説明

アクリルアミド系水溶性重合体の製造方法

【課題】
分子量が200万〜2500万で、水溶解性が優れるアクリルアミド系水溶性重合体の製造法を提供する。特に、低モノマー濃度における重合であっても重合速度が十分に速く、効率的に製造できるアクリルアミド系水溶性重合体の製造法を提供する。
【解決手段】
アクリルアミド及びアクリルアミドと共重合可能なモノマーを0〜5モル%含有するモノマー組成物の15〜50質量%水溶液を、前記モノマー組成物を基準として0.05〜5モル%のヒドロキシカルボン酸及び/又はその塩の共存下に、アミンまたは無機塩からなる還元剤と、酸化剤と、を用いるレドックス重合または光重合により、前記モノマー組成物を重合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリルアミド系水溶性重合体の製造方法に関する。より詳しくは、高分子量で、水溶性が優れるアクリルアミド系水溶性重合体の製造方法に関する。特に、低モノマー濃度であっても重合速度が十分に大きいアクリルアミド系水溶性重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアクリルアミドは、凝集剤、製紙工程用薬剤(例えば、抄紙用粘剤や歩留向上剤)、石油三次回収用薬剤などとして各種産業で広く使用されている。これらに用いられるポリアクリルアミドは、一般的に分子量(重量平均分子量をいう、以下同じ)が高いほど性能が高く、用途によっては1000万を超える非常に高い分子量が必要とされる場合もある。
【0003】
ポリアクリルアミドとしては、アクリルアミドの単独重合により製造されるポリアクリルアミドや、アクリルアミドとアクリル酸中和物などとの共重合により製造されるノニオン又はアニオン性のポリアクリルアミドが広く用いられている。
【0004】
ポリアクリルアミドの製造方法としては、モノマー水溶液を適当な開始剤の存在下においてラジカル重合させる方法が挙げられる。ラジカル重合法としては、レドックス開始剤やアゾ系開始剤を使用する重合法や、光開始剤を使用する光重合法などが挙げられる。
【0005】
水溶解性が高く、且つ高分子量の重合体を工業的且つ大規模に製造する方法として、従来から種々の工夫がなされている。その一つに、モノマー濃度を下げて重合する方法が知られている。しかし、モノマー濃度を下げると分子量は高くなるものの、重合速度が著しく低下して生産性を低下させたり、得られる重合体の残存モノマー濃度が高くなって品質を悪化させたりする。
【0006】
開始剤濃度を低下させたり、反応開始温度を低下させたりすれば、高分子量化を図ることが出来るが、その場合には水溶解性が悪くなる。水溶解性を向上させるために、各種添加剤の検討もなされているが、十分な成果が得られていない。従って、従来、ポリアクリルアミドの工業的製造は、通常30質量%〜飽和濃度のアクリルアミド水溶液を用いている。
【0007】
特許文献1には、過酸化水素とヒドロキシカルボン酸とを組み合わせた重合開始剤が開示されており、重合体末端に活性水素基を導入する方法として有用であるとされている。しかし、係る発明は主に疎水性モノマーを重合させることを対象としており、水溶解性に関する記載はない。また、重合体の分子量も500〜5万のものを対象としており、これ以上に高分子量化する方法については記載されていない。
【0008】
特許文献2には、歯科用硬化組成物の一成分として、ヒドロキシカルボン酸の添加が開示されており、表面未重合層が低減するとの記載があるが、疎水性モノマーの重合に関するものであり、且つ硬化体になるため生成物の分析も十分行われていない。
【0009】
以上のように、水溶解性が優れる高分子量のアクリルアミド重合体を工業的規模で製造する方法として満足ゆく方法はないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−69112号公報
【特許文献2】国際公開第2002−45660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
分子量(重量平均分子量をいう、以下同じ)が200万〜2500万で、水溶解性が優れるアクリルアミド系水溶性重合体の製造法を提供する。特に、低モノマー濃度における重合であっても重合速度が十分に速く、効率的に製造できるアクリルアミド系水溶性重合体の製造法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するため検討を重ねた結果、水溶液重合法によりアクリルアミド系重合体を製造する場合において、ヒドロキシカルボン酸及び/又はその塩(以下、これらを総称して「ヒドロキシカルボン酸類」ともいう)の存在下、モノマーを重合させる方法に想到した。この方法は、低モノマー濃度における重合であっても重合速度が十分に大きいことを見出した。そして、このヒドロキシカルボン酸類の重合速度の向上効果は、アクリルアミド系重合体の場合のみに特異的に発現することを見出した。このように製造されるアクリルアミド系重合体は、分子量が大きく、水溶解性が優れていることを見出した。本発明者らはこれらの発見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0013】
