説明

アクチュエータ

【課題】支持ロッドの作動後の後退を防止可能なロック機構を備えていても、受止材を支持する支持ロッドの剛性を容易に調整できるアクチュエータの提供。
【解決手段】アクチュエータAE1は、ガス発生器35の作動により発生するガスGをシリンダ22内に充填させ、ピストン38を、支持ロッド40とともに、前進させる構成とし、前進した支持ロッドの後退を規制するロック機構R1を備える。支持ロッド40は、前進後における受止材の保護対象者の受け止め時、保護対象者の運動エネルギーを吸収可能に、塑性変形可能に配設される。ロック機構R1は、ピストンに配設される拡径変形部42と、拡径変形部を係止して、ピストンの後退を規制可能な係止段部24と、からなる。さらに、拡径変形部42は、ピストンの前進後における係止段部24への配置時、縮径状態から拡径状態に、拡径変形部42自体の弾性力によって弾性変形して、係止段部24に係止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用安全装置に使用されるアクチュエータに関し、例えば、保護対象物としての歩行者を受け止める際のフードパネルを持ち上げる等の作動に使用されるアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載される自動車用安全装置のアクチュエータとしては、フードパネルの塑性変形時のエネルギー吸収を利用して、フードパネル自体で歩行者を受け止めることができるように、フードパネルの後端側を上昇させるものがあった(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
これらのフードパネルを上昇させるアクチュエータとしては、迅速に作動できるように、ガス発生器の作動時に発生するガスを駆動源とするピストンシリンダタイプとして構成されて、ガス発生器の作動により発生する作動用流体としてのガスをシリンダ内に充填させ、シリンダ内に収納したピストンロッドを上昇させて、ピストンロッドの上端側に接続させたフードパネルを上昇させるように構成されていた。なお、ピストンロッドは、ピストンとピストンから延びてフードパネルを支持可能な支持ロッドとを一体化したような構造としていた。また、ピストンシリンダタイプとして構成されるアクチュエータには、シリンダ内にガス発生器からのガスを充填させてフードパネルを上昇させた後にフードパネルを下降させないように、上昇したピストンロッドのシリンダに対する下降移動を規制するロック機構が、内蔵されていた。
【0004】
なお、ガス発生器としては、作動信号の入力により火薬やガス発生剤を着火させるマイクロガスジェネレータが使用されており、このようなガス発生器では、火薬の燃焼ガスやガス発生剤の化学反応(酸化反応・酸化燃焼反応)によって生ずるガスを、ピストンロッドを移動させるガスに利用していた。
【特許文献1】特開2004−322735号公報
【特許文献2】特開2004−330913号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のアクチュエータでは、ロック機構の構造として、シリンダの内周面側に、縮径方向に弾性変形するCリングを配設させ、ピストンロッドの外周面側を、シリンダの略全長にわたる内周面に対して、摺動可能とし、そして、ピストンロッドの外周面におけるロックさせたい位置に、Cリングを嵌合させる嵌合溝を配設させる構造としていた。
【0006】
そのため、例えば、前進移動するロッドの剛性を調整するように、ロッドの外径寸法を変更して、歩行者等の保護対象物を受け止めるフードパネル等の受止材だけでなく、ロッド自体の曲げ等の塑性変形を併用して、歩行者の運動エネルギーを吸収できるように構成する場合、従来のアクチュエータでは、ロッドの略全長にわたる外周面をシリンダの内周面に摺動させる構造としているため、ロッドだけの変更に収まらず、シリンダの内径も変更する必要が生じ、容易に対処できなかった。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、支持ロッドの作動後の後退移動を防止可能なロック機構を備えていても、受止材を支持する支持ロッドの剛性を容易に調整できるアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るアクチュエータは、自動車用安全装置に使用されて、
作動時に、筒状のハウジング内に配置された移動体を、移動体に連結された支持ロッドとともに、前進移動させる構成とするとともに、
前進移動した支持ロッドの後退移動を規制するロック機構を備えて構成され、さらに、
ハウジングの先端壁部から突出した支持ロッドが、保護対象物を受け止める受止材に連結される構成のアクチュエータであって、
支持ロッドが、前進移動後における受止材の保護対象物の受け止め時、保護対象物の運動エネルギーを吸収可能に、塑性変形可能に配設され、
ロック機構が、
移動体に配設されて、ハウジング内の前進移動時における移動体の外径寸法より拡径可能な拡径変形部と、
ハウジングの内周面における移動体の前進移動後の配置位置に配設され、拡径した拡径変形部を係止して、移動体の後退移動を規制可能な係止段部と、
から構成され、
拡径変形部が、移動体の移動後における係止段部への配置時、縮径状態から拡径状態に、拡径変形部自体の弾性力によって弾性変形して、若しくは、移動体の押圧力によって塑性変形して、係止段部に係止される構成としていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るアクチュエータでは、作動時、ハウジング内に配置された移動体が、支持ロッドとともに、前進移動する。そして、移動体の前進移動後における係止段部への配置時、拡径変形部が、縮径状態から拡径状態に、拡径変形部自体の弾性力によって弾性変形して、若しくは、移動体の押圧力によって塑性変形して、係止段部に係止される。そのため、支持ロッドの後退移動が規制されて、受止材が保護対象物を受け止める際、適宜、支持ロッドが、曲げ変形等のように塑性変形して、保護対象物の運動エネルギーを吸収できることとなる。
【0010】
そして、本発明に係るアクチュエータでは、剛性を変えるように支持ロッドの外径寸法を変えても、ハウジング側の先端壁部における支持ロッドの挿通孔の内径寸法を調整する必要は生ずるものの、移動体側の拡径変形部やその拡径変形部を係止するハウジング側の係止段部の構成は、変更せずに、共用することができて、容易に対処することができる。
【0011】
したがって、本発明に係るアクチュエータでは、支持ロッドの作動後の後退移動を防止可能なロック機構を備えていても、受止材を支持する支持ロッドの剛性を容易に調整することができる。
【0012】
また、本発明のアクチュエータでは、ハウジングの外径寸法を大きくするようなハウジング側にロック機構の係止部材を設けるのではなく、ハウジング側は、内周面における先端壁部側の端部付近に、局部的に、単に拡径するような凹部を設けて、係止段部を形成するだけの簡便な構成とすることができ、ハウジングの大型化を避けることができる。そして、ハウジング内では、移動体の部位に、局部的に、拡径変形部を設けるものの、拡径変形部は、それ自体が、弾性変形若しくは塑性変形することにより、係止段部に係止可能に拡径変形するものであり、移動体側に設ける拡径変形部を構成する部品は、極力少なくすることができる。
【0013】
なお、保護対象物としては、歩行者、乗員等の人に限らず、バンパ等の車体の部品が例示できる。
【0014】
また、移動体を移動させる駆動源としては、油、水、空気等の気体(ガス)等の作動用流体の流体圧、ソレノイドの吸引力、圧縮させたばねの付勢力(復元力)等を利用することができる。
【0015】
そして、拡径変形部としては、移動体の外周面における周方向に沿って設けた凹溝に収納させて、移動体の前進移動後における係止段部への配置時、縮径状態から移動体の凹溝とハウジングの係止段部とに跨る拡径状態に弾性変形する環状弾性体により、構成することができる。このような環状弾性体は、例えば、ばね鋼等からなるCリングが例示できる。
【0016】
なお、環状弾性体を、内外周を貫通する切り欠きを有したCリングから構成する場合は、切り欠き近傍の先端部側から切り欠きと点対称の位置となる元部側にかけて、内外周間の幅寸法を広くする形状に、形成してもよい。このような構成では、環状弾性体を、切り欠き近傍の先端部側を環状弾性体の軸心側に撓ませるように、容易に縮径させ、かつ、係止段部への配置時に、容易に拡径させるように、弾性変形させることができて、凹溝への配置が容易となる。ちなみに、この場合には、環状弾性体における切り欠き近傍の先端部自体が、内外周間の幅寸法を狭くしており、拡径時に移動体の凹溝とハウジングの係止段部とに跨る状態とならず、拡径した外周面を係止段部の内周面に当接させて、係止段部側だけに配置されても、先端部から点対称の位置となる元部側付近を、移動体の凹溝とハウジングの係止段部とに跨る状態として係止段部の底面に係止させることができて、支持ロッドの後退移動を規制できる。換言すれば、環状弾性体における切り欠き近傍の先端部は、係止段部の元部側を移動体の凹溝とハウジングの係止段部とに跨る状態へ、凹溝から突出させるように、元部側を移動させる弾性変形を確保できれば、先端部自体を拡径時に移動体の凹溝とハウジングの係止段部とに跨る状態に拡径させる必要はない。そのため、先端部自体が、弾性変形時の縮径状態から拡径状態となる外径寸法さえ考慮すれば、弾性変形時に内径寸法を厳密に管理せずに済み、Cリングからなる環状弾性体を、容易に製造することができる。なお、係止段部の底面とは、拡径変形部の後退移動を規制する部位であり、係止段部の内周面とは、底面の外周縁から移動体の前進移動方向に沿って延びる部位である。
【0017】
また、環状弾性体をCリング形状とする場合、移動体の移動方向に沿って板状の厚さ寸法を有した円板状のリング形状とする他、筒形状として、軸直交方向の横断面をCリング形状としてもよい。このような場合には、ハウジングに設ける係止段部は、拡径変形部の後退移動を規制する底面と、底面の外周縁から移動体の前進移動方向に沿って延びる内周面と、を設けて構成する。そして、環状弾性体は、軸直交方向の横断面を、内外周を貫通する切り欠きを有したCリング形状とするとともに、前進移動側の端部より後退移動側の端部の外径寸法を拡径可能なテーパ管状に、形成して、移動体の前進移動後における係止段部への配置時、前進移動側の端部を凹溝に収納させ、かつ、後退移動側の端部を、縮径状態から拡径状態に弾性変形させて、係止段部における底面と内周面とに当て可能に、構成する。このような構成では、支持ロッドの後退移動を、凹溝に収納させた前進移動側端部と係止段部の底面と内周面とに当てて係止させた後退移動側端部との間の部位、すなわち、テーパ管状の軸方向に沿った略円筒状の周壁、によって、受け止めることができ、大きな圧縮荷重でも対抗できて、支持ロッドの後退移動を安定して規制することができる。そしてまた、上記のような軸方向に沿って切り欠きを設けたテーパ管状の環状弾性体では、前進移動側端部が拡径時に凹溝内に収納された状態としていれば、後退移動側端部は、拡径時、単に、係止段部における底面と内周面とに当て可能に、凹溝から離脱できればよい。換言すれば、後退移動側端部が、凹溝から係止段部に跨ぐように、拡径できなくともよく、上記のような軸方向に沿って切り欠きを設けたテーパ管状の環状弾性体では、後退移動側端部の肉厚や変形量(凹溝に収納可能に拡径状態から縮径状態に弾性変形させる変形量)の精度を厳密に管理しなくともよくなり、容易に製造できることとなる。
【0018】
そして、拡径変形部をCリング等の環状弾性体から構成する場合には、作動時に、シリンダとしての前記ハウジング内に作動用流体を流入させることにより、ピストンとしての移動体を前進移動させるように、アクチュエータをピストンシリンダタイプとして、環状弾性体を、凹溝への収納状態で、ハウジング内周面に摺動可能に圧接されるように構成して、移動体における作動用流体の供給側をシールするピストンリングとして、構成すれば、移動体側に、別途、摺動性能やシール性能を高めるピストンリングを設けずに済み、ピストンとしての移動体の部品点数を少なくできる。
【0019】
また、拡径変形部を弾性変形させて拡径させる場合、拡径変形部は、移動体の移動方向に沿って移動体の外周面側に配置される弾性片部、として構成してもよい。このような弾性片部は、移動体の移動方向に沿う一方の端部を、移動体の本体側に連結された基部側とし、移動体の移動方向に沿う他方の端部を、係止段部に係止可能な鉤片部として構成し、移動体の前進移動後における係止段部への配置時、基部側を回転中心側として鉤片部側を回転させるように拡径方向側へ弾性変形させて、鉤片部を係止段部に係止させるように、配設すればよい。
【0020】
この場合、弾性片部は、基部に対する鉤片部の配置を、移動体の前進移動側に位置させたり、あるいは、逆となる移動体の後退移動側に配置させてもよい。
【0021】
