説明

アクティブアンテナ装置と、これを用いたダイバーシチ受信システム又は携帯無線通信装置

【課題】ノイズ耐性が高く、かつ端末への収納性のよい、アクティブアンテナ装置を提供する。
【解決手段】本発明のアクティブアンテナ装置101は、1対のアンテナと、このアンテナに接続されたアクティブ回路部103と、このアクティブ回路部103の出力に接続された同軸ケーブル104とを構成要素とするアクティブアンテナ装置であって、アクティブ回路部103は、バランス型の増幅回路110、116と、この増幅回路110、116の2つの出力にそれぞれ接続された2つの減衰回路112、118と、この2つの減衰回路112、118の出力に接続されたバラン回路120とからなり、減衰回路112、118によりバラン回路120と同軸ケーブル104との不整合損失を少なくしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてノートブック型端末、携帯電話機等の通信機器に用いられるアクティブアンテナ装置と、それを用いた無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノートブック型端末や携帯電話機等の携帯無線通信装置においては、小型化・薄型化の要求とともに、デジタルテレビジョン放送の視聴など、広帯域の信号の受信を可能とする機構が求められている。
【0003】
これらの要求に対して、アンテナとトランジスタ増幅回路が一体化されたアクティブアンテナ装置が提案されている。このアンテナとトランジスタ増幅回路が一体化されたアクティブアンテナ装置は、図11に示すように、バランス動作するダイポールアンテナ1101のアンテナエレメント1105.1106と、このダイポールアンテナ1101に接続されたインピーダンス整合回路1102と、このインピーダンス整合回路1102に接続されるとともにインピーダンス整合回路1102から出力される高周波信号を増幅させるRF差動アンプ1103と、RF差動アンプ1103の出力に接続された後段回路1104とを備えていた。この構成によるアンテナ装置を携帯電話機等の携帯無線通信装置に内蔵させることで、バラン回路を必要とすることなくバラン回路による変換ロスをなくしNF(Noise Figure)を改善するとともにアクティブアンテナ装置の小型化を可能としていた。なお、この出願の発明に関連する先行技術文献として、例えば、特許文献1が知られている。
【0004】
また、図12に示すように、別のアンテナとトランジスタ増幅回路が一体化されたアンテナ装置においては、アンテナエレメント1201と、このアンテナエレメント1201にベース端子が接続されるとともにアンテナエレメント1201から出力される高周波信号を増幅させるトランジスタ1202と、このトランジスタ1202のベース端子とコレクタ端子との間に接続された抵抗1203と、このトランジスタ1202のコレクタ端子に内導体が接続されると共にエミッタ端子に外導体が接続された同軸ケーブル1204を備えていた。この構成により、数百Hzから数GHzに渡る広い周波数帯においてアクティブアンテナ装置の高利得化を可能としていた。なお、この出願の発明に関連する先行技術文献として、例えば、特許文献2が知られている。
【0005】
さらに、図13に示すように、半導体スイッチ1301は、2個のMOSトランジスタ1301a、1301bにより構成され、高周波信号の通電経路に接続される一対の主端子1302a、1302bおよび制御信号が与えられる一対の入力端子1303a、1303bを備え、入力端子1303a、1303b間に駆動回路1305が接続される。駆動回路1305は、入力端子1303a、1303b間へ制御信号を与える駆動電源1307と、半導体スイッチ1301の入力端子1303a、1303bと駆動電源1307との間に挿入されコモンモードノイズを除去するノイズ除去フィルタ1306とを備えていた。この構成により、半導体スイッチのスイッチング特性を低下させることなく高周波での導通損失の増大を抑制可能としていた。なお、この出願の発明に関連する先行技術文献として、例えば、特許文献3が知られている。
【特許文献1】特開2005−223742号公報
【特許文献2】特開2000−151251号公報
