説明

アクティブマトリックス型表示装置

【課題】有機EL素子等の発光素子によって構成される画素の高開口率化を可能とし、アクティブマトリックス型表示装置の高精細化を図ることができるようにする。
【解決手段】有機EL素子20のカソード電極(上部電極)と接続され、R画素20bのみに隣接して配置された上層補助配線54(上部電極接続配線)と、カソード電極の電気抵抗を調整するために上層補助配線54と接続された下層補助配線55(抵抗調整配線)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マトリックス状に配列された複数の発光素子を備え、駆動手段によって各発光素子を発光させるアクティブマトリックス型表示装置に係るものである。そして、詳しくは、発光素子によって構成される画素の高開口率化を可能とし、アクティブマトリックス型表示装置の高精細化を図ることができるようにした技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、アクティブマトリックス型表示装置において、発光素子として有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」という)を使用した有機ELディスプレイが知られている。この有機ELディスプレイは、有機EL素子をマトリックス状に配列するとともに、有機EL素子を駆動する駆動手段を設けたものである。そして、有機EL素子は、アノード電極とカソード電極との間に、有機物の正孔輸送層や有機物の発光層を積層した有機物層を配置した電流発光素子である。このような有機ELディスプレイは、有機EL素子の有機物層に電子と正孔とを注入することによって発光する。そのため、有機EL素子に流れる電流値を駆動手段によってコントロールすることにより、発色の階調を得ることができる。
【0003】
ここで、有機ELディスプレイには、各有機EL素子を駆動するための信号線が配線されている。さらにまた、各有機EL素子を駆動するための走査線及び電源線も配線されている。さらに、各有機EL素子の間には、補助配線が配置されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−58815号公報
【0004】
図6は、上記の特許文献1に開示された補助配線154を有する有機ELディスプレイ110の配線構造の参考例を示す平面図である。
図6に示すように、有機ELディスプレイ110は、有機EL素子120がm行×n列(図6では、図面の簡略化のため、2行×3列)のマトリックス状に配列されたものである。なお、有機EL素子120は、光の三原色中の青を発光するB画素と、赤を発光するR画素と、緑を発光するG画素とが一組として配列されている。
【0005】
ここで、有機ELディスプレイ110は、各有機EL素子120を駆動するための信号線151、走査線152、及び電源線153を有している。そして、信号線151は、有機EL素子120の各列ごとに配線され、走査線152及び電源線153は、有機EL素子120の各行ごとに配線されている。
【0006】
また、有機ELディスプレイ110には、補助配線154が配線されている。この補助配線154は、有機EL素子120の上部電極であるカソード電極の電気抵抗を調整するためのものである。具体的には、カソード電極は、有機EL素子120が発する光をカソード電極を通して外部に取り出せるようにするため、透明電極となっている。そして、透明電極となるような光透過率の高い導電性材料は、抵抗値が高い。そのため、上部のカソード電極から光を取り出すトップエミッション方式の有機ELディスプレイ110では、カソード電極の低抵抗化を図るべく、補助配線154を配線している。なお、カソード電極と補助配線154とは、カソード接続部156を介して接続されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、図6に示す有機ELディスプレイ110の補助配線154(上記した特許文献1に開示された補助配線)は、各有機EL素子120の周囲を囲うようにして配線されているので、各有機EL素子120同士の間には、必ず補助配線154が配置される。そのため、有機EL素子120によって構成される画素の開口率が補助配線154の配置スペースによって制限されることとなり、有機ELディスプレイ110を高精細化するには問題があった。
【0008】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、有機EL素子等の発光素子によって構成される画素の高開口率化を可能とし、アクティブマトリックス型表示装置の高精細化を図ることができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の解決手段によって、上述の課題を解決する。
