説明

アスファルトプラントのドライヤ及びその回転制御方法

【課題】 ドラムの回転数制御によって排ガス温度をより効果的にコントロールできて省エネルギー化が図れるアスファルトプラントのドライヤ及びその回転制御方法を提供する。
【解決手段】 ドライヤ1のドラム3の回転数を可変速とし、ドラム3内周壁には骨材の流れを一部堰き止めて滞留させる堰き止め体19を周設すると共に、前記ドラム3下流の排気煙道10には排ガス温度検出用の温度センサー16を配設し、温度センサー16にて検出される排ガス温度に応じてドラム3の回転数を調整するドラム回転数調整装置17を配設する。そして、ドライヤ1運転時には、ドラム3内に供給した骨材を堰き止め体19にて堰き止めてドラム3内の骨材滞留量を略一定に保ちつつ、排ガス温度に応じてドラム3回転数を制御して効果的に排ガス温度を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路舗装材であるアスファルト混合物を製造するアスファルトプラントの骨材加熱乾燥装置であるドライヤに関する。
【背景技術】
【0002】
道路舗装材であるアスファルト混合物を製造するアスファルトプラントでは、アスファルト混合物の素材となる骨材を加熱乾燥処理するドライヤを備えている。前記ドライヤは、内周部に多数の掻き上げ羽根を周設した円筒状のドラムを回転自在に傾斜支持し、その一端部にはバーナを配設している一方、他端部には排気煙道を連結しており、該排気煙道の末端に配設した排風機により排ガスを吸引することによってドラム内に高温ガス流を維持し、ドラム内に供給した骨材と前記高温ガス流とを接触させて骨材を160℃程度に加熱して乾燥処理するようにしている。
【0003】
また、ドライヤは所望の加熱乾燥能力に応じてドラムの大きさやその回転数、またドラム内周部に周設される掻き上げ羽根の形状や枚数等が設計されており、骨材加熱乾燥時に前記ドラムを設計通り所定の回転数にて回転させれば、供給される骨材は掻き上げ羽根によって順次掻き上げられてドラム内に理想的なベールを形成しながら落下し、ドラム内を流下する高温ガス流と効率よく接触して好適に加熱乾燥処理可能としている。
【0004】
ところで、近年、アスファルトプラントの省エネルギー化を推進しており、この一方法として、ドライヤに配設されるバーナを燃費性能に優れた低空気比タイプのものに切り換えることが提案されている。この低空気比バーナにあっては、従来の(高空気比)バーナと比較して燃焼空気量が抑えられ、図3のグラフに示すように、グラフ左側のドラム導入時の排ガス温度は従来バーナよりも高温となる一方、グラフ右側のドラム導出時の排ガス温度は従来バーナよりも低温となることが予想され、従来バーナと比較して加熱対象である骨材をより効果的に加熱できると共に排ガス熱として無駄に持ち去られる無効熱量を抑えられ、加熱効率に優れ、燃費の向上も期待される。
【0005】
一方、図4のグラフはバーナの熱負荷とドラムから導出される排ガス温度の関係を示したものであり、図中二点鎖線で示したものが排ガス中の水分が凝縮して結露せずに、かつ熱効率も高くした熱負荷に対する理想的な排ガス温度を、また実線で示したものが前記低空気比バーナにおける熱負荷と排ガス温度の関係を予想したものを表している。熱負荷が高い、即ち骨材供給量が多くてバーナ燃焼量も多いときには排ガス温度も上昇するが、熱負荷が小さい、即ち骨材供給量が少なくてバーナ燃焼量も少ないときには低空気比バーナの排ガス温度は理想排ガス温度よりもかなり低い値となる。
【0006】
排ガス温度が前記の理想排ガス温度よりも低くなると結露を起こし、この結露によってドライヤ下流に設置した集塵装置であるバグフィルタを詰まらせたり、排ガス中に含まれる亜硫酸ガス等と水和反応して硫酸ミストを発生させ、バグフィルタや煙道等を腐食させることとなる。一方、排ガス温度が高いと骨材加熱に利用されずに排ガス熱として持ち去られる無効熱量が多くなることになり、燃費の低下につながる。したがって、図4中の矢印で示すように、熱負荷が小さいときには排ガス温度を上昇させるように、熱負荷が高いときには排ガス温度を低下させるようにそれぞれ調整すれば、最適な運転を行うことができる。
【0007】
ところで、本出願人は以前、特許文献1(特公平5−48808号公報)に示されるように、ドライヤのドラムを可変速とし、ドラムから導出される排ガス温度が予め設定した温度範囲以下になればドラムの回転数を下げ、ドラム内に形成されるベール数(掻き上げ羽根によって骨材を持ち上げてドラム上部から落下させる回数)を減らして加熱効率を落として排ガス温度を上昇させる一方、ドラムから導出される排ガス温度が予め設定した温度範囲以上になればドラムの回転数を上げ、ドラム内に形成されるベール数を増やして加熱効率を高めて排ガス温度を低下させるように制御するドライヤの回転制御方法及び装置を提案している。
