の絶縁膜2を堆積し、この絶縁膜2の内部に、リソグラフィ・エッチング技術により、配線用凹部としてのコンタクトホール3とトレンチ4を形成する。その上にTa,TaN,TiN,WN,SiTiN,CoWPまたはCoWB等からなるバリア層5、更にその上に電解めっきの給電層としてシード層7を形成する。
【0004】
そして、図1(b)に示すように、基板Wのシード層7の表面に銅めっきを施すことで、コンタクトホール3及びトレンチ4内に銅を充填するとともに、絶縁膜2上に銅膜6を堆積する。その後、化学的機械的研磨(CMP)により、絶縁膜2上の銅膜6、シード層7及びバリア層5を除去して、コンタクトホール3及びトレンチ4に充填させた銅膜6の表面と絶縁膜2の表面とをほぼ同一平面にする。これにより、図1(c)に示すように、絶縁膜2の内部に銅膜6からなる配線が形成される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体装置の電気回路パターンは、益々微細化が進み、これに伴って、配線をめっきで形成する際に給電層として使用されるシード層も薄膜化が進んでいる。更には、シード層を形成することなく、バリア層の表面に直接めっきを行うダイレクトめっきの開発も進んでいる。シード層が薄くなるにつれて、シード層の電気抵抗(シート抵抗)が増加し、更に、ダイレクトめっきを行う時には、バリア層の電気抵抗(シート抵抗)が極端に大きくなる。
【0006】
このように、シード層の電気抵抗が大きくなると、基板の中心部まで電気が流れにくくなって、基板の外周部と中心部との間でめっき量に極端な差が生じる、いわゆるターミナルエフェクトが問題となるばかりでなく、電気抵抗が増大するために消費電力が大きくなったり、発熱量が増えたりするなどの問題が生じる。特に、シード層に接触して電気を供給するカソード接点のシード層との接点部分では、カソード接点とシード層との接触面積が小さいことや、カソード接点自体がかなりコンパクトな形状に抑えられていることに伴って抵抗が増加し、カソード接点や該カソード接点のシード層との接触部から発熱によって、カソード接点やその周辺の部品が変形したり、融けたり、焼けたり、焦げたりするといった重大な問題が起きている。
【0007】
また、一般的に、めっき装置には、カソード接点とシード層との接触部及びその近辺がめっき液に触れないようにした機構が多く採用されている。したがって、カソード接点との接触部及びその近辺におけるシード層表面にはめっき膜が析出せず、カソード接点との接触部及びその近辺におけるシード層の抵抗は大きいままである。そのため、カソード接点との接触部及びその近辺におけるシード層(基板)からの発熱によっても同様に、カソード接点を含む該カソード接点周辺部の部品の変形や破損が起きてしまう。このような問題は、シード層の抵抗値(シート抵抗値)が10Ω/□を超えると特に顕著となる。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みて為されたもので、シード層が薄膜化され、シード層のシート抵抗値が10Ω/□以上になったり、電気抵抗が極端に大きなバリア層の表面に直接めっきを行ったりする場合であっても、基板への給電部であるカソード接点やその周辺部品を発熱から守ることができるようにしためっき装置及びめっき方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、基板を保持する基板ホルダと、前記基板ホルダで保持した基板と接触して通電させるカソード接点を備え該基板ホルダと一体に回転するカソード部と、前記基板の表面に対向するように配置されたアノードと、前記カソード接点を冷却する冷却機構を有することを特徴とするめっき装置である。
このように、シード層等の基板表面に電気を供給するカソード接点を冷却機構で冷却することにより、カソード接点や該カソード接点と基板との接触部及びその近辺からの発熱を抑えて、カソード接点やその周辺部品の熱による変形や溶融といった破損を防ぐことができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記冷却機構は、冷媒となる流体を前記カソード接点に接触させて該カソード接点を冷却することを特徴とする請求項1記載のめっき装置である。
