説明

アクセルペダル固定用ブラケットの取付構造

【課題】車種変更が生じても共通のアクセルペダル固定用ブラケットを使用可能とする。
【解決手段】車室の前壁を構成するダッシュパネル102と、ダッシュパネルに取り付けられアクセルペダルを固定するアクセルペダル固定用ブラケット100とを備える、アクセルペダル固定用ブラケットの取付構造において、ブラケット100は、アクセルペダルを固定する天面112と、天面を支持する側面と、それら側面からそれぞれダッシュパネルに沿って延びる第1フランジ120A、120Bとを含み、ダッシュパネル102は、第1フランジ120A、120Bが同時に摺動可能な複数の座面130A、130B、130Cを含み、複数の座面はそれぞれ、アクセルペダルのレイアウトの違いに応じてブラケット100が移動すべき所定の距離L2にわたって摺動可能な面積を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のアクセルペダルを固定するアクセルペダル固定用ブラケットの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のアクセルペダルは、車室の前壁を構成するダッシュパネルに取り付けられたアクセルペダル固定用ブラケットに固定される。例えば特許文献1によれば、アクセルペダル固定用ブラケットに相当するモジュールプレートが、ダッシュパネルに対するアクセルペダルのレイアウトを決定している。
【0003】
特許文献1では、ダッシュパネル部材に対するペダル部材のレイアウト、つまりモジュールプレートの取付位置を車種に対応させて容易に変化させるとしている。これを実現するため、ペダル部材の取付位置に応じて複数の別々のモジュールプレートを選択的にダッシュパネル本体に取り付けるとしている。
【0004】
このようにペダル部材のレイアウトが変更されるたびに新たな別のブラケット(特許文献1にいうモジュールプレート)を必要とする。これは、ブラケットと一体化されたブラケット固定用のフランジが取り付けられる座面であるダッシュパネルに凹凸があるからである。すなわちブラケットの取付位置が変われば座面の形状も変わり、そのたびにブラケットを溶接するためのフランジをずらした別のブラケットに変更しないと、溶接ができないためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−82585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
車種に対応してアクセルペダルのレイアウトが変更されるのはやむを得ない。しかしながら、それに伴ってアクセルペダル固定用ブラケットの取付位置が変更されるたびに、新たな別のブラケットを設計・製造する必要が生じることは、労力、コストの面で負担が大きい。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑み、車種変更によって取付位置が変化しても共通のアクセルペダル固定用ブラケットを使用可能な、アクセルペダル固定用ブラケットの取付構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の代表的な構成は、車室の前壁を構成するダッシュパネルと、ダッシュパネルに取り付けられアクセルペダルを固定するアクセルペダル固定用ブラケットとを備える、アクセルペダル固定用ブラケットの取付構造において、アクセルペダル固定用ブラケットは、アクセルペダルを固定する天面と、天面を支持する複数の側面と、複数の側面からそれぞれダッシュパネルに沿って延びる複数の第1フランジとを含み、ダッシュパネルは、複数の第1フランジが同時に摺動可能な複数の座面を含み、複数の座面はそれぞれ、少なくとも、アクセルペダルのレイアウトの違いに応じてアクセルペダル固定用ブラケットが移動すべき所定の距離にわたって複数の第1フランジが摺動可能な面積を有することを特徴とする。
【0009】
上記の構成によれば、アクセルペダル固定用ブラケットは、その複数の第1フランジすべてをダッシュパネルの複数の座面にそれぞれ当接させた状態で摺動させることが可能である。また、座面が上記のような十分に大きな面積を有するため、アクセルペダル固定用ブラケットを摺動させてその取付位置が変化しても、第1フランジの各々を座面の各々に溶接可能である。
