説明

アクリロニトリル合成用触媒およびアクリロニトリルの製造方法

【課題】高い収率でアクリロニトリルを合成できるアクリロニトリル合成用触媒、および該触媒を用いたアクリロニトリルの製造方法を提供する。
【解決手段】FeSbCDTeFXYZO(SiO)で表される組成を有するアクリロニトリル合成用触媒を用いる。式中、C成分はCu、Ni、Coからなる群より、D成分はMo、W、Vからなる群より、F成分はPおよびBからなる群より、X成分はSn、Ti、Zr、Nb、Ta、Cr、Ru、Pd、Ag、Al、Ga、In、Tl、Ge、As、Bi、La、Ce、Pr、Nd、Smからなる群より、Y成分はMg、Ca、Sr、Ba、Mn、Zn、Pbからなる群より、Z成分はLi、Na、K、Rb、Csからなる群より、各々選ばれた少なくとも1種の元素、SiOはシリカを表し、a=10のとき、b=5〜60、c=0.1〜8.0、d=0.1〜4.0、e=0.1〜5.0、f=1.3〜5.0、x=0〜5、y=0〜5、z=0〜2、h=10〜200、gはSiを除く前記各元素の原子価を満足するのに必要な酸素の原子比であり、f/d=1〜5である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレンを分子状酸素およびアンモニアにより気相接触アンモ酸化してアクリロニトリルを合成するための触媒、および該触媒を用いたアクリロニトリルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリロニトリルの製造方法として、触媒の存在下、プロピレンを分子状酸素およびアンモニアにより気相接触アンモ酸化する方法が広く知られている。その際に使用する触媒としてこれまでに種々の触媒が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、アンチモンと鉄およびコバルト、ニッケルよりなる群から選ばれた少なくとも一種の元素との複合酸化物触媒が開示されている。
また、特許文献2〜8には、鉄、アンチモン、テルル、さらにバナジウム、モリブデン、タングステン等を含有する複合酸化物触媒が開示されている。さらに、特許文献9〜11にはこれら鉄、アンチモンを含有する触媒の調製法が開示されている。
また、特許文献12〜19にはモリブデン、ビスマスと鉄等を含有する複合酸化物触媒が開示されている。
【特許文献1】特公昭38−19111号公報
【特許文献2】特公昭46−2804号公報
【特許文献3】特公昭47−19765号公報
【特許文献4】特公昭47−19766号公報
【特許文献5】特公昭47−19767号公報
【特許文献6】特開昭50−108219号公報
【特許文献7】特開昭52−125124号公報
【特許文献8】特開平4−118051号公報
【特許文献9】特公昭47−18722号公報
【特許文献10】特公昭47−18723号公報
【特許文献11】特開昭59−139938号公報
【特許文献12】特公昭38−17967号公報
【特許文献13】特開昭59−204163号公報
【特許文献14】特公昭61−13701号公報
【特許文献15】特開平1−228950号公報
【特許文献16】特開平7−47272号公報
【特許文献17】特開平10−43595号公報
【特許文献18】特開平11−169715号公報
【特許文献19】特開2001−114740号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの触媒は、アクリロニトリル収率の点で必ずしも十分ではなく、工業的見地から触媒の更なる改良が望まれている。
【0005】
本発明の目的は、高い収率でアクリロニトリルを合成できるアクリロニトリル合成用触媒およびアクリロニトリルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鉄、アンチモンおよびテルルを含有するアクリロニトリル合成用触媒に関して鋭意検討した結果、これらの成分にさらに特定の成分を特定の比率で複合させることで、アクリロニトリル収率の高い触媒が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明のアクリロニトリル合成用触媒は、下記一般式で表される組成を有することを特徴とする。
FeSbTe(SiO
【0008】