上記課題を解決する本発明は以下に記載するものである。
【0014】
〔1〕
アクリルアミド及びアクリルアミドと共重合可能なモノマーを0〜5モル%含有するモノマー組成物の15〜50質量%水溶液を、前記モノマー組成物を基準として0.05〜5モル%のヒドロキシカルボン酸及び/又はその塩の共存下に、アミンまたは無機塩からなる還元剤と、酸化剤とを用いるレドックス重合または光重合により、前記モノマー組成物を重合させることを特徴とする重量平均分子量が200万〜2500万のアクリルアミド系水溶性重合体の製造方法。
【0015】
本発明には、以下の構成を付加したものも含む。
【0016】
〔2〕
アクリルアミド及びアクリルアミドと共重合可能なモノマーを0〜5モル%含有するモノマー組成物の水溶液濃度が20〜40質量%である〔1〕に記載のアクリルアミド系水溶性重合体の製造方法。
【0017】
〔3〕
アクリルアミド系水溶性重合体の重量平均分子量が300万〜2000万である〔1〕に記載のアクリルアミド系水溶性重合体の製造方法。
【0018】
〔4〕
反応系に対して加熱又は除熱を行わずに、モノマー組成物を重合させる〔1〕に記載のアクリルアミド系水溶性重合体の製造方法。
【0019】
〔5〕
反応系に、更にアゾ化合物を共存させる〔1〕に記載のアクリルアミド系水溶性重合体の製造方法。
【0020】
〔6〕
アクリルアミド及びアクリルアミドと共重合可能なモノマーを0〜5モル%含有するモノマー組成物の15〜50質量%水溶液を、前記モノマー組成物を基準として0.05〜5モル%のヒドロキシカルボン酸及び/又はその塩の共存下に、アミンまたは無機塩からなる還元剤と、酸化剤とを用いるレドックス重合または光重合により、前記モノマー組成物を重合させ、その後、得られたゲル状のアクリルアミド系水溶性重合体を乾燥し、次いで粉砕することにより、平均粒径1〜100μmの粉末状重合体を得る〔1〕に記載のアクリルアミド系水溶性重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明のアクリルアミド系水溶性重合体の製造方法によれば、モノマー濃度が低い場合においても重合速度を低下させ難い。よって、モノマー濃度を低くしても効率的に製造を行うことが出来る。モノマー濃度を低くすることが出来るため、得られる重合体の分子量を高くすることが出来る。また、得られる重合体の水溶解性が優れる。更に、原料モノマー組成物水溶液の濃度が低いので、反応系に対して加熱や除熱等を行わずに重合させる方法が採用しやすい。従って、本方法は大量生産に適する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0023】
(モノマー組成物)
本発明においてモノマー組成物はアクリルアミドを主成分として用いる。これに、メタクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、およびこれらの中和塩等のモノマーを適宜配合できる。また、モノマー及び得られる重合体の水溶性を損ねない程度であれば、他のモノマー、例えば、スチレン、アクリルニトリル、(メタ)アクリル酸エステル等のモノマーを適宜配合してもよい。これらモノマーの含有率は5モル%以下が好ましい。
【0024】
(ヒドロキシカルボン酸類)
本発明において、重合時に反応系にはヒドロキシカルボン酸類を共存させる。ヒドロキシカルボン酸類としては、ヒドロキシカルボン酸とその塩がある。重合時にモノマー水溶液に添加するヒドロキシカルボン酸及び/又はその塩は、炭素数が10以下の脂肪族であって、分子中にカルボキシル基と水酸基とを有するものであれば特に限定されない。ヒドロキシカルボン酸としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、マンデル酸、α−オキシイソ酪酸、2−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシブタン酸、ジメチロールプロピオン酸が例示され、α−ヒドロキシカルボン酸が好ましい。また、これらのヒドロキシカルボン酸は、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩等として用いても良い。また、これらのヒドロキシカルボン酸類は単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0025】