本発明の請求項1に記載の発明は、マトリックス状に配列され、上部電極と下部電極との間に発光層を有する複数の発光素子と、各前記発光素子を駆動するための駆動手段と、前記上部電極と接続され、前記下部電極と同一層に設けられるとともに一部の前記発光素子のみに隣接して配置された上部電極接続配線と、前記上部電極の電気抵抗を調整するために前記上部電極接続配線と接続され、前記下部電極よりも下層に配線された抵抗調整配線とを有するアクティブマトリックス型表示装置である。
【0010】
(作用)
上記の請求項1に記載の発明は、発光素子の上部電極と接続され、下部電極と同一層に設けられた上部電極接続配線と、上部電極の電気抵抗を調整するために上部電極接続配線と接続され、下部電極よりも下層に配線された抵抗調整配線とを有している。そして、上部電極接続配線は、一部の発光素子のみに隣接して配置されている。そのため、上部電極接続配線が隣接して配置されていない発光素子では、上部電極接続配線の配置スペースを設ける必要がなくなるので、画素の開口率を大きくできる。また、上部電極の電気抵抗は、抵抗調整配線によって調整できる。
【発明の効果】
【0011】
上記の発明によれば、上部電極接続配線が隣接して配置されていない発光素子によって構成される画素を高開口率化できる。そのため、アクティブマトリックス型表示装置の高精細化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明のアクティブマトリックス型表示装置の一例(第1実施形態)である有機ELディスプレイ10の配線構造を示す平面図である。
図1に示すように、第1実施形態の有機ELディスプレイ10は、有機EL素子20(本発明における発光素子に相当するもの)がM行×N列(図1では、図面の簡略化のため、2行×3列)のマトリックス状に配列されたものである。なお、有機EL素子20は、光の三原色中の青を発光するB画素20aと、赤を発光するR画素20bと、緑を発光するG画素20cとが一組として配列されている。
【0013】
また、有機ELディスプレイ10は、各有機EL素子20(各B画素20a、各R画素20b、各G画素20c)に共通する上部電極(図示せず)の電気抵抗を調整するための下層補助配線55(本発明における抵抗調整配線に相当するもの)を有している。さらにまた、各有機EL素子20を駆動するための信号線51(本発明における第2配線に相当するもの)、走査線52(本発明における第1配線に相当するもの)、及び電源線53を有している。さらに、各R画素20bには、それに隣接して上層補助配線54(本発明における上部電極接続配線に相当するもの)が配置されている。
【0014】
ここで、走査線52、電源線53、及び下層補助配線55は、有機EL素子20の下部電極(図示せず)よりも下層の同一層にそれぞれ設けられている。また、これらは、それぞれが互いに平行する方向であって、有機EL素子20の各行ごとに配線されている。さらにまた、信号線51は、走査線52、電源線53、及び下層補助配線55と同一層に設けられているが、これらと交差する方向であって、有機EL素子20の各列ごとに配線されている。
【0015】
一方、上層補助配線54は、有機EL素子20の下部電極(図示せず)と同一層(下層補助配線55等よりも上層)に設けられている。そして、有機EL素子20の上部電極(図示せず)とカソード接続部56で接続され、下層補助配線55と上下接続部57で接続されている。
【0016】
また、上層補助配線54は、有機EL素子20のR画素20bのみに隣接して(方形のR画素20bの下辺に沿って)島状に配置されており、B画素20a及びG画素20cの部分には配置されていない。そのため、B画素20a及びG画素20cでは、上層補助配線54によって下部電極(図示せず)のスペースが制限されないので、R画素20bよりも大きな画素開口を有している。
【0017】
図2は、図1に示す第1実施形態の有機ELディスプレイ10の等価回路図である。
図2に示すように、有機ELディスプレイ10は、アノード電極21(本発明における下部電極に相当するもの)と、カソード電極22(本発明における上部電極に相当するもの)とによって構成される有機EL素子20を備えている。なお、有機EL素子20は、アノード電極21とカソード電極22との間に有機物の発光層を有している。
【0018】
