説明

アカシア属樹皮由来物を含有する腫瘍の予防及び/又は治療用組成物

【課題】 腫瘍の予防又は治療に有用な組成物を提供する。
【解決手段】 アカシア属樹皮由来物を含有することを特徴とする、腫瘍の予防及び/又は治療用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アカシア属(Acacia)に属する樹木に由来する、腫瘍の予防及び/又は治療用組成物、並びにこの組成物の食品、動物用飼料、及び医薬としての用途に関する。
【背景技術】
【0002】
わが国では第2次世界大戦後、公衆衛生の改善と抗生物質の発見等により、感染症による死亡が激減したが、代わって生活習慣病の他、特に癌の発生数は増加の一途を辿り、1981年には国民の死亡原因の第1位となったほどである。今日、癌で死亡する者は約3人に1人の割合である。また、癌はわが国だけでなく他の国々においても急速に増加しており、人類共通の敵というべき疾患である。
したがって、癌をはじめとする腫瘍の予防又は治療方法の開発は、重要かつ急務の課題といえる。
実際、薬剤として種々の抗癌剤が開発、使用されてきているが、重篤な副作用を伴うなどの問題も多い。
【0003】
アカシアは、アカシア蜂蜜やその樹皮から抽出されるタンニンが皮なめし剤や木材用接着剤として利用できることが知られており、また、最近はアカシア属の抽出物にCOX−2の選択的阻害効果(特許文献1)のあることやアカシア属の樹皮に活性酸素消去効果(特許文献2)やチロシナーゼ活性阻害効果による美白効果(特許文献3)のあることが開示されている。しかしながら、アカシア属の樹皮や樹皮由来のポリフェノールの抗腫瘍活性は確認されていなかった。
【特許文献1】特表2004−532811号公報
【特許文献2】特開2004−352639号公報
【特許文献3】特開平10−025238号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、安全性の高い、腫瘍の予防及び/又は治療に有用な組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、アカシア属樹皮由来物が、優れた抗腫瘍活性を有し、腫瘍の予防又は治療に有用であることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、アカシア属樹皮由来物を含有することを特徴とする、腫瘍の予防及び/又は治療用組成物に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の組成物は、抗腫瘍活性、特に優れた抗悪性腫瘍活性を有する。
また、本発明の組成物は、長期に服用しても副作用などの心配が少なく、安全性が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明で使用できるアカシア属樹皮由来物とは、アカシア属(Acacia)に属する樹木(以下、「アカシア」又は「アカシア属」という)の樹皮を原料として得られるものであれば特に制限されず、例えば、アカシア属の樹皮の細片、粉末及びこれらの懸濁液、アカシア属の樹皮の抽出液、濃縮抽出液、及びエキス粉末などの抽出物、並びにこの抽出物を精製して得た精製物が挙げられる。優れた抗腫瘍活性が得られる点で、アカシア属の樹皮の抽出物、特にアカシア樹皮ポリフェノールが好ましい。
本発明では、これらアカシア属樹皮由来物を1種のみ使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
【0008】
本発明で使用できるアカシアは、アカシア属に属する樹木であれば特に制限されないが、優れた抗腫瘍活性があるアカシア属樹皮由来物が得られる点で、学名:Acacia mearnsii De Wild.(一般名ブラックワトル)、学名:Acacia mangium Willd.(一般名アカシアマンギュウム)、学名:Acacia dealbata Link.、学名:Acacia decurrens Willd.、及び学名:Acacia pycnantha Benth.からなる群より選ばれるアカシア属の樹皮が好ましく、特にAcacia mearnsii De Wild.及びAcacia mangium Willd.が好ましい。
