説明

アイドル状態の移動局を誘導する方法及び装置

アイドル状態の移動局を特定のセル又はエリアへ動的に分散又は誘導することにより、負荷再分散及び他の利益が達成され得る。例えば、1以上のセルブロードキャストパラメータを変更することにより、アイドル状態の移動局は、負荷のかかったセルからより低負荷のセルへ誘導され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、「アイドル状態の移動局を誘導(ステアリング、steering)する方法及び装置」というタイトルを持つ、同一出願人による関連米国特許出願第11/010,564号(代理人のドケットナンバー2380−855)に関連し、その内容はここで参照により本願に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は移動体通信に関し、より詳細には、アイドル状態の移動局を、例えばセル、ロケーション・エリア(LA)、或いはルーティング・エリア(RA)などの、他の地理的なサービスエリアへ誘導することに関する。
【背景技術】
【0003】
背景及び概要
現在の移動局(移動体端末(MT)又はユーザ装置(UE)と呼ばれる場合もある)は、多くの場合、2以上の異なる種類の無線アクセスネットワークに接続して通信することができる。一例として、例えば汎欧州デジタル移動電話方式(GSM)、Digital Advanced Mobile Phone System(D−AMPS)、或いはPacific Digital Cellular System(PDC)などの第2世代(2G)の無線アクセスネットワークと、例えばUniversal Mobile Telecommunication System(UMTS)地上無線アクセスネットワーク(UTRAN)などの第3世代(3G)の無線アクセスネットワークとに接続できる、デュアルモード移動体端末が存在する。例えばブルートゥース(登録商標)又は802.11などの、他の無線技術が使用されてもよい。2以上の無線アクセス技術(RAT)へのアクセスを可能にする環境は、マルチアクセス環境(multi-access environment)と呼ばれる。
【0004】
GSM/GPRSシステム及びWCDMAシステムにおいて、モビリティ管理は、移動局の状態に関連する。一般的に、移動局がネットワークに「アタッチ」しているときは、移動局は、アイドル/レディー状態(idle/ready state)或いは接続/アクティブモード(connected/active mode)のいずれかである。アイドル/レディー状態では、移動局は、アクティブな接続(例えば、他の加入者との通信)に従事していない。接続/アクティブモードでは、移動局は、アクティブな接続(例えば、他の加入者との通信)に従事しており、ネットワークからサービスを受けている。移動局の状態はシステム毎に異なる名称(label)を持つかもしれないが、「アイドル状態の(idle)」移動局という用語は、移動局に電源は投入されているが通信にアクティブには参加していない全ての状態の移動局をカバーするように使用される。モバイル加入者(mobile subscriber)が望む場合やモバイル加入者に対する着呼が発生した場合にサービスを受けるために、移動局は、アイドル状態の間、セルを選択し、そのセルに登録して「在圏(キャンプオン)する(camp on))」ことができる。在圏状態(camping)は、移動局がセルに登録した後に採用するモードである。サービスを受けるセルを選択したアイドル状態にある移動局に関する非限定的な例として、アイドル状態、レディー状態、スタンバイ状態、CELL_FACH状態、CELL_PCH状態、及びURA_PCH状態が挙げられる。
【0005】
移動局は、在圏する他のセルを選択するか否かを判断するために、アイドル状態において、現時点で位置する又は登録しているセル、及び隣接するセルを含む、種々のセルによってブロードキャストされたシステム情報(の全て又は一部のみ)を読む。アイドル状態の移動局が在圏する他のセルを選択すると決定した場合、そのプロセスはセル再選択(cell re-selection)と呼ばれる場合がある。セル再選択が発生すると、ネットワークは、移動体端末から位置更新メッセージを受信し、格納している位置情報(例えば、セル、ロケーション・エリア、ルーティング・エリアなど)を更新することになる。位置情報は、移動局を呼び出す(page)ために使用され得る。
【0006】
理想的には、ネットワークオペレータは、異なる無線アクセス技術を使用するネットワーク間でモバイル加入者を指導(directing)又は誘導する際に、例えば「ゴールド/シルバー」契約といった異なるサービスカテゴリーに加入者を分割するなどの、全体的な柔軟性を持つことを好むかもしれない。これは、いくつかの移動局は、アイドル状態の間にUMTSのカバーエリアにいる限り、UMTSベースのセルに在圏するであろうということを意味するであろう。一方、優先度の低い加入者のアイドル状態の移動局は、GSM/GPRSセルに在圏するように誘導される。これらの優先度の低い加入者であっても、ある種のサービスを要求するときはUMTSセルへ移動する可能性もあるだろう。
【0007】
満足できるサービスをモバイル加入者に提供し、且つ移動体通信ネットワークの能力を最大化するために、ネットワーク内の種々のセルの間でネットワーク全体の負荷をバランスさせることが重要である。現在のセルにおける負荷が特定の閾値を超えた場合に、現在のセルから、負荷のより低い近隣の又は重複しているセルへ移動体端末を誘導する(direct or steer)ことは望ましいことであろう。アクティブな接続をしているアクティブな移動局をセル間で移動させることは、特にある無線アクセス技術のシステムのセルから他の無線アクセス技術のシステムのセル(例えばWCDMAからGSM)への移動(切り替え)が行われる場合に、多量のシグナリングを必要とする。アクティブな加入者を移動させることは、約束されたサービス品質をそのアクティブな接続に関して維持することを確実にするために、移動体端末とネットワークとの間の接続が、システム間の切り替えの実行中の全時間において維持されることも要求する。このことは、コアネットワーク及び無線ネットワークの両方において多量のリソースを消費する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
加入者の好み(preferences)とネットワークオペレータの好みとを満足させ、契約したサービス(subscription services)を提供し、且つ負荷再分散などのネットワーク管理のタイプの機能を達成するためのより良いソリューションは、アイドル状態の移動局を特定のセル又はエリアへ、動的に分散させる(distribute)或いは「誘導する」ことである。例えば、アイドル状態の移動局は、同一の又は異なるネットワークにおける、より低負荷の負荷監視エリア(load monitoring area)(例えば、セル、ロケーション・エリア、など)へ誘導されるかもしれない。
【0009】
非限定的な一例においては、第1の負荷監視エリア内のセルにおける第1のブロードキャスト信号、又は第2の負荷監視エリア内のセルにおける第2のブロードキャスト信号の、一方又は両方によって提供される1以上のパラメータに基づいて、移動局がサービスを受けるセルを選択する状態にあるとき、移動局は負荷監視エリア間で分散される。1以上の移動局が現在在圏している第1のエリアに関する負荷が判断される。第1のエリア(例えば負荷が高すぎるか或いはそうでなくても閾値を超えている負荷監視エリア)に関する負荷を低減するために、いくつかの移動局を第2の(好ましくはより低負荷の)負荷監視エリアに在圏するように誘導するため、一方又は両方のブロードキャストメッセージにおける1以上のパラメータの調整が開始される。
【0010】
第1及び第2の負荷監視エリアは、セルでもよいし、ロケーション・エリアでもよいし、ルーティング・エリアでもよいし、或いはサービスエリアでもよい。この調整は、コアネットワークノード、無線アクセスネットワークノード、或いは中央サーバからの負荷情報に基づいて開始され得る。好ましい、非限定的な例としての適用においては、第1の負荷監視エリアは、第1のサービスセットを提供する第1の移動体通信ネットワークに関連付けられており、第2の負荷監視エリアは、第2のサービスセットを提供する第2の移動体通信ネットワークに関連付けられている。もちろん、この方法論は、第3及びそれ以上の(追加の)通信ネットワークに対して拡張可能であり、特に、契約されたサービスが追加のネットワークから取得可能な場合にそうである。
【0011】
第1の移動体通信ネットワークは、第1の無線アクセス技術を採用することができ、第2の移動体通信ネットワークは、第2の無線アクセス技術を採用することができる。例えば、第1の移動体通信ネットワークは、第2世代ベースのネットワークであり、第2の通信ネットワークは、第3世代ベースのネットワークかもしれない。第1及び第2のサービスセットは、異なってもよいし、同じでもよい。
【0012】
調整指示は、第1の移動体通信ネットワーク内の第1の無線アクセスネットワークノードと、第2の移動体通信ネットワーク内の第2の無線アクセスネットワークノードとの間の、負荷情報の交換に基づいてもよい。或いは、調整指示は、コアネットワークノードからの負荷情報に基づいてもよいし、中央サーバからの負荷情報に基づいてもよい。
【0013】