ここで、有機ELディスプレイ10は、本発明の駆動手段であるTFT回路素子30(30a,30b)やキャパシタ40を有機EL素子20ごとにそれぞれ設けたアクティブマトリックス型表示装置である。具体的には、有機ELディスプレイ10は、カソード電極22がGND(グラウンド)及び補助配線54に接続された有機EL素子20と、ソース電極32aが有機EL素子20のアノード電極21に接続され、ドレイン電極33aが正電位の電源線53に接続されたTFT回路素子30aと、ソース電極32bがTFT回路素子30aのゲート電極31aに、ゲート電極31bが走査線52に、ドレイン電極33bが信号線51にそれぞれ接続されたTFT回路素子30bと、TFT回路素子30aのソース電極32aとTFT回路素子30bのソース電極32bとの間に接続されたキャパシタ40とを備えている。
【0019】
なお、図2において、上下層間(カソード接続部56を介したカソード電極22と上層補助配線54との間、上下接続部57を介した上層補助配線54と下層補助配線55との間、ゲート電極31bと走査線52との間)の配線は、点線で示している。また、信号線51は、走査線52、電源線53、上層補助配線54、及び下層補助配線55と交差するが、交差する位置の前後で分断されている。そして、分断された信号線51同士を下層の信号接続線58で接続することにより、同一層の走査線52、電源線53、及び下層補助配線55と信号線51とがショートしないようにしている。
【0020】
このような有機ELディスプレイ10は、TFT回路素子30aが駆動トランジスタとなり、TFT回路素子30bがスイッチングトランジスタとなっている。そして、走査線52に書込み信号を印加し、TFT回路素子30bのゲート電極31bの電位を制御すると、信号線51の信号電圧がTFT回路素子30aのゲート電極31aに印加される。この際、ゲート電極31aの電位は、次に走査線52に書込み信号が印加されるまでの間、キャパシタ40によって安定的に保持される。これにより、TFT回路素子30aのゲート電極31aとソース電極32aとの間の電圧に応じた電流が有機EL素子20に流れ、有機EL素子20は、この電流値に応じた輝度で発光し続けることとなる。
【0021】
このように、有機ELディスプレイ10は、有機EL素子20に流れる電流値をコントロールして発光させている。また、電源線53をパルス駆動(2回パルス)することにより、有機EL素子20を駆動している。そして、1回目のパルスでTFT回路素子30a(駆動トランジスタ)の特性バラツキである閾値電圧の補正を行い、2回目のパルスで書込み信号の印加と移動度の補正とを同時に行なっている。そのため、有機EL素子20の経時劣化やTFT回路素子30aの特性のバラツキが抑制されたものとなっている。
【0022】
図3は、図1に示す第1実施形態の有機ELディスプレイ10の断面図(a−a’断面、b−b’断面)である。
図1に示す第1実施形態の有機ELディスプレイ10は、図3に示すように、遮光メタル11を備えるガラス基板12の上に絶縁膜13を積層したものである。そして、絶縁膜13の上に下層補助配線55、走査線52、及び電源線53が配線されている。また、絶縁膜13の上には、TFT回路素子30も形成されている。さらにまた、図3に示すa−a’断面及びb−b’断面には図示されていないが、信号線51(図1参照)も絶縁膜13上に配線されている。そのため、下層補助配線55、走査線52、電源線53、信号線51、及びTFT回路素子30は、同一層に設けられている。
【0023】
ここで、図1及び図2に示すように、信号線51は、下層補助配線55、走査線52、及び電源線53と交差する部分の前後で分断されている。また、この交差部分では、図3(b)に示すように、ガラス基板12上に信号接続線58が配線されている。そして、絶縁膜13上で分断された信号線51同士は、ガラス基板12上の信号接続線58によって接続されている。そのため、下層補助配線55、走査線52、及び電源線53と信号線51とが接触することはなく、下層補助配線55、走査線52、及び電源線53と信号接続線58とは、絶縁膜13によって絶縁される。したがって、信号線51、走査線52、及び電源線53を同一層に配線していても、ショートが発生することはない。
【0024】
また、絶縁膜13の上には、平坦化膜14が積層されている。この平坦化膜14は、信号線51(図1参照)、下層補助配線55、走査線52、電源線53、及びTFT回路素子30を相互に絶縁するだけでなく、これらの上面を凹凸のない平坦面とするものである。そして、平坦化膜14の上に、上層補助配線54が配置されるとともに、有機EL素子20(アノード電極21)が配列されている。
【0025】
この有機EL素子20は、図3(a)に示すように、アノード電極21とカソード電極22との間に有機物層23(本発明における発光層に相当するもの)を配置したものである。そして、アノード電極21がTFT回路素子30と接続されており、アノード電極21の周囲は、開口規定膜15によって覆われている。また、有機物層23は、注入された電子と正孔との再結合によって発光する有機物からなり、有機物層23が発した光は、透明電極であるカソード電極22を通して外部に取り出される。