モノマー水溶液に添加するヒドロキシカルボン酸類の量は、モノマー1モルに対して0.05〜5.0モル%であり、0.10〜4.0モル%が好ましい。0.05モル%未満では、重合速度の向上が殆ど見られず、溶解性の向上も見られない。一方、5.0モル%を超えて添加すると、重合速度は十分向上するが、得られる重合体の分子量が高くならない。
【0026】
ヒドロキシカルボン酸類をモノマー水溶液に添加するにあたっては、ヒドロキシカルボン酸類を固体状のまま添加しても良く、水に溶解させてから添加しても良い。また、ヒドロキシカルボン酸類は後述するモノマー水溶液のpH緩衝剤としての機能も有する。
【0027】
(開始剤)
重合開始方法としては、レドックス開始剤を使用する方法、光開始剤存在下において光照射する方法が知られており、本発明ではそのいずれを採用してもよい。
【0028】
レドックス開始剤による重合開始方法は通常用いられる方法が採られる。即ち、酸化剤と還元剤とからなるレドックス開始剤をモノマー溶液に添加することにより重合を開始させる。酸化剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリ、過酸化水素、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイドが例示される。還元剤としては、硫酸第一鉄、硫酸第一鉄アンモニウム、亜硫酸水素ナトリウム等の無機塩、トリメチルアミンが例示される。レドックス開始剤の使用量は、酸化剤、還元剤ともにモノマー組成物に対し1〜200ppmである。酸化剤、還元剤のそれぞれの水溶液を重合開始の直前にモノマー水溶液に加えることにより重合を開始させる。本発明では、レドックス開始剤による重合開始方法が簡便であり好ましい。
【0029】
光開始剤による重合開始方法も通常用いられる方法が採られる。例えば、ベンゾフェノン、アンスラキノン、アシルホスフィンオキサイド化合物、アゾ化合物等の光開始剤を、モノマー水溶液に加え、光開始剤の最大吸収波長の光を含む光をモノマー水溶液に照射することにより重合を開始させる。
【0030】
高温時の重合を速やかに行わせるために、モノマー水溶液にアゾ系開始剤を添加してもよい。アゾ系開始剤としては、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシルエチル]−プロピオンアミド、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]が例示される。これらは単独で用いても、2種以上を併用しても良い。アゾ系開始剤の添加量は、モノマー質量に対し100ppm以上であり、200〜10000ppmが好ましい。
【0031】
水溶性のアゾ化合物については、直接モノマー水溶液に配合しても、水溶液にして添加してもよい。非水溶性のアゾ化合物をモノマー水溶液に直接添加する場合、本発明の効果が十分に得られないことがある。このような場合は、連鎖移動性が比較的小さく、且つ水に混合しやすいメタノール等の極性有機溶剤にアゾ化合物を溶解して添加すれば、目的の効果が得られる。
【0032】
モノマー水溶液には、前述のモノマー組成物、アゾ化合物の他、必要に応じてイソプロピルアルコール等の連鎖移動剤やpH緩衝剤等を加えてもよい。
【0033】
(重合反応)
本発明においては、上記ヒドロキシカルボン酸類が添加された上記モノマー水溶液に、レドックス開始剤を添加する、又は光開始剤を添加して光照射することにより重合反応を開始させることが出来る。
【0034】
一般にアクリルアミドの重合反応はモノマー濃度が低いと分子量は高くなるが、重合速度は遅くなる。一方、モノマー濃度が高いと重合速度は速くなるが、分子量は低くなる。
【0035】
本発明のアクリルアミド系水溶性重合体の製造方法におけるモノマー濃度は、15〜50質量%であり、20〜40質量%が好ましい。15質量%未満であると、重合速度の低下が顕著となる。一方、50質量%を超えると得られる重合体の分子量が高くならない。本発明のアクリルアミド系水溶性重合体の製造方法は、比較的低いモノマー濃度であっても、重合速度の低下が小さい。そのため、モノマー濃度は通常よりも低く設定できる。よって、アクリルアミド系水溶性重合体の高分子量化が図りやすい。
【0036】
本発明のアクリルアミド系水溶性重合体の製造方法においては、重合開始に先立ち、モノマー水溶液に窒素ガス等を通じて脱酸素処理を行うことが好ましい。
【0037】
重合時のモノマー水溶液のpHは、4〜9であることが好ましい。
【0038】
本発明においては、重合反応中に重合液を加熱して重合反応を促進させたり、重合反応に伴い発生する反応熱を除熱して重合反応の暴走を抑制したりしてもよい。しかし、本発明のアクリルアミド系水溶性重合体の製造方法は、分子量が200万〜2500万のアクリルアミド系水溶性重合体を対象としている。そのため、重合液の粘度が高く、ゲル状となるため、熱交換の効率が悪い。そこで、本発明のアクリルアミド系水溶性重合体の製造方法においては、外部から人為的に加熱や除熱を行わない環境雰囲気に放置する、いわゆる断熱的重合法によることが好ましい。
