説明

らせん形薬物送達システム

本発明は、雌非ヒト哺乳動物の膣腔への薬物の送達に適するらせん形薬物含有獣医学用システムおよび製造方法に関する。薬物送達システムはらせん形であり、三層ポリマー繊維を含む。ポリマー繊維は、ポリマーコア、薬物を含むポリマー中間層、およびポリマースキンを含む。薬物含有システムは、哺乳動物の膣腔への薬物の制御送達をもたらす。本発明は、これらのスプリングの製造プロセスにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非ヒト哺乳動物の膣腔への薬物の送達に適するらせん形薬物含有獣医学用システムおよび製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
膣への挿入用の薬物送達システムは、当分野において公知である。US 4,237,885は、これ自体の周りに巻き付いて非常に多数の連続、絡合、対合要素を形成する(対の末端が連結されて閉じた曲線状装置を作る。)管状要素を含む、速度制御薬物送達システムを開示している。
【0003】
雌ウマについてのアルトレノゲストを有する膣内スポンジの留置率は、PalmerによりJournal of Reproduction and Fertility,suppl.27(1979),263−270に記載されている。
【0004】
WO 9740776は、硬化シリコーンゴムのマトリックス(マトリックスの重量に対して5重量%より多くのプロゲステロンを含む。)および、膣膜および/または膣液と接触可能な75cm以上の外面を含む、ウシ、ヒツジ、シカおよびヤギに使用するための膣内可変ジオメトリー装置(CIDR(登録商標))を開示している。
【0005】
哺乳動物の組織への局所投薬用のコイルが、WO 2004/105854に記載されている。このコイルは、反対の端が封止されており、薬物が含有している、1本の可撓性チューブからなる。
【0006】
多数の膣リングが当分野において公知である。例えばUS 4,292,965は、不活性エラストマーコア、このコアを取り囲む薬物含有層、外部不活性エラストマー層を含む、避妊具として使用するための膣内リング、および前記膣内リングの製造方法を開示している。シリコーンゴム製で、レボノルゲストレルおよび17β−エストラジオールを含む膣内リングが、この中に例示されている。
【0007】
さらに、EP 0876815は、プロゲストゲン性ステロイド化合物およびエストロゲン性ステロイド化合物を固定された生理学的比率で長期間にわたって同時放出するように設計されている膣リングを開示している。この薬物送達システムは、プロゲストゲン性化合物およびエストロゲン性化合物の混合物を含有する熱可塑性ポリマーコアと、熱可塑性ポリマースキンを含む少なくとも1つの区画を含み、最初にこのプロゲストゲン性化合物がこのポリマーコア材料に比較的低い過飽和度で溶解される。好ましい熱可塑性ポリマーは、エチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマーである。この避妊用膣リングは、オランダのOrganonにより商標Nuvaring(登録商標)で市販されている。
【0008】
US 2003/0149334には、疾病治療用の膣挿入物が開示されており、これは、コイル状に巻いて円筒形の形状を形成することができる、可撓性材料から作られたボディーを含み、そのため、この挿入物を拡張させ、それによって膣の内壁に接触させ、この内壁に押し付けることができる。これは、生殖管の内部または外部の疾病を治療するための薬物の制御および持続送達に使用される。
【0009】
「ウィッシュボーン」キャリアシステムに取り付けられる特別に設計された治療用パッドを使用する、ウマの膣挿入用のシステムが記載されており、これは、膣への挿入中に曲がることができる2つのS字形アームを有し、それによって全治療期間中この装置を確実に留置するために十分な張力を生じさせることができる(Cue Mare(登録商標))。このシステムは、膣刺激を常に生じさせた(J.B.,Grimmet,Theriogenology 58(2002)585−587)。
【0010】
さらに、U.S.3,892,238には、体腔に挿入および留置するためのらせん形薬物担持アンカー(PRID)が記載されており、これは、投与すべき薬物を担持するためのらせん形の形状を有する薬物担持面、および上に記載したような薬物担持アンカーと裸の形態でまたは均一層としてこの上に担持される薬物の組み合わせを含む。この薬物担持アンカーは、挿入中の直径より大きい直径を有するらせん形の形状で膣内に停留する。この文献には、明確な位置にこのアンカーを保つには組織への離間コイルの固定が必要であると記載されている。このアンカーが膣壁に継続的な圧力をかけて、この排出を阻止し、体腔内に留置させてこれが担持している薬物の放出を助長する。膣炎および大量の化膿性分泌物が装置除去時に雌ウマの有意な数において検出された(Dusart,P.ら(2006).Proc 9th congress of the World Equine Veterinary Association,Marrakech,pp 239−241;Handler,J.ら,(2006).Theriogenology 65,1145−1158)。U.S.3,892,238は、薬物含有繊維を含む薬物送達用システムの使用を開示していないことに留意しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第4,237,885号
【特許文献2】国際公開第9740776号
【特許文献3】国際公開第2004/105854号
【特許文献4】米国特許第4,292,965号
【特許文献5】欧州特許第0876815号
【特許文献6】米国特許第2003/0149334号
【特許文献7】米国特許第3,892,238号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Journal of Reproduction and Fertility,suppl.27(1979),263−270
【非特許文献2】J.B.,Grimmet,Theriogenology 58(2002)585−587
【非特許文献3】Dusart,P.ら(2006).Proc 9th congress of the World Equine Veterinary Association,Marrakech,pp 239−241
【非特許文献4】Handler,J.ら,(2006).Theriogenology 65,1145−1158
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、様々な雌非ヒト哺乳動物の要件ならびに様々な治療的および畜産学的適用に合わせて放出速度を調節することができる薬物送達システムを提供することである。
【0014】
本発明のさらなる目的は、雌非ヒト哺乳動物の膣腔に容易におよび慎重に挿入することができ、および容易に除去することができるシステムを提供することである。
【0015】
本発明の尚さらなる目的は、1週間以上の治療期間中の高い留置率、および高い許容度、即ち膣組織刺激および炎症の予防を示す獣医学用薬物送達システムを提供することである。