【0008】
そして、このドライヤの回転制御方法及び装置を前記低空気比バーナを配設したドライヤに採用し、例えば、低熱負荷時にはドラム回転数を下げるようにすればドラム内のベール形成数を減らせて排ガス温度を上昇させることができる一方、高熱負荷時にはドラム回転数を上げるようにすればドラム内のベール形成数を増やせて排ガス温度を低下させることができ、図4中の実線で示される排ガス温度を二点鎖線で示される理想の排ガス温度(結露のおそれがなく、かつ無効熱量も極力抑えられる理想的な排ガス温度)に近似させることが可能になると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公平5−48808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、本発明者らが従来のドライヤ装置において、骨材供給量を少なくしてバーナ燃焼量を低下させた低熱負荷時にドラム回転数を下げて排ガス温度を上昇させるように調整したところ、予想するほど排ガス温度を上昇させることができなかった。また、同様に、骨材供給量を多くしてバーナ燃焼量を高めた高熱負荷時にドラム回転数を上げて排ガス温度を低下させるように調整したところ、予想するほど排ガス温度を低下させることができず、何らかの改良を行う必要があることが判明した。
【0011】
本発明は上記の点に鑑み、ドラムの回転数制御によって排ガス温度をより効果的にコントロールできて省エネルギー化が図れるアスファルトプラントのドライヤ及びその回転制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記課題を解決するために、鋭意検討を重ねた結果、ドラム回転数の増減による排ガス温度変化の応答性が鈍いのは、ドラム回転数を変えるとそれに伴って骨材を送り出す速度も変わり、それによって、下記表1に示されるように、ドラム内の骨材滞留量が増減することが要因であると考えた。即ち、例えば低熱負荷時に排ガス温度を上昇させようとドラム回転数を下げてドラム内に形成する骨材のベール形成数(掻き上げ羽根によって骨材を持ち上げてドラム上部から落下させる回数)を減少させて加熱効率を低下させるようにしても、ドラム回転数を下げることに伴って骨材の送り出し速度が落ちてドラム内の骨材滞留量が増えてしまうため、その分だけ加熱効率は高められて排ガス温度を若干低下させる方向へと影響し、これらが互いに打ち消し合うことにより排ガス温度をあまり効果的に上昇させることができず、また同様に、高熱負荷時に排ガス温度を低下させようとドラム回転数を上げてドラム内に形成する骨材のベール形成数を多くして加熱効率を高めても、ドラム回転数を上げることに伴って骨材の送り出し速度が上がってドラム内の骨材滞留量が減ってしまうため、その分だけ加熱効率は落ちて排ガス温度を若干上昇させる方向へと影響し、これらが互いに打ち消し合うことにより排ガス温度をあまり効果的に低下させることができなかったのではないかとの結論に至り、本発明をなすに至った。
【0013】
【表1】

【0014】
即ち、本発明に係る請求項1記載のアスファルトプラントのドライヤでは、回転自在に傾斜支持した骨材加熱乾燥用ドライヤのドラムの回転数を可変速とし、該ドラム内周壁には骨材の流れを一部堰き止めて滞留させる堰き止め体を周設してドラム回転数を変化させてもドラム内の骨材滞留量を大きく変動させないようにしておくと共に、前記ドラム下流の排気煙道には排ガス温度検出用の温度センサーを配設し、該温度センサーにより検出される排ガス温度が予め設定した結露しない温度を維持するように前記ドラムの回転数を調整するドラム回転数調整装置を配設したことを特徴としている。
【0015】
また、請求項2記載のアスファルトプラントのドライヤでは、前記堰き止め体は、ドラム内周壁に沿ったリング形状とし、ドラム長手方向の略中央付近に少なくとも一つ以上周設するようにしたことを特徴としている。
【0016】
また、請求項3記載のアスファルトプラントのドライヤでは、前記温度センサーに代えて湿度センサーを配設し、該湿度センサーにより検出される排ガス湿度が予め設定した結露しない湿度を維持するように前記ドラムの回転数を調整するドラム回転数調整装置を配設したことを特徴としている。