【特許文献3】特開2002−252553号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のアクティブアンテナ装置は、ノートブック型端末や携帯電話機などの携帯無線通信装置におけるディスプレイや信号処理部等で発生するノイズ信号により、SNR(Signal to Noise Ratio)特性が低下するために感度特性が劣化してしまうという課題があった。また、アクティブアンテナ装置の増幅回路において所望信号だけでなくノイズ信号も増幅されるため、受信感度点付近におけるSNRをアクティブアンテナ装置によって改善することが困難であった。さらに、コモンモードのノイズ信号を除去することが可能なコモンモードフィルタを用いる場合には、ディファレンシャルモードにおける通過損失が発生するために、受信感度特性が重要となるアンテナ近傍においては感度特性が劣化するという課題があった。しかも、同軸ケーブルの長さが波長に対して無視できない長さの場合には、後段の回路からアンテナ側を見込んだインピーダンスにおいて位相が回転してしまい、後段回路にチューナ等の回路が備えられた場合には入力負荷変動に伴う受信感と特性の劣化を生じるという課題があった。
【0007】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたもので、ノイズ耐性が高く、かつ端末への収納性のよい、アクティブアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、第1の本発明は、1対のアンテナと、前記アンテナに接続されたアクティブ回路部と、前記アクティブ回路部の出力に接続された同軸ケーブルとを構成要素とするアクティブアンテナ装置であって、前記アクティブ回路部は、バランス型の増幅回路と、前記増幅回路の2つの出力にそれぞれ接続された減衰回路と、前記2つの減衰回路の出力に接続されたバラン回路とからなり、前記減衰回路により前記バラン回路と前記同軸ケーブルとの不整合損失を少なくしたアクティブアンテナ装置である。
【0009】
また、第2の本発明は、バラン回路がコモンモードフィルタを用いて構成されたアクティブアンテナ装置である。
【0010】
また、第3の本発明は、減衰回路とバラン回路との間に、コモンモードフィルタを接続したアクティブアンテナ装置である。
【0011】
また、第4の本発明は、コモンモードフィルタとバラン回路との間の平衡伝送路の一方に、少なくとも位相回路または減衰回路を接続したアクティブアンテナ装置である。
【0012】
また、第5の本発明は、バラン回路の不平衡出力端子と接地との間に、少なくとも位相回路または減衰回路を接続したアクティブアンテナ装置である。
【0013】
また、第6の本発明は、アンテナと増幅回路との間に、整合回路を接続したアクティブアンテナ装置である。
【0014】
また、第7の本発明は、整合回路は、信号線と接地との間にシャント接続された誘導性素子を構成要素とするアクティブアンテナ装置である。
【0015】
また、第8の本発明は、1対のアンテナは、構造が互いに非対称である2つのアンテナ素子で構成されたアクティブアンテナ装置である。
【0016】
また、第9の本発明は、フレキシブル基板上に、アンテナと、アクティブ回路部と、同軸ケーブルの一端とを配置し、モジュール化されたアクティブアンテナ装置である。
【0017】
また、第10の本発明は、フレキシブル基板上に、アンテナと、アクティブ回路部と、同軸コネクタ受部とを配置し、一体モジュール化されたアクティブアンテナ装置である。
【0018】
また、第11の本発明は、整合回路の少なくとも一部を前記フレキシブル基板上に調整用整合回路として配置し、アンテナとアクティブ回路との整合を調整用整合回路の定数変更により調整可能としたアクティブアンテナ装置である。
【0019】
また、第12の本発明は、上記アクティブアンテナ装置を受信ダイバーシチのブランチの少なくとも1つとして機能せしめたダイバーシチ受信システムである。
【0020】
また、第13の本発明は、上記アクティブアンテナ装置を搭載した携帯無線通信装置である。
【発明の効果】
【0021】
上記構成により、バランス動作している2つのアンテナがそれぞれ増幅回路、減衰回路、およびコモンモードフィルタを介してバラン回路で平衡モードから不平衡モードに変更されることによって、受信信号に対しては、減衰回路においてインピーダンス特性が同軸ケーブルとの不整合損失を少なくでき、チューナの入力負荷変動に対する耐性が向上し、受信感度特性の劣化を抑えることが可能となる上、ノイズ信号に対しては、コモンモードフィルタおよびバラン回路において大幅にノイズ信号を低減することが可能となるため、SN比を改善し受信感度特性の低下をさらに抑えることが可能となり、良好なアンテナ特性でかつ端末への収納性がよいアクティブアンテナ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、同様の構成要素については同一の符号を付している。
【0023】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るアクティブアンテナ装置の構成例を示す図であり、図2は、図1のアクティブアンテナ装置におけるアクティブ回路部の具体的な構成例を示す図であり、図3は、図1のアンテナエレメントおよび誘導性素子のインピーダンス特性の一例を示す図であり、図4は、同じくその電圧定在波(VSWR)の一例を示す図である。