冷媒となる流体をカソード接点に接触させてカソード接点を冷却する方式としては、例えばスプレー方式や熱交換方式が挙げられる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記流体は、導電性または絶縁性の液体であることを特徴とする請求項2記載のめっき装置である。
冷媒としての流体をカソード接点に向けて噴射してカソード接点を冷却する場合に、冷媒として導電性の液体を用いることで、カソード接点から導電性の液体を通って基板に流れる電流経路を作ることができ、これによって、通常のカソード接点と基板との接触部に電気が集中して流れる場合と比較して、より均一に基板に電流を供給することができる。また別の様態として、冷媒として絶縁性の液体を用いる場合、冷媒がカソード接点を冷却した後に流れ落ちる際にカソード接点の周辺部品と接触して、意図しない電流の漏電経路が作られることを防止することができる。絶縁性の液体としては、例えば純水が挙げられる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記流体は、ガス、空気または不活性ガスであることを特徴とする請求項2記載のめっき装置である。
冷媒としての流体をカソード接点に向けて噴射してカソード接点を冷却する場合に、冷媒としてガスを使用することで、冷媒による電流リークをなくすことができる。このような場合に、冷媒として空気を使用することで、排出(排気)の際に周囲の人に窒息の危険性を与えることなく、冷媒の供給を安価かつ容易に行うことができ、また冷媒として不活性ガスを使用することで、冷媒によるカソード接点やその周辺部品の腐食を防ぐことができる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、前記冷却機構は、前記流体を流す流体流路を有し、該流体流路は、前記カソード接点の内部または周囲に設けられていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載のめっき装置である。
これにより、冷却後に冷媒を容易に回収したり、冷却後の冷媒を容易に循環させたりしながら、カソード接点などの発熱部を冷媒で効率的に冷却することができ、しかも、カソード接点周辺の、冷媒が触れると電流リークの恐れのある、例えば金属部品などに冷媒が触れるのを防ぐことができる。
【0014】
請求項6に記載の発明は、前記カソード接点は、前記基板の外周部に該外周部の全周に亘って接触することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のめっき装置である。
これにより、カソード接点と基板との接触面積を広くして該接触部の電気抵抗を下げ、基板に高電流を高電圧で流すような場合であっても、カソード接点及びその近辺の発熱を抑えることができる。特にOリングのように、押し潰して使うカソード接点を用いることで、カソード接点と基板との接触面積を格段に大きくして、異常発熱を防ぐことができる。
【0015】
請求項7に記載の発明は、前記カソード接点は、金属、導電性ゴム、導電性樹脂、導電性高分子、または表面に金属コーティングを施したゴムまたは樹脂から構成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のめっき装置である。
【0016】
カソード接点を金属製とすることで、抵抗が小さく、コンパクトなサイズにしても、材質自体からの発熱を軽減することができる。また、カソード接点を導電性ゴム、導電性樹脂、導電性高分子、または表面に金属コーティングを施したゴムまたは樹脂で構成することで、カソード接点に柔軟性を持たせて、カソード接点を基板により密着させ、カソード接点と基板との接触面積をより大きくして、カソード接点及びその近辺から発熱を抑えることができる。
【0017】
