説明

アイオノマー層を含む多層シート

a.酸部分の少なくとも35%が金属イオンで中和された共重合体の重量を基準にして8〜25重量%のC〜Cα,βエチレン性不飽和モノカルボン酸のコモノマー含有率を有するエチレンのアイオノマー樹脂を含む第1共押出ポリマー層と、a.アイオノマー樹脂、エチレン酸ポリマー、エチレン共重合体、エチレン酸三元重合体またはメタロセン触媒による超低密度ポリエチレン(m−VLDPE)から選択された、任意選択的に顔料、染料、フレーク、添加剤およびそれらの任意の混合物を含有する第2共押出ポリマー層と、b.メタロセン触媒による超低密度ポリエチレン(m−VLDPE)の第3共押出ポリマー接着層と、c.任意選択的に、第3共押出層と接触し、それに接着している、例えば、ポリプロピレン、ポリプロピレンの共重合体、ポリプロピレンのランダム共重合体、ポリプロピレンと他のポリオレフィンとのブレンドの少なくとも1つの追加の共押出された第4の熱成形可能なポリマー層またはバッキング層とを含む熱成形可能な多層シート;本発明の別の態様は、第2層はm−VLDPEであることかでき、顔料、染料および他の添加剤を含有することができ、第3の熱成形可能なポリマーと直接共押出されて3層構造体を形成し;別の構造体は、第1層が上記のようなアイオノマー樹脂であり、第2層が第1層と直接共押出しされたm−VLDPEであり、顔料、染料および他の添加剤を含有し;上記構造体の任意のものを熱成形し、適切なエンジニアリング樹脂で被覆加工して自動車、トラックおよびレクリエーショナル・ビークル用の部品およびパネルを形成することができ、上記の2、3または4層構造体を別の熱可塑性樹脂に積層して多種多様な最終用途を有するフィルムまたはラミネートを形成することができるということである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイオノマー表層と特にポリプロピレン基材層に改善された接着性を与えるメタロセン超低密度ポリエチレンの接着層とを有する多層シートフィルムのような多層シートに関する。
【背景技術】
【0002】
多種多様な多層シート構造体、フィルムおよびラミネートは、耐擦り傷性および耐表面擦傷性、高い光沢、耐久性、耐候性ならびに他の望ましい特性のような優れた特性を有するアイオノマーの最上層または外層を形成するアイオノマー樹脂で製造することができる。一問題は、アイオノマー樹脂がバッキングまたは強化層のような別の基材に接着して高レベルの接着性を得るのが困難であることであった。バッキングまたは強化層用に特に望ましい一材料はポリプロピレン、ポリプロピレンの共重合体、およびポリプロピレンと他のポリマーとのブレンドである。アイオノマー樹脂外層とポリプロピレン・バッキングまたは強化層とを有する多層シート構造体であって、アイオノマー層がポリプロピレン層への高レベルの接着性を有する構造体を形成できることは望ましいであろう。
【0003】
2001年8月29日に公開された(特許文献1)は、自動車外装車体パネルのような物品用の共押出された顔料/クリアコート化ポリマーコーティングに関する。
【0004】
1983年9月16日に公開された(特許文献2)は、ポリオレフィン樹脂のベース層とエチレン−α,β−不飽和カルボン酸共重合体の金属塩の表層とを有する成形ポリオレフィン樹脂ラミネートを示しているが、かかるラミネートは、例えば、外装自動車およびトラックパネルおよび部品に必要とされる耐スクラッチ表面損傷性および耐擦り傷性のような耐久性を持たない。さらに、有色素表層の耐候性は着色層上のクリア層よりかなり劣っていると予測される。
【0005】
【特許文献1】国際公開第02/066249号パンフレット
【特許文献2】特開昭58−155953号公報
【特許文献3】米国特許第3,264,272号明細書
【特許文献4】米国特許第4,351,931号明細書
【特許文献5】米国特許第5,028,674号明細書
【特許文献6】米国特許第5,324,800号明細書
【特許文献7】米国特許第5,278,272号明細書
【特許文献8】米国特許第5,272,236号明細書
【特許文献9】米国特許第5,405,922号明細書
【特許文献10】米国特許第5,198,401号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、アイオノマー樹脂層とポリプロピレン・バッキングまたは強化層との間に所望の高レベルの接着性を有し、自動車、トラックおよびレクリエーショナル・ビークルのパネルおよび部品用に、多数のラミネートで有用なベースシート材料として、多種多様な最終用途向けに使用されるフィルム用に使用することができるラミネートを形成する多層シート材料を形成するためにメタロセン触媒による超低密度ポリエチレン(m−VLDPE)接着層を含む。
【課題を解決するための手段】
【0007】
a.ポリマー層に高められた表面特性を与えるために酸部分の少なくとも35%が金属イオン、好ましくは、金属イオンの混合物で中和された、共重合体の重量を基準にして8〜25重量%のC〜Cα,βエチレン性不飽和モノカルボン酸のコモノマー含有率を有するエチレンのアイオノマー樹脂を含む第1共押出層と、
b.アイオノマー樹脂、エチレン酸ポリマー、エチレン共重合体、エチレン酸三元重合体、メタロセン触媒による超低密度ポリエチレン(m−VLDPE)、またはそれらの2つ以上の組合せから選択された、顔料、染料、フレーク、添加剤、またはそれらの2つ以上を含有する第2共押出ポリマー層と、
c.メタロセン触媒によるm−VLDPEの第2共押出層と接触した第3共押出接着層と、
