説明

アクティブ型フィルタ

【課題】アクティブ素子の増幅度が小さくても、低域側のインピーダンスの低下を補償することが可能なアクティブ型フィルタを提案する。
【解決手段】本発明の実施形態のアクティブ型フィルタは、入力端子と出力端子とを有するアクティブ型フィルタにおいて、第1の磁路と第2の磁路とを形成するコアと、入力端子と出力端子との間に設けられており、第1の磁路および第2の磁路に巻き回された第1のコイルと、第1の磁路に巻き回された第2のコイルと、第2のコイルの両端にそれぞれ接続された2つの入力端子を有するアンプと、アンプの出力端子に接続された一端と第2のコイルの一端に接続された他端とを有しており、第2の磁路に誘起される磁束を強めるように第2の磁路に巻き回された第3のコイルとを備えている。コアには、第1の磁路および第2の磁路の一部であるギャップが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクティブ型フィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、フィルタの形式としては、インダクタなどのパッシブ素子のみで構成されるパッシブ型フィルタや、インダクタに加えてオペアンプなどのアクティブ素子を備えるアクティブ型フィルタが知られている(例えば、特許文献1参照)。このアクティブ型フィルタでは、アクティブ素子の作用によってインダクタのインダクタンス、すなわちインピーダンスを大きくすることができるので、インダクタを小型にすることによって小型のフィルタを実現することが可能となる。
【特許文献1】特開平7−115339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、アクティブ型フィルタでは、アクティブ素子の作用によってインダクタのインピーダンスを大きくすると、インピーダンスのピーク値が高域側に移動し、その結果、低域側のインピーダンスが低下する傾向がある。そこで、アクティブ素子の増幅度を大きくすると、インピーダンスのピーク値が低域側に移動する傾向があり、低域側のインピーダンスの低下を補償することができる。
【0004】
しかしながら、アクティブ素子の増幅度を大きくすると、アクティブ素子が発振する可能性がある。また、インピーダンスのピーク値が低域側に移動することによって、高域側のインピーダンスが低下してしまうという問題もある。
【0005】
そこで、本発明は、アクティブ素子の増幅度が小さくても、低域側のインピーダンスの低下を補償することが可能なアクティブ型フィルタを提案することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者は、様々な実験を行った結果、インダクタを形成するコイルのコアにギャップを設けることによって、アクティブ素子の作用に起因するインダクタのインピーダンスにおけるピーク値の高域側への移動量が低減され、その結果、インダクタにおける低域側のインピーダンスの低下が抑制されることを見出した。このインダクタを備えるアクティブ型フィルタによれば、アクティブ素子の増幅度が小さくても低域側のインピーダンスの低下を補償することができ、アクティブ素子の発振を抑制しつつ、高域側のインピーダンスの低下をも補償することが可能となる。
【0007】
そこで、本発明のアクティブ型フィルタは、入力端子と出力端子とを有するアクティブ型フィルタにおいて、(a)第1の磁路と第2の磁路とを形成するコアと、(b)入力端子と出力端子との間に設けられており、第1の磁路および第2の磁路に巻き回された第1のコイルと、(c)第1の磁路に巻き回された第2のコイルと、(d)第2のコイルの両端にそれぞれ接続された2つの入力端子を有するアンプと、(e)アンプの出力端子に接続された一端と第2のコイルの一端に接続された他端とを有しており、第2の磁路に誘起される磁束を強めるように第2の磁路に巻き回された第3のコイルと、を備えている。(f)コアには、第1の磁路および第2の磁路の一部であるギャップが設けられている。
【0008】