請求項8に記載発明は、外周部にカソード接点を接触させてカソードとした基板表面と該表面に対向するように配置されたアノードとの間にめっき液を満たし、前記カソード接点を冷媒で冷却しながら、基板表面と前記アノードとの間に電圧を印加して基板表面にめっきを行うことを特徴とするめっき方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、特に、シート抵抗値が10Ω/□以上のシード層表面や、シート抵抗が極端に高いバリア層の表面に直接めっきを行う際に、カソード接点及びその近辺からの発熱を抑えて、カソード接点やその周辺部品の熱による破損を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。この実施の形態は、図1に示すように、基板Wの表面に形成した導電膜としてのシード層7の表面に銅めっきを施し、絶縁膜2の内部に設けたコンタクトホール3やトレンチ4等の配線用凹部の内部に銅を埋込んで銅からなる配線を形成するようにした例を示す。本発明は、このシード層7が薄く、シート層7の抵抗値(シート抵抗値)が10Ω/□以上となる時や、シード層7を設けることなく、バリア層5の表面に直接めっきを行う時に特に有効である。
なお、以下の各例において、同一または相当する部材には、同一符号を付して重複した説明を省略する。
【0020】
図2は、本発明の実施の形態のめっき装置を備えた基板処理装置の全体配置図を示す。図2に示すように、この基板処理装置には、同一設備内に位置して、内部に複数の基板Wを収納する2基のロード・アンロード部10と、めっき処理及びその付帯処理を行う2基のめっき装置12と、ロード・アンロード部10とめっき装置12との間で基板Wの受渡しを行う搬送ロボット14と、めっき液タンク16を有するめっき液供給設備18が備えられている。
【0021】
めっき装置12には、図3に示すように、めっき処理及びその付帯処理を行う基板処理部20が備えられ、この基板処理部20に隣接して、めっき液を溜めるめっき液トレー22が配置されている。また、回転軸24を中心に揺動する揺動アーム26の先端に保持されて基板処理部20とめっき液トレー22との間を揺動する電極ヘッド28を有する電極アーム部30が備えられている。更に、基板処理部20の側方に位置して、プレコート・回収アーム32と、純水やイオン水等の薬液、更には気体等を基板に向けて噴射する固定ノズル34が配置されている。この実施の形態にあっては、3個の固定ノズル34が備えられ、その内の1個を純水の供給用に用いている。
【0022】
基板処理部20には、図4に示すように、シード層7(図1(a)参照)を形成した表面(被めっき面)を上向き(フェースアップ)にして基板Wの裏面を吸着等によって着脱自在に保持する、上下動自在な基板ホルダ36と、この基板ホルダ36の周縁部を囲繞するように配置されたカソード部38が備えられている。基板ホルダ36は、任意の加速度及び速度でカソード部38と一体に回転する。めっき装置12のフレーム側面の搬送ロボット14側には、基板搬出入口(図示せず)が設けられている。
【0023】
めっき液トレー22は、めっき処理を実施していない時に、電極アーム部30の下記の高抵抗構造体62及びアノード66をめっき液で湿潤させるためのもので、この高抵抗構造体62が収容できる大きさに設定され、図示しないめっき液供給口とめっき液排水口を有している。また、フォトセンサがめっき液トレー22に取付けられており、めっき液トレー22内のめっき液の満水、即ちオーバーフローと排水の検出が可能になっている。
【0024】
電極アーム部30は、図示しないサーボモータからなる上下動モータとボールねじを介して上下動し、旋回モータを介して、めっき液トレー22と基板処理部20との間を旋回(揺動)する。
【0025】
プレコート・回収アーム32は、上下方向に延びる支持軸の上端に連結されて、ロータリアクチュエータ(図示せず)を介して旋回(揺動)し、エアシリンダ(図示せず)を介して上下動する。このプレコート・回収アームには、プレコート液を間欠的に吐出するプレコート液吐出用のプレコートノズル(図示せず)と、基板上のめっき液を吸引して回収するめっき液回収ノズル(図示せず)がそれぞれ保持されている。
【0026】
カソード部38は、図6及び図7に示すように、支持板40の周縁部に立設した支柱42の上部に取付けた、この例では6分割されたカソード接点44と、このカソード接点44の上方を覆うように配置されたリング状のシール部46を有しており、カソード接点44とシール部46との間には、環状の枠体48が介装されている。シール部46は、その内周縁部が内方に向け下方に傾斜し、かつ徐々に薄肉となって、内周端部が下方に垂下するように構成されている。カソード接点44は、内周部に複数のばね性を有する歯を一体に連接した櫛型に形成されており、この櫛型の歯の先端が基板Wのシード層7に圧接するようになっている。
