説明

アイドルストップ装置

【課題】エンジンの再始動時における運転手等の乗員の違和感を低減することが可能なアイドルストップ装置を提供する。
【解決手段】アイドルストップ装置50は、エンジン11を停止してから再始動を行うまでの時間であるアイドルストップ時間を決定するアイドルストップ時間決定部53と、決定されたアイドルストップ時間に基づいてエンジン11の再始動を行うアイドルストップ制御部52と、アイドルストップ時間に基づいて、エンジン11の再始動のタイミングを車両の乗員へ予告するための再始動予告信号を生成する再始動予告信号生成部54と、再始動予告信号を、車両の乗員へ通知するための通知部60へ出力する再始動予告信号出力部55と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のエンジンの停止及び再始動を自動的に行うアイドルストップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリン消費量の削減、騒音削減、CO排出量の削減等の観点から、車両状況に応じてエンジンを自動的に停止(アイドルストップ)させたり再始動させたりするアイドルストップ装置の開発が進められている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3711894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかるアイドルストップ装置が適用された車両において、エンジンを自動的に停止させた後、所定時間が経過した後に、エンジンを自動的に再始動させることが考えられる。しかし、この場合には、運転手等の乗員がエンジンの再始動のタイミングを把握することができないため、エンジンの再始動が行われた際に、運転手等の乗員に違和感を与えるという問題があった。
【0005】
本発明は、前記した問題を解決すべく創案されたものであり、エンジンの再始動時における運転手等の乗員の違和感を低減することが可能なアイドルストップ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明のアイドルストップ装置は、車両の状況に応じて、自動的にエンジンの停止及び再始動を行うアイドルストップ装置であって、前記エンジンを停止してから再始動を行うまでの時間であるアイドルストップ時間を決定するアイドルストップ時間決定部と、決定された前記アイドルストップ時間に基づいて前記エンジンの再始動を行うアイドルストップ制御部と、決定された前記アイドルストップ時間に基づいて、前記エンジンの再始動のタイミングを車両の乗員へ予告するための再始動予告信号を生成する再始動予告信号生成部と、生成された前記再始動予告信号を、車両の乗員へ通知するための通知部へ出力する再始動予告信号出力部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
かかる構成によると、運転手等の乗員に対して、エンジンの再始動が行われるタイミングを予告するので、エンジンの再始動時における運転手等の乗員の違和感を低減することができる。
【0008】
前記アイドルストップ時間決定部は、車室温度検出手段によって検出された車室温度を取得し、取得された前記車室温度に基づいて前記アイドルストップ時間を決定する構成であってもよい。ここで、前記アイドルストップ時間決定部は、取得された前記車室温度が第一の所定温度よりも高いほど、前記アイドルストップ時間が短くなるように当該アイドルストップ時間を決定する構成であってもよく、さらには、取得された前記車室温度が、前記第一の所定温度よりも低い第二の所定温度よりも低いほど、前記アイドルストップ時間が短くなるように当該アイドルストップ時間を決定する構成であってもよい。
【0009】
前記アイドルストップ時間決定部は、車室湿度検出手段によって検出された車室湿度を取得し、取得された前記車室湿度に基づいて前記アイドルストップ時間を決定する構成であってもよい。ここで、前記アイドルストップ時間決定部は、取得された前記車室湿度が高いほど、前記アイドルストップ時間が短くなるように当該アイドルストップ時間を決定する構成であってもよい。
【0010】
前記アイドルストップ時間決定部は、バッテリ充電状態検出手段によって検出されたバッテリ充電状態を取得し、取得された前記バッテリ充電状態に基づいて前記アイドルストップ時間を決定する構成であってもよい。ここで、前記アイドルストップ時間決定部は、取得された前記バッテリ充電状態がカラに近いほど、前記アイドルストップ時間が短くなるように当該アイドルストップ時間を決定する構成であってもよい。さらに、前記アイドルストップ時間決定部は、バッテリセンサ(抵抗値検出手段)によって検出された車両のバッテリ内部抵抗値を取得し、取得された前記バッテリ内部抵抗値に基づいて前記アイドルストップ時間を決定する構成であってもよい。ここで、前記アイドルストップ時間決定部は、取得された前記バッテリ内部抵抗値が大きいほど、前記アイドルストップ時間が短くなるように当該アイドルストップ時間を決定する構成であってもよい。
