説明

アクリルアミド分解方法

【課題】麹菌を用いてアクリルアミドを分解する方法およびアクリルアミド分解システムを提供する。
【解決手段】麹菌がA.oryzae KBN1010株またはA.oryzae No.100株である。前記麹菌を固定化する。食品中のアクリルアミドを分解する。これらの菌株を利用してアクリルアミドを分解するアクリルアミド分解システム。菌に栄養や酸素を供給することにより活性の低下を抑えつつアクリルアミドの分解を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物を用いてアクリルアミドを分解する方法およびこの方法を用いるアクリルアミド分解システムに関する。
【背景技術】
【0002】
アクリルアミドは、アクリル基(CH2=CH−CO−)とアミド基(−CO−NH−)をもつ有機化合物で、常温では無臭白色の結晶で、水やアルコールに溶けやすい性質である。室温や暗所では安定であるが、加熱や紫外線によって重合し、ポリアクリルアミドになる。工業的にはアクリルニトリルから加水分解により合成され、化学架橋剤や漆くいに使用され、ポリアクリルアミドは水処理剤、土壌凝固剤、漏水防止剤、紙力増強剤、アクリル系熱硬化性塗料原料、化粧品原料、バイオテクノロジー関係の研究室等などの多くの分野で使用されている。
【0003】
しかし、アクリルアミドの摂取は健康への悪影響が懸念され、多くの人々が不安を持っている。アクリルアミドは人への皮膚障害、言語障害、末梢神経炎、小脳性失調等を起こし、中毒症状は主に神経症状と肝障害である。国際がん研究機関は、アクリルアミドを「ヒトに対しておそらく発がん性がある物質(2A)」に分類している。その理由には、アクリルアミドが細胞の中のDNAを傷付ける作用を持っていることが複数の試験から確認され、ヒトが食品から極微量にアクリルアミドを摂取し続けた場合にも、この作用が原因となってがんを引き起こす可能性があると考えられている。動物試験では、アクリルアミドの摂取量が増えると発がん率も増えることが報告され、ヒトでの研究では、食品からアクリルアミド摂取量が増えると子宮内膜がんと卵巣がんの発がんリスクを高くなることが報告されている。
【0004】
工業原料であるアクリルアミドが、2002年、日常的に摂取する食品や加熱加工食品に含まれることが報告された。各種食品を対象に分析が行われ、ポテトチップス、フライドポテト等のスナック、小麦を原料とするビスケット・焼き菓子、コーヒーやほうじ茶等や、家庭やレストラン等で調理された食品からもアクリルアミドが検出されたことが報告された。ノルウェーでの調査ではアクリルアミド食品別の摂取率は、コーヒーが最も多く約3割であり、次いで、ポテトチップス、パンの順であり、これらの合計で約6〜7割であることが示されている。日本では現在調査が進められている。
【0005】
食品中でアクリルアミドが生成するメカニズムについても研究が進められている。食品原材料に含まれているアミノ酸の一種であるアスパラギンと果糖やブドウ糖等の還元糖とが、調理中の加熱よりアミノカルボニル反応を起こし、その過程でアクリルアミドが生成すると考えられている。しかし、アスパラギンや還元糖以外の食品成分が原因物質となっている可能性や、アミノカルボニル反応以外の反応経路からもアクリルアミドが生成することが報告されている。また、脂質が分解して生成するアクロレインの酸化による経路や、アスパラギン酸から生成したアクリル酸がアンモニアと反応して生成する経路、セリンやシステインといったアミノ酸から生成した乳酸がアンモニアと反応して生成する経路、アスパラギンの酵素的脱炭酸反応により生成した3−アミノプロパンアミドが脱アミノ反応する経路等も報告されている。
【0006】
現在までに食品中のアクリルアミドの低減方法も研究され、食品原材料に含まれているアスパラギンの低減(例えば特許文献1、2参照)、加熱加工方法の工夫、(例えば特許文献3、4参照)、反応性の低いアミノ酸や糖質を使用した方法、原料の保存方法が報告されている。しかし、生成原因や経路が複雑であるために、アクリルアミド濃度を低減できない食品もあり、製造業者にとっては大きな課題である。
【0007】