【0027】
これにより、基板ホルダ36で保持した基板Wを上昇させると、基板Wの表面に形成されたシード層7の外周部にカソード接点44が接触して、該シード層7がカソードとなるように給電可能な状態となる。同時にシール部46の内周端部が基板Wの周縁部上面に圧接し、ここを水密的にシールして、基板Wの上面(被めっき面)に供給されためっき液が基板Wの端部から染み出すのを防止するとともに、めっき液がカソード接点44を汚染するのを防止する。
【0028】
カソード接点44の近傍に位置して、カソード接点44に向けて冷媒として純水50を噴射してカソード接点44及びその近辺を純水(冷媒)50で冷却する純水(冷媒)噴射ノズル52が配置されている。この例では、図5に示すように、カソード接点44の外方に、合計4個の純水(冷媒)噴射ノズル52が配置されているが、この純水(冷媒)噴射ノズル52の個数は任意に定められる。この各純水(冷媒)噴射ノズル52は、図4に示すように、チラー54から延びる配管56にそれぞれ接続され、これによって、カソード接点44の冷却機構58が構成されている。
【0029】
この例では、冷媒として、絶縁性の液体である純水50を使用している。これにより、純水(冷媒)50がカソード接点44を冷却した後に流れ落ちる際に、カソード接点44の周辺部品と接触して、意図しない電流の漏電経路が作られることを防止することができる。このような漏電経路が作られるおそれがない場合には、冷媒として導電性の液体を用いてもよく、これによって、カソード接点44から冷媒(導電性の液体)を通って基板のシード層7に流れる電流経路を作ることができ、通常のカソード接点44と基板のシード層7との接触部に電気が集中して流れる場合と比較して、より均一に基板のシード層7に電流を供給することができる。
【0030】
冷媒として、純水50の代わりに、ガス、空気または不活性ガスを使用しても良い。冷媒としてガスを使用することで、冷媒による電流リークをなくすことができる。冷媒として空気を使用することで、排出(排気)の際に周囲の人に窒息の危険性を与えることなく、冷媒の供給を安価かつ容易に行うことができ、また冷媒として不活性ガスを使用することで、冷媒によるカソード接点やその周辺部品の腐食を防ぐことができる。
【0031】
なお、この実施の形態において、カソード部38は、上下動不能で基板ホルダ36と一体に回転するようになっているが、上下動自在で、下降した時にカソード接点44及びシール部46が基板Wの表面(上面)に接触して、基板ホルダ36と一体に回転するように構成しても良い。
【0032】
電極アーム部30の電極ヘッド28は、図4に示すように、揺動アーム26の自由端にボールベアリング(図示せず)を介して連結したアノードホルダ60と、このアノードホルダ60の下端開口部を塞ぐように配置された高抵抗構造体62を有している。これによって、アノードホルダ60の内部に中空のアノード室64が区画形成されている。
【0033】
高抵抗構造体62は、例えばアルミナ,SiC,ムライト,ジルコニア,チタニア,コージライト等の多孔質セラミックスまたはポリプロピレンやポリエチレンの焼結体等の硬質多孔質体、あるいはこれらの複合体、更には織布や不織布で構成される。例えば、アルミナ系セラミックスにあっては、ポア径30〜200μm、SiCにあっては、ポア径30μm以下、気孔率20〜95%、厚み1〜20mm、好ましくは5〜20mm、更に好ましくは8〜15mm程度のものが使用される。この例では、例えば気孔率30%、平均ポア径100μmでアルミナ製の多孔質セラミックス板から構成されている。そして、この内部にめっき液を含有させることで、つまり多孔質セラミックス板自体は絶縁体であるが、この内部にめっき液を複雑に入り込ませ、厚さ方向にかなり長い経路を辿らせることで、めっき液の電気伝導率より小さい電気伝導率を有するように構成されている。
【0034】
