説明

アクリル系合成繊維およびその製造方法

【課題】従来のアクリル系合成繊維の製造時の操業性および加工性を損なうことなく、白色でかつ優れた導電性を有するアクリル系合成繊維およびその製造方法を提供する。
【解決手段】白色導電性微粒子を含むアクリル重合体層11と実質的に含まないアクリル重合体層12を繊維軸方向に沿って3層以上接合して複合紡糸されたアクリル系合成繊維およびその製造方法。
【効果】白色導電性微粒子を繊維中に均一に練り込んだ場合より、少量の微粒子で高い導電性が得られ、生産時の操業性、機械物性、後加工性も良好である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性を有し、かつ、白色である導電性アクリル系合成繊維およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性アクリル系合成繊維の製造方法としては、1.導電性物質を繊維表面にメッキもしくはコーティングする方法(特許文献1、4)、2.導電性物質を繊維に練り混む方法(特許文献2)などがあった。
【0003】
特許文献1および4記載の導電性物質を繊維表面にメッキもしくはコーティングする方法では導電性物質が繊維表面を覆っているため、染色性、紡績性などの加工性が悪化したり、摩擦などにより脱落が起こりやすく耐久性が劣ったりする懸念がある。一方、特許文献2記載の方法は繊維内部に導電性物質が存在するため、耐久性や加工性が大きく悪化する懸念はない。
【0004】
導電性物質としてもっとも良く使われているのがカーボンブラックであるが、黒色であるため、添加量および方法により程度の差はあるが、繊維が黒色化してしまう。そのため、デザインが重視される衣料用途、特にアウター向けには使いづらい面があった。導電性物質として白色金属化合物を用いたものもあるが、繊維全体に均一に練り混んでおり、高い導電性を得るには大量に練り混む必要があり、強度などの繊維物性が低下してしまう。
【0005】
特許文献3のように強度低下を防ぐために白色導電性物質を芯鞘構造の芯部にのみ、存在させるようにするものもあるが、この場合、芯鞘口金のような精密な口金を用いるため、口金が詰まりやすく、操業性に劣る。また、導電性微粒子を含む部分が繊維カット面を除き、繊維表面に露出しておらず、不導体であるアクリル系重合体に覆われているため、導電性(除電性)に劣る。
【特許文献1】特開2001−40578号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2002−138323号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開平8−337925号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開昭58−31168号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来のアクリル系合成繊維の製造時の操業性および加工性を損なうことなく、白色でかつ優れた導電性を有するアクリル系合成繊維およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、白色導電性微粒子を繊維中に均一に分散させるのではなく、層状に局在化させることにより製造時の操業性および製品加工時の加工性と導電性を両立できることを見いだした。
【0008】
すなわち本発明は、アクリル系重合体が繊維軸方向に沿って3層以上接合された多層複合構造を有するアクリル系合成繊維であって、該複合構造が白色導電性微粒子含有量5重量%以上20重量%以下である層および白色導電性微粒子含有量1重量%以下である層からなることを特徴とするアクリル系合成繊維である。
【0009】
さらに、本発明は、少なくとも一つの白色導電性微粒子含有量5重量%以上20重量%以下のアクリル系重合体、および少なくとも一つの白色導電性微粒子含有量1重量%以下であるアクリル系重合体を、繊維軸方向に沿って3層以上に接合して紡糸することを特徴とする前記アクリル系合成繊維の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