【0024】
図1において、本実施形態のアクティブアンテナ装置101は、バランス動作するアンテナ部102のアンテナエレメント107は、誘導性素子108を介してアクティブ回路部103の入力側整合回路109の入力に接続され、入力側整合回路109の出力は増幅回路110を介して出力側整合回路111の入力に接続され、出力側整合回路111の出力は減衰回路112を介してコモンモードフィルタ119の一方の入力端子に接続されている。一方、アンテナ部102のアンテナエレメント113は、誘導性素子114を介してアクティブ回路部103の入力側整合回路115の入力に接続され、入力側整合回路115の出力は増幅回路116を介して出力側整合回路117の入力に接続され、出力側整合回路117の出力は発振耐性向上のための減衰回路118を介してコモンモードフィルタ119の他方の入力端子に接続されている。コモンモードフィルタ119の2つの出力はそれぞれバラン回路120の2つの平衡入力に接続され、バラン回路120の1つの不平衡出力は、端子121を介して同軸ケーブル104の入力に接続され、同軸ケーブル104の出力は端子105を介してチューナ106の入力に接続されている。
【0025】
また、図2は、入力側整合回路109と、増幅回路110と、出力側整合回路111と、減衰回路112との具体的な回路構成例を示しており、入力側整合回路109は信号線路に対してシャント接続された誘導性素子202および信号線路に対してシリーズ接続された直流素子を兼ねた容量性素子203とを構成要素としている。増幅回路110は誘導性素子205を介してソース端子が接地されたソース接地型のトランジスタ204を構成要素とし、トランジスタ204のゲート端子は容量性素子203に接続され、トランジスタ204のドレイン端子は電源端子208から誘導性素子206を介して直流電圧が印加されるとともに、出力側整合回路111に接続されている。
【0026】
この場合、アンテナ部102はアンテナエレメント107、113が略対称構造となっていることが好ましい。また、アンテナエレメントおよび誘導性素子は、第1の周波数帯(例えば470MHz〜770MHz)の中心付近(620MHz付近)において共振していることが好ましい。図3は、アンテナエレメント107および誘導性素子108のインピーダンス特性をスミスチャートで示したものであるが、620MHz付近において実軸と交わっている様子がわかる。また、図4は、アンテナエレメント107および誘導性素子108のインピーダンス特性のVSWRを示したものであるが、620MHz付近においてVSWRが最も小さくなっている様子がわかる。
【0027】
つぎに、動作について説明する。アンテナ部102のアンテナエレメント107および誘導性素子108とアクティブ回路部103の増幅回路110とは、第1の周波数帯の下端付近(470MHz付近)と上端付近(770MHz)において互いに略複素共役整合となるように、入力側整合回路109で調整されている。増幅回路110で増幅された受信信号は、減衰回路112において信号レベルを低減されると同時に、例えば50Ωまたは100Ω等のインピーダンスに変換される。同様に、アンテナエレメント113および誘導性素子114で受信された受信信号は、入力側整合回路115を介して増幅回路116に入力され、増幅された出力信号は出力側整合回路117を介して減衰回路118に入力され、信号レベルを低減されると同時に、例えば50Ωまたは100Ω等のインピーダンスに変換される。これら2つの受信信号はコモンモードフィルタ119に入力されるが、この場合にはディファレンシャルモードとなるためにコモンモードフィルタ119のインピーダンスは小さくなり、信号レベルがわずかに減衰されてバラン回路120に入力され、バラン回路120において平衡モードから不平衡モードに変換され、同軸ケーブル104を介してチューナ106に入力される。この場合、同軸ケーブルの入力端におけるインピーダンスはアンテナ部102を直接同軸ケーブルに接続した場合と比べて同軸ケーブルの特性インピーダンスに近づくために、不整合損失を低減することが可能となる。また、同軸ケーブルの長さが波長に比べて無視できない場合、例えば1/4波長以上の場合には、同軸ケーブルの出力端におけるインピーダンスが経路長分だけ位相が回転するため、チューナの入力負荷変動に対する耐性を向上するという格別の効果が期待できる。
【0028】