【0017】
また、請求項4記載のアスファルトプラントのドライヤの回転制御方法では、回転自在に傾斜支持した骨材加熱乾燥用ドライヤのドラムの回転数を可変速とすると共に、該ドラム内周壁には骨材の流れを一部堰き止めて滞留させる堰き止め体を周設してドラム回転数を変化させてもドラム内の骨材滞留量を大きく変動させないようにしておき、骨材加熱乾燥時にドラム下流の排気煙道の排ガス温度と排ガス湿度のいずれかを逐次検出し、該検出値が予め設定した結露しない排ガス温度または排ガス湿度を維持するようにドラムの回転数を制御するようにしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る請求項1記載のアスファルトプラントのドライヤによれば、回転自在に傾斜支持した骨材加熱乾燥用ドライヤのドラムの回転数を可変速とし、該ドラム内周壁には骨材の流れを一部堰き止めて滞留させる堰き止め体を周設してドラム回転数を変化させてもドラム内の骨材滞留量を大きく変動させないようにしておくと共に、前記ドラム下流の排気煙道には排ガス温度検出用の温度センサーを配設し、該温度センサーにより検出される排ガス温度が予め設定した結露しない温度を維持するように前記ドラムの回転数を調整するドラム回転数調整装置を配設したので、ドラムの回転数にかかわらずドラム内の骨材滞留量を略一定に保てることで、ドラム回転数と排ガス温度との相関性を高めてドラム回転数の変化に応じて排ガス温度が感度良く変化して応答性も良好となり、この結果、ドラム回転数制御によって排ガス温度をより効果的にコントロールでき、排ガスを結露させずに加熱効率を高く維持でき、省エネルギー化を図ることができる。
【0019】
また、請求項2記載のアスファルトプラントのドライヤによれば、前記堰き止め体は、ドラム内周壁に沿ったリング形状とし、ドラム長手方向の略中央付近に少なくとも一つ以上周設するようにしたので、熱効率への影響が大きいドラム中央部に一定量の骨材を安定して滞留させることができ、ドラム回転数と排ガス温度との相関性をより効果的に高めることができる。
【0020】
また、請求項3記載のアスファルトプラントのドライヤによれば、前記温度センサーに代えて湿度センサーを配設し、該湿度センサーにより検出される排ガス湿度が予め設定した結露しない湿度を維持するように前記ドラムの回転数を調整するドラム回転数調整装置を配設したので、排ガスを確実に結露させずに加熱効率を高く維持でき、省エネルギー化を図ることができる。
【0021】
また、請求項4記載のアスファルトプラントのドライヤの回転制御方法によれば、回転自在に傾斜支持した骨材加熱乾燥用ドライヤのドラムの回転数を可変速とすると共に、該ドラム内周壁には骨材の流れを一部堰き止めて滞留させる堰き止め体を周設してドラム回転数を変化させてもドラム内の骨材滞留量を大きく変動させないようにしておき、骨材加熱乾燥時にドラム下流の排気煙道の排ガス温度と排ガス湿度のいずれかを逐次検出し、該検出値が予め設定した結露しない排ガス温度または排ガス湿度を維持するようにドラムの回転数を制御するようにしたので、ドラム内の骨材滞留量を略一定に保てることで、ドラム回転数と排ガス温度または排ガス湿度との相関性を高めてドラム回転数の変化に応じて排ガス温度または排ガス湿度が感度良く変化して応答性も良好となり、この結果、ドラム回転数制御によって排ガス温度または排ガス湿度をより効果的にコントロールでき、排ガスを結露させずに加熱効率を高く維持でき、省エネルギー化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るアスファルトプラントのドライヤの一実施例を示す概略説明図である。
【図2】図1のドライヤのドラム部分の一部省略A−A断面図である。
【図3】従来のドライヤのドラム内に供給した骨材の温度変化と、高空気比バーナ及び低空気比バーナの排ガスの温度変化を示すグラフである。
【図4】従来のドライヤにおける低空気比バーナの熱負荷と排ガス温度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係るアスファルトプラントのドライヤ及びその回転制御方法にあっては、一端部にバーナを有したドラムの回転数をインバータ等にて可変速にしていると共に、ドラムの長手方向の略中央付近の内周壁には骨材の流れを一部堰き止めて滞留させるリング形状の堰き止め体を周設している。また、前記ドラム下流の排気煙道には排ガス温度検出用の温度センサー(または排ガス湿度検出用の湿度センサー)を備えており、該センサーにて検出される排ガス温度に応じて前記ドラムの回転数を調整するドラム回転数調整装置を配設している。