d.任意選択的に、少なくとも1つの追加の共押出された第4の熱成形可能なポリマー層またはバッキング層、例えば、第3共押出層と接触し、それに接着しているポリプロピレン、ポリプロピレンの共重合体、ポリプロピレンのランダムポリマー、ポリプロピレンと他のポリオレフィンとのブレンドと
を含むまたはまたはそれらから製造された多層シート。
【0008】
本発明はまた、第2層がm−VLDPEで置き換えられており、顔料、染料および他の添加剤を含有することができ、3層化構造体を形成するために熱成形可能なポリマー層と直接共押出することができる多層を含む。本発明はまた、第2層が第1層と直接共押出されたm−VLDPEであり、顔料、染料および他の添加剤を含有することができる2層体を含む。上記の構造体の任意のものを熱成形し、バッキング層への許容できるレベルの接着性を有する適切なエンジニアリング樹脂で被覆加工して自動車、トラックおよびレクリエーショナル・ビークル用の部品およびパネルを形成することができる。また、上記の2−、3−、または4−層構造体を別の熱可塑性樹脂に積層して多種多様な最終用途を有するフィルムまたはラミネートを形成することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
明確にするため、別個の実施形態との関連で上および下に記載される本発明のある種の特徴はまた、単一の実施形態で組み合わせて提供されてもよい。逆に、簡潔にするため、単一の実施形態との関連で記載される本発明の様々な特徴はまた、別々にまたは任意の副次的な組合せで提供されてもよい。さらに、単数形での言及はまた、特に文脈が具体的に明記しない限り複数を含んでもよい(例えば、単数形(「a」および「an」)は1つ、または1つまたは複数を意味してもよい)。
【0010】
本出願で指定される様々な範囲での数値の使用は、特にはっきりと明記されない限り、まるで提示された範囲内の最小値および最大値が両方とも単語「約」が前にあるかのように近似値として提示される。このように、提示された範囲の上および下のわずかな変動は、範囲内の値と同じ結果を実質的に達成するために用いることができる。また、これらの範囲の開示は、最小値と最大値との間のあらゆる値を含む連続的な範囲として意図される。
【0011】
本発明の目的のために、次の用語が定義される。
「(メタ)アクリル酸」はアクリル酸およびメタクリル酸を意味し、用語「(メタ)アクリレート」はアクリレートおよびメタクリレートを意味する。
【0012】
「より本質的になる」は、列挙される成分が本質的であるが、より少量の他の成分が本発明の操作性を損なわない程度まで存在してもよいことを意味する。
【0013】
「画像の明瞭さ」または「DOI」は、実際の対象そのものと比較して着色仕上げでの対象の反射の「鮮明度の程度」の尺度である。DOIは、ASTM標準−284で、画像の明瞭さ−光沢、表面での反射によって生み出される対象の画像の鮮鋭度によって特徴づけられる光沢のn−アスペクトと定義されている。DOIは、BYK−ガードナー・ウェーブスキャン(BYK−Gardner Wavescan)DOI機器で測定することができる。自動車業界では、滑らかなまたは「クラスA」表面上の満足できる仕上げは、典型的には少なくとも60、好ましくは80またはそれ以上のDOI値を有することができる。
【0014】
「光沢」は、ASTM標準−284で、対象の反射されるハイライトまたは画像が表面上に重ね合わせられるかもしれない程度に関与する、表面反射光に関する、反射率のn−角度選択性と定義されている。
【0015】
ポリマーの「メルトインデックス」(MI)は、条件E(2190g、190℃)を用いるASTM D1238によって測定される。
【0016】
「ヘーズ」は、ASTM標準−284で、表面からの反射で見られる対象のコントラストの見かけの低下に関与する検体の光沢面での光のn−散乱と定義されている。
【0017】
「クラスA表面」は、単独で少なくとも80および90のDOIおよび光沢読みを有する表面である。
【0018】
多層シート材料は、アイオノマー層とポリプロピレン、ポリプロピレンの共重合体、ポリプロピレンのランダム共重合体、ポリプロピレンおよび他のポリオレフィンのブレンドであり得るバッキング層との間に高レベル接着性を有する。高い接着性レベルは、シート材料中のm−VLDPE層によって提供される。自動車およびトラック部品およびパネルに、ならびにレクリエーショナル・ビークル用の部品およびパネルに有用な、例えば、ポリプロピレン、ポリプロピレンの共重合体、ポリプロピレンとポリエチレンとのブレンド、ポリエチレン共重合体およびポリエチレンと他のポリオレフィンなどとのブレンドのような樹脂で被覆加工されるパッケージング、成形品に有用なラミネート、薄フィルムのような多種多様な構造体は新規シート材料から形成することができる。構造体およびラミネートは、従来の熱および押出積層化ならびに圧縮または射出成形によって形成することができる。
【0019】
新規な多層シート材料のパッケージングフィルムは、m−VLDPEの接着層がアイオノマー最上層およびバッキング層と容易に共押出できるクリア樹脂であり、かかる目的のために使用される従来の接着剤より一般に低コストであるので経済的である。例えば、ポーチを形成するために使用されるラミネートは、アイオノマー外面層とポリプロピレン樹脂またはポリエチレン樹脂のようなバッキング層との間の接着層としてm−VLDPEを使用する。表層としてアイオノマー樹脂を有する共射出成形品は、射出被覆加工することができるバッキング層を接着するための接着層として比較的低コストのm−VLDPEを利用する。
【0020】