【0016】
本発明の尚さらなる目的は、製造が容易であり、挿入前に所定の長さにスプリングを切断することによってこのシステムの放出速度を哺乳動物の体重に合わせて、ならびに治療的適用および畜産学的適用に関連した有効血液レベルに合わせて微調整することができる、雌非ヒト哺乳動物用の薬物送達システムを提供することである。
【0017】
本発明の尚さらなる目的は、システムの長さを調整することによってスプリングの機械的特性に影響を及ぼすことなく放出速度を調節することができる、獣医学用システムを提供することである。
【0018】
さらに、本発明の目的は、一定範囲の獣医薬およびこの薬物の高い送達効率を含む高い能力を有する獣医学用システムを提供することである。
【0019】
尚さらに、本発明の目的は、低い薬物負荷量から高い薬物負荷量まで有することができ、ならびに長期間にわたって制御された有用な速度で薬物を送達することができる、送達システムを提供することである。
【0020】
さらに、本発明の目的は、1ヶ月より長い期間にわたって制御された有用な速度で薬物を送達することができる送達システムを提供することである。
【0021】
尚さらに、本発明の目的は、機械的特性および薬物放出特性の両方を独立して調整および最適化することができるシステムを提供することである。
【0022】
本発明のさらなる目的は、本発明の薬物送達システムを膣腔内に配置する段階および少なくとも約7日間、このシステムを膣腔内に留置する段階を含む、雌非ヒト哺乳動物における生殖機能を制御する、およびさらに発情を抑制する方法を提供することである。
【0023】
本発明のもう1つの目的は、本発明の薬物送達システムを膣腔内に配置する段階および少なくとも約7日間、このシステムを膣腔内に留置する段階を含む、雌非ヒト哺乳動物における生殖能力を最適化する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明に従って、薬物を含むポリマーコア、このコアを覆う薬物を含むポリマー中間層、およびこの中間層を覆う薬物を含むポリマースキンを含む、三層ポリマー繊維を含む、雌非ヒト哺乳動物の膣腔への薬物の送達に適するらせん形薬物含有獣医学用システムを提供し、
−システムは、1個より多く10個までの範囲の多数のループを含み、
−システムの外のり寸法は、前記腔に挿入されたとき、前記腔の子宮頚点における内のり寸法と実質的に一致し、および
−前記ポリマーコア、前記ポリマー中間層および前記ポリマースキンにおけるポリマー材料は、エチレン−酢酸ビニルコポリマーを含む。
【0025】
本発明のらせん形薬物送達システムは、雌非ヒト哺乳動物における膣腔に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は三層薬物送達システムの繊維の断面図を表す。
【図2】図2は膣用スプリングの側面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
ここで、システムが膣適用のためのらせん形薬物送達システムの形態を有する実施形態について、本発明をさらに詳細に説明する。本発明の文脈において、「膣用スプリング」、「スプリング」、「らせん形薬物含有獣医学用システム」および「らせん形薬物送達システム」は、同義で用いている。
【0028】
本発明は、雌非ヒト哺乳動物、特に愛玩用動物または農場飼育動物、例えばウマ(雌ウマ)、ブタ(雌ブタもしくは未経産雌ブタ)または一頭のウシ(雌ウシもしくは未経産雌ウシ)における膣内使用のための薬物送達装置に関するので、一般に、この使用は、人工受精、IVF(体外受精)関連技術および胚移植の使用を可能にする、雌への適用(避妊、生殖機能の制御、妊娠の維持、発情の抑制、生殖能力の最適化および卵巣機能の調節を含む。)に焦点を合わせている。成長パターンおよび肉質の最適化のような畜産学的適用も、膣送達経路の使用によって達成することができる。
【0029】
生殖機能の制御は、繁殖期中の雌非ヒト哺乳動物群の発情と排卵の同期化(繁殖期を有する種の場合)、ならびに治療時に発情周期に入っていない(非繁殖期、産後発情休止期)雌非ヒト哺乳動物の群における発情および排卵の誘導および同期化を含む。生殖機能の制御は、発情が演技に負に干渉する非ヒト演技用哺乳動物、例えば発情が競馬、飛越または馬術競技会に負に干渉する演技用雌ウマの発情の抑制をさらに含む。
【0030】
生殖能力の最適化は、排卵の正確なタイミングに関連した受精結果向上を含む(これより、排卵の数時間前に人工受精を行うことができる。)。これは、排卵後の最適以下のプロゲステロン濃度を有する雌非ヒト哺乳動物における早期胚死滅の予防をさらに含む。
【0031】
本発明の文脈において、らせん形のとは、1つより多くのループと互いに連結されていない2つの末端を有する繊維らせんの形を意味する(図2)。本システムのループは、多くの形、例えば長円形、楕円形、ドーナツ形、三角形、方形、六角形、八角形などおよびこれらの組み合わせを包含する。
【0032】
略円形のループ形状が好ましい。
【0033】
コイルスプリングのループは、絡み合っていることがある。
【0034】
膣リングはらせん形でなく、これは、非ヒト哺乳動物の膣腔に効果的に停留されないことが証明された。
【0035】
薬物含有は、薬物が負荷されていることを意味する。薬物含有三層ポリマー繊維の製造の際、薬物を中間層のみに、中間層とコアに、中間層とスキンに、または中間層とコアとスキンに負荷することができる。薬物含有繊維は、少なくとも1つの薬物が負荷されている。
【0036】
薬物という表現は、本明細書において用いる場合、治療効果を生じさせる有効量で送達することができる1つ以上の化合物を含む。好ましい実施形態において、薬物はステロイドである。ステロイドとしては、プロゲストゲン性、アンドロゲン性およびエストロゲン性物質が挙げられる。さらに好ましい実施形態において、薬物は、プロゲステロン、酢酸トレンボロン、エストラジオール、アルトレノゲストおよび酢酸メレノゲストロール(MGA)からなる群より選択される。最も好ましい実施形態において、薬物はアルトレノゲストである。
【0037】
1つの実施形態において、28重量%酢酸ビニルを含有するポリエチレン酢酸ビニルマトリックス(EVA28)への0.03重量%より大きい飽和溶解度を有する薬物が好ましい。もう1つの実施形態において、0.3重量%より大きい飽和溶解度を有する薬物が好ましく、さらにもう1つの実施形態において、1.0重量%より大きい飽和溶解度を有する薬物が好ましく、およびさらにもう1つの実施形態において、3.0重量%より大きい飽和溶解度を有する薬物が好ましい。溶解度は、Laarhoven,J.A.H.ら,(2002).International Journal of Pharmaceutics 232,page 165に記載されているように測定することができる。簡単に言うと、ポリ−EVAのフィルムを25℃および37℃の薬物の飽和水溶液に浸漬した。平衡に達した後、HPLCによってこれらの薄膜を薬物含量に関して分析した。
【0038】