一方、移動体通信装置の内部で発生するノイズ信号、例えばディスプレイ(図示せず)や信号処理部(図示せず)における信号の高調波成分は、アンテナ部102の2つのアンテナエレメントにおいて同位相で受信され、上記受信信号に重畳される。この場合、ノイズ信号は、受信信号と重畳されてそれぞれ2つの増幅回路で増幅され、それぞれの減衰回路において受信信号と同様に信号レベルを低減され、コモンモードフィルタ119に入力される。コモンモードフィルタ119は同位相、すなわちコモンモードに対してインピーダンスが高くなるため、ノイズ信号は大幅に減衰され、バラン回路120に入力される。バラン回路120に入力された同位相成分は互いに逆相で打ち消し合うため、ノイズ信号はさらに大幅に減衰され、端子121に出力される。
【0029】
このように、バランス動作している2つのアンテナがそれぞれ増幅回路、減衰回路、およびコモンモードフィルタを介してバラン回路で平衡モードから不平衡モードに変更されることによって、受信信号に対しては、減衰回路においてインピーダンス特性を同軸ケーブルとの不整合損失が少なくなるように調整することができ、チューナの入力負荷変動に対する耐性の向上が期待できるため、受信感度特性の劣化を抑えることが可能となる上、ノイズ信号に対しては、コモンモードフィルタおよびバラン回路において大幅に低減することが可能となるため、SNR特性を改善し、受信感度特性の低下をさらに抑えることが可能となる。コモンモードフィルタはディファレンシャルモードに対してもわずかに信号を減衰させてしまうため、挿入損失が発生する。このため、通常ではEMC(Electro−Magnetic Compatibility)対策部品として信号ライン等の挿入損失が許容できる低周波数領域や直流領域で使用され、挿入損失を小さくすることが要求される高周波受信回路において使用されることはほとんどない。これに対して本実施形態では、増幅回路の出力段にコモンモードフィルタを配置することで、コモンモードフィルタの挿入損失を減衰回路の一部として機能せしめることにより、同軸ケーブルを介してチューナに入力される信号のインピーダンス調整に活用するという格別の効果を発揮している。
【0030】
なお、入力側整合回路は、図2に示すようにグランド間にシャント接続された誘導性素子202を少なくとも構成要素としていることが好ましく、誘導性素子を調整することによって増幅回路の入力側からアンテナ側を見込んだ第1の周波数帯の上端および下端付近のインピーダンスを増幅回路のインピーダンスに対して略複素共役結合にする効果が期待できる。
【0031】
なお、本実施形態では、アンテナエレメントと誘導性素子が第1周波数帯の中心付近で共振している場合について説明したが、これに限定されるものではなく、第1周波数帯の上端あるいは下端付近で共振していてもよいことはもちろんのことである。また、誘導性素子によりアンテナエレメントの小型化が可能となる効果を発揮しているが、これに限らず、アンテナエレメントの配置スペースが大きい場合には誘導性素子を用いなくてもよいことは当然のことである。
【0032】
なお、本実施形態では、コモンモードフィルタの挿入損失を減衰回路の一部として活用する効果について説明したが、一般には挿入損失の少ないほどコモンモードフィルタとしての性能が優れており、価格が高くなるのに対して、本実施形態では挿入損失が大きくても減衰回路として使用可能となることから、量産時に部品の調達コストを低減できると言う効果も期待できることはもちろんのことである。
【0033】
なお、本実施形態では、図2に示す減衰回路は抵抗を2段のラダー型で構成した場合について説明したがこれに限定されるものではなく、トランジスタの出力端からアンテナ側を見込んだ出力インピーダンスに応じて任意に変更可能であることは言うまでもない。例えば、T型やπ型の減衰回路でもよいことはもちろんのことであり、さらに、出力インピーダンスがバランの平衡モードにおける特性インピーダンスの所定値(例えば50Ωや100Ω)に対して小さい場合にはシリーズに抵抗を配置すればよいことは当然のことである。
【0034】
なお、本実施形態では、増幅回路としてソース接地型の電界効果トランジスタを用いた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、受信信号を増幅する機能があればよい。例えば、バイポーラトランジスタを用いても同等の効果が期待できることは言うまでもない。
【0035】
なお、本実施形態では、アンテナエレメントからチューナまでの構成をすべて含む場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、同軸ケーブルがない場合が考えられるが、この場合にも、アクティブ回路部において増幅回路の出力インピーダンスを減衰回路により減衰させてインピーダンス調整することでチューナの入力負荷変動に伴う感度劣化を抑圧する効果が期待できることはもちろんのことである。また、同軸ケーブルの替わりに、例えば基板上にマイクロストリップ線路をパターンで形成することも考えられるが、この場合にも同様の効果が期待できることはもちろんのことである。
【0036】