本発明では、これらアカシア属の樹皮を1種のみ使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
【0009】
上記アカシア属の樹皮は、通常、樹木として伐採したのち、樹皮だけを剥がして採取し乾燥することで得られるが、好ましくはさらに天日で乾燥させた樹皮である。
アカシア属の樹皮は、外皮とやや繊維質の内皮とからなり、含水率20%程度以下に乾燥するとハンマーミルなどの粉砕機で容易に微粉化する。本発明では、アカシア属の樹皮として、このアカシア属の内皮と外皮の両方を一緒に用いてもよいし、いずれか一方のみを用いてもよい。
【0010】
前記アカシア属の樹皮の細片は、慣用の方法に従って、アカシア属の樹皮を適当な大きさに粉砕して得ることができる。
また、前記アカシア属の樹皮の粉末は、アカシア属の樹皮を慣用の方法で粉砕し粉末化して得ることができるが、特に、粒径が100μm以下、特に50〜70μmである粉末が好ましい。粉末の分画は、含水率20%以下に乾燥した樹皮を適当な大きさ、例えば粒径1.6mm以下程度に粉砕し、得られた粉末を振動ふるい機などで分級して所要の粉末を得ることができる。
【0011】
上記アカシア属の樹皮の抽出物は、アカシア属の樹皮を慣用の方法に従って抽出して得ることができる。優れた抗腫瘍活性を有するアカシア属の樹皮の抽出物を得るために、アカシア属の樹皮をアルコールや極性溶媒で抽出することが好ましい。
このようなアルコールとしてエタノールなどが、極性溶媒として水などが使用でき、また必要に応じてそれら溶媒を単独又は2種以上を併用してもよい。特に、優れた抗腫瘍活性を得るために、水と、エチルアルコールなどのアルコールとの混合溶媒が好ましい。
さらに、同一又は異なる溶媒によって複数回抽出操作を行ってもよい。
優れた抗腫瘍活性を有する抽出物を得る上で、アカシア属の樹皮からの水又は熱水による抽出物をさらにエタノールで抽出して得た抽出物を使用してもよい。
【0012】
抽出は、アカシア属の樹皮の細片や粉末などに溶媒を加えて必要に応じて攪拌し抽出するが、温度や時間あるいは固液比については特に限定されない。溶媒に水を用いる場合には、熱水で抽出してもよい。得られた抽出液は、そのまま凍結乾燥又は噴霧乾燥してもよいし、あるいは減圧濃縮してから凍結乾燥又は噴霧乾燥してもよい。得られる抽出物は、抽出液、溶液、粉末、濃縮液、ペースト状物などの種々の形態とすることができ、広く必要に応じて使用できる。
さらに、これらの形態で得られた本発明のアカシア属の樹皮抽出物はそのまま腫瘍の予防又は治療に使用できるほか、さらに必要に応じて精製し、その精製物も抗腫瘍活性成分として使用することができる。
【0013】
本発明では、アカシア属樹皮由来物として、アカシア属の樹皮に含有されている成分も例示される。このような成分として、アカシア樹皮ポリフェノールなどが例示される。特に、アカシア樹皮ポリフェノールは優れた抗腫瘍活性を示すので好ましい成分である。
本発明のアカシア樹皮ポリフェノールとは、フラバン−3−オールを基本骨格とするフラバノール類の重合体である縮合型タンニンの一種を意味する。ここで、このような縮合型タンニンとして分子量500〜3000のものが好ましい。本発明で用いるアカシア樹皮ポリフェノールは、上記アカシア属の樹皮の粉末などを熱水抽出することにより得ることができる。
また、アカシア樹皮ポリフェノール製品としてはMIMOSA CentralCo-operative Ltd.製の登録商標MIMOSA ME POWDER、MIMOSA MS POWDER、MIMOSA GS POWDER、MIMOSA FS POWDER、MIMOSA WS POWDER、MIMOSA RG POWDER、MIMOSA RN POWDER、MIMOSA DK POWDER、MIMOSA AL POWDER、MIMOSA CR POWDER、GOLDEN MIMOSA POWDERなどが例示される。
【0014】
本発明の組成物は、アカシア属樹皮由来物、例えば、アカシア属の樹皮、その抽出物、その精製物、又はアカシア樹皮ポリフェノールそのものであってもよいが、他の抗腫瘍活性を有する物質、例えば、腫瘍の予防及び/又は治療に有用な物質などを含んでいてもよい。例えば、サメ軟膏、薬用人参、冬虫夏草、キチン、キトサン、アガリスク、マイタケ、メシマコブ、メカブ、モズク、及びホンダワラなどである。
【0015】
本発明の組成物は、アカシア属樹皮由来物、例えば、アカシア属の樹皮、その抽出物、その精製物、又はアカシア樹皮ポリフェノールそのものであってもよいが、本発明の効果を損なわない限り、賦形剤、甘味料、酸味料、増粘剤、香料、色素、乳化剤、及びその他に医薬品や食品で一般に利用されている添加剤や素材を含んでいてもよい。
【0016】
本発明の組成物で予防又は治療され得る腫瘍としては、例えば、良性腫瘍又は悪性腫瘍(がん)などが挙げられる。良性腫瘍として、色素性母斑、形成異常母斑、懸垂繊維腫、脂肪腫、リンパ管腫、脂漏性角化症、皮膚繊維腫、ケラトアカントーマ、ケロイドなどの軟部腫瘍、又は大腸ポリープ若しくは声帯ポリープなどのポリープが例示され、悪性腫瘍として、急性若しくは慢性の白血病、悪性リンパ腫、骨髄腫、又はマクログロブリン血症などの造血器由来の悪性腫瘍;脳腫瘍、頭頸部癌(例えば、喉頭癌、咽頭癌、舌癌など)、乳癌、肺癌、食道癌、胃癌、大腸癌、肝癌、胆嚢・胆管癌、膵癌、腎癌、副腎皮質癌、膀胱癌、前立腺癌、睾丸腫瘍、卵巣癌、子宮癌、絨毛癌、甲状腺癌、悪性カルチノイド腫瘍、皮膚癌、悪性黒色腫、骨肉腫、軟骨肉腫、軟部組織肉腫、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、線維肉腫、脂肪肉腫、又は血管肉腫などの固形腫瘍;あるいはそれらに由来・関連する癌が例示される。
本願発明の組成物は、特に、白血病、乳癌、胃癌、大腸癌、肝癌、腎癌、及び血管肉腫、とりわけ白血病及び乳癌の予防又は治療に有用である。
なお、本発明において、治療には、腫瘍を縮小したり、治癒したり、腫瘍の成長、転移、増悪を抑制したりすることなども含まれる。
【0017】
本発明に係る組成物の摂取量は、特に制限されないが、剤型、並びに使用者若しくは患者などの摂取者又は摂取動物の年齢、体重及び症状に応じて適宜選択することができる。例えば、有効成分量として1日あたり摂取者の体重1kgにつきアカシア樹皮ポリフェノール量で0.005〜1g、好ましくは0.005〜0.5g、より好ましくは0.005〜0.1gを経口摂取することが、良好な抗腫瘍活性が得られるので、望ましい。
摂取期間は、使用者又は患者の年齢、症状に応じて任意に定めることができる。
【0018】
本発明に係る組成物は、食品又は動物用飼料として、例えば、健康食品、機能性食品、健康補助食品、特定保健用食品、美容食品、又は栄養補助食品(サプリメント)として使用することができる。これら食品及び動物用飼料は、例えば、お茶及びジュースなどの飲料水;並びにアイスクリーム、ゼリー、あめ、チョコレート、及びチューインガムなどの形態であってもよい。また、液剤、粉剤、粒剤、カプセル剤、又は錠剤の形態であってもよい。ここで、動物用飼料には、ペット動物、畜産動物又は動物園などで飼育されている動物などを含む、腫瘍の予防又は治療を必要とする全ての動物が含まれる。
【0019】
また、本発明に係る組成物は、医薬品又は医薬部外品として使用することができる。これら医薬品又は医薬部外品は、例えば、散剤、錠剤、コーティング錠、糖衣錠、硬若しくは軟ゼラチンカプセル剤、液剤、乳濁剤、又は懸濁剤の形態で経口的に投与できるが、例えば坐剤の形態で直腸的に;例えば軟膏、クリーム剤、ゲル剤、又は液剤の形態で局部的又は経皮的に;例えば注射用液剤として非経口的に投与することもできる。好ましくは経口投与である。
【実施例】
【0020】
以下、製造例、試験例、配合例を挙げて本発明を更に詳しく具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。特に、ここでは本発明のアカシア属の樹皮を外皮と内皮とに分けないで実施例を示しているが、外皮を内皮から分離してそれぞれ使用することもできる。
以下の製造例、試験例等において、本発明の各アカシアをそれぞれの学名の後の括弧内に示した番号で示す。例えば、学名:Acacia mearnsii De Wild.のアカシアをアカシアNo.1と記す。
学名:Acacia mearnsii De Wild.(No.1)、学名:Acacia mangium Willd.(No.2)、学名:Acacia dealbata Link.(No.3)、学名:Acacia decurrens Willd.(No.4)、学名:Acacia pycnantha Benth.(No.5)。
【0021】
アカシア樹皮粉末の製造例1
アカシアNo.1の樹皮を含水率20%以下まで乾燥し、その乾燥樹皮をハンマーミル(Raymond社製)で1.6mm以下(10メッシュ篩(タイラー:Tyler)通過)の粉末に粉砕した後、更に振動ふるい機で分級し、63μm以下(250メッシュ篩下)の微粉末を得た。
同様にして、残り4種のアカシアNo.2〜5の樹皮を粉砕してそれぞれ63μm以下の微粉末を得た。種類によって250メッシュ篩通過の微粉末の収率に多少の差はあるが、目的とする微粉末が得られた。
【0022】
アカシア樹皮抽出物の製造例2
本発明の各アカシアNo.1〜5の樹皮をそれぞれ含水率20%以下まで乾燥し、その乾燥樹皮をハンマーミルで1.6mm以下の粉末に粉砕した後、この乾燥粉砕樹皮100gに対して5倍量の熱水を加え、沸騰してから15分間抽出し、10〜20μmのフィルターを用いて濾過した。得られた濾液をスプレードライヤで噴霧乾燥し、樹皮抽出物各40gを得た。
以下、各樹皮抽出物はアカシアNo.1〜5熱水抽出物と記す。
【0023】
アカシア樹皮抽出物の製造例3
本発明のアカシアの樹皮を含水率20%以下まで乾燥し、その乾燥樹皮をハンマーミルで1.6mm以下の粉末に粉砕した後、この乾燥粉砕樹皮100gに対して5倍量のエタノールを加え、沸騰させて還流させながら15分間抽出し、10〜20μmのフィルターを用いて濾過した。得られた濾液からエタノールを蒸発させた後、濃縮液をクローズドスプレードライヤで噴霧乾燥し、樹皮抽出物(以下、アカシアNo.1エタノール抽出物の如く記す)40gを得た。
アカシアNo.1〜5のエタノール抽出物を得た。
【0024】
アカシア樹皮抽出物の製造例4
製造例2で得られたアカシア熱水抽出物10gに3倍量のエタノールを加え、沸騰させて還流させながら15分間抽出し、10〜20μmのフィルターを用いて濾過した。得られた濾液からエタノールを蒸発させて、それに水を加えてから凍結乾燥させて9gの抽出物(以下、アカシアNo.1熱水抽出物エタノール画分の如く記す)を得た。
アカシアNo.1〜5の熱水抽出物エタノール画分を得た。
【0025】
試験例1 腫瘍細胞の試験管内培養における増殖抑制効果
(1)試験試料の調製
製造例2に記載のアカシアNo.1熱水抽出物200mgに2mlの蒸留水を加え、100℃にて10分間抽出した。その抽出液をろ過(ミリポアフィルター、穴径0.45μm)し、ろ液を10%FCS-RPMI1640で10倍及び100倍に希釈し、それぞれアカシアNo.1熱水抽出物の濃度が10mg/ml及び1mg/mlである試験試料を調製した(濃度は、原材料相当分で示している)。
また、有効対照としてマイトマイシンC(協和発酵(株))2mgアンプルに蒸留水1mlを加え、これを10%FCS-RPMI1640で希釈し、50μg/ml溶液としたものを使用した。
【0026】
(2)材料と方法
腫瘍細胞:マウス白血病細胞YAC−1(理化学研究所細胞バンクより供与)を継代培養し、継代培養4日目のものを10%FCS-RPMI1640で1×106細胞/mlに調製した。
培養試験:上記のYAC−1細胞(1×106細胞/ml)950μlを24穴プレートの各ウエルに注入し、上記で調製した試験試料を50μl加え、攪拌し、37℃下で3日間培養した(注:各試験試料の濃度は、ここで1/20となる)。培養後、細胞数及び生存率を測定し、生存細胞数を求めた。
【0027】
(3)結果
アカシアNo.1熱水抽出物の試験試料を添加すると、YAC−1細胞の増殖は抑制され、特に0.5mg/mlの濃度で、5.0mg/mlの濃度やマイトマイシンC(濃度2.5μg/ml)よりも大きなYAC−1細胞増殖抑制作用を示した(図1)。
【0028】
試験例2 マウスでの腫瘍増殖阻止試験
(1)試験飲料及び試験飼料の調製
(i)試験飲料の調製
茶漉しを用いて製造例2に記載のアカシアNo.1熱水抽出物を少量ずつ60℃の水道水に加え、スパーテルで分散させてから、加熱攪拌機Ceramag(IKARHベーシック、有限会社IKAジャパン製)を用いて10分間攪拌し、アカシアNo.1熱水抽出物を、それぞれ7.8mg/ml、15.6mg/ml及び31.3mg/ml含有する、試験飲料1、試験飲料2及び試験飲料3を調製した。
(ii)試験飼料の調製
製造例2に記載のアカシアNo.1熱水抽出物をマウス用飼料((株)クレアCE−2粉餌)に加え混合し、アカシアNo.1熱水抽出物を、それぞれ15.6mg/g及び31.3mg/g含有する、試験飼料2及び試験飼料3を調製した。
【0029】
(2)試験動物
マウスは、C3H/HeNマウスの雌(日本チャールスリバー社、神奈川)を6週齢で購入し、一週間予備飼育後、表1に示したとおりに、対照1群、試験1群、試験2群、試験3群、及び陽性対照群に群分けした。
【0030】
【表1】

【0031】
(3)試験スケジュール
試験は図2に示したタイムスケジュールに従った。
先ず、上記のとおり群分けしたマウスに、Abe S et a1. Gann 73 91-96(1982)及びOhasi K et a1. Yakugaku Zasshi 113 396-399(1993)に記載の方法に従い、同系腫瘍MM46乳癌細胞2×106個をそけい部皮下に移植した。
腫瘍を移植したその日から、これら腫瘍移植マウスに飲料水及び対照飼料〔マウス用飼料((株)クレアCE−2粉餌)〕を与えた。すなわち、対照1群には飲料水として水道水を摂取させ、試験1群〜試験3群には飲料水としてそれぞれ試験飲料1〜3を摂取させた。また、陽性対照群には飲料水として水道水を摂取させ、かつ、腫瘍移植後7日目、11日目及び14日目にレンチナン((株)味の素製)を6.25mg/kg腹腔内投与した。
試験2群及び試験3群については、摂水量が0.2ml/日と、他の群の摂水量4〜6ml/日と比較して著しく少なく体重減少も著しかった。
そのため、腫瘍移植7日目に試験飲料2及び3を水道水に換えた。また、試験2群のマウスを5匹ずつ対照2群及び試験2a群に、試験3群のマウスを5匹ずつ対照3群及び試験3a群に、それぞれ群分けした。対照2群及び対照3群には引き続き対照飼料を給餌した。試験2a群及び試験3a群には対照飼料の代わりにそれぞれ試験飼料2及び3を給餌した。
(4)観察
マウスそけい部皮下に移植した腫瘍の増殖を3日ないし4日おきに4週間まで触知により観察し、また腫瘍直径も測定した。その他、生存日数及び体重も測定した。試験終了時にマウスを屠殺し、腫瘍を取りだし、その湿重量を測定した。
【0032】
(5)結果
(i)体重
上述のとおり、試験2群及び試験3群では移植後4日目までに急激な体重の減少を示したが、その後試験飲料を水道水に換えるなどした結果、体重は回復し、移植後10日目では対照群との差はほとんど認められなくなった。
(ii)腫瘍増殖
表2に移植後14日目及び28日目の各群の腫瘍直径を平均値±標準偏差で示した。試験1群及び試験3a群で腫瘍直径の抑制が認められた。
図3に各群の移植後28日目の平均腫瘍重量を示した。試験1群及び試験3a群で腫瘍重量の抑制が認められた。
なお、統計学的検定は、Student'sのt検定を用いた。
【0033】
【表2】

【0034】
(6)考察
以上から、アカシア樹皮が、白血病細胞や乳癌の増殖を抑制することが分かり、抗腫瘍活性を有することが認められた。
試験1群及び3a群では、移植後14日目より腫瘍の抑制がみられ、アカシア樹皮の抗腫瘍作用は早期に現れることが認められた。
試験2群及び試験3群で、摂水量の減少が認められたが、これはアカシア樹皮を高濃度に含有する試験飲料の強い苦味によるものと考えられ、試験飲料を水道水に切り換え、試験飼料を代わりに給餌したところ体重の回復が認められたので、この体重減少はアカシア樹皮の毒性によるものではないと考えられた。
【0035】
試験例3 急性毒性試験(経口投与)
OECD(Guidelines for the Testing of Chemicals 401, 1987)に準拠し、マウスを用いた経口急性毒性試験を実施した。
ICR系雌雄マウスについて、雄では7,000mg/kg、雌では6,500mg/kgを上限として、公差500mg/kgで各9用量の検体(上記製造例2のアカシアNo.1熱水抽出物)を雌雄マウスに単回経口投与した。検体は、本発明品を純水に懸濁して用いた。その結果、LD50値は雄では4,468mg/kg、雌では3,594mg/kgであり、いずれも3,000mg/kgの投与量で、死亡例を認めなかった。
上記試験を製造例2のアカシアNo.2〜5熱水抽出物について行って同様の結果を得た。これにより、本発明の組成物は、安全性に優れていることがわかった。
【0036】
試験例4 突然変異誘起性試験
労働省告示第77号(昭和63年9月1日)に準拠し、突然変異誘起性試験を実施した。
Escherichia coli WP2 uvrA株及びSalmonella typhimurium TA株系4菌株を用いて代謝活性化を含む復帰突然変異試験を156〜5,000μg/プレートの用量の検体(製造例2のアカシアNo.1〜5熱水抽出物)で行った。その結果、いずれの菌株についても復帰変異コロニー数の増加が見られなかったことから、製造例2のアカシアNo.1〜5熱水抽出物の突然変異誘起性は陰性であると結論づけられ、安全性に優れていることがわかった。
【0037】
配合例1 内服剤の調製
製造例4のアカシア樹皮熱水抽出物エタノール画分を用い、下記に示す組成にて内服剤を調製した。
製造例4の抽出物画分 1.0(重量%)
乳糖 30.0
コーンスターチ 60.0
結晶セルロース 8.0
ポリビニールピロリドン 1.0
計 100.0
【0038】
配合例2 ペットフードの調製
製造例2のアカシア樹皮熱水抽出物を用い、下記に示す組成にてペットフードを調製した。
製造例2の抽出物 1.0(重量%)
オートミール 88.0
でんぷん 5.0
食塩 2.5
全卵 3.0
調味料 0.5
計 100.0
【0039】
配合例3 錠剤(菓子)の調製
製造例4のアカシア樹皮熱水抽出物エタノール画分を用い、下記に示す組成にて錠剤(菓子)を調製した。
製造例4の抽出物画分 1.0(重量%)
クエン酸 1.0
脱脂粉乳 15.0
ショ糖エステル 1.0
フレーバー 0.5
粉糖 20.0
乳糖 61.5
計 100.0
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によれば、腫瘍の予防及び/又は治療用の組成物を得ることができる。
より詳細には、本発明の組成物は、各種良性腫瘍又は悪性腫瘍の予防及び/又は治療に有用である。
これら組成物は、医薬品、あるいは健康食品、健康補助食品、特定保健用食品、若しくは栄養補助食品などの食品又は動物用飼料に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】YAC−1細胞の生存細胞数の変化を示した図である。
【図2】マウスでの腫瘍増殖阻止試験のタイムスケジュールを示した図である。
【図3】マウスの腫瘍重量を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アカシア属樹皮由来物を含有することを特徴とする、腫瘍の予防及び/又は治療用組成物。
【請求項2】
アカシア属樹皮由来物がアカシア属の樹皮の抽出物である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
アカシア属樹皮由来物がアカシア樹皮ポリフェノールである、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
食品である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
医薬品である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
動物用飼料である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−306801(P2006−306801A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−132745(P2005−132745)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000145437)株式会社ウッドワン (70)
【Fターム(参考)】