一方、加熱加工中の生成制御による低減方法以外には、加熱加工後に、生成したアクリルアミドを分解する方法が考えらえる。対象は食品ではない場合、アクリルアミドの分解に微生物を用いる方法が公知であり、例えば、ブレビバクテリウム・アンモニジェニスATCC1641(Brevibacterium ammonigenes ATCC1641)、メチロフィラス・メチロトロファスAS−1 (Methylophilus methylotrophus AS−1 NCIB10515)、ロドコッカス属(Rhosococcus sp)がある(特許文献5〜7参照)。また、アミダーゼ遺伝子のクローニングも報告されている。例えば、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、ロドコッカス・ロドクラウスIFO 15564(Rhodococcus rhodochrous IFO 15564)、シュードモナス・アエルギノサ(Pseudomonas aeruginosa PAO1)、ブレビバクテリウムR312(Brevibacterium R312)、コマモナス・テストステロリ 5−MGAM−4D(Comamonas testosteroni 5−MGAM−4D)、シュードノカルディア・サーモフィラJCM3095(Psedonocardia thermophila JCM3095)がある(特許文献8〜13参照)。さらに、アミダーゼの製造についても報告がある。例えば、ロドコッカス NCIMB40889 やNCIMB40755(Rhodococcus NCIMB40889、NCIMB40755)(特許文献14参照)である。
【0008】
このように種々の微生物において、アミダーゼ及びアミダーゼ遺伝子が知られていることから、これらの微生物酵素を用いて加工食品、とりわけ加熱食品中のアクリルアミドを分解低減することは可能であろう。しかし、上記微生物や他の遺伝子組み換え微生物は安全性という観点からは問題があり、食品への応用は困難である。食品工業に利用可能な安全性の高い微生物からアクリルアミドを高分解する菌を見つけ出すことができれば、食品、とりわけ加熱加工食品中のアクリルアミド分解に利用し得る可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−192436号公報
【特許文献2】特表2006−500071号公報
【特許文献3】特開2007−236273号公報
【特許文献4】特表2008−511324号公報
【特許文献5】特許79011389号
【特許文献6】米国特許第5188952号/EU特許0272026号
【特許文献7】国際公開第99/007748号
【特許文献8】国際公開第06/40345号
【特許文献9】特開平9−9973号公報
【特許文献10】特開2004−105152号公報
【特許文献11】米国特許第5260208号
【特許文献12】米国特許出願公開2004/0225116号
【特許文献13】特開2006−340630号公報
【特許文献14】米国特許第5962284号/ EU特許0988375号/国際公開第99/007838号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の解決課題は、安全性が高く、食品に使用しても問題のない微生物を用いてアクリルアミドを分解する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った。そして、驚くべきことに、伝統的に様々な食品の製造に用いられている麹菌のなかにアクリルアミド分解能の高い菌株を見出し、これらの菌株を利用してアクリルアミドを分解する方法およびアクリルアミド分解システムを完成させた。
【0012】
すなわち、本発明は:
(1)アクリルアミド分解能を有する麹菌を用いてアクリルアミドを分解する方法、
(2)前記麹菌がA.oryzae KBN1010株またはA.oryzae No.100株である、(1)記載の方法、
(3)前記麹菌が固定化されている、(1)または(2)記載の方法、
(4)食品中のアクリルアミドを分解するものである、(1)〜(3)のいずれか1つに記載の方法、
(5)(1)〜(4)のいずれか1つに記載の方法を用いる、アクリルアミド分解システム、
を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アクリルアミド高含有物、例えば食品、とりわけコーヒー、ほうじ茶などの液状食品に含まれるアクリルアミドを、安全かつ効率的に分解することができる。また、本発明は、麹菌の生菌体を用いるので、アクリルアミド分解酵素を用いる場合と異なり、菌に栄養や酸素を供給することにより活性の低下を抑えつつアクリルアミドの分解を行うことができるという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、流動床バイオリアクターの概略図である。
【図2】図2は、3種の麹菌の胞子懸濁液を用いた流動床バイオリアクターにおけるアクリルアミド分解能を示す。縦軸は測定されたアクリルアミド量、横軸は実験開始後の経過日数を示す。
【図3】図3は、3種の麹菌の胞子懸濁液を用いたバッチ式反応器におけるアクリルアミド分解能を示す。縦軸は測定されたアクリルアミド量、横軸は実験開始後の経過日数を示す。
【図4】図4は、包括固定化された3種の麹菌を用いたバッチ式反応器におけるアクリルアミド分解能を示す。縦軸は測定されたアクリルアミド量、横軸は実験開始後の経過日数を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、1の態様において、アクリルアミド分解能を有する麹菌を用いてアクリルアミドを分解する方法を提供する。本発明において、アクリルアミド分解能を有する麹菌であれば、いずれの種類の麹菌でも使用することができる。麹菌は、伝統的に酒類、味噌、醤油などの食品の製造に利用されており、安全性の点で問題がない。また、麹菌によりアクリルアミドを分解する際の生成物にも有害なものは認められない。
【0016】
麹菌の種類としてはAspergillus oryzae、Aspergillus sojae、Aspergillus awamori、Aspergillus kawachii、Aspergillus usami、Aspergillus tamari、Aspergillus Glaucusなどが例示される。以下において、「Aspergillus」を「A.」と略記することがある。
【0017】
本発明の方法に用いる麹菌は、アクリルアミド分解能を有するものであればよいが、アクリルアミド分解能が高いものが好ましいことはいうまでもない。アクリルアミド分解能の高い菌株は、公知の方法を用いてスクリーニングすることができるが、例えば、特願2008−199646に記載されたスクリーニング方法を用いてもよい。あるいは、本発明の方法に使用する前に、適当濃度(例えばppmオーダー)のアクリルアミドを含有する培地にて麹菌を培養することにより、アクリルアミド分解能を誘導してもよい。本発明の方法に用いるアクリルアミド分解能の高い麹菌株としては、A.oryzae KBN1010株(株式会社ビオック)またはA.oryzae No.100株(株式会社樋口松之助商店)などが挙げられる。
【0018】
本発明の方法に使用するアクリルアミド分解能を有する麹菌は1種類であってもよく、あるいは2種類以上であってもよい。
【0019】
本発明の方法は、試料(例えば、コーヒー、ほうじ茶などの液状食品など)を麹菌と接触させることにより実施することができる。麹菌は、十分な菌体量になるまで予め培養してから試料と接触させてもよく、胞子の状態で試料と接触させてもよい。麹菌の培養は、例えばYPD、PDAなどの公知の培地にて、公知の好気的培養条件下にて行うことができる。好気的培養には、通気、撹拌または振盪を行うことが好ましく、これらの手段・方法も公知である。
【0020】
本発明によりアクリルアミドを分解する場合の反応条件は、麹菌のアクリルアミド分解が適切に行われる条件であればよく、当業者が適宜選択することができる。例えば、約15〜約37℃、例えば室温において、pH無調整、あるいはpH約5〜約7において、バブリング、撹拌、振盪などにより好気的条件に保ちながら、アクリルアミドの分解を行うことができる。本発明の方法は、バッチ式、連続フロー式いずれの形態でも行うことができる。上述のごとく、麹菌の菌体あるいは胞子をそのまま使用してもよいが、食品との分離の容易さ、あるいは連続的または繰り返しプロセスの使用を考慮すると、麹菌を固定化して本発明に使用することが好ましい。
【0021】
麹菌の固定化は公知の方法にて行うことができる。麹菌の固定化法に適した方法として、包括法および結合法が例示される。包括法は、アルギン酸カルシウム、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリアクリルアミド、カッパ−カラギーナン、ゲランガム、アガロース、セルロース、デキストランのごとき合成および天然ポリマー、光架橋性樹脂プレポリマー、ウレタンプレポリマーのごときプレポリマー等のマトリクス中に菌体を取り込ませる方法である。結合法は、焼結ガラス、多孔質セラミックス、キトサン、セライト、シリカゲル、ゼオライト、活性炭、各種スポンジ等の水不溶性担体に菌体を固着させる方法である。麹菌を膜状担体に固定化してもよい。膜の材料としてはセルロース膜、ナイロンネット、ポリウレタンフォーム膜、不織布、天然繊維を用いた布などが例示される。これらの固定化麹菌を1種類、あるいは2種類以上用いることができる。
【0022】
本発明の1実施態様として、例えば、アルギン酸ナトリウムに包括固定化した麹菌のビーズをカラムに充填し、公知のバイオリアクターにて使用してもよい。バイオリアクターとしては、流動床リアクター、固定膜型リアクター、浮遊式増殖リアクター、中空糸型リアクターなどが例示されるがこれらに限定されない。反応は試料を適当な流速にて連続的にリアクターに供給して行うこともできる。麹菌が好気性であるので、適宜バブリングを行うことが好ましい。試料によって、あるいはプロセスによって、2つ以上のリアクターを組み合わせて使用することが好ましい場合もある。
【0023】
使用に伴って麹菌のアクリルアミド分解能が低下あるいは生菌数が減少してきた場合、麹菌(固定化されていれば担体とともに)を栄養培地に移して好気的に培養することにより菌体の活性および生菌体量を確保あるいは復活させることができる。かかる培養の際にアクリルアミドを適量(例えばppmオーダー)添加して培養してアクリルアミド分解能を誘導してもよい。かくして得られた麹菌あるいは固定化麹菌を再度本発明の方法に使用することができる。
【0024】
本発明の方法を用いてアクリルアミドが分解されたことを調べるために、当業者間で一般的なアクリルアミドの質量分析方法を用いることができる。質量分析方法は、本発明の実施前後におけるアクリルアミドの質量を測定することができればいずれの方法であってもよい。例えば、LC−MS、LC−MS−MS、GC−MSで測定する方法や誘導体化GC−MSで分析する方法などを用いてもよい。
【0025】
本発明は、さらなる態様において、麹菌を用いてアクリルアミドを分解するためのシステムを提供する。該システムは、必須構成要素として、好ましくは、A.oryzae KBN1010株やA.oryzae No.100株などの麹菌、好ましくは固定化麹菌を含む。その他の構成要素は、必要に応じて、例えば、反応容器、試料を微生物と接触させるためのバイオリアクター装置などを含んでもよい。
【0026】
以下に実施例を示して本発明を具体的かつ詳細に説明するが、実施例は本発明を限定するものと解してはならない。
【実施例1】
【0027】
(麹菌によるアクリルアミド分解能の解析)
本発明者らは、特願2008−199646に記載されるごときスクリーニング方法により、アクリルアミド高分解能を有するとされる候補の株を選別した。該候補株として、A.oryzae No.100株、A.oryzae KBN1010株およびA.oryzae M−01株(以下において、各々、No.100、KBN1010およびM−01ということがある)を実験に用いた。実験に使用したA.oryzae M−01株はアクリルアミド分解能が認められない株として選定されたものである。また、A.oryzae No.100株およびA.oryzae M−01株は、株式会社樋口松之助商店より分譲された。A.oryzae KBN1010株は、株式会社ビオックより分譲された。これらの菌株を用いてアクリルアミド分解を調べた。
【0028】
A.胞子懸濁液の調製
3種の菌を各々、PDA培地に植菌し、30℃のインキュベーターで培養を行った。次いで、滅菌された0.1%Triton X100を5ml添加し、胞子懸濁液を調製した。この胞子懸濁液を1×10細胞/mlの菌数になるように滅菌水で希釈した。
【0029】
B.包括固定化麹菌の作製
次に、菌を包括固定するために、2%アルギン酸ナトリウム水溶液を調製した。アルギン酸ナトリウム2gを、70〜80mlの熱湯に溶解し(溶けにくい場合は、オートクレーブ処理(1kg/cm、1分間)するとよい。ただし処理時間が長いと高分子が分解し、ゲル化したとき、ゲルが弱く球状に形成しにくくなる。)、アルギン酸ナトリウム溶液を室温に冷却し、水を加え、100mlとした。前記胞子懸濁液1mlと2%アルギン酸ナトリウム水溶液9mlを15mlファルコンチューブに入れ、気泡が出来ないように混合した。この混合液を5mlピペットで吸い取り、0.5%塩化カルシウム水溶液を20ml入れた45mlファルコンチューブに滴下させて30分間放置し、塩化カルシウムを除き、3種の固定化麹菌を作製した。
【0030】
流動床バイオリアクターを用いたアクリルアミド分解能の解析
上記Aのごとく調製した3種の麹菌の胞子懸濁液を、リアクターに詰め、濃度が10ppmになるようにアクリルアミドを添加したほうじ茶を流した。ほうじ茶(日本茶販売株式会社INの「ファミリーサイズほうじ茶ティーバッグ」を使用)は、沸騰した湯にほうじ茶パックを1Lに対して2つ加え、手で触れるくらい冷めるまで放置し、HClおよびNaOHを用いてpH5.5に調節したものを使用した。リアクターには、EYELA東京理科機械株式会社製の定量送液ポンプ(マイクロチューブポンプ)を使用し、以下の条件で実験を行った。また、図1において、5から6に向けて出入口の各々に0.2μmフィルターを取り付け、滅菌エアレーションを行うとともに胞子または菌体の流出を防止した。
・リアクター流量 :約150ml/h
・温度 :室温(22〜23℃)
・リアクター1つに対するほうじ茶の量:80ml
【0031】
初日、1日後、2日後、3日後のほうじ茶をサンプリングし、0.45μmフィルターでろ過を行い、HPLCで測定した。なお、初日のサンプリングはほうじ茶をリアクターに充填後、30分経過してから行われた。その結果、3日後に、M−01では、アクリルアミド量がほとんど変化していないのに対して、No.100およびKBN1010では、アクリルアミド量が初日と比較して4倍近く減少した(図2)。このことは、No.100およびKBN1010が高いアクリルアミド分解能を有し、本発明での使用に適することを示す。
【0032】
バッチ式反応器を用いたアクリルアミド分解能の解析
上記のごとく調製した3種の麹菌の胞子懸濁液(上記A)または固定化麹菌(上記B)を、アクリルアミド含量が10ppmになるように調製したほうじ茶とともに100ml容器(以下、バッチ式反応器という)に入れた。反応の条件は以下のとおりである。
・容器 :100ml容器
・温度 :30℃
・ほうじ茶の量 :80ml
・バッチ式 :100rpmロータリー振とう培養
【0033】
初日、1日後、2日後、3日後のほうじ茶をサンプリングし、0.45μmフィルターでろ過を行い、HPLCで測定した。その結果、No.100およびKBN1010は、バッチ式反応器を用いた場合にも流動床リアクターを用いた場合と同様にアクリルアミド分解能が高いことがわかった(図3)。さらに、No.100およびKBN1010に包括固定化を施すと、測定1日目から著しくアクリルアミド量が減少した(図4)。このことから、No.100およびKBN1010は、包括固定化されると、アクリルアミド分解速度が上昇し、分解能も向上することがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明により、食品の醸造などに使用されている微生物を用いてアクリルアミドを分解する方法が提供されるので、食品などの分野、例えば、アクリルアミドを多く含有するといわれるポテトチップ、コーヒー、タバコなどの製造分野において利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリルアミド分解能を有する麹菌を用いてアクリルアミドを分解する方法。
【請求項2】
前記麹菌がA.oryzae KBN1010株またはA.oryzae No.100株である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記麹菌が固定化されている、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
食品中のアクリルアミドを分解するものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法を用いる、アクリルアミド分解システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−183867(P2010−183867A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29836(P2009−29836)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(593165487)学校法人金沢工業大学 (202)
【出願人】(300022397)三興商事株式会社 (2)
【Fターム(参考)】