そして、基部に対する鉤片部を移動体の前進移動側に配置させる場合には、先端壁部には、移動体の前進移動後における係止段部への配置時に、鉤片部に当接して鉤片部を拡径方向に案内する案内面を、配設させてもよい。このような構成では、鉤片部の拡径方向への付勢力が弱くとも、鉤片部を、的確に、係止段部に係止させるように拡径変形させることができる。すなわち、移動体の前進移動時に、鉤片部がシリンダの内周面に摺動する際の抵抗を弱くするように、鉤片部の拡径方向の付勢力を弱くしても、案内面を利用して、的確に、鉤片部を係止段部に係止させることができて、移動体の移動速度が低減することを抑制できる。
【0022】
さらに、拡径変形部としては、移動体の前進移動後における係止段部への配置時に、先端壁部に当接して、縮径状態から拡径状態に塑性変形する構成としてもよい。この場合、移動体に、拡径変形部材を取り付ける構成としてもよいし、移動体自体を拡径変形部として構成してもよい。
【0023】
そして、アクチュエータをピストンシリンダタイプとし、作動時に、シリンダとしてのハウジング内に作動用流体を流入させることにより、ピストンとしての移動体を前進移動させるようにし、かつ、移動体自体を拡径変形部として構成する場合には、拡径変形部の外周面の少なくとも一部における周方向の略全周を、シリンダとしてのハウジングの内周面に摺動可能としておけば、拡径変形部がピストンリングの作用をなすことができて、別途、ピストンリングを設けずに、ピストンとしての移動体を構成することができる。
【0024】
また、ピストンシリンダタイプとして構成されて、作動時に、シリンダとしてのハウジング内に作動用流体を流入させることにより、ピストンとしての移動体を前進移動させる構成とする場合には、シリンダ側に設けられる係止段部は、拡径変形部の後退移動を規制する底面と、この底面の外周縁から移動体の前進移動方向に沿って延びる内周面と、を設けて構成する。そして、移動体は、ピストン本体と、ピストン本体における先端壁部側に、ピストン本体と別体とし、拡径変形部材として配置し、先端壁部に当接可能として支持ロッドに連結されるロック体と、を設けて構成する。そして、ロック体は、支持ロッドを連結させて先端壁部に当接可能とした天井板部と、天井板部の外周縁からピストン本体側に延びて、拡径変形部を構成する筒状の傘部と、を設けて構成する。傘部は、天井板部から離れる端部側に、シリンダの軸周り方向で複数に分割された係止脚を配設させて構成する。また、ピストン本体は、傘部側の先端に、ピストンとしての移動体の前進移動時に傘部の各係止脚に当接させてロック体を係止段部の配置位置まで移動させるように押圧可能に、先細り状のテーパ状押圧部、を設けて構成する。そして、傘部は、天井板部を先端壁部に当接させるようにピストン本体に押されて、ロック体が係止段部の配置位置に配置された際、ピストン本体のテーパ状押圧部に押されて、塑性変形しつつ拡径方向に開き、各係止脚を、係止段部の底面と内周面とに当てて、ロック体の後退移動を規制するように、構成してもよい。
【0025】
このような構成では、作動時、ピストン本体が、作動用流体の圧力を受けて前進移動し、ロック体が、ピストン本体のテーパ状押圧部に押されて、係止段部の配置位置まで、前進移動する。そして、ロック体が、天井板部を先端壁部に当接させて移動を停止されても、ロック本体と別体のピストン本体がテーパ状押圧部を押し当てて前進移動することから、ロック体の傘部の各係止脚が塑性変形しつつ拡径し、各係止脚の先端が、係止段部の底面上に配置され、さらに、係止段部の底面上を移動して係止段部の内周面に当たる。この時、受止材を支持する支持ロッドが後退移動しようとしても、各係止脚が、先端を係止段部の底面と内周面とに当接させており、さらに、拡径するように変形せずに、心張り棒(つっかい棒)の状態となって、天井板部を支持することから、天井板部が後退移動せず、その結果、ロック体の後退移動が規制されて、支持ロッドの後退移動を防止することができる。なお、各係止脚の先端を、係止段部の底面上を移動させて係止段部の内周面に当接させる機構は、ピストン本体のテーパ状押圧部の押圧だけでなく、支持ロッドが後退移動しようとする際の支持ロッドから天井板部を経て各係止脚に作用する押圧力を、利用してもよい。
【0026】
そして、上記のような構成は、ピストン本体のテーパ状押圧部によって、各係止脚を均等に拡径させることができて、支持ロッドの後退移動を、シリンダの軸周り方向で、バランス良く規制することができる。
【0027】
さらに、移動体を移動させる駆動源に作動用流体を使用している場合には、拡径変形部を縮径状態から拡径状態に塑性変形させて拡径させる際、その作動用流体の圧力を利用してもよい。すなわち、このような構成のアクチュエータは、自動車用安全装置に使用されて、
作動時に、筒状のハウジング内に配置された移動体を、移動体に連結された支持ロッドとともに、前進移動させる構成とするとともに、
前進移動した支持ロッドの後退移動を規制するロック機構を備えて構成され、さらに、
ハウジングの先端壁部から突出した支持ロッドが、保護対象物を受け止める受止材に連結される構成のアクチュエータであって、
ピストンシリンダタイプとして構成されて、作動時に、シリンダとしてのハウジング内に作動用流体を流入させることにより、ピストンとしての移動体を前進移動させる構成とし、
支持ロッドが、前進移動後における受止材の保護対象物の受け止め時、保護対象物の運動エネルギーを吸収可能に、塑性変形可能に配設され、
ロック機構が、
移動体に配設されて、ハウジング内の前進移動時における移動体の外径寸法より拡径可能な拡径変形部と、
ハウジングの内周面における移動体の前進移動後の配置位置に配設され、拡径した拡径変形部を係止して、移動体の後退移動を規制可能な係止段部と、
から構成され、
拡径変形部が、ハウジングの作動用流体の供給側に開口する流体流入口を有し、かつ、流体流入口から流入する作動用流体を貯留する流体キャップから構成され、
流体キャップが、外周面をハウジングの内周面に摺動可能として、移動体の前進移動後における係止段部への配置時に、流体流入口から流入させた作動用流体の圧力により、縮径状態から拡径状態に塑性変形する構成としていることを特徴とする。
【0028】
このような構成のアクチュエータでは、作動時、作動用流体の圧力を受けて、ハウジング内に配置された移動体が、支持ロッドとともに、前進移動する。そして、移動体の前進移動後における係止段部への配置時、外周面をハウジング内周面に摺動させていた拡径変形部としての流体キャップが、ハウジングの軸方向に沿った移動を停止させても、流体流入口から流入させた作動用流体の圧力により、縮径状態から拡径状態に塑性変形して、係止段部に係止される。そのため、支持ロッドの後退移動が規制されて、受止材が保護対象物を受け止める際、適宜、支持ロッドが、曲げ変形等のように塑性変形して、保護対象物の運動エネルギーを吸収できることとなる。
【0029】
そして、このような構成のアクチュエータでも、剛性を変えるように支持ロッドの外径寸法を変えても、ハウジング側の先端壁部における支持ロッドの挿通孔の内径寸法を調整する必要は生ずるものの、移動体側の拡径変形部やその拡径変形部を係止するハウジング側の係止段部の構成は、変更せずに、共用することができて、容易に対処することができる。
【0030】
したがって、上記の構成のアクチュエータでも、支持ロッドの作動後の後退移動を防止可能なロック機構を備えていても、受止材を支持する支持ロッドの剛性を容易に調整することができる。勿論、この場合でも、流体キャップとしての拡径変形部が、外周面の少なくとも一部における周方向の略全周をシリンダ内周面に摺動するように構成されれば、拡径変形部がピストンリングの作用をなすことができて、別途、ピストンリングを設けずに、ピストンとしての移動体を構成することができる。
【0031】
さらにこの場合、移動体自体が、外周面の少なくとも一部における周方向の略全周を、ハウジングの内周面に摺動可能として、拡径変形部としての流体キャップ自体を構成すれば、別途、ピストンリングを設けずに、流体キャップ自体で、ピストンとしての移動体を構成することができ、移動体の構成部品点数を低減できる。
【0032】
そして、上記の先端壁部に当接させたり、流体圧を利用して、拡径変形部を塑性変形させる場合には、拡径変形部は、作動時、移動体の係止段部まで円滑に移動できる寸法を確保できれば、後は、係止段部に係止可能に、塑性変形しつつ拡径すればよく、高い寸法精度で構成せずに済み、かつ、部品点数も少なく済むことから、極めて、簡便に、アクチュエータを製造することができる。
【0033】
なお、流体流入口から流入する流体圧を利用して、拡径させる流体キャップを利用する場合、つぎのように構成してもよい。すなわち、シリンダ側に設けられる係止段部は、拡径変形部の後退移動を規制する底面と、この底面の外周縁から移動体の前進移動方向に沿って延びる内周面と、を設けて構成する。そして、流体キャップは、支持ロッドを連結させて先端壁部に当接可能とした天井板部と、天井板部の外周縁から後退移動側に延びるとともにシリンダの軸周り方向で複数に分割された係止脚を有した筒状の傘部と、傘部の各係止脚の先端で囲まれて形成される流体流入口と、を設けて構成する。そして、傘部の各係止脚は、外周面をシリンダの内周面に摺動可能として、移動体の前進移動後における係止段部への配置時に、流体流入口から流入させた作動用流体の圧力により、塑性変形しつつ拡径方向に開き、各先端を係止段部の底面と内周面とに当てて、移動体の後退移動を規制するように、構成する。
【0034】
このような構成では、作動時、流体キャップが、作動用流体の圧力を受けて、傘部の各係止脚の外周面をシリンダの内周面に摺動させつつ、係止段部の配置位置まで、前進移動する。そして、流体キャップが天井板部を先端壁部に当接させて移動を停止されると、傘部の各係止脚が、流体流入口から流入させた作動用流体の圧力によって塑性変形しつつ拡径し、各係止脚の先端が、係止段部の底面上に配置され、さらに、係止段部の底面上を移動して係止段部の内周面に当たる。この時、受止材を支持する支持ロッドが後退移動しようとしても、各係止脚が、先端を係止段部の底面と内周面とに当接させており、さらに、拡径するように変形せずに、心張り棒(つっかい棒)の状態となって、天井板部を支持することから、天井板部が後退移動せず、その結果、支持ロッドの後退移動を防止することができる。そして、上記の構成では、流体キャップの全体を塑性変形させずに、傘部の各係止脚が心張り棒としての作用を確保して、各係止脚の元部側付近を部分的に塑性変形させるだけでよく、流体キャップの塑性変形状態を安定させることができる。
【0035】
この場合、先端壁部には、移動体の前進移動後における係止段部への配置時に、各係止脚の拡径方向への変形の補助用として、各係止脚の元部側近傍の天井板部における外周縁付近に当接し、天井板部の外周縁部位を移動体の前進移動方向側へ塑性変形させる変形用突起を、配設させてもよい。このような構成では、各係止脚を、均等に、拡径方向に塑性変形させ易く、支持ロッドの後退移動を、シリンダの軸周り方向で、バランス良く規制することができる。
【0036】
なお、上記のような変形用突起を先端壁部に設ける構成は、既述した移動体をピストン本体と傘部を有したロック体とにより構成したアクチュエータにも、利用することができる。
【0037】
さらに、アクチュエータをピストンシリンダタイプとして、シリンダとしてのハウジングの先端壁部から離れた端部側に、作動信号の入力時に着火させてガスを発生させるガス発生器を配設させ、ガス発生器の発生するガスを駆動源として、ピストンとしての移動体が前進移動する構成とすれば、ガス発生器として、着火時に爆発的に急激にガスを発生可能なマイクロガスジェネレータを使用できて、迅速に、ピストンとしての移動体を、移動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明すると、図1〜4に示すように、第1実施形態のアクチュエータA1(AE1)は、車両Vに搭載される自動車用安全装置としての歩行者保護装置M1における上昇装置Uに使用されるものであり、この上昇装置Uは、アクチュエータA1の作動時に、フードパネル15の後端15cを上昇させる。そして、第1実施形態のアクチュエータA1は、車両Vのフードパネル15の後端15c付近の下方に配設されている。なお、歩行者保護装置M1は、歩行者を受け止めることとなる受止材としてのフードパネル15の後端15cを上昇させる上昇装置Uと、フロントピラー4から歩行者を保護するエアバッグ10を有したエアバッグ装置9と、を備えて構成されている。
【0039】
なお、車両Vのフロントバンパ5には、図1に示すように、保護対象物としての歩行者との衝突を検知若しくは予測可能なセンサ6が、配設されており、センサ6からの信号を入力させている図示しない作動回路が、センサ6からの信号に基いて車両Vの歩行者との衝突を検知若しくは予測した際、エアバッグ装置9のインフレーター11(図3参照)と、上昇装置UのアクチュエータA1における駆動源としてのガス発生器35(図5参照)と、を作動させるように構成されている。
【0040】
また、本明細書では、前後と上下の方向は、それぞれ、車両Vの前後と上下との方向に一致し、左右の方向は、車両Vの前方側から後方側を見た際の左右の方向と一致させている。
【0041】