繊維全体に白色導電性微粒子を均一に練り込んだ場合より高い導電性が得られる。繊維の生産時操業性、機械物性および後加工性の低下もなく、生産が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明で使用する白色導電性微粒子としては、白色でかつ導電性を有する微粒子であれば、いずれも使用することができる。例えば金属酸化物、もしくは金属酸化物を被覆した微粒子があげられるが、これらに限るものではない。金属酸化物として酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化アンチモンなどがあげられるが、これらに限るものではない。金属酸化物を被覆した微粒子の例として、酸化錫および酸化インジウムを被覆した酸化チタンなどが上げられるが、これに限らない。また、これらの混合物でも良く、導電性を阻害しないものであれば、さらに白色導電性微粒子以外も混合しても良い。
【0013】
これら白色導電性微粒子の後述する溶媒もしくは繊維への分散性を向上するため、導電性および白色度を悪化させないものであれば、表面処理しても構わない。表面処理方法は、ポリエチレングリコールと白色導電性微粒子を混合し、再粉砕するなどの方法があるが、使用する表面処理剤および方法はこれらに限らない。
【0014】
なお、白色導電性微粒子の直径は0.05μm以上0.5μm以下がであることが好ましい。0.05μm以下の場合は分散液調製時に凝集しやすく、0.5μmを超えると紡糸時に口金が閉塞しやすくなる。また、白色導電性微粒子の形状は外接球の大きさが先に挙げた範囲であれば、立方体、直方体、多面体および不定形などでも良く、球状である必要はない。
【0015】
白色導電性微粒子は後述する紡糸原液に使用しているものと同じ溶媒に分散し、練り込む。使用するアクリル系重合体を溶解できる溶媒であれば違う溶媒でも構わないが、溶剤回収工程が煩雑になる。分散濃度は凝集せず、流動性を確保できる範囲で可能な限り、高くすることが好ましい。分散はホモミキサーもしくはプロペラ撹拌機で容器中の溶媒を攪拌しながら、白色導電性微粒子を投入する。投入完了し、均一に分散した液をサンドグラインダー(ビーズミル)にて処理することが好ましい。特に高濃度に分散させる場合はサンドグラインダー処理した方が紡糸時の口金圧上昇も少ない。
【0016】
本発明で使用するアクリル系重合体としては、アクリロニトリルを30重量%以上含有するアクリル系ポリマーで繊維形成能を有していれば良い。アクリロニトリル以外の共重合成分としてはアクリル酸、メタクリル酸およびそれらのアルキルエステル類、イタコン類、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、塩化ビニル、スチレン、塩化ビニリデンなどのビニル系化合物の他に、ビニルスルホン酸、アクリルスルホン酸、メタクリルスルホン酸、パラスチレンスルホン酸などの不飽和スルホン酸およびそれらの塩類を用いることができる。
【0017】
上記アクリル系重合体は懸濁重合、溶液重合、乳化重合等のいずれの方法によって製造されたものでも良い。また、溶媒は上記アクリル系重合体を溶解するものであればよく、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、アセトン等の有機系溶媒や硝酸、ロダン酸ソーダ、塩化亜鉛等の無機塩水溶液等の無機系溶媒が好ましく用いられる。これら溶媒にアクリル系重合体を溶解し、紡糸原液とする。紡糸原液中の重合体濃度は10重量%以上30重量%以下に設定する。
【0018】
この紡糸原液中に繊維形成能および操業性を阻害しないその他の添加剤を練り込んでも構わない。例えば、紫外線吸収剤、染料、顔料などであるが、これらに限らない。
【0019】
白色導電性微粒子を繊維中に層状に練り込むには以下のような方法で行う。すなわち、まったく白色導電性微粒子を含まない紡糸原液と白色導電性微粒子を含む紡糸原液を用意する。この時の白色導電性微粒子を含む部分の微粒子濃度は使用する白色導電性微粒子の導電性、要求される導電性および製糸条件などにもよるが5重量%以上である必要がある。5重量%未満だと導電性が低すぎる。好ましくは10重量%以上20重量%以下、さらに好ましくは10〜15重量%である。当然、白色導電性微粒子が多いほど導電性は高くなるが、その反面、口金圧が上がり易くなるなど操業性が悪化し、繊維強度も低下するので20重量%以下とすることが好ましい。 白色導電性微粒子含有量5重量%以上20重量%以下のアクリル系重合体と白色導電性微粒子含有量1重量%以下のアクリル系重合体を複合紡糸する方法を図2により説明する。