1つの実施形態において、1000ダルトンより小さい分子量を有する薬物が好ましく、もう1つの実施形態において、700ダルトンより小さい分子量を有する薬物が好ましく、さらにもう1つの実施形態において、500ダルトンより小さい分子量を有する薬物が好ましく、およびさらにもう1つの実施形態において、400ダルトンより小さい分子量を有する薬物が好ましい。
【0039】
もう1つの実施形態において、中間層に含有される薬物の量は、1から70重量%であり、さらなる実施形態において、これは10から70重量%であり、尚さらなる実施形態において、これは25から65重量%であり、およびさらにもう1つの実施形態において、これは35から45重量%である。
【0040】
本発明の送達装置では、すべてのポリマー層が薬物を含む。スプリングの製造プロセスにおいて薬物を、一例として、このスプリングのポリマー層のうちの1つに、即ち、スキンに、中間層にまたはコアに負荷すると、この薬物は、この製造プロセス中に、および/またはこのスプリングの保管中に、平衡濃度まで他のポリマー層(単数または複数)に拡散する。
【0041】
三層薬物送達システムの繊維の断面図を図1に提示する。この断面の形状は、略円形または略楕円形である。略円形の断面形状が好ましい。
【0042】
本らせん形膣用スプリングは、長期間にわたって制御された速度で薬物の有効量を送達するための表面積を提供するために非常に多数のループを有することができる。挿入直前に、スプリングのループの一部を所定の長さに切断して、雌哺乳動物の体重に合わせてこのシステムの放出速度を微調整することができることが、このらせん形スプリングの利点である。
【0043】
膣腔内に本システムの位置を順応させることによって適応を増進させるために、本システムは、1個より多く10までの範囲、好ましくは1.5個から5個の範囲、さらに好ましくは2個から5個の範囲の多数のループを含む。
【0044】
ポリマーコア、ポリマー中間層およびポリマースキンにおけるポリマー材料としては、熱可塑性エチレン−酢酸ビニルコポリマー(EVA)が挙げられる。EVAは、可撓性をはじめとするこの卓越した機械的および物理的特性のため、本発明の三層スプリングに使用される。ポリマー材料は、エチレン−酢酸ビニルコポリマーと、薬学的使用に適する任意の押出可能熱可塑性ポリマーまたはエラストマー材料、例えば低密度ポリエチレン、ポリウレタンおよびスチレン−ブタジエンコポリマー、との混合物であってもよい。コア、中間層およびスキンのポリマー材料は、好ましくは少なくとも50% w/w、さらに好ましくは少なくとも80% w/w、および最も好ましくは少なくとも95% w/wのエチレン−酢酸ビニルコポリマーを含む。前記コア、中間層およびスキンに使用されるEVAコポリマーは、同じグレードのものであってもよく、または異なるグレードのものであってもよい。コポリマーは、任意の市販エチレン−酢酸ビニルコポリマー、例えば商品名:Elvax、Evatane、Lupolen、Movriton、Ultrathene、AtevaおよびVestyparで入手できる製品であってよい。これらのエチレン−酢酸ビニルコポリマーは、このコポリマー中に存在する酢酸ビニルの量に関して異なるグレードで入手することができる。
【0045】
例えばEVA28(Ateva 2820A)は、約28%の酢酸ビニル含量(VA)を有するコポリマーであり;EVA 33(Ateva 3325AC)は、約33%のVAを含有し;EVA 18(Ateva 1821A)は、約18%のVAを含有し、およびEVA9(Ateva 1070)は、約9%のVAを含有する。
【0046】
もう1つの実施形態において、本三層スプリングのコアは、18%未満、好ましくは10%未満の酢酸ビニル含量を有するエチレン−酢酸ビニルコポリマーを含む。
【0047】
さらなる実施形態では、コアと中間層の両方を、同じグレードのエチレン−酢酸ビニルコポリマーで製造する。スキンの厚さおよびこのスキンの酢酸ビニル含量は、薬物の放出速度に影響を及ぼす。スキンが薄いほど、このスキンの酢酸ビニル含量が高く、薬物の放出速度が高い。
【0048】
1つの実施形態では、0から40%の酢酸ビニル含量を有するEVAコポリマーを使用する。もう1つの実施形態では、6から40%の酢酸ビニル含量を有するEVAコポリマーを使用する。さらにもう1つの実施形態では、6から33%の酢酸ビニル含量を有するEVAコポリマーを使用する。さらのもう1つの実施形態では、9から33%の酢酸ビニル含量を有するEVAコポリマーを使用する。さらなる実施形態において、コアは、EVA9または28で製造する。尚さらなる実施形態において、スキンは、6から33%または9から33%の酢酸ビニル含量を有するEVAコポリマー、例えばEVA 9、EVA 15、EVA 18、EVA 28またはEVS33で製造する。さらなる実施形態において、スキンは、EVA33で製造する。使用するEVAコポリマーの酢酸ビニル含量が低いほど、これらから製造される膣用スプリングの靭性が高いことは、当分野において公知である。さらにまた、繊維直径が大きいほど、低い可撓性になる。
【0049】
本システムの外径は、膣の子宮頚点における膣の内のり寸法と実質的に一致する。この文脈での用語「実質的に一致する」は、子宮頚点に本システムを挿入した後のこのらせん形および機械的特性(可撓性を含む。)が、本システムの外のり寸法とこの地点での膣壁との所望の一致および適応をもたらすことを意味する。これは、この存在が膣腔の壁の複数の部分に対して低い圧力を生じさせるようにこの外側の形状とこの位置の両方を順応させるスプリングによって実現する。これらの機械的特性およびらせん形によって、本スプリングは、この形状を膣腔の生理条件下でこの軸方向と平行に、この軸に対して垂直に、および中にはさまれたすべての方向に順応させることができる。これらの特性によって、本らせん形スプリングは横方向に変形することができる。
【0050】
「送達されるときの」形態での本システムの外のり寸法が、膣腔に挿入されたときのこのシステムの外のり寸法と異なることは、明らかである。前者は、例えば円形であり得るが、後者は、子宮頚に近い膣腔の、円形に比べて、不規則な内部形状に、よりまたはある程度、順応する。
【0051】
本発明のシステムのこの実質的な一致は、膣腔の内壁に対する圧力を和らげる点で、および結果として、雌哺乳動物における本システムの留置時間を調節する点で、ならびに本システムの挿入後、膣腔内の組織の刺激および炎症面での許容度を調節する点で適切である。高い圧力は、治療期間中の本システムの高い留置率をもたらすことができるが、低い許容度ももたらす。本発明のシステムは、このらせん形、および膣壁に対して低い圧力をもたらすように微調整されるこの機械的特性の結果として、治療期間中の高い留置率と高い許容度の両方を明示する。本システムは、本システムがこの腔内で漸進的に後ろに移動するように設計されている。
【0052】
ポリマースキンを含む三層膣用スプリングからの薬物の放出には、フィックの拡散法則が適用される。三層膣用スプリングからの薬物放出動態は、非線形のものである場合もあり、または本質的にゼロ次種類のものである場合もある。
【0053】
速度制御膜によって覆われた円筒形貯留装置からの薬物放出を説明するための十分に評価されているモデルは、次のものである(図1参照)。
【0054】
【数1】


