説明

アウターミラー

【課題】笛吹き音の発生を低減することができるとともに、生産性が高く、しかも低コスト化を実現するアウターミラーを提供する。
【解決手段】後部に後方視認用のミラーが収容されるハウジング本体20と、ハウジング本体20の前部に取り付けられるハウジングカバー30と、ハウジングカバー30の前部から側部に亘って形成された湾曲横長孔状の開口部に沿って露出する湾曲横長面を有するウインカランプ50と、を含み、ハウジングカバー30の内側における開口部37の開口縁部37aと、開口縁部37aに対向するウインカランプ50の対向部との少なくともいずれか一方に、凹部または凸部の少なくともいずれか一方を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に搭載されるアウターミラーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両のアウターミラーにおいて、ウインカランプをアウターミラーに内蔵させた技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
このアウターミラーでは、ハウジング本体とハウジングカバーとからなる2ピース構造とされており、ハウジング本体とハウジングカバーとの間にウインカランプを配置して、ハウジングカバーに形成された開口部によってウインカランプがハウジングカバーに露出するように構成されている。
【0003】
ところで、ウインカランプは、開口部を通じてハウジングカバーの前部に露出しているので、開口部における隙間を通じて走行風がハウジングカバー内に流れ込み易く、耳障りな風切り音となる笛吹き音が発生し易い。
そこで、従来では、図15に示すように、ハウジングカバー1の内側の開口縁部1aに対向するウインカランプ2の周部2aに、発泡ウレタン等の材料からなるシール材3を貼付して、前記隙間をこのシール材3で塞いでいた。このようなアウターミラーでは、シール材3を介在させることによって前記隙間が塞がれることとなるので、笛吹き音の発生原因となる走行風がハウジングカバー1内に入り込むことが阻止されることとなる。なお、ウインカランプ2はハウジング本体4に取り付けられる。
【0004】
【特許文献1】特開2002−96684号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記した従来のアウターミラーでは、笛吹き音の発生の防止をシール材を介在させることにより行っていたので、シール材の貼り付けに手間がかかり、組み立てが煩雑であるという問題があった。特に、シール材の貼り付け位置にずれを生じてしまうと、笛吹き音の発生を防止する効果が低減したり、開口部からシール材が露出したりして外観が損なわれるため、シール材の貼り付けには、慎重な作業が要求されていた。
【0006】
また、シール材は、ロ字形状に裁断する必要があり、無駄な部分が出てコスト、省資源の点からも問題があった。
【0007】
このことは、ハウジングカバーの開口部にウインカランプが露出するアウターミラーに限らず、アウターミラーの外観を構成する外観部材(ハウジングカバー等)に設けられた開口部に、組付部品が露出するように構成されたアウターミラーにおいても共通して当てはまることである。
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、ハウジングカバーの開口部にウインカランプが露出するアウターミラー、または外観を構成する外観部材に設けられた開口部に組付部品が露出するアウターミラーにおいて、笛吹き音の発生を低減することができるとともに、生産性が高く、しかも低コスト化を実現することができるアウターミラーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を達成するために本発明のアウターミラーは、後部に後方視認用のミラーが収容されるハウジング本体と、前記ハウジング本体の前部に取り付けられるハウジングカバーと、前記ハウジング本体と前記ハウジングカバーとの間に配置され、前記ハウジングカバーの前部から側部に亘って形成された湾曲横長孔状の開口部に沿って露出する湾曲横長面を有するウインカランプと、を含むアウターミラーであって、前記ハウジングカバーの内側における前記開口部の開口縁部と、この開口縁部に対向する前記ウインカランプの対向部との少なくともいずれか一方に、凹部および凸部の少なくともいずれか一方を設けたことを特徴とする。