このように高抵抗構造体62をアノードホルダ60の開口部に配置し、この高抵抗構造体62によって大きな抵抗を発生させることで、シード層7の抵抗の影響を無視できる程度となし、基板Wの表面の電気抵抗による電流密度の面内差を小さくして、めっき膜の面内均一性を向上させることができる。
【0035】
アノード室64内には、高抵抗構造体62の上方に位置して、内部に上下に貫通する多数の通孔を有するアノード66が配置されている。そして、アノードホルダ60には、アノード室64の内部のめっき液を吸引して排出するめっき液排出口68が設けられ、このめっき液排出口68は、めっき液供給設備18(図2参照)から延びるめっき液排出管(図示せず)に接続されている。更に、アノードホルダ60の側方に位置して、めっき液注入部70が設けられている。このめっき液注入部70は、この例では、下端をノズル形状としたチューブで構成され、めっき液供給設備18(図2参照)から延びるめっき液供給管(図示せず)に接続されている。
【0036】
このめっき液注入部70は、基板ホルダ36で保持した基板Wと高抵抗構造体62の隙間が、例えば0.5〜3mm程度となるまで電極ヘッド28を下降させ、この状態で、アノード66及び高抵抗構造体62の側方から、基板Wと高抵抗構造体62との間の領域にめっき液を注入するためのものである。
アノード66は、スライムの生成を抑制するため、含有量が0.03〜0.05%のリンを含む銅(含リン銅)で構成されているが、不溶解の不溶性アノードを使用するようにしてもよい。
【0037】
めっき電源72のアノード側は、アノード側導線74を介してアノード66に電気的に接続され、めっき電源72のカソード側は、カソード側導線76を介してカソード接点44に電気的に接続される。
【0038】
次に、この実施の形態のめっき装置12を備えた基板処理装置の操作について説明する。
先ず、ロード・アンロード部10からめっき処理前の基板Wを搬送ロボット14で取出し、表面(被めっき面)を上向きにした状態で、フレームの側面に設けられた基板搬出入口から一方の電解めっき装置12の内部に搬送する。基板ホルダ36は、基板Wをその裏面(上面)で吸着保持し、しかる後、ロボットのハンドを退却させる。そして、基板ホルダ36を上昇させ、カソード接点44を基板Wのシード層7に接触させて該シード層7に給電できる状態となし、また基板Wの外周端部をシール部46に接触させて水密的にシールする。
【0039】
一方、電極アーム部30の電極ヘッド28は、この時点ではめっき液トレー22上の通常位置にあって、高抵抗構造体62あるいはアノード66がめっき液トレー22内に位置しており、この状態で、めっき液トレー22及び電極ヘッド28にめっき液の供給を開始する。そして、基板のめっき工程に移るまで、新しいめっき液を供給し、併せてめっき液排出管(図示せず)を通じた吸引を行って、高抵抗構造体62に含まれるめっき液の交換と泡抜きを行う。
【0040】
次に、プレコート処理に移る。即ち、基板Wを受取った基板ホルダ36を回転させ、待避位置にあったプレコート・回収アーム32を基板と対峙する位置へ移動させる。そして、基板ホルダ36の回転速度が設定値に到達したところで、プレコート・回収アーム32の先端に設けられたプレコートノズル(図示せず)から、例えば界面活性剤からなるプレコート液を基板の表面(被めっき面)に間欠的に吐出する。この時、基板ホルダ36が回転しているため、プレコート液は基板Wの表面の全面に行き渡る。次に、プレコート・回収アーム32を待避位置へ戻し、基板ホルダ36の回転速度を増して、遠心力により基板Wの被めっき面のプレコート液を振り切って乾燥させる。
【0041】
プレコート完了後にめっき処理に移る。先ず、基板ホルダ36の回転速度をめっき時の回転速度まで低下させる。そして、基板Wのプレコート処理が完了したという信号に基づいて、電極アーム部30をめっき液トレー22上方からめっき処理を施す位置の上方に電極ヘッド28が位置するように水平方向に旋回させ、しかる後、電極ヘッド28をカソード部38に向かって下降させて停止させる。この時、高抵抗構造体62を基板Wの表面に接触することなく、0.5mm〜3mm程度に近接した位置とする。電極ヘッド28の下降が完了した時点で、基板Wと高抵抗構造体62との間にめっき液を供給して、アノード66及び基板Wの表面のシード層7をめっき液に接触させる。同時に、めっき電源72のアノード側をアノード66に電気的に接続し、カソード側をカソード接点44にそれぞれ接続する。これによって、めっき電源72を介して、アノード66と基板Wのシード層7との間に電圧を印加してシード層7の表面にめっきを行う。