【0055】
この方程式は、この方程式の右辺上の項が一定である、即ち時間の関数でないときに実質的なゼロ次放出速度が得られることを示している。この法則によると、境界を越えて移動する質量の量は、この境界を横断する距離の逆関数である。一定放出速度の場合、スキンとコアの間の中間層に化合物を集めるほうが好ましいことが判った。その時、化合物は、比較的薄い層に濃縮されるので、放出中の拡散距離の延長は最小となり、その結果、時間に対してより一定の放出速度が得られる(項(r/r)は、ほぼ一定とみなすことができる。)。比較的薄い層または小さな中間層体積中の化合物の濃度は、低い初期薬物負荷量を有するスプリングを得るのに有利である。中間層中の化合物が溶解状態でしか存在しない場合、濃度勾配(ΔC)は、結局は着実に減少し、その結果、放出速度dM/dtは低下する(ゼロ次放出動態から外れる。)。従って、三層スプリング設計ではこの固体形で存在する化合物を有することが好ましい。
【0056】
2層システムと比較して、この三層システムは、機械的特性と薬物放出特性の両方を独立して調整および最適化することができる点で有利である。治療期間中の高い留置率および高い許容度を達成するために、コアでの利用には比較的低い酢酸ビニル含量を有するEVAコポリマーを選択する。比較的高い酢酸ビニル含量は、様々な雌非ヒト哺乳動物への制御薬物送達ならびに様々な治療的および畜産学的適用の所望の速度を達成するために利用することができる。本発明の三層システムでは、比較的低い酢酸ビニル含量を有するコポリマーをコア材料として使用することができ、これに対して薬物負荷中間層は、比較的高い酢酸ビニル含量を有するコポリマーを含む。本システムでは、コアにおいて使用する材料を変えて、本システムからの薬物の放出速度および後退に有意な影響を及ぼすことなく機械的特性を調整することができ、薬物負荷中間層における材料は、本システムの機械的特性に有意な影響を及ぼすことなく、所望の薬物放出速度に合わせて変えることができる。それに加えて、本システムは、薬物負荷中間層と膣粘膜との直接接触の発生を防止するポリマースキンを含み、従って、薬物との直接接触に起因する薬物負荷中間層からのバースト放出の危険および局所刺激を減少させる利点を有する。
【0057】
さらに、三層スプリングは、低い初期薬物負荷量を有するスプリングを得るために有効な設計を有する。さらに、三層スプリングでは、スプリングのスキン材料ばかりでなく、スキンおよび中間層の厚さを変えることができる。このようにして、治療に有効な放出速度を維持する期間を修飾することができ、従って、中間層の消耗によってこの期間の終わりにスプリング内の低い残留薬物含量を達成することができる。加えて、必要薬物送達動態を得るために中間層のみの薬物で十分である三層スプリングの場合、有利なことに、この薬物に関して非常に低い溶解特性を有するポリマーグレードをコアに用いることにより薬物の効率的使用をさらに増すことができる。高い薬物送達効率は、経済的見地からばかりでなく、エコロジー的見地からも有利である。
【0058】
本発明のらせん形スプリングは、少なくとも55%、および好ましくは少なくとも70%の薬物送達効率を有する。
【0059】
本発明のらせん形スプリングにおいて、スキンはエチレン−酢酸ビニルコポリマーであり、これは、40から300μmの範囲にわたる厚さおよび5から35%の範囲にわたる酢酸ビニル含量を有するスキンを含み、およびさらに特に、スキンは、25から35%の酢酸ビニル含量を有するエチレン−酢酸ビニルコポリマーを含む。このようなスキンは、卓越した薬物溶解性および拡散特性を有し、それによって、様々な雌非ヒト哺乳動物への制御薬物送達ならびに様々な治療的および畜産学的適用の所望の速度が長期間にわたって可能となる。本発明のらせん形スプリングにおいて、コアボティーは、2から30%、好ましくは5から15%、およびさらに好ましくは8から11%の酢酸ビニル含量を有するエチレン−酢酸ビニルコポリマーを有利には含んでいる。酢酸ビニルの百分率は、この主題に関する様々な教科書に記載されているように、電位差滴定、IRおよびNMRを用いて証明することができる。
【0060】
本発明の膣用スプリングは、共押出およびブレンド押出などの公知の押出プロセスによって製造することができる。薬物含有繊維、コアまたは中間層のための材料を得るために、薬物をEVAコポリマーと混合する。この混合プロセスにおける主段階は、ブレンド押出である。その後、この薬物/EVAコポリマー混合物(即ち、薬物を含む中間層)をコアおよびスキン材料とともに共押出して三層繊維にする。このようにして得られた三層繊維を所望の長さの断片に切断し、それぞれの断片を、当業者に公知の任意の適する方法で、スプリング形装置に組み立てる。その後、これらのスプリングを、場合によっては滅菌または消毒後、例えば適するサッシェに詰める。
【0061】
当分野において公知の方法および手順ならびに本出願において与える実施例に基づいて、薬物を含有する三層繊維の製造に最適な加工条件を見つけること、例えば押出温度、押出速度およびエアギャップを決定することは、当業者にとって難しいことではない。薬物/EVAコポリマー混合物のブレンド押出に適する温度は、80℃から170℃の範囲に存在する(例えば約105℃)。三層繊維の共押出に適する温度は、80℃から170℃、例えば105℃から130℃の範囲に存在する。