このアクティブ型フィルタによれば、第1のコイルがコアにおける第1の磁路および第2の磁路に巻き回されているので、入力端子にノイズが入力されると、第1のコイルがインダクタンス、すなわちインピーダンスを有することとなる。このインピーダンスによって入力端子から出力端子へ伝播するノイズが低減されることとなる。
【0009】
また、このアクティブ型フィルタによれば、第2のコイルがコアにおける第1の磁路に巻き回されると共に、アンプを介して第3のコイルに接続されているので、第1のコイルを伝播するノイズによって第1の磁路に誘起された磁束に応じて、第2のコイルの両端に誘導起電力が発生し、アンプによってこの誘導起電力が増幅された電力が第3のコイルの両端に発生する。第3のコイルは第2の磁路に誘起される磁束を強めるようにコアにおける第2の磁路に巻き回されているので、第2の磁路には、第1のコイルを伝播するノイズによって誘起された磁束に加えて、第3のコイルに流れる電流によって誘起される磁束が発生し、第1のコイルのインダクタンス、すなわちインピーダンスが増加する。
【0010】
更に、このアクティブ型フィルタによれば、コアには第1の磁路および第2の磁路の一部であるギャップが設けられているので、アンプの作用に起因する第1のコイルにおけるインピーダンスのピーク値の高域側への移動量が低減され、その結果、第1のコイルにおける低域側のインピーダンスの低下が抑制される。したがって、このアクティブ型フィルタによれば、アンプの増幅度が小さくても低域側のインピーダンスの低下を補償することができ、アンプの発振を抑制しつつ、高域側のインピーダンスの低下をも補償することが可能となる。
【0011】
上記したアンプは、第2のコイルの両端に発生する誘導起電力を増幅する増幅用オペアンプと、該増幅用オペアンプのための基準入力電圧を生成する基準用オペアンプとを備えており、これらの増幅用オペアンプと基準用オペアンプとは同一特性を有することが好ましい。この構成は、増幅用オペアンプと基準用オペアンプとを集積化し、同一の半導体基板上に同一サイズの素子により形成することによって実現可能である。この構成によれば、電源変動および温度変動に起因する増幅用オペアンプの出力電力の変動と、電源変動および温度変動に起因する基準用オペアンプの出力電圧、すなわち増幅用オペアンプのための基準入力電圧の変動との誤差が低減されるので、基準入力電圧を基準としたアンプの出力電力を電源変動および温度変動に対して安定化することができる。
【0012】
上記のコアにおけるギャップには、スペーサが挿入されていることが好ましい。この構成によれば、スペーサによってコアにおけるギャップ間隔が安定するので、ギャップ間隔の変動に起因する、第1のコイル、第2のコイルおよび第3のコイルにおけるヒステリシス特性の変動を低減することが可能となる。
【0013】
上記の第1のコイルは、筒状のボビンを介してコアに巻き回されていることが好ましい。この構成によれば、予め第1のコイルをボビンに巻き回してから、コアをボビンに挿入することによって第1のコイルを製作することができるので、コアの形状によらずコアに第1のコイルを巻き回す作業が容易となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、アクティブ素子の増幅度が小さくても、低域側のインピーダンスの低下を補償することが可能なアクティブ型フィルタが提案される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係るアクティブ型フィルタの構成を示す斜視図であり、図2は、図1に示すアクティブ型フィルタを分解して示す分解斜視図である。また、図3は、本発明の実施形態に係るアクティブ型フィルタを示す回路図である。図1および図2に示すアクティブ型フィルタ1は、例えば電力線通信に用いられる。
【0017】
電力線通信では、2MHz〜30MHzの周波数帯域を利用して通信が行われる。この周波数帯域は無線通信でも利用されているので、電力線通信では、2MHz〜30MHzの周波数を有する放射ノイズを低減することが必要である。本実施形態のアクティブ型フィルタ1を電力線通信に用いれば、2MHz〜30MHzの周波数を有するコモンモードノイズを低減することができるので、この周波数を有する放射ノイズが低減される。