多層シート材料は、より高い結晶化度を有するように好ましくは製造されるアイオノマー樹脂の第1共押出層を含み、酸部分の少なくとも35%が金属イオンで中和されたエチレンとコモノマー含有率が共重合体の重量を基準にして8〜25重量%であるC〜Cα,βエチレン性不飽和モノカルボン酸のコモノマーとの共重合体である。
【0021】
この層はクリアであることができ、透明であるまたはアイオノマー樹脂と同じ屈折率を有して層をクリアに見えるようにする顔料を含有してもよく、それがUV線および気候に曝される場合、1つまたは複数のUV吸収剤および安定剤、他の添加剤ならびにそれらの混合物を含有してもよい。このクリア層は、より高い耐温度性、耐候性およびかかる製品に必須である他の望ましい特性と共に耐スクラッチ性および耐表面損傷性を有する部品、パネル、およびラミネートを提供する。
【0022】
シートの第2共押出ポリマー層は、顔料、染料、アルミニウムフレークのようなフレーク、他の添加剤およびそれらの混合物を含有する着色層または有色素層であることができる。アイオノマー樹脂をこの有色素層用に使用することができる。クリア層および有色素層に使用されるアイオノマー樹脂は、好ましくは同じ樹脂であるかまたは第2層用の非常に相溶性のアイオノマー樹脂であり、良好な層間接着性を有する。異なる樹脂がクリア層および有色素層に使用される場合、樹脂は好ましくは加工時に相溶性であり、十分な層間接着性を有する。使用することができる他の樹脂は、エチレン/アクリル酸およびエチレン/メタクリル酸共重合体のようなエチレン酸共重合体;エチレン共重合体;例えばエチレン/酢酸ビニル/アクリル酸ポリマー、エチレン/アクリル酸/アクリル酸ブチルポリマーのような、アルキル基中に2〜12個の炭素原子を有するエチレン/(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルポリマーなどのエチレン/酸三元重合体である。メタロセン触媒によるm−VLDPEを使用することができる。1つの特に好適なm−VLDPEは、エクソン・モービル・コーポレーション(Exxon Mobile Corporation)によって製造される0.88g/cmの密度を有するイグザクト(EXACT)(登録商標)8201、オクテン・エチレン共重合体である。また、エチレン/酢酸ビニル共重合体およびエチレン・アクリル酸メチル共重合体も使用することができる。この層に使用されるポリマーは、クリア層および任意の接着層と満足のいくように加工することができ、十分な層間接着性を有する。第2層が例えばmVLDPEよりなる場合、第2層は顔料を含有し、バッキングまたは被覆加工材料に接着性を与えることができる。
【0023】
第2着色層と接触している第3共押出ポリマー層は、着色層をバッキング層に接合する接着層であることができる。メタロセン触媒によるm−VLDPEを、高レベルの接着性を与えるためのこの層用に使用することができる。上に開示されたイグザクト(登録商標)8201は好ましい一ポリマーである。
【0024】
第4共押出層は、その最終用途に必要とされる特性をシートに与えるために、例えば、それを熱成形できるように曲げ剛性および捩り剛性をシートに与えるために、様々なポリプロピレン、ポリプロピレンの共重合体、ポリプロピレンのランダム共重合体、ポリプロピレンとポリエチレンとのブレンド、ポリエチレン共重合体およびポリエチレンと他のポリオレフィンとのブレンドの任意のものであることができる。
【0025】
様々な2および3層構造体はまた、製品で作られることになる最終用途に依存して形成することができる。例えば、クリア層がアイオノマー樹脂であり、第2層が顔料、フレーク、染料および他の添加剤を含有するm−VLDPEであり、そして被覆加工層または薄層であり得るポリプロピレンのような第3層に接着性を与えてラミネートまたはフィルムを形成することができる2層構造体を形成することができる。3層構造体は、クリア層としてアイオノマー樹脂、顔料、フレーク、染料および他の添加剤を含有する第2層としてm−VLDPE、ならびにポリプロピレン、ポリプロピレンの共重合体、ポリプロピレンのランダム共重合体、ポリプロピレンとポリエチレンとのブレンド、ポリエチレン共重合体およびポリエチレンと他のポリオレフィンとのブレンドの第3バッキング層で形成することができ、それは別の相溶性ポリマー材料で被覆加工して部品およびパネルならびにラミネートを形成することができる。
【0026】
4層シート材料は典型的には、約300〜1600μの総厚さで、80〜450ミクロン(μ)厚さの第1ポリマークリア層、80〜600μ厚さの第2ポリマー有色素層、40〜500μ厚さの第3m−VLDPE接着層および100〜800μ厚さの第4層を有することができる。部品を形成する時、新規シート材料は熱成形され、次に比較的厚い層の相溶性エンジニアリング・ポリマーで被覆加工されて所望の剛性およびハンドリング性の生成部品を与える。典型的には、被覆加工層は、自動車、トラック、園芸用具など用であってもよい部品またはパネルのデザインに依存して、厚さが800〜4000μであってもよい。
【0027】
(第1共押出ポリマー層−アイオノマー樹脂)
本発明の多層シート材料の表面用に使用されるアイオノマー樹脂(第1共押出ポリマー層)は、当業者に周知の従来の重合技法によって製造し、亜鉛、ナトリウム、リチウム、マグネシウム、カルシウムおよびそれらの任意の混合物のような金属イオンで中和することができ、優れた耐スクラッチ性および耐表面損傷性ならびに十分な耐温度性を有する表層を形成する。有用なアイオノマーは0.7%より上の酸モル含有率、40%より大きいレベルへの酸官能基の中和、および5未満の、好ましくは0.4〜4.0の範囲のMI(メルトインデックス)を有することができる。