【0024】
前記ドラム回転数調整装置には、排ガスが結露しない排ガス温度、例えば図4中の二点鎖線で示されるような、熱負荷に対する理想の排ガス温度を予め設定登録しており、この設定温度と前記温度センサーにより検出される排ガス温度とを比較して、検出温度が設定温度以下になればインバータを介してドラムの回転数を下げるように、また検出温度が設定温度以上になればドラムの回転数を上げて設定温度を維持するための制御信号を出力するようにプログラミングしている。
【0025】
そして、上記構成のドライヤのドラム内に骨材を供給して加熱乾燥処理するときには、先ず、ドラムを設計基準の所定回転数にて回転させつつ、ドラム一端側のバーナよりドラム内に燃焼ガスを送り込むと共に、ドラム他端側より骨材を供給して所望温度に加熱処理していく。そして、ドライヤにおける骨材加熱が定常状態に安定すれば、ドラムより導出される排ガス温度を検出してドラム回転数調整装置に取り込み、該ドラム回転数調整装置ではこの検出温度と予め設定登録した設定温度とを比較する。そして、例えば、検出温度が設定温度以下であればインバータを介してドラム回転数を下げ、ドラム内のベール形成数を減らして加熱効率を落とすことによって排ガス温度を上昇させる一方、検出温度が設定温度以上であればドラム回転数を上げ、ドラム内のベール形成数を増やして加熱効率を高めることによって排ガス温度を低下させる。
【0026】
このとき、従来装置であれば、ドラム回転数の増減に伴ってドラム内の骨材滞留量も大きく変動してしまうため、ドラム回転数と排ガス温度との相関性が悪く、例えば排ガス温度が設定温度以下となったときに、ドラム回転数を下げてドラム内に形成する骨材のベール形成数を減少させて加熱効率を低下させることで排ガス温度を上昇させようとしても、前記表1に示されるように、ドラム内の骨材滞留量が増加することにより、その分だけ加熱効率が高められて排ガス温度が若干低下する方向へと影響してしまい、これらが互いに打ち消し合うことで排ガス温度をあまり効果的に上昇させることができなかった。
【0027】
一方、本発明の装置及び方法であれば、ドラム内周壁に骨材の流れを一部堰き止めて滞留させるリング形状の堰き止め体を周設しており、供給された骨材はこの堰き止め体によって一時的に堰き止められ、これによってドラムの回転数にかかわらずドラム内の骨材滞留量が略一定で、大きく変動させることがない。そして、骨材滞留量を略一定に維持できればドラム回転数と排ガス温度との相関性を高めることができ、例えば排ガス温度が設定温度以下となったときにドラム回転数を下げれば、下記表2に示すように、それがそのまま排ガス温度を上昇させる方向へ影響し、排ガス温度を効果的に上昇させることができる。また、同様に、排ガス温度が設定温度以上となったときにドラム回転数を上げれば、それがそのまま排ガス温度を低下させる方向へ影響し、排ガス温度を効果的に低下させることができる。
【0028】
【表2】

【0029】
このように、上記アスファルトプラントのドライヤ及びその回転制御方法によれば、ドライヤのドラム内周壁に骨材の流れを一部堰き止めて滞留させる堰き止め体を周設することでドラム内の骨材滞留量を大きく変動させることがないので、ドラム回転数と排ガス温度との相関性を高めることができ、ドラム回転数の変化に応じて排ガス温度が感度良く変化して応答性も良好となり、この結果、ドラム回転数制御によって排ガス温度をより効果的にコントロールできる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
【0031】
図中の1は、アスファルトプラントに設置される骨材加熱乾燥用のドライヤであって、内周部に多数の掻き上げ羽根2を周設した円筒状のドラム3を機台4上の支持ローラ5によって回転自在に傾斜支持しており、駆動モータ6によって所定速度で回転させるようにしている。また、前記ドラム3の一端部にはホットホッパ7を介して、例えば燃費性能に優れた低空気比バーナ8を配設している一方、他端部にはコールドホッパ9を介して排気煙道10を連結しており、該排気煙道10には排ガス中のダスト分を集塵処理するバグフィルタ11、排ガス導出用の排風機12を介してその末端に煙突13を配設している。そして、前記排風機12により排ガスを吸引することによってドラム3内に高温ガス流を維持する一方、供給コンベヤ14よりドラム3内に供給される骨材を掻き上げ羽根2にて順次掻き上げてベールを形成させながら落下させる間に前記高温ガス流と接触させて骨材を所望温度に加熱処理可能としている。