【0062】
この押出し温度は、好ましくは薬物の融解温度より下である。これは、結果として結晶化遅延のような現象を伴う、押出中の薬物の融解の発生を防止するためである。従って、アルトレノゲストの場合、押出温度は、好ましくは約118℃未満である。
【0063】
本発明の膣用スプリングは、任意の粒径で製造することができる。本システムは、雌非ヒト哺乳動物、特に、愛玩用動物または農場飼育動物、例えばウマ(雌ウマ)、ブタ(雌ブタもしくは未経産雌ブタ)および一頭のウシ(雌ウシもしくは未経産雌ウシ)の膣腔への薬物送達用に成形することができる。
【0064】
本発明の1つの実施形態において、雌ウマに「送達されるとき」、本スプリングは、約4.0から8.0mmの範囲、好ましくは4.5から6.5mmの範囲の繊維直径を有する。さらなる実施形態において、これらのループの外径は、約50から90mmの範囲、好ましくは約65から90mmの範囲である。
【0065】
1つの実施形態において、ブタに「送達されるとき」、本スプリングは、約4.0から7.0mmの範囲、好ましくは約4.5から6.5mmの範囲の繊維直径を有する。未経産雌ブタについてのさらなる実施形態において、これらのループの外径は、約25から60mmの範囲である。雌ブタについてのもう1つの実施形態において、これらのループの外径は、約35から70mmの範囲である。
【0066】
本発明の好ましい実施形態は、雌ウマ、雌ブタ、未経産雌ブタ、雌ウシまたは未経産雌ウシの膣に配置するためのものである。
【0067】
本発明は、中間層に薬物が負荷された本発明の三層薬物送達システムの製造方法を提供し、この方法は、
(i)薬物含有均一ポリマー中間層粒状物を製造する段階;
(ii)ポリマーコア粒状物およびこの中間層粒状物をポリマースキン粒状物とともに共押出して三層薬物送達システムを形成する段階;
(iii)この繊維をリールで回収してらせん形を作り、その後、この繊維をらせん形スプリングに切断する、またはオフラインで繊維からスプリングを巻く段階
を含む。
【0068】
薬物含有均一ポリマー中間層粒状物の製造は、
a.ポリマーを粉砕する段階;
b.この粉砕ポリマーと中間層に負荷させる薬物とを乾式粉体混合する段階;
c.結果として得られたポリマー混合物をブレンド押出する段階;
d.結果として得られた薬物含有ポリマーストランドを粒状物に切断し、それによって中間層粒状物を得る段階;
e.この中間層粒状物を潤滑剤で潤滑する段階
を含む。
【0069】
本発明は、中間層およびコアに薬物が負荷された本発明の三層薬物送達システムの製造方法も提供し、この方法は、
(i)薬物含有均一ポリマーコア粒状物および薬物含有均一ポリマー中間層粒状物を製造する段階;
(ii)このコア粒状物および中間層粒状物をポリマースキン粒状物とともに共押出して、三層薬物送達システムを形成する段階;
(iii)この繊維をリールで回収してらせん形を作り、その後、この繊維をらせん形スプリングに切断する、またはオフラインで繊維からスプリングを巻く段階
を含む。
【0070】
薬物含有均一ポリマーコア粒状物および薬物含有均一ポリマー中間層粒状物の製造は、
a.ポリマーを粉砕する段階;
b.この粉砕ポリマーと中間層に負荷させる薬物とを乾式粉体混合する段階;
c.この粉砕ポリマーとコアに負荷させる薬物とを乾式粉体混合する段階;
d.段階(b)および(c)の結果として得られた粉体混合物をブレンド押出する段階;
e.結果として得られた薬物含有ポリマーストランドを粒状物に切断し、それによってコア粒状物および中間層粒状物を得る段階;
f.コア粒状物と中間粒状物の両方を潤滑剤で潤滑する段階
を含み、この場合、段階(b)および(c)は、相互交換可能である。
【実施例1】
【0071】
三層膣用スプリングの作製およびインビトロ薬物放出速度の分析
三層繊維を作製した(A1からA2、B1からB7、およびC1)。以下の手順に従って、それぞれの繊維を製造した。
【0072】
薬物負荷ポリマー粒状物
2つの逐次的混合段階を行って、アルトレノゲストをポリマー(33%酢酸ビニルを含有するエチレン酢酸ビニル、EVA33)に均一に混ぜた。第一の段階では、薬物とポリマー粉末の乾式粉体混合を行った。Rhonrad(Barrel−hoop原理)を約47rpmの固定回転速度で60分間使用し、ステンレス鋼ドラムの中で、薬物をポリマー粉末と混合した。この第一粉体混合段階は、中間層のためのポリマーと薬物(ポリマー粉末とアルトレノゲスト)を混合するために行った。その後、この均質化されたポリマー混合物を、25mm同方向回転二軸スクリューブレンド押出機(Berstoff ZE25)を使用してブレンド押出し、結果として得られた薬物含有ポリマーストランドを、Scheer造粒機を使用して粒状物に切断した。このプロセスに従って、バッチ中間層粒状物を製造した。造粒後、次の加工段階(共押出)を助長するためにこのバッチをステアリン酸マグネシウムで潤滑した。共押出プロセスを用いて三層繊維を製造するために使用した粒状物バッチの組成を下の表1に記載する。
【0073】
【表1】