【0010】
このように、座面の範囲内でアクセルペダル固定用ブラケットを摺動させることで、車種の違いによるアクセルペダルのレイアウトの違いに対応した取付位置に、アクセルペダル固定用ブラケットを取付可能である。言い換えれば、車種が異なっても共通のアクセルペダル固定用ブラケットを使用可能であり、新たなアクセルペダル固定用ブラケットを設計・製造する必要がない。したがって、部品点数の増大を生じず、労力、コストの面で有利である。
【0011】
上記アクセルペダル固定用ブラケットは、その天面に、摺動の方向の上記の距離に所定の溶接ガン用クリアランスを加えた面積を少なくとも有する長穴を有し、長穴は、摺動によるアクセルペダル固定用ブラケットの位置の変化に拘らず、ダッシュパネルの前側を補強するエプロンサイドメンバの後端に設けられダッシュパネルに溶接される第2フランジと重なるとよい。
【0012】
上記の構成によれば、車種変更によってアクセルペダル固定用ブラケットの取付位置が変化しても、長穴を通して溶接ガンを挿入することにより、第2フランジすなわちエプロンサイドメンバとダッシュパネルとを無理なく溶接可能である。これは上記のように、アクセルペダル固定用ブラケットの天面に設ける溶接ガン挿入用の孔を予め長穴にしてあるからである。したがって、車種変更による取付位置の変化にも拘らず、同一のアクセルペダル固定用ブラケットを使用可能である。この点でも、新たなアクセルペダル固定用ブラケットの設計・製造は必要なく、部品点数は増加しない。
【0013】
上記アクセルペダル固定用ブラケットは摺動によって、ダッシュパネルの前側を補強するエプロンサイドメンバの後端に設けられダッシュパネルに溶接される第2フランジに複数の第1フランジの1つが重なる位置と、第2フランジに上記の複数の第1フランジの1つが重ならない位置とに移動可能であるとよい。
【0014】
上記の構成によれば、摺動可能なアクセルペダル固定用ブラケットが、第2フランジに複数の第1フランジの1つが重なる位置にあるときは、ブラケット(第1フランジ)、ダッシュパネル、エプロンサイドメンバ(第2フランジ)の3枚を共打ち溶接可能である。アクセルペダル固定用ブラケットが、第2フランジに上記の複数の第1フランジの1つが重ならない位置にあるときは、ブラケット(第1フランジ)・ダッシュパネルの溶接打点と、ダッシュパネル・エプロンサイドメンバ(第2フランジ)の溶接打点とが、別々に必要とされる。後者の場合に比較すると、前者の場合は溶接打点を減少させることが可能である。
【0015】
上記複数の座面および複数の第1フランジは、鉛直方向に延びているとよい。アクセルペダル固定用ブラケットを摺動させる方向が鉛直方向となる。かかる構成によれば、傾斜面上で位置決めするよりもアクセルペダル固定用ブラケットが安定するため、位置精度が出し易くなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、車種変更によって取付位置が変化しても共通のアクセルペダル固定用ブラケットを使用可能な、アクセルペダル固定用ブラケットの取付構造を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態である電子式アクセルペダル固定用ブラケットが設置された車両用のダッシュパネルの斜視図である。
【図2】図1のブラケットの拡大斜視図である。
【図3】図2のブラケットを車室内側から見た正面図である。
【図4】図3のブラケットを摺動させた場合の状態を示す図である。
【図5】図3のダッシュパネルを図示の便宜上除去した状態を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態であるケーブル式アクセルペダル固定用ブラケットの斜視図である。
【図7】図6のブラケットを摺動させた場合の状態を示す正面図である。
【図8】図6のブラケットを車室内側から見た正面図であり、図6のダッシュパネルを図示の便宜上除去した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0019】
(第1の実施形態:電子式アクセルペダル固定用ブラケット)