【0032】
15はインバータであって、該インバータ15によって前記駆動モータ6の出力を調整してドラム3の回転速度を調整可能としている一方、排気煙道10には排ガス温度検出用の温度センサー16を配設しており、該温度センサー16にて検出される排ガス温度に応じて前記インバータ15を介してドラム3回転数の調整を行うドラム回転数調整装置17を配設している。
【0033】
前記ドラム回転数調整装置17には記憶部18を内蔵しており、該記憶部18には、排ガスが結露しない排ガス温度、例えば図4中の二点鎖線で示される、熱負荷に対する理想の排ガス温度を予め設定登録しており、この設定温度と前記温度センサー16にて検出される排ガス温度とを比較して、検出温度が設定温度以下になればインバータ15を介してドラム3の回転数を下げるように制御信号を出力する一方、検出温度が設定温度以上になればドラム3の回転数を上げるように制御信号を出力するようにプログラミングしている。なお、前記記憶部18に設定登録する設定温度にある程度の幅を持たせておき、検出温度がその温度範囲を外れた場合にドラム3の回転数を増減させるようなプログラミングとしてもよい。
【0034】
また、前記ドラム3の長手方向の略中央付近の内周壁には、骨材の流れを一部堰き止めて滞留させる堰き止め体19を所定間隔を置いて二列周設しており、ドラム3内に骨材を供給すると前記堰き止め体19によって一時的に堰き止められ、ドラム3中央付近に絶えず一定量の骨材が滞留するように図っている。前記堰き止め体19は、図2に示すように、ドラム3内周壁に沿ったリング形状としており、その高さは例えば約250mm程度とすると共に、該リング形状の堰き止め体19を適宜数に分割して、例えば約75mm程度の隙間20を設けながらドラム3内周壁に固着することにより、骨材投入終了時に滞留する骨材がその隙間20を通り抜けてドラム3下流へと徐々に流れてドラム3内に骨材が残留することのないように図っている。
【0035】
そして、上記構成のドライヤ1のドラム3内に骨材を供給して加熱乾燥処理するときには、先ず、ドラム3を設計基準通りの所定の回転数にて回転させつつ、ドラム3一端側のバーナ8では骨材供給量に応じて熱負荷(燃焼量)を決定し、この決定した熱負荷にて燃焼を行ってドラム3内に燃焼ガスを送り込むと共に、ドラム3他端側の供給コンベヤ14よりドラム3内に骨材を供給して所望温度に加熱処理していく。そして、ドライヤ1における骨材加熱が定常状態に安定すれば、ドラム3より導出される排ガス温度を温度センサー16により随時検出してドラム回転数調整装置17に取り込んでいき、該ドラム回転数調整装置17では取り込んだ検出温度と記憶部18に予め設定登録しておいた設定温度とを比較する。
【0036】
そして、例えば、検出温度が設定温度以下であればインバータ15を介してドラム3回転数を下げるように制御信号を出力し、ドラム3回転数を下げることによりドラム3内のベール形成数を減らして加熱効率を落として排ガス温度を上昇させるようにする一方、検出温度が設定温度以上であればドラム3回転数を上げるように制御信号を出力し、ドラム3回転数を上げることによりドラム3内のベール形成数を増やして加熱効率を高めて排ガス温度を低下させるようにする。
【0037】
このとき、従来構造のドライヤのドラムでは、ドラム回転数の増減に伴いドラム内の骨材滞留量も大きく変動してしまうため、ドラム回転数と排ガス温度との相関性が悪く、例えば図4の実線にて示されるように、低熱負荷時の排ガス温度が理想排ガス温度である設定温度以下となったときに、ドラム回転数を下げて排ガス温度を上昇させようとしても、前記表1に示されるように、ドラム内の骨材滞留量が増加してしまうことにより、その分だけ加熱効率が高められて排ガス温度を若干低下させる方向へ影響し、排ガス温度をあまり効果的に上昇させることができない。また、同様に、高熱負荷時の排ガス温度が設定温度以上となったときに、ドラム回転数を上げて排ガス温度を低下させようとしても、ドラム内の骨材滞留量が減少してしまうことにより、その分だけ加熱効率が落ちて排ガス温度が若干上昇する方向へ影響し、排ガス温度をあまり効果的に低下させることができない。
【0038】