【0028】
アイオノマーは、金属イオンで少なくとも35%中和されているエチレンとC〜Cα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸との直接共重合体(エチレン酸共重合体)に由来することができる。「直接共重合体」は、モノマーが既存ポリマー鎖上へ結合させられるまたは重合させられる「グラフト共重合体」とは異なり、共重合体が同時に一緒のモノマーの重合によって製造されることを意味する。かかるアイオノマーの製造方法は周知であり、米国特許公報(特許文献3)に記載されている。アイオノマーがベースとする直接エチレン−酸共重合体の製造は、米国特許公報(特許文献4)に記載されている。高レベルの酸のエチレン−酸共重合体は、モノマー−ポリマー相分離のために連続重合で製造することは困難である。しかしながら、この困難は、米国特許公報(特許文献5)に記載されているような「共溶媒技術」を用いて、またはより低い酸の共重合体を製造することができる圧力より高い圧力を用いることによって回避することができる。
【0029】
本発明のアイオノマー共重合体を製造するために使用されるエチレン−酸共重合体は、エチレンとC〜Cα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸、特にアクリル酸またはメタクリル酸との共重合体であることができる。好ましいエチレン−酸共重合体はエチレン/アクリル酸およびエチレン/メタクリル酸である。
【0030】
本発明のアイオノマー共重合体を製造するために使用されるエチレン−酸共重合体は多量に存在する酸部分を有することができる。「多い」と考えられる量は、どの酸部分が用いられるか、特に酸部分の分子量に依存する。エチレン/(メタ)アクリル酸のケースでは、好ましい酸レベルは、共重合体の重量を基準にして10〜25(または10〜18、好ましくは12〜16)重量%である。特に本明細書での開示を考慮して、当業者は、所望の光沢レベルおよび耐摩耗性を得るために必要とされる、他の酸部分について「高い」酸レベルおよび金属カチオンでの酸中和のレベルを決定することができる。有用なエチレン酸共重合体は、共重合体の重量を基準にして12〜18重量%のメタクリル酸または共重合体の重量を基準にして10〜15重量%のアクリル酸を含む。特に有用な酸共重合体はエチレン/12.5%アクリル酸およびエチレン/15%メタクリル酸である。一般に、共重合体の酸レベルが高くなる場合、中和に利用可能な酸部分は増加するが、転移温度は低くなる。より高いレベルの中和(酸レベル×中和の程度)は硬度および耐表面損傷性を改善する。酸レベルの適切なバランスはそれ故、耐表面損傷性および耐温度性をバランスさせるために必要である。
【0031】
中和部分は好ましくは金属カチオン、特に一価および/または二価の金属カチオンである。金属カチオンで中和することが好ましい。好ましい金属カチオンには、ナトリウム、亜鉛、リチウム、マグネシウムおよびカルシウムまたはかかるカチオンの組合せが含まれる。亜鉛とナトリウムとの組合せが最も好ましい。
【0032】
中和の好ましいレベルは、用いられるエチレン−酸共重合体および所望の特性に依存することができる。中和は、耐スクラッチ性/耐表面損傷性および硬度を満足なレベルまで上げるために十分であることができる。酸基のパーセント中和は、35%またはそれ以上、好ましくは35〜75%であることができる。酸のレベルおよび中和の程度は、所望の特有の性質を達成するために調節することができる。より高い中和はより硬い製品をもたらすが、より中程度の中和はより強靱な製品をもたらす。
【0033】
アイオノマーはまた、紫外(UV)線安定剤、UV吸収剤、酸化防止剤および熱安定剤、クリア顔料、フィラー、スリップ防止剤、可塑剤、核剤などのような成分を含有してもよい。好ましくは、これらの成分は、アイオノマー100重量部当たり約0.5〜約3.0(好ましくは約1.0〜約2.0)部の量で存在するが、より低いまたはより高いレベルで存在してもよい。
【0034】
(第2共押出ポリマー層)
層は、顔料、染料、アルミニウムフレークのようなフレーク、他の添加物およびそれらの混合物を含有する着色または有色素層であることができる。アイオノマー樹脂をこの有色素層用に使用することができる。有色素層に使用されるアイオノマー樹脂は、第1クリア層について上に記載されたものの任意のものであることができ、好ましくは、第1および第2層間に良好な層間接着性があることを保証するために同じ樹脂または非常に加工相溶性のアイオノマー樹脂が使用される。
【0035】
2つの異なる樹脂がクリア層および有色素層に使用される場合、樹脂は好ましくは加工時に相溶性であり、十分な層間接着性を有する。外装パネルにとって十分な層間接着性は、より良好には、アイオノマー層かバッキング層かのどちらかからの接着層の90度引張りでの剥離強度と定義される。1インチ・ストリップの90度引張りでの接着力は5000グラムより上であるべきである。この有色素層用に使用することができる他の樹脂は、エチレン/アクリル酸およびエチレン・メタクリル酸共重合体のようなエチレン酸共重合体;例えばエチレン/酢酸ビニル/アクリル酸ポリマー、エチレン/アクリル酸/アクリル酸ブチルポリマーのようなアルキル基中に2〜12個の炭素原子を有するエチレン/(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルポリマーなどのエチレン/酸三元重合体である。メタロセン触媒による超低密度ポリエチレン(m−VLDPE)を使用することができる。また、エチレン/酢酸ビニルまたはエチレン・メタクリレート共重合体も使用することができる。この層に使用されるポリマーは好ましくはクリア層とだけでなく、接着層とも一緒に加工可能である。