【0010】
このアウターミラーによれば、開口部における開口縁部とウインカランプとの間の隙間を通じてハウジングカバー内に入り込んだ走行風は、ハウジングカバーの内側における開口部の開口縁部と、この開口縁部に対向するウインカランプの対向部との間を通過する際に、これらの少なくともいずれか一方に設けられた、凹部および凸部の少なくともいずれか一方によって、気流が乱されて速度が低下する。これによって、該走行風が入り込んで前記隙間を通過することにより発生する笛吹き音を低減することができる。
しかも、笛吹き音の低減を図るために、従来のようなシール材を全く必要としないので、部品点数が削減されるとともに組み立て時の煩雑さがなく、慎重な組立作業を行う必要もない。したがって、生産性が高く、低コスト化を実現することができる。
【0011】
また、例えば、凹部や凸部はハウジングカバーの開口縁部やウインカランプの対向部に対して予め一体成形しておくことが可能であるため、組み立て時に笛吹き音を防止するための加工を別途行う必要がなくなり、組み立てが簡単であるという利点が得られる。したがって、低コスト化を図りつつ笛吹き音の発生を低減することができるアウターミラーが得られる。
【0012】
また、前記凹部または凸部は、前記ハウジングカバーの前記開口縁部および前記ウインカランプの前記対向部のうち、少なくとも前記開口部と前記ウインカランプとの隙間を通じて走行風が入り込む範囲に設けられている構成とするのがよい。
【0013】
このアウターミラーによれば、走行風が入り込む範囲に、凹部または凸部が設けられているので、笛吹き音を効率よく低減することができる。
ここで、走行風が入り込む範囲としては、車両の前進走行時に車両の進行方向に向いている側、つまり、ハウジングカバーの前部側をいう。
【0014】
また、前記ウインカランプに設けられる前記凹部は、前記ハウジングカバーの前記開口縁部に沿う溝である構成とするのがよい。
【0015】
このアウターミラーによれば、ウインカランプに設けられる凹部がハウジングカバーの開口縁部に沿う溝であるので、ハウジングカバーとウインカランプとの隙間を通過する走行風の流れに対して溝が横切る状態に配置されることとなり、これによって、通過する走行風の速度を良好に低減させることができる。これによって、笛吹き音の低減されたアウターミラーが得られる。
【0016】
さらに、前記ハウジングカバーに設けられる前記凸部は、前記溝に対応する突形状に形成されており、前記ハウジング本体に前記ハウジングカバーを取り付けた状態で前記溝に対向配置され、前記溝との間で屈曲状の空気通路を形成する構成とするのがよい。
【0017】
このアウターミラーによれば、走行風は、凸部と溝との間で形成される屈曲状の空気通路を通過するようになっているので、これを通過する際に気流が乱されて速度が好適に低下されることとなる。これによって、笛吹き音が発生するのをより一層低減することができるようになる。
【0018】
また、前記凹部は、前記ハウジングカバーおよび前記ウインカランプの少なくともいずれか一方に設けられており、前記開口縁部に沿って複数のディンプルを形成してなる構成とするのがよい。さらに、前記凸部は、前記ハウジングカバーおよび前記ウインカランプの少なくともいずれか一方に設けられており、前記開口縁部に沿って所定の間隔で複数配置されている構成とするのがよい。
【0019】
このようなアウターミラーによれば、走行風は、開口縁部と対向部との間を通過する際に、開口縁部に沿って形成された複数のディンプルによって、あるいは開口縁部に沿って所定の間隔で複数配置された凸部によって気流が乱されて速度が低下されることとなる。これによって、笛吹き音が発生するのを低減することができるようになる。
【0020】
また、前記凹部または凸部は、略半球状に形成されている構成とすることによって、走行風の気流がより一層乱されるようになり、走行風の速度を効率よく低下させることができる。
【0021】
また、本発明は、外観を構成する外観部材と、この外観部材に設けられた開口部と、この開口部に沿って露出するように取り付けられる組付部品と、を含むアウターミラーであって、前記外観部材の内側における前記開口部の開口縁部、およびこの開口縁部に対向する前記組付部品の対向部の少なくともいずれか一方に、凹部および凸部の少なくともいずれか一方を設けたことを特徴とする。