【0018】
アクティブ型フィルタ1は、入力端子2a,2b、出力端子3a,3b、コア10、スペーサ20、ボビン21、第1のコイル30、第2のコイル31、第3のコイル32、第4のコイル33、およびアンプ40を備えている。
【0019】
コア10は、磁性体材料からなるEE型コアである。コア10は、第1の部分11と第2の部分12とから構成されている。第1の部分11は、中脚11aと枠体11bとを有している。中脚11aは、軸線X方向に延びる柱状をなしている。枠体11bは、軸線X方向に開口を有するコの字状に成形された柱体をなしている。中脚11aが枠体11bの内側に支持されることによって、E字状の第1の部分11が形成されている。また、枠体11bは、中脚11aに対して一方側の部分11cと他方側の部分11dとを有している。
【0020】
同様に、第2の部分12は、中脚12aと枠体12bとを有している。中脚12aは、軸線X方向に延びる柱状をなしている。また、枠体12bは、軸線X方向に開口を有するコの字状に成形された柱体をなしている。中脚12aが枠体12bの内側に支持されることによって、E字状の第2の部分12が形成されている。また、枠体12bは、中脚12aに対して一方側の部分12cと他方側の部分12dとを有している。
【0021】
第1の部分11と第2の部分12とは、開口が対向するように組み合わされて、8の字状のコア10を形成している。コア10における中脚11a,12a、枠体11bの部分11cおよび枠体12bの部分12cは第1の磁路13を形成しており、コア10における中脚11a,12a、枠体11bの部分11dおよび枠体12bの部分12dは第2の磁路14を形成している。
【0022】
また、第1の部分11と第2の部分12とは軸線X方向に離間して組み合わされており、中脚11aと中脚12aとの間および枠体11bと枠体12bとの間には、それぞれギャップ15が形成されている。このギャップ15にはスペーサ20が設けられている。スペーサ20は絶縁性材料からなり、例えば絶縁性テープあるいは絶縁性フィルムであることが好ましい。
【0023】
コア10における中脚11a,12aはボビン21に覆われている。ボビン21は絶縁性材料からなり、筒状をなしている。ボビン21には、第1のコイル30および第4のコイル33が巻き回されている。
【0024】
第1のコイル30の一端は入力端子2aに接続されており、第1のコイル30の他端は出力端子3aに接続されている。また、第4のコイル33の一端は入力端子2bに接続されており、第4のコイル33の他端は出力端子3bに接続されている。第1のコイル30と第4のコイル33とは、中脚11a,12aに対して同一な軸線X方向に巻き回されている。すなわち、入力端子2a,2bにコモンモードノイズが入力されたときに、第1の磁路13および第2の磁路14の共通部分である中脚11a,12aに誘起される磁束を強め合う方向に巻き回されている。
【0025】
また、コア10における枠体11bの部分11cおよび枠体12bの部分12cには、第2のコイル31が巻き回されている。すなわち、第2のコイル31は第1の磁路13に巻き回されている。このように、第2のコイル31は、第1の磁路13に誘起される磁束に応じた誘導起電力が発生するように、第1のコイル30および第4のコイル33に磁気結合している。第2のコイル31の一端はアンプ40のプラス入力端子41aに接続されており、第2のコイル31の他端はアンプ40のマイナス入力端子41bに接続されている。
【0026】
アンプ40は、第2のコイル31に発生する誘導起電力を増幅する。アンプ40の詳細は後述する。アンプ40の出力端子42は第3のコイル32の一端に接続されており、第3のコイル32の他端は第2のコイル31の他端およびアンプ40のマイナス入力端子41bに接続されている。
【0027】
第3のコイル32は、コア10における枠体11bの部分11dおよび枠体12bの部分12dに巻き回されている。すなわち、第3のコイル32は、第2の磁路14に巻き回されている。このように、第3のコイル32は、アンプ40によって増幅された電力が発生するときに、第2の磁路14に誘起される磁束を強めるように、第1のコイル30および第4のコイル33に磁気結合している。