式中、Feは鉄、Sbはアンチモン、Teはテルル、C成分は銅、ニッケルおよびコバルトからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素、D成分はモリブデン、タングステンおよびバナジウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素、F成分はリンおよびホウ素からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素、X成分はスズ、チタン、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、クロム、ルテニウム、パラジウム、銀、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、ゲルマニウム、ヒ素、ビスマス、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジムおよびサマリウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素、Y成分はマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、マンガン、亜鉛および鉛からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素、Z成分はリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素、Oは酸素、SiOはシリカを表し、a、b、c、d、e、f、x、y、z、gおよびhは各元素(シリカの場合はケイ素)の原子比を表し、a=10のとき、b=5〜60、c=0.1〜8.0、d=0.1〜4.0、e=0.1〜5.0、f=1.3〜5.0、x=0〜5、y=0〜5、z=0〜2、h=10〜200、gはケイ素を除く前記各元素の原子価を満足するのに必要な酸素の原子比であり、かつ、f/d=1〜5である。
【0009】
また、本発明のアクリロニトリル合成用触媒は、アンチモン酸鉄を結晶相として含有することが好ましい。
【0010】
また、本発明のアクリロニトリルの製造方法は、本発明のアクリロニトリル合成用触媒の存在下、プロピレンと分子状酸素およびアンモニアとを反応させてアクリロニトリルを製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のアクリロニトリル合成用触媒によれば、副生成物の生成が抑制され、より高い収率でアクリロニトリルを合成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のアクリロニトリル合成用触媒は、下記一般式で表される組成を有することを特徴とする。
FeSbTe(SiO
【0013】
式中、Feは鉄、Sbはアンチモン、Teはテルル、C成分は銅、ニッケルおよびコバルトからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素、D成分はモリブデン、タングステンおよびバナジウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素、F成分はリンおよびホウ素からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素、X成分はスズ、チタン、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、クロム、ルテニウム、パラジウム、銀、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、ゲルマニウム、ヒ素、ビスマス、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジムおよびサマリウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素、Y成分はマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、マンガン、亜鉛および鉛からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素、Z成分はリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素、Oは酸素、SiOはシリカを表す。
【0014】
また、式中、a、b、c、d、e、f、x、y、z、gおよびhは各元素(シリカの場合はケイ素)の原子比を表し、a=10のとき、b=5〜60、好ましくは10〜55、c=0.1〜8.0、好ましくは0.3〜7.0、d=0.1〜4.0、好ましくは0.3〜3.0、e=0.1〜5.0、好ましくは0.3〜4.5、f=1.3〜5.0、好ましくは1.4〜4.0、x=0〜5、好ましくは0〜4.5、y=0〜5、好ましくは0〜4.5、z=0〜2、好ましくは0〜1.8、h=10〜200、好ましくは20〜180、gはケイ素を除く前記各元素の原子価を満足するのに必要な酸素の原子比である。
