説明

アキシャルギャップ型電動機

【課題】簡単な構造でロータバックヨークの共振による振動を抑えるとともに、ロータバックヨークの抜け落ちを防ぐことができるアキシャルギャップ型電動機を提供する。
【解決手段】ステータ10の両側に所定の空隙をもって対向的に配置される一対のロータ20、30を備えた電動機であって、ロータ20は、シャフト40に圧入される円盤状のロータ保持部材21と、ロータ保持部材21の外周部211に圧入される孔221を有する円環状のロータバックヨーク22とを備え、ロータ保持部材21の外周部211には、孔221の内周縁部222を受けるツバ部212が延在し、ロータ30は、ロータ保持部材31とロータバックヨーク32とを備え、ロータ20と同じ構造になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アキシャルギャップ型電動機に関し、特に、ロータバックヨークの共振による振動を抑えることができるアキシャルギャップ型電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ステータとロータがロータの軸線方向に所定の空隙をもって対向的に配置されたアキシャルギャップ型電動機が知られている。この種の電動機におけるロータは、例えば、シャフトに一体化された円盤状のフランジと、ダイキャスト合金で形成されたロータフレームを介してフランジに取付けられた円盤状のロータバックヨークとを備えたロータがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このロータは、ロータバックヨークの径方向の長さが短くなっているため、ロータバックヨークがシャフトまで伸びた構造に比べて、ロータバックヨークの固有振動数が高くなり、実使用回転数での共振の発生を回避でき、結果として、ロータバックヨークの共振による振動を抑えることが可能になっている。
【0004】
しかしながら、上述のロータは、フランジとロータバックヨークとをダイキャスト合金で結合するため、金型が必要であり、コストがかかるという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−148315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記問題点に鑑み、簡単な構造でロータバックヨークの共振による振動を抑えるとともに、ロータバックヨークの抜け落ちを防ぐことができるアキシャルギャップ型電動機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明のアキシャルギャップ型電動機は、ステータとロータがロータの軸線方向に所定の空隙をもって対向的に配置され、ロータは、シャフトと、シャフトの外径側に形成される円盤状のロータ保持部材と、ロータ保持部材の外周部に圧入される孔が形成されている円環状のロータバックヨークとを備え、ロータ保持部材のステータ対向面側の外周部には、ロータバックヨークの孔の内周縁部を受けるツバ部が外径方向に延在している。
【発明の効果】
【0008】
本発明のアキシャルギャップ型電動機によれば、ロータは、シャフトの外径側に形成されるロータ保持部材にロータバックヨークを圧入するだけの簡単な構造でロータバックヨークの固有振動数を高くすることができ、ロータバックヨークの共振による振動を抑えることができる。
【0009】
また、本発明のアキシャルギャップ型電動機によれば、ロータは、ロータ保持部材のステータ対向面側の外周部にロータバックヨークの孔の内周縁部を受けるツバ部が延在しているため、ステータコアからの磁気吸引力の影響を受けて、ロータバックヨークがロータ保持部材から抜け落ちるのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明によるアキシャルギャップ型電動機を示す断面図である。
【図2】本発明によるアキシャルギャップ型電動機のロータを示す部分断面図である。
【図3】本発明によるアキシャルギャップ型電動機のその他のロータを示す部分断面図である。
【図4】本発明によるアキシャルギャップ型電動機のその他のロータを示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。図1および図2に示すように、本実施形態におけるアキシャルギャップ型電動機は、環状のステータ10と、ステータ10の両側に所定の空隙をもって対向的に配置される円盤状の一対のロータ20、30とを備えている。ロータ20、30はシャフト40を共有しており、ステータ10は、シャフト40を固定する一対のベアリング50、60を内周側に備えている。
【0012】
このアキシャルギャップ型電動機は、シャフト40を中心に、ブラケット蓋80、回路基板70、ロータ20、ステータ10、ロータ30、ブラケット蓋90が順次配置されている。ステータ10は、ステータコア13のティース部131、132を残して覆ったインシュレータ14に巻線15を巻回した9個のコアメンバー12を環状に連結した状態で、モールド樹脂16で一体的に形成されている。