【0026】
ここで、カソード電極22を構成する光透過率の高い導電性材料は、抵抗値が高いものである。そのため、カソード電極22の電気抵抗を調整し、カソード電極22の低抵抗化を図るため、下層補助配線55が設けられている。また、カソード電極22と下層補助配線55とを接続するため、アノード電極21と同一層に上層補助配線54が設けられている。そして、カソード接続部56(図1参照)を介してカソード電極22と上層補助配線54とが接続され、上下接続部57(図3(b)参照)を介して上層補助配線54と下層補助配線55とが接続されている。なお、上層補助配線54及び下層補助配線55は、カソード電極22と同電位で、GND(図2参照)に接地されている。
【0027】
図3に示すような断面(a−a’断面、b−b’断面)の有機ELディスプレイ10(図1参照)を製造するには、最初に、遮光メタル11を備えるガラス基板12上に信号接続線58を形成する。すなわち、Mo(モリブデン)等の高抵抗の導電性材料によってガラス基板12上に金属層をパターニングし、信号接続線58とする。そして、ガラス基板12及び信号接続線58の上を覆うようにして絶縁膜13を形成する。なお、この絶縁膜13は、例えば、Si3N4(窒化ケイ素)又はSiO2(二酸化ケイ素)をCVD法(化学蒸着法)によって成膜して形成する。
【0028】
次に、絶縁膜13の上に、配線パターンとして金属層を形成し、下層補助配線55、走査線52、電源線53、及び信号線51(図1参照)とする。また、絶縁膜13上には、TFT回路素子30も形成する。なお、信号線51は、下層補助配線55、走査線52、及び電源線53と交差する部分の前後で分断されるようにし、分断された端部が信号接続線58と接続されるようにする。
【0029】
このようにして下層補助配線55、走査線52、電源線53、及びTFT回路素子30を形成すると、絶縁膜13の表面が凹凸になる。そこで、絶縁膜13の上に、無機系薄膜(SOG:Spin on Glass)で平坦化膜14を形成する。これにより、絶縁膜13だけでなく、下層補助配線55、走査線52、電源線53、及びTFT回路素子30の上に平坦化膜14が積層され、平坦化膜14の表面では、凹凸のない平坦面となる。なお、信号線51(図1参照)の上にも平坦化膜14が積層される。
【0030】
続いて、平坦化膜14の上に、Al(アルミニウム)等の低抵抗の金属材料によって上層補助配線54をパターニングする。具体的には、図1に示す各有機EL素子20(B画素20a、R画素20b、G画素20c)中のR画素20bのみに隣接した(方形のR画素20bの下辺に沿った)島状の上層補助配線54となるようにする。なお、この際、平坦化膜14をパターニングして、下層補助配線55の上面を部分的に露出させておく。そのため、上層補助配線54の形成と同時に、下層補助配線55の露出した上面に上下接続部57が形成される。
【0031】
また、平坦化膜14及び上層補助配線54の上には、アノード電極21の周囲を覆うようにして開口規定膜15を積層する。さらにまた、開口規定膜15の上には、光透過率の高い導電性材料によってカソード電極22及びカソード接続部56を形成する。そして、カソード接続部56を介してカソード電極22と上層補助配線54とを接続する。したがって、カソード電極22は、カソード接続部56、上層補助配線54、及び上下接続部57により、下層補助配線55と接続されることとなる。
【0032】
このように、有機ELディスプレイ10(図1参照)は、アノード電極21の周囲が開口規定膜15によって覆われる。そして、開口規定膜15は、有機物層23の部分だけが開口しており、この開口から有機物層23が発する光を取り出せるようになっている。具体的には、アノード電極21に反射率が高い金属等が用いられる一方で、カソード電極22は、光透過率の高い導電性材料からなる透明電極となっている。そのため、有機物層23が発する光は、ガラス基板12と反対側のカソード電極22側から取り出されることとなる。そして、このようなトップエミッション方式とすることにより、有機EL素子20の開口率を効率的に確保している。
【0033】
また、光透過率が高い導電性材料であるために抵抗値が高いカソード電極22は、上層補助配線54を介して下層補助配線55と接続されている。そのため、カソード電極22の電気抵抗は、下層補助配線55によって調整(低抵抗化)される。その結果、アノード電極21と同一層に配置された上層補助配線54の面積を大幅に小さくすることができ、図1に示す第1実施形態の有機ELディスプレイ10では、島状の上層補助配線54となっている。