【0015】
触媒に含有される各元素の原子比が上記の範囲外となると、アクリロニトリル収率が低下するなどして、本発明の効果が十分に発現せず、本発明の目的を達成することが困難となる。
【0016】
さらに、本発明のアクリロニトリル合成用触媒においては、D成分の原子比dとF成分の原子比fの比をf/d=1〜5とすることが必須の要件である。f/dの下限は好ましくは1.1、上限は好ましくは4.8である。
前記f/d値が下限より小さい場合、または上限を超える場合は、青酸等の副生成物の生成が多くなり、アクリロニトリルの収率が低下する。
【0017】
なお、本発明において、アクリロニトリル合成用触媒の組成とは、触媒のバルク組成を指すが、著しく揮発性の高い成分を用いない限りは、触媒を構成する各元素の原料の仕込み量から触媒の組成(原子比)を計算してもよい。
【0018】
また、本発明のアクリロニトリル合成用触媒は、アンチモン酸鉄を結晶相として含有することが好ましい。アンチモン酸鉄の組成は数種類存在するが(特許文献8参照。)、FeSbOが最も一般的であり、X線回折によりその結晶相の存在を確認することができる。アンチモン酸鉄は純粋なアンチモン酸鉄の他、これに種々の元素が固溶していてもよい。
アンチモン酸鉄を結晶相として含有することで、触媒活性が向上すると共に、粒子強度や嵩密度等の物性を好ましいものとすることができる。
【0019】
本発明のアクリロニトリル合成用触媒を流動層で用いる場合には、その形状は球形が好ましい。また、その外径は、1〜200μmの範囲にあることが好ましく、5〜150μmの範囲にあることが特に好ましい。
【0020】
本発明のアクリロニトリル合成用触媒の調製方法としては特に限定されないが、触媒を構成する各元素の原料を含有する水性スラリーを調合し、得られた水性スラリーを乾燥した後、得られた乾燥物を焼成する方法が好ましい。
水性スラリーには、触媒を構成する所望の元素の全てが、所望の原子比で含有されていてもよく、一部の元素を乾燥後あるいは焼成後の触媒組成物に含浸等の方法により添加してもよい。
【0021】
また、アンチモン酸鉄を結晶相として含有する触媒を調製する場合には、例えば特許文献9または特許文献10に記載の方法を用いることができる。
すなわち、アンチモン原料、3価の鉄化合物、および硝酸イオンを含有する水性スラリーを調製し、このスラリーのpHを7以下に調整した後、40〜150℃の範囲の温度で加熱処理し、得られたスラリーを乾燥、焼成する方法で、アンチモン酸鉄を結晶相として含有する触媒を調製できる。
【0022】
各元素の原料としては特に制限はなく、各元素の酸化物、または加熱により容易に酸化物になり得る硝酸塩、炭酸塩、有機酸塩、アンモニウム塩、水酸化物、ハロゲン化物等を用いることができる。また、これらを複数種、組み合わせて使用してもよい。
例えば、鉄成分の原料としては、容易に酸化物に変換しえるものであれば特に制限されない。また、アンチモン酸鉄を結晶相として含有する触媒を調製する場合には、溶液またはスラリー中において鉄は3価のイオンとして存在することが好ましく、例えば硝酸第二鉄、硫酸第二鉄等の無機酸塩類、クエン酸鉄等の有機酸塩類や、電解鉄粉等の金属鉄を硝酸等に溶解したものが好ましく用いられる。
【0023】
アンチモン成分としては特に制限はなく、三酸化アンチモンや五酸化アンチモン等の酸化物、塩化アンチモンや硫酸アンチモン等を用いることができる。
テルル成分の原料としては特に制限はなく、二酸化テルルやテルル酸の他、金属テルルを硝酸や過酸化水素水に溶解した溶液を用いることができる。
【0024】
その他の各元素の原料についても特に制限はなく、上記と同様に各元素を含有する各種化合物を用いることができ、また、これらを複数種、組み合わせて使用してもよい。
【0025】
シリカ原料としては特に制限はないが、コロイダルシリカを用いることが好ましい。コロイダルシリカは市販のものから適宜選択して用いることができる。
コロイダルシリカにおけるコロイド粒子の大きさは特に限定されないが、平均粒子径が2〜100nmであることが好ましく、5〜75nmであることがより好ましい。コロイダルシリカはコロイド粒子の大きさが均一のものでも良く、数種類の大きさのコロイド粒子が混ざった物でもよい。また、平均粒子径やpHなどの異なる複数種のコロイダルシリカを混合して用いてもよい。
【0026】