【0028】
次に、アンプ40について説明する。図4は、図3に示すアンプを示す回路図である。アンプ40は基準電圧生成部50と増幅部60とを有している。
【0029】
基準電圧生成部50は、抵抗素子51,52、容量素子53,54,55、およびオペアンプ56を備えている。抵抗素子51と抵抗素子52とは、第1の電源線43と第2の電源線(例えば接地ライン)44との間に直列に接続されている。抵抗素子51と抵抗素子52との間のノードと第2の電源線44との間には、電圧安定化のための容量素子53が接続されている。また、抵抗素子51と抵抗素子52との間のノードは、オペアンプ56のプラス入力端子に接続されている。オペアンプ56のマイナス入力端子は、アンプ40のマイナス入力端子41bに接続されている。オペアンプ56の電源端子は第1の電源線43と第2の電源線44とに接続されており、この第1の電源線43と第2の電源線44との間には電圧安定化のための容量素子54,55が接続されている。オペアンプ56の出力端子は、オペアンプ56のマイナス入力端子に接続されている。このようにして、オペアンプ56の出力端子に基準電圧が生成される。また、オペアンプ56の出力端子は、増幅部60に接続されている。
【0030】
増幅部60は、抵抗素子61,62、容量素子63,64、およびオペアンプ65を備えている。抵抗素子61の一端は、基準電圧生成部50におけるオペアンプ56の出力端子、およびアンプ40のマイナス入力端子41bに接続されている。抵抗素子61の他端はオペアンプ65のマイナス入力端子に接続されている。オペアンプ65のプラス入力端子はアンプ40のプラス入力端子41aに接続されている。オペアンプ65の電源端子は第1の電源線43と第2の電源線44とに接続されており、この第1の電源線43と第2の電源線44との間には電圧安定化のための容量素子63,64が接続されている。オペアンプ65の出力端子は、抵抗素子62を介してオペアンプ65のマイナス入力端子に接続されている。このようにして、オペアンプ65は、アンプ40の入力端子41a,41bに入力される電力を、基準電圧生成部50からの基準電圧を基準として増幅する。
【0031】
オペアンプ65の出力端子はアンプ40の出力端子42に接続されている。したがって、アンプ40は、入力端子41a,41bに入力される電力を増幅し、基準電圧生成部50からの基準電圧を基準とした電力を出力する。
【0032】
次に、アクティブ型フィルタ1の動作を説明する。入力端子2a,2bにコモンモードノイズが入力されると、入力端子2a,2bからコモンモードノイズ電流Icが同一方向に流れる。第1のコイル30および第4のコイル33にコモンモードノイズ電流Icが入力されると、コア10に磁束が誘起される。第1のコイル30を流れるコモンモードノイズ電流Icによって誘起される磁束の向きと、第4のコイル33を流れるコモンモードノイズ電流Icによって誘起される磁束の向きとはコア10の中脚11a,12aにおいて同一方向であるので、コモンモードノイズ電流Icはコア10に誘起される磁束を強め合う。したがって、第1のコイル30および第4のコイル33は、コモンモードノイズに対してインダクタンス、すなわち、インピーダンスを有することとなる。このように、第1のコイル30および第4のコイル33はインダクタとして機能する。
【0033】
コア10における第1の磁路13に磁束が誘起されると、第2のコイル31に誘導起電力が発生する。この誘導起電力はアンプ40によって増幅され、第3のコイル32に増幅された電力が発生する。このように、第2のコイル31および第3のコイル32もインダクタとして機能する。第3のコイル32にこの電力に応じた電流Iaが流れると、電流Iaによって誘起される磁束が第2の磁路14に発生する。この第3のコイル32を流れる電流Iaによって誘起される磁束の向きと、第1のコイル30および第4のコイル33を流れるコモンモードノイズ電流Icによって誘起される磁束の向きとは同一方向であるので、電流Iaは第2の磁路14における磁束を強める。したがって、第1のコイル30および第4のコイル33のインダクタンス、すなわちインピーダンスが増加する。