なお、本実施形態では、2つの減衰回路の構成が略同一である場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば2つのアンテナ素子で受信されるノイズ信号のレベルが異なる場合には、ノイズ信号をより強く受信する方の減衰回路を他方に比べて減衰量が大きくなるようにしてコモンモードフィルタ119に入力されるノイズ信号のレベルがほぼ等しくなるように調整することが可能であることはもちろんのことである。
【0037】
なお、本実施形態では、UHF帯(470M〜770MHz)の場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【0038】
(第2の実施形態)
図5(a)、(b)は、本発明の第2の実施形態に係るアクティブアンテナ装置の構成例を示す図であり、図5(a)は正面図であり、図5(b)は側面図である。図6(a)、(b)は、図5のアクティブアンテナ装置をノートブック型端末に内蔵した配置例を示す図であり、図6(a)は斜視図であり、図6(b)はノートブック型端末を折り畳んだ状態の側面図である。なお、第1の実施形態と同様の構成については、同一符号のみ記載し、異なる構成を中心に、以下に説明する。
【0039】
図5において、本実施形態のアクティブアンテナ装置501は、アンテナエレメント502、504、受動回路部503、505、アクティブモジュール506が略左右対称となるようフレキシブル基板509上に配置しており、アンテナエレメント502は受動回路部503を介してアクティブモジュール506の入力端子506aに接続され、アンテナエレメント504は受動回路部505を介してアクティブモジュール506の入力端子506bに接続され、アクティブモジュール506の出力端子506cは同軸ケーブル507を介してコネクタ508に接続されている。
【0040】
この場合、受動回路部は、図1に示すアンテナ部の誘導性素子と入力側整合回路の一部により構成され、アクティブモジュール506は、図1の入力側整合回路の一部を除くアクティブ回路部により構成されている。また、アンテナエレメントをメアンダ構成とすることによりアンテナエレメントの物理的な長さを短縮することが可能となり、ノートブック型端末に配置する際の配置の自由度が向上する。さらに、メアンダ構成がアンテナエレメントの長手方向に対して垂直なメアンダ形状とすることにより、ノート型端末等に配置した場合にディスプレイや接地板等の地板との電磁結合を抑えることが可能となり、アンテナ特性の劣化を抑圧できることに加え、ノイズ信号の信号レベルを抑圧する効果が期待できる。
【0041】
また、図6に示すように、アクティブアンテナ装置608、612をノートブック型端末の第1の筐体602におけるディスプレイ605の両側に、筐体壁に沿うようにアンテナ部609、613を配置し、同軸ケーブル611、615により第2の筐体603の内部に配置されたチューナ616と接続されている。この場合、フレキシブル基板上にアクティブアンテナ装置を配置していることで、端末内の限られた配置スペースに収納することが可能となる。また、1つのチューナに対してアクティブアンテナ装置を2つ備えることで最大比合成等のダイバーシチ受信を行うことが可能となる。このように、同軸ケーブルの長さが波長に対して無視できない長さになる場合には、アクティブモジュール内部において増幅回路の出力信号を減衰回路によってインピーダンス調整することによりチューナの入力側の負荷変動に伴う感度劣化を抑制することが期待できる。
【0042】
なお、本実施形態では、アクティブモジュールの出力に同軸ケーブルの入力を接続した構成例について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば図7のように、基板上にコネクタ受部704を配置し、同軸ケーブル706を着脱可能とする構成としてもよいことはもちろんのことである。このように、同軸ケーブルを着脱可能とすることでノート型端末の製造時の組み立てプロセスの自由度が向上する上、アクティブアンテナ装置の量産時における品質のばらつきを抑える効果が期待でき、製造コストを抑えることも可能となる。
【0043】