【0036】
(共押出されるメタロセン触媒によるm−VLDPE層)
第2または第3共押出ポリマー層は、第1または第2有色素共押出ポリマー層におよびバッキング層に接着性を与える。メタロセン触媒によるm−VLDPEは、アイオノマー層とポリプロピレン層、特にポリプロピレンのランダム共重合体との間に高レベルの接着性を与えるために使用することができる。メタロセンVLDPEはまた、ポリエチレンおよびポリエチレン共重合体に高レベルの接着性を与える。
【0037】
第3共押出ポリマー層はまた、カラー外観を改善するために顔料およびフレークを含有することができる。光分解から保護するための添加剤もまた添加することができる。
【0038】
これらのm−VLDPEは、連続重合について当該技術で周知である条件を用いて製造することができる。典型的には、0〜250℃の重合温度および大気圧〜1000気圧(110MPa)の圧力が用いられる。懸濁液、溶液、スラリー、気相または他の重合法を用いることができる。触媒用担体を使用することができるが、好ましくは触媒は均一な(可溶な)やり方で使用される。本発明で使用されるメタロセン触媒によるポリエチレンを形成するために使用することができる好適なプロセス条件および触媒は、米国特許公報(特許文献6)、米国特許公報(特許文献7)、米国特許公報(特許文献8)、米国特許公報(特許文献9)、米国特許公報(特許文献10)に開示されている。特に好ましいm−VLDPEは、例えば、エクソン・モービル・ケミカル・コーポレーション製のイグザクト(登録商標)8021エチレン・オクテン共重合体のような、0.86〜0.91g/cmの密度およびASTM D1238に従って測定された0.5〜4.0g/10分のMIを有することができる。
【0039】
(他の成分)
プラスチック中へ通常配合されるまたはコーティング組成物に加えられる添加剤は、形成される生成製品の最終用途、すなわち、自動車またはトラック部品またはパネルまたはラミネートまたはフィルムに必要とされるように第1および第2共押出ポリマー層に含まれてもよい。これらの要件およびこれらの要件を満たすために必要とされる添加剤は当業者に周知である。必要とされる物質に典型的なものは、例えば、UV吸収剤、UVヒンダードアミン系光安定剤、酸化防止剤および熱安定剤、加工助剤、顔料などである。含まれる場合、これらの成分は好ましくはポリマー材料100重量部当たり約0.5〜約3.0(好ましくは約1.0〜約2.0)部の量で存在するが、より少ないまたはより多い量で存在してもよい。
【0040】
部品がUV線に曝されることになっている場合、アイオノマーのための1つまたは複数のUV安定剤および/または吸収剤の包含が好ましい。典型的なUV安定剤は、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケートおよびジ[4(2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル)]セバケート、ポリ[[6−[1,1,3,3−テトラメチルブチル]アミノ−s−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノール]]、キマソーブ(Chimassorb)(登録商標)2020 1,6−ヘキサンジアミン,N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル 1−4−ピペリジル)−、2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとのポリマー、N−ブチル−1−ブタンアミンとN−ブチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジンアミンとの反応生成物、チヌビン(Tinuvin)(登録商標)NOR371、トリアジン誘導体ならびにそれらの任意の混合物のような、ヒンダードアミン系光安定剤である。
【0041】
典型的に有用なUV吸収剤には、ヒドロキシドデシルオキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、スルホン酸基を含有するヒドロキシベンゾフェノンなどのようなベンゾフェノン類;2−フェニル−4−(2’,2’−ジヒドロキシベンゾイル)−トリアゾールのようなトリアゾール;ヒドロキシフェニルチアゾールなどのような置換ベンゾチアゾール;トリアジンの3,5−ジアルキル−4−ヒドロキシフェニル誘導体、ジアルキル−4−ヒドロキシフェニルトリアジンの硫黄含有誘導体、ヒドロキシフェニル−1,3,5−トリアジンなどのようなトリアジン;ジフェニロールプロパンのジベンゾエート、ジフェニロールプロパンの第三ブチルベンゾエートなどのようなベンゾエート;ならびに低級アルキルチオメチレン含有フェノール、1,3−ビス(2’−ヒドロキシベンゾイル)ベンゼンのような置換ベンゼン、3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオン酸の金属誘導体、非対称シュウ酸、ジアリールアライド(diarylaride)、アルキルヒドロキシ−フェニル−チオアルカン酸エステル、およびビピペリジル誘導体のヒンダードアミンのような他のものが含まれ得る。
【0042】
すべてチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)から入手可能な、好ましいUV吸収剤およびヒンダードアミン系光安定剤は、チヌビン(登録商標)234(2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール)、チヌビン(登録商標)327(2−(3’,5’−ジ−第三ブチル−2’−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール)、チヌビン(登録商標)328(2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−第三アミルフェニル)ベンゾトリアゾール)、チヌビン(登録商標)329(2−(2’−ヒドロキシ−5’−第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール)、チヌビン(登録商標)765(ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート)、チヌビン(登録商標)770(ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)デカンジオエート)、およびキマソーブ(登録商標)944(2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンおよび2,4,4−トリメチル−1,2−ペンタンアミンとのN,N−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−1,6−ヘキサンジアミン・ポリマー)である。
【0043】
すべてチバ・スペシャルティ・ケミカルズから入手可能な、好ましい熱安定剤には、イルガノックス(IRGANOX)(登録商標)259(ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)、イルガノックス(登録商標)1010(3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシベンゼンプロパン酸,2,2−ビス[[3−[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]−1−オキソプロポキシ]メチル]1,3−プロパンジイルエステル)、イルガノックス(登録商標)1076(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシヒドロ桂皮酸オクタデシル)、イルガノックス(登録商標)1098(N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナムアミド)、イルガノックス(登録商標)B215(イルガノックス(登録商標)1010とトリス(2,4−ジ−第三ブチルフェニル)ホスファイトとの33/67ブレンド)、イルガノックス(登録商標)B225(イルガノックス(登録商標)1010とトリス(2,4−ジ−第三ブチルフェニル)ホスファイトとの50/50ブレンド)、およびイルガノックス(登録商標)B1171(イルガノックス(登録商標)1098とトリス(2,4−ジ−第三ブチルフェニル)ホスファイトとの50/50ブレンド)が含まれる。
【0044】
顔料には、無機ケイ質顔料(例えば、シリカ顔料)のようなクリア顔料および従来の顔料の両方が含まれ得る。従来の顔料には、二酸化チタン、および酸化鉄のような金属酸化物;金属水酸化物;アルミニウムフレークのような金属フレーク;クロム酸鉛のようなクロム酸塩;硫化物;硫酸塩;炭酸塩;カーボンブラック;シリカ;タルク;陶土;フタロシアニンブルーおよびグリーン;オルガノレッド;オルガノマルーンならびに他の有機顔料および染料が含まれる。高温で安定である顔料が特に好ましい。顔料は一般に、その中へ顔料が組み込まれるべき材料と同じものであってもまたはそれと相溶性であってもよい分散樹脂と顔料を混合することによって練り顔料へ調合される。顔料分散系は、砂すり合わせ、ボールミリング、磨砕機すり合わせまたは2ロールミリングのような従来の手段によって形成される。一般に必要とされないまたは使用されないが、ガラス繊維および鉱物繊維、スリップ防止剤、可塑剤、核剤などのような他の添加剤を組み込むことができる。
【0045】
(バッキング層または第4共押出ポリマー材料)
第3ポリマー層が接着することができるバッキング層または第4共押出ポリマー材料は、必要なバッキング剛性および必要とされる特性を与える様々なポリマーの任意のものであることができる。ポリプロピレン、ポリプロピレンの共重合体、ポリプロピレンのランダムポリマーおよび共重合体、ポリプロピレンとポリエチレンとのブレンド、ポリエチレン共重合体、ならびにポリエチレンと他のポリオレフィンとのブレンドなどが典型的に有用である。
【0046】
被覆加工ポリマー材料。新規な多層シート材料からの部品、パネルまたはラミネートの形成において、被覆加工材料は、材料が加工可能であり、高レベルの接着性を与えるという条件で、第4層に使用される前述の材料の任意のものであることができる。典型的に有用な被覆加工材料はポリプロピレン、ポリプロピレンの共重合体、ポリプロピレンとポリエチレンとのブレンド、ポリエチレン共重合体、ポリエチレンと他のポリオレフィンとのブレンド、ポリプロピレンのランダムポリマーおよび共重合体、ならびに相溶性であり、例えば、自動車、トラックおよびレクリエーショナル・ビークルで使用される部品、パネル、ラミネートの製造に従来使用される樹脂との間に優れた接着接合を形成する他の高弾性率樹脂である。
【0047】
(多層シート材料の製造方法)