フードパネル15は、図1〜4に示すように、車両VにおけるエンジンルームERの上方を覆うように配設されるもので、左右方向の両縁側における後端15c近傍に配置されるヒンジ部16により、車両Vのボディ1に対して、前開きで開閉可能に連結されている。フードパネル15は、アルミニウム(アルミニウム合金)等からなる板金製として、上面側のアウタパネル15aと、下面側に位置してアウタパネル15aより強度を向上させたインナパネル15bと、から構成されている。フードパネル15は、歩行者を受け止めた際に、歩行者の運動エネルギーを吸収できるように、塑性変形するものであり、変形量を増大させるように、車両Vの歩行者との衝突時、上昇装置UのアクチュエータA1を作動させて、エンジンルームERの上方に大きな空間を空けることを目的として、後端15cを上昇させることとなる。また、第1実施形態の上昇装置Uでは、フードパネル15の後端15cを持ち当げて、カウル7とフードパネル15の後端15cとの間に、エアバッグ10を突出させる大きな隙間Sを設ける役目も果たしている。
【0042】
ヒンジ部16は、フードパネル15の後端15c側における左縁15dと右縁15eとに配設され(図1参照)、それぞれ、ボディ1側のフードリッジリインホース2に連結される取付フランジ2aに固定されるヒンジベース17、フードパネル15側に固定される取付ブラケット20、及び、ヒンジベース17と取付ブラケット20とに連結されるヒンジアーム19、を備えて構成されている(図3参照)。各ヒンジアーム19は、図2,3に示すように、板金製のアングル材を下向きに突出させるように略半円弧状に湾曲させた形状として構成され、ヒンジベース17側の元部端19aが、支持軸18を利用してヒンジベース17に対して回動可能に連結され、元部端19aから離れる先端19bが、取付ブラケット20に溶接等を利用して結合されている。各支持軸18は、それらの軸方向を車両Vの左右方向に沿って配設させている。そのため、フードパネル15を開く際には、図3の実線から二点鎖線に示すように、左右の支持軸18を回転中心として、各ヒンジアーム19の先端19b側とともに、フードパネル15の前端15f側(図1参照)を前開きで上昇させることとなる。
【0043】
なお、ヒンジアーム19の先端19b近傍付近は、アクチュエータA1の作動時における支持ロッド40のフードパネル15の後端15cの押し上げ時、塑性変形する塑性変形部19cとしている(図4参照)。ちなみに、フードパネル15の後端15cの上昇時には、前開きで開閉させるフードパネル15の前端15f側に配置されて、通常閉塞時用の前端15fに配置されている図示しないフードロックストライカを係止するラッチ機構により、前端15f側は、ボディ1側から外れることはない。
【0044】
エアバッグ装置9は、図3,4に示すように、エアバッグ10、エアバッグ10に膨張用ガスを供給するインフレーター11、エアバッグ10とインフレーター11とを収納するケース12、及び、エアバッグ10とインフレーター11とを収納したケース12を開き可能に覆うエアバッグカバー13、を備えて構成され、フードパネル15の後端15cにおける左縁15dと右縁15eとの下方付近のカウル7の部位に搭載されている。エアバッグ装置9は、上昇装置Uが作動してフードパネル15の後端15cを上昇させた際、その後端15cとカウル7との間の隙間Sから、エアバッグ10を突出させるように、インフレーター11が作動して、折り畳まれたエアバッグ10に膨張用ガスが供給される。そして、エアバッグ10は、膨張用ガスを流入させると、ケース12の後部側の開口12aを覆っていたエアバッグカバー13の扉部13aを押し開いて展開膨張し、左右のフロントピラー4,4の前面側を覆うこととなる(図1参照)。
【0045】
なお、カウル7は、図3に示すように、ボディ1側の剛性の高いカウルパネル7aと、カウルパネル7aの上方のカウルルーバ7bと、を備えて構成されている。カウルルーバ7bは、後端側をフロントウインドシールド3の下部3a側に連ならせるように配設され、フロントウインドシールド3の左右には、図1,2に示すように、フロントピラー4,4が配設されている。
【0046】
上昇装置Uは、図3〜5に示すように、アクチュエータA1とフードパネル15側に配設される受け座45とを備えて構成されている。アクチュエータA1は、図1に示すように、フードパネル15の左右のヒンジ部16の二箇所に対応して、フードパネル15の左右両縁の後端15cの下方に配設されて、図6に示すように、それぞれ、ガス発生器35の作動時に発生するガスGを駆動源とするピストンシリンダタイプとして、円筒状のシリンダ22としてのハウジング21内にピストン38としての移動体37が収納されて構成されている。受け座45は、フードパネル15の後端15cの下面に配設された取付ブラケット20の部位に取り付けられて、下面45aが、アクチュエータA1の上昇移動する支持ロッド40の先端の頭部40aを受け止め可能に構成されている。
【0047】
第1実施形態のアクチュエータA1は、図3〜5に示すように、フードリッジリインホース2に連結された取付フランジ2bに対してボルト47止めされる断面U字状の取付ブラケット46により保持されて、フードパネル15の左右両縁の後端15cの下方に配設されている。そして、各アクチュエータA1は、図6,7に示すように、シリンダ(ハウジング21)22と、シリンダ22内に摺動可能に収納したピストン(移動体37)38と、ピストン38に連結された支持ロッド40と、前進移動(第1実施形態の場合には、上昇移動)した支持ロッド40の後退移動(第1実施形態の場合には、下降移動)を規制するロック機構R1と、を備えて構成されている。
【0048】
シリンダ22は、図6,7に示すように、円筒状の本体23と、本体23の上下端にそれぞれ固定されるキャップ26,31と、を備えて構成されている。本体23の上端側内周面には、周方向の全周にわたって凹む凹部23cが形成され、凹部23cの上面(底面)側を、円環状の平面として、拡径変形部42を係止する係止段部24としている。本体23の上端側のキャップ26は、支持ロッド40の軸部40bを挿通させる挿通孔27aを有した先端壁部27と、先端壁部27の外周縁から下方に延びる略円筒状の周壁部29と、を備えて構成されている。周壁部29は、内周面に、シリンダ22の本体23における上端外周に設けられた雄ねじ23aに螺合する雌ねじ29aを備え、キャップ26は、挿通孔27aに支持ロッド40の軸部40bを挿通させた状態で、雌ねじ29aを雄ねじ23aに螺合させて、本体23に取り付けられている。挿通孔27aの内周面には、軸部40bに圧接されるOリング28が配設されている。下端側のキャップ31は、本体23の下端を塞ぐように配設される元部端壁部32と、元部端壁部32の外周縁から上方に延びる略円筒状の周壁部33と、を備えて構成されている。元部端壁部32には、挿通孔32aの周縁を利用して、ガス発生器35が取り付けられている。周壁部33は、内周面に、シリンダ22の本体23における下端外周に設けられた雄ねじ23bに螺合する雌ねじ33aを備え、キャップ31は、元部端壁部32にガス発生器35を取り付けた状態で、雌ねじ33aを雄ねじ23bに螺合させて、本体23に取り付けられている。
【0049】
なお、係止段部24は、詳しく述べれば、本体23の内周面23dから直交するように拡径して、拡径変形部42の後退移動を規制する底面24aと、底面24aの外周縁から移動体37の前進移動方向に沿って延びる内周面24bと、を備えて構成されている。
【0050】
ガス発生器35は、マイクロガスジェネレータが使用されており、下端面には、図示しない制御回路からの電気信号を入力させるリード線36が結線されている。ガス発生器35は、図示しない制御回路からの電気信号を入力させると、内蔵されている火薬を燃焼させて燃焼ガスを発生させ、そのガス(燃焼ガス)Gを作動用流体としてシリンダ22内のピストン38の下面側へ供給することとなる。
【0051】
ピストン38は、円盤状として、上下方向の中間部位の外周面に、周方向の全周にわたって凹んだ凹溝38aが形成されている。凹溝38a内には、シリンダ22の本体23における下端から凹部23cまでの内周面23dを摺動するピストン38の外径寸法D0より拡径可能な拡径変形部42が、配設されている。また、ピストン38の中央には、支持ロッド40を取り付けるための上下方向に貫通するねじ孔38cが形成されている。
【0052】
拡径変形部42は、シリンダ22の係止段部24とともに、前進移動(実施形態では、上昇移動)した支持ロッド40の後退移動(実施形態では、下降移動)を規制するロック機構R1を構成するものであり、第1実施形態のアクチュエータA1(AE1)の場合、拡径変形部42は、弾性変形により拡径するタイプとして(このタイプの符号をAEとし、そのタイプの一番目の実施形態をAE1とし、以下、二番目以降をAE2,AE3…と表す)、ばね鋼製のCリング(スナップリング)からなる環状弾性体43から構成されている。
【0053】
この環状弾性体43では、凹溝38aに収納されて、ピストン38の上昇移動後における係止段部24への配置時、縮径状態から、ピストン38の凹溝38aとシリンダ22の係止段部24とに跨る拡径状態に、弾性変形して、ピストン38の下降移動を規制する。特に、第1実施形態の場合には、環状弾性体43は、凹溝38aへの収納状態で、シリンダ22の内周面23dに摺動可能に圧接されるように、ピストン38自体の外径寸法D0を構成して、ピストン38におけるガス発生器35側をシールするピストンリング44としての役目も果たしている。そして、Cリングからなる環状弾性体43では、ピストン38の上昇移動後における係止段部24への配置時、自身の弾性力による弾性変形によって、縮径状態から拡径状態に、すなわち、縮径状態の外径寸法D0から、ピストン38の凹溝38aとシリンダ22の係止段部24とに跨るような外径寸法D1と内径寸法d1となるように変形し、係止段部24に係止されることとなる。
【0054】
なお、第1実施形態の場合、環状弾性体43が外径寸法D1に拡径して係止段部24に係止される際には、環状弾性体43の外周面43cが係止段部24の内周面24bに当接し、環状弾性体43の内周面43dが凹溝38a内に配置されている。
【0055】
支持ロッド40は、軸部40bの上端に、上昇移動時にフードパネル15の後端15cの取付ブラケット20に設けられた受け座45に当接して、フードパネル15の後端15cを押し上げる円柱状の頭部40aを備えるとともに、軸部40bの下端に、ピストン38のねじ孔38cに螺合させる雄ねじ部40cを備えて構成されている。支持ロッド40は、塑性変形可能な鋼等の金属材からなり、ピストン38に対して、ねじ孔38cへの締め付けと取り外しによって、取り替え可能に組み付けられている。
【0056】
この第1実施形態の歩行者保護装置M1では、センサ6からの信号により、図示しない作動回路が、車両Vの歩行者との衝突を検知若しくは予測した際に、各上昇装置UのアクチュエータA1におけるガス発生器35を作動させるとともに、エアバッグ装置9のインフレーター11を作動させる。
【0057】
そして、アクチュエータA1のガス発生器35が作動されれば、図3,4、及び、図6のA,Bに示すように、発生したガスGがシリンダ22の本体23内のピストン38を押し上げ、支持ロッド40の上端の頭部40aを受け座45に当接させて、フードパネル15の後端15cを上昇させ、後端15c側に、フードパネル15とカウル7との間に隙間Sを形成する。また、エアバッグ装置9のインフレーター11が作動すれば、図1,2の二点鎖線や図4に示すように、折り畳まれて収納されていたエアバッグ10は、インフレーター11からのガスを流入させて、エアバッグカバー13の扉部13aを押し開いてケース12から突出し、さらに、隙間Sを経て、フロントウインドシールド3の上方側に突出するように膨張する。膨張を完了させたエアバッグ10は、フロントピラー4の前方側を覆うこととなる。
【0058】
そして、第1実施形態のアクチュエータA1(AE1)では、作動時、ガス発生器35からガスGが発生すれば、そのガスGがシリンダ22内に充填されて、シリンダ22内に収納したピストン38が、支持ロッド40とともに、上昇移動し、先端壁部27の下面27bに当接して上昇移動を規制される。そして、そのピストン38の上昇移動後における係止段部24への配置時、拡径変形部42としての環状弾性体43が、外周面43cを係止段部の内周面24bに当接させるように、縮径状態から拡径状態に、拡径変形部42自体の弾性力によって弾性変形し、係止段部24に係止される。すなわち、図6のBに示すように、支持ロッド40が下降移動しようとしても、環状弾性体43が、その下面43bを係止段部24の底面24aに当接させ、その上面43aをピストン38の凹溝38aの下面38bに当接させて、支持ロッド40の下降移動が規制される。そして、受止材としてのフードパネル15が保護対象物としての歩行者を受け止める際、フードパネル15が、塑性変形して、歩行者の運動エネルギーを吸収し、衝撃を緩和して歩行者を受け止めることができ、さらに、図5に示すように、適宜、支持ロッド40の軸部40bが、折曲点BPの部位で曲げられるように塑性変形して、歩行者の運動エネルギーを吸収し、一層、フードパネル15が、衝撃を緩和して歩行者を受け止めることができることとなる。
【0059】