【0074】
三層共押出(Three−layer co−extrusion)
Fourne三成分モノフィラメント紡糸プラント三層共押出機(25/18/18mm)を三層強押出(trico−extrusion)に使用した。(それぞれの層の体積流量(メルトフロー)を制御するために)3つの別個の紡糸ポンプを有する三区画紡糸ブロック(Fourne)で3機の押出機を接続した。これら3つのメルトフローを紡糸口金において併せ、その結果、三層を有する繊維を得た。4.2mmのキャピラリーを使用した。繊維を95℃(中間層)、100℃(スキン層)および130℃(コア)の押出温度で押出した。紡糸ブロックは、105℃に設定した。
【0075】
5.0mmの所望繊維直径が得られるように紡糸速度を調整し、ならびに紡糸ポンプの調整によって所望のスキンおよび中間層厚を得た。適切な紡糸速度および紡糸ポンプ設定を用いて、三層繊維バッチ(A1からA2およびB1からB7)のそれぞれを製造した。それぞれのバッチの約5分の三層共押出後、この三層繊維を、並進および回転方式で移動する管状ガラスマンドレルで回収した。このようにしてらせん形スプリングを得た。それぞれのバッチの製造開始時、中間、および終了時にレーザーマイクロメーターを使用して繊維の直径を測定し、記録した。
【0076】
これらの薬物含有繊維を0.6m/分の押出速度で加工し、0.55m/分(バッチAおよびC1)または1.1m/分(バッチB)の回転速度で回収した(表2参照)。
【0077】
繊維寸法
3つのループを有するらせん形スプリングに関する繊維寸法(繊維直径、中間層の厚さおよびスキンの厚さ)を加工直後に測定した。繊維直径は、レーザー厚み計(Zumbach)によって測定した。中間層およびスキンの厚さは、顕微鏡(Jena)を使用して測定した。薬物含有バッチについての結果を、異なる繊維中のアルトレノゲストの含量と共に表2に示す。
【0078】
【表2】