【0034】
さらにまた、島状の上層補助配線54は、図1に示すように、有機EL素子20のR画素20bのみに隣接して(方形のR画素20bの下辺に沿って)島状に配置されており、B画素20a及びG画素20cの部分には配置されていない。そのため、B画素20a及びG画素20cのアノード電極21(図3(a)参照)の面積を拡大できるので、B画素20a及びG画素20cの各開口率は、R画素20bの開口率よりも大きく形成されている。
【0035】
さらに、画素の開口率が低下すると、その画素の寿命が低下してしまうが、B画素20a及びG画素20cでは、その高開口率化により、長寿命化が可能となっている。一方、R画素20bは、上層補助配線54の配置により、高開口率化されていない。しかし、R画素20bの寿命は、B画素20a及びG画素20cよりも一般的に長いので、有機EL素子20の全体としては、長寿命でバランスの取れたものとなる。言い換えれば、第1実施形態の有機ELディスプレイ10は、B画素20aやG画素20cよりも寿命が長いR画素20bのみに隣接して上層補助配線54を配置している。そのため、有機EL素子20の長寿命化及び高開口率化を図ることができる。
【0036】
図4は、第2実施形態の有機ELディスプレイ60の配線構造を示す平面図である。
図4に示すように、第2実施形態の有機ELディスプレイ60は、有機EL素子20がM行×N列(図4では、図面の簡略化のため、2行×3列)のマトリックス状に配列されたものである。そして、有機EL素子20のカソード電極22(図3参照)の電気抵抗を調整するために、カソード電極22と上層補助配線54とがカソード接続部56で接続され、上層補助配線54と下層補助配線55とが上下接続部57で接続されている。
【0037】
ここで、有機EL素子20は、光の三原色中の青を発光するB画素20aと、赤を発光するR画素20b及びR画素20dと、緑を発光するG画素20cとによって構成されている。そして、上層補助配線54は、上下に1つおきに配置されたR画素20b及びR画素20d中のR画素20bのみに隣接して(方形のR画素20bの下辺に沿って)島状に配置されており、R画素20d、B画素20a、及びG画素20cの部分には配置されていない。
【0038】
したがって、第2実施形態の有機ELディスプレイ60では、上層補助配線54によってアノード電極21(図3参照)のスペースが制限されないR画素20d、B画素20a、及びG画素20cの開口率がR画素20bよりも大きくなっている。これにより、図4に示す第2実施形態の有機ELディスプレイ60は、R画素20dの数だけ、図1に示す第1実施形態の有機ELディスプレイ10よりも高い開口率を得ることができる。その結果、第2実施形態の有機ELディスプレイ60は、より一層の高精細化及び高画質化が実現されたものとなっている。
【0039】
図5は、第3実施形態の有機ELディスプレイ70の配線構造を示す平面図である。
図5に示すように、第3実施形態の有機ELディスプレイ70は、有機EL素子20がM行×N列(図4では、図面の簡略化のため、2行×3列)のマトリックス状に配列されたものである。そして、有機EL素子20のカソード電極22(図3参照)の電気抵抗を調整するために、カソード電極22と上層補助配線54とがカソード接続部56で接続され、上層補助配線54と下層補助配線55とが上下接続部57で接続されている。
【0040】
ここで、有機EL素子20は、光の三原色中の青を発光するB画素20aと、赤を発光するR画素20eと、緑を発光するG画素20cとによって構成されている。そして、上層補助配線54は、R画素20eのみに隣接して(R画素20eの左下部に形成された切欠きに沿って)島状に配置されており、B画素20a及びG画素20cの部分には配置されていない。
【0041】
したがって、第3実施形態の有機ELディスプレイ70では、上層補助配線54によってアノード電極21(図3参照)のスペースが制限されないB画素20a及びG画素20cの開口率がR画素20eよりも大きくなっている。また、上層補助配線54は、R画素20eの左下部のみに配置されているので、R画素20e開口率は、図1に示す第1実施形態の有機ELディスプレイ10のR画素20bよりも大きくなっている。その結果、図5に示す第3実施形態の有機ELディスプレイ70は、図1に示す第1実施形態の有機ELディスプレイ10よりも高い開口率を得ることができ、高精細化及び高画質化されたものとなっている。
【0042】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、例えば、以下のような種々の変形が可能である。