勿論、支持ロッド40の塑性変形による歩行者の運動エネルギー吸収量を大きくする場合には、図8に示すように、軸部40bを太くして、曲げ剛性を高くした支持ロッド40Aに変更すればよい。この変更時には、ピストン38のねじ孔38cに対応させて、支持ロッド40Aの雄ねじ部40cを形成しておけば、容易に、支持ロッド40から支持ロッド40Aに取り替えることができる。
【0060】
そして、第1実施形態のアクチュエータA1では、剛性を調整するように支持ロッド40,40Aの外径寸法を変えても、シリンダ(ハウジング21)22側の先端壁部27Aにおける支持ロッド40Aの挿通孔27aの内径寸法を調整する必要は生ずるものの、ピストン(移動体37)38側の拡径変形部42やその拡径変形部42を係止するシリンダ22側の係止段部24の構成は、変更せずに、共用することができて、容易に対処することができる。
【0061】
したがって、第1実施形態のアクチュエータA1では、支持ロッド40の作動後の下降移動(後退移動)を防止可能なロック機構R1を備えていても、受止材としてのフードパネル15を支持する支持ロッド40の剛性を容易に調整することができる。
【0062】
なお、支持ロッド40の塑性変形による歩行者の運動エネルギー吸収量を変更する場合、支持ロッド40全体や軸部40bの素材を変更してもよい。
【0063】
また、上昇させるフードパネル15の後端15cの高さを高くする等のために、支持ロッド40Aの移動ストロークを大きくし、かつ、折曲点BPの部位で曲げ塑性変形する場合の支持ロッド40,40Aの相互の曲げ剛性を同等とするように調整する場合でも、図8に示すように、軸部40bを太くして、対処可能となる。そして、このような対処の場合は、支持ロッド40を使用する場合に比べて、支持ロッド40Aの外径寸法と先端壁部27Aにおける支持ロッド40Aの挿通孔27aの内径寸法とが大きくなり、さらに、支持ロッド40Aの軸部40bとシリンダ22の本体23との長さ寸法も長くなるが、支持ロッド40用に使用したピストン38や拡径変形部42を共用できて、シリンダ22の本体23の内周形状や係止段部24の構造を同一の仕様によって、形成できるため、容易に対処できることとなる。さらに勿論、支持ロッド40,40Aがピストン38と一体的な鍛造品等として形成され、かつ、それらの支持ロッド40,40Aの外径寸法相互が異なっても、それらの相互では、拡径変形部42を共用でき、シリンダ22の本体23の内周形状や係止段部24の構造を同一の仕様によって、形成できるため、容易に対処できることとなる。
【0064】
さらに、第1実施形態のアクチュエータA1(AE1)では、シリンダ(ハウジング21)22の外径寸法を大きくするようなシリンダ22側にロック機構の係止部材を設けるのではなく、シリンダ22側は、内周面における先端壁部27側の端部付近に、局部的に、単に拡径するような凹部23cを設けて、係止段部24を形成するだけの簡便な構成とすることができ、シリンダ22の大型化を避けることができる。そして、シリンダ22内では、ピストン(移動体37)38の部位に、局部的に、拡径変形部42を設けるものの、拡径変形部42は、それ自体が、弾性変形することにより、係止段部24に係止可能に拡径変形するものであり、ピストン38側に設ける拡径変形部42を構成する部品は、極力少なくすることができる。
【0065】
そして、第1実施形態では、拡径変形部42が、Cリングとした環状弾性体43から構成され、さらに、凹溝38aへの収納状態で、シリンダ22の内周面23dに摺動可能に圧接されるように構成されて、ピストン38におけるガス発生器35側をシールするピストンリング44として、構成されており、ピストン38側に、別途、摺動性能やシール性能を高めるピストンリングを設けずに済み、ピストン38の部品点数を少なくできる。
【0066】
なお、第1実施形態のアクチュエータA1(AE1)では、弾性変形して拡径する拡径変形部42を使用したが、図9,10に示す第2実施形態のアクチュエータA2(AP1)のように、拡径変形部52が、ピストン(移動体37)48の前進移動後(図例の場合には上昇移動後)における係止段部24への配置時に、先端壁部27に当接して、縮径状態から拡径状態に塑性変形する構成としてもよい(このタイプの符号をAPとし、このタイプの実施形態を、順次、AP1,AP2…と表していく)。
【0067】
この第2実施形態のアクチュエータA2(AP1)は、第1実施形態のアクチュエータA1(AE1)と同様に、作動時に、フードパネルの後端を上昇させる上昇装置Uに使用されるものであり、シリンダ(ハウジング21)22と、シリンダ22内に摺動可能に収納したピストン(移動体37)48と、ピストン48に連結された支持ロッド40と、前進移動(第2実施形態の場合にも、上昇移動)した支持ロッド40の後退移動(第2実施形態の場合でも、下降移動)を規制するロック機構R2と、を備えて構成されている。なお、第2実施形態では、ピストン48とロック機構R2を構成する拡径変形部52とが、第1実施形態のアクチュエータA1(AE1)と相違しているだけであり、他のシリンダ22、ガス発生器35、及び、支持ロッド40は、第1実施形態のアクチュエータA1(AE1)と略同様であり、第1実施形態と同様な部位、部材には、第1実施形態と同じ符号を付けて、説明を省略する。
【0068】
ピストン48は、円盤状として、上下方向の中間部位の外周面に、シリンダ22の内周面23dに摺動可能に圧接されるピストンリング49を嵌める凹溝48aが、周方向の全周にわたって形成されている。ピストン48の上面側には、拡径変形部52を取り付ける複数(実施形態では4個)の取付片48bが上方に突設されている。これらの取付片48bは、拡径変形部52の取付孔52cに嵌め込まれて、拡径変形部52を外れないようにピストン48に取り付けることとなる。また、ピストン48の中央には、支持ロッド40を取り付けるための上下方向に貫通するねじ孔48cが形成されている。
【0069】
拡径変形部52は、シリンダ22の係止段部24とともに、前進移動(実施形態では、上昇移動)した支持ロッド40の後退移動(実施形態では、下降移動)を規制するロック機構R2を構成するものであり、第2実施形態の場合には、挿通孔52a,52bを備えた略楕円球状として、ピストン48の上昇時に、シリンダ22の先端壁部27の下面27bに当接して、略円板状に塑性変形し、係止段部24に嵌合するように拡径するアルミニウム等の金属材から形成されている。拡径変形部52は、支持ロッド40を貫通させる挿通孔52a,52bを備えるとともに、下方の挿通孔52bの周縁に、ピストン48の各取付片48bに嵌入されて、拡径変形部52をピストン48に取り付ける取付孔52cが形成されている。
【0070】
この第2実施形態のアクチュエータA2(AP1)では、作動時、ガス発生器35から発生するガスGにより、ピストン48が上昇して、拡径変形部52が、シリンダ22の先端壁部27の下面27bに当接して塑性変形し、係止段部24に嵌合するように拡径する。そして、塑性変形して拡径した拡径変形部52は、係止段部24に係止されるように、係止段部24に侵入して静止しているため、支持ロッド40が下降移動しようとしても、その下降移動を規制できることとなる。
【0071】
そして、この第2実施形態でも、支持ロッド40の塑性変形による歩行者の運動エネルギー吸収量を変更する場合には、ねじ孔48cを利用して、軸部40bの外径寸法を調整した支持ロッド40A(図11参照)に取り替えればよい。さらに、この第2実施形態でも、剛性を変えるように支持ロッド40,40Aの外径寸法を変えても、シリンダ22側の先端壁部27Aにおける支持ロッド40Aの挿通孔27aの内径寸法を調整する必要は生ずるものの(図11参照)、ピストン(移動体37)48側の拡径変形部52やその拡径変形部52を係止するシリンダ22側の係止段部24の構成は、変更せずに、共用することができて、容易に対処することができる。
【0072】
また、第2実施形態のアクチュエータA2(AP1)でも、シリンダ22の外径寸法を大きくするようなシリンダ22側にロック機構の係止部材を設けるのではなく、シリンダ22側は、内周面における先端壁部27側の端部付近に、局部的に、単に拡径するような凹部23cを設けて、係止段部24を形成するだけの簡便な構成とすることができ、シリンダ22の大型化を避けることができる。そして、シリンダ22内では、ピストン48の部位に、局部的に、拡径変形部52を設けるものの、拡径変形部52は、それ自体が、塑性変形することにより、係止段部24に係止可能に拡径変形するものであって、ピストン48側に設ける拡径変形部52を構成する部品は、極力少なくすることができ、第2実施形態のアクチュエータA2(AP1)でも、第1実施形態と同様な作用・効果を得ることができる。
【0073】
なお、塑性変形させる拡径変形部としては、図12,13に示す第3実施形態のアクチュエータA3(AP2)のように、ピストン(移動体37)58自体を略楕円球状の拡径変形部59から構成してもよい。この拡径変形部59は、ガス発生器35がガスGを発生させれば、シリンダ(ハウジング21)22の内周面23dを摺動して上昇し、そして、シリンダ22の先端壁部27の下面27bに当接して、略円板状に塑性変形し、係止段部24に嵌合するように拡径するアルミニウム等の金属材から形成されている。支持ロッド40は、溶接や接着、あるいは、第1実施形態のねじ孔38cと雄ねじ部40cとのねじ構造、ボルト・ナット止め、リベット止め等を利用して、拡径変形部59の上面側に取り付けられている。
【0074】
この第3実施形態でも、ピストン58と兼用のロック機構R3を構成する拡径変形部59が、第1,2実施形態のアクチュエータA1(AE1),A2(AP1)と相違しているだけであり、他のシリンダ22、ガス発生器35、及び、支持ロッド40は、第1実施形態のアクチュエータA1(AE1)と略同様であり、第1実施形態と同様な部位、部材には、第1,2実施形態と同じ符号を付けて、説明を省略する。
【0075】
そして、この第3実施形態でも、作動時、ガス発生器35から発生するガスGにより、ピストン58兼用の拡径変形部59が、シリンダ22の先端壁部27の下面27bに当接して塑性変形し、係止段部24に嵌合するように拡径する。そして、塑性変形して拡径した拡径変形部59は、係止段部24に係止されるように、係止段部24に侵入しているため、支持ロッド40が下降移動しようとしても、その下降移動を規制できることとなる。
【0076】
そして、この第3実施形態でも、支持ロッド40の塑性変形による歩行者の運動エネルギー吸収量を変更する場合には、軸部40bの外径寸法を調整した支持ロッド40A(図14参照)に取り替えればよい。さらに、この第3実施形態でも、剛性を変えるように支持ロッド40,40Aの外径寸法を変えても、シリンダ22側の先端壁部27Aにおける支持ロッド40Aの挿通孔27aの内径寸法を調整する必要は生ずるものの(図11参照)、ピストン58側の拡径変形部59やその拡径変形部59を係止するシリンダ22側の係止段部24の構成は、変更せずに、共用することができて、容易に対処することができる。
【0077】
また、第3実施形態のアクチュエータA3(AP2)でも、シリンダ22の外径寸法を大きくするようなシリンダ22側にロック機構の係止部材を設けるのではなく、シリンダ22側は、内周面における先端壁部27側の端部付近に、局部的に、単に拡径するような凹部23cを設けて、係止段部24を形成するだけの簡便な構成とすることができ、シリンダ22の大型化を避けることができる。そして、シリンダ22内では、ピストン58兼用の拡径変形部59を設けるものの、拡径変形部59は、それ自体が、塑性変形することにより、係止段部24に係止可能に拡径変形するものであり、ピストン58兼用の拡径変形部59を構成する部品は、一部品と極力少なくすることができ、第3実施形態のアクチュエータA3(AP2)でも、第1,2実施形態と同様な作用・効果を得ることができる。
【0078】
さらに、この第3実施形態では、ピストン58自体を拡径変形部59として構成しており、外周面の少なくとも一部59aにおける周方向の略全周を、シリンダ22の内周面23dに摺動可能としておけば、別途、ピストンリングを設けずに、ピストン58を構成することができる。
【0079】
さらに、図15,16に示す第4実施形態のアクチュエータA4(AC1)のように、塑性変形させて拡径させる拡径変形部69を、流体キャップとしてのガスキャップ70から構成し、そして、作動用流体のガスG自体の圧力を受けて、塑性変形させてもよい(このタイプの符号をACとして、以下、実施形態の順に、AC1,AC2…と表していく)。このガスキャップ70は、ガス発生器35側に開口する流体流入口としてのガス流入口71を備えた袋状として、前進移動後(上昇移動後)における係止段部24への配置時に、ガス流入口71を経て流入するガスGの圧力により、縮径状態から拡径状態に塑性変形する。
【0080】
なお、この第4実施形態のアクチュエータA4(AC1)は、第3実施形態のアクチュエータA3(AP2)と同様に、ピストン68と兼用として、ロック機構R4を構成する拡径変形部69が、第3実施形態のアクチュエータA3(AP2)と相違しているだけであり、他のシリンダ22、ガス発生器35、及び、溶接等でピストン68に取り付けられる支持ロッド40は、第3実施形態のアクチュエータA3(AP2)と略同様であり、第3実施形態と同様な部位、部材には、第3実施形態と同じ符号を付けて、説明を省略する。
