説明

アクチュエータ駆動回路

【課題】 アクチュエータ駆動中に診断可能であり、高価な電流検出回路を使用することなくアクチュエータ駆動回路の診断が実施できるアクチュエータ駆動出力回路を提供する。
【解決手段】 マイコン1の出力端からの出力信号8は、FETゲート抵抗2を介し、出力段ドライバ3のゲート端子に入力される。ゲート端子への入力信号に応じて、アクチュエータ用電源5に接続されたアクチュエータ4に通電され、アクチュエータ4から出力段ドライバ3に電流が流れる。アクチュエータ4と出力段ドライバ3との接続点での信号を、出力段F/B(Feed Back)モニタ回路6の反転入力端子に入力させる。その後、マイコン1の出力信号8の周波数(周期)と、出力段のF/B信号であるF/Bモニタ信号9の周波数(周期)とを比較する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用電子制御システムのコンピュータユニット等のアクチュエータ駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アクチュエータ駆動回路の診断回路においては、駆動信号としてパルス幅の短いテストパルスを用い、駆動信号のF/B(Feed Back)信号をモニタして、マイコン駆動出力信号がアクティブの場合には駆動F/B信号もアクティブである事、マイコン駆動出力信号がノンアクティブの場合には駆動F/B信号もノンアクティブである事を確認するという手法がある。
【0003】
図2はこの手法を用いた第1の従来技術のアクチュエータ駆動回路の診断回路を示した図である。図2においては、テストパルスを出力するマイコン11と、FETゲート抵抗2と、出力段ドライバ3と、アクチュエータ(負荷)4と、アクチュエータ用電源(負荷電源)5と、出力段F/Bモニタ回路16とが記載され、マイコン11からテストパルスを出力し、出力段F/Bモニタ回路16からの駆動F/B信号をマイコン11で取り込む。
【0004】
図2の下部に示すように、マイコン11は、テストパルスの出力信号がHighの時に、駆動F/B信号がHighであればアクチュエータ駆動回路が正常と判定し、駆動F/B信号がLowであれば異常と判定する。また、テストパルスの出力信号がLowの時に、駆動F/B信号がLowであれば正常と判定し、駆動F/B信号がHighであれば異常と判定する。
【0005】
また、アクチュエータ駆動信号がPWM出力であり、電流制御を行う場合に於いては、電流検出回路による電流F/Bモニタを実施して、マイコンのPWM出力に応じた電流値が出力されているかどうかを判定し、アクチュエータ駆動回路の診断を実施するという手法がある。
【0006】
図3はこの手法を用いた第2の従来技術のアクチュエータ駆動回路の診断回路を示した図である。図3においては、図2の回路のアクチュエータ4と、出力段ドライバ3との間に電流検出抵抗Rcを接続し、出力段F/Bモニタ回路26には、コンパレータ回路の代わりに差動増幅回路を使用する。アクチュエータ4と電流検出抵抗Rcとの接続点から抵抗R1を介し、出力段F/Bモニタ回路26の非反転入力端に接続し、非反転入力端と接地との間に抵抗R2を接続される。また、出力段ドライバ3と電流検出抵抗Rcとの接続点から抵抗R3を介し、2つに分岐され、一つが出力段F/Bモニタ回路26の反転入力端に接続し、もう一つが抵抗R4を介し出力段F/Bモニタ回路26の出力端に接続される。
【0007】
このような構成において、マイコン21からPWM信号を出力し、出力段F/Bモニタ回路26からの電圧V1をマイコン21のAD入力端子に取り込む。図3の下部に示すように、マイコン21は、テスト用あるいは制御用PWM出力信号が電流検出抵抗Rcに流れる電流I1の電流値に相当するPWM出力の時に、駆動F/B信号が電流I1に相当する電圧V1から許容誤差の範囲内であればアクチュエータ駆動回路が正常と判定し、駆動F/B信号が電流I1に相当する電圧V1から許容誤差の範囲外であれば異常と判定する。
【特許文献1】実開平05−52777号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、図2に記載の従来のアクチュエータ駆動回路の診断回路では、診断用信号として短いパルス幅のテストパルスを出力して、F/Bモニタ信号を確認して診断するという方法であるが、駆動信号としてはアクチュエータが反応しない程度の短いテストパルスしか使用出来ない為、診断判定タイミングの設定が困難である。また、出力信号のHigh、Lowと駆動F/B信号のHigh、Lowの一致、不一致に基づいているので、適用はアクチュエータをオン、オフ制御するものに限られ、アクチュエータ駆動信号がPWM出力であるものにおける電流値の異常(PWM出力に対する電流値のずれ)の診断には適用できない。さらにアクチュエータ駆動中には、事実上F/Bモニタによるアクチュエータ駆動回路の診断はきわめて困難である。
【0009】
また、図3に記載の従来のアクチュエータ駆動回路の診断回路では、駆動信号がPWM出力でありマイコンのPWM出力に応じた電流値が出力されているかどうかを判定する診断方法を採っているが、回路診断用に電流検出回路が必要であり、シャント抵抗・差動増幅回路などの高価な回路が必要となると共に、マイコンのAD入力ポートも必要になる。
【0010】
本発明はかかる課題を解決するためになされたもので、アクチュエータ駆動中に診断可能であり、高価な電流検出回路を使用することなく、安価にアクチュエータ駆動回路の診断が実施できるアクチュエータ駆動回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、所定の周波数の駆動信号を入力してアクチュエータ回路の動作を制御するドライバと、前記ドライバの出力信号をモニタする信号モニタ手段(例えば、実施の形態における出力段F/Bモニタ回路6)と、前記ドライバに前記駆動信号を出力した後、前記信号モニタ手段でモニタされた前記出力信号の周波数を計測し、該ドライバに入力される該駆動信号の周波数と比較して、比較結果から前記アクチュエータ回路及び該ドライバの動作が正常か否かを判断する制御を行う制御手段(例えば、実施の形態におけるマイコン1)とを具備する事を特徴とするアクチュエータ駆動回路である。