シート材料は、当業者に公知の溶融共押出法を用いて製造することができる。シート材料は、シート材料の様々な層用のポリマー成分のそれぞれを別個の押出機中へ装入することによって形成することができる。各成分は溶融され、パイプを通して供給ブロック中へポンプ送液され、供給ブロックは異なるフローを単フロー流れとして押出ダイ・マニホールドに入る直前に一緒に層状にする。多層の溶融カーテンは押出ダイを出て移動ロール上へ置かれ、移動ロールは冷えつつある多層シート材料をギャップまたはニップを通して逆転移動ロール中へ、次に典型的には第3冷却ローラーに、そして次に取り出しシステムを通して2ローラー間の別のニップに移し、ニップは取り出しシステムを通してシートを引っ張る。上記の配置は一貫した仕上げを高い光沢を有するシートに提供し、一様な厚さを有するシートを形成する。本方法中にシート材料は、層間に高レベルの接着を保証するために、例えば、2ローラーのニップ中で生み出され得る比較的高い圧力にさらされることが好ましい。
【0048】
標準UV安定剤および他の添加剤を加えて本発明のシート材料で形成される部品、ラミネートおよびフィルムは驚くほど耐候性であり、紫外線に長時間間曝された時に特に安定である。
【0049】
次の実施例は本発明の様々な態様を例示する。すべての部および百分率は、特に明記しない限り重量基準による。
【実施例】
【0050】
下の実施例は、m−VLDPEがシート構造体中のアイオノマー・タイ層およびバッキング層の両方である場合に、多層共押出中に隣接アイオノマーに良好な接着性を与えるm−VLDPE樹脂の有効性を実証する。後で、m−VLDPEタイ/バッキング層は、射出成形によって3層フィルム構造体上へ被覆加工されるポリプロピレン層への良好な接着性を発現させる。
【0051】
すべてのケースで、シートは下記の公称層厚さを有する。
【0052】
【表1】

【0053】
実施例構造体で、クリアコート層はSUR SG770BRよりなった。組成物は92.8重量%ベース樹脂SURRX85(E/12%アクリル酸、約83MI)と7.2重量%SURCS8728(酸化亜鉛コンセントレート、45重量%ZnO)とのペレット混合物であり、それを3.0重量%(上記の全体を基準とする重量パーセント)の50%NaOH溶液でさらに中和する。制御方式は、0.9dg/分のメルトインデックスを達成するために苛性を調節することである。これは、全体イオンレベル0.85重量%Na、3.2重量%ZnO(またはZnとして2.57重量%)の樹脂をもたらす。SUR SG770BRクリアコート層に酸化防止剤およびUV安定剤を添加した。
【0054】
次の表1に、5つの実施例構造体中の最上クリアコート層Cの公称組成を示す。
【0055】
【表2】

【0056】
実施例フィルム中の着色アイオノマー層(B層)の公称組成を表2に示す。すべてのケースでアイオノマー樹脂はサーリン(Surlyn)(登録商標)1706、0.65のMI、亜鉛中和エチレン/メタクリル酸共重合体であった。
【0057】
【表3】

【0058】
すべてのケースでA層は、エクソン・モービル・ケミカル・コーポレーション製のイグザクト(登録商標)8201、1.1のMI、0.882g/cm密度のエチレン・オクテン共重合体であった。
【0059】
3層押出についての運転条件を次の表3に示す。A層は24/1のスクリュー長さ対スクリュー直径(L/D)比の44mm(13/4インチ)直径単軸スクリュー押出機から供給した。該押出機はNRM製であった。B層は30/1のL/D比の25mm(1インチ)直径単軸スクリュー押出機から供給した。該押出機はデービス・スタンダード・カンパニー(Davis Standard Company)製であった。C層は130/1のL/D比の32mm(11/4インチ)直径単軸スクリュー押出機から供給した。該押出機はウェイン・マシン・アンド・ダイ(Wayne Machine and Die)製であった。3つの押出機はAA−B−CC選択プラグを備えた203mm(8インチ)幅の羽根(vane)ダイ中へ供給した。羽根ダイおよび選択プラグはクレーレン・カンパニー(Cloeren Company)によって販売されたものであった。
【0060】
ダイを出た溶融3層共押出物を203mm(8インチ)直径クロム・キャスティングロールと127mm(5インチ)直径ニップロールとの間で急冷した。キャスティングおよびニップロールの両方とも水冷のために芯を抜かれていた。急冷した磨きシートを76mm(3インチ)直径の紙コア上に巻き取った。キャスティングおよび巻取り装置はキリオン−デイビッド・スタンダード(Killion−David Standard)製であった。運転U8V−24およびU8V−26はニップ開放で急冷した。運転UV8−25、UV8−27およびUV8−28はニップ密閉で急冷した。
【0061】
【表4】

【0062】
【表5】

【0063】
【表6】

【0064】
【表7】

【0065】
タイ/バッキング層と着色アイオノマー層と間の接合強度は、1つのジョーが固定され、他のジョーが1インチ幅のテストストリップで12インチ/分の一定の分離速度で移動中であるt−剥離(ASTM D1876)によって測定した。シートサンプルについてのシール強度試験結果は次の通りであった。
【0066】
【表8】

【0067】
公称0.7〜0.8mm厚さのシートサンプルから、5面形状を、長方形部分が公称10cm(4インチ)幅×12.7cm(5インチ)高さである0.32cm(1/8インチ)厚さのプラーク金型での裏面被覆加工用にシートからカットした。プラーク金型は最上部でエッジ・ゲートであった。シートサンプルを、両面テープを用いて金型の移動側中へ固定した。スケッチ中の赤いボックスはテープの位置を示す。シートのクリアコート層を金型の磨き面に向けて保持した。