【0034】
第1のコイル30のインピーダンスが、入力端子2aから出力端子3aへ伝播するコモンモードノイズを低減し、第4のコイル33のインピーダンスが、入力端子2bから出力端子3bへ伝播するコモンモードノイズを低減する。
【0035】
次に、本実施形態のアクティブ型フィルタと従来のアクティブ型フィルタとの特性を比較する。測定に用いられた本実施形態のアクティブ型フィルタ1におけるコア10、第1のコイル30、第2のコイル31、第3のコイル32および第4のコイル33は以下の通りである。
第1の部分11および第2の部分12:TDK株式会社製のコア(型番:PC40EE8−Z)
コア10:第1の部分11と第2の部分12との間にギャップ15を有するコア
第1のコイル30および第4のコイル33:Φ0.26mmエナメル線、16ターン
第2のコイル31および第3のコイル32:Φ0.2mm三層絶縁線、1ターン
【0036】
次に、測定に用いられた従来のアクティブ型フィルタの構成を説明する。図5は、従来のアクティブ型フィルタを示す斜視図である。従来のアクティブ型フィルタ70は、本実施形態のコア10の代わりにコア71を備えており、第1のコイル30、第2のコイル31、第3のコイル32および第4のコイル33の代わりに、第1のコイル72、第2のコイル73、第3のコイル74、および第4のコイル75を備えている点でアクティブ型フィルタ1と異なっている。コア71は第1の部分71aと第2の部分71bとから構成されており、第1の部分71aと第2の部分71bとは、磁性体材料からなっており、円筒状のトロイダルコアである。第1の部分71aと第2の部分71bとは、円筒における中心軸が重なるように隣接して、円筒状のコア71を構成している。すなわち、コア71はギャップを有していない点でコア10と異なっている。コア71には第1のコイル72および第4のコイル75が巻き回されている。また、コア71における第1の部分71aには第2のコイル73が巻き回されており、コア71における第2の部分71bには第3のコイル74が巻き回されている。
【0037】
測定に用いられた従来のアクティブ型フィルタ70におけるコア71、第1のコイル72、第2のコイル73、第3のコイル74および第4のコイル75は以下の通りである。
第1の部分71aおよび第2の部分71b:TDK株式会社製のトロイダルコア(型番:HF70)、外径8mm、内径4mm、厚み4mm
コア71:第1の部分71aおよび第2の部分71bを組み合わせ、ギャップを有さないコア
第1のコイル72および第4のコイル75:Φ0.35mmエナメル線、9ターン
第2のコイル73および第3のコイル74:Φ0.26mmエナメル線、1ターン
【0038】
以下、本実施形態のアクティブ型フィルタ1および従来のアクティブ型フィルタ70の測定結果を示す。まず、従来のアクティブ型フィルタ70の測定結果を示す。図6は、従来のアクティブ型フィルタのインダクタンスおよびインピーダンスの測定結果である。図6(a)には周波数に対するインダクタンス特性が示されており、図6(b)には周波数に対するインピーダンス特性が示されている。また、図6(c)には図6(b)における1MHz〜100MHzの範囲を拡大したインピーダンス特性が示されている。
【0039】
図6(a)において、曲線80Iはアンプ40がオフ状態であるときの測定結果であり、曲線81I,82I,83I,84Iはそれぞれアンプ40の増幅度が1倍、3倍、25.58倍、101倍であるときの測定結果である。また、比較のために、従来のパッシブ型フィルタの測定結果が曲線85Iに示されている。同様に、図6(b)および図6(c)において、曲線80Rはアンプ40がオフ状態であるときの測定結果である。曲線81R,82R,83R,84Rはそれぞれアンプ40の増幅度が1倍、3倍、25.58倍、101倍であるときの測定結果である。また、曲線85Rは従来のパッシブ型フィルタの測定結果である。なお、従来のアクティブ型フィルタ70は、従来のパッシブ型フィルタと比較して約3/4倍に小型化されたものである。
