説明

アスファルトラバーの製造方法

【課題】ゴム粉の膨潤を一定程度にする事ができるアスファルトラバーの製造方法を提供する。
【解決手段】少なくともゴム粉とアスファルトと骨材とを含むアスファルトラバーの製造方法において、前記ゴム粉とアスファルトが接している際の時間を100分〜150分の範囲にする。前記ゴム粉は、合成ゴムよりも天然ゴムの比率が高いゴム粉が好ましく、アスファルトはストレートアスファルトが好ましい。さらに、ゴム粉は、廃タイヤを粉砕したゴム粉であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアスファルトラバーの製造方法に関し、詳しくは、アスファルトラバー製造時のゴム粉の膨潤度を一定程度にして安定した物性のアスファルト混合物を与えると共に、アスファルトやゴム粉への温度履歴による劣化を防いで良好な舗装性能を確保することができるアスファルトラバーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃タイヤを粉砕したゴムを弾性舗装材として使用することが知られている。この弾性舗装材を歩道に適用した場合には、ゴムの有する弾力性により衝撃吸収性、転倒時の安全性に効果があり、また、車道に適用した場合には、内部に空隙があるため排水性、通気性に加えて吸音性に優れており、そのためタイヤと路面内で発生する騒音の低減にも有効である。しかし、ゴムの弾性により締固めが不十分となりやすく、また摩耗しやすいため、耐久性には問題が残されていた。
【0003】
また、廃タイヤを粉砕して得られるゴム粉をアスファルトに混ぜたアスファルトラバーも知られている。通常のアスファルトの代わりにアスファルトラバーを使用すると、石や砂等の骨材を被覆する膜が厚くなり、舗装の耐久性が向上し、わだち掘れ、ひび割れができにくくなるといわれている。かかるアスファルトラバーは、加熱溶融したストレートアスファルトに廃タイヤのゴム粉を所定量添加し、所定温度に保持して攪拌・混合した後、これを所定温度で熟成することにより製造される。通常、ゴム粉は、バス・トラック等の廃タイヤを粉砕したもの(以下「TBゴム粉」と称する)を使用し、攪拌・混合および熟成は180℃で行われる(例えば、特許文献1)。
【0004】
このようなアスファルトラバーの製造方法としては、廃タイヤを粉砕したゴム粉とストレートアスファルトとを予め混合するプレミックスタイプと、プラントで骨材と混合する際にゴム粉を添加するプラントミックスタイプに分けられる。いずれもゴム粉がアスファルトと混合されることにより、ゴム粉が膨潤して高粘度になるため、これが舗装の耐流動性に効果をもたらすものと考えられる。
【特許文献1】特開2006−328139号公報(特許請求の範囲等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アスファルトラバーのメリットである高粘度はゴム粉の膨潤によってもたらされている。ゴム粉は時間経過に伴って膨潤していくため、この膨潤反応が起きている間は、そのアスファルトラバーへの効果も徐々に上がり、舗装性能にもたらす影響も変動する。一般的に舗装は、合材工場で骨材とバインダを混合して、加熱アスファルト混合物を製造し、これを各現場へと運搬してから敷き均しと転圧が行われる。よってアスファルトの施工までにかかる時間が一定でないことにより、ゴム粉の膨潤状態が施工ごとに異なり、安定した物性のアスファルト混合物を提供することが難しいという問題があった。
【0006】
そこで本発明の目的は、アスファルトラバー製造時のゴム粉の膨潤度を一定程度にして安定した物性のアスファルト混合物を与えると共に、アスファルトやゴム粉への温度履歴による劣化を防いで良好な舗装性能を確保することができるアスファルトラバーの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、アスファルトラバー製造工程において、ゴム粉とアスファルトの接している際の時間を所定の範囲に制御することにより、アスファルトの劣化を抑制しつつ、ゴム粉の膨潤度を一定程度にすることができることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明のアスファルトラバーの製造方法は、少なくともゴム粉と、アスファルトと骨材とを含むアスファルトラバーの製造方法において、前記ゴム粉と前記アスファルトが接している際の時間を100分〜150分の範囲にすることを特徴とするものである。
【0009】
本発明においては、前記アスファルトはストレートアスファルトであることが好ましく、また、前記ゴム粉は廃タイヤを粉砕したゴム粉であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、上記構成としたことにより、アスファルトラバーの製造時のゴム粉の膨潤度を一定程度にすることができ、かつ、アスファルトやゴム粉への温度履歴による劣化を防いで良好な舗装性能を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