なお、本実施形態では、アンテナエレメントの構造がアンテナエレメントの長手方向に対して垂直なメアンダ形状とした場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば図7のアクティブアンテナ装置701に示すように、アンテナエレメント702、703の長手方向に並行なメアンダ形状としてもよいことは当然のことである。さらに、図8のアクティブアンテナ装置801に示すように、ダイポール動作する2つのアンテナエレメント802、803の構造を非対称とすることも可能であることはもちろんのことである。アンテナエレメントは波長に対して無視できない寸法(例えば1/8波長以上)を有しているため、ノート型端末に配置した際にノイズ源とアンテナエレメントとの距離が異なる場合が生じる。この場合、例えば一方のアンテナエレメントがノイズ信号をより受信してしまうことでノイズ信号間にレベル差が生じてしまい、コモンモードフィルタやバラン回路におけるノイズ信号除去効果が低減する場合が生じる。図8はそのような状況を鑑みてアンテナエレメントに左右非対称性を持たせたもので、ノート型端末の接地と電磁結合することで小型化が可能なアンテナエレメント802とノイズ信号を受けにくいアンテナエレメント803を組み合わせ、ノイズ源に対してアンテナエレメント802よりもアンテナエレメント803の方が近くなるようにアクティブアンテナ装置を配置することによって2つのアンテナエレメントで受信されるノイズ信号レベルをほぼ同じレベルにすることが可能となる。
【0044】
なお、本実施形態では、アクティブモジュールが1つの場合について説明したが、入力側整合回路、増幅回路、出力側整合回路、減衰回路のすべてまたは一部を構成要素とするモジュールを2つ並べて配置してもよいことは当然のことである。この場合には、不平衡動作するモジュールと同一の商品を用いることが可能となり、量産時の製造コストを低減する効果が期待できることは言うまでもない。
【0045】
なお、図5および図7、図8では図示していないが、同軸ケーブルに電源電圧を重畳してアクティブモジュールに直流の駆動電圧を印加することが可能であり、この場合には専用の電源ラインを不要とするため電源ラインを通じて不要なノイズ信号を受信して感度が劣化するという弊害を回避することが可能となる。この場合には、図示していないが、同軸ケーブルと増幅回路の電源端子間に高周波素子用の誘導性素子や電源端子と接地間に容量性素子を配置することが望ましく、これにより直流成分と高周波成分を切り分けることが可能となることはもちろんのことである。
【0046】
なお、本実施形態では、フレキシブル基板上に基板とアンテナエレメントを配置した構成例について説明したが、これに限定されるものではなく、略剛体の基板上にアンテナエレメントやアクティブモジュール等の構成要素を配置することが可能であることは言うまでもない。
【0047】
なお、本実施形態では、アクティブアンテナ装置を第1の筐体におけるディスプレイの左右の位置に内蔵した場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ディスプレイの上側や下側の位置に配してよいことはもちろんのことであり、ヒンジ部604の内部や第2の筐体603に内蔵してもよいことは言うまでもない。さらに、基地局のアンテナ配置や偏波特性等を鑑みて、これらの配置位置を任意に組み合わせることが可能であることは当然のことであり、アクティブアンテナ装置の配置数も2つに限定されるものではない。例えば、2つのアンテナ装置のうち一方のみがアクティブアンテナ装置であってもよいし、3つ以上のアンテナ装置のうち、2つ以上がアクティブアンテナ装置であってもよいことは言うまでもない。また、アンテナ装置がアクティブアンテナ装置1つのみの場合でもよいことはもちろんのことである。
【0048】
なお、本実施形態では、アクティブアンテナ装置をノートブック型端末に内蔵した場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、携帯電話機や、カーナビゲーション端末、PDA(Personal Digital Assistant)端末等に内蔵されてもよく、これらの場合についても同様の効果が期待できることはもちろんのことである。
【0049】
(第3の実施形態)
図9は、本発明の第3の実施形態に係るアクティブアンテナ装置901の構成例を示す図であり、図10は、同じくその別の構成例1001を示す図である。なお、第1の実施形態と同様の構成については、同一符号のみ記載し、異なる構成を中心に、以下に説明する。
【0050】
図9において、第1の実施形態と異なる点は、コモンモードフィルタ903をバラン回路として使用している点であり、この場合、コモンモードフィルタ903の2つの出力端子のうち、一方を接地し、他方を端子121を介して同軸ケーブル104に接続している。このように、コモンモードフィルタをバラン回路として用いることにより、コモンモードフィルタとしてのコモンモードインピーダンスによるノイズ除去効果とバラン回路としての同位相成分除去効果を併せ持つことが可能となり、部品点数の削減効果が期待できる。
【0051】