【0040】
図6(a)〜図6(c)によれば、従来のアクティブ型フィルタ70では、アンプ40の作用によってインダクタンス、すなわちインピーダンスが増加することがわかる。また、アンプ40の増幅度が小さいと、パッシブ型フィルタと比較してインピーダンスのピーク値が高域側に移動し、その結果、低域側のインピーダンスが低下することがわかる。一方、アンプ40の増幅度を大きくすると、インピーダンスのピーク値が低域側に移動し、高域側のインピーダンスが低下してしまうことがわかる。また、低域側においてパッシブ型フィルタと同等なインピーダンスを得るためには、アンプ40の増幅度を約25倍以上とする必要があることがわかる。
【0041】
次に、本実施形態のアクティブ型フィルタ1の測定結果を示す。図7は、本実施形態のアクティブ型フィルタのインダクタンスおよびインピーダンスの測定結果である。図7(a)には周波数に対するインダクタンス特性が示されており、図7(b)には周波数に対するインピーダンス特性が示されている。また、図7(c)には図7(b)における1MHz〜100MHzを拡大したインピーダンス特性が示されている。
【0042】
図7(a)において、曲線90Iはアンプ40がオフ状態であるときの測定結果であり、曲線91I,92I,93I,94Iはそれぞれアンプ40の増幅度が1倍、3倍、25.58倍、101倍であるときの測定結果である。また、また、曲線95Iは従来のパッシブ型フィルタの測定結果である。同様に、図7(b)および図7(c)において、曲線90Rはアンプ40がオフ状態であるときの測定結果である。曲線91R,92R,93R,94Rはそれぞれアンプ40の増幅度が1倍、3倍、25.58倍、101倍であるときの測定結果である。また、曲線95Rは従来のパッシブ型フィルタの測定結果である。なお、本実施形態のアクティブ型フィルタ1は、従来のパッシブ型フィルタと比較して約1/3倍に小型化されたものである。
【0043】
図7(a)〜図7(c)によれば、本実施形態のアクティブ型フィルタ1では、アンプ40の作用により、パッシブ型フィルタと比較してインピーダンスのピーク値が高域側に移動し、その結果、低域側のインピーダンスが低下するが、インピーダンスのピーク値の高域側への移動量、および低域側のインピーダンスの低下量が従来のアクティブ型フィルタ70に比べて小さいことがわかる。したがって、アンプ40の増幅度が約3倍程度でも、低域側のインピーダンスの低下を補償することができ、低域側においてパッシブ型フィルタおよび従来のアクティブ型フィルタ(増幅度約25倍)70と同等なインピーダンスが得られることがわかる。また、アンプ40の増幅度が小さいので、高域側のインピーダンスの低下量が小さく、高域側においてパッシブ型フィルタおよび従来のアクティブ型フィルタ(増幅度約25倍)70と比較して大きなインピーダンスが得られていることがわかる。
【0044】
次に、本実施形態のアクティブ型フィルタ1および従来のアクティブ型フィルタ70のコモンモードノイズの減衰特性を示す。図8は、本実施形態および従来のアクティブ型フィルタの減衰特性の測定結果である。図8(a)には従来のアクティブ型フィルタ70の周波数に対する減衰特性が示されており、図8(b)には本実施形態のアクティブ型フィルタ1の周波数に対する減衰特性が示されている。
【0045】
図8(a)において、曲線80Pはアンプ40がオフ状態であるときの測定結果であり、曲線81P,82P,83P,84Pはそれぞれアンプ40の増幅度が1倍、3倍、25.58倍、101倍であるときの測定結果である。同様に、曲線90Pはアンプ40がオフ状態であるときの測定結果であり、曲線91P,92P,93P,94Pはそれぞれアンプ40の増幅度が1倍、3倍、25.58倍、101倍であるときの測定結果である。
【0046】