【0068】
180メートルトンのニッセイ(Nissei)射出成形機を用いてアトフィナ・ペトロケミカルズ(AtoFina Petrochemicals)3289M、1.8のMFI、0.905密度のホモポリマー・ポリプロピレンでシートを裏面被覆加工した。
【0069】
射出成形裏面被覆加工条件を表4にまとめる。
【0070】
【表9】

【0071】
射出被覆加工部品から、1インチ幅×5インチ長さのストリップを、共押出シート上のポリプロピレン被覆加工層とポリオレフィンバッキング層との間の接着強度を測定するためのt−剥離試験用にカットした。インストロン試験機のクロスヘッド速度は12インチ/分であった。下の表5に最大剥離強度(4または3の剥離の平均値)を報告する。
【0072】
【表10】

【0073】
クリア・アイオノマー層、着色アイオノマー層およびm−VLDPEタイ/バッキング層よりなるこれらの3層共押出実施例フィルムは、m−VLDPEが共押出中に隣接アイオノマー層に良好な接着性を与える接着層として機能し、そして次にその後m−VLDPE層の表面上へ射出被覆加工されるポリプロピレン層に良好な接着性を与えることができることを例示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.酸部分の少なくとも35%が金属イオンで中和された、エチレンと、共重合体の重量を基準にして8〜25重量%のC〜Cα,βエチレン性不飽和モノカルボン酸との共重合体のアイオノマー樹脂を含む第1共押出クリアポリマー層と、
c.メタロセン触媒による超低密度ポリエチレンを含み、顔料、染料、フレークおよびそれらの任意の混合物を含有する別の共押出ポリマー層と
を含むまたはそれらから製造されることを特徴とする多層シート。
【請求項2】
b.アイオノマー樹脂、エチレン酸共重合体、エチレン共重合体、エチレン酸三元重合体、もしくはメタロセン触媒による超低密度ポリエチレン、またはそれらの2つ以上の組合せの群から選択される第2共押出ポリマー層であって、顔料、染料、フレークおよびそれらの任意の混合物を含む層
をさらに含むまたはそれから製造されることを特徴とする請求項1に記載の多層シート。
【請求項3】
d.ポリプロピレン、ポリプロピレンと別のポリオレフィンとのポリマー混合物、ポリプロピレンのランダム共重合体の第2層に接着された共押出熱成形可能なバッキング層
をさらに含む、またはそれから製造されることを特徴とする請求項1または2に記載の多層シート。
【請求項4】
前記第1層がUV安定剤およびUV吸収剤をアイオノマー樹脂100部当たり0.5〜3.0部の量で含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の多層シート。
【請求項5】
前記第1共押出層がエチレンと、共重合体の重量を基準にして10〜25重量%のメタクリル酸またはアクリル酸とのアイオノマー樹脂より本質的になり、そして酸の35〜75%がナトリウム、亜鉛、リチウム、マグネシウム、カルシウムおよびそれらの任意の混合物よりなる群から選択される金属イオンで中和されており、そして0.4〜4.0のメルトインデックスを有し、好ましくは該共重合体がナトリウム、亜鉛、または両方で中和されている12〜18重量%のアクリル酸を含むことを特徴とする請求項4に記載の多層シート。
【請求項6】
前記第2共押出ポリマー層は、加工可能で前記第1共押出層の前記アイオノマー樹脂に接着可能なアイオノマー樹脂もしくはエチレン酸共重合体もしくはエチレン酸三元重合体またはそれらの2つ以上のすべての混合物を含み、顔料、染料、フレークおよびそれらの任意の混合物を含有することを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の多層シート。
【請求項7】
前記第1共押出ポリマー層がクリア層であり、そしてエチレンと、共重合体の重量を基準にして12〜18重量%のメタクリル酸または共重合体の重量を基準にして10〜15重量%のアクリル酸とのアイオノマー樹脂より本質的になり、そしてナトリウム、亜鉛、リチウム、マグネシウム、カルシウムおよびそれらの任意の混合物よりなる群から選択される金属イオンで35〜75%中和されており、そして前記第2共押出ポリマー層が金属イオンで中和された前記アイオノマー樹脂より本質的になり、かつ、顔料、染料、フレークおよびそれらの混合物を含有し、そして共押出第3ポリマー層がバッキング層に接着されたメタロセン触媒による超低密度ポリエチレンを含み、そして第4共押出バッキング層がポリプロピレンのランダム共重合体を含むことを特徴とする請求項2に記載の多層シート。
【請求項8】
クラスA表面を有する自動車部品、トラック部品、自動車もしくはトラック車体パネル、またはレクリエーショナル・ビークルの部品もしくはパネルをさらに構成することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の多層シート。

【公表番号】特表2007−507375(P2007−507375A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534436(P2006−534436)
【出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/033425
【国際公開番号】WO2005/035246
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】