【0081】
拡径変形部69としてのガスキャップ70は、ガス発生器35側となる下端側に円形のガス流入口71を開口させた略円盤状の袋状として、天井壁70aと天井壁70aの外周縁から下方に延びる周壁70bとを備えて、上面側に、支持ロッド40を溶接や接着等により連結させている。ガスキャップ70は、ガスGの発生時に、周壁70bの外周面70cを、シリンダ(ハウジング21)22の内周面23dに摺動させて前進移動する。この拡径変形部(ガスキャップ70)69も、アルミニウム等の塑性変形可能な金属材から形成されている。
【0082】
そして、この第4実施形態では、作動時、ガス発生器35から発生するガスGにより、ピストン68兼用の拡径変形部69が、ガスキャップ70の外周面70cをシリンダ22の内周面23dに摺動させて、係止段部24の位置まで配置されると、先端壁部27の下面27bに天井壁70aを当接させて上昇移動を規制され、そして、ガス流入口71を経て流入したガスGの圧力により、ガスキャップ70の周壁70bが、縮径状態から拡径状態に塑性変形して、係止段部24に嵌合するように拡径する。そして、塑性変形して拡径した拡径変形部69は、係止段部24に係止されるように、係止段部24に侵入して静止しているため、支持ロッド40が下降移動しようとしても、その下降移動を規制できることとなる。
【0083】
そして、この第4実施形態でも、支持ロッド40の塑性変形による歩行者の運動エネルギー吸収量を変更する場合には、軸部40bの外径寸法を調整した支持ロッド40A(図17参照)に取り替えればよい。さらに、この第4実施形態でも、剛性を変えるように支持ロッド40,40Aの外径寸法を変えても、ハウジング21側の先端壁部27Aにおける支持ロッド40Aの挿通孔27aの内径寸法を調整する必要は生ずるものの(図17参照)、ピストン68側の拡径変形部69やその拡径変形部69を係止するハウジング21側の係止段部24の構成は、変更せずに、共用することができて、容易に対処することができる。
【0084】
また、第4実施形態のアクチュエータA4(AC1)でも、シリンダ22の外径寸法を大きくするようなシリンダ22側にロック機構の係止部材を設けるのではなく、シリンダ22側は、内周面における先端壁部27側の端部付近に、局部的に、単に拡径するような凹部23cを設けて、係止段部24を形成するだけの簡便な構成とすることができ、シリンダ22の大型化を避けることができる。そして、シリンダ22内では、ピストン68兼用の拡径変形部69を設けるものの、拡径変形部69は、それ自体が、塑性変形することにより、係止段部24に係止可能に拡径変形するものであり、ピストン68兼用の拡径変形部69を構成する部品は、一部品と極力少なくすることができ、第4実施形態のアクチュエータA4(AC1)でも、第3実施形態と同様な作用・効果を得ることができる。
【0085】
さらに、この第4実施形態でも、第3実施形態と同様に、ピストン68自体を拡径変形部69として構成しており、外周面70cの少なくとも一部における周方向の略全周を、シリンダ22の内周面23dに摺動可能としておけば、別途、ピストンリングを設けずに、ピストン68を構成することができる。
【0086】
また、ガス圧を利用する場合、図18に示す第5実施形態のアクチュエータA5(AC2)のように構成してもよい。この第5実施形態では、塑性変形させて拡径させる拡径変形部79を、流体キャップとしてのガスキャップ80から構成し、そして、作動用流体のガスG自体の圧力を受けて、塑性変形させてもよい。このガスキャップ80は、ガス発生器35側に開口する流体流入口としてのガス流入口85を備えた袋状として、前進移動後(上昇移動後)における係止段部24への配置時に、ガス流入口85を経て流入するガスGの圧力により、縮径状態から拡径状態に塑性変形する。
【0087】
なお、この第5実施形態のアクチュエータA5(AC2)は、第4実施形態のアクチュエータA4(AC1)と同様に、ロック機構R5を構成するピストン78兼用の拡径変形部79と係止段部24Aとが、第4実施形態のアクチュエータA4(AC1)と相違しているだけであり、他のシリンダ22、ガス発生器35、及び、ねじ構造や溶接等でピストン78に取り付けられる支持ロッド40は、第4実施形態のアクチュエータA4(AC1)と略同様であり、第4実施形態と同様な部位、部材には、第4実施形態と同じ符号を付けて、説明を省略する。
【0088】
この第5実施形態のシリンダ22側に設けられる係止段部24Aは、第4実施形態の係止段部24に比べて、シリンダ22の軸方向に沿う長さ寸法を若干大きくし、拡径変形部79の後退移動(下降移動)を規制する底面24aと、底面24aの外周縁からガスキャップ80(ピストン78若しくは移動体37)の前進移動方向(上方)に沿って延びる内周面24bと、を備え、この内周面24bをも、下降移動の規制に利用する点が、第4実施形態と相違している。
【0089】
流体キャップとしてのガスキャップ80は、図18と図19のA,Bとに示すように、支持ロッド40を連結させて先端壁部27の下面27bに当接可能とした円盤状の天井板部81と、天井板部81の外周縁から後退移動側(下方側)に延びる円筒状の傘部82と、を備えて構成されている。傘部82は、円筒状の筒部83から下端側にかけて、シリンダ22の軸周り方向で複数(第5実施形態では4個)に分割された係止脚84を備えて構成されている。そして、流体流入口としてのガス流入口85は、傘部82の各係止脚84の先端(下端)84bで囲まれた部位に、形成されている。なお、このガスキャップ80も、アルミニウム等の塑性変形可能な金属材から形成されている。
【0090】
傘部82の各係止脚84は、外周面84aをシリンダ22の内周面23dに摺動可能な略1/4円の曲面状として、ガスキャップ80の上昇移動後における係止段部24Aへの配置時に、ガス流入口85から流入させたガスGの圧力により、塑性変形しつつ拡径方向に開き、各先端84bを係止段部24Aの底面24aと内周面24bとに当てて、ガスキャップ80の後退移動を規制するように、構成されている。
【0091】
この第5実施形態のアクチュエータA5(AC2)でも、作動時、ガスキャップ80が、ガスGの圧力を受けて、傘部82の各係止脚84の外周面84aをシリンダ22の内周面23dに摺動させつつ、係止段部24Aの配置位置まで、前進移動する。そして、ガスキャップ80が、天井板部81を先端壁部27の下面27bに当接させて移動を停止されると、傘部82の各係止脚84が、ガス流入口85から流入させたガスGの圧力によって塑性変形しつつ拡径し、各係止脚84の先端84bが、係止段部24Aの底面24a上に配置され、さらに、係止段部24Aの底面24a上を移動して係止段部24Aの内周面24bに当たる。この時、受止材としてのフードパネル(図示せず)を支持する支持ロッド40が下降移動しようとしても、各係止脚84が、図18のBに示すように、先端84bを係止段部24Aの底面24aと内周面24bとに当接させており、さらに、拡径するように変形せずに、心張り棒(つっかい棒)の状態となって、天井板部81を支持することから、天井板部81が下降移動せず、その結果、支持ロッド40の下降移動を防止することができる。
【0092】
そして勿論、この第5実施形態でも、支持ロッド40の塑性変形による歩行者の運動エネルギー吸収量を変更する場合には、軸部40bの外径寸法を調整した支持ロッド40A(図18のAの二点鎖線参照)に取り替えればよい。さらに、この第5実施形態でも、剛性を変えるように支持ロッド40,40Aの外径寸法を変えても、ハウジング21側の先端壁部27Aにおける支持ロッド40Aの挿通孔27aの内径寸法を調整する必要は生ずるものの、ピストン78側の拡径変形部79やその拡径変形部79を係止するハウジング21側の係止段部24Aの構成は、変更せずに、共用することができて、容易に対処することができ、第5実施形態のアクチュエータA5(AC2)でも、第4実施形態と同様な作用、効果を得ることができる。
【0093】
さらに、この第5実施形態のアクチュエータA5(AC2)では、ガスキャップ80の全体を塑性変形させずに、傘部82の各係止脚84が心張り棒としての作用を確保して、各係止脚84の元部84c側付近を部分的に塑性変形させるだけでよく、ガスキャップ80の塑性変形状態をアクチュエータA5(AC2)毎に安定させることができる。
【0094】
なお、第5実施形態では、傘部82の係止脚84を4個設けた場合を示したが、図20,21に示すピストン78A,78Bの拡径変形部79A,79Bを構成するガスキャップ80A,80Bのように、係止脚84を2個や3個等の複数として構成してもよい。さらに、後退移動の規制を安定させるように、図22に示す第6実施形態のアクチュエータA6(AC3)のように、ロック機構R6を構成する係止段部24Cとともに、ピストン78Cの係止脚84Cの長さ寸法Lを、長くするように構成してもよい。また、この第6実施形態のアクチュエータA6(AC3)のように、先端壁部27Cの下面27bに、ピストン78C(移動体37)の前進移動後(上昇移動後)における係止段部24Cへの配置時に、各係止脚84Cの拡径方向への変形の補助用として、各係止脚84Cの元部84c側近傍の天井板部81における外周縁付近に当接し、天井板部81の外周縁部位81aをピストン78Cの上昇移動方向側へ塑性変形させる変形用突起27cを、配設させてもよい。第6実施形態の場合、変形用突起27cは、挿通孔27aの周縁で、円環状に下方へ突出されている。このような構成では、各係止脚84Cを、均等に、拡径方向に塑性変形させ易く、支持ロッド40の後退移動を、シリンダ22の軸周り方向で、バランス良く規制することができる。
【0095】
また、第5,6実施形態のような塑性変形させるような傘部82を配設させる構成では、図23,24に示す第7実施形態のアクチュエータA7(AP3)のように構成してもよい。
【0096】
この第7実施形態のアクチュエータA7(AP3)は、ピストンシリンダタイプとして構成されて、作動時に、シリンダ22としてのハウジング21内に作動用流体を流入させることにより、ピストン88としての移動体37を前進移動(上昇移動)させる構成としており、第5実施形態と同様に、ピストン88のロック体90とともにロック機構R7を構成するシリンダ22側に設けられる係止段部24Aが、拡径変形部92の後退移動(下降移動)を規制する底面24aと、この底面24aの外周縁からピストン88の上昇移動方向に沿って延びる内周面24bと、を設けて構成されている。
【0097】
なお、この第7実施形態のアクチュエータA7(AP3)は、移動体37としてのピストン88と先端壁部27Cの構成が、第5実施形態のアクチュエータA5(AC2)と相違しているだけであり、他のシリンダ22、ガス発生器35、及び、ねじ構造や溶接等でピストン88に取り付けられる支持ロッド40は、第5実施形態のアクチュエータA5(AC2)と略同様であり、第5実施形態と同様な部位、部材には、第5実施形態と同じ符号を付けて、説明を省略する。そして、シリンダ22の先端壁部27Cの構成は、第6実施形態と同様に、下面27bの挿通孔27aの周縁に、各係止脚95の拡径方向への塑性変形の補助用として、円環状に下方へ突出する変形用突起27cが形成されている。
【0098】
そして、第7実施形態のピストン88は、ピストン本体89と、ピストン本体89における先端壁部27C側に、ピストン本体89と別体とし、拡径変形部材として配置し、先端壁部27Cに当接可能として支持ロッド40に連結されるロック体90と、設けて構成されている。
【0099】
ロック体90は、支持ロッド40を連結させて先端壁部27Cに当接可能とした円盤状の天井板部91と、天井板部91の外周縁からピストン本体89側に延びて、拡径変形部92を構成する筒状の傘部93と、を設けて構成されている。傘部93は、第5実施形態の傘部82と同様に、天井板部91から延びる円筒状の筒部94と、天井板部91から離れる筒部94の端部側に、シリンダ22の軸周り方向で複数(第7実施形態でも4個)に分割された係止脚95と、を配設させて構成されている。なお、このロック体90も、第5実施形態のガスキャップ80(ピストン78、拡径変形部79)と同様に、アルミニウム等の塑性変形可能な金属材から形成されている。
【0100】
また、ピストン本体89は、傘部93側の先端に、ピストン88としての移動体37の上昇移動時に傘部93の各係止脚95に当接させてロック体90を係止段部24Aの配置位置まで移動させるように押圧可能に、円錐状とした先細り状のテーパ状押圧部89bが、形成されている。ピストン本体89は、テーパ状押圧部89bを備えた略円盤状として、外周面の凹溝89aに、シリンダ22の本体23の内周面23dに摺動可能なピストンリング89cを配設させて、構成されている。
【0101】
そして、傘部93は、天井板部91を先端壁部27Cに当接させるようにピストン本体89に押されて、ロック体90が係止段部24Aの配置位置に配置された際、内周側をピストン本体89のテーパ状押圧部89bに押されて、塑性変形しつつ拡径方向に開き、各係止脚95を、係止段部24Aの底面24aと内周面24bとに当てて、ロック体90の下降移動が規制されることとなる。
【0102】