図8(a)によれば、従来のアクティブ型フィルタ70では、上述したようにアンプ40の増幅度を上げたことによる高域側のインピーダンス低下に起因して、10MHz〜30MHz付近におけるコモンモードノイズの減衰特性が低下していることがわかる。しかしながら、図8(b)によれば、本実施形態のアクティブ型フィルタ1では、上述したように2MHz〜30MHz全域に渡ってインピーダンスの低下を補償することができるので、2MHz〜30MHz全域に渡ってコモンモードノイズの減衰特性が良好であることがわかる。
【0047】
このように、本実施形態のアクティブ型フィルタ1によれば、コア10には第1の磁路13および第2の磁路14の一部であるギャップ15が設けられているので、アンプ40の作用に起因する第1のコイル30および第4のコイル33におけるインピーダンスのピーク値の高域側への移動量が低減され、その結果、第1のコイル30および第4のコイル33における低域側のインピーダンスの低下が抑制される。したがって、本実施形態のアクティブ型フィルタによれば、アンプ40の増幅度が小さくても低域側のインピーダンスの低下を補償することができ、アンプ40の発振を抑制しつつ、高域側のインピーダンスの低下をも補償することが可能となる。
【0048】
また、本実施形態のアクティブ型フィルタ1によれば、アンプ40の作用によって第1のコイル30および第2のコイル33のインピーダンスを増加することができるので、第1のコイル30および第2のコイル33を小型化することができ、その結果、アクティブ型フィルタ1を小型化することが可能となる。
【0049】
また、本実施形態のアクティブ型フィルタ1では、増幅部60におけるオペアンプ65と基準電圧生成部50におけるオペアンプ56とを集積化し、同一の半導体基板上に同一サイズの素子により形成することによって、オペアンプ65とオペアンプ56とが同一特性を有すると、電源変動および温度変動に起因するオペアンプ65の出力電力の変動と、電源変動および温度変動に起因するオペアンプ56の出力電圧、すなわちオペアンプ65のための基準入力電圧の変動との誤差が低減されるので、基準入力電圧を基準としたアンプ40の出力電力を電源変動および温度変動に対して安定化することができる。
【0050】
したがって、本実施形態のアクティブ型フィルタ1は、2MHz〜30MHzの低い周波数を有するノイズの低減を要する電力線通信に好適に適用可能である。
【0051】
また、本実施形態のアクティブ型フィルタ1によれば、コア10におけるギャップ15には、スペーサ20が挿入されているので、スペーサ20によってコア10におけるギャップ間隔が安定する。したがって、ギャップ間隔の変動に起因する、第1のコイル30、第2のコイル31、第3のコイル32および第4のコイル33におけるヒステリシス特性の変動を低減することが可能となる。
【0052】
また、本実施形態のアクティブ型フィルタ1によれば、第1のコイル30および第4のコイル33がボビン21を介してコア10に巻き回されているので、予め第1のコイル30および第4のコイル33をボビン21に巻き回してから、コア10をボビン21に挿入することによって第1のコイル30および第4のコイル33を製作することができるので、コア10の形状によらずコア10に第1のコイル30および第4のコイル33を巻き回す作業が容易となる。また、第2のコイル31および第3のコイル32についても、それぞれ、枠体11bの部分11cおよび枠体12bの部分12c、枠体11bの部分11dおよび枠体12bの部分12dに1ターンのみ巻き回すだけなので、巻き回す作業が容易となる。
【0053】
なお、本発明は上記した本実施形態に限定されることなく種々の変形が可能である。
【0054】
本実施形態では、コア10における中脚11aと中脚12aとの間、枠体11bの部分11cと枠体12bの部分12cの間、および枠体11bの部分11dと枠体12bの部分12dの間の3箇所にギャップ15を有する形態を例示したが、本実施形態は、3箇所すべてにギャップを有さなくても同様な効果が得られる。例えば、中脚11aと中脚12aとの間のみにギャップを有する形態であってもよいし、枠体11bの部分11cと枠体12bの部分12cの間、および枠体11bの部分11dと枠体12bの部分12dの間の2箇所にギャップを有する形態であってもよい。
【0055】