また、図10は、図1のバラン回路をコモンモードフィルタに置き換えた上で、コモンモードフィルタ120の一方の出力とコモンモードフィルタ1003の一方の入力間に調整回路1004を備え、コモンモードフィルタ1003の一方の出力と接地間に調整回路1005を備えたことを特徴とする。このような構成にすることにより、ノイズ信号が2つのアンテナエレメントに不等レベルまたは位相差を持った状態で受信した場合に、ノイズ信号の減衰量を調整回路によって調整することが可能となる。調整回路としては誘導性素子、容量性素子、抵抗のいずれかまたはそれらの組み合わせによって構成され、モジュールの外部に配置して製造時に調整可能とすることが望ましい。例えば、第1の周波数帯の下端におけるノイズ信号について、アンテナエレメント108で受信されたノイズ信号レベルの方がアンテナエレメント114で受信されたノイズ信号レベルより低い場合には、調整回路1004をシリーズ接続された容量性素子で構成することでコモンモードフィルタ1003に入力される2つのノイズ信号レベルが略同等レベルとなるように調整することが可能となる。また、2つのアンテナエレメントで受信されたノイズ信号に位相差がある場合には、例えば調整回路1005を接地に対してシャント接続された誘導性素子または容量性素子とすることでノイズ信号間の位相差を調整することが可能となり、ノイズ除去効果を高めることが期待できる。
【0052】
なお、本実施の形態では2つの調整回路を配置した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、少なくとも1つの調整回路を構成要素とすることでノイズ信号除去効果を得ることが可能であることはもちろんのことである。
【0053】
なお、本実施の形態では、2つの減衰回路の構成が略同一である場合について説明しているが、これに限定されるものではなく、例えば、2つの減衰回路の減衰量を異ならせることで2つのアンテナエレメントで受信された非対称のノイズ信号のレベルを略同一にすることができることは当然のことである。
【0054】
なお、上記実施形態で説明したアクティブアンテナ装置の構成はあくまでも一例であり、これに限定されるものではない。また、上記実施形態で説明した構成は互いに組み合わせることが可能であることはもちろんのことであり、その場合にも同等の効果が期待できることは当然のことである。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上詳述したように、本発明によれば、バランス動作している2つのアンテナがそれぞれ増幅回路、減衰回路、およびコモンモードフィルタを介してバラン回路で平衡モードから不平衡モードに変更されることによって、受信信号に対しては、減衰回路においてインピーダンス特性が同軸ケーブルとの不整合損失を少なくでき、チューナの入力負荷変動に対する耐性が向上し、受信感度特性の劣化を抑えることが可能となる上、ノイズ信号に対しては、コモンモードフィルタおよびバラン回路において大幅にノイズ信号を低減することが可能となるため、SN比を改善し受信感度特性の低下をさらに抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】第1の実施形態のアクティブアンテナ装置の構成例を示すブロック図
【図2】同じくその入力側整合回路、増幅回路、出力側整合回路、減衰回路の具体的な回路構成を示した図
【図3】同じくそのアンテナエレメントおよび誘導性素子のインピーダンス特性を示す図
【図4】同じくそのVSWR特性を示す図
【図5】(a)第2の実施形態のアクティブアンテナ装置の具体的な構成例を示す図、(b)同じくその側面図
【図6】(a)第2の実施形態のアクティブアンテナ装置を備えたノートブック型端末の構成例を示す斜視図、(b)同じくノートブック型端末を閉じた状態を示す側面図
【図7】(a)第2の実施形態のアクティブアンテナ装置の別の構成例を示す正面図、(b)同じくその同軸ケーブルの構成例を示す図
【図8】同じくそのさらに別の構成例を示す正面図
【図9】第3の実施形態のアクティブアンテナ装置の構成例を示すブロック図
【図10】同じくその別の構成例を示すブロック図
【図11】従来のアクティブアンテナ装置の構成例を示すブロック図
【図12】従来のアクティブアンテナ装置の別の構成例を示す図
【図13】従来のコモンモードフィルタを用いた回路の構成例を示す図
【符号の説明】
【0057】
101,501,608,612,701,801,901,1001 アクティブアンテナ装置
102,609,613 アンテナ部
103,610,614,902,1002 アクティブ回路部
104,507,611,615,706,1204 同軸ケーブル
105,121 端子
106,616 チューナ
107,113,502,504,702,703,802,803,1105,1106,1201 アンテナエレメント
108,114,202,205,206 誘導性素子
109,115 入力側整合回路
110,116 増幅回路
111,117 出力側整合回路
112,118 減衰回路