ブロードキャストパラメータの調整の実装例の1つとして、ブロードキャストパラメータにオフセットを適用することができる。オフセットパラメータは、セル選択手続又はセル再選択手続のために移動局によって測定される信号に対して、加算又は減算され得る。アイドル状態の移動体端末における不要な電池の消費を避けるために、ブロードキャストパラメータが変更される変更頻度は、制御され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
詳細な説明
以下の説明は、例えば特定の実施形態、手続、技術などの特定の詳細を説明するものであるが、これは説明を目的としたものであり、限定を目的としたものではない。当業者であれば、これらの特定の詳細から離れた他の実施形態も採用可能であるということが理解できよう。例えば、以下の説明は非限定的なGSM/GPRS/UMTSの例を用いて行われているが、GSM/GPRS/UMTS以外の無線アクセス技術も使用可能である。加えて、説明されている原理は、1種類のみの無線アクセス技術を用いる通信システムにおいても採用可能であるし、多数の異なる無線アクセス技術を組み合わせた通信システムにおいても採用可能である。
【0015】
いくつかの例においては、よく知られている方法、インタフェース、回路、及びシグナリングに関する詳細な説明が省略されており、これにより、不要な詳細によって説明が不明瞭になることを避けている。更に、図においては個別的なブロックが示されている。当業者であれば、これらのブロックの機能は、個別的なハードウェア回路を用いても実装できるし、適切にプログラムされたデジタルマイクロプロセッサ又は汎用コンピュータと共にソフトウェアプログラム及びデータを使用することによっても実装できるし、アプリケーション固有集積回路(ASIC)を用いても実装できるし、1以上のデジタル信号プロセッサ(DSP)を用いても実装できるということが理解できよう。
【0016】
図1は、RAN1及びRAN2というラベルの付けられた2つの無線アクセスネットワーク(RAN)14及び16に結合された1以上のコアネットワーク12を含む通信システム10を示す図である。この例において、無線アクセスネットワーク1は無線アクセス技術1(RAT1)を使用し、無線アクセスネットワーク2は無線アクセス技術2(RAT2)を使用する。RAT1及びRAT2は、同一の無線アクセス技術に対応してもよいし、異なる無線アクセス技術に対応してもよい。RAN1は、例としてセルA、B、及びCというラベルの付けられた、いくつかのセル20をサポートする。同様に、無線アクセスネットワーク16は、例としてセル1、2、及び3というラベルの付けられた、いくつかのセル22をサポートする。各ネットワークは、1以上のセルを含むルーティング・エリア(RA)をサポートすることができ、加えて、1以上のルーティング・エリアを含む1以上のロケーション・エリア(LA)も含むことができる。UMTSはまた、コアネットワークノードがサービスエリア(SA)における負荷を監視することも許可する。負荷をバランスさせることは、セルのブロードキャスト、セル再選択、モビリティ管理、及びエアインタフェースのために存在する他の機能に基づいて望まれる、セルレベル、ロケーション・エリアレベル、ルーティングレベル、或いはあらゆる他の地理的サービス/カバー範囲レベルでのアイドル状態の移動局の誘導を用いて、改善することができる。言及を簡略化するために、あらゆるそのようなエリアを、負荷監視エリアと呼ぶ。
【0017】
各セルはブロードキャストメッセージを生成する。簡潔にする目的で、1つのマルチモード無線局24がセルB、セルC、及びセル1からブロードキャストメッセージを受信して検出するように示されている。マルチモード無線局24は、各無線アクセスネットワークの無線アクセス技術が例え異なっていても、いずれかの無線アクセスネットワークと通信してそこからサービスを受けることができる。マルチモード無線端末24はアイドル状態である。即ち、登録して在圏するセルを選択可能な状態にある。例えば、移動体無線局24は、最も高い受信信号強度のブロードキャストメッセージを持つセルに在圏することを決定することができる。セルにおける現在の無線状態に関する他の何らかの尺度を使用することもできる。
【0018】
セルの負荷は、セル選択又はセル再選択の際に考慮されるべきであるので、各セルにおける(或いは、各セルに関連する)負荷レベルに関する情報は、次の1以上のものによって判定され得る。即ち、コアネットワーク12内のノード又はエンティティ、無線アクセスネットワーク14及び16の一方又は両方の中のノード又はエンティティ、及び、オプションの(任意的な)中央の無線リソースサーバ18のうち、少なくとも1つである。種々のエンティティ間で通信される負荷情報は、図1において、破線で示されている。
【0019】
図2のフローチャートを参照すると、第1のセルの現在の負荷が判定される(ステップS1)。図1の例を想定すると、1以上の移動体無線端末24がセルCに在圏している。通常、セル内には多数の移動体無線端末が存在するので、移動体端末は、個別的にではなく全体的に誘導される。特定のセルにおけるブロードキャストパラメータを変更することにより、その特定のセルに在圏している全移動体端末が、その変更の影響を受け、種々の方法で可能性の有る候補のセルを「ランク付け」することになる。無線状態は個々の移動体端末に対して固有であるので、これらの特定の状態は、ブロードキャストパラメータの変更が、移動体端末が他のセルを選択することの引き金となるか否かに影響を与えることになる。それゆえ、ブロードキャストパラメータの誘導は、「統計的な」誘導として、或いは「平均的な」移動体端末の誘導として見られ得る。他の隣接するセルにおける現在の負荷も判定される。第1の(セルC)における負荷を低減することが望ましいか否かの決定がなされる(ステップS2)。望ましくなければ、負荷を判定するプロセスが継続する。負荷を低減する必要がある場合、1以上の移動体端末24を恐らく比較的混雑していない第2のセルに在圏するように誘導するために、1以上のブロードキャストメッセージにおける1以上のパラメータを調整するステップが発生する(ステップS3)。
【0020】
図1からのシナリオ例を検討する。アイドル状態の移動局24を同一の無線アクセスネットワーク14内に維持することが望ましいかもしれない。その場合、アイドル状態の移動体端末24がRAN1内のセルBに在圏するように誘導するように、ブロードキャストメッセージのパラメータを調整することが適切であろう。ここで、セルBは、セルC又はセルAほどは負荷が高くないものとする。そのようなセル再選択は、無線アクセスネットワーク14内の全セルが同じサービスを提供可能である場合に、特にシームレスになるであろう。いずれにしても、ネットワーク内のこのセル再選択は、ネットワーク間のセル再選択のメッセージングを必要としない。
【0021】
負荷の判定及びブロードキャストパラメータの調整は、例えば次に列挙するものを含むあらゆる適切なノード又はエンティティによって実施或いは開始され得る。即ち、1以上のコアネットワークノード、1以上の無線アクセスネットワーク内の1以上の無線アクセスネットワークノード、中央無線リソースサーバ18(これはオプションであり、実装に依存する)、などである。ブロードキャストパラメータが実際に調整される方法は、あらゆる適切な方法で実行され得る。また、不要なセル変更及びそれに伴うシグナリング負荷を避けるために、移動局が新しいセルへ誘導され得る変更の頻度又は割合を制御することが望ましいであろう。種々のエンティティ及びノード間で測定結果の交換が行われるかもしれないが、これはもちろん任意のものであり、負荷及びパラメータ調整の判定は、1つのノード又はエンティティの中で行われてもよい。実際の調整は、基地局又はノードBによって実行され得る。
【0022】
図3に示される通信システム100の文脈において、他の更に詳細だがやはり非限定的な実施例に言及する。このシステム100には、2つの無線アクセスネットワークで使用される2つの異なる無線アクセス技術が存在する。GSM/GPRS無線アクセスネットワーク104は、TDMAタイプのRATを使用し、UMTS無線アクセスネットワーク106は、CDMA又はWCDMAベースのRATを使用する。双方の無線アクセスネットワークは、これらの種類の無線アクセスネットワークに関連するコアネットワークノード102に結合される。コアネットワークノード102は、ホーム・ロケーション・レジスタ(HLR)、移動通信交換局(MSC)、在圏GPRSサポートノード(SGSN)、及び関門GPRSサポートノード(GGSN)などを含む。GSM/GPRS RAN104は、1以上の基地局コントローラ(BSC)を含むが、簡略化のために、1つのBSC110のみが図示されている。BSC110は、1以上の基地局(BTS)112に結合され、各基地局112は、特定のセル118に関連する。A、B、及びCという3つのセルが例示される。UMTS無線アクセスネットワーク106は、1以上の無線ネットワークコントローラ(RNC)を含むが、簡略化のために、1つのRNC114のみが図示されている。各RNC114は、1以上のノードB116に結合される。各ノードBは、1以上のセルに関連する。簡略化のために、図示されている3つのノードBはそれぞれ、1つのセル1、2、及び3にのみ関連する。各セルは、移動体端末によるブロードキャスト又は受信を生成する。図3は、GSM/GPRSネットワーク104のRAT及びUMTS無線アクセスネットワーク106のRATを使用して通信可能な、デュアルモード無線局122を含む。
【0023】
各セル118及び120に関する負荷情報を判定可能な、多くの異なる方法が存在する。例えば、コアネットワーク内のMSC又はSGSNは、各ロケーション・エリア(LA)、ルーティング・エリア(RA)、サービスエリア(SA)、或いはセルにおける負荷情報を判定することができる。どの「レベル」で負荷が測定されるかに関わらず、現在の標準規格がアイドル状態の移動体端末を誘導するためにセルレベルでのブロードキャストパラメータを提供するのみである場合、より高いエリアレベルで測定された負荷は、LA、RA、或いはSA内のセルレベルにマッピングされる。負荷情報は、BSC110及びRNC114のうちの少なくとも一方へ送信される。或いは、オプションの中央無線リソースサーバ108が負荷情報を収集してセル又は他のエリアの負荷を判定してもよい。或いは、BSC110及び基地局112のうちの少なくとも一方がその情報を判定してもよいし、同様に、RNC114及びノードB116のうちの少なくとも一方が判定してもよい。情報はネットワーク間で交換され、或いは、必要に応じてオプションの無線リソースサーバ108へ通信されてもよい。あらゆる適切なシグナリングフォーマットを使用可能である。例えば、BSC110及びRNC114の間で負荷情報を交換する際に、3GPP 25.413標準に記述されるシグナリング及び負荷の「コンテナ」(即ち、「Inter−System Information Transparent Container」)が使用されてもよい。負荷情報は一般的にBSC/RNCによって計算可能であり、追加のシグナリング又は構成を必要としないので、BSC/RNCにおける負荷の計算は好まれるであろう。ブロードキャストメッセージの調整は、これらの同じエンティティのいずれによって行われてもよく、対応する基地局又はノードBにおける実施のために通信される。
【0024】
図4に示すフローチャートについて言及する。ステップS10で、図3に示すセル118及び120のいくつかについて、負荷の測定が行われる。負荷は、これらのセルで使用される1以上のリソースのいずれかの観点から観測することができる。例として、リソースは、帯域幅、電力、周波数、タイムスロット、拡散符号、メモリ、データ処理リソース、地上通信線の転送帯域幅などを含む。負荷は、セルから移動体端末へのダウンリンク方向、及び移動体端末からセルへのアップリンク方向のうち、少なくとも一方において測定可能である。負荷の測定結果を組み合わせることができる。負荷は、絶対値或いは相対値で表すことができる。負荷の測定結果のフィルタリング及び平均化(或いはその一方)を採用することもできる。負荷の測定結果は、同一ネットワーク内又は異なるネットワーク内のノード間或いはエンティティ間で交換できる(ステップS11)が、この情報交換は、状況に依存する任意のものである。負荷の変化、又は累積された負荷の変化が特定の閾値を超える場合、負荷情報を交換するだけであるのが望ましいだろう。更に、移動体端末が同一ネットワーク内の他のセルへ誘導されること(例えば、図3の移動体無線局122を共にUMTS無線アクセスネットワーク106にあるセル1からセル2へ誘導すること)が可能である場合、こうすればネットワーク間のシグナリング及び遅延を避けることができる。
【0025】
1以上のセルに関して1以上のブロードキャストパラメータが調整される(ステップS12)。実際、新しいパラメータ値のセット(例えば、セルのオフセット)が、隣接するセルにおける負荷間の違いに基づいて計算され得る。オフセットは、デシベル単位又は線形の単位で表現可能である。以前に決定された1以上の負荷サンプルが入力として使用可能であり、計算された新しいパラメータ値は、この以前に決定された値に対する調整として使用され得る。或いは、新しいパラメータ絶対値が計算されてもよい。負荷値は著しく変動し得るので、フィルタリング、平均化、及び閾値化(thresholding)のうちの少なくとも1つを行うことが、不要な計算、セル切り替え、及びシグナリングを避けるためには、望ましいであろう。ブロードキャストメッセージ情報の頻繁すぎる更新を避けるためにブロードキャストパラメータの更新頻度を制限することは、移動体端末のバッテリー寿命及びシステムの安定性を保つ助けとなる。新しいオフセット値は、在圏セル及び近隣セルのうちの少なくとも一方によってブロードキャストされる。
【0026】
ブロードキャストされる情報において調整され得るパラメータ例は、信号強度オフセット又は信号品質オフセット(これらは、一時的なオフセットが望まれる場合、潜在的に、タイマー値と組み合わせられ得る)、セルの優先度、セルレベルの優先度、最低品質閾値(Minimum Quality Threshold)、及び許可された電力レベルを含む。UMTSセルにおいて使用され得る、存在するパラメータに関する特定の非限定的な例は、信号強度に対するQoffset1(s,n)又はEc/No測定結果に対するQoffset2(s,n)であり、これらはセルのランク付けに利用されうる。これらのパラメータは、在圏(s)セル及び近隣(n)セル間のオフセットを規定する。各近隣セルの関係は、個々に設定され得る。GSMに関する特定の非制限的な例は、CELL_RESELECT_OFFSET又はGPRS_RESELECT_OFFSETであり、これらは、セル選択/セル再選択評価において使用され、また、GSMセルの負荷を近隣のセルに押し付けるために潜在的に使用され得る。
【0027】
オフセットを決定する方程式の例を以下に示す。
【0028】
Offset(Source,Neighbor,Tn+1)=Offset(Source,Neighbor,Tn)+C・
[Load(Neighbor,Tn)-Load(Source,Tn)] (1)
Offset(Source,Neighbor,Tn+1)=Offset(Source,Neighbor,Tn)+
Func[Load(Neighbor,Tn)-Load(Source,Tn)] (2)
Offset(Source,Neighbor,Tn+1)=Const0+Const1・(Load(Neighbor,
Tn)-Load(Source,Tn)] (3)
【0029】
オフセットの例は、CRO(Cell_Reselect_Offset),GRO(n)(GPRS_Reselect_Offset)、及び、信号強度RSCP又は信号品質Ec/Noに関するUMTSオフセットQoffset1s,n又はQoffset2s,nを含む。Tは、「n番目のイベントで」を意味し、定期的であっても非定期的であってもよい。ここで、nは、計算が行われる際のイベントのカウンタである。Sourceは、移動体端末が現在在圏しているあるセル又はエリアに関する識別子を示す。Neighborは、ソース(source)セル又はエリアに隣接するあるセル又はエリアに関する識別子を示す。もちろん、各ソースセルは、通常、他のセルにとっては隣接セルである。
【0030】
そのため、同じセルの識別子が、異なる「位置」に存在するかもしれない。例えば、2つのセルA及びBの識別子を考える。セルAにおけるオフセットのブロードキャストは、ソース位置における「A」、及び隣接位置における「B」を使用するであろう。セルBにおけるオフセットのブロードキャストは、ソース位置における「B」、及び隣接位置における「A」を使用するであろう。換言すれば、方程式(1)−(3)は、全セルにおいて各隣接セルとの関係について「同時に」評価され得る。図5は、3つのセルA、B、及びDのうちの2つのセルA及びBにおけるオフセットを示す。
【0031】
パラメータCは、選択可能な定数である。より低速でより緩やかな適応を行うためには、Cの値はより小さくなるべきである。Func(X)は、この例の2つのセルにおける負荷の違いとなるように選択される入力変数Xに関する何らかの関数を示す。関数の単純な例は、C*Xであり、これは、方程式(2)を方程式(1)に落とし込んだものである。より高度な例は、C*Xαである。ここで、αは通常、1よりも大きい。この影響は、より大きな負荷の違いに対してはより大きな調整を行うということになろう。方程式(1)−(2)は共に、(「時刻Tn」における)以前のパラメータ値に基づいて、パラメータがブロードキャストされたソースセルと各近隣セルとの間で残っている負荷の違いに基づく調整を伴うように、(「時刻Tn+1」における)新しいパラメータ値を設定する。それゆえ、これは、「時間間隔Tn」毎の緩やか或いは段階的なパラメータの調整となる。なお、方向及び大きさは、負荷の違いに依存する。調整は、セル自体における負荷のみに基づいていてもよいが、負荷の違いに基づかせることが好ましい。但し、方程式(3)において実行されるように、以前の計算を考慮せず、独立して「時間間隔Tn」毎に新しいパラメータ値を計算することも可能である。
【0032】
方程式(3)において新しいブロードキャストパラメータを計算するために、「次の値」がConst0に等しく設定される。この値は、他の適切に選択された定数(Const1)と測定された負荷の違いとの積を合計して適切に設定される。方程式(1)−(2)は、調整が頻繁な場合に好適であり、方程式(3)は、調整が頻繁でない場合に使用されるであろう。方程式(3)は、一般的に、パラメータ更新の時間間隔(即ち、TnからTn+1)と長さが同様である、比較的長い計算/平均化時間を持つ。
【0033】
もちろん、オフセットパラメータを計算する、ずっと多くの可能な方法が存在する。他の例は、汎用ローパスフィルタのタイプの方程式である。
【0034】
Offset(Source,Neighbor,Tn+1)=(1-C)・Offset(Source,Neighbor,Tn)+
C・[Load(Neighbor,Tn)-Load(Source,Tn)] (4)
【0035】
方程式(1)と(4)との間の違いは、例え負荷の違いが長時間に亘って持続する場合であっても、Offsetの大きさが制限されることである。これは、望ましい性質であろう。
【0036】
上の例は、GSM(GRO)におけるPBCCH及びUTRANにおけるBCHでブロードキャストされるOffsetパラメータ(Qoffset1s,n又はQoffset2s,n)の使用を想定している。即ち、各セルに関しては1つのOffset値である。しかし、「ペアのような(pair-wise)」オフセットは、全セルにおいて存在し得ない。例えば、従来のブロードキャストチャネル(BCCH)を伴うGSMでは、各セルに1つのOffsetパラメータ(CRO)のみが存在し、全近隣セルと共通である。それゆえ、上に示した方程式の例は、修正される必要があるかもしれない。
【0037】
アイドル状態の移動局は、同一の無線アクセスネットワーク技術のネットワーク内であれ異なる無線アクセス技術のネットワーク間であれ、負荷に基づいてセル間を動的に誘導される。これは、多数の利点をもたらす。即ち、ネットワークオペレータの柔軟性、ネットワークリソースの最適化、過負荷状態の低減、契約されたサービス品質の満足のいく提供の保証、及び負荷をバランスさせる目的でアクティブな接続のハンドオーバーを実行する必要性の最小化、である。
【0038】
1以上の実施形態の例に関連して本発明を説明してきた。しかし、本発明は、いかなる開示されている実施形態にも限定されず、反対に、添付の請求項の範囲内に含まれる様々な修正及び均等な構成をカバーすることが意図されている、ということが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】異なる無線アクセス技術を用いる2つの無線アクセスネットワークを含む通信システムを示す図である。
【図2】移動局が現在在圏している第1のセルにおける負荷を低減するためのステップを示すフローチャートである。
【図3】GSM/GPRS無線アクセスネットワーク及びUMTS無線アクセスネットワークを含む他の通信システムを示す図である。
【図4】負荷分散に関する1つの非限定的な例に従う手順例を示すフローチャートである。
【図5】ブロードキャストパラメータのオフセット調整の状況を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷監視エリア間で移動局(24)を分散させる方法であって、前記移動局は、第1の負荷監視エリア内のセルにおける第1のブロードキャストメッセージ、及び第2の負荷監視エリア内のセルにおける第2のブロードキャストメッセージの一方又は両方によって提供される1以上のパラメータに基づいて、各移動局がサービスを受けるセル(20,22)を選択する状態であり、
前記移動局が現在在圏している前記第1の負荷監視エリアの負荷を判定するステップと、
前記第1の負荷監視エリアの前記負荷を低減するために、1以上の前記移動局が前記第2の負荷監視エリアに在圏するように誘導するために、前記ブロードキャストメッセージの一方又は両方における1以上のパラメータの調整を指示するステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1及び第2の負荷監視エリアは、セル、ロケーション・エリア、ルーティング・エリア、又はサービスエリアであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の移動体通信ネットワークは第1の無線アクセス技術を使用し、前記第2の移動体通信ネットワークは別の第2の無線アクセス技術を使用することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の移動体通信ネットワークは第2世代ベースのネットワークであり、前記第2の移動体通信ネットワークは第3世代ベースのネットワークであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記調整の指示は、前記第1の移動体通信ネットワーク内の第1の無線アクセスネットワークノードと、前記第2の移動体通信ネットワーク内の第2の無線アクセスネットワークノードとの間での、負荷情報の交換に基づくことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記調整の指示は、コアネットワークノード又は中央サーバからの負荷情報に基づくことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記1以上のパラメータは、セル選択手続又はセル再選択手続のために前記移動局によって行われた信号の測定結果に対して加算又は減算される、オフセットパラメータを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ブロードキャストメッセージが更新される、変更の頻度を制御するステップを更に備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記移動局は、アイドル状態、レディー状態、スタンバイ状態、CELL_FACH状態、CELL_PCH状態、及びURA_PCH状態のうちのいずれかの状態であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
種々の負荷監視エリア間で移動局(24)を分散させる装置であって、前記移動局は、第1のセルにおける第1のブロードキャスト信号、及び第2のセルにおける第2のブロードキャスト信号の一方又は両方によって提供される1以上のパラメータに基づいて、各移動局がサービスを受けるセル(20,22)を選択する状態であり、
前記移動局が現在在圏している前記第1の負荷監視エリアの負荷を判定し、
前記第1の負荷監視エリアの前記負荷を低減するために、1以上の前記移動局が前記第2の負荷監視エリアに在圏するように誘導するために、前記ブロードキャストメッセージの一方又は両方における1以上のパラメータの調整を指示する、
ように構成された電子回路を備えることを特徴とする装置。
【請求項11】
前記第1及び第2の負荷監視エリアは、セル、ロケーション・エリア、ルーティング・エリア、又はサービスエリアであることを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記第1の負荷監視エリアは、第1のサービスセットを提供する第1の移動体通信ネットワークに関連しており、前記第2の負荷監視エリアは、第2のサービスセットを提供する第2の移動体通信ネットワークに関連していることを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記第1の移動体通信ネットワークは第1の無線アクセス技術を使用し、前記第2の移動体通信ネットワークは別の第2の無線アクセス技術を使用することを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項14】
前記第1の移動体通信ネットワークは第2世代ベースのネットワークであり、前記第2の移動体通信ネットワークは第3世代ベースのネットワークであることを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項15】
前記第1及び第2のサービスセットは異なっているか、又は同一であることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記調整の指示は、前記第1の移動体通信ネットワーク内の第1の無線アクセスネットワークノードと、前記第2の移動体通信ネットワーク内の第2の無線アクセスネットワークノードとの間での、負荷情報の交換に基づくことを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項17】
前記調整の指示は、コアネットワークノード又は中央サーバからの負荷情報に基づくことを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項18】
前記1以上のパラメータは、セル選択手続又はセル再選択手続のために前記移動局によって行われた信号の測定結果に対して加算又は減算される、オフセットパラメータを含むことを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項19】
前記電子回路は更に、ブロードキャストメッセージが更新される、変更の頻度を制御するように構成されていることを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項20】
前記移動局は、アイドル状態、レディー状態、スタンバイ状態、CELL_FACH状態、CELL_PCH状態、及びURA_PCH状態のうちのいずれかの状態であることを特徴とする請求項10に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−523711(P2008−523711A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−545414(P2007−545414)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【国際出願番号】PCT/SE2005/001825
【国際公開番号】WO2006/065198
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(598036300)テレフオンアクチーボラゲット エル エム エリクソン(パブル) (2,266)
【Fターム(参考)】