説明

アクリル酸中のMEHQ含量を減少させる方法

本発明は、活性炭上での連続的な吸着を用いるアクリル酸又はそれらの塩のMEHQ(メトキシヒドロキノン)の含量の減少に関する。特にMEHQは部分中和又は完全中和されたアクリル酸から除去される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性炭上での連続吸着を用いるアクリル酸又はそれらの塩のMEHQ(メトキシヒドロキノン)の含量を減少させることに関する。特にMEHQは部分中和アクリル酸又は完全中和されたアクリル酸から除去される。
【0002】
MEHQはアクリル酸及びそれらの塩の安定剤として使用される。一般的に10〜1000ppmの安定剤が添加され、通常50ppm〜200ppmの濃度である。安定化は特にアクリル酸が製造と加工との間に輸送及び/又は貯蔵されなければならない場合に必要である。
【0003】
アクリル酸及び/又はそれらの塩が超吸収体へ加工される場合には、超吸収体が黄色っぽく変色されていないことが顧客分野によっては望まれる。主消費者は、衛生工業(赤ちゃん用おむつ、大人用失禁用品、生理用ナプキン等)であり、かつ最終消費者は本質的に白い、‘清潔な’製品を望んでいる。アクリル酸及びそれらの塩の重合の際に黄変を有する超吸収体が生じる場合には、これは最終消費者の期待に相応しない。
【0004】
MEHQが超吸収体の黄変の原因となるものであることが見出されていた。このことは酸化的に作用する特定の重合開始剤と組み合わせで特にあてはまる。
【0005】
JP 62106052には、アルカリ水溶液の使用下での(メタ)アクリル酸とアルコールとの反応生成物からのヒドロキノン類及び他の不純物の除去が記載されている。
【0006】
JP 08310979には、とりわけアルミナ、シリカゲル、モレキュラーシーブ、活性炭、イオン交換体樹脂、キレート化樹脂、ゼオライト及び酸性ローム上での吸着によるビニルモノマー系からの重合防止剤の除去が記載されている。
【0007】
意外なことに、MEHQの濃度が連続法において特に良好に活性炭を用いて減少されることができることが見出された。その際にアクリル酸は75%〜105%中和されているべきである。中和剤は常用の全ての塩基、特にアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物、例えばNaOH又はKOH;アルカリ金属−アルカリ土類金属塩の炭酸塩又は炭酸水素塩;並びにアンモニア及びアンモニウム塩であってよい。90%〜103%中和されているアクリル酸が好ましく、95%〜101%中和されているアクリル酸が特に好ましく、殊に98%〜100%中和されているアクリル酸である。
【0008】
連続吸着は本発明による方法において好ましくは固定床上で実施される。
【0009】
固定床は、アクリル酸が固定床を通過する間に本質的に静止したままである活性炭の積重ね層(Schuettschicht)であると理解される。
【0010】
連続(的に)は、方法の始動する又は停止する際を除いて単位時間当たりに導出されるのと同じくらいのアクリル酸が供給される方法であると理解される。
【0011】
連続吸着が活性炭で充填されている1つ又はそれ以上のカラム中で、特に1つ又は2つのカラム中で実施される本発明による方法が好ましい。
【0012】
吸着挙動について次のモデルが考えられうる。カラム中での吸着の間に、カラムの第一領域はMEHQで飽和されるのに対して、下部領域はまだMEHQ不含である。これらの部分の間に、MEHQ吸着が本質的に行われる物質移動領域(Mass Transfer Zone)がある。カラムの第一領域が飽和されると直ちに、物質移動領域は活性炭床を経て下方へ移動し、かつ吸着波(Adsorptionswelle)とみなされることができる。意外なことに、より長い時間の後にも見かけの飽和領域中でさらに付加的な吸着が行われる(第3表参照)。
【0013】
一般的に、減損すべき溶液のアクリル酸処理量は、例えば超吸収体についてのプラント生産能力により予め決定されている。MEHQでの最大の炭素ローディングは、アクリル酸と一方ではMEHQと及び他方では活性炭との間での接触時間が最適化されることによって達成される。これは、溶液速度(カラム断面積当たりの体積速度)がゆっくりである幅広いカラムの使用により達成される。それにより物質移動領域はカラムをゆっくりと運動する。そのうえ、炭素床の有効深さを広げるために、2つ又はそれ以上のカラムが直列で使用されることができる。複数のカラムが使用される場合には、このことは、MEHQの減損の際の停止期間をまねくことなく、飽和したカラムの交換も可能にする。
【0014】
本発明による方法の温度は好ましくは0℃〜30℃、特に3℃〜20℃である。
【0015】
好ましくは、本発明による方法の場合に活性炭は、300μmより大きい、好ましくは400μmより大きい、特に500μmより大きい平均粒径が存在する粒度分布で存在する。これらの粒度は連続法に特に適している、それというのも、活性炭はMEHQ−減損されたアクリル酸とは別個に簡単に保持されることができるからである。活性炭は典型的には粒状の形で存在する。特に好ましくは、活性炭の80質量%、特に好ましくは90質量%、特に95質量%が、350μm〜1800μm、特に420μm〜1700μmの粒度を有する。
【0016】
本発明による方法において、活性炭は好ましくは酸で処理されている。
【0017】
本発明による方法において、高い比表面積(>600m/g、好ましくは>800m/g)を有する活性炭が好ましくは使用され、特に900〜1100m/gの比表面積を有する活性炭が使用される。
【0018】
本発明による方法において、一般的に400g/l〜500g/lの密度を有する活性炭が使用される。
【0019】
活性炭の好ましい種類は、CPG、Calgon Carbonからの粒状活性炭、その都度Elf AtochemからのEpibon MC-h 12X40及びAlcarbon WG 8X30及びROW 0.8 Supra、Norritからの粒状活性炭である。
【0020】
本発明による方法において、好ましくはアクリル酸中のMEHQの濃度が、少なくとも50%又はまた少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%又はまた少なくとも80%、少なくとも85%、特に好ましくは少なくとも90%又はまた少なくとも92%、少なくとも94%、特に少なくとも95%又は少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又はそれどころか少なくとも99.5%又は少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%だけ減少される。好ましい活性炭はその際に、活性炭100g当たり最大で平衡でMEHQを少なくとも10g、より好ましくは少なくとも11g、特に好ましくは少なくとも12g、特に少なくとも13g吸収することができる。
【0021】
そのうえ、本発明は、MEHQ含量が前記の本発明による方法により減少されている中和されたアクリル酸と、場合によりあまり中和されない、特に中和されないアクリル酸と一緒にされ、引き続いて重合され、かつ場合により表面後架橋される工程を含んでなる超吸収体の製造方法に関する。こうして製造される超吸収体は、本発明によれば衛生用品において使用されることができる。
【0022】
超吸収体は、少なくとも15g/gの遠心機保持(CRC、EDANAの工業規格に従って測定)を有する、非水溶性のヒドロゲルを形成するアクリレートベースのポリマーであると理解される。
【0023】
重合すべき溶液中のMEHQ濃度の本発明による減少は、重合開始剤濃度を減少させることを可能にする。このことは超吸収体のより僅かな黄変をもたらす。100ppm又はそれ未満のMEHQ濃度で、重合開始剤、例えば過硫酸ナトリウムが放棄されることができる。この場合に着色はよりさらに多く減少する。さらに超吸収体中の抽出物(16h)の割合も減少する。
【0024】
実験の部
吸着等温線
吸着等温線からフロイントリヒ(Freundlich)方程式に従ってMEHQの平衡濃度C及び活性炭質量(M)当たりのMEHQ(X)のローディングの値が両対数プロットにより相対的に単純に決定されることができる。
【0025】
次のことが当てはまる:
X/M=kC1/n
ひいては
LogX/M=log k 1 1/n log C
その際にk、nは定数である。
【0026】
溶液中に残留しているMEHQの量をHPLCにより決定した。
【0027】
カラム上での実験−連続運転方式
‘破過(Durchbruch)’−曲線を動的条件下で決定した。その際に20mmの内径及び50cmの長さを有するカラムを、吸着材料(活性炭等)81.7gで充填した。平均流量は588ml/hであった。貫流された溶液のMEHQ含量を決定した。5ppmより大きい値で‘破過’を定義した。
【0028】
結果
吸着等温線(第1表)
次の吸着剤を100%中和されたアクリル酸の使用下に15℃で試験した。
Calgon CarbonからのCPG粒状活性炭
Elf AtochemからのEpibon MC-h 12X40及びAlcarbon WG 8X30
NorritからのROW 0.8 Supra粒状活性炭
AlcoaからのF200−酸化アルミニウム(防止剤の効率的な吸着剤)
【0029】
【表1】

【0030】
カラム上での実験−連続運転方式(第2及び3表)
連続試験をカラム中のCPG Carbonを用いて行った。異なる時間についてMEHQの残留含量を決定した。
【0031】
第2表は、CPG (Calgon)及びElf AtochemからのCECA BGXを用いた試験結果を示す。
【0032】
最大ローディングは極めて類似している(MEHQ 10.8g及びMEHQ 10.6g/活性炭100g)が、しかしCECA BGXの密度はCPG Carbonの半分の大きさに過ぎず、それによりより費用効率的に使用されることができる。動的条件下で(5ppmの‘破過’まで)ローディングは減少する(10.8g対7g/活性炭100g)が、しかしカラムを通じての圧力損失は一定のままである。すなわち重合は著しい程度で行われない。そのうえさらに温度依存及び中和度の依存(NaOHで調節した)も決定された。100%中和され、かつ本発明による方法により得られる生成物は、MEHQを僅かに(<5ppm)含有するか又はほぼ含有しない場合に、空気下で無期限に及び窒素下に長い期間に亘り貯蔵可能である。
【0033】
得られたアクリル酸溶液が超吸収体の製造のために使用される場合には、MEHQの減損されなかったアクリル酸溶液と比較して明らかに減少された変色が確認される。
【0034】
等温線の温度依存、中和度依存及び時間依存
実験を異なる温度、撹拌時間及び異なる中和度(100%、75%、0%)で実施した。実験を活性炭CPG及びCECA BGXを用いて実施した。
【0035】
【表2】

【0036】
110%中和で、同様に中程度の吸着のみが確認された。
【0037】
第3表において1つの活性炭種(Epibon)についての撹拌時間に対する吸着の依存が決定される。
【0038】
【表3】

【0039】
すなわち、中和されたアクリル酸と活性炭との間で長い接触時間をもたらす本発明による方法が好ましい。温度は、それぞれの重合を最小限にするために低く保持されることができる(0℃〜10℃、例えば5℃)。
【0040】
超吸収体例
標準の超吸収体(例えばEP 372 706、6及び7頁、WO 99/42494、4〜8頁又はWO 01/38402参照)は次の配合表に従って製造されることもできる:
比較例:
モノマー溶液
アクリル酸(MEHQ 200ppm) 24.1%
水 55.7%
50% NaOH 20.1%
PEGDA 400 (Sartomer 344) アクリル酸に対して0.62質量%
Darocur アクリル酸に対して0.036質量%
過硫酸ナトリウム 全モノマー溶液に対して0.072質量%。
【0041】
得られた原ポリマーを粉砕し、乾燥させ、WO 99/42494に従って2−オキサゾリドンで表面後架橋させる。
【0042】
例:
比較例のように、但しモノマー溶液がMEHQ 50ppmを含有する75%中和されたアクリル酸溶液からなり(本発明による方法によるMEHQ 0ppmの100%中和されたアクリル酸及びMEHQ 200ppmのアクリル酸から製造される)、そのうえ過硫酸ナトリウム0質量%を使用する。
測定法
16h−抽出物の測定は、ISO/DIS 17190-10に従って実施した。色数はDIN 5033に従って決定した(R.S. Hunter, The measurement of Apearamee, Wiley NY 1975も参照)。Hunterlab LS 5100色彩計を使用した。
【0043】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性炭上での連続吸着を特徴とする、75%〜105%中和されているアクリル酸中のMEHQの濃度を減少させる方法。
【請求項2】
アクリル酸が90%〜103%中和されている、請求項1記載の方法。
【請求項3】
アクリル酸が95%〜101%中和されている、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
アクリル酸が98%〜100%中和されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
連続吸着を固定床上で実施する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
連続吸着を、活性炭で充填されている1つ又はそれ以上のカラム中で実施する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
方法を0℃〜30℃、特に3℃〜20℃の温度で実施する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
活性炭の90質量%が350μm〜1800μmの粒度を有する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
活性炭が酸で処理されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
活性炭が900〜1100m/gの比表面積を有する、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
活性炭が400g/l〜500g/lの密度を有する、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
アクリル酸中のMEHQの濃度を、少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、特に少なくとも90%だけ減少させる、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項に従ってMEHQ含量が減少されている中和されたアクリル酸を、場合によりあまり中和されていないアクリル酸、特に中和されていないアクリル酸と一緒にし、引き続いて重合させ、場合により表面後架橋させる工程を含むことを特徴とする、超吸収体の製造方法。
【請求項14】
衛生用品における、請求項13記載の方法により製造された超吸収体の使用。

【公表番号】特表2006−509019(P2006−509019A)
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−557980(P2004−557980)
【出願日】平成15年12月3日(2003.12.3)
【国際出願番号】PCT/EP2003/013621
【国際公開番号】WO2004/052819
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】