ここで、外観部材とは、アウターミラーの外観を構成している部材を言い、例えば、ハウジング本体やハウジングカバー等、アウターミラーの外観の一部をも構成している部材を総称して言う。
【0022】
このようなアウターミラーによれば、開口部における開口縁部と組付部品との間の隙間を通じて外観部材内に入り込んだ走行風は、外観部材の内側における開口部の開口縁部と、この開口縁部に対向する組付部品の対向部との間を通過する際に、これらの少なくともいずれか一方に設けられた、凹部および凸部の少なくともいずれか一方によって、気流が乱されて速度が低下する。これによって、該走行風が入り込んで前記隙間を通過することにより発生する笛吹き音を低減することができる。
しかも、笛吹き音の低減を図るために、従来のようなシール材を全く必要としないので、部品点数が削減されるとともに組み立て時の煩雑さがなく、慎重な組立作業を行う必要もない。したがって、生産性が高く、低コスト化を実現することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ハウジングカバーの開口部にウインカランプが露出するアウターミラー、または外観を構成する外観部材に設けられた開口部に組付部品が露出するアウターミラーにおいて、笛吹き音の発生を低減することができるとともに、生産性が高く、しかも低コスト化を実現することができるアウターミラーが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、説明において、「前後」,「左右」,「上下」は、アウターミラーを自動車の車体に取り付けた状態を基準とする。また、以下の実施形態では、ハウジングカバーの開口部にウインカランプ(組付部品の一態様)が露出するアウターミラーについて説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るアウターミラーを示す外観斜視図、図2は同じくハウジング本体とハウジングカバーとを展開した展開斜視図、図3(a)はハウジングカバーを後面側から見た斜視図、図3(b)(c)はハウジングカバーに対するウインカランプの取り付けを説明するための断面図である。
【0025】
本実施の形態に係るアウターミラーは、自動車の車体のサイドドアに付設されるいわゆるドアミラーであり、図1に示すように、サイドドア等の側面からその側方に向かって張り出すミラーベース10と、このミラーベース10に取り付けられるミラーハウジングHとから構成されている。ミラーハウジングHの後部の後面開口部Haには、後方視認用のミラー40が収容され、また、ミラーハウジングHの前部H1から側部H2に亘る部位にはウインカランプ50が設けられている。また、ミラーハウジングHは、ハウジング本体20とハウジングカバー30とからなる2ピース構造とされ、ハウジング本体20とハウジングカバー30との間にウインカランプ50が配置されている。なお、本実施形態に係るアウターミラーは電動格納式であり、ミラーハウジングHは、ミラーベース10の張出部10aに固定された図示しないシャフトに対して回動可能に取り付けられている。
【0026】
以下、各部について詳細に説明する。
ミラーベース10は、合成樹脂製であり、図示しないサイドドア等の前端部に形成された図示しない取付座等に固定される。
ミラーハウジングHは、合成樹脂製であり、前記のように、ハウジング本体20とハウジングカバー30とからなる2ピース構造とされている。
【0027】
図2に示すように、ハウジング本体20には、その前部に複数の孔部22aが形成されており、これらの複数の孔部22aに、ハウジングカバー30の内側面に突設された複数の弾性係止片32a(一部図示)がそれぞれ係止されることにより、ハウジング本体20の前部にハウジングカバー30が取り付けられるようになっている。取り付けられた状態で、ハウジングカバー30は、弾性係止片32aの弾性力によって、ハウジング本体20に対する上下左右方向の位置ずれが抑制される状態に固定される。
【0028】
ハウジングカバー30には、前部31aからカバー側部31bに亘って形成された湾曲横長孔状の開口部37が形成されている。この開口部37には、ハウジング本体20とハウジングカバー30との間に配置されたウインカランプ50のランプ部51が露出するようになっている(図1参照)。つまり、ハウジングカバー30は、カバー側部31bが開口部37によって切り欠かれることがなく、一体的に繋がった構成となっている。