【0012】
上記構成のアクチュエータ駆動回路によれば、アクチュエータの駆動中に、アクチュエータを駆動する信号の周波数に基づいてアクチュエータ駆動回路の診断を行うことが可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のアクチュエータ駆動回路によれば、アクチュエータの駆動中に、アクチュエータを駆動する信号の周波数に基づいてアクチュエータ回路の診断を行うことが可能であるため、高価な電流検出回路を必要とする従来の回路と比較して、安価にアクチュエータ回路の診断が実施できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係るアクチュエータ駆動回路の診断回路について図1を参照しながら説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るアクチュエータ駆動回路の診断回路の構成を示した回路図である。図1において、演算、診断を実施するマイコン1と、FETゲート抵抗2と、出力段ドライバ(FET)3と、アクチュエータ(負荷)4と、アクチュエータ用電源(負荷電源)5と、出力段F/Bモニタ回路6とが記載されている。
【0015】
マイコン1の出力端がFETゲート抵抗2を介し、出力段ドライバ3のゲート端子に接続されている。アクチュエータ用電源5はアクチュエータ4の一端に接続され、アクチュエータ4の他端は出力段ドライバ3のドレイン端子に接続され、出力段ドライバ3のソース端子は接地されている。アクチュエータ4の他端は出力段F/Bモニタ回路6の反転入力端子に接続されている。出力段F/Bモニタ回路6の非反転入力端子は直流電源7を介し、接地点に接続されている。出力段F/Bモニタ回路6の出力端からF/Bモニタ信号9が出力され、マイコン1の入力端に加えられる。
【0016】
続いて、図1のアクチュエータ駆動回路の診断回路での信号動作について説明する。マイコン1の出力端から出力された周波数(周期)fのチョッピング信号である出力信号8は、FETゲート抵抗2を介し、出力段ドライバ3のゲート端子に入力される。ゲート端子への入力信号に応じて、アクチュエータ用電源5に接続されたアクチュエータ4が通電され、アクチュエータ4から出力段ドライバ3に電流が流れる。アクチュエータ4と出力段ドライバ3との接続点での信号が、出力段F/Bモニタ回路6の反転入力端子に入力される。出力段F/Bモニタ回路6の出力端からF/Bモニタ信号9が出力され、マイコン1の入力端に入力される。
【0017】
マイコン1は出力信号8の周波数(周期)と、出力段のF/B信号であるF/Bモニタ信号9の周波数(周期)とを比較する。両周波数(周期)間の差異の有無の判定しきい値として、両周波数(周期)間の差異に許容値を持ち、回路応答性、温度変化等を考慮したしきい値を設定する。図1の下部に示すように、両周波数(周期)間の差異が許容誤差範囲内であればアクチュエータ駆動回路はマイコン1のチョッピング出力に従ってON/OFFしたと判断し、アクチュエータ駆動回路が正常であると判定する。許容誤差範囲外であればアクチュエータ駆動回路は異常であると判定する。
【0018】
また、マイコン1からの出力信号8については、出力回路のON応答性、OFF応答性、さらに出力段F/Bモニタ回路6の応答性を考慮し、診断可能Duty範囲を決定する。診断可能Duty範囲以外のDuty出力時には診断を中止する。
【0019】
このように、本実施形態では、マイコン1からの出力信号8の周波数(周期)と、その出力信号8を出力段ドライバ3に入力した時の、出力段F/Bモニタ回路6から出力されたF/Bモニタ信号9の周波数(周期)とを比較しアクチュエータ駆動回路が正常であるかを判定することにより、アクチュエータ駆動中に診断可能であり、高価な電流検出回路を使用することなくアクチュエータ駆動回路の診断が実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、自動車用電子制御システムのコンピュータユニットのアクチュエータ駆動回路に用いて好適である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態にかかるアクチュエータ駆動回路の診断回路の構成を示す構成図である。
【図2】第1の従来技術にかかるアクチュエータ駆動回路の診断回路の構成を示す構成図である。
【図3】第2の従来技術にかかるアクチュエータ駆動回路の診断回路の構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【0022】
1 … マイコン(制御手段)
2 … FETゲート抵抗
3 … 出力段ドライバ(ドライバ)
4 … アクチュエータ
5 … アクチュエータ用電源
6 … 出力段F/Bモニタ回路(信号モニタ手段)
9 … F/Bモニタ信号(出力信号)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の周波数の駆動信号を入力してアクチュエータ回路の動作を制御するドライバと、
前記ドライバの出力信号をモニタする信号モニタ手段と、
前記ドライバに前記駆動信号を出力した後、前記信号モニタ手段でモニタされた前記出力信号の周波数を計測し、該ドライバに入力される該駆動信号の周波数と比較して、比較結果から前記アクチュエータ回路及び該ドライバの動作が正常か否かを判断する制御を行う制御手段とを具備する事を特徴とするアクチュエータ駆動回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−88840(P2007−88840A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−275437(P2005−275437)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(300052246)株式会社ホンダエレシス (105)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】