【0039】
断熱的重合法においては、重合開始とともに反応熱により反応温度(水溶液の温度)は上昇していき、重合反応がほぼ完結すると反応温度の上昇は停止して最高温度に達する。
【0040】
本発明のアクリルアミド系水溶性重合体の製造方法においては、重合反応の最高温度を50〜90℃とするのが好ましく、60〜80℃とするのがより好ましい。
【0041】
断熱的重合法において、重合反応の最高温度を上記範囲に調整するには、水溶液中のモノマー濃度と重合開始温度とを調整することによって行う。製造量や重合するモノマーの種類にもよるが、モノマー濃度を15〜50質量%の間で調合し、重合開始温度を−5〜30℃の範囲で調整すると、重合反応の最高温度を50〜90℃とすることが出来る。断熱的重合法においては、通常、重合反応は重合開始後30分〜5時間で50〜90℃の最高温度に達する。
【0042】
重合反応によってモノマー水溶液は、ゲル状のアクリルアミド系水溶性重合体(以下、重合体ゲルと略記する)となる。
【0043】
重合は、適当な反応容器で回分的に行うこともできるし、ベルトコンベア等の上に連続的に流し込み、連続的に行うこともできる。
【0044】
重合終了後、残留アクリルアミドモノマー含有量の低減を目的として、熱処理を行ってもよい。熱処理は、反応容器内やベルトコンベア上において加熱処理を行うことによって行うことが出来る。または、得られた重合体ゲルを適当な大きさに切断して、ビニル袋などに密着包装して、湯浴等にて熱処理を行ってもよい。熱処理温度は70〜100℃で、熱処理時間は1〜5時間程度である。
【0045】
重合体ゲルは、公知の方法で乾燥、粉砕することにより、粉末状とすることができる。乾燥は、加熱乾燥や凍結乾燥等の公知の方法が適用できる。乾燥にあたっては、乾燥効率を高めるため、予め重合体ゲルを1〜10mm程度に切断しておいても良い。この場合、粉砕工程を経ないで粉末状とすることが出来る場合もある。粉砕は、例えばカッターやハンマー或いはロールを用いるミル等の公知の装置を用いて行うことが出来る。上記粉砕により、平均粒径が1〜100μmの粉末状重合体が得られる。
【0046】
本発明の製造方法によって得られるアクリルアミド系水溶性重合体の分子量は、200万〜2500万であり、300万〜2000万が好ましい。この分子量は、後述する0.10%塩粘度(25℃)に換算するとそれぞれ、1.3〜7.3(mPa・s)、1.7〜6.3(mPa・s)程度に相当する。
【0047】
ヒドロキシカルボン酸類を添加してモノマーを重合させると、重合体の水への溶解性が向上する。本発明の製造方法によって得られるアクリルアミド系水溶性重合体の不溶解分(後述)は5質量%以下で、3質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。
【実施例】
【0048】
次に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。本実施例において用いた評価方法や測定方法は以下の通りである。
【0049】
(反応速度)
断熱的重合の場合における重合反応の速度は、重合開始から最高温度(以下、「Tmax」と表記する)に到達するまでの時間(以下、「TTmax」と表記する)を指標とした。この時間(TTmax)が短いほど重合速度が大きいこととなる。
【0050】
(分子量)
アクリルアミド系水溶性重合体の分子量は、25℃における0.10%塩粘度を指標とした。この数値(0.10%塩粘度)が大きいほど分子量は高いこととなる。
【0051】
(0.10%塩粘度)
500mlビーカーに400gの蒸留水を入れ、スクリュー型撹拌羽を400rpmで撹拌しながら、サンプル0.4g(固形分換算)を添加し、90分間撹拌して溶解させた。この溶液に塩化ナトリウムを1mol%濃度になるように添加、溶解し、25℃での粘度を測定した。
【0052】
(不溶解分)
上記と同様にスクリュー型撹拌羽を400rpmで撹拌しながら、蒸留水にサンプル0.4g(固形分換算)を添加し、90分間撹拌して溶解させた。この溶液を150メッシュのステンレス製金網でろ過し、200mLの脱イオン水で洗浄した。その後、この金網を105℃で180分間乾燥させて秤量し、不溶解分を算出した。
【0053】
(実施例1)