水性スラリーの乾燥方法としては特に制限はなく、公知の方法から任意に選択して用いればよい。
本発明は固定層触媒、流動層触媒のいずれにも適用できるが、特に流動層触媒に適用することが好ましい。
流動層触媒を製造する場合には、噴霧乾燥機を用いて球状の乾燥粒子を得ることが好ましい。噴霧乾燥機としては回転円盤式、ノズル式等公知のものを用いることができる。噴霧乾燥に際しては、粒径分布や粒子強度等、流動層触媒として好ましい物性を有する触媒が得られるよう、噴霧乾燥条件を適宜調整する。
【0027】
得られた乾燥物を550〜1000℃の範囲の温度で焼成することにより、望ましい触媒構造が形成され、触媒としての活性が発現する。焼成時間には特に制限はないが、短すぎると良好な触媒が得られないため0.5時間以上であることが好ましく、1時間以上であることがさらに好ましい。上限は特に制限はないが、必要以上に長時間の焼成を行っても一定以上の効果は得られないので、通常20時間以内である。焼成の方法についても特に制限はなく、汎用の焼成炉を用いることができる。流動層触媒を製造する場合にはロータリーキルン、流動焼成炉等が特に好ましく用いられる。
【0028】
焼成に際しては、乾燥物を即座に550〜1000℃の範囲の温度で焼成してもよいが、250〜500の温度範囲で1〜2段階の予備焼成を行った後、550〜1000℃の範囲の温度で焼成を行うことで触媒の物性や活性が向上する場合がある。
【0029】
本発明のアクリロニトリル合成用触媒を用いて、プロピレンを分子状酸素(以下、単に酸素と記す。)およびアンモニアにより気相接触アンモ酸化してアクリロニトリルを合成するに際しては、流動層反応器を用いることが好ましい。
【0030】
気相接触アンモ酸化反応を行う際の原料ガス中のプロピレン濃度は、広い範囲で変えることができ、1〜20容量%が適当であり、特に3〜15容量%が好ましい。
原料ガス中のプロピレンと酸素のモル比(プロピレン:酸素)は1:1.5〜1:3が好ましい。酸素源としては空気を用いることが工業的に有利であるが、必要に応じて純酸素を加えることによって酸素富化した空気を用いてもよい。
また、反応ガス中のプロピレンとアンモニアのモル比(プロピレン:アンモニア)は、1:1〜1:1.5が好ましい。
原料ガスは不活性ガスや水蒸気等で希釈してもよい。
【0031】
気相接触アンモ酸化反応は、通常、反応温度を370〜500℃、反応圧力を常圧〜500kPa、触媒と原料ガスの見掛け接触時間を1〜20秒として実施される。
なお、本発明において「見掛け接触時間」とは、下記式より求められる値のことである。
見掛け接触時間(秒)=見掛け嵩密度基準の触媒容積(mL)/反応条件に換算した原料ガス量(mL/秒)
【実施例】
【0032】
以下、本発明の効果を実施例および比較例により具体的に示すが、本発明は下記の例によって何ら限定されるものではない。
【0033】
[実施例1]
表1に示す組成を有する触媒を、以下の手順で調製した。
まず、63質量%の硝酸2400gに銅粉末63.5gを溶解した。この溶液に純水2300gを添加してから60℃に加熱し、電解鉄粉185.9g、テルル粉末42.5gを少量ずつ添加し、溶解した。溶解を確認した後、硝酸ニッケル96.8g、硝酸クロム40.0g、硝酸マンガン9.6g、硝酸リチウム1.2gを順次添加し、溶解した(A液)。
別途、純水800gにパラタングステン酸アンモニウム34.8gを溶解した溶液(B液)、純水100gにパラモリブデン酸アンモニウム29.4gを溶解した溶液(C液)を各々調製した。
【0034】
次いで、攪拌しながらA液に20質量%コロイダルシリカ5998.4g、三酸化アンチモン粉末1212.7g、B液、C液を順次添加して水性スラリーを得た。
この水性スラリーに15質量%アンモニア水を滴下してpHを2.0に調整し、得られた水性スラリーを還流下、沸点で3時間加熱処理した。
加熱処理後の水性スラリーを80℃まで冷却し、85質量%リン酸19.2g、ホウ酸37.0gを添加した。
得られた水性スラリーを、噴霧乾燥機により、乾燥空気の温度を乾燥機入口で330℃、乾燥機出口で160℃として噴霧乾燥し、球状の乾燥粒子を得た。次いで、得られた乾燥粒子を250℃で2時間、400℃で2時間焼成し、最終的に流動焼成炉を用いて800℃で3時間流動焼成し、アクリロニトリル合成用触媒を得た。
【0035】
<活性試験>
得られた触媒を用い、以下の要領でプロピレンの気相接触アンモ酸化反応によるアクリロニトリル合成反応を実施した。
触媒流動部の内径が55mm、高さが2000mmの流動層反応器に、触媒と原料ガスの見掛け接触時間が表2の通りになるように触媒を充填した。その際の接触時間は下記の式により求めた。