【0029】
図3(a)に示すように、ハウジングカバー30の内側の開口縁部37aには、ハウジング本体20(図2参照)にハウジングカバー30を取り付けた状態で、後記するウインカランプ50の溝51dに対向配置される凸部37dが設けられている(図3(b)(c)参照)。凸部37dは、後記する溝51dに対応する略直線状(後面視)の突形状とされており、ハウジングカバー30に一体成形されている。
【0030】
ウインカランプ50は、図3(b),図4(a)に示すように、ランプ部51と、このランプ部51の底面(アウターミラーを自動車の車体に取り付けた状態では後面)から側面(同じく上面、下面)を覆う有底状のランプカバー52とを備え、ハウジング本体20とハウジングカバー30(いずれも図2参照、以下同じ)との間に配置可能な湾曲形状とされている。
ランプ部51は、ランプカバー52に溶着される基部51aと、ハウジングカバー30の開口部37に沿って露出する湾曲横長部(湾曲横長面)51bとを有しており、湾曲横長部51bの周りに形成される肩部(対向部)51cがハウジングカバー30の内側における開口縁部37aに対向するようになっている。
また、ランプ部51の基端部には、図4(a)(b)に示すように光源53が配置されている。光源53としては、例えば、LED(Light Emitting Diode)が用いられている。
【0031】
基部51aの肩部51cには、図3(b)、図4(b)(c)に示すようにハウジングカバー30の開口縁部37a(図4では不図示)に沿う溝(凹部)51dが設けられている。本実施形態では、溝51dが、ランプ部51に一体成形されており、図1に示すように、開口部37とウインカランプ50との隙間Sを通じて走行風が入り込む範囲、つまり、ハウジングカバー30の前部H1側に位置するように設けられている。これにより、隙間Sを通じて入り込む走行風は、図5(b)に示すように、すべて溝51dを横切るようにして流れることとなる。なお、溝51dは、前記範囲に設けることに限られず、肩部51cの全体、つまり、湾曲に設けるようにしてもよい。
【0032】
ここで、前記したように、ハウジングカバー30の開口縁部37aには、溝51dに対応する凸部37dが設けられているので、図5(a)に示すように、ハウジング本体20にハウジングカバー30を取り付けると、溝51dに凸部37dが対向配置され、これら溝51dと凸部37dとで、屈曲状の空気通路が形成されることとなる。つまり、隙間Sを通じて入り込む走行風は、この屈曲状の空気通路により、ハウジングカバー30とウインカランプ50との間を蛇行するようにして流れることとなる。
【0033】
ランプカバー52は、図3(b)に示すように、ランプ部51の底面から側面を覆う有底状とされており、底部52aと側部52bとを備えている。底部52aには、ランプ部51の基部51aが溶着されて固定されるようになっており、溶着時に溶けた樹脂が流れ出るのを側部52bで抑えるために、図3(c)に示すように、ランプ部51と側部52bとの間には、溶着溝52cが形成されるようになっている。
【0034】
次に、このような構成よりなるアウターミラーの組み立ておよび作用について説明する。
アウターミラーの組み立てにあたっては、まず、図2に示すように、ハウジング本体20にウインカランプ50を図示しないねじ等の固定手段を用いて固定し、続いてその上からハウジングカバー30を被せて、ハウジング本体20の複数の孔部22aに、ハウジングカバー30の複数の弾性係止片32aをそれぞれ係止することで行うことができる。
そして、ハウジング本体20にハウジングカバー30が固定されると、図5(a)に示すように、前記したように、ハウジングカバー30の開口縁部37aと、この開口縁部37aに対向するウインカランプ50の肩部51cとの間には、凸部37dおよび溝51dによって屈曲状の空気通路が形成されるようになっているので、次のような作用効果が得られる。
【0035】
すなわち、開口部37とウインカランプ50との間の隙間Sを通じてハウジングカバー30内に入り込んだ走行風は、屈曲状の空気通路を通過する際に、気流が乱されて速度が低下する。これによって、該走行風が入り込んでハウジングカバー30とウインカランプ50との間を通過することにより発生する笛吹き音を低減することができる。