【0013】
ステータ10には、シャフト40が挿入されるシャフト挿入孔161と、シャフト挿入孔161に連続的に形成され、ベアリング50、60がそれぞれ収容される一対のベアリング収容穴162と、回路基板70が配置される基板配置段部163と、ブラケット蓋80、90がそれぞれ嵌合される一対の蓋嵌合段部164とがモールド樹脂16で一体的に形成されている。
【0014】
ベアリング50、60と、ロータ20、30との間には、環状に形成された一対のスペーサ51、61が設けられる。スペーサ51、61はそれぞれ、ベアリング50、60の内輪と、後述するロータ保持部材21、31に当接するように配置されて、ベアリング50、60と、ロータ保持部材21、31との間に隙間を確保している。この隙間により、ロータ保持部材21、31がステータ10に接触しないようにしている。回路基板70は、シャフト40が挿入される孔71を有する円盤状に形成され、回路基板70上には、アキシャルギャップ型電動機を駆動制御する電動機駆動部が搭載されている。回路基板70の外周部には、巻線15に接続される端子ピン143を半田付けしており、巻線15が端子ピン143により回路基板70の電動機駆動部に接続されている。ブラケット蓋80、90はそれぞれ、鋼板をプレスして円盤状に形成されている。
【0015】
次に、コアメンバー12のステータコア13およびインシュレータ14について詳細に説明する。ステータコア13は、ロータ20に対向するティース部131と、ロータ30に対向するティース部132と、ティース部131とティース部132の間を一体的に連結する巻胴部133とを備えている。ティース部131とティース部132と巻胴部133とは、H字状に打ち抜かれた電磁鋼板を、ステータ10の半径方向に積層することで形成されている。これにより、ステータコア13は、巻胴部133の両端にフランジ状のティース部131とティース部132とを有するボビン状になっている。
【0016】
インシュレータ14は、巻胴部133の外周面を覆う外筒部141と、外筒部141の端部から半径方向に連続的に形成されたフランジ部142とを備えている。これにより、インシュレータ14は、ステータコア13と同様に、外筒部141の両端にフランジ部142を有するボビン状になっている。なお、インシュレータ14のティース部131側のフランジ部142の外周部には、端子ピン143が立設されている。
【0017】
以上説明してきた9個のコアメンバー12は、3個のコアメンバー12がU相、V相、W相の各相の巻線15で接続されたU相用コアメンバー組、V相用コアメンバー組、W相用コアメンバー組となって三相のアキシャルギャップ型電動機を構成している。
【0018】
次に、ロータ20について詳細に説明する。ちなみに、ロータ30はロータ保持部材31とロータバックヨーク32とロータマグネット33とを備え、ステータ10を挟んでロータ20と対向するように配置されており、その構造はロータ20と同じであるため、その説明を省略する。ロータ20は、ロータ保持部材21とロータバックヨーク22とロータマグネット23とセンサマグネット24とを備えている。ロータ保持部材21は、鋼板を切削加工することにより、中心にシャフト40に圧入される孔213を有する円盤状に形成されている。ロータ保持部材21のステータ対向面側の外周部211には、後述するロータバックヨーク22の内周縁部222を受けるツバ部212が形成され、ツバ部212はロータ保持部材21の外径方向に延在するように形成されている。
【0019】
ロータバックヨーク22は、鋼板を図示しない円筒状のパンチで打ち抜くことにより、ロータ保持部材21に圧入される孔221を有する円環状に形成される。ロータバックヨーク22の孔221の内周縁部222は、ロータ保持部材21のツバ部212に当接しており、ロータバックヨーク22がステータ側に位置ズレしたり抜け落ちたりしないようになっている。ロータバックヨーク22のステータ対向面側には、8個のロータマグネット23が環状に配置され、ロータバックヨーク22の回路基板対向面側には、8個のセンサマグネット24が環状に配置されている。センサマグネット24は、回路基板70に搭載される図示を省略した位置検出素子で回転位置を検出するために配置されている。
【0020】
以上説明してきた本発明のアキシャルギャップ型電動機によれば、ロータ20は、シャフト40に圧入される円盤状のロータ保持部材21と、ロータ保持部材21の外周部211に圧入される孔221が形成されている円環状のロータバックヨーク22とを備え、ロータ保持部材21のステータ対向面側の外周部211には、ロータバックヨーク22の孔221の内周縁部222を受けるツバ部212が外径方向に延在している構造になっている。
【0021】