【0042】
シード層7が薄く、この抵抗値(シート抵抗値)が、例えば10Ω/□を超えると、シード層7に電流が流れにくくなる。このため、シード層7の表面に確実にめっきを行うため、シード層7に高電流を高電圧で流す必要があり、シード層7に高電流を高電圧で流すと、カソード接点44及び該カソード接点44とシード層7との接触部及びその近辺から発熱する。このことは、シート抵抗が極端に高いバリア層5の表面に直接めっきを行う場合もほぼ同様である。そこで、この例では、めっき中に、カソード接点44に向けて純水(冷媒)噴射ノズル52から冷媒としての純水50を噴射し、これによって、カソード接点44及びその近辺を純水50で冷却する。これにより、カソード接点44やその近辺からの発熱を抑えて、カソード接点44やその周辺部品の熱による変形や溶融といった破損を防ぐことができる。
【0043】
めっき処理が完了した時に、めっき電源72の接続を解き、純水(冷媒)50の供給を停止する。そして、電極アーム部30を上昇させ旋回させてめっき液トレー22上方へ戻し、通常位置へ下降させる。次に、プレコート・回収アーム32を待避位置から基板Wに対峙する位置へ移動させて下降させ、めっき液回収ノズル(図示せず)から基板W上のめっき液の残液を回収する。この残液の回収が終了した後、プレコート・回収アーム32を待避位置へ戻し、基板めっき面のリンスのために、純水用の固定ノズル34から基板Wの中央部に純水を吐出し、同時に基板ホルダ36をスピードを増して回転させて基板Wの表面のめっき液を純水に置換する。
【0044】
以上でめっき処理及びそれに付帯する前処理や洗浄・乾燥工程の全て工程を終了し、搬送ロボット14は、そのハンドを基板搬出入口から基板Wの下方に挿入し、そのまま上昇させることで、基板ホルダ36から処理後の基板Wを受取る。そして、搬送ロボット14は、この基板ホルダ36から受取った処理後の基板Wをロード・アンロード部10に戻す。
【0045】
図8及び図9は、本発明の他の実施の形態をめっき装置の要部を示す。この例は、シール部46の内周端から少し離間し、かつカソード接点44の内周端のシード層7との接触部を挟んだ位置に、下方に突出する堰部80を一体に設け、基板ホルダ36で保持した基板Wを上昇させた時に、シール部46の内周端及び堰部80が基板Wの上面に同時に接触して、シール部46と基板Wとの間に冷媒流路82が形成されるように構成されている。そして、冷媒流路82には、冷媒供給口84と冷媒排出口86が接続される。
【0046】
この例では、基板ホルダ36で保持した基板Wを上昇させ、シール部46の内周端及び堰部80を基板Wの上面に同時に接触させて、シール部46と基板Wとの間に冷媒流路82を形成し、この冷媒流路82に純水等の冷媒を供給して、冷媒流路82内に位置するカソード接点44及びその近辺を冷却する。これにより、冷却後の冷媒を容易に回収し、また冷媒を循環させながら、カソード接点44などの発熱部を冷媒で効率的に冷却することができ、しかも、カソード接点44の周辺の、冷媒が触れると電流リークの恐れのある、例えば金属部品などに冷媒が触れるのを防ぐことができる。またこのような漏電経路が作られるおそれがない場合には、冷媒として導電性の液体を用いてもよい。この場合、カソード接点から導電性の液体を通って基板に流れる電流経路を作ることができ、これによって、通常のカソード接点と基板との接触部に電気が集中して流れる場合と比較して、より均一に基板に電流を供給することができる。
【0047】
図10及び図11は、カソード接点の他の例を示す。この例のカソード接点88は、横断面円形のリング状で、基板Wの外周部に該外周部の全周に亘って連続した線状に接触するように構成されている。前述の例における櫛型のカソード接点44のように、各歯の先端のみがシード層7と点接触するような場合には、接触面積が小さくなり、大きな電気抵抗となってしまい、この狭い面積に高電流を高電圧で流すと、かなりの発熱を伴ってしまう。この例のように、基板Wの外周部に該外周部の全周に亘って線状に接触するカソード接点88を用いることにより、カソード接点88の接触面積を大きくし、特にカソード接点88として、Oリングのように一部を押し潰して使う場合には、カソード接点88の接触面積が格段に大きくなり、カソード接点88及びその近辺の異常発熱を防ぐことができる。
【0048】
図12及び図13は、本発明の更に他の実施の形態のめっき装置を示す。この例では、中空のフッ素ゴムの表面に金蒸着によって金属(金)コーティングして、リング状に加工したものをカソード接点90として使用している。そして、このカソード接点90の中空部を冷媒流路92として利用し、この冷媒流路92に、冷媒タンク94から延び、ポンプ96を介装した冷媒供給管98と、冷媒タンク94に戻る冷媒排出管100を接続し、更に冷媒タンク94内の冷媒をチラー102で冷却するようにして、冷却機構104を構成している。
【0049】
このように、カソード接点90の基材として、フッ素ゴムを使用することにより、カソード接点90に十分な柔軟性を持たせ、カソード接点90を基板Wのシード層7へ押し当てた時に、シード層7との接触面積を大きく取ることができる。また、ゴム表面に金属の中でも抵抗が低い金をコーティングすることで、カソード接点90自体の抵抗もかなり小さくすることができる。金は耐薬品性にも優れているため劣化もしにくい。また、金は金属の中でも軟らかく、シード層7との密着性が良いため、これによっても、カソード接点90とシード層7との接触抵抗をより小さくすることができる。
【0050】
この例によれば、冷媒タンク94の内部に溜められた冷媒、例えば純水は、チラー102との循環ラインを循環することによって一定の温度に保たれ、ポンプ96の駆動に伴って、冷媒供給管98を通して冷媒流路92の内部に送り込まれる。そして、冷媒流路92の内部に送り込まれた冷媒(純水)は、冷媒流路92に沿って流れることで、カソード接点90を直接的に冷却する。そして、カソード接点90を冷媒(純水)することによって温度が上昇した冷媒(純水)は、冷媒排出管100から冷媒タンク94内に戻され、これによって、カソード接点90を効率的に冷却しながら、冷媒タンク94と冷媒流路92との間を循環する。
【0051】
なお、前述のカソード接点44,88として、中空のフッ素ゴムの表面に金蒸着によって金属(金)コーティングしたものを使用しても良い。
カソード接点44,88,90を金属製としてもよい。金属製とすることで、抵抗を小さくして、コンパクトなサイズにしても、材質自体からの発熱を軽減することができる。特に、真空機器などに用いられるメタルシールのような形状にして、基板に押し付けて使用することにより、接触面積を大きく取ることができる。金属の種類としては、あらゆる金属材料を用いることができるが、ステンレスを基材にして、プラチナコーティングしたものが、耐薬品性、強度、加工性及びコストにおいて優れている。プラチナに替わり金のコーティングでも優れた性能を発揮できるが、強度の面でプラチナにはやや劣る。
【0052】
カソード接点44,88,90を導電性ゴムまたは導電性樹脂で構成しても良い。これによって、カソード接点に導電性を持たせながらも、基板(シード層)に柔軟に接触させて基板(シード層)との接触面積を大きく取り、接触抵抗を減らして発熱を抑えることができる。形状としては、Oリングのような、一般的なシール形状が良く、Vシール形状や平シール(ガスケット)形状でも良い。
【0053】
カソード接点44,88,90を導電性高分子で構成しても良い。カソード接点が金属やカーボンを練り込むことによって導電性を持たせている導電性ゴムや導電性樹脂である場合、基板への金属汚染の心配があるが、この場合、カソード接点が分子構造そのものに導電性を有する導電性高分子であることにより、金属汚染をなくすことができる。
【0054】
ここに、導電性ゴム、導電性樹脂または導電性高分子は、一般に金属材料に比べると抵抗は大きい。このため、前述の図12及び図13に示す例のように、カソード接点して、フッ素ゴム等の表面に金等の金属コーティングを施したカソード接点90を使用することで、ゴムや樹脂のような柔軟性を持ち且つ金属と同等の低抵抗を持つカソード接点とすることができる。金属コーティングの材料としては、金の他に、銀やプラチナが、電気抵抗、基板との密着性及び耐薬品性において優れている。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】銅配線基板の一製造例を工程順に示す図である。
【図2】本発明の実施の形態のめっき装置を備えた基板処理装置の全体を示す平面図である。
【図3】図2に示すめっき装置の平面図である。
【図4】図2に示すめっき装置のめっき時における要部を示す概略縦断面図である。
【図5】図4のA−A線断面図である。
【図6】図2に示すめっき装置のカソード部の平面図である。
【図7】図6D−D線断面図である。
【図8】本発明の他の実施の形態のめっき装置の要部を示す概略縦断面図である。
【図9】図8のB−B線断面図である。
【図10】カソード接点の他の例を示す平面図である。
【図11】図10に示すカソード接点と基板との関係を示す断面図である。
【図12】本発明の更に他の実施の形態のめっき装置の要部を示す概略縦断面図である。
【図13】図12のC−C線断面図である。
【符号の説明】
【0056】
5 バリア層
6 銅膜
7 シード層
10 ロード・アンロード部
12 めっき装置
20 基板処理部
22 めっき液トレー
28 電極ヘッド
30 電極アーム部
32 プレコート・回収アーム
36 基板ホルダ
38 カソード部
44,88,90 カソード接点
46 シール部
50 純水(冷媒)
52 純水(冷媒)噴射ノズル
58,104 冷却機構
60 アノードホルダ
62 高抵抗構造体
64 アノード室
66 アノード
68 めっき液排出口
70 めっき液注入部
72 電源
80 堰部
82,92 冷媒流路
84 冷媒供給口
86 冷媒排出口
94 冷媒タンク
98 冷媒供給管
100 冷媒排出管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する基板ホルダと、
前記基板ホルダで保持した基板と接触して通電させるカソード接点を備え該基板ホルダと一体に回転するカソード部と、
前記基板の表面に対向するように配置されたアノードと、
前記カソード接点を冷却する冷却機構を有することを特徴とするめっき装置。
【請求項2】
前記冷却機構は、冷媒となる流体を前記カソード接点に接触させて該カソード接点を冷却することを特徴とする請求項1記載のめっき装置。
【請求項3】
前記流体は、導電性または絶縁性の液体であることを特徴とする請求項2記載のめっき装置。
【請求項4】
前記流体は、ガス、空気または不活性ガスであることを特徴とする請求項2記載のめっき装置。
【請求項5】
前記冷却機構は、前記流体を流す流体流路を有し、該流体流路は、前記カソード接点の内部または周囲に設けられていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載のめっき装置。
【請求項6】
前記カソード接点は、前記基板の外周部に該外周部の全周に亘って接触することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のめっき装置。
【請求項7】
前記カソード接点は、金属、導電性ゴム、導電性樹脂、導電性高分子、または表面に金属コーティングを施したゴムまたは樹脂から構成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のめっき装置。
【請求項8】
外周部にカソード接点を接触させてカソードとした基板表面と該表面に対向するように配置されたアノードとの間にめっき液を満たし、前記カソード接点を冷媒で冷却しながら、基板表面と前記アノードとの間に電圧を印加して基板表面にめっきを行うことを特徴とするめっき方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−95157(P2008−95157A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−279903(P2006−279903)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】