50質量%アクリルアミド水溶液644gにクエン酸三ナトリウム0.67gを添加し、全体量が1400gとなるようにイオン交換水を加え、希塩酸と苛性ソーダ溶液を用いてpHを7とした。これに2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(以下、V−50と略す)をアクリルアミドモノマーに対して700ppm(質量、以下同じ)添加した。その後、この調合液を冷却して0℃とした。この調合液をステンレス製のジュワー瓶に投入して、窒素を5L/minの速度で導入し、十分に脱酸素した。次いで、過硫酸アンモニウム(1%水溶液としたもの)をアクリルアミドモノマーに対し5ppm相当量と、硫酸第一鉄アンモニウム(1%水溶液としたもの)をアクリルアミドモノマーに対し3ppm相当量と、をそれぞれシリンジに取り、これらを同時にジュワー瓶に投入した。これらの液を素早く攪拌して反応を開始させ、反応液内温度をモニターした。反応開始165分後に反応最高温度67℃に達した。反応最高温度においてそのまま60分間放置した後、得られたゲル重合物を取り出した。このゲル重合物を細断し、肉挽器にて約2〜3mm径の粒状にさらに細断した。このうち、約50gをシャーレに取って温風循環式乾燥機にて70℃で2時間乾燥させた後、高速回転刃式粉砕機にて1分間粉砕し、20〜60メッシュのもの(20メッシュを通過し、60メッシュを通過しないもの)を分取してアクリルアミド系水溶性重合体を得た。
【0054】
(実施例2〜6および比較例1〜5)
表1に記載される配合、条件により、実施例1に記載の方法に準じてアクリルアミド系水溶性重合体を製造した。これらの製造結果、サンプル物性を表1に示した。但し、実施例5では、レッドックス開始剤として、過硫酸カリウム(1%水溶液としたもの)をアクリルアミドモノマーに対し5ppm相当量と、亜硫酸水素ナトリウム(1%水溶液としたもの)をアクリルアミドモノマーに対し3ppm相当量を添加し、開始温度10℃にて重合を行なった。
【0055】
【表1】

【0056】
比較例1及び4、5は、ヒドロキシカルボン酸を含まないため、TTmaxが大きい、即ち重合速度が遅い。また、得られた重合体の不溶解分が大きい。比較例2は、ヒドロキシカルボン酸の添加量が多すぎるため、0.10%塩粘度が小さい、即ち分子量が低い。比較例3では、過酸化水素を用いている。しかしヒドロキシカルボン酸を含まないため、重合が完結しなかった。
【0057】
表1から明らかなように、本発明の方法によれば、アクリルアミド系水溶性重合体の分子量を高くすることができ、且つ重合時間を大幅に短縮できる。得られるアクリルアミド系水溶性重合体は、水溶解性良好である。また、ヒドロキシカルボン酸はクエン酸を初めとして、多くのものが自然界に存在する安全性の高い物質であり、環境維持の点からも優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリルアミド及びアクリルアミドと共重合可能なモノマーを0〜5モル%含有するモノマー組成物の15〜50質量%水溶液を、前記モノマー組成物を基準として0.05〜5モル%のヒドロキシカルボン酸及び/又はその塩の共存下に、アミンまたは無機塩からなる還元剤と、酸化剤とを用いるレドックス重合または光重合により、前記モノマー組成物を重合させることを特徴とする重量平均分子量が200万〜2500万のアクリルアミド系水溶性重合体の製造方法。
【請求項2】
アクリルアミド及びアクリルアミドと共重合可能なモノマーを0〜5モル%含有するモノマー組成物の水溶液濃度が20〜40質量%である請求項1に記載のアクリルアミド系水溶性重合体の製造方法。
【請求項3】
アクリルアミド系水溶性重合体の重量平均分子量が300万〜2000万である請求項1に記載のアクリルアミド系水溶性重合体の製造方法。
【請求項4】
反応系に対して加熱又は除熱を行わずに、モノマー組成物を重合させる請求項1に記載のアクリルアミド系水溶性重合体の製造方法。
【請求項5】
反応系に、更にアゾ化合物を共存させる請求項1に記載のアクリルアミド系水溶性重合体の製造方法。
【請求項6】
アクリルアミド及びアクリルアミドと共重合可能なモノマーを0〜5モル%含有するモノマー組成物の15〜50質量%水溶液を、前記モノマー組成物を基準として0.05〜5モル%のヒドロキシカルボン酸及び/又はその塩の共存下に、アミンまたは無機塩からなる還元剤と、酸化剤とを用いるレドックス重合または光重合により、前記モノマー組成物を重合させ、その後、得られたゲル状のアクリルアミド系水溶性重合体を乾燥し、次いで粉砕することにより、平均粒径1〜100μmの粉末状重合体を得る請求項1に記載のアクリルアミド系水溶性重合体の製造方法。


【公開番号】特開2011−127077(P2011−127077A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289786(P2009−289786)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(306048535)MTアクアポリマー株式会社 (6)
【Fターム(参考)】