したがって、ロータ20は、シャフト40に圧入されるロータ保持部材21にロータバックヨーク22を圧入するだけの簡単な構造でロータバックヨーク22の固有振動数を高くすることができ、ロータバックヨーク22の共振による振動を抑えることができる。
【0022】
また、ロータ20は、ロータ保持部材21のステータ対向面側の外周部211にロータバックヨーク22の孔221の内周縁部222を受けるツバ部212が延在しているため、ステータコア13からの磁気吸引力の影響を受けて、ロータバックヨーク22がロータ保持部材21から抜け落ちるのを防ぐことができる。なお、ロータ30はロータ20と同じ構造であるため、ロータバックヨーク32についても同様な効果を得ることができる。
【0023】
次に、ロータ20、30のその他の実施形態について図3を用いて説明する。なお、図1に示す実施形態と共通する構成は説明を省略する。また、ロータ30はロータ20と同じ構造であるため、その説明を省略する。ロータ20に備えたロータ保持部材21は、ステータ対向面側の内周部214に、スペーサ51の替わりにスペーサ部215が一体的に形成されている。また、ロータ保持部材31についても同様である。この結果、アキシャルエアギャップ型電動機として部品点数を少なくした上で、ベアリング50、60とロータ保持部材21、31との間に隙間を確保することができる。
【0024】
次に、ロータ20、30のその他の実施形態について図4を用いて説明する。なお、図1に示す実施形態と共通する構成は説明を省略する。また、ロータ30はロータ20と同じ構造であるため、その説明を省略する。ロータ20に備えたロータ保持部材21’は、ロータ保持部材21のように鋼板を切削加工して形成する替わりに、鋼板をプレス加工して形成してもよい。この場合、円板状の鋼板を図示しないプレス加工機でプレス加工することにより、外周部211’、ツバ部212’、孔213’および内周部214’が形成される。また、ロータ保持部材31についても同様である。この結果、図1に示す実施形態と同様な効果を得ることができるとともに、切削加工の場合と比べて歩留りが改善される。
【0025】
なお、本発明のアキシャルギャップ型電動機では、ステータ10の両側に所定の空隙をもって対向的に配置される一対のロータ20、30を備えるようにしたが、本発明はこれに限らず、ロータを1つのみ備えたアキシャルエアギャップ型電動機にも適用できる。また、本発明のアキシャルギャップ型電動機では、シャフト40の外径側にロータ保持部材21、31を圧入するようにしたが、本発明はこれに限らず、鋼鉄を切削加工してシャフト40の外径側にロータ保持部材21、31を一体的に形成してもよい。
【符号の説明】
【0026】
10 ステータ
12 コアメンバー
13 ステータコア
131 ティース部
132 ティース部
133 巻胴部
14 インシュレータ
141 外筒部
142 フランジ部
143 端子ピン
15 巻線
16 モールド樹脂
161 シャフト挿入孔
162 ベアリング収容穴
163 基板配置段部
164 蓋嵌合段部
20 ロータ
21 ロータ保持部材
21’ ロータ保持部材
211 外周部
211’ 外周部
212 ツバ部
212’ ツバ部
213 孔
213’ 孔
214 内周部
214’ 内周部
215 スペーサ部
22 ロータバックヨーク
221 孔
222 内周縁部
23 ロータマグネット
24 センサマグネット
30 ロータ
31 ロータ保持部材
32 ロータバックヨーク
33 ロータマグネット
40 シャフト
50 ベアリング
51 スペーサ
60 ベアリング
61 スペーサ
70 回路基板
71 孔
80 ブラケット蓋
90 ブラケット蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータとロータとが同ロータの軸線方向に所定の空隙をもって対向的に配置されたアキシャルギャップ型電動機であって、
前記ロータは、シャフトと、同シャフトの外径側に形成される円盤状のロータ保持部材と、前記ロータ保持部材の外周部に圧入される孔が形成されている円環状のロータバックヨークとを備え、
前記ロータ保持部材のステータ対向面側の外周部には、前記ロータバックヨークの孔の内周縁部を受けるツバ部が外径方向に延在していることを特徴とするアキシャルギャップ型電動機。
【請求項2】
前記ロータ保持部材のステータ対向面側の内周部には、前記シャフトを固定するベアリングの内輪に当接するスペーサ部が一体的に形成されていることを特徴とする請求項1記載のアキシャルギャップ型電動機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−182862(P2012−182862A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42128(P2011−42128)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)
【Fターム(参考)】