一方、本実施例のドライヤ1のドラム3であれば、ドラム3内周壁に骨材の流れを一部堰き止めて滞留させるリング形状の堰き止め体19を周設しており、ドラム3内に供給された骨材はこの堰き止め体19によってドラム3中央付近にて一時的に堰き止められて滞留し、これによってドラム3の回転数にかかわらずドラム3内の骨材滞留量が略一定で、大きく変動させることがない。そして、ドラム3内の骨材滞留量を大きく変動させることがないように維持できればドラム3回転数と排ガス温度との相関性を高めることができ、例えば低熱負荷時の排ガス温度が設定温度以下となったときにドラム3回転数を下げれば、前記表2に示すように、それがそのまま排ガス温度を上昇させる方向へ影響し、排ガス温度を効果的に上昇させることができる。また、同様に、高熱負荷時の排ガス温度が設定温度以上となったときにドラム3回転数を上げれば、それがそのまま排ガス温度を低下させる方向へ影響し、排ガス温度を効果的に低下させることができる。
【0039】
上記のように、ドラム3内周壁には骨材の流れを一部堰き止めて滞留させる堰き止め体19を周設してドラム3内の骨材滞留量を大きく変動させることがないので、ドラム3回転数と排ガス温度との相関性を高めることができ、ドラム3回転数の変化に応じて排ガス温度が感度良く変化して応答性も良好となり、排ガス温度をより効果的にコントロールできる。なお、従来のドライヤにてドラム回転数制御を行おうとすれば、ドラム回転数の変化に応じて排ガス温度が感度良く変化しないので、ドラム回転数の変更幅も大きくする必要があって駆動モータ6の容量をアップせざるを得ず高価なものとなると共に、ドラムが高速回転することによる摩耗も大きいと予想される。
【0040】
なお、排ガスの温度センサー16に代えて湿度センサーを採用することもできる。湿度センサーにて排ガスの相対湿度を逐次検出し、検出する相対湿度が結露を起こさない適宜な値となるようにドラム回転数を制御することで、温度センサーを採用した場合と同様の効果を期待できる。また、バーナとして低空気比バーナを採用した例を説明したが、何らこれに限定するものではなく、高空気比バーナでも採用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0041】
1…ドライヤ 3…ドラム
6…駆動モータ 8…バーナ
10…排気煙道 15…インバータ
16…温度センサー 17…ドラム回転数調整装置
19…堰き止め体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転自在に傾斜支持した骨材加熱乾燥用ドライヤのドラムの回転数を可変速とし、該ドラム内周壁には骨材の流れを一部堰き止めて滞留させる堰き止め体を周設してドラム回転数を変化させてもドラム内の骨材滞留量を大きく変動させないようにしておくと共に、前記ドラム下流の排気煙道には排ガス温度検出用の温度センサーを配設し、該温度センサーにより検出される排ガス温度が予め設定した結露しない温度を維持するように前記ドラムの回転数を調整するドラム回転数調整装置を配設したことを特徴とするアスファルトプラントのドライヤ。
【請求項2】
前記堰き止め体は、ドラム内周壁に沿ったリング形状とし、ドラム長手方向の略中央付近に少なくとも一つ以上周設するようにしたことを特徴とする請求項1記載のアスファルトプラントのドライヤ。
【請求項3】
前記温度センサーに代えて湿度センサーを配設し、該湿度センサーにより検出される排ガス湿度が予め設定した結露しない湿度を維持するように前記ドラムの回転数を調整するドラム回転数調整装置を配設したことを特徴とする請求項1又は2記載のアスファルトプラントのドライヤ。
【請求項4】
回転自在に傾斜支持した骨材加熱乾燥用ドライヤのドラムの回転数を可変速とすると共に、該ドラム内周壁には骨材の流れを一部堰き止めて滞留させる堰き止め体を周設してドラム回転数を変化させてもドラム内の骨材滞留量を大きく変動させないようにしておき、骨材加熱乾燥時にドラム下流の排気煙道の排ガス温度と排ガス湿度のいずれかを逐次検出し、該検出値が予め設定した結露しない排ガス温度または排ガス湿度を維持するようにドラムの回転数を制御するようにしたことを特徴とするアスファルトプラントのドライヤの回転制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−102519(P2012−102519A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251480(P2010−251480)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000226482)日工株式会社 (177)
【Fターム(参考)】