見掛け接触時間(秒)=見掛け嵩密度基準の触媒容積(mL)/反応条件に換算した原料ガス量(mL/秒)
【0036】
酸素源として空気を用い、組成がプロピレン:アンモニア:酸素=1:1.1:2.3(モル比)である原料ガスを、ガス線速度17cm/秒で触媒層に送入した。反応圧力は200kPa、反応温度は460℃とした。
反応生成物の定量にはガスクロマトグラフィーを用い、反応開始4時間後のプロピレン転化率およびアクリロニトリル収率を求めた。その際のプロピレン転化率、アクリロニトリル収率を下記式より求めた。結果を表2に示す。
プロピレン転化率(%)=(反応消費されたプロピレンのモル数/原料ガスとして供給したプロピレンのモル数)×100
アクリロニトリル収率(%)=(生成したアクリロニトリルのモル数/原料ガスとして供給したプロピレンのモル数)×100
【0037】
[実施例2]
表1に示す組成を有する触媒を、以下の手順で調製した。
まず、63質量%の硝酸1800gに銅粉末58.4gを溶解した。この溶液に純水1700gを添加してから60℃に加熱し、電解鉄粉128.2g、テルル粉末64.5gを少量ずつ添加し、溶解した。溶解を確認した後、硝酸コバルト133.6g、オキシ硝酸ジルコニウム30.7g、硝酸アルミニウム17.2g、硝酸亜鉛34.2gを順次添加し、溶解した(D液)。
別途、純水400gにメタバナジン酸アンモニウム16.1gを溶解した溶液(E液)、純水200gにパラモリブデン酸アンモニウム60.8gを溶解した溶液(F液)を各々調製した。
【0038】
次いで、攪拌しながらD液に20質量%コロイダルシリカ5517.9g、三酸化アンチモン粉末1338.7g、E液、F液を順次添加して水性スラリーを得た。
この水性スラリーに15質量%アンモニア水を滴下してpHを2.2に調整し、得られた水性スラリーを還流下、沸点で3時間加熱処理した。
加熱処理後の水性スラリーを80℃まで冷却し、85質量%リン酸5.3g、ホウ酸34.1gを添加した。
得られた水性スラリーを、噴霧乾燥機により、乾燥空気の温度を乾燥機入口で330℃、乾燥機出口で160℃として噴霧乾燥し、球状の乾燥粒子を得た。次いで、得られた乾燥粒子を250℃で2時間、400℃で2時間焼成し、最終的に流動焼成炉を用いて820℃で3時間流動焼成し、アクリロニトリル合成用触媒を得た。
得られた触媒について実施例1と同様に活性試験を実施した。結果を表2に示す。
【0039】
[実施例3]
表1に示す組成を有する触媒を、以下の手順で調製した。
まず、63質量%の硝酸1700gに純水1500gを添加してから60℃に加熱し、電解鉄粉136.4g、テルル粉末37.4gを少量ずつ添加し、溶解した。溶解を確認した後、硝酸ニッケル198.8g、硝酸コバルト92.4g、硝酸ランタン10.6g、硝酸マンガン14.0g、硝酸カリウム2.5gを順次添加し、溶解した(G液)。
別途、純水950gにパラタングステン酸アンモニウム38.3gを溶解した溶液(H液)、純水100gにパラモリブデン酸アンモニウム34.5gを溶解した溶液(I液)を各々調製した。
【0040】
次いで、攪拌しながらGに20質量%コロイダルシリカ7335.8g、三酸化アンチモン粉末1067.9g、H液、I液を順次添加して水性スラリーを得た。
この水性スラリーに15質量%アンモニア水を滴下してpHを2.0に調整し、得られた水性スラリーを還流下、沸点で3時間加熱処理した。
加熱処理後の水性スラリーを80℃まで冷却し、ホウ酸30.2gを添加した。
得られた水性スラリーを、噴霧乾燥機により、乾燥空気の温度を乾燥機入口で330℃、乾燥機出口で160℃として噴霧乾燥し、球状の乾燥粒子を得た。次いで、得られた乾燥粒子を250℃で2時間、400℃で2時間焼成し、最終的に流動焼成炉を用いて780℃で3時間流動焼成し、アクリロニトリル合成用触媒を得た。
得られた触媒について実施例1と同様に活性試験を実施した。結果を表2に示す。
【0041】
[実施例4]
表1に示す組成を有する触媒を、以下の手順で調製した。
まず、63質量%の硝酸3100gに銅粉末25.2gを溶解した。この溶液に純水2800gを添加してから60℃に加熱し、電解鉄粉277.2g、テルル粉末50.7gを少量ずつ添加し、溶解した。溶解を確認した後、硝酸ニッケル86.6g、硝酸マグネシウム38.2g、硝酸マンガン28.5g、硝酸ルビジウム5.9gを順次添加し、溶解した(J液)。