この第7実施形態のアクチュエータA7(AP3)では、作動時、ピストン本体89が、ガスGの圧力を受けて上昇移動(前進移動)し、ロック体90が、ピストン本体89のテーパ状押圧部89bに押されて、係止段部24Aの配置位置まで、上昇移動する。そして、ロック体90が、図24のAに示すように、天井板部91を先端壁部27Cに当接させて移動を停止されても、ロック体90と別体のピストン本体89がテーパ状押圧部89bを押し当てて上昇移動することから、図24のB,Cに示すように、ロック体90の傘部93の各係止脚95が塑性変形しつつ拡径し、各係止脚95の先端95aが、係止段部24Aの底面24a上に配置され、さらに、係止段部24Aの底面24a上を移動して係止段部24Aの内周面24bに当たる。この時、図示しない受止材としてのフードパネルを支持する支持ロッド40が下降移動しようとしても、各係止脚95が、先端95aを係止段部24Aの底面24aと内周面24bとに当接させており、さらに、拡径するように変形せずに、心張り棒(つっかい棒)の状態となって、天井板部91を支持することから、天井板部91が下降移動せず、その結果、ロック体90の下降移動が規制されて、支持ロッド40の下降移動を防止することができる。
【0103】
そして勿論、この第7実施形態でも、支持ロッド40の塑性変形による歩行者の運動エネルギー吸収量を変更する場合には、軸部40bの外径寸法を調整した支持ロッド40A(図23のAの二点鎖線参照)に取り替えればよい。さらに、この第7実施形態でも、剛性を変えるように支持ロッド40,40Aの外径寸法を変えても、ハウジング21側の先端壁部27CAにおける支持ロッド40Aの挿通孔27aの内径寸法を調整する必要は生ずるものの、ピストン88側のピストン本体89やロック体90やそのロック体90を係止するハウジング21側の係止段部24Aの構成は、変更せずに、共用することができて、容易に対処することができ、第7実施形態のアクチュエータA7(AP3)でも、第5実施形態と同様な作用、効果を得ることができる。
【0104】
さらに、この第7実施形態のアクチュエータA7(AP3)では、ピストン本体89のテーパ状押圧部89bによって、各係止脚95を均等に拡径させることができて、支持ロッド40,40Aの後退移動を、シリンダ22の軸周り方向で、バランス良く規制することができる。
【0105】
また、この第7実施形態でも、先端壁部27Cの下面27bに、ロック体90の前進移動後(上昇移動後)における係止段部24Aへの配置時に、各係止脚95の拡径方向への変形の補助用として、各係止脚95の元部95b側近傍の天井板部91における外周縁付近に当接し、天井板部91の外周縁部位91aをロック体90の上昇移動方向側へ塑性変形させる変形用突起27cを、配設させている。そのため、このような構成では、各係止脚95を、一層均等に、拡径方向に塑性変形させ易く、支持ロッド40の後退移動を、シリンダ22の軸周り方向で、バランス良く規制することができる。
【0106】
なお、第7実施形態において、各係止脚95の先端95aを、係止段部24Aの底面24a上を移動させて係止段部24Aの内周面24bに当接させる機構は、ピストン本体89のテーパ状押圧部89bの押圧だけでなく、支持ロッド40が後退移動しようとする際の支持ロッド40から天井板部91を経て各係止脚95に作用する押圧力を、利用してもよい。
【0107】
また、上記の先端壁部27,27A,27Cの下面27bに当接させたり、ガス圧を利用して、拡径変形部52,59,69,79,79C,92を塑性変形させる第2〜7実施形態のアクチュエータA2(AP1),A3(AP2),A7(AP3),A4(AC1),A5(AC2),A6(AC3)の場合には、拡径変形部52,59,69,79,79C,92は、作動時、ピストン(移動体37)48,58,68,78,78C,88の係止段部24,24A,24Cまで円滑に移動できる寸法を確保できれば、後は、係止段部24,24A,24Cに係止可能に、塑性変形しつつ拡径すればよく、高い寸法精度で構成せずに済み、かつ、部品点数も少なく済むことから、極めて、簡便に、アクチュエータA2(AP1),A3(AP2),A7(AP3),A4(AC1),A5(AC2),A6(AC3)を製造することができる。
【0108】
また、拡径変形部を、弾性変形を利用して、縮径状態から拡径状態に変形させる場合、図25〜27に示す第8実施形態のアクチュエータA8(AE2)のように構成してもよい。この第8実施形態のアクチュエータA8(AE2)は、ピストンシリンダタイプとして構成されて、作動時に、シリンダ22としてのハウジング21内に作動用流体としてのガスGを流入させることにより、ピストン98としての移動体37を前進移動(上昇移動)させる構成としており、拡径変形部100は、ピストン(移動体37)98の移動方向に沿ってピストン98の外周面側に配置される弾性片部101、として構成されている。
【0109】
なお、この第8実施形態では、係止段部24とともにロック機構R8を構成するピストン98と、シリンダ22の先端壁部27Dとの構成が、第1実施形態と相違する他、他の構成のシリンダ22、ガス発生器35、及び、支持ロッド40は、第1実施形態のアクチュエータA1(AE1)と略同様であり、第1実施形態と同様な部位、部材には、第1実施形態と同じ符号を付けて、説明を省略する。
【0110】
そして、ピストン98は、支持ロッド40とねじ構造や溶接等により連結される円板状の基板部99aと、基板部99aの外周縁からシリンダ22の本体23の内周面23dに摺動可能な円筒状の筒部99bと、を備えた本体99と、拡径変形部100としての弾性片部101と、を備えて構成されている。
【0111】
弾性片部101は、ピストン98の移動方向に沿う一方の端部(実施形態の場合、下端)を、ピストン98の本体99の基板部99a側近傍の筒部99bに連結された基部101a側とし、ピストン98の移動方向に沿う他方の端部(実施形態の場合、上端)を、係止段部24に係止可能に外方へ突出する鉤片部101bとして構成されている。換言すれば、各弾性片部101は、筒部99bの軸周り方向で、筒部99bを断続的に繰り抜き、鉤片部101b側を撓み可能に、基部101a側を筒部99bの基板部99a近傍から延ばすように、配設されている。第8実施形態の場合、弾性片部101は、ピストン98の軸周り方向に放射状に、4個配設され、シリンダ22の本体23内への収納時には、各鉤片部101bは、筒部99bの外周面と連なるように、内周面23dに接触して、内側に撓んで収納されている(図25のA参照)。
【0112】
そして、先端壁部27Dは、ピストン(移動体37)98の上昇移動後における係止段部24への配置時に、各鉤片部101bの内側縁101cに当接して鉤片部101bを拡径方向に案内する案内面27dを、配設させている。この案内面27dは、先端壁部27Dの下面27b側における挿通孔27aの周縁を、円錐状に突出させ、その先細りのテーパ状部位の下面側(テーパ面)から構成されている。
【0113】
この第8実施形態のアクチュエータA8(AE2)では、作動時、ガス発生器35から発生するガスGにより、ピストン98が上昇して、拡径変形部100としての弾性片部101が、係止段部24に配置されれば、各鉤片部101b相互が、基部101a側を回転中心として回転するように、内側に撓んでいた縮径状態から拡径状態に弾性変形し、各鉤片部101bが係止段部24に係止され、支持ロッド40が下降移動しようとしても、その下降移動を規制できることとなる。
【0114】
そして、この第8実施形態でも、支持ロッド40の塑性変形による歩行者の運動エネルギー吸収量を変更する場合には、ピストン98の本体99における基板部99aに対して、軸部40bの外径寸法を調整した支持ロッド40A(図25の二点鎖線参照)を取り替えて連結させればよい。そして、この第8実施形態でも、剛性を変えるように支持ロッド40,40Aの外径寸法を変えても、シリンダ22側の先端壁部27DAにおける支持ロッド40Aの挿通孔27aの内径寸法を調整する必要は生ずるものの(図25のAの二点鎖線参照)、ピストン(移動体37)98やその拡径変形部100を係止するシリンダ22側の係止段部24の構成は、変更せずに、共用することができて、容易に対処することができ、第1実施形態と同様な作用・効果を得ることができる。
【0115】
そしてさらに、第8実施形態では、シリンダ22の先端壁部27Dに、ピストン(移動体37)98の上昇移動後(前進移動後)における係止段部24への配置時に、鉤片部101bの内側縁101cに当接して鉤片部101bを拡径方向に案内する案内面27dが配設されている。そのため、この第8実施形態では、鉤片部101bの拡径方向への付勢力が弱くとも、鉤片部101bを、的確に、係止段部24に係止させるように拡径変形させることができる。すなわち、ピストン(移動体37)98の上昇移動時に、各鉤片部101bがシリンダ22の内周面23dに摺動する際の抵抗を弱くするように、鉤片部101bの拡径方向の付勢力を弱くしても、案内面27dを利用して、的確に、鉤片部101bを係止段部24に係止させることができて、ピストン(移動体37)98の移動速度が低減することを抑制することができる。
【0116】
勿論、第8実施形態では、第1実施形態の先端壁部27のように、案内面27dを設けずに構成してもよい。さらに、図28に示す第9実施形態のアクチュエータA9(AE3)のように、係止段部24Aとともにロック機構R9を構成するピストン98Eを、第8実施形態のピストン98を上下反転させた構成として、弾性片部101が、基部101aに対する鉤片部101bの配置を、ピストン(移動体37)98Eの下降移動側(後退移動側)に位置させる構成としてもよい。
【0117】
また、第1実施形態のアクチュエータA1(AE1)のように、環状弾性体43を、内外周を貫通する切り欠き43e(図7のB参照)を有したCリングから構成する場合は、図29に示す環状弾性体43Eを使用してもよい。この環状弾性体43Eは、環状弾性体43と同様に、係止段部24とともにロック機構R10を形成する拡径変形部42として構成するとともに、ばね鋼製からなる略円環状の板状として構成され、切り欠き43e近傍の先端部43f,43f側から切り欠き43eと点対称の位置となる元部43g側にかけて、内外周間の幅寸法BEを広くする形状に、形成されている。
【0118】
なお、この環状弾性体43Eを使用する第10実施形態のアクチュエータA10(AE4)は、図30,31に示すように、環状弾性体43Eが第1実施形態の環状弾性体43と相違するだけで、他のピストン38(移動体37)やシリンダ22の先端壁部27等の構成は、第1実施形態と同様であり、第1実施形態と同様な部位や部材には、第1実施形態と同一の符号を付して、説明を省略する。
【0119】
そして、この環状弾性体43Eは、第1実施形態の環状弾性体43と同様に、ピストン38の凹溝38aへの収納状態で、シリンダ22の内周面23dに摺動可能に圧接されるように、ピストン38自体の外径寸法D0を構成して、ピストン38におけるガス発生器35側をシールするピストンリング44としての役目も果たしている。そして、この環状弾性体43Eでは、図30のA,Bや図31のA,Bに示すように、ピストン38の上昇移動後における係止段部24への配置時、自身の弾性力による弾性変形によって、外周面43cを係止段部24の内周面24bに当接させるように、縮径状態から拡径状態に、すなわち、縮径状態の外径寸法D0から外径寸法D1となるように、弾性変形する。ただし、図31のBに示すように、拡径時の内周面43dは、先端部43f,43f付近では、凹溝38a内から離脱して、係止段部24の底面24a側に配置される。
【0120】
すなわち、このような環状弾性体43Eでは、切り欠き43e近傍の先端部43f,43f側を環状弾性体43Eの軸心C(図29のA参照)側に撓ませるように、容易に縮径させ、かつ、係止段部24への配置時に、容易に拡径させるように、弾性変形させることができて、凹溝38aへの配置が容易となる。さらに、この第10実施形態の環状弾性体43Eでは、環状弾性体43Eにおける切り欠き43e近傍の先端部43f,43f自体が、内外周間の幅寸法BEを狭くしており、拡径時にピストン38(移動体37)の凹溝38aとシリンダ22(ハウジング21)の係止段部24とに跨る状態とならず、拡径した外周面43cを係止段部24の内周面24bに当接させて、係止段部24側だけに配置されても、先端部43fから点対称の位置となる元部43g側付近を、ピストン38の凹溝38aとシリンダ22の係止段部24とに跨る状態として係止段部24の底面24aに係止させることができて、支持ロッド40の後退移動を規制できる。換言すれば、環状弾性体43Eにおける切り欠き43e近傍の先端部43f,43fは、係止段部24の元部43g側をピストン38の凹溝38aとシリンダ22の係止段部24とに跨る状態へ、凹溝38aから突出させるように、元部43g側を移動させる弾性変形を確保できれば、先端部43f,43f自体を拡径時にピストン38の凹溝38aとシリンダ22の係止段部24とに跨る状態に拡径させる必要はない。そのため、第1実施形態のように、拡径時に、環状弾性体43の全域をピストン38の凹溝38aとシリンダ22の係止段部24とに跨る状態に拡径させる構成とせずに、先端部43f,43f自体が、弾性変形時の縮径状態から拡径状態となる外径寸法D1さえ考慮すれば、弾性変形時に内径寸法d1を厳密に管理せずに済み、Cリングからなる環状弾性体43Eを、容易に製造することができる。