しかも、凸部37dおよび溝51dは、一体成形により形成されるので、組み立て時に笛吹き音を防止するための加工を別途行う必要もなく、笛吹き音の低減を図るために、従来のようなシール材も全く必要としないので、部品点数が削減されるとともに組み立て時の煩雑さがなく、慎重な組立作業を行う必要もない。したがって、生産性が高く、低コスト化を実現することができる。
【0036】
また、凸部37dおよび溝51dは、開口部37とウインカランプ50との隙間Sを通じて走行風が入り込む範囲に設けられているので、笛吹き音を効率よく低減することができる。なお、図5(b)に示すように、本実施形態のアウターミラーにおいては、ハウジングカバー30の前部H1側に当たった走行風が、その後、ハウジングカバー30の側部H2側へ向けて流れるという気流の流れが形成されるようになっている。これによって、ハウジングカバー30の側部H2側に位置する隙間S1には、図示しない車両の走行速度が高速になればなるほど走行風が流れ込むことはなく、仮に、走行風が流れ込んだとしても笛吹き音の原因とはならない程度のごく僅かなものである。したがって、この領域に対応する部位に、凸部37dや溝51dを設けなくても笛吹き音が発生することはない。なお、隙間S1に対応する部位に、凸部37dや溝51dを設けても差し支えない。
【0037】
また、溝51dは、図3(c)に示すように、ハウジングカバー30の開口縁部37aに沿う溝であるので、ハウジングカバー30とウインカランプ50との間を通過する走行風の流れに対して溝51dおよび凸部37dが横切る状態に配置されることとなり、これら2つの相乗効果によって、通過する走行風の速度を良好に低減させることができ、笛吹き音を効果的に低減することができる。
【0038】
なお、この例では、開口縁部37a側に凸部37dを設け、肩部側に溝51dを設けたが、これらを相互に反対側に設けてもよく、開口縁部37aおよび肩部51cの少なくともいずれか一方に、凸部37dおよび溝51dの少なくともいずれか一方が設けられる構成としてもよい。つまり、開口縁部37a側に溝51dを設けて、肩部51c側に凸部37dを設けてもよく、開口縁部37aおよび肩部51cの一方にのみ、凸部37dおよび溝51dの一方を設けてもよい。また、開口縁部37aおよび肩部51cの両方に、凸部37dまたは溝51dの一方を設けてもよい。さらに、開口縁部37aおよび肩部51cの少なくともいずれか一方に、凸部37dおよび溝51dの両方を設けてもよい。このような構成においても、ハウジングカバー30とウインカランプ50との間を通過する走行風の気流を乱して速度を低下させることができ、笛吹き音を低減させることができる。
【0039】
図6は本発明の変形例を示す説明図である。図6(a)(b)に示すように、該変形例では、ウインカランプ50の肩部51cに多数のディンプル60が、肩部51cに沿って千鳥状(図6(c)参照)に形成されている。このような構成によれば、前記と同様に開口部37とウインカランプ50との間の隙間S(図5(a)参照)を通じてハウジングカバー30内に入り込んだ走行風は、ディンプル60によって気流が乱されて速度が低下するので、笛吹き音の発生を低減することができる。なお、ディンプル60は、図7(a)に示すように、ハウジングカバー30の開口縁部37aに対して設けてもよく、また、図示はしないが肩部51cと開口縁部37aとの双方に設けてもよい。また、開口縁部37aに設けるディンプル60は、図7(b)に示すように、開口縁部37aに沿って3条(3列)設けてもよい。また、ディンプル60の径は、種々採用することができ、異なる径のディンプル60を組み合わせて設けてもよい。
【0040】
さらに、ディンプル60は、図8(a)(b)に示すように、肩部51cに沿って所定の間隔で一列に連なるように設けてもよい。この場合、図8(a)に示すように、ディンプル60は、略半球状となるように、直径Dに対してD/2以上の深さとなるように形成してもよい。このように、ディンプル60は略半球状となるように深く形成することにより、より一層走行風の気流が乱されて速度が低下するように作用するようになり、笛吹き音の発生をより一層好適に低減することができる。
【0041】