また、本実施形態では、コモンモードノイズを低減するためのアクティブ型コモンモードフィルタを例示したが、本実施形態は、ノーマルモードノイズを低減するためのアクティブ型ノーマルモードフィルタへの変形が可能である。例えば、第4のコイルの巻回方向を本実施形態と反対方向にすれば、アクティブ型ノーマルモードフィルタへの変形が可能である。
【0056】
また、本実施形態では、電力線の両ラインにそれぞれコイルを備える例を示したが、本実施形態は、電力線の片ラインにのみコイルを備える形態への変形が可能である。例えば、本実施形態において第4のコイルを備えない形態への変形が可能である。この形態によれば、コモンモードノイズおよびノーマルモードノイズを共に低減することが可能なアクティブ型フィルタが実現される。
【0057】
また、本実施形態では、コアとしてEE型コアを例示したが、コアの形態は、磁路の一部を構成するギャップを形成することができれば、本実施形態の形態に限られるものではない。例えば、コアの形態は、EI型コアであってもよいし、I字状の中脚とロの字状の枠体とを組み合わせたコアであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施形態に係るアクティブ型フィルタの構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示すアクティブ型フィルタを分解して示す分解斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係るアクティブ型フィルタを示す回路図である。
【図4】図3に示すアンプを示す回路図である。
【図5】従来のアクティブ型フィルタを示す斜視図である。
【図6】従来のアクティブ型フィルタのインダクタンスおよびインピーダンスの測定結果である。
【図7】本実施形態のアクティブ型フィルタのインダクタンスおよびインピーダンスの測定結果である。
【図8】本実施形態および従来のアクティブ型フィルタの減衰特性の測定結果である。
【符号の説明】
【0059】
1…アクティブ型フィルタ、2a,2b…入力端子、3a,3b…出力端子、10…コア、11…第1の部分、11a…中脚、11b…枠体、12…第2の部分、12a…中脚、12b…枠体、13…第1の磁路、14…第2の磁路、15…ギャップ、20…スペーサ、21…ボビン、30…第1のコイル、31…第2のコイル、32…第3のコイル、33…第4のコイル、40…アンプ、50…基準電圧生成部、56…オペアンプ、60…増幅部、65…オペアンプ。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子と出力端子とを有するアクティブ型フィルタにおいて、
第1の磁路と第2の磁路とを形成するコアと、
前記入力端子と前記出力端子との間に設けられており、前記第1の磁路および前記第2の磁路に巻き回された第1のコイルと、
前記第1の磁路に巻き回された第2のコイルと、
前記第2のコイルの両端にそれぞれ接続された2つの入力端子を有するアンプと、
前記アンプの出力端子に接続された一端と前記第2のコイルの一端に接続された他端とを有しており、前記第2の磁路に誘起される磁束を強めるように前記第2の磁路に巻き回された第3のコイルと、
を備えており、
前記コアには、前記第1の磁路および前記第2の磁路の一部であるギャップが設けられている、
アクティブ型フィルタ。
【請求項2】
前記アンプは、前記第2のコイルの両端に発生する誘導起電力を増幅する増幅用オペアンプと、該増幅用オペアンプのための基準入力電圧を生成する基準用オペアンプとを備えており、
前記増幅用オペアンプと前記基準用オペアンプとは、同一特性を有する、
請求項1に記載のアクティブ型フィルタ。
【請求項3】
前記コアにおけるギャップには、スペーサが挿入されている、
請求項1または2に記載のアクティブ型フィルタ。
【請求項4】
前記第1のコイルは、筒状のボビンを介して前記コアに巻き回されている、
請求項1〜3の何れかに記載のアクティブ型フィルタ。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate