説明

ゆらぎ信号発生装置、ゆらぎ信号発生方法、及びゆらぎ信号発生プログラム

【課題】様々な傾きを有したゆらぎを発生させるとともに、人の要求する山場(ピーク)位置もある程度設定できるゆらぎ信号発生装置を提供する。
【解決手段】ゆらぎ信号発生装置10は、パワー密度を算出する関数とパワー密度を算出する関数のパラメータを入力する入力部11と、入力部によって入力されたパラメータとパワー密度を算出する関数に基づいて、各周波数のパワー密度を算出するパワー密度算出部12と、パワー密度算出部によって算出された各周波数のパワー密度を正弦波成分と余弦波成分に分けるパワー密度分割部13と、パワー密度分割部によって分割された成分に基づいて逆フーリエ変換により時系列データを生成する時系列データ生成部14と、時系列データに基づいて出力データを生成し出力するデータ出力部15と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゆらぎ信号発生装置、ゆらぎ信号発生方法、及びゆらぎ信号発生プログラムに関し、特に、人に快適感を与えるマッサージ機の強さ、刺激の間隔、空調装置の風量、温度、音楽の旋律、強弱、調光器における明るさ、色合いの制御などを行う、ゆらぎ信号を発生するゆらぎ信号発生装置、ゆらぎ信号発生方法、及びゆらぎ信号発生プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
扇風機の風速や空調機器の風量或いは温度又は照明装置の明るさなどは、それらが設定された値のままであるよりも、それらの設定された値を中心として、ある程度ゆらいでいた方が人間にとって自然の環境に近いものとなり心地よい刺激となる。そのため、そのような各種機器をゆらぎ信号で制御して、設定値に対してある程度ゆらいだ状態で制御することが提案されている。
【0003】
自然の本性に根ざす変動(ゆらぎ)のスペクトル、すなわちパワースペクトルは、ほぼ周波数fに反比例する1/f型の傾向を示している。従って、例えば扇風機の風量や空調機の温度などを1/f型のパワースペクトルをもって変調するようにすると、自然に馴染んだ環境が作り出される。従来において、このように各種機器をゆらぎ制御するには、例えば、小川のせせらぎ、風の音のような自然界の音や自然界の風速、また心拍や脳波などの生体情報、クラシック音楽などを電気信号に変換して単位時間当たりのゼロ交差回数、すなわち単位時間に値ゼロを横切る回数を求めて1/fゆらぎデータとして用いられていた。或いは人工的に1/fゆらぎ特性を得るため、白色雑音に対して低域通過フィルタと高域通過フィルタとを組み合わせて特定の周波数帯のパワーを減衰させて1/fゆらぎ特性に近似した周波数特性を得るものがあった。また、人の好みも様々であり、自然界のゆらぎも様々であることから、自由に好みのゆらぎを選べるような制御が好ましい。
【0004】
扇風機やマッサージ器を使用する場合、一般的に最初に強い刺激があり次第に癒されるとともに弱い刺激になって欲しいなど、人それぞれの使用状況によって感じ方が異なるため、それらをある程度満足できるようなゆらぎ制御の要望があった。また、音楽などでも、途中や最後の方に山場を持っていきたいなど様々である。しかし、自然界から得られるゆらぎや、これまでの研究成果では自由にこれらを操作し得ることが困難であった。
【0005】
これまで、ゆらぎ信号発生装置に関するものとして特許文献1〜4に開示されるものがあった。
【0006】
特許文献1には、ゆらぎ生成回路が開示されており、そのゆらぎ生成回路では、乱数とフラクタル変換を用いて1/fゆらぎ信号を作成し画像を作成している。それゆえ、この回路を用いて生成されるゆらぎは、フラクタル構造を有したゆらぎであり、その画像もフラクタル構造を有した画像となる。すなわち、このゆらぎ生成回路は、1/fゆらぎのみを作成する回路である。
【0007】
特許文献2には、セミ・マルコフ系列を用いた1/fゆらぎ信号発生方法が開示されている。この1/fゆらぎ信号発生方法は、5個の異なる状態と乱数を用いて1/fゆらぎを生成する方法である。
【0008】
特許文献3には、ダイオードやサーミスタの電流ゆらぎを増幅して1/fゆらぎを作成するゆらぎ信号発生装置が開示されている。
【0009】
特許文献4には、振幅と位相の異なる正弦波の多数の発振器から出力を加算して1/fのゆらぎ信号、(1/f)のゆらぎ信号、1/f1/2のゆらぎ信号などを発生させるゆらぎ信号発生装置が開示されている。このゆらぎ信号発生装置は、異なる周波数の正弦波の加算をハードウェアで実現したものであり、更に1/fのゆらぎ信号、(1/f)のゆらぎ信号、1/f1/2のゆらぎ信号のみの作成をすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−44389号公報
【特許文献2】特開2002−7379号公報
【特許文献3】特開平9−326299号公報
【特許文献4】特開平7−176956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来のゆらぎ発生方法では、特許文献1〜4で開示する方法で作成するゆらぎ信号以外の傾きを有したゆらぎ信号を作成できないことや、信号のピーク位置を設定できないという問題点があった。ここで、傾きとは、ゆらぎの波形を分解して各周波数成分を横軸にとり、その成分のパワー密度を縦軸にとって両対数グラフに表したときの線の傾きをいう。
そこで、本出願人は、様々な傾きを有したゆらぎを発生させるとともに、人の要求する山場(ピーク)位置もある程度設定できる装置の開発に着手するにいたった。本発明は、このような背景からなされたものであって、特に人が快適感を感じることができる様々なゆらぎを発生することができるゆらぎ信号発生装置の開発を技術課題としたものである。
【0012】
本発明の目的は、上記の課題に鑑み、様々な傾きを有したゆらぎを発生させるとともに、人の要求する山場(ピーク)位置もある程度設定できるゆらぎ信号発生装置、ゆらぎ信号発生方法、及びゆらぎ信号発生プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るゆらぎ信号発生装置、ゆらぎ信号発生方法、及びゆらぎ信号発生プログラムは、上記の目的を達成するため、次のように構成される。
【0014】
第1のゆらぎ信号発生装置(請求項1に対応)は、パワー密度を算出する関数とパワー密度を算出する関数のパラメータを入力する入力手段と、入力手段によって入力されたパワー密度を算出する関数とパラメータに基づいて、各周波数のパワー密度を算出するパワー密度算出手段と、パワー密度算出手段によって算出された各周波数のパワー密度を正弦波成分と余弦波成分に分けるパワー密度分割手段と、パワー密度分割手段によって分割された成分に基づいて逆フーリエ変換により時系列データを生成する時系列データ生成手段と、時系列データに基づいて出力データを生成し出力するデータ出力手段と、を備えたことを特徴とする。
第2のゆらぎ信号発生装置(請求項2に対応)は、上記の構成において、好ましくは、パワー密度を算出する関数が、各周波数をfとし、その周波数におけるパワー密度をp(f)としたときに、p(f)=f−S+DC+B・R(f−S)であり、パラメータは、S、DC、Bであることを特徴とする。
第3のゆらぎ信号発生装置(請求項3に対応)は、上記の構成において、好ましくは、パワー密度分割手段が、各周波数fとその周波数におけるパワー密度p(f)において、p(f)=f−S+DC+B・R(f−S)となるSの値によって決まった各p(f)を乱数により正弦波成分と余弦波成分に振り分けることを特徴とする。
第4のゆらぎ信号発生装置(請求項4に対応)は、上記の構成において、好ましくは、入力手段が、ゆらぎの大まかなピーク位置を入力する手段を含むことを特徴とする。
第1のゆらぎ信号発生方法(請求項5に対応)は、パワー密度を算出する関数とパワー密度を算出する関数のパラメータを入力する入力ステップと、入力ステップによって入力されたパワー密度を算出する関数とパラメータに基づいて、各周波数のパワー密度を算出するパワー密度算出ステップと、パワー密度算出ステップによって算出された各周波数のパワー密度を正弦波成分と余弦波成分に分けるパワー密度分割ステップと、パワー密度分割ステップによって分割された成分に基づいて逆フーリエ変換により時系列データを生成する時系列データ生成ステップと、時系列データに基づいて出力データを生成し出力するデータ出力ステップと、を備えたことを特徴とする。
第2のゆらぎ信号発生方法(請求項6に対応)は、上記の方法において、好ましくは、パワー密度を算出する関数が、各周波数をfとし、その周波数におけるパワー密度をp(f)としたときに、p(f)=f−S+DC+B・R(f−S)であり、パラメータは、S、DC、Bであることを特徴とする。
第3のゆらぎ信号発生方法(請求項7に対応)は、上記の方法において、好ましくは、パワー密度分割ステップが、各周波数fとその周波数におけるパワー密度p(f)において、p(f)=f−S+DC+B・R(f−S)となるSの値によって決まった各p(f)を乱数により正弦波成分と余弦波成分に振り分けることを特徴とする。
第4のゆらぎ信号発生方法(請求項8に対応)は、上記の方法において、好ましくは、入力ステップが、ゆらぎの大まかなピーク位置を入力するステップを含むことを特徴とする。
第1のゆらぎ信号発生プログラム(請求項9に対応)は、パワー密度を算出する関数とパワー密度を算出する関数のパラメータを入力する入力プログラムと、入力プログラムによって入力されたパワー密度を算出する関数とパラメータに基づいて、各周波数のパワー密度を算出するパワー密度算出プログラムと、パワー密度算出プログラムによって算出された各周波数のパワー密度を正弦波成分と余弦波成分に分けるパワー密度分割プログラムと、パワー密度分割プログラムによって分割された成分に基づいて逆フーリエ変換により時系列データを生成する時系列データ生成プログラムと、時系列データに基づいて出力データを生成し出力するデータ出力プログラムと、を備えたことを特徴とする。
第2のゆらぎ信号発生プログラム(請求項10に対応)は、上記のプログラムにおいて、好ましくは、パワー密度を算出する関数が、各周波数をfとし、その周波数におけるパワー密度をp(f)としたときに、p(f)=f−S+DC+B・R(f−S)であり、パラメータは、S、DC、Bであることを特徴とする。
第3のゆらぎ信号発生プログラム(請求項11に対応)は、上記のプログラムにおいて、好ましくは、パワー密度分割プログラムが、各周波数fとその周波数におけるパワー密度p(f)において、p(f)=f−S+DC+B・R(f−S)となるSの値によって決まった各p(f)を乱数により正弦波成分と余弦波成分に振り分けることを特徴とする。
第4のゆらぎ信号発生プログラム(請求項12に対応)は、上記のプログラムにおいて、好ましくは、入力プログラムが、ゆらぎの大まかなピーク位置を入力するステップを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、利用者は、好みのパワー密度を算出する関数のパラメータとピーク位置の入力によって様々な時系列ゆらぎデータを作成し制御対象物をこのゆらぎデータで制御することによって快適な刺激を作ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の本実施形態に係るゆらぎ信号発生装置のブロック図である。
【図2】本発明の本実施形態に係るゆらぎ信号発生装置を実際に実現するための装置のブロック図である。
【図3】本発明の本実施形態に係るゆらぎ信号発生装置を実際に実現するための装置の記憶装置に記憶されるゆらぎ信号発生プログラムの構成を示す図である。
【図4】本発明の本実施形態に係るゆらぎ信号発生装置のプログラム概略流れ図である。
【図5】本発明の本実施形態に係るゆらぎ信号発生装置の各種入力データ画面を示す図である。
【図6】パワー密度と周波数空間における代表的ゆらぎのパワースペクトル図である。
【図7】1/fの同一のパラメータSで作成した異なるゆらぎ時系列データ図である。
【図8】ピーク位置設定用データ図である。
【図9】1/fゆらぎの各種ピーク位置設定によるゆらぎ時系列データ図である。
【図10】本装置を応用した光制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は、本発明の本実施形態に係るゆらぎ信号発生装置のブロック図である。なお以下の説明において各種ゆらぎを発生させるゆらぎ信号発生装置10を単にゆらぎ信号発生装置10と呼ぶことにする。本実施形態に係るゆらぎ信号発生装置10は、後述のゆらぎ信号発生プログラムを実行することにより利用者の好みのゆらぎを発生させるものであり、このゆらぎを各種ゆらぎ刺激やゆらぎ制御として用いることにより利用者に快適感を与えるものである。
【0019】
ゆらぎ信号発生装置10は、入力部(入力手段)11とパワー密度算出部(パワー密度算出手段)12とパワー密度分割部(パワー密度分割手段)13と時系列データ生成部(時系列データ生成手段)14とデータ出力部(データ出力手段)15を備えている。
【0020】
入力部11は、パワー密度を算出する関数とパワー密度を算出する関数のパラメータを入力する手段である。また、入力部11は、ゆらぎの大まかなピーク位置を入力することもできる。パワー密度算出部12は、入力部11によって入力されたパラメータとパワー密度を算出する関数に基づいて、各周波数のパワー密度を算出する。パワー密度分割部13は、パワー密度算出部12によって算出された各周波数のパワー密度を正弦波成分と余弦波成分に分ける。時系列データ生成部14は、パワー密度分割部13によって分割された成分に基づいて逆フーリエ変換により時系列データを生成する。データ出力部15は、時系列データ生成部14によって生成された時系列データに基づいて出力データを生成し出力する。
【0021】
図1で示したゆらぎ信号発生装置10は、パーソナルコンピュータまたはマイクロコンピュータで実現される。
【0022】
図2に示すように、パーソナルコンピュータ(パソコン)20は、表示装置21と、入力装置22と、記憶装置23と、処理装置24と、D/A変換器25と、入出力部26とを備えて成るものである。パソコン20は、一例として、市販のデスクトップ型パソコン等を用いても良いが、他の装置に組み込む場合は、小型化が可能なマイクロコンピュータが適用される。表示装置21としては、カラー表示のディスプレイが適用されるが、他の装置に組み込む小型化や低コストが要求される場合は白黒表示でも可能である。入力装置22としてはキーボード22aとマウス22bが適用されるが、キーボード22aのみでも可能である。D/A変換器25としては、1出力以上のものが適用される。
【0023】
パソコン20の本体内には、処理装置24であるCPUと記憶装置23であるRAM23aとROM23b、D/A変換器25とを備えて成るものである。なお、D/A変換器25は、適宜別途外付けにしてもよい。また、パソコン20は、マイクロコンピュータを用いることももちろん可能である。
【0024】
図3は、本発明の本実施形態に係るゆらぎ信号発生装置10を実現するパソコン20の記憶装置23に記憶されるゆらぎ信号発生プログラム30の構成を示す図である。記憶装置23は、ゆらぎ信号発生プログラム30を記憶するプログラム記憶領域23aと、ゆらぎ信号発生プログラム30を実行するときに必要となるデータを記憶するためのデータ記憶領域23bを備えている。
【0025】
ゆらぎ信号発生プログラム30は、入力プログラム31とパワー密度算出プログラム32とパワー密度分割プログラム33と時系列データ生成プログラム34とデータ出力プログラム35を備えている。
【0026】
入力プログラム31は、図1で示した入力部11の機能を実現するプログラムであり、パワー密度を算出する関数とパワー密度を算出する関数のパラメータを入力するプログラムである。また、入力プログラムには、ゆらぎの大まかなピーク位置を入力するステップを含ませることができる。パワー密度算出プログラム32は、図1で示したパワー密度算出部12の機能を実現するプログラムであり、入力プログラム31によって入力されたパラメータとパワー密度を算出する関数に基づいて、各周波数のパワー密度を算出するプログラムである。
【0027】
パワー密度分割プログラム33は、図1で示したパワー密度分割部13の機能を実現するプログラムであり、パワー密度算出プログラム32によって算出された各周波数のパワー密度を正弦波成分と余弦波成分に分けるプログラムである。時系列データ生成プログラム34は、図1で示した時系列データ生成部14の機能を実現するプログラムであり、パワー密度分割プログラム33によって分割された成分に基づいて逆フーリエ変換により時系列データを生成するプログラムである。データ出力プログラム35は、図1で示したデータ出力部15の機能を実現するプログラムであり、時系列データ生成プログラム34によって生成された時系列データに基づいて出力データを生成し出力するプログラムである。
【0028】
パソコン20は、上記のプログラムを処理装置24によって実行することによってゆらぎ信号発生装置10としての機能を実現する。
【0029】
次に、本発明の本実施形態に係るゆらぎ信号発生装置10を実現するパソコン20の記憶装置23に記憶されるゆらぎ信号発生プログラム30を図4のフローチャートを用いて説明する。ゆらぎ信号発生プログラム30の各プログラムは、本発明に係るゆらぎ信号発生方法の各ステップに対応する。
【0030】
ステップS11において、パソコン20は、各処理で共通に使用される各種変数の初期設定を行う。ステップS12において、入力プログラム(入力ステップ)31は、データ入力処理設定でキーボード等からデータを入力する。
【0031】
この入力画面の一例を図5に示す。この画面40において、入力項目0でパワー密度を算出する関数p(f)を設定する。ここでは、予め各周波数のパワー密度p(f)をp(f)=f−S+DC+B・R(f−S)として設定されているものとする。入力項目1で最初に1回のフーリエ逆変換によって作成するデータ数を設定する。次に、入力項目2で繰り返し回数を入力する。それにより、出力全データ数が決定される。
【0032】
入力項目3で、ゆらぎの傾き(パラメータS)と他のパラメータ(パラメータDC、パラメータB)を入力する。パラメータSの数値が0に近いほど変化が激しく、次に何が来るか予想できない変化となる。反対にパラメータSの数値が2,3と大きくなるとゆっくりとした変化となる。ここで、パラメータSとして1が入力されるといわゆる1/fゆらぎとなり、より快適な変化となる。
【0033】
入力項目4では、周波数領域で、どの周波数範囲までパワー密度を決定するか入力する。サンプリング定理より全周波数範囲の半分までが有効であることから全周波数範囲の半分以上の高周波領域のパワー密度は全て0とするので、低周波から全周波数範囲の半分までの高周波領域のパワー密度を決定する。Noを選択すると前項目で入力した傾き(パラメータS)に従って全周波数範囲の半分までパワー密度が決定されるが、YESの選択によって、2つ以上の周波数範囲をスタート番号と終了番号を整数数値で入力することによって指定することによってその番号間だけのパワー密度が決定され、その他の周波数のパワー密度は全て0となる。
【0034】
入力項目5で1データの出力保持時間の設定を行う。sec又はmsecを選択し、数値を入力することによって1データの出力時間が決定される。入力項目6でピーク位置の選択を行う。YESを入力し、次の(1:前方、2:中央、3:後方)から選択することによってピーク位置を決定する。Noを入力した場合はどこにピーク位置がくるかは未定である。
【0035】
入力項目7で出力電圧範囲の設定を行う。設定範囲は(1:0〜1V、2:−1〜+1V)のどちらかを選択することによって出力される。
【0036】
以上の入力項目1〜7を入力することによりステップS12が終了する。
【0037】
図4において、ステップS13では、ステップS12で入力した入力項目1と入力項目2で決定される全データが出力されたか否か判断する。もし、全データが出力を終了したならば、エンドとなる。また、もし、全データが出力を終了しないならば、ステップS14を実行する。
【0038】
ステップS14では、パワー密度算出プログラム(パワー密度算出ステップ)32が実行される。
【0039】
ステップS14のプログラム処理では、入力データ項目3で入力されたパラメータSとパラメータDCとパラメータBの数値に従って各周波数のパワー密度p(f)をp(f)=f−S+DC+B・R(f−S)によって算出する。ここで、パラメータDCは、振幅の大きさを決めるものである。また、パラメータBは、周波数領域で傾きSの近傍でパワー密度に対してゆらぎを生じさせるものであり、乱数R(−1から+1の値)によって傾きに影響を与えないようにしている。これらのパラメータDCおよびパラメータBには0を入力するようにしても良い。
【0040】
これによって、図6に示すように横軸周波数fと縦軸パワー密度p(f)としたとき、p(f)=f−S+DC+B・R(f−S)によって各周波数fに対するパワー密度p(f)が決定される。ここで、Sはゆらぎの傾きを決定する実数値である。S=1で直線S1で示される(1/f)ゆらぎとなり、人に快適感を与えるゆらぎの傾きとなる。また、S=2で直線S2で示される(1/f)ゆらぎとなりゆったりとした変化となるなど、Sの値によって様々な傾きを有したゆらぎを発生できる。このパワー密度の算出範囲は、サンプリング定理から1回のフーリエ逆変換で作成する全データの半分に相当するデータ番号の高周波数まで設定し、その他のデータは全て0に設定すれば良い。
【0041】
ここで、入力画面の項目4で「パワーの設定データ数を入力しますか?」に対してYesが選択された場合は、スタート番号から終了番号までの間だけパワー密度を算出して設定し、その他の周波数は全て0に設定する。
【0042】
ステップS15では、パワー密度分割プログラム(パワー密度分割ステップ)33が実行される。
【0043】
ステップS15のプログラム処理では、ステップS14で得られた各周波数のパワー密度を基に各周波数において余弦波と正弦波の成分に分配する。例えば、余弦波の最大振幅をa、正弦波の最大振幅をbとすれば、p(f)の絶対値は、a+bと等しくなる(ここで、a,bは、実効値を用いてもよい)。a,bの最大値は、p(f)の絶対値の平方根となる。そこで、この最大値に乱数(−1〜+1)を乗算してaの値を決定すると、bの値も決定される。これを各周波数で行って余弦波成分と正弦波成分を算出する。この分配に乱数を用いることによって同じ傾きでも異なるゆらぎを発生できる。また、乱数に負の値も用いることによって、位相を大きく変えることができる。
【0044】
さらに、入力画面の項目6でピーク位置の設定を行った場合、ピーク位置は周波数の低い数個の周波数例えば基本周波数fと、その2倍の2fおよび3倍の3fの周波数において、実数部と虚数部の割合を決定することによってほぼ決定できる。これは、周波数が高くなるにつれてパワーが著しく減少する特性を利用したものである。
【0045】
ステップS16では、時系列データ生成プログラム(時系列データ生成ステップ)34が実行される。
【0046】
ステップS16のプログラム処理では、前処理によって周波数関数として作成されたデータをフーリエ逆変換によって時系列データを作成するプログラムである。データ数が2のべき乗であれば高速フーリエ逆変換が有効である。
【0047】
ステップS17では、データ出力プログラム(データ出力ステップ)35が実行される。
【0048】
ステップS17のプログラム処理では、作成された時系列データを入力画面で選択された0〜1Vか−1〜+1の範囲にデータ変化を行う。そして、入力画面の項目で設定された、データの保持時間をもとに各データを保持時間保持しながら書き換えを逐次行って出力する。
【0049】
上記処理を入力画面の項目2で設定された回数繰り返して出力を行う。
【0050】
図7(a)と図7(b)は、同じ傾きS=1(1/fゆらぎ)で1024のデータを作成した異なる時系列データ例である。縦軸は、振幅で、逆フーリエ変換によって作成された時系列データで、図7(a)と図7(b)では、波形および最大値と最小値が異なっている。これらのデータを出力変換プログラムで必要な振幅変換して出力する。また、横軸の時間も設定によって異なってくる。
【0051】
同じ傾きS=2(1/fゆらぎ)で、余弦波と正弦波の第3項までのそれぞれの最大振幅a,bの割合を図8(a)、図8(b)、図8(c)のように設定すると、図8(a)で前方、図8(b)で中央、図8(c)で後方にピーク値が設定される。それらの設定によって作成された各時系列データ例をそれぞれ図9(a)、図9(b)、図9(c)に示す。
【0052】
なお、図4のステップS12の入力項目0でのパワー密度を算出する関数の設定において、任意のパワー密度を算出する関数p(f)を設定することができる。例えば、下記のような式で決定できるなど様々な関数を定義して各周波数のパワー密度を決定することにより、様々なゆらぎを作成できる。
【0053】
p(f)=f−S+r・f−S・・・・・(1)
p(f)=f−S+r・f−S+C・p(f1)・・・・(2)
【0054】
(1)式において、例えばrに乱数を用いて±0.1以内に振った数値を用いると傾きSに対して10%の変動をパワースペクトル上で持たせたことになる。
(2)式においては、さらに、ある周波数f1だけを強調したいときCの値を大きくすることによって強調できる。これによって周波数f1のリズムが強調できる。
【0055】
周波数ゆらぎ出力時は、最大出力レベルと0レベルのそれぞれの保持時間をゆらぎデータで変化させることによって周波数ゆらぎデータを出力できる。
【0056】
図10に示す本装置の応用例としては、この各種ゆらぎ信号発生装置10より発生した時系列ゆらぎ信号を位相制御回路50に供給して、商用交流100Vの流通角をゆらぎ信号によって制御し、その位相制御回路50の出力により電球51に流れる電流を制御することによって電球51による輝度を変化させ、つまり調光して明るさをゆらいだ状態で制御するものである。
【0057】
なお、マイクロコンピュータを用いる場合、パソコン上では、sin,cos,べき乗、乱数などの組み込み関数がC言語等で用意されているが、マイクロコンピュータでは四則演算のみとなるので、これらの関数は下記のような級数を使うことによって実現できる。これによってマイクロコンピュータでもフーリエ逆変換が可能となり容易に時系列データを発生することができる。
【0058】
三角関数では、
sinx=x−(1/3!)x+(1/5!)x−(1/7!)x+・・・+(−1)(1/(2n+1)!)x2n+1+・・・
cosx=x−(1/2!)x+(1/4!)x−(1/6!)x+・・・+(−1)(1/(2n)!)x2n+・・・
平方根は、
S1/2=0.5*(S/A+A)
べき乗は、
10.979≒A10+0.5+0.25+0.125+0.0625+・・・
≒A10*A0.5*A0.25*A0.125*A0.0625*・・・
となる。平方根の近似式よりA^(1/2)(n=1,2,3・・・)を用いることにより算出できる。
乱数は、Xn+1=(A*X*B)modM により発生できる。
【0059】
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさおよび配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎず、また数値および各構成の組成(材質)等については例示にすぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明に係るゆらぎ信号発生装置は、マッサージ機、空調装置、調光器等の各種装置をゆらいだ状態で制御するためのゆらぎ信号を発生する装置に利用される。
【符号の説明】
【0061】
10 ゆらぎ信号発生装置
11 入力部
12 パワー密度算出部
13 パワー密度分割部
14 時系列データ生成部
15 データ出力部
20 パーソナルコンピュータ
21 表示装置
22 入力装置
23 記憶装置
24 処理装置(CPU)
25 D/A変換器
26 入出力部
30 ゆらぎ信号発生プログラム
31 入力プログラム
32 パワー密度算出プログラム
33 パワー密度分割プログラム
34 時系列データ生成プログラム
35 データ出力プログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワー密度を算出する関数と前記パワー密度を算出する関数のパラメータを入力する入力手段と、
前記入力手段によって入力された前記パワー密度を算出する関数と前記パラメータに基づいて、各周波数のパワー密度を算出するパワー密度算出手段と、
前記パワー密度算出手段によって算出された前記各周波数のパワー密度を正弦波成分と余弦波成分に分けるパワー密度分割手段と、
前記パワー密度分割手段によって分割された成分に基づいて逆フーリエ変換により時系列データを生成する時系列データ生成手段と、
前記時系列データに基づいて出力データを生成し出力するデータ出力手段と、を備えたことを特徴とするゆらぎ信号発生装置。
【請求項2】
前記パワー密度を算出する関数は、各周波数をfとし、その周波数におけるパワー密度をp(f)としたときに、p(f)=f−S+DC+B・R(f−S)であり、
前記パラメータは、S、DC、Bであることを特徴とする請求項1記載のゆらぎ信号発生装置。
【請求項3】
前記パワー密度分割手段は、各周波数fとその周波数におけるパワー密度p(f)において、p(f)=f−S+DC+B・R(f−S)となるSの値によって決まった各p(f)を乱数により正弦波成分と余弦波成分に振り分けることを特徴とする請求項1又は2記載のゆらぎ信号発生装置。
【請求項4】
前記入力手段は、ゆらぎの大まかなピーク位置を入力する手段を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のゆらぎ信号発生装置。
【請求項5】
パワー密度を算出する関数と前記パワー密度を算出する関数のパラメータを入力する入力ステップと、
前記入力ステップによって入力された前記パワー密度を算出する関数と前記パラメータに基づいて、各周波数のパワー密度を算出するパワー密度算出ステップと、
前記パワー密度算出ステップによって算出された前記各周波数のパワー密度を正弦波成分と余弦波成分に分けるパワー密度分割ステップと、
前記パワー密度分割ステップによって分割された成分に基づいて逆フーリエ変換により時系列データを生成する時系列データ生成ステップと、
前記時系列データに基づいて出力データを生成し出力するデータ出力ステップと、を備えたことを特徴とするゆらぎ信号発生方法。
【請求項6】
前記パワー密度を算出する関数は、各周波数をfとし、その周波数におけるパワー密度をp(f)としたときに、p(f)=f−S+DC+B・R(f−S)であり、
前記パラメータは、S、DC、Bであることを特徴とする請求項5記載のゆらぎ信号発生方法。
【請求項7】
前記パワー密度分割ステップは、各周波数fとその周波数におけるパワー密度p(f)において、p(f)=f−S+DC+B・R(f−S)となるSの値によって決まった各p(f)を乱数により正弦波成分と余弦波成分に振り分けることを特徴とする請求項5又は6記載のゆらぎ信号発生方法。
【請求項8】
前記入力ステップは、ゆらぎの大まかなピーク位置を入力するステップを含むことを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載のゆらぎ信号発生方法。
【請求項9】
パワー密度を算出する関数と前記パワー密度を算出する関数のパラメータを入力する入力プログラムと、
前記入力プログラムによって入力された前記パワー密度を算出する関数と前記パラメータに基づいて、各周波数のパワー密度を算出するパワー密度算出プログラムと、
前記パワー密度算出プログラムによって算出された前記各周波数のパワー密度を正弦波成分と余弦波成分に分けるパワー密度分割プログラムと、
前記パワー密度分割プログラムによって分割された成分に基づいて逆フーリエ変換により時系列データを生成する時系列データ生成プログラムと、
前記時系列データに基づいて出力データを生成し出力するデータ出力プログラムと、を備えたことを特徴とするゆらぎ信号発生プログラム。
【請求項10】
前記パワー密度を算出する関数は、各周波数をfとし、その周波数におけるパワー密度をp(f)としたときに、p(f)=f−S+DC+B・R(f−S)であり、
前記パラメータは、S、DC、Bであることを特徴とする請求項9記載のゆらぎ信号発生プログラム。
【請求項11】
前記パワー密度分割プログラムは、各周波数fとその周波数におけるパワー密度p(f)において、p(f)=f−S+DC+B・R(f−S)となるSの値によって決まった各p(f)を乱数により正弦波成分と余弦波成分に振り分けることを特徴とする請求項9又は10記載のゆらぎ信号発生プログラム。
【請求項12】
前記入力プログラムは、ゆらぎの大まかなピーク位置を入力するステップを含むことを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載のゆらぎ信号発生プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−250060(P2011−250060A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120223(P2010−120223)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 電子情報通信学会2010年総合大会プログラム、社団法人 電子情報通信学会、平成22年3月2日
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【Fターム(参考)】