別途、純水900gにパラタングステン酸アンモニウム38.9gを溶解した溶液(K液)、純水100gにパラモリブデン酸アンモニウム35.1gを溶解した溶液(L液)、純水150gにメタバナジン酸アンモニウム5.8gを溶解した溶液(M液)を各々調製した。
【0042】
次いで、攪拌しながらJ液に20質量%コロイダルシリカ5962.9g、三酸化アンチモン粉末1085.0g、K液、L液、M液を順次添加して水性スラリーを得た。
この水性スラリーに15質量%アンモニア水を滴下してpHを2.2に調整し、得られた水性スラリーを還流下、沸点で3時間加熱処理した。
加熱処理後の水性スラリーを80℃まで冷却し、85質量%リン酸34.3g、ホウ酸76.7gを添加した。
得られた水性スラリーを、噴霧乾燥機により、乾燥空気の温度を乾燥機入口で330℃、乾燥機出口で160℃として噴霧乾燥し、球状の乾燥粒子を得た。次いで、得られた乾燥粒子を250℃で2時間、400℃で2時間焼成し、最終的に流動焼成炉を用いて750℃で3時間流動焼成し、アクリロニトリル合成用触媒を得た。
得られた触媒について実施例1と同様に活性試験を実施した。結果を表2に示す。
【0043】
[実施例5]
表1に示す組成を有する触媒を、以下の手順で調製した。
まず、63質量%硝酸2400gに銅粉末56.9gを溶解した。この溶液に純水2200gを添加してから60℃に加熱し、電解鉄粉200.0g、テルル粉末36.6gを少量ずつ添加し、溶解した(N液)。
別途、純水100gにパラモリブデン酸アンモニウム25.3gを溶解した溶液(O液)、純水1200gにパラタングステン酸アンモニウム46.8gを溶解した溶液(P液)、純水300gにテルル酸41.1gを溶解した溶液(Q液)を各々調製した。
【0044】
次いで、攪拌しながらN液に20質量%コロイダルシリカ5379.1g、三酸化アンチモン粉末1305.0g、O液、P液を順次添加して水性スラリーを得た。
この水性スラリーに15質量%アンモニア水を滴下してpHを2.2に調整し、得られた水性スラリーを還流下、沸点で3時間加熱処理した。
加熱処理後の水性スラリーを80℃まで冷却し、硝酸ニッケル83.3g、85質量%リン酸8.3g、ホウ酸48.7g、Q液を順次添加した。
得られた水性スラリーを、噴霧乾燥機により、乾燥空気の温度を乾燥機入口で330℃、乾燥機出口で160℃として噴霧乾燥し、球状の乾燥粒子を得た。次いで、得られた乾燥粒子を250℃で2時間、400℃で2時間焼成し、最終的に流動焼成炉を用いて800℃で3時間流動焼成し、アクリロニトリル合成用触媒を得た。
得られた触媒について実施例1と同様に活性試験を実施した。結果を表2に示す。
【0045】
[実施例6]
表1に示す組成を有する触媒を、以下の手順で調製した。
まず、63質量%硝酸2400gに銅粉末72.6gを溶解した。この溶液に純水2200gを添加してから60℃に加熱し、電解鉄粉182.3g、テルル粉末41.6gを少量ずつ添加し、溶解した。溶解を確認した後、硝酸ニッケル47.5g、硝酸コバルト47.5g、硝酸ビスマス15.8gを順次添加し、溶解した(R液)。
別途、純水200gにパラモリブデン酸アンモニウム28.8gとテルル粉末25.0gを縣濁させ、80℃に加熱した後、35質量%過酸化水素水80gを滴下し、溶解した(S液)。
【0046】
次いで、攪拌しながらR液に20質量%コロイダルシリカ5881.7g、三酸化アンチモン粉末1189.1gを順次添加して水性スラリーを得た。
この水性スラリーに15質量%アンモニア水を滴下してpHを2.1に調整し、得られた水性スラリーを還流下、沸点で3時間加熱処理した。
加熱処理後の水性スラリーを80℃まで冷却し、85質量%リン酸18.8g、ホウ酸24.2g、50質量%メタタングステン酸アンモニウム水溶液105.9g、S液を順次添加した。
得られた水性スラリーを、噴霧乾燥機により、乾燥空気の温度を乾燥機入口で330℃、乾燥機出口で160℃として噴霧乾燥し、球状の乾燥粒子を得た。次いで、得られた乾燥粒子を250℃で2時間、400℃で2時間焼成し、最終的に流動焼成炉を用いて790℃で3時間焼成し、アクリロニトリル合成用触媒を得た。
得られた触媒について実施例1と同様に活性試験を実施した。結果を表2に示す。
【0047】
[比較例1]
表1に示す組成を有する触媒を、ホウ酸を添加しなかった以外は実施例1と同様の手順にて製造した。
得られた触媒について実施例1と同様に活性試験を実施した。結果を表2に示す。
【0048】
[比較例2]
表1に示す組成を有する触媒を、各元素の原料の仕込み量を調整した以外は実施例1と同様の手順にて製造した。
得られた触媒について実施例1と同様に活性試験を実施した。結果を表2に示す。
【0049】
[比較例3]