図1は、本発明の第1の実施形態である電子式アクセルペダル固定用ブラケット100(以下ブラケット100またはアクセルペダル固定用ブラケット100と略称することもある)が設置された車両用のダッシュパネル102の斜視図である。図1ではダッシュパネル102を車室内側から車両前方に向かって見ている。ダッシュパネル102は、車両の床を構成するフロアパネル104の前端から上方へ延びていて、車室の前壁を構成している。ダッシュパネル102の両側にはダッシュサイドパネル106A、106Bが取り付けられている。本実施形態にかかるブラケット100は、右ハンドルの運転席に対応してダッシュパネル102の右側に取り付けられている。
【0020】
図2は図1のブラケット100の拡大斜視図である。ブラケット100は、天面112と、天面112を支持する複数の側面(図2では側面114A、114Bのみを示す)とを有する台座状の形状を有する。ブラケット100の天面112にはスタッドボルト110A、110Bが設けられていて、これらによって電子式アクセルペダルは天面112に固定される。なおブラケット100に固定される電子式アクセルペダル自体は本発明とは直接関係がないので、その図示は省略する。
【0021】
図3は図2のブラケット100を車室内側から見た正面図である。側面114A、114Bを含む複数の側面からは、それぞれ第1フランジ120A、120B、120Cがダッシュパネル102に沿って延びている。ただしより厳密に言えば、3つの第1フランジ120A、120B、120Cのうち2つの第1フランジ120B、120Cは、ブラケットリンフォース108上に延びている。ブラケットリンフォース108はダッシュパネル102の形状に対応した形状を有し、ダッシュパネル102に溶接されていて、ブラケット100を補強する部材である。ブラケットリンフォース108は必ずしも必要な部材ではない。
【0022】
ダッシュパネル102は複数の座面130A、130B、130Cを含み、これらに対して第1フランジ120A、120B、120Cがそれぞれスポット溶接されている。なお図3では座面130B、130Cは厳密に言えばブラケットリンフォース108に隠れて見えないが、図示の便宜上、ブラケットリンフォース108上の領域を座面130B、130Cとして指示している。ブラケットリンフォース108はダッシュパネル102に沿った形状を有し、実質的にダッシュパネル102と同様の座面を有しているからである。
【0023】
座面130A、130B、130Cは、共通の架空の平面(本実施形態では、図3の紙面に平行な上下方向の法線132を有する平面134)に対して垂直な、互いに平行な複数の平面であればよく、必ずしも同一平面上にある必要はない。座面130A、130B、130C同士がかかる関係にあるため、ブラケット100の第1フランジ120A、120B、120Cは、スポット溶接される前であれば、法線132方向に同時に摺動可能である。
【0024】
ただし本実施形態では、座面130A、130B、130Cおよび第1フランジ120A、120B、120Cはすべて平行であるだけでなく、鉛直方向に延びている。つまりアクセルペダル固定用ブラケット100を摺動させる方向(法線132)が鉛直方向となっている。かかる構成によれば、傾斜面上で位置決めするよりもアクセルペダル固定用ブラケット100が安定し、位置精度が出し易くなるからである。
【0025】
以下、座面130A、130B、130Cの特徴について、座面130Cを代表として説明する。座面130Cは、少なくとも、所定の距離L2にわたって第1フランジ120Cが法線132方向に摺動可能な面積を有する。距離L2は、アクセルペダルのレイアウトの違いに応じてブラケット100が移動すべき移動距離である。すなわち距離L2にわたってブラケット100が摺動する間、座面130Cに凹凸はない。これは他の座面130A、130Bについても同様である。
【0026】
上記の構成によれば、ブラケット100は、その複数の第1フランジ120A、120B、120Cすべてをダッシュパネル102の複数の座面130A、130B、130Cにそれぞれ当接させた状態で摺動させることが可能である。
【0027】