【0011】
前記アイドルストップ時間決定部は、バッテリセンサ(電流値検出手段)によって検出された車両のバッテリ放電電流値を取得し、取得された前記バッテリ流出電流値に基づいて前記アイドルストップ時間を決定する構成であってもよい。ここで、前記アイドルストップ時間決定部は、取得された前記バッテリ放電電流値が大きいほど、前記アイドルストップ時間が短くなるように当該アイドルストップ時間を決定する構成であってもよい。
【0012】
前記アイドルストップ制御部は、クラッチ状態検出手段によって検出されたクラッチ状態を取得し、取得された前記クラッチ状態が、クラッチ操作がなされていることを示すものである場合には、前記エンジンの再始動を行う構成であってもよい。
【0013】
前記アイドルストップ制御部は、トランスミッション状態検出手段によって検出されたトランスミッション状態と、ブレーキ負圧検出手段によって検出されたブレーキ負圧と、を取得し、取得された前記ブレーキ負圧が不足しているか否かを判定し、取得された前記トランスミッション状態が、ニュートラルであることを示すものであり、かつ、取得された前記ブレーキ負圧が不足していると判定された場合には、前記エンジンの再始動を行う構成であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、エンジンの再始動時における運転手等の乗員の違和感を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係るアイドルストップ装置が適用された車両を示す模式図である。
【図2】図1のアイドルストップ装置を示すブロック図である。
【図3】図1の表示部における表示例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。同様の部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。前後左右という表現は、車両の乗員から見た方向を基準とする。
【0017】
本発明の実施形態に係るアイドルストップ装置が適用された車両について、図1を参照して説明する。図1に示すように、本発明の実施形態に係る車両1は、駆動輪である左右の前輪WFL,WFRを駆動させるフロントエンジン・フロントドライブ(FF)車であり、駆動力伝達機構として、エンジン11と、トランスミッション12と、前輪駆動軸13と、スタータ14と、を備える。エンジン11は、スタータ14によって始動され、エンジン11によって発生された駆動力は、トランスミッション12及び前輪駆動軸13を介して左右の前輪WFL,WFRに伝達される。かかる車両1において、左右の後輪WRL,WRRは、車両1の走行に伴って回転する従動輪である。トランスミッション12は、運転手によるシフトレバーSLの操作に基づいて駆動される。また、車両1の車室内の運転手席側には、アクセルペダルAP、常用ブレーキの操作のためのブレーキペダルBP、クラッチペダルCP、シフトレバーSL及びアイドルストップ禁止スイッチSWが設けられている。
【0018】
また、本発明の実施形態に係る車両1は、バッテリ21と、DC/DCコンバータ22と、をさらに備える。DC/DCコンバータ22は、エンジン作動中に作動し、エンジン停止時に停止するものであり、バッテリ21に蓄えられた電力は、DC/DCコンバータ22を介して車両1の各種電装部品(メータ表示部、オーディオシステム、ナビゲーションシステム等)へ供給される。
【0019】
また、本発明の実施形態に係る車両1は、車室内の空調のためのエアコンユニット30をさらに備える。かかるエアコンユニット30は、アイドルストップ時に停止する。
【0020】
<各種センサ>
本発明の実施形態に係る車両1は、車速センサ41と、クラッチペダル操作量センサ42と、ニュートラルセンサ43と、を備える。車速センサ41は、車体速度検出手段の一例であり、車両1の車体速度を検出する。クラッチペダル操作量センサ42は、クラッチ状態検出手段の一例であり、運転手によるクラッチペダルCPの操作量を検出する。ニュートラルセンサ43は、トランスミッション状態検出手段の一例であり、トランスミッション12の状態がニュートラルであるか否かを検出する。なお、クラッチ状態検出手段として、クラッチペダル操作量センサ42に代えてクラッチペダルCPの操作の有無を検出するクラッチペダルスイッチを用いる構成であってもよい。
【0021】