表1に示す組成を有する触媒を、ホウ酸を添加しなかった以外は実施例3と同様の手順にて製造した。
得られた触媒について実施例1と同様に活性試験を実施した。結果を表2に示す。
【0050】
[比較例4、5]
表1に示す組成を有する触媒を、各元素の原料の仕込み量を調整した以外は実施例5と同様の手順にて製造した。
得られた触媒について実施例1と同様に活性試験を実施した。結果を表2に示す。
【0051】
[比較例6]
表1に示す組成を有する触媒を、テルル粉末を添加しなかった以外は実施例6と同様の手順にて製造した。
得られた触媒について実施例1と同様に活性試験を実施した。結果を表2に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
表2から明らかなように、各実施例で得られたアクリロニトリル合成用触媒を用いた場合、いずれも80%以上の高収率でアクリロニトリルを合成できた。
一方、各比較例で得られたアクリロニトリル合成用触媒を用いた場合、アクリロニトリルの収率は、実施例に比べていずれも低かった。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明のアクリロニトリル合成用触媒によれば、プロピレンを気相接触アンモ酸化してアクリロニトリルを合成するに際し、高いアクリロニトリル収率を達成できる。
すなわち、本発明のアクリロニトリル合成用触媒を用いることによって、工業的に有利にアクリロニトリルを製造できるので、その工業的価値は高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式で表される組成を有する、アクリロニトリル合成用触媒。
FeSbTe(SiO
(式中、Feは鉄、Sbはアンチモン、Teはテルル、C成分は銅、ニッケルおよびコバルトからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素、D成分はモリブデン、タングステンおよびバナジウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素、F成分はリンおよびホウ素からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素、X成分はスズ、チタン、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、クロム、ルテニウム、パラジウム、銀、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、ゲルマニウム、ヒ素、ビスマス、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジムおよびサマリウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素、Y成分はマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、マンガン、亜鉛および鉛からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素、Z成分はリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素、Oは酸素、SiOはシリカを表し、a、b、c、d、e、f、x、y、z、gおよびhは各元素(シリカの場合はケイ素)の原子比を表し、a=10のとき、b=5〜60、c=0.1〜8.0、d=0.1〜4.0、e=0.1〜5.0、f=1.3〜5.0、x=0〜5、y=0〜5、z=0〜2、h=10〜200、gはケイ素を除く前記各元素の原子価を満足するのに必要な酸素の原子比であり、かつ、f/d=1〜5である。)
【請求項2】
アンチモン酸鉄を結晶相として含有することを特徴とする請求項1に記載のアクリロニトリル合成用触媒。
【請求項3】
請求項1または2に記載のアクリロニトリル合成用触媒の存在下、プロピレンと分子状酸素およびアンモニアとを反応させてアクリロニトリルを製造することを特徴とするアクリロニトリルの製造方法。





【公開番号】特開2009−220008(P2009−220008A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−66697(P2008−66697)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(301057923)ダイヤニトリックス株式会社 (127)
【Fターム(参考)】