図4は図3のブラケット100を摺動させた場合の状態を示す図である。凹凸のない座面130A、130B、130Cが上記のような十分に大きな面積を有するため、ブラケット100を、図3に示す取付位置から法線132方向に距離L2分だけ摺動させて図4のように取付位置が変化しても、第1フランジ120A、120B、120Cの各々を座面130A、130B、130Cの各々にスポット溶接可能である。例えば図3ではスポット溶接140にてフランジ130Cを溶接しているが、ブラケット100を摺動によって移動させた図4ではスポット溶接141にてフランジ130Cを溶接している。
【0028】
このように、座面130A、130B、130Cの範囲内でアクセルペダル固定用ブラケット100を摺動させることで、車種の違い(例えば乗員レイアウト高さの異なる車)によるアクセルペダルのレイアウトの違いに対応した取付位置に、アクセルペダル固定用ブラケット100を取付可能である。例えば本実施形態では、法線132方向にアクセルペダルの位置が変更されても、ブラケット100を移動させることで対応可能である。言い換えれば、車種が異なっても共通のブラケット100を使用可能であり、新たなアクセルペダル固定用ブラケットを設計・製造する必要がない。したがって、部品点数の増大を生じず、労力、コストの面で有利である。
【0029】
(長穴)
図5は図3のダッシュパネル102を図示の便宜上除去した状態を示す図である。図5(a)に示すように、アクセルペダル固定用ブラケット100は、その天面112に長穴150を有する。図5(b)は、長穴150が最低限必要とする形状・面積を示す図であり、本実施形態における長穴150は図5(a)に示すように、図5(b)に示す形状を包含する、より大きな面積を有する。長穴150は、図5(b)に示すように、ブラケット100の摺動の方向である法線132方向の、上記の距離L2に所定の溶接スポットクリアランス170A、170Bを加えた面積S2を少なくとも有する。ここで「溶接スポットクリアランス」とは、溶接打点より大きな、溶接ガンのためのクリアランスを含んだ面積を有する。
【0030】
図5(a)に示すように、ダッシュパネル102の前側は、エンジンルームに設けられたエプロンサイドメンバ160によって補強されている。エプロンサイドメンバ160の後端には第2フランジ170が設けられていて、これが図5に不図示のダッシュパネル102に溶接されることとなる。
【0031】
長穴150の特徴は、上記のような形状・面積を少なくとも有し、摺動によるブラケット100の位置の変化に拘らず、第2フランジ170と重なっていることである。図5(a)の状態では、長穴150は溶接スポットクリアランス170Aにおいて第2フランジ170と重なっている。一方、仮にブラケット100が摺動して図4に示す位置まで上方に動いた場合、図5(a)の溶接スポットクリアランス170Bにて第2フランジ170と重なることとなる。
【0032】
上記の構成によれば、車種変更によってアクセルペダル固定用ブラケット100の取付位置が変化しても、長穴150を通して溶接ガン(図示省略)を挿入することにより、第2フランジ170すなわちエプロンサイドメンバ160とダッシュパネル102とを無理なく溶接可能である。これは上記のように、アクセルペダル固定用ブラケット100の天面112に設ける溶接ガン挿入用の孔を予め長穴150にしてあるからである。したがって、車種変更によるブラケット100の取付位置の変化にも拘らず、同一のアクセルペダル固定用ブラケット100を使用可能である。この点でも、新たなアクセルペダル固定用ブラケットの設計・製造は必要なく、部品点数は増加しない。
【0033】
(第2の実施形態:ケーブル式アクセルペダル固定用ブラケット)
図6は、本発明の第2の実施形態であるケーブル式アクセルペダル固定用ブラケット200(以下ブラケット200またはアクセルペダル固定用ブラケット200と略称することもある)の斜視図である。本実施形態にかかるブラケット200も、ダッシュパネル102およびブラケットリンフォース108上に取り付けられる。
【0034】
ブラケット200も、天面212と、天面212を支持する複数の側面(図6では側面214Aのみを示す)とを有する台座状の形状を有する。ブラケット200の天面212にはスタッドボルト210A、210Bが設けられていて、これらによってケーブル式アクセルペダルは天面212に固定される。なおケーブル式アクセルペダル自体も本発明とは直接関係がないので、その図示は省略する。
【0035】