また、前記実施形態では、溝51dや凸部37d、さらにはディンプル60を形成する例について説明したが、図8(c)に示すように、肩部51cに略半球状となる凸部61を形成してもよい。また、図9(a)に示すように、ハウジングカバー30の開口縁部37aにも略半球状の凸部61を形成してもよい。なお、図9(b)に示すように、開口縁部37aにのみ凸部61を形成してもよい。また、肩部51cおよび開口縁部37aに設けられる凸部61は、略半球状に形成されるものに限られることはなく、例えば、三角柱状、四角柱状、多角柱状、円錐状等の適宜の形状を採用することができ、その設置個数も適宜設定することができる。さらに、「略半球状」には、半球状のみならず、楕円状(回転楕円状)、部分的に球面を有する形状等が含まれる。
【0042】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、これらをさらに種々変更して用いることも可能である。
例えば、溝51dは、前記実施形態で説明したように隙間Sを通じて走行風が入り込む範囲にわたる一条の溝として設けてもよいし、複数条からなる溝として設けてもよい。また、所定の長さを備えた複数個の溝を前記範囲に相互にオーバーラップするように設けてもよい。
【0043】
また、前記実施形態では、ハウジングカバー30の開口部37にウインカランプ50が露出するアウターミラーについて説明したが、これに限られることはなく、外観を構成するハウジング本体20やハウジングカバー30等の外観部材に設けられた開口部と、この開口部に沿って露出するように取り付けられる組付部品と、を含むアウターミラーにおいて、開口部の開口縁部と、組付部品の対向部との少なくともいずれか一方に、溝(凹部)51dおよび凸部37dの少なくともいずれか一方を設けたり、前記したディンプル60や凸部61を設けたりしてもよい。
【0044】
ここで、組付部品としては、アウターミラーに対して適用される部品を言い、例えば、アウターミラーに組み込まれて車体側方や車体側方の前方を映し出すカメラ装置や、アウターミラーに組み込まれて、乗車時や後車時に、アウターミラーの下方の路面における足元周りを照明するための照明装置等が挙げられ、また、一つの部材からなるものも含まれる。そして、これらの組付部品をアウターミラーに対して組み付けた場合にも、開口縁部と組付部品との間の隙間を通じてアウターミラー内に入り込んだ走行風は、溝(凹部)51dおよび凸部37dの少なくともいずれか一方によって、これらの間を通過する際に、気流が乱されて速度が低下する。これによって、該走行風が入り込んで隙間を通過することにより発生する笛吹き音が低減されるようになる。
しかも、笛吹き音の低減を図るために、従来のようなシール材を全く必要としないので、部品点数が削減されるとともに組み立て時の煩雑さがなく、慎重な組立作業を行う必要もない。したがって、生産性が高く、低コスト化を実現することができる。
【実施例】
【0045】
発明者らは前記した実施形態に関し、実際に笛吹き音が低減するかについて以下に示す方法で風洞実験を行った。すなわち、ウインカランプ50の肩部51cに幅1.5mm、深さ2mm、長さ100mm(走行風が入り込む範囲)からなる溝51dを形成し、ハウジングカバー30の開口縁部37aに同じく幅1.5mm、高さ2mm、長さ100mmからなる凸部37dを形成したアウターミラーと、このような溝51dや凸部37dが形成されていない点を除いて実施例のアウターミラーと同様に構成されたアウターミラーを比較例として、これらを同一車種の自動車のフロントサイドドアに装着して自動車走行中に発生する走行風を模した風を当てて風切り音を測定した。
【0046】
自動車の想定速度は時速60km、80km、100km、120kmとし、アウターミラー周辺で発生する風切り音を測定した。
【0047】
実施例の測定結果は、図10,図11に実線で示し、比較例の測定結果は図10,図11に破線で示す。図10(a)(b)、図11(a)(b)から明らかなように、時速60(図10(a))、時速80km(図10(b))、時速100km(図11(a))、時速120km(図11(b))のいずれにおいても、5〜10kHzの範囲の所謂「ピー」という感じの風切り音(笛吹き音)が発生していないことを確認した。特に、時速80km(図10(b))では、5〜10kHzの範囲の風切り音が1〜5dB程度低減し、笛吹き音の発生が顕著に低減していることを確認した。
【0048】
また、フロントサイドドアに対するアウターミラーの取付角度を変更して風切り音を測定する実験を行った。取付角度は、図12(a)に示すように、フロントサイドドアに対するアウターミラーの所定の取付角度から左右方向および上下方向に、それぞれ、以下の各表中に示すように、±5度、±10度、±15度変更したときの笛吹き音を測定した。なお、以下の表中における数値は、笛吹き音の発生の程度を示しており、数値「0」が笛吹き音が発生していない状態を表し、数値が次第に大きくなるにつれて、笛吹き音の発生が顕著となる状態を表している。ここで、数値「0」は笛吹き音が発生しないので「良好」な状態を示しており、数値「1」〜「2.5」未満は笛吹き音が若干発生するが、比較例よりも低減されて「可」である状態を示しており、また、数値「2.5」以上が笛吹き音が発生して比較例よりもあまり低減されず「不可」である状態を示している。
【0049】
この実験の測定結果は、図12(b)に示し、比較例の測定結果は図12(c)に示す。図12(b)から明らかなように、実施例では、いずれの角度に変更しても状態は良好であり、所謂「ピー」という感じの風切り音(笛吹き音)が発生していないことを確認した。一方、図12(c)から明らかなように、比較例では、所定の取付状態はもとより、角度を変更した状態のいずれの状態においても不可であった。
【0050】
ここで、変形例のアウターミラーにおける測定結果を以下に示す。図13(a)に示す測定結果は、ウインカランプ50の肩部51cにのみ溝51dを設けたものであり、開口縁部37aから凸部37dを削除したものである。図13(a)から明らかなように、いずれの角度に変更しても状態は良好であり、所謂「ピー」という甲高い風切り音(笛吹き音)が発生していないことを確認した。
【0051】
また、図13(b)に示す例では、ウインカランプ50の肩部51cに直径2mmの略半球状のディンプル60を、4mmピッチで千鳥状に配置(肩部51cに沿って交互に配置)したものである(図6参照)。図13(b)から明らかなように、右に15度角度を変更した状態を除いて、良好であった。
【0052】
図13(c)に示す測定結果は、ウインカランプ50の肩部51cに直径3mmの略半球状のディンプル60を肩部51cに沿って略連続して形成し、ハウジングカバー30の開口縁部37aにも直径3mmの半球状のディンプル60を開口縁部37aに沿って略連続して形成したものである(図8(a)(b)、図7(a)参照)。図13(c)から明らかなように、全般的に良好であった。
【0053】
また、図14に示す測定結果は、前記図9(a)(b)に示した凸部61をハウジングカバー30の開口縁部37aに設けたものである。図14から明らかなように、所定の取付角度を含む、左方向に角度変更したときの状態が良好であった。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施形態に係るアウターミラーを示す外観斜視図である。
【図2】同じくハウジング本体とハウジングカバーとを展開した展開斜視図である。
【図3】(a)はハウジングカバーを後面側から見た斜視図、(b)(c)はハウジングカバーに対するウインカランプの取り付けを説明するための断面図である。
【図4】(a)はウインカランプの斜視図、(b)は同じく平面図、(c)は図4(b)における矢印方向からの側面図である。
【図5】(a)は要部の拡大断面図、(b)はハウジングカバーに当る走行風の様子を示した模式図である。
【図6】(a)は変形例のウインカランプを示す平面図、(b)は同じく図6(a)における矢印方向からの側面図、(c)はディンプルを示す拡大図である。
【図7】(a)は変形例のハウジングカバーの内面を示す斜視図、(b)はディンプルを示す拡大図である。
【図8】(a)は変形例のウインカランプを示す断面図、(b)はディンプルの示す拡大図、(c)は変形例のウインカランプを示す断面図である。
【図9】(a)は変形例のハウジングカバーを示す要部の斜視図、(b)は同じく要部の断面図である。
【図10】(a)は時速60kmにおける音圧レベルの大きさを示す特性図、(b)は時速80kmにおける音圧レベルの大きさを示す特性図である。
【図11】(a)は時速100kmにおける音圧レベルの大きさを示す特性図、(b)は時速120kmにおける音圧レベルの大きさを示す特性図である。