図2は本発明の繊維を製造するための複合紡糸装置の一実施態様の概略平面図である。まず、白色導電性微粒子含有量5重量%以上20重量%以下のアクリル系重合体を含む紡糸原液(1)と白色導電性微粒子含有量1重量%以下の、好ましくは白色導電性微粒子を含まないアクリル系重合体を含む紡糸原液(2)を用意する。これら2種の紡糸原液を図2の紡糸装置を用いて混合する。二種の紡糸原液(1)、(2)は各々ろ過部(図示せず)を通過した後、多層化エレメント(3)に供給され、混練される。この多層化エレメント(3)によって、紡糸原液(1)(2)は3層以上に積層される。多層化エレメント(3)で多層に積層された後、口金ユニット(4)に入り、紡糸孔(5)より流出されフィラメント群として吐出される。ここで多層化エレメントでの混合が過剰であると白色導電性微粒子含有量の違う2種の原液が過剰に混合され、均一化し、目的の層状構造とならないので、注意が必要である。本発明で用いる多層化エレメント(3)は、一般に、スタティックミキサーと言われるものである。例えばケニックス社製「スタティックミキサー」、東レエンジニアリング(株)製「ミキシングユニット」、スルーザー社製ミキシングエレメント、エーテックジャパン(株)製「スタティックミキサー」など公知のものが用いられる。図4にエーテックジャパン(株)製スタティックミキサーを構成するエレメントとスタティックミキサーにより、多層化する様子を示す。図4の下段に示すのは各流路における2種の物質の層状状態をあらわす概略断面図である。2種の物質(本発明では白色導電性微粒子含有量5重量%以上20重量%以下含むアクリル系重合体と白色導電性微粒子含有量1重量%以下のアクリル系重合体)が層状化する様子を図示した。スタティックミキサーの段数により、層数を調整できる。実際の繊維はこの多層化したものを口金の孔で切り取ったものになる。多層構造を有する繊維の形状は、紡糸孔の形状により丸断面,三角断面,偏平などの任意の形状を選択することができる。
【0020】
紡糸方法はアクリル系合成繊維で公知の方法がいずれも可能であるが、湿式が最も簡便である。
【0021】
紡糸・凝固した後、延伸・水洗を行う。延伸倍率を変更することにより、導電性を調整できる。その後、膠着防止油剤を付与し、乾燥緻密化する。その後、必要に応じて、再延伸、クリンプ付与・熱セット・後乾燥を行い、カットもしくはフィラメントのまま梱包し、製品とする。 かくして、本発明の、アクリル系重合体が繊維軸方向に沿って3層以上接合された多層構造を有するアクリル系複合繊維を得ることができる。ここで、多層構造とは、繊維の長手方向に延在する第1のアクリル系重合体の層が、繊維の長手方向に延在する第2のアクリル系重合体の層と接触し、第2のアクリル系重合体は任意に1つ以上の別のアクリル系重合体層と接触する繊維を意味する。
【0022】
本発明の3層以上接合された多層構造を有するアクリル系複合繊維の一実施態様を図1に示す。図1は本発明の一実施態様の繊維の横断面概略図である。白色導電性微粒子含有量5重量%以上20重量%以下のアクリル系重合体(11)と白色導電性微粒子含有量1重量%以下のアクリル系重合体(12)が層状に接合された多層構造を形成している。図1にあるようにアクリル系重合体(11)とアクリル系重合体(12)を3層以上複合紡糸し、繊維外周部にアクリル系重合体(12)が露出するようにすることが好ましい。それによって従来のアクリル系合成繊維と同程度の加工性を得ることができる。
【0023】
また、本発明の繊維において、地層状に白色導電性微粒子含有量5重量%以上20重量%以下のアクリル系重合体と遠赤微粒子含有量1重量%以下のアクリル系重合体からなる層が3層以上積み重なり、それを繊維断面に応じて、切り抜いたとき、各層は直線状である必要はなく、曲線や波線状でも構わないし、層の厚みは一定である必要はない。しかし、各層の少なくとも一方、好ましくは両端が繊維外周に接している必要がある。これは特殊なものを除き、アクリル系重合体は不導体であるため、白色導電性微粒子を含む層が繊維表面にまったく露出していないと電荷の移動が困難で、導電性が得られにくいためである。
【実施例】
【0024】
以下、実施例および比較例を示し、本発明を詳細に説明する。
【0025】
実施例中、各特性値の測定・判定方法は以下のとおりである。
【0026】
<繊維全体の白色導電性微粒子含有量>