【0079】
長さ約15cmの繊維を用いて、0.9%ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)中でアルトレノゲストのインビトロ放出を行った。所定の期間、毎日、サンプルを回収し、分析した。その後、これらの得られた放出速度を外挿して、完成スプリングにおける期待放出を評価した。
【0080】
膣用スプリングの様々なバッチ(表2)からのアルトレノゲストのインビトロ放出についての結果を、表3a、b、cおよびdに示す。試験したらせん形スプリングのそれぞれの種類につき6つのサンプルから放出速度を計算する。提示する値は、6つのサンプルの平均値である。
【0081】
第1日におけるブラスト放出の大きさ、第7、10、14および30日に放出された量、ならびに最初の7、10、14または30日間のアルトレノゲストの平均放出を、表3a、b、cおよびdに示す。
【0082】
【表3】

【0083】
【表4】

【0084】
【表5】

【0085】
【表6】

【0086】
結果(表3a、b、cおよびd)は、繊維直径、中間層およびスキンの厚さ、利用するポリマーの種類ならびに薬物含量などのパラメータを応用することにより、広範な放出特性が得られたことを示している。
【実施例2】
【0087】
アルトレノゲスト送達における三層らせん形スプリングの効率
初期薬物負荷量に対する百分率での治療期間終了時点における本送達システムによって放出された薬物の総量を、効率として表示する。高い効率は、使用後にこの装置内の活性薬物の残量がより少ないことを意味するので、経済的見地からばかりでなく、エコロジー的見地からも有利である。本三層スプリングでは、スキンおよび中間層の厚さならびにスキン材料によって、結果として生ずる放出速度および従ってそれぞれの特定の用途についての本スプリングの効率を調整することができる。詳細には、使用最終日が、放出速度の急激な低下が明らかになる時と一致する、および従って中間層のほぼ完全な枯渇と一致するシステムを製造することができる。
【0088】
アルトレノゲストの効率は、実施形態A1、A2、B1、B3およびB5(組成:表2)からのインビボでの使用後のアルトレノゲストの残存含量から計算する。この効率は、少なくとも、表4に示すような効率である。
【0089】
【表7】

【0090】
本スプリングで得られる効率は、US 3,892,238に記載されているPRID(登録商標)で観察された60%効率と比較して改善される。これは、最近のCIDR(登録商標)インサート(原薬物負荷量の62%)(M.J.Rathbone,J.Control.Rel.85(2003)105−115)について特許請求されている放出効率よりも高い。本発明のスプリングは、高い薬物送達効率を示す。
【0091】
インビボでの膣用スプリングの留置、局所許容度および臨床効率(即ち、スプリングを一旦除去して、発情同期化)を評価することにより、記載する実施形態の一部についての臨床効率も判定した。結果を表5に報告する。バッチA2、B1、B3およびC1の組成は、表2において見つけることができる。
【0092】
【表8】

【実施例3】
【0093】
雌ウマにおける膣用スプリングの停留率および許容度
本発明のらせん形スプリングを雌ウマの膣の子宮頚付近の内部深くに挿入した。本システムは、膣腔に容易に挿入することができた。バッチA1およびA2の三層アルトレノゲスト負荷らせん形スプリング(表5)で10日または30日治療した8頭の雌ウマにおいて、膣排泄物および刺激の存在を評定した。
【0094】
【表9】

【0095】
達成目標期間の間、すべての装置が留置された。結果として、治療期間中の停留率は、両方の装置種類で100%であった。治療全体を通して、スプリングが漸進的に後に移動することが観察された。局所許容度は、非常に良好であった。有害事象および膣排泄物は検出されなかった。
【実施例4】
【0096】
未経産雌ブタにおける膣用スプリングの留置率および許容度
本発明のらせん形スプリングをブタの膣の子宮頚付近の内部深くに挿入した。バッチB1からB4の三層アルトレノゲスト負荷らせん形スプリング(表7)で7日または14日間治療した12頭の未経産雌ブタにおいて、膣排泄物および刺激の存在を評定した。
【0097】
【表10】

【0098】
B3およびB4スプリングは、14日の研究に使用し、それぞれ、12+/−3および14+/−1日間留置された。14日目のこれらそれぞれの留置率は、67および83%であった。14日間これらの装置を留置したすべての未経産雌ブタが、スプリング除去の5日後に発情同期化を示した。
【0099】
B1およびB2スプリングは、未経産雌ブタの100%において7日間停留された。治療継続期間に関係なく、膣排泄物は稀であり、検出されたときは常に一時的であった。
【実施例5】
【0100】
40% w/w アルトレノゲストが負荷された三層スプリングシステムからのインビボ放出速度とインビトロ放出速度の相関
アルトレノゲストを添加した6つのバッチ(実施形態A1、A2、B1、B2、B3およびB4)を三層共押出によって作製した。得られた三層スプリングを雌ウマおよびブタにおける薬物動態研究に使用した。これらのバッチの組成を下の表10に示す。すべてのバッチは、Ateva 1070(EVA9)のコアを有した。
【0101】
【表11】

【0102】
薬物含有スプリングそれぞれからのアルトレノゲストのインビトロ放出(n=6)をこれらのインビボでの使用期間と同じ期間にわたって分析し、インビトロでの平均放出速度(mg/日)を計算した。
【0103】
薬物含有スプリングを、特定期間、雌ウマ(n=4)および未経産雌ブタ(n=6)に挿入した。回収後、これらのスプリング中の残留アルトレノゲスト含量を測定し、インビボでの平均放出速度(mg/日)を計算した。インビボ放出とインビトロ放出の相関(%で)は、平均インビトロ放出速度と平均インビボ放出速度の比率から誘導する。
【0104】
結果を表11に表す。
【0105】
【表12】

【0106】
すべての場合、動物治療に使用したスプリングから計算したデータとインビトロで得られたデータの間に約90%の相関が認められる。
【実施例6】
【0107】
未経産雌ブタからのスプリングの除去の容易さ
本発明のらせん形スプリング(表2;バッチD1からD4)を未経産雌ブタ(スプリングのバッチあたり、n=10)の子宮頚近くに挿入した。挿入の14日後、スプリングを除去した。すべての未経産雌ブタに関して、60秒以内に除去されたスプリングの百分率により、除去の容易さを評定した(表12)。
【0108】
【表13】

【実施例7】
【0109】
雌ブタにおける膣用スプリングの留置率
本発明のらせん形スプリングを雌ブタ(スプリングのバッチあたり、n=10)の子宮頚の近くに挿入した。バッチD4およびD5からのスプリングの留置率を挿入の7日後に評定した。
【0110】
【表14】

【0111】
バッチD4とD5両方の留置率が100%であった。
【実施例8】
【0112】
雌ウマにおける膣用スプリングの長期使用
本発明のらせん形スプリングを雌ウマにおける膣の子宮頚付近の内部深くに挿入した。このシステムは、膣腔に容易に挿入することができた。バッチE1およびE2の三層アルトレノゲスト負荷らせん形スプリング(表14)で120日間治療した8頭の雌ウマにおいて、膣排泄物および刺激の存在を評定した。
【0113】
【表15】

【0114】
120日の達成目標期間の間、すべての装置が留置された。結果として、この治療期間での留置率は、両方の装置種類で100%であった。治療全体を通して、スプリングが漸進的に後に移動することが観察された。局所許容度は、非常に良好であった。有害事象および膣排泄物は検出されなかった。観察された放出速度は、すべての治療期間にわたってほぼ均一であった(表15)。
【0115】
【表16】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物を含むポリマーコア、このコアを覆う薬物を含むポリマー中間層、およびこの中間層を覆う薬物を含むポリマースキンを含む、三層ポリマー繊維を含むこと、
1個より多く10個までの範囲の多数のループを含むこと、
この外のり寸法が、膣腔に挿入されたとき、前記膣腔の子宮頚点における内のり寸法と実質的に一致すること、および
前記ポリマーコア、前記ポリマー中間層および前記ポリマースキンにおけるポリマー材料が、エチレン−酢酸ビニルコポリマーを含むこと
を特徴とする、雌非ヒト哺乳動物の膣腔への薬物の送達に適するらせん形薬物含有獣医学用システム。
【請求項2】
1.5個から5個の範囲の多数のループを含むことを特徴とする、請求項1に記載の薬物送達システム。
【請求項3】
らせん形システムを押出または共押出によって得ることができる、請求項1または2に記載の薬物送達システム。
【請求項4】
薬物が、0.03% w/wより大きい、酢酸ビニルを28重量%含有するポリエチレン酢酸ビニルマトリックスへの37℃での溶解度を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の薬物送達システム。
【請求項5】
薬物が、900ダルトン未満の分子量を有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の薬物送達システム。
【請求項6】
6%から40%の酢酸ビニル含量を有するエチレン−酢酸ビニルコポリマーを使用することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の薬物送達システム。
【請求項7】
少なくとも60%の薬物送達効率を有することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の薬物送達システム。
【請求項8】
薬物がステロイドである、請求項1から7のいずれか一項に記載の薬物送達システム。
【請求項9】
前記薬物がアルトレノゲストであることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の薬物送達システム。
【請求項10】
(i)請求項9の薬物送達システムを膣腔内に配置する段階、および
(ii)システムをこの膣腔内に少なくとも約7日間留置する段階
を含む、雌非ヒト哺乳動物における生殖機能を制御する方法。
【請求項11】
雌非ヒト動物における発情を抑制するための、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
(i)請求項9の薬物送達システムを膣腔内に配置する段階、および
(ii)システムを膣腔内に少なくとも約7日間留置する段階
を含む、雌非ヒト哺乳動物における生殖能力を最適化する方法。
【請求項13】
哺乳動物が、愛玩用動物または農場飼育動物である、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
農場飼育動物がウマ、ブタまたは一頭のウシである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
(i)薬物含有均一ポリマーコア粒状物および薬物含有均一ポリマー中間層粒状物を製造する段階;
(ii)コア粒状物および中間層粒状物をポリマースキン粒状物とともに共押出して、三層薬物送達システムを形成する段階;
(iii)繊維をリールで回収してらせん形を作り、その後、繊維をらせん形スプリングに切断する、またはオフラインで繊維からスプリングを巻く段階
を含む、請求項1に記載の三層薬物送達システムの製造方法。
【請求項16】
段階(i)が、
(a)ポリマーを粉砕する段階;
(b)粉砕ポリマーと中間層に負荷させる薬物とを乾式粉体混合する段階;
(c)粉砕ポリマーとコアに負荷させる薬物とを乾式粉体混合する段階;
(d)段階(b)および(c)の結果として得られた粉体混合物をブレンド押出する段階;
(e)結果として得られた薬物含有ポリマーストランドを粒状物に切断し、それによってコア粒状物および中間層粒状物を得る段階;
(f)コア粒状物および中間粒状物の両方を潤滑剤で潤滑する段階
(この場合、段階(b)および(c)は相互交換可能である。)
を含む、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−509964(P2010−509964A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−536750(P2009−536750)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【国際出願番号】PCT/EP2007/062514
【国際公開番号】WO2008/061963
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(398057282)ナームローゼ・フエンノートチヤツプ・オルガノン (93)
【出願人】(506196247)インターベツト・インターナシヨナル・ベー・ベー (85)
【Fターム(参考)】