図6に示すように、側面214Aを含む両側の側面からは、それぞれ第1フランジ220A、220B、220C、220Dがダッシュパネル102に沿って延びている。本実施形態でも、より厳密に言えば、4つの第1フランジのうち、2つの第1フランジ220B、220Dは、ブラケットリンフォース108上に延びている。
【0036】
ダッシュパネル102は、第1の実施形態に関して説明した複数の座面130A、130B、130Cに加え、さらに座面130D、130Eを含む。これら座面のうち、座面130A、130D、130Eに対して第1フランジ220A、220B、220C、220Dがそれぞれスポット溶接されている。図6において座面130D、130Eは厳密に言えばブラケットリンフォース108に隠れて見えないが、図示の便宜上、ブラケットリンフォース108上の領域を座面130D、130Eとして指示している。
【0037】
座面130A、130D、130Eも、図3に示した架空の平面134に対して垂直な複数の平面である。したがって、ブラケット200の第1フランジ220A、220B、220C、220Dも、スポット溶接される前であれば、図3の法線132方向に同時に摺動可能である。
【0038】
図7は図6のブラケット200を摺動させた場合の状態を示す正面図である。座面130A、130D、130Eも、第1の実施形態で説明した座面130A、130B、130Cと同様に、凹凸のない十分に大きな面積を有するため、ブラケット200を、図3の法線132方向に距離L2分だけ摺動させてその取付位置が変化しても、第1フランジ220A、220B、220C、220Dの各々を座面130A、130D、130Eの各々にスポット溶接可能である。
【0039】
したがって、本実施形態にかかるブラケット200も、車種が異なってペダルレイアウトが変更されても依然として同じものを使用可能であり、新たなアクセルペダル固定用ブラケットを設計・製造する必要がない。したがって、部品点数の増大を生じず、労力、コストの面で有利である。
【0040】
(ブラケット・ダッシュパネル・エプロンサイドメンバの3枚溶接)
図8は図6のブラケット200を車室内側から見た正面図であり、図6のダッシュパネル102を図示の便宜上除去した状態を示す図である。本実施形態にかかるアクセルペダル固定用ブラケット200は、第1フランジ220C、220Dが分かれている。言い換えればこれら第1フランジ220C、220Dの間ではフランジが連続していず、切り欠かれている。したがって、図8のブラケット200の位置では、第1フランジ220C、220Dのいずれも、エプロンサイドメンバ160の第2フランジ170に重なっていない。
【0041】
したがって図8の第1フランジ220Cは、そのスポット溶接240Aによって図示しないダッシュパネル102に溶接されている。一方、ダッシュパネル102とエプロンサイドメンバ160の第2フランジ170とは、切り欠かれている位置のスポット溶接240Bによって溶接されている。
【0042】
しかしブラケット200を法線132方向に摺動させ図7に示す位置まで移動させることにより、図8の第1フランジ220Cのスポット溶接240Aを、スポット溶接240Bに重なる位置まで移動させることも可能である。このとき、第1フランジ220C、ダッシュパネル102およびエプロンサイドメンバ160の第2フランジ170が重なることとなり、これら3つの部材をまとめて1つの溶接(溶接240Bと同位置)にてスポット溶接可能となる。一方溶接240Aがあった位置では溶接が必要なくなる。
【0043】
このようにブラケット200の摺動後の位置(図7)では、ブラケット200(第1フランジ220C)、ダッシュパネル102、エプロンサイドメンバ160(第2フランジ170)の3枚を共打ち溶接可能である。アクセルペダル固定用ブラケット200が図8の位置にあるとき(摺動前)は、ブラケット200(第1フランジ220C)・ダッシュパネル102の溶接打点(溶接240A)と、ダッシュパネル102・エプロンサイドメンバ160(第2フランジ170)の溶接打点(溶接240B)の計2個の溶接打点が必要とされる。それに比較すると、ブラケット200が図7に示す位置にある場合は溶接打点を1個だけに減少させることが可能である。
【0044】