絶乾した繊維の質量を測定した後、700℃×5時間加熱処理して、灰化させる。灰化前後の質量から式1にて計算する。
繊維全体の白色導電性微粒子含有量(質量%)=(灰分質量(g)/絶乾した繊維の質量(g))×100・・・(式1)。
【0027】
<局在部の白色導電性微粒子含有量>
微粒子を含む紡糸原液を水中に細くたらし、ラーメン状に固化した後、溶媒および水を完全に除き(絶乾)、質量を測定した後、上記と同様の方法で灰化させる。灰化前後の質量から式2にて計算する。局在部とは複合紡糸された繊維の中で微粒子を含む層の部分(図1における網掛け部分)を指す。
局在部の白色導電性微粒子含有量(質量%)=(灰分質量(g)/絶乾した固化物の質量(g))×100・・・(式2)。
【0028】
<操業性>
紡糸開始から24時間後の口金圧上昇率で評価した。0.3MPa/日以下が良好なレベル。
【0029】
<染色性>
染料マラカイトグリーンを濃度0.5重量%に調整した染色液20gにサンプル1gを投入し、10分間煮沸(98℃)した後、良く水洗し、乾燥させる。染色・乾燥後のサンプルを良く開繊する。このサンプルを目視にて判定する。白色導電性微粒子を含まない通常のアクリル系合成繊維と同様に染色斑などなく、鮮やかに染色されているものを◎、染色斑は無いが、若干、淡色であるものを○、染色斑がわずかにあるか、淡色度が○より低いものを△、染色斑が著しく激しいか、淡色度が著しく低いものを×とする。◎、○、△を合格レベルとする。
【0030】
<後加工性(編み立て性)>
編み立て時の操業性(毛羽たち、糸切れなど)を総合的に判断した。かなり良好◎、良好○、劣る△、悪い(操業困難)×とした。◎および○が通常の紡績が操業できるレベル。微粒子未添加品を◎とする。
【0031】
<導電性(比抵抗)>
図3は導電性(比抵抗)を測定する装置の原理概略図である。左右の金属電極は上下に分かれ、その間に測定サンプルの端を挟む。サンプルのもう一方も同様に金属電極にサンプルを挟み、金属電極間の抵抗値を極超絶縁計で測定する。図3のように10cm間隔にある2組の金属電極の間に測定サンプルを挟み、その間の抵抗値を極超絶縁計(東亜DKK SM−8220)を用いて、印加電圧100Vで測定する。10Ω・cm以下の比抵抗である場合、導電性ありとした。
【0032】
<繊維強度>
JIS L1015に従い、測定した。つかみ間隔は20mm、試験機は定速伸長形(伸長速度つかみ間隔の100%/分)。
【0033】
(実施例1)
繊維を形成するポリマーとして、アクリロニトリル(AN)/アクリル酸メチル(MEA)/メタクリルスルホン酸ナトリウム(SMAS)=95.5/4.2/0.3(mol%)を用い、これを溶媒ジメチルスルホキシド(DMSO)にポリマー濃度25重量%になるように溶解し、紡糸原液とした。
【0034】
白色導電性微粒子として、酸化スズ((株)ジェムコ製)を用いた。これをホモミキサーにて溶媒DMSOに分散した後、分散安定化剤として、上記ポリマーを溶解し、白色導電性微粒子分散液を得た。分散・溶解比率は、酸化スズ/ポリマー/DMSO=24/2/74(重量%)。
【0035】
上記紡糸原液をプロペラ攪拌機で攪拌しながら、白色導電性微粒子濃度がポリマーに対して15重量%になるように白色導電性微粒子分散液を加えた。この白色導電性微粒子を15重量%含む紡糸原液と含まない紡糸原液を図2に示す装置にて混合した。図2の装置にて混合した紡糸原液をDMSO濃度57重量%、温度30℃の水溶液中に口金より押し出吐出し、凝固させた。口金はφ0.06mm×48ホールである。凝固した繊維束を順次DMSO濃度が低下する数段の浴にて、脱溶媒させながら、5倍延伸した。延伸後、水洗機にて完全にDMSOを除き、膠着防止油剤を付与した。その後、乾燥緻密化して、単糸繊度3.3dtex(トータル繊度158.4dtex)のサンプルを得た。
【0036】
この手順で調製されたサンプルは操業性、後加工性ともに良好で導電性も高かった。
【0037】
(実施例2および3)
延伸倍率を表1記載の値とした以外は実施例1と同じ方法で実施例2および3のサンプルを調製した(実施例1と同じ単糸繊度となるように口金からの吐出量を調整した)。操業性、後加工性ともに良好だった。延伸倍率が実施例1より高い実施例2は導電性が低く、逆に延伸倍率が実施例1より低い実施例3は導電性が高くなった。
【0038】
(比較例1)