また、本発明の実施形態に係る車両1は、ブレーキ負圧センサ44をさらに備える。ブレーキ負圧センサ44は、ブレーキ負圧検出手段の一例であり、車両状況として、運転手によるブレーキペダルBPの操作時に負圧源(本実施形態では、エンジン11が負圧源として用いられる)から倍力装置(負圧ブースタ)15の負圧室へ供給されるブレーキ負圧を検出する。運転手がブレーキペダルBPを操作すると、そのペダル踏力は、負圧室と、当該負圧室よりも高い圧力(大気圧)が導入される変圧室と、の間の圧力差を利用することによって倍力されてマスタシリンダ16を作動させ、マスタシリンダ16によるブレーキ液圧が、各車輪WFL,WFR,WRL,WRRに設けられたブレーキ装置(図示せず)へ付与される。
【0022】
また、本発明の実施形態に係る車両1は、車室温度センサ45と、車室湿度センサ46と、をさらに備える。車室温度センサ45は、車室温度検出手段の一例であり、車両状況として、車室内の温度である車室温度を検出する。車室湿度センサ46は、車室湿度検出手段の一例であり、車両状況として、車室内の湿度である車室湿度を検出する。これら車室温度センサ45及び車室湿度センサ46は、エアコンユニット30と共用可能である。
【0023】
また、本発明の実施形態に係る車両1は、バッテリ状態を検出するためのセンサとして、バッテリセンサ(電圧センサ)47と、バッテリセンサ(内部抵抗センサ)48と、バッテリセンサ(電流センサ)49と、をさらに備える。バッテリセンサ(電圧センサ)47は、バッテリ21の電圧値であるバッテリ電圧値を検出する。バッテリセンサ(内部抵抗センサ)48は、内部抵抗値検出手段の一例であり、車両状況として、バッテリ21の内部抵抗値であるバッテリ内部抵抗値を検出する。バッテリセンサ(電流センサ)49は、電流値検出手段の一例であり、車両状況として、バッテリ12から放電される電流値であるバッテリ放電電流値を検出する。
【0024】
車速センサ41、クラッチペダル操作量センサ42及びニュートラルセンサ43の検出結果は、アイドルストップ装置50へ出力され、エンジン11の停止を行うか否か、すなわち、アイドルストップを開始するか否かの判定に用いられる。また、車室温度センサ45、車室湿度センサ46並びにバッテリセンサ(電圧センサ47、内部抵抗センサ48及び電流センサ49)の検出結果は、アイドルストップ装置50へ出力され、アイドルストップ時間の決定に用いられる。また、ニュートラルセンサ43及びブレーキ負圧センサ44の検出結果は、アイドルストップ装置50へ出力され、エンジン11の再始動を行うか否か、すなわち、アイドルストップを中止するか否かの判定に用いられる。
【0025】
<アイドルストップ装置及び通知部>
本発明の実施形態に係る車両1は、アイドルストップ装置50と、通知部60と、をさらに備える。アイドルストップ装置50は、車両の状況に応じて、自動的にエンジンの停止及び再始動を行う装置であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read-Only Memory)、入出力回路等から構成された、いわゆるECU(Electronic Control Unit)である。図2に示すように、本発明の実施形態に係るアイドルストップ装置50は、機能ブロックとして、バッテリ充電状態検出部51と、アイドルストップ制御部52と、アイドルストップ時間決定部53と、再始動予告信号生成部54と、再始動予告信号出力部55と、を備える。
【0026】
バッテリ充電状態検出部51は、バッテリセンサ(電圧センサ)47及びバッテリセンサ(電流センサ)49の検出結果に基づいて、バッテリ充電状態を検出する。具体的には、バッテリ充電状態検出部51は、バッテリ21の容量を、満充電容量に対する残容量の比率で示される充電状態SOC(State Of Charge)で求める。すなわち、バッテリセンサ(電圧センサ)47、バッテリセンサ(電流センサ)49及びバッテリ充電状態検出部51の組み合わせが、バッテリ充電状態検出手段の一例である。バッテリ充電状態検出部51による検出結果は、アイドルストップ時間決定部53へ出力される。
【0027】
アイドルストップ制御部52は、車両1の状態が所定条件を満たした場合に、エンジン11を停止させ、アイドルストップを開始する。本実施形態において、アイドルストップ制御部52は、エンジン駆動状態において、車速センサ41によって検出された車体速度が、所定値(例えば、1km/h)未満であり、クラッチペダル操作量センサ42(又は、クラッチペダルスイッチ)によって検出されたクラッチペダルCPの操作量が、運転手による操作がなされてないことを示すものであり、かつ、ニュートラルセンサ43によって検出されたトランスミッション12の状態が、ニュートラルであることを示すものである場合に、アイドルストップを実行すると判定し、エンジン11を停止させる。