119,903,1003 コモンモードフィルタ
120 バラン回路
201,506a,506b,1303a,1303b 入力端子
203,207,209,210 容量性素子
204,1202 トランジスタ
208 電源端子
211,212,1203 抵抗
213,506c 出力端子
503,505 受動回路部
506 アクティブモジュール
508,705,707 コネクタ
509 フレキシブル基板
510 基板
601 無線通信装置
602 第1の筐体
603 第2の筐体
604 ヒンジ部
605 ディスプレイ
606 キーボード
607 マウス
704 コネクタ受部
1004,1005 調整回路
1101 ダイポールアンテナ
1102 インピーダンス整合回路
1103 RF差動アンプ
1104 後段回路
1301 半導体スイッチ
1301a,1301b MOSトランジスタ
1302a、1302b 主端子
1304a,1304b 接続点
1305 駆動回路
1306 ノイズ除去フィルタ
1307 駆動電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対のアンテナと、
前記アンテナに接続されたアクティブ回路部と、
前記アクティブ回路部の出力に接続された同軸ケーブルとを構成要素とするアクティブアンテナ装置であって、
前記アクティブ回路部は、
バランス型の増幅回路と、
前記増幅回路の2つの出力にそれぞれ接続された2つの減衰回路と、
前記2つの減衰回路の出力に接続されたバラン回路とからなり、
前記減衰回路により前記バラン回路と前記同軸ケーブルとの不整合損失を少なくしたことを特徴とするアクティブアンテナ装置。
【請求項2】
前記バラン回路は、
コモンモードフィルタを用いて構成されたことを特徴とする請求項1に記載のアクティブアンテナ装置。
【請求項3】
前記減衰回路と前記バラン回路との間に、コモンモードフィルタを接続したことを特徴とする請求項1または2に記載のアクティブアンテナ装置。
【請求項4】
前記コモンモードフィルタと前記バラン回路との間の平衡伝送路の一方に、少なくとも位相回路または減衰回路を接続したことを特徴とする請求項3に記載のアクティブアンテナ装置。
【請求項5】
前記バラン回路の不平衡出力端子と接地との間に、少なくとも位相回路または減衰回路を接続したことを特徴とする請求項3または4に記載のアクティブアンテナ装置。
【請求項6】
前記アンテナと前記増幅回路との間に、整合回路を接続したことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のアクティブアンテナ装置。
【請求項7】
前記整合回路は、信号線と接地との間にシャント接続された誘導性素子を構成要素とすることを特徴とする請求項6に記載のアクティブアンテナ装置。
【請求項8】
前記1対のアンテナは、構造が互いに非対称である2つのアンテナ素子で構成されたことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のアクティブアンテナ装置。
【請求項9】
フレキシブル基板上に、
前記アンテナと、
前記アクティブ回路部と、
前記同軸ケーブルの一端とを配置し、
モジュール化されたことを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のアクティブアンテナ装置。
【請求項10】
フレキシブル基板上に、
前記アンテナと、
前記アクティブ回路部と、
同軸コネクタ受部とを配置し、
一体モジュール化されたことを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載のアクティブアンテナ装置。
【請求項11】
前記整合回路の少なくとも一部を前記フレキシブル基板上に調整用整合回路として配置し、前記アンテナと前記アクティブ回路との整合を前記調整用整合回路の定数変更により調整可能としたことを特徴とする請求項10に記載のアクティブアンテナ装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載のアクティブアンテナ装置を受信ダイバーシチのブランチの少なくとも1つとして機能せしめることを特徴とするダイバーシチ受信システム。
【請求項13】
請求項1から11のいずれかに記載のアクティブアンテナ装置を搭載したことを特徴とする携帯無線通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−218872(P2009−218872A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−60669(P2008−60669)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】