【0121】
また、環状弾性体をCリング形状とする場合、第1,10実施形態の環状弾性体43,43Eのように、ピストン38(移動体37)の移動方向に沿って板状の厚さ寸法を有した円板状のリング形状とする他、筒形状として、軸直交方向の横断面をCリング形状としてもよい。
【0122】
例えば、図32,33に示す第11実施形態のアクチュエータA11(AE5)のように構成してもよい。この第11実施形態における拡径変形部112を構成する環状弾性体113は、ばね鋼等からなって、軸直交方向の横断面を、内外周を貫通する切り欠き113aを有したCリング形状とするとともに、前進移動側の端部(上端部)114より後退移動側の端部(下端部)115の外径寸法を拡径可能なテーパ管状に、形成されている。
【0123】
なお、この第11実施形態のアクチュエータA11では、拡径変形部112としての環状弾性体113、環状弾性体113とともにロック機構R11を構成する係止段部24F、及び、テーパ管状の環状弾性体113を収納する凹溝108a付近のピストン108の構成が、第1実施形態のアクチュエータA1と相違するだけで、他の構成は、第1実施形態と同様であり、第1実施形態と同様な部位や部材には、第1実施形態と同一の符号を付して、説明を省略する。
【0124】
そして、環状弾性体113では、ピストン108(移動体37)の前進移動後における係止段部24Fへの配置時、上端部114を凹溝108aに収納させ、かつ、下端部115を、縮径状態から拡径状態に弾性変形させて、係止段部24Fにおける底面24aと内周面24bとに当て可能に、凹溝108aから離脱するように、構成されている。すなわち、第11実施形態の場合、下端部115は、アクチュエータA11(AE5)の作動前の状態で、外径寸法DD0(図32のA参照)をシリンダ22の本体23の内周面23dに一致させる状態に縮径させ(図33のA参照)、作動時の係止段部24Fへの配置時、係止段部24Fの内周面24dに当接させる外径寸法DD1に拡径することとなる(図32のB、図33のB参照)。
【0125】
移動体37としてのピストン108は、シリンダ22の先端壁部27の挿通孔27aを挿通させる支持ロッド40の下端の雄ねじ部40cをねじ孔108eに螺合させることにより、支持ロッド40を連結させて、略円柱状に形成されている。そして、ピストン108の後退移動側となる下部の外周面に、ピストンリング109を配設させた凹溝108fが設けられ、ピストン108の前進移動側となる上部側の外周面に、拡径変形部112としての環状弾性体113を収納する凹溝108aが設けられている。凹溝108aは、支持ロッド40の軸直交方向の底部側の周面108cと、周面108cの上縁側から延びる下向きの下面108bと、周面108cの下縁側から延びる上向きの上面108dと、を備えて構成され、凹溝108a内の下面108bと上面108dとの間に、下端部115を縮径させた状態の環状弾性体113を収納させている。
【0126】
シリンダ22の係止段部24Fは、係止する環状弾性体113がピストン108の移動方向に沿って長いテーパ管状としているため、その長さ寸法に対応させて、第1実施形態の係止段部24に比べて、内周面24bの長さ寸法LFを長く構成され、かつ、環状弾性体113の下端部115の縮径状態から拡径状態に外径寸法DD0,DD1の差(変形量)を大きく確保できるように、底面24aの幅寸法(シリンダ22の内周面23dと係止段部24Fの内周面24bとの距離)BFを大きく構成されている(図33のA参照)。
【0127】
このアクチュエータA11(AE5)では、作動時、図33のA,Bに示すように、ガス発生器35から発生するガスGにより、ピストン108が上昇して、拡径変形部112としての環状弾性体113が係止段部24Fに配置されれば、下端部115が、縮径状態から拡径状態に弾性変形して、凹溝108aから離脱する。そして、支持ロッド40が下降移動しようとしても、上端部114が凹溝108aに収納された状態で周面108cと下面108bとに当たり、かつ、下端部115が、係止段部24Fにおける底面24aと内周面24bとに当たる状態となる。すなわち、下端部115を拡径させた環状弾性体113が、支持ロッド40の下降移動を、凹溝108aに収納させて周面108cと下面108bとに当てた上端部114と、底面24aと内周面24bとに当てて係止段部24Fに係止させた下端部115との間の部位、すなわち、テーパ管状の軸方向に沿った略円筒状の周壁113bによって、受け止めることができ、大きな圧縮荷重でも対抗できて、支持ロッド40の後退移動を安定して規制することができる。
【0128】
また、この第11実施形態のように、軸方向に沿って切り欠き113aを設けたテーパ管状の環状弾性体113では、上端部114が拡径時に凹溝108a内に収納された状態としていれば、下端部115は、拡径時、単に、係止段部24Fにおける底面24aと内周面24bとに当て可能に、凹溝108aから離脱できればよい。換言すれば、後退移動側端部となる下端部115が、凹溝108aから係止段部24Fに跨ぐように、拡径できなくともよく、軸方向に沿って切り欠き113aを設けたテーパ管状の環状弾性体113では、下端部115の肉厚や変形量(凹溝108aに収納可能に拡径状態から縮径状態に弾性変形させる変形量)の精度を厳密に管理しなくともよくなり、容易に製造できることとなる。
【0129】
なお、第10,11実施形態において、支持ロッド40の塑性変形による歩行者の運動エネルギー吸収量を大きくする場合には、第1実施形態と同様に、先端壁部27の変更とともに、ピストン38,108のねじ孔38c,108eを利用して、軸部40bを太くして曲げ剛性を高くした支持ロッド40A(図8参照)等に、支持ロッド40を変更すればよい。
【0130】
また、軸方向に沿って切り欠き113aを設けたテーパ管状の環状弾性体としては、図34のA,Bに示す環状弾性体113Gのように、下端部(後退移動側の端部)115側を拡径状態に復元し易くするため、軸方向に沿う複数のスリット115aを下端部115に設けてもよい。
【0131】
さらに、第1〜11実施形態のアクチュエータA1(AE1),A8(AE2),A9(AE3),A10(AE4),A11(AE5),A2(AP1),A3(AP2),A7(AP3),A4(AC1),A5(AC2),A6(AC3)では、前進移動を上昇させる移動とし、後退移動を下降させる移動とした場合を示したが、作動方向は、これに限定されず、例えば、水平方向の作動方向に本発明のアクチュエータを使用してもよく、また、本発明のアクチュエータが使用される自動車用安全装置は、歩行者保護装置M1以外の装置に使用してもよい。例えば、図29に示す自動車用安全装置としての膝保護装置M2に、アクチュエータA1(AE1),A8(AE2),A9(AE3),A10(AE4),A11(AE5),A2(AP1),A3(AP2),A7(AP3),A4(AC1),A5(AC2),A6(AC3)(図例では、これらをまとめてA0と表示する)を使用してもよい。
【0132】
この膝保護装置M2は、保護対象物としての運転者DRの膝Kを受け止めて、運転者DRの膝Kを保護するものであり、車両の前面衝突時、アクチュエータA0が作動し、インストルメントパネル74に配設された膝受止材75を後方側に押し出し、膝Kが前進して膝受止材75と衝突した際、支持ロッド40の軸部40bを曲げ塑性変形させて、運転者DRの運動エネルギーを、膝Kを受け止めつつ吸収することとなる。なお、膝受止材75は、下端75b側を、インストルメントパネル74に取り付けられたヒンジ部76に軸支されて、アクチュエータA0の作動時、上端75aがヒンジ部76を回転中心として後方側に押し出されることとなる。
【0133】
また、第1〜11実施形態のアクチュエータA1(AE1),A8(AE2),A9(AE3),A10(AE4),A11(AE5),A2(AP1),A3(AP2),A7(AP3),A4(AC1),A5(AC2),A6(AC3)では、ピストンシリンダタイプとして、シリンダ22としてのハウジング21の先端壁部27,27A,27C,27Dから離れた端部側に、作動信号の入力時に着火させてガスGを発生させるガス発生器35を配設させ、ガス発生器35の発生するガスGを駆動源として、ピストン38,48,58,68,78,78C,88,98,98E,108としての移動体37が前進移動する構成としており、ガス発生器35として、着火時に爆発的に急激にガスを発生可能なマイクロガスジェネレータを使用できて、迅速に、ピストン38,48,58,68,78,78C,88,98,98E,108としての移動体37を、移動させることができる。勿論、アクチュエータをピストンシリンダタイプとする場合には、ピストンとしての移動体を前進移動させる駆動源として、水、油、空気等を作動用流体として、それらの水圧、油圧、エア圧等を利用してもよい。
【0134】
さらに、移動体を前進移動させる駆動源としては、ソレノイドの吸引力を利用したり、圧縮させたばねの付勢力(復元力)等を利用することができる。例えば、ソレノイドの吸引力を利用する場合には、可動鉄心を移動体としてハウジング内に配設し、ハウジング内の可動鉄心の周囲に配置させた励磁コイルに通電すれば、移動体を前進移動させることができる。また、ばねを利用する場合には、圧縮させたコイルばねの自由端側に移動体を接続させるとともに、引き込み可能にソレノイド等から構成するストッパで、移動体若しくは圧縮コイルばねの先端を係止させておき、係止を解除させるようにストッパを引き込ませれば、移動体が圧縮コイルばねの復元する付勢力により、前進移動することとなる。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】本発明の第1実施形態のアクチュエータを使用した歩行者保護装置を搭載させた車両の斜視図である。
【図2】第1実施形態のアクチュエータを使用した歩行者保護装置を搭載させた車両の拡大部分平面図である。
【図3】第1実施形態の歩行者保護装置における車両前後方向に沿った概略縦断面図であり、図2のIII−III部位に対応する。
【図4】第1実施形態の歩行者保護装置の作動時を示す概略縦断面図である。
【図5】第1実施形態のアクチュエータの支持ロッドの塑性変形状態を示す概略図である。
【図6】第1実施形態のアクチュエータの概略縦断面図であり、作動前と作動完了時とを示す。
【図7】第1実施形態のアクチュエータの拡径変形部の部位における概略横断面図であり、作動前と作動完了時とを示す。
【図8】第1実施形態のアクチュエータの支持ロッドを取り替えた状態を示す概略縦断面図である。
【図9】第2実施形態のアクチュエータの概略縦断面図であり、作動前と作動完了時とを示す。
【図10】第2実施形態のアクチュエータの拡径変形部の部位における概略横断面図であり、作動前と作動完了時とを示す。
【図11】第2実施形態のアクチュエータの支持ロッドを取り替えた状態を示す概略縦断面図である。
【図12】第3実施形態のアクチュエータの概略縦断面図であり、作動前と作動完了時とを示す。
【図13】第3実施形態のアクチュエータの拡径変形部の部位における概略横断面図であり、作動前と作動完了時とを示す。
【図14】第3実施形態のアクチュエータの支持ロッドを取り替えた状態を示す概略縦断面図である。
【図15】第4実施形態のアクチュエータの概略縦断面図であり、作動前と作動完了時とを示す。
【図16】第4実施形態のアクチュエータの拡径変形部の部位における概略横断面図であり、作動前と作動完了時とを示す。
【図17】第4実施形態のアクチュエータの支持ロッドを取り替えた状態を示す概略縦断面図である。
【図18】第5実施形態のアクチュエータの概略縦断面図であり、作動前と作動完了時とを示す。
【図19】第5実施形態のアクチュエータに使用するピストンの部位を示す下面側と上面側から見た各斜視図である。
【図20】第5実施形態のアクチュエータに使用するピストンの変形例を示す斜視図である。
【図21】第5実施形態のアクチュエータに使用するピストンの他の変形例を示す斜視図である。
【図22】第6実施形態のアクチュエータの概略縦断面図であり、作動前と作動完了時とを示す。
【図23】第7実施形態のアクチュエータの概略縦断面図であり、作動前と作動完了時とを示す。
【図24】第7実施形態のアクチュエータの作動時におけるピストン本体の移動に伴うロック体の変形を説明する概略縦断面図である。
【図25】第8実施形態のアクチュエータの概略縦断面図であり、作動前と作動完了時とを示す。
【図26】第8実施形態のアクチュエータに使用するピストンの部位を示す斜視図である。
【図27】第8実施形態のアクチュエータの作動時におけるピストンの弾性片部の動作を順に説明する図である。
【図28】第9実施形態のアクチュエータの概略縦断面図であり、作動前と作動完了時とを示す。
【図29】第10実施形態のアクチュエータに使用する環状弾性体の平面図と斜視図である。
【図30】第10実施形態のアクチュエータの概略縦断面図であり、作動前と作動完了時とを示す。
【図31】第10実施形態のアクチュエータの拡径変形部の部位における概略横断面図であり、作動前と作動完了時とを示す。