【0028】
また、アイドルストップ制御部52は、アイドルストップ時間決定部53によって決定されたアイドルストップ時間に基づいて、アイドルストップ実行時においてエンジン11の停止からアイドルストップ時間が経過したときに、スタータ14を駆動することによって、エンジン11を再始動させる。
【0029】
また、アイドルストップ制御部52は、アイドルストップ実行時においてエンジン11の停止からアイドルストップ時間が経過する前であっても、クラッチペダル操作量センサ42によって検出されたクラッチペダルCPの操作量が、運転手による操作がなされていることを示すものである場合には、アイドルストップを終了すると判定し、スタータ14を駆動することによって、エンジン11を再始動させることができる。すなわち、アイドルストップ実行中においてアイドルストップ時間経過前にエンジン11を再始動させたい場合には、運転手は、クラッチペダルCPを操作すればよい。
【0030】
また、アイドルストップ実行中に運転手がブレーキペダルBPの操作及び操作解除を繰り返す(ブレーキペダルBPを上下動させる)と、倍力装置15の負圧室内の圧力であるブレーキ負圧が大気圧に近くなる。これは、ブレーキペダルBPの操作解除を行う(ブレーキペダルを上に動かす)際に負圧室と変圧室とが連通し、変圧室から負圧室へ大気圧が供給されてしまうからである。エンジン11が駆動している場合には、負圧源からのブレーキ負圧が常時供給可能であるが、アイドルストップ実行中はエンジン11が停止しているため負圧源も停止してしまい、ブレーキ負圧が負圧室へ供給されず、負圧室内の圧力が大気圧に近くなっていってしまい、倍力装置15の倍力機能が低下してブレーキペダルBPの操作性が重くなってしまう。このように、倍力装置15の倍力機能が低下すると、ブレーキペダルBPの操作感を損ねてしまう。
【0031】
かかる事態を防ぐため、アイドルストップ制御部52は、アイドルストップ実行中に、ブレーキ負圧センサ44によって検出された負圧室内のブレーキ負圧が不足しているか否かを判定する。かかる判定においては、検出されたブレーキ負圧が、大気圧を基準として予め設定された第一の閾値(例えば、大気圧よりも若干低い圧力値)を超えた場合にブレーキ負圧が不足していると判定する構成であってもよく、大気圧センサ(図示せず)によって検出された変圧室内の大気圧とブレーキ負圧との差が第二の閾値未満となった場合にブレーキ負圧が不足していると判定する構成であってもよい。
【0032】
そして、アイドルストップ制御部52は、アイドルストップ実行時においてエンジン11の停止からアイドルストップ時間が経過する前であっても、ニュートラルセンサ43によって検出されたトランスミッション12の状態が、ニュートラルであることを示すものであり、かつ、ブレーキ負圧センサ44によって検出されたブレーキ負圧が不足していると判定された場合には、アイドルストップを終了すると判定し、スタータ14を駆動し、エンジン11を再始動させることによって、負圧源を駆動してブレーキ負圧を回復させ、ブレーキペダルBPの操作感を損ねることを防ぐことができる。
【0033】
また、アイドルストップ制御部52は、DC/DCコンバータ22の駆動を制御する。詳細には、アイドルストップ制御部52は、エンジン11の再始動時に、DC/DCコンバータ22を作動させる。
【0034】
アイドルストップ時間決定部53は、車両状況検出手段によって検出された車両状況に基づいて、アイドルストップ時間を決定する。ここでいう車両状況検出手段としては、前記した車室温度センサ45と、車室湿度センサ46と、バッテリセンサ(電圧センサ)47、バッテリセンサ(電流センサ)49及びバッテリ充電状態検出部51の組み合わせと、バッテリセンサ(内部抵抗センサ)48と、バッテリセンサ(電流センサ)49と、が挙げられる。決定されたアイドルストップ時間は、アイドルストップ制御部52及びアイドルストップ残時間算出部54へ出力される。
【0035】
再始動予告信号生成部54は、アイドルストップ時間決定部53によって決定されたアイドルストップ時間に基づいて、エンジン11の再始動のタイミングを車両の乗員へ予告するための再始動予告信号を生成する。本実施形態において、再始動予告信号生成部54は、アイドルストップ時間と現在時刻とに基づいて、現在時刻からエンジン11の再始動までの時間であるアイドルストップ残時間を算出し、算出されたアイドルストップ残時間を含む再始動予告信号を生成する。
【0036】
再始動予告信号出力部55は、再始動予告信号生成部54によって生成された再始動予告信号を、通知部60へ出力する。
【0037】
このアイドルストップ装置50は、運転手の操作によりアイドルストップ禁止スイッチSWからアイドルストップ禁止信号が出力された場合には、アイドルストップを行わない。
【0038】
通知部60は、再始動予告信号出力部55によって出力された再始動予告信号に基づいて、エンジン11の再始動のタイミングを車両の乗員に前もって通知するためのものであり、表示部61と、スピーカ62と、を備える。
【0039】
表示部61は、再始動予告信号に含まれるアイドルストップ残時間を表示する。本実施形態において、表示部61は、運転手席の前方のメータ表示部と一体的に構成されており、図3に示すように、アイドルストップ中には、アイドルストップ中であることを示すマークと、アイドルストップ残時間と、を表示する。
【0040】
スピーカ62は、再始動予告信号に含まれるアイドルストップ残時間を発話する。
【0041】
続いて、アイドルストップ時間決定部53によるアイドルストップ時間の決定手法について説明する。
【0042】
(1)車室温度に基づく決定
アイドルストップ時間決定部53は、車室温度センサ45によって検出された車室温度が第一の所定温度(例えば、25度)よりも高いほど、アイドルストップ時間が短くなるように当該アイドルストップ時間を決定する。また、アイドルストップ時間決定部53は、車室温度が第二の所定温度(例えば、10度)よりも低いほど、アイドルストップ時間が短くなるように当該アイドルストップ時間を決定する。また、アイドルストップ時間決定部53は、車室温度が第二の所定温度と第一の所定温度との間である場合には、アイドルストップ時間が一定となるように当該アイドルストップ時間を決定する。かかる構成により、車室温度が高かったり低かったりする場合には、アイドルストップによって車両1のエアコンユニット30が停止する時間が短縮されるので、車室温度が上がりすぎたり下がりすぎたりすることを防ぐことができる。
【0043】
(2)車室湿度に基づく決定
アイドルストップ時間決定部53は、車室湿度センサ46によって検出された車室湿度が高いほど、アイドルストップ時間が短くなるように当該アイドルストップ時間を決定する。かかる構成により、車室湿度が高い場合には、アイドルストップによって車両1のエアコンユニット30が停止する時間が短縮されるので、車両1のガラスが曇ることを防ぐことができる。
【0044】
(3)バッテリ充電状態に基づく決定
アイドルストップ時間決定部53は、バッテリ充電状態検出部51によって検出されたバッテリ充電状態がカラに近いほど、アイドルストップ時間が短くなるように当該アイドルストップ時間を決定する。かかる構成により、バッテリ充電状態がカラに近い場合には、アイドルストップによってバッテリ21の放電が進行する時間が短縮されるので、バッテリ充電状態が減りすぎることを防ぐことができる。なお、アイドルストップ時間決定部53は、バッテリ充電状態検出部51によって検出されたバッテリ充電状態が閾値未満である場合(カラに近く、バッテリ21が切れるおそれがある場合)には、アイドルストップ時間をゼロに決定する(アイドルストップを行わない)構成であってもよい。
【0045】
なお、前記(3)の手法によって決定されるアイドルストップ時間は、バッテリ内部抵抗値によって補正されてもよい。すなわち、アイドルストップ時間決定部53は、バッテリセンサ(内部抵抗センサ)48によって検出されたバッテリ内部抵抗値が大きいほど、アイドルストップ時間が短くなるように当該アイドルストップ時間を決定(補正)することもできる。かかる構成により、バッテリ内部抵抗値が大きい場合、すなわち、バッテリ21が劣化している場合には、アイドルストップによってバッテリ21の放電が進行する時間が短縮されるので、バッテリ21への負担を低減することができる。
【0046】
(4)バッテリ放電電流値に基づく決定
アイドルストップ時間決定部53は、バッテリ(電流センサ)49によって検出されたバッテリ放電電流値が大きいほど、アイドルストップ時間が短くなるように当該アイドルストップ時間を決定する。かかる構成により、バッテリ放電電流値が大きい場合には、アイドルストップによってバッテリ21の放電が進行する時間が短縮されるので、バッテリ充電状態が減りすぎることを防ぐことができる。
【0047】
本実施形態に係るアイドルストップ時間決定部53は、前記した(1)〜(4)の手法を適宜組み合わせてアイドルストップ時間を決定することができる。以下、アイドルストップ時間の決定手法の一例について説明する。
【0048】
(a)アイドルストップ時間決定部53は、前記した(3)(4)の手法を組み合わせてアイドルストップ時間を決定する。ここでは、アイドルストップ時間決定部53は、アイドルストップ開始時におけるバッテリ充電状態から、放電可能な電力値を算出し(例えば、バッテリ充電状態の所定%等)、アイドルストップ開始時におけるバッテリ放電電流値と、算出された電力値と、に基づいて、算出された電力値が放電されるのに要する時間を算出し、算出された時間をアイドルストップ時間として決定する。
【0049】
(b)アイドルストップ時間決定部53は、前記した(4)の手法を用いてアイドルストップ時間を決定する。ここでは、アイドルストップ時間決定部53は、アイドルストップ開始時におけるバッテリ放電電流値と、予め設定された放電可能電力値と、に基づいて、予め設定された放電可能電力値が放電されるのに要する時間を算出し、算出された時間をアイドルストップ時間として決定する。
【0050】
(c)アイドルストップ時間決定部53は、前記した(1)(2)の手法を組み合わせてアイドルストップ時間を決定する。ここでは、アイドルストップ時間決定部53は、車室温度及び車室湿度とアイドルストップ時間との関係を表す数式、テーブル等を予め有しており、かかる数式、テーブル等を用いてアイドルストップ時間を決定する。
【0051】
アイドルストップ時間決定部53は、前記した(a)〜(c)の手法を用いてアイドルストップ時間をそれぞれ決定し、決定された三つのアイドルストップ時間のうち、最も短いものを採用し、採用されたアイドルストップ時間をアイドルストップ制御部52及び再始動予告信号生成部54へ出力することができる。
【0052】
本発明の実施形態に係るアイドルストップ装置50は、、運転手等の乗員に対して、エンジン11の再始動が行われるタイミングを予告するので、エンジン11の再始動時における運転手等の乗員の違和感を低減することができる。
また、本発明の実施形態に係るアイドルストップ装置50は、各種センサ45〜49の検出結果に基づいてアイドルストップ時間を決定するので、バッテリ21及びエアコンユニット30を好適に駆動することができる。
また、本発明の実施形態に係るアイドルストップ装置50は、車両の状況に応じて異なる長さのアイドルストップ時間が決定されるが、かかるアイドルストップ時間に応じてエンジン11の再始動を予告することができるので、アイドルストップ時間の変化に起因する運転手等の乗員の違和感を低減することができる。
また、本発明の実施形態に係るアイドルストップ装置50は、クラッチペダルCPの操作に応じてエンジン11の再始動を行うので、アイドルストップ時間中であっても、運転手の意図に応じてエンジン11の再始動を行うことができる。
また、本発明の実施形態に係るアイドルストップ装置50は、トランスミッション12の状態がニュートラルである場合において、ブレーキ負圧が不足している場合にエンジン11の再始動を行うので、ブレーキペダルBPの操作感を損ねることを防ぐことができる。
【0053】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更可能である。例えば、再始動予告信号は、表示部61にアイドルストップ残時間を示すゲージを表示させるものでもよく、スピーカ62にエンジン11の再始動の数秒前に予告音を発話させるものであってもよい。また、バッテリ充電状態検出部51は、アイドルストップ装置50と別体に設けられる構成であってもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 車両
11 エンジン
21 バッテリ
42 クラッチペダル操作量センサ(クラッチ状態検出手段)
43 ニュートラルセンサ(トランスミッション状態検出手段)
44 ブレーキ負圧センサ(ブレーキ負圧検出手段)
45 車室温度センサ(車室温度検出手段)
46 車室湿度センサ(車室湿度検出手段)
47 バッテリセンサ(電圧センサ、バッテリ充電状態検出手段、バッテリ電圧値検出手段)
48 バッテリセンサ(内部抵抗センサ、バッテリ内部抵抗値検出手段)
49 バッテリセンサ(電流センサ、バッテリ放電電流値検出手段)
50 アイドルストップ装置
52 アイドルストップ制御部
53 アイドルストップ時間決定部
54 再始動予告信号生成部
55 再始動予告信号出力部
60 通知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の状況に応じて、自動的にエンジンの停止及び再始動を行うアイドルストップ装置であって、
前記エンジンを停止してから再始動を行うまでの時間であるアイドルストップ時間を決定するアイドルストップ時間決定部と、
決定された前記アイドルストップ時間に基づいて前記エンジンの再始動を行うアイドルストップ制御部と、
決定された前記アイドルストップ時間に基づいて、前記エンジンの再始動のタイミングを車両の乗員へ予告するための再始動予告信号を生成する再始動予告信号生成部と、
生成された前記再始動予告信号を、車両の乗員へ通知するための通知部へ出力する再始動予告信号出力部と、
を備えることを特徴とするアイドルストップ装置。
【請求項2】
前記アイドルストップ時間決定部は、車室温度検出手段によって検出された車室温度を取得し、取得された前記車室温度に基づいて前記アイドルストップ時間を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載のアイドルストップ装置。
【請求項3】
前記アイドルストップ時間決定部は、取得された前記車室温度が第一の所定温度よりも高いほど、前記アイドルストップ時間が短くなるように当該アイドルストップ時間を決定する
ことを特徴とする請求項2に記載のアイドルストップ装置。
【請求項4】
前記アイドルストップ時間決定部は、取得された前記車室温度が、前記第一の所定温度よりも低い第二の所定温度よりも低いほど、前記アイドルストップ時間が短くなるように当該アイドルストップ時間を決定する
ことを特徴とする請求項3に記載のアイドルストップ装置。
【請求項5】
前記アイドルストップ時間決定部は、車室湿度検出手段によって検出された車室湿度を取得し、取得された前記車室湿度に基づいて前記アイドルストップ時間を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載のアイドルストップ装置。
【請求項6】
前記アイドルストップ時間決定部は、取得された前記車室湿度が高いほど、前記アイドルストップ時間が短くなるように当該アイドルストップ時間を決定する
ことを特徴とする請求項5に記載のアイドルストップ装置。
【請求項7】
前記アイドルストップ時間決定部は、バッテリ充電状態検出手段によって検出されたバッテリ充電状態を取得し、取得された前記バッテリ充電状態に基づいて前記アイドルストップ時間を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載のアイドルストップ装置。
【請求項8】
前記アイドルストップ時間決定部は、取得された前記バッテリ充電状態がカラに近いほど、前記アイドルストップ時間が短くなるように当該アイドルストップ時間を決定する
ことを特徴とする請求項7に記載のアイドルストップ装置。
【請求項9】
前記アイドルストップ時間決定部は、抵抗値検出手段によって検出された車両のバッテリ内部抵抗値を取得し、取得された前記バッテリ内部抵抗値に基づいて前記アイドルストップ時間を決定する
ことを特徴とする請求項7又は請求項8に記載のアイドルストップ装置。
【請求項10】
前記アイドルストップ時間決定部は、取得された前記バッテリ内部抵抗値が大きいほど、前記アイドルストップ時間が短くなるように当該アイドルストップ時間を決定する
ことを特徴とする請求項9に記載のアイドルストップ装置。
【請求項11】
前記アイドルストップ時間決定部は、電流値検出手段によって検出された車両のバッテリ放電電流値を取得し、取得された前記バッテリ流出電流値に基づいて前記アイドルストップ時間を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載のアイドルストップ装置。
【請求項12】
前記アイドルストップ時間決定部は、取得された前記バッテリ放電電流値が大きいほど、前記アイドルストップ時間が短くなるように当該アイドルストップ時間を決定する
ことを特徴とする請求項11に記載のアイドルストップ装置。
【請求項13】
前記アイドルストップ制御部は、クラッチ状態検出手段によって検出されたクラッチ状態を取得し、取得された前記クラッチ状態が、クラッチ操作がなされていることを示すものである場合には、前記エンジンの再始動を行う
ことを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか一項に記載のアイドルストップ装置。
【請求項14】
前記アイドルストップ制御部は、トランスミッション状態検出手段によって検出されたトランスミッション状態と、ブレーキ負圧検出手段によって検出されたブレーキ負圧と、を取得し、取得された前記ブレーキ負圧が不足しているか否かを判定し、取得された前記トランスミッション状態が、ニュートラルであることを示すものであり、かつ、取得された前記ブレーキ負圧が不足していると判定された場合には、前記エンジンの再始動を行う
ことを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか一項に記載のアイドルストップ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−99363(P2011−99363A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253734(P2009−253734)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】