また、本実施形態の変形例として、図示しないものの、第1フランジ220C、220Dの間の切り欠かれた部分をなくして連続した1つのフランジとしてもよい。その場合、ブラケット200の重量は増加するものの、ブラケット200の位置(図7・図8)に拘らず、上記の3つの部材をまとめて1つの溶接(溶接240Bと同位置)にてスポット溶接可能となる。
【0045】
(まとめ)
このように、本発明の第1および第2の実施形態のように、設計当初より、車種の違いによるアクセルレイアウトの違いに対応可能な形状を有するブラケット100および200をしておくことで、部品点数の増加を防止できる。より具体的には、本発明の各実施形態によれば、部品点数は、ブラケット100および200、それらに共通のブラケットリンフォース108の計3種類しか必要としない。一方、車種の変更に伴って設計変更を余儀なくされる場合には、これら3種類の部品をすべて設計変更する必要があることから、部品点数は6種類になってしまう。
【0046】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、車両のアクセルペダルを固定するアクセルペダル固定用ブラケットの取付構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
100 …電子式アクセルペダル固定用ブラケット
102 …ダッシュパネル
104 …フロアパネル
106A、106B …ダッシュサイドパネル
108 …ブラケットリンフォース
112、212 …天面
114A、114B、214A …側面
120A、120B、120C、220A、220B、220C、220D …第1フランジ
130A、130B、130C、130D、130E …座面
132 …法線
140 …スポット溶接
150 …長穴
160 …エプロンサイドメンバ
170 …第2フランジ
200 …ケーブル式アクセルペダル固定用ブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の前壁を構成するダッシュパネルと、該ダッシュパネルに取り付けられアクセルペダルを固定するアクセルペダル固定用ブラケットとを備える、アクセルペダル固定用ブラケットの取付構造において、
前記アクセルペダル固定用ブラケットは、
前記アクセルペダルを固定する天面と、
前記天面を支持する複数の側面と、
前記複数の側面からそれぞれ前記ダッシュパネルに沿って延びる複数の第1フランジとを含み、
前記ダッシュパネルは、前記複数の第1フランジが同時に摺動可能な複数の座面を含み、
前記複数の座面はそれぞれ、少なくとも、アクセルペダルのレイアウトの違いに応じて前記アクセルペダル固定用ブラケットが移動すべき所定の距離にわたって前記複数の第1フランジが前記摺動可能な面積を有することを特徴とするアクセルペダル固定用ブラケットの取付構造。
【請求項2】
前記アクセルペダル固定用ブラケットは、その天面に、前記摺動の方向の前記距離に所定の溶接ガン用クリアランスを加えた面積を少なくとも有する長穴を有し、
前記長穴は、前記摺動による前記アクセルペダル固定用ブラケットの位置の変化に拘らず、前記ダッシュパネルの前側を補強するエプロンサイドメンバの後端に設けられ該ダッシュパネルに溶接される第2フランジと重なることを特徴とする請求項1に記載のアクセルペダル固定用ブラケットの取付構造。
【請求項3】
前記アクセルペダル固定用ブラケットは前記摺動によって、前記ダッシュパネルの前側を補強するエプロンサイドメンバの後端に設けられ該ダッシュパネルに溶接される第2フランジに前記複数の第1フランジの1つが重なる位置と、該第2フランジに前記複数の第1フランジの1つが重ならない位置とに移動可能であることを特徴とする請求項1に記載のアクセルペダル固定用ブラケットの取付構造。
【請求項4】
前記複数の座面および複数の第1フランジは、鉛直方向に延びていることを特徴とする請求項1に記載のアクセルペダル固定用ブラケットの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−148622(P2012−148622A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7341(P2011−7341)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】