【図32】第11実施形態のアクチュエータに使用する環状弾性体の縮径時と拡径時との状態を示す斜視図である。
【図33】第11実施形態のアクチュエータの概略縦断面図であり、作動前と作動完了時とを示す。
【図34】第11実施形態に使用した環状弾性体の変形例における縮径時と拡径時との状態を示す斜視図である。
【図35】各実施形態の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0136】
15,75…受止材(15…フードパネル、75…膝受止材)、
21…ハウジング、
22…シリンダ、
23d…(シリンダの)内周面、
24,24A,24C,24F…係止段部、
24a…底面、
24b…内周面、
27,27A,27C,27D…先端壁部、
27b…(先端壁部の)下面、
27c…変形用突起、
27d…案内面、
35…ガス発生器、
37…移動体、
38,48,58,68,78,78A,78B,78C,88,98,98E…ピストン、
40,40A…支持ロッド、
42,52,59,69,79,79A,79B,79C,92,100,112…拡径変形部、
43,43E,113,113G…環状弾性体、
44,49,89c…ピストンリング、
70,80,80A,80B,80C…(流体キャップ)ガスキャップ、
71,85…(流体流入口)ガス流入口、
81,91…天井板部、
81a,91a…外周縁部位、
82,93…傘部、
84,84C,95…係止脚、
84b、95a…(係止脚の)先端、
99…(ピストンの)本体、
101…弾性片部、
101a…基部、
101b…鉤片部、
G…(作動用流体)ガス
R1,R2,R3,R4,R5,R6,R7,R8,R9,R10,R11…ロック機構、
A1(AE1),A8(AE2),A9(AE3),A10(AE4),A11(AE5),A2(AP1),A3(AP2),A7(AP3),A4(AC1),A5(AC2),A6(AC3),A0…アクチュエータ、
M1、M2…自動車用安全装置(M1…歩行者保護装置、M2…膝保護装置)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用安全装置に使用されて、
作動時に、筒状のハウジング内に配置された移動体を、該移動体に連結された支持ロッドとともに、前進移動させる構成とするとともに、
前進移動した前記支持ロッドの後退移動を規制するロック機構を備えて構成され、さらに、
前記ハウジングの先端壁部から突出した前記支持ロッドが、保護対象物を受け止める受止材を支持する構成のアクチュエータであって、
前記支持ロッドが、前進移動後における前記受止材の前記保護対象物の受け止め時、前記保護対象物の運動エネルギーを吸収可能に、塑性変形可能に配設され、
前記ロック機構が、
前記移動体に配設されて、前記ハウジング内の前進移動時における前記移動体の外径寸法より拡径可能な拡径変形部と、
前記ハウジングの内周面における前記移動体の前進移動後の配置位置に配設され、拡径した前記拡径変形部を係止して、前記移動体の後退移動を規制可能な係止段部と、
から構成され、
前記拡径変形部が、前記移動体の前進移動後における前記係止段部への配置時、縮径状態から拡径状態に、前記拡径変形部自体の弾性力によって弾性変形して、若しくは、前記移動体の押圧力によって塑性変形して、前記係止段部に係止される構成としていることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記移動体が、外周面の周方向に沿って設けられた凹溝を備え、
前記拡径変形部が、前記凹溝に収納されて、前記移動体の前進移動後における前記係止段部への配置時、縮径状態から前記移動体の凹溝と前記ハウジングの係止段部とに跨る拡径状態に弾性変形する環状弾性体により、構成されていることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記環状弾性体が、内外周を貫通する切り欠きを有したCリングとして、前記切り欠き近傍の先端部側から前記切り欠きと点対称の位置となる元部側にかけて、内外周間の幅寸法を広くする形状に、形成されていることを特徴とする請求項2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記ハウジングに設けられる前記係止段部が、前記拡径変形部の後退移動を規制する底面と、該底面の外周縁から前記移動体の前進移動方向に沿って延びる内周面と、を備えて構成され、
前記環状弾性体が、
軸直交方向の横断面を、内外周を貫通する切り欠きを有したCリング形状とするとともに、前進移動側の端部より後退移動側の端部の外径寸法を拡径可能なテーパ管状に、形成されて、
前記移動体の前進移動後における前記係止段部への配置時、前進移動側の端部を前記凹溝に収納させ、かつ、後退移動側の端部を、縮径状態から拡径状態に弾性変形させて、前記係止段部における前記底面と前記内周面とに当て可能に、構成されていることを特徴とする請求項2に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
ピストンシリンダタイプとして構成されて、作動時に、シリンダとしての前記ハウジング内に作動用流体を流入させることにより、ピストンとしての前記移動体を前進移動させる構成とし、
前記環状弾性体が、前記凹溝への収納状態で、前記ハウジングの内周面に摺動可能に圧接されて、前記移動体の前記作動用流体の供給側をシールするピストンリングとして、構成されていることを特徴とする請求項2に記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記拡径変形部が、前記移動体の移動方向に沿って前記移動体の外周面側に配置される弾性片部、として構成され、
該弾性片部が、
前記移動体の移動方向に沿う一方の端部を、前記移動体の本体側に連結された基部側とし、前記移動体の移動方向に沿う他方の端部を、前記係止段部に係止可能な鉤片部として構成されて
前記移動体の前進移動後における前記係止段部への配置時、前記基部側を回転中心側として前記鉤片部側を回転させるように拡径方向側へ弾性変形させて、前記鉤片部を前記係止段部に係止させるように、配設されていることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項7】
前記弾性片部が、前記基部に対する前記鉤片部の配置を、前記移動体の前進移動側に位置させて、構成され、
前記先端壁部に、前記移動体の前進移動後における前記係止段部への配置時に、前記鉤片部と当接して前記鉤片部を拡径方向に案内する案内面が、配設されていることを特徴とする請求項6に記載のアクチュエータ。
【請求項8】
前記拡径変形部が、前記移動体の前進移動後における前記係止段部への配置時に、前記先端壁部に当接して、縮径状態から拡径状態に塑性変形する構成としていることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項9】
ピストンシリンダタイプとして構成されて、作動時に、シリンダとしての前記ハウジング内に作動用流体を流入させることにより、ピストンとしての前記移動体を前進移動させる構成とするとともに、
前記移動体自体が、外周面の少なくとも一部における周方向の略全周を、前記シリンダの内周面に摺動可能として、前記拡径変形部を構成していることを特徴とする請求項8に記載のアクチュエータ。
【請求項10】
ピストンシリンダタイプとして構成されて、作動時に、シリンダとしての前記ハウジング内に作動用流体を流入させることにより、ピストンとしての前記移動体を前進移動させる構成とするとともに、
前記シリンダ側に設けられる前記係止段部が、前記拡径変形部の後退移動を規制する底面と、該底面の外周縁から前記移動体の前進移動方向に沿って延びる内周面と、を備えて構成され、
前記移動体が、
ピストン本体と、
該ピストン本体における前記先端壁部側に、前記ピストン本体と別体として配置され、前記先端壁部に当接可能として前記支持ロッドに連結されるロック体と、
を備えて構成され、
前記ロック体が、前記支持ロッドを連結させて前記先端壁部に当接可能とした天井板部と、該天井板部の外周縁から前記ピストン本体側に延びて、前記拡径変形部を構成する筒状の傘部と、を備えて構成され、
前記傘部が、前記天井板部から離れる端部側に配設されて、前記シリンダの軸周り方向で複数に分割された係止脚を備え、
前記ピストン本体が、前記傘部側の先端に、前記ピストンとしての前記移動体の前進移動時に前記傘部の各係止脚に当接させて前記ロック体を前記係止段部の配置位置まで移動させるように押圧可能に、先細り状のテーパ状押圧部、を備えて構成され、
前記天井板部を前記先端壁部に当接させるように前記ピストン本体に押されて、前記ロック体が前記係止段部の配置位置に配置された際、前記傘部が、前記ピストン本体のテーパ状押圧部に押されて、塑性変形しつつ拡径方向に開き、前記傘部の各係止脚を、前記係止段部の底面と内周面とに当てて、前記ロック体の後退移動を規制するように、構成されていることを特徴とする請求項8に記載のアクチュエータ。
【請求項11】
自動車用安全装置に使用されて、
作動時に、筒状のハウジング内に配置された移動体を、該移動体に連結された支持ロッドとともに、前進移動させる構成とするとともに、
前進移動した前記支持ロッドの後退移動を規制するロック機構を備えて構成され、さらに、
前記ハウジングの先端壁部から突出した前記支持ロッドが、保護対象物を受け止める受止材に連結される構成のアクチュエータであって、
ピストンシリンダタイプとして構成されて、作動時に、シリンダとしての前記ハウジング内に作動用流体を流入させることにより、ピストンとしての前記移動体を前進移動させる構成とし、
前記支持ロッドが、前進移動後における前記受止材の前記保護対象物の受け止め時、前記保護対象物の運動エネルギーを吸収可能に、塑性変形可能に配設され、
前記ロック機構が、
前記移動体に配設されて、前記ハウジング内の前進移動時における前記移動体の外径寸法より拡径可能な拡径変形部と、
前記ハウジングの内周面における前記移動体の前進移動後の配置位置に配設され、拡径した前記拡径変形部を係止して、前記移動体の後退移動を規制可能な係止段部と、
から構成され、
前記拡径変形部が、前記ハウジングの前記作動用流体の供給側に開口する流体流入口を有し、かつ、該流体流入口から流入する前記作動用流体を貯留する流体キャップから構成され、
該流体キャップが、外周面を前記ハウジングの内周面に摺動可能として、前記移動体の前進移動後における前記係止段部への配置時に、前記流体流入口から流入させた前記作動用流体の圧力により、縮径状態から拡径状態に塑性変形する構成としていることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項12】
前記移動体自体が、外周面の少なくとも一部における周方向の略全周を、前記ハウジングの内周面に摺動可能として、前記拡径変形部としての前記流体キャップを構成していることを特徴とする請求項11に記載のアクチュエータ。
【請求項13】
前記シリンダ側に設けられる前記係止段部が、前記拡径変形部の後退移動を規制する底面と、該底面の外周縁から前記移動体の前進移動方向に沿って延びる内周面と、を備えて構成され、
前記流体キャップが、前記支持ロッドを連結させて前記先端壁部に当接可能とした天井板部と、該天井板部の外周縁から後退移動側に延びるとともに前記シリンダの軸周り方向で複数に分割された係止脚を有した筒状の傘部と、該傘部の各係止脚の先端で囲まれて形成される前記流体流入口と、を備えて構成され、
前記傘部の各係止脚が、外周面を前記シリンダの内周面に摺動可能として、前記移動体の前進移動後における前記係止段部への配置時に、前記流体流入口から流入させた前記作動用流体の圧力により、塑性変形しつつ拡径方向に開き、各先端を前記係止段部の底面と内周面とに当てて、前記移動体の後退移動を規制するように、構成されていることを特徴とする請求項11若しくは請求項12に記載のアクチュエータ。
【請求項14】
前記先端壁部に、前記移動体の前進移動後における前記係止段部への配置時に、前記各係止脚の拡径方向への変形の補助用として、前記各係止脚の元部側近傍の前記天井板部における外周縁付近に当接し、前記天井板部の外周縁部位を前記移動体の前進移動方向側へ塑性変形させる変形用突起が、配設されていることを特徴とする請求項10若しくは請求項13に記載のアクチュエータ。
【請求項15】
前記ハウジングが、前記先端壁部から離れた端部側に、作動信号の入力時に着火させてガスを発生させるガス発生器を配設させて、構成され、
前記ガス発生器の発生する前記ガスを駆動源として、前記移動体が前進移動する構成としていることを特徴とする請求項1乃至請求項14のいずれか1項に記載のアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公開番号】特開2009−236313(P2009−236313A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−198754(P2008−198754)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】