(1)各実施形態では、有機EL素子20が発した光をガラス基板12と反対側から取り出すようにしたトップエミッション方式の有機ELディスプレイ10としている。しかし、有機EL素子20が発した光をガラス基板12と同じ側から取り出すようにしたボトムエミッション方式にも適用できる。
【0043】
(2)各実施形態では、発光素子に有機EL素子20(有機エレクトロルミネッセンス素子)を用いている。しかし、無機エレクトロルミネッセンス素子や発光ダイオード等、上部電極と下部電極との間に発光層を形成することができる発光素子であればよく、有機エレクトロルミネッセンス素子に限られない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明のアクティブマトリックス型表示装置の一例(第1実施形態)である有機ELディスプレイの配線構造を示す平面図である。
【図2】図1に示す第1実施形態の有機ELディスプレイの等価回路図である。
【図3】図1に示す第1実施形態の有機ELディスプレイの断面図(a−a’断面、b−b’断面)である。
【図4】第2実施形態の有機ELディスプレイの配線構造を示す平面図である。
【図5】第3実施形態の有機ELディスプレイの配線構造を示す平面図である。
【図6】補助配線を有する有機ELディスプレイの配線構造の参考例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0045】
10,60,70 有機ELディスプレイ(アクティブマトリックス型表示装置)
20 有機EL素子(発光素子)
20a B画素
20b R画素
20c G画素
20d R画素
20e R画素
21 アノード電極(下部電極)
22 カソード電極(上部電極)
23 有機物層(発光層)
30,30a,30b TFT回路素子(駆動手段)
51 信号線(第2配線)
52 走査線(第1配線)
53 電源線
54 上層補助配線(上部電極接続配線)
55 下層補助配線(抵抗調整配線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリックス状に配列され、上部電極と下部電極との間に発光層を有する複数の発光素子と、
各前記発光素子を駆動するための駆動手段と、
前記上部電極と接続され、前記下部電極と同一層に設けられるとともに一部の前記発光素子のみに隣接して配置された上部電極接続配線と、
前記上部電極の電気抵抗を調整するために前記上部電極接続配線と接続され、前記下部電極よりも下層に配線された抵抗調整配線と
を有するアクティブマトリックス型表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアクティブマトリックス型表示装置において、
前記発光素子は、光の三原色中の赤を発光するR画素と、緑を発光するG画素と、青を発光するB画素とを備え、
前記上部電極接続配線は、前記R画素に隣接して配置されており、
前記G画素及び前記B画素の各開口率は、前記R画素の開口率よりも大きく形成されている
アクティブマトリックス型表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載のアクティブマトリックス型表示装置において、
前記発光素子は、有機物層を配置した有機エレクトロルミネッセンス素子である
アクティブマトリックス型表示装置。
【請求項4】
請求項1に記載のアクティブマトリックス型表示装置において、
前記駆動手段と接続され、前記抵抗調整配線と同一層に設けられるとともに前記抵抗調整配線と平行する方向に配線された電源線と、
前記駆動手段と接続され、前記抵抗調整配線と同一層に設けられるとともに前記抵抗調整配線及び前記電源線と平行する方向に配線された第1配線と、
前記駆動手段と接続され、前記抵抗調整配線と同一層に設けられるとともに前記抵抗調整配線、前記電源線、及び前記第1配線と交差する方向に配線された第2配線と
を有するアクティブマトリックス型表示装置。
【請求項5】
請求項4に記載のアクティブマトリックス型表示装置において、
前記第1配線は、マトリックス状に配列された各前記発光素子の各行ごとに配線された走査線であり、
前記第2配線は、マトリックス状に配列された各前記発光素子の各列ごとに配線された信号線である
アクティブマトリックス型表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−85866(P2010−85866A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−256795(P2008−256795)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】