実施例1と同様の方法で紡糸原液中のポリマーに対して白色導電性微粒子が15重量%となるように白色導電性微粒子分散液を練り込んだ。この紡糸原液を多層化エレメントを通すことなく、白色導電性微粒子が繊維中に均一になるように紡糸し、サンプルを得た。それ以外は実施例1と同じ条件である。得られたサンプルは強度などの物性が悪く、導電性が低く、繊維摩擦が大きく、後加工性が悪かった。
【0039】
(比較例2)
実施例1と同様の方法で紡糸原液中のポリマーに対して微粒子が15重量%となるように白色導電性微粒子分散液を練り込んだ。この白色導電性微粒子を練り込んだ紡糸原液と未添加の紡糸原液とを多層化エレメントを通すことなく、芯鞘型口金を用いて、紡糸し、芯鞘型の繊維を得た(芯部が白色導電性微粒子含有)。多層化エレメント未使用および口金以外の条件は実施例1と同じである。微粒子を芯部に局在化させたことにより、後加工性も良く、染色性も良好だが、口金圧上昇率が大きく、頻繁に口金交換が必要であった。また、実施例1と同量の白色導電性微粒子を練り混んだにも係わらず、導電性が著しく低かった。
【0040】
(比較例3,4)
実施例1と同じ方法にてポリマーに対して微粒子の含有量を表1記載のように変更して、サンプルを調製した。微粒子量が少ない比較例3は導電性が低い。局在部の練り混み量が著しく多い比較例4は口金詰まりが多発し、安定的に操業できなかった。
【0041】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明により得られるアクリル系合成繊維は高い導電性を有し、かつ、製造時の操業性および後加工性も良好である。また、繊維外周のほとんどを通常のアクリル系重合体が覆っているため、染色性も通常のアクリル系合成繊維と同程度である。そのため、ファッション性に加え、制電性も要求される衣料などに最適である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の繊維の一態様の横断面概略図である。
【図2】本発明で使用する、アクリル系合成繊維に白色導電性微粒子を層状に練り込む装置の一態様の側面概略図である。
【図3】導電性(比抵抗)を測定する装置の原理概略図である。
【図4】多層化エレメント(スタティックミキサー)を構成するエレメントおよび多層化エレメントにより多層化する様子を示す概略図である。
【符号の説明】
【0044】
1:白色導電性微粒子を5重量%以上20重量%以下含む紡糸原液
2:白色導電性微粒子を1重量%以下含む紡糸原液
3:多層化エレメント
4:口金ユニット
5:紡糸孔
6:導電性測定サンプル
7:金属電極
11:白色導電性微粒子を5重量%以上20重量%以下含む層
12:白色導電性微粒子を1重量%以下含む層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系重合体が繊維軸方向に沿って3層以上接合された多層複合構造を有するアクリル系合成繊維であって、該複合構造が白色導電性微粒子含有量5重量%以上20重量%以下である層および白色導電性微粒子含有量1重量%以下である層からなることを特徴とするアクリル系合成繊維。
【請求項2】
白色導電性微粒子が導電性金属酸化物もしくは金属酸化物を被覆した微粒子である請求項1記載のアクリル系合成繊維。
【請求項3】
導電性金属酸化物が酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウムおよび酸化アンチモンから選ばれる1種以上の金属酸化物である請求項2記載のアクリル系合成繊維。
【請求項4】
少なくとも一つの白色導電性微粒子含有量5重量%以上20重量%以下のアクリル系重合体、および少なくとも一つの白色導電性微粒子含有量1重量%以下であるアクリル系重合体を、繊維軸方向に沿って3層以上に接合して複合紡糸することを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のアクリル系合成繊維の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−119992(P2007−119992A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−266158(P2006−266158)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】