【図12】(a)はミラーハウジングの取付角度の変更方向を示す説明図、(b)は風切り音の測定結果を示す表およびグラフ、(c)は比較例における風切り音の測定結果を示す表およびグラフである。
【図13】(a)〜(c)は変形例における風切り音の測定結果を示す表およびグラフである。
【図14】変形例における風切り音の測定結果を示す表およびグラフである。
【図15】従来技術の説明図である。
【符号の説明】
【0055】
10 ミラーベース
20 ハウジング本体
30 ハウジングカバー
37 開口部
37a 開口縁部
37d 凸部
40 ミラー
50 ウインカランプ
51 ランプ部
51b 湾曲横長部(湾曲横長面)
51c 肩部
51d 溝(凹部)
52 ランプカバー
52b 側部
52c 溶着溝
60 ディンプル
61 凸部
H1 前部
H2 側部
S 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後部に後方視認用のミラーが収容されるハウジング本体と、前記ハウジング本体の前部に取り付けられるハウジングカバーと、前記ハウジング本体と前記ハウジングカバーとの間に配置され、前記ハウジングカバーの前部から側部に亘って形成された湾曲横長孔状の開口部に沿って露出する湾曲横長面を有するウインカランプと、を含むアウターミラーであって、
前記ハウジングカバーの内側における前記開口部の開口縁部と、この開口縁部に対向する前記ウインカランプの対向部との少なくともいずれか一方に、凹部および凸部の少なくともいずれか一方を設けたことを特徴とするアウターミラー。
【請求項2】
前記凹部または凸部は、前記ハウジングカバーの前記開口縁部および前記ウインカランプの前記対向部のうち、少なくとも前記開口部と前記ウインカランプとの隙間を通じて走行風が入り込む範囲に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のアウターミラー。
【請求項3】
前記凹部は、前記ウインカランプに設けられており、前記ハウジングカバーの前記開口縁部に沿う溝であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアウターミラー。
【請求項4】
前記凸部は、前記ハウジングカバーに設けられており、前記溝に対応する突形状に形成されており、前記ハウジング本体に前記ハウジングカバーを取り付けた状態で前記溝に対向配置され、前記溝との間で屈曲状の空気通路を形成することを特徴とする請求項3に記載のアウターミラー。
【請求項5】
前記凹部は、前記ハウジングカバーおよび前記ウインカランプの少なくともいずれか一方に設けられており、前記開口縁部に沿って複数のディンプルを形成してなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアウターミラー。
【請求項6】
前記凸部は、前記ハウジングカバーおよび前記ウインカランプの少なくともいずれか一方に設けられており、前記開口縁部に沿って所定の間隔で複数配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアウターミラー。
【請求項7】
前記凹部または凸部は、半球状となるように形成されていることを特徴とする請求項5または請求項6に記載のアウターミラー。
【請求項8】
外観を構成する外観部材と、この外観部材に設けられた開口部と、この開口部に沿って露出するように取り付けられる組付部品と、を含むアウターミラーであって、
前記外観部材の内側における前記開口部の開口縁部、およびこの開口縁部に対向する前記組付部品の対向部の少なくともいずれか一方に、凹部および凸部の少なくともいずれか一方を設けたことを特徴とするアウターミラー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−308073(P2007−308073A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−140893(P2006−140893)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【出願人】(000148689)株式会社村上開明堂 (185)
【Fターム(参考)】