一般的に、アスファルトラバーの製造工程の一例であるプレミックスタイプの製造工程は、アスファルトを加熱して溶融させる溶融工程と、溶融後にアスファルトを攪拌しながらゴム粉を添加する添加工程と、添加後さらに攪拌し続ける攪拌工程と、熟成工程と、を含む。本発明のアスファルトラバーの製造方法は、ゴム粉とアスファルトが接している際の時間、即ち、添加工程と、攪拌工程と、熟成工程の時間を100分〜150分、好ましくは120分〜150分の範囲にしておくことが肝要である。ゴム粉を添加する段階から施工までの時間を100分〜150分とすることにより、ゴム粉の膨潤度の変化が安定して、ゴム粉の膨潤度を一定程度にすることができ、安定した物性のアスファルト混合物を確保することができる。アスファルトラバーの製造方法においてゴム粉とアスファルトが接している時間、つまり膨潤時間が100分未満であると、ゴム粉の膨張がまだ進んでいる状態であるため、物性のバラつきが生じやすい。また、150分より長く膨潤時間をとってもその膨潤度は変化しないため、効果は変わらず、また、高温状態に保つことは同時にアスファルトの劣化を引き起こしてしまう。ここで、膨潤度とは、アスファルトに接触する前のゴム粉と、アスファルト接触後、所定時間後のゴム粉の粒径から算出した線膨張率をいう。
【0012】
なお、膨潤させる温度に関しては、膨潤度が一定になる時間にそれほど変わりはないため、物性安定の面からはいずれの温度でも構わないが、アスファルトの溶融状態が十分であることが必要であるため、温度は140℃以上であることが必要である。また、ゴム粉の膨潤のし易さを考慮すると、160℃以上が好ましい。
【0013】
本発明においては、ゴム粉とアスファルトが接している際の時間を100分〜150分の範囲にしておくことのみが重要であり、その他の条件については、特に制限されるものではない。例えば、溶融工程においては、アスファルトの加熱溶融温度は、140℃〜180℃の範囲とすることができる。140℃未満ではアスファルトが十分に溶融せず、一方、180℃を超えても溶融効果は変わらないためである。
【0014】
また、添加工程でのゴム粉の添加も従来どおり、加熱溶融したアスファルトを攪拌しながら添加しても、添加後に攪拌してもよい。ゴム粉のゲル化の促進と均一な混合を考慮すると、アスファルトを攪拌しながら添加することが好ましい。この際、攪拌速度は50rpm〜3000rpmであることが好ましい。攪拌速度が50rpm未満であると添加したゴム粉の分散が不十分となり均一な混合物が得られず、一方、3000rpmを超えても攪拌効果は変わらないためである。
【0015】
攪拌工程においては、添加されたゴム粉の攪拌時間は、10分以上が好ましい。加熱溶融したアスファルトと添加したゴム粉がゲル化して均一に混合されるには10分程度の時間が必要であるからである。また、攪拌速度は50rpm〜3000rpmであることが好ましい。攪拌速度が50rpm未満であると均一なアスファルトラバーが得られず、一方、3000rpmを超えても攪拌効果は変わらないためである。
【0016】
その後、熟成工程において、ストレートアスファルトに添加したゴム粉がゲル化して均一に混合された後、熟成を行うが、熟成時間は、30分未満では熟成効果が十分に得られないので、30分以上が好ましい。
【0017】
本発明に好適に使用することができるアスファルトラバーとしては、ストレートアスファルトにゴム粉を添加したアスファルトラバーが挙げられる。ストレートアスファルトとしては、ストレートアスファルト40/60、60/80、80/100、100/120等を挙げることができる。これらはそれぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。また、アスファルトは、脱色アスファルトであってもよい。
【0018】
また、本発明に使用することができるアスファルトラバー中のゴム粉としては、特に制限はされないが、アスファルトラバーの耐久性の観点から、合成ゴムよりも天然ゴム(NR)の比率が高いものが好ましい。また、廃タイヤのリサイクルや不法投棄等の公害問題の観点から本発明に用いるゴム粉としては、廃タイヤを粉砕したゴム粉であることが好ましい。廃タイヤにはTBゴム粉や、乗用車用廃タイヤを粉砕したゴム粉があるが、特には、天然ゴムを合成ゴムよりも多く含むTBゴム粉が好適である。
【0019】
本発明におけるプレミックスタイプの製造工程で得られるアスファルトラバーと混合することができる骨材には、特に制限はなく、川砂利、川砂等の天然の骨材や砕石、スラグ、コンクリート、ガラス、FRP等のリサイクル骨材を使用することができる。
【0020】
また、アスファルトラバーには、必要に応じ、添加剤として、着色顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、接着性改良剤、老化防止剤、金属不活性剤、光安定剤、発泡剤、水分除去剤、希釈溶剤、物性調整用高分子または低分子添加剤などを配合したものでもよい。
【0021】
なお、本発明のアスファルトラバーの製造方法は、上述のプレミックスタイプの製造工程の他、アスファルトをゴム粉と骨材と一緒に混合するプラントミックスタイプの工程にも好適に適用することができる。
【実施例】
【0022】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
本発明のアスファルトラバーの製造方法を以下の手順に従い評価した。まず、ホットステージ付きの顕微鏡のステージを所定温度に加熱し、プレパラートに下記表1に示す組成のゴム粉(粒径0.4mm〜0.6mm)を載せ、その後、所定温度のストレートアスファルト約0.2gを加え、投入直後のゴム粉を撮影した。その後順次、所定時間にゴム粉を撮影していき、膨潤度を算出した。以上の操作を155、165、170、175、195℃にて行った。得られた結果を図1に示す。なお、アスファルトとして新日本石油社製ストレートアスファルト60−80を用いた。
【0023】
【表1】

※1 スチレンブタジエンゴム(JSR(株)製 #1500)
※2 大内新興化学(株)製 ノクラック6C
※3 大内新興化学(株)製 リターダーCTP
※4 大内新興化学(株)製 ノクセラーDM
※5 大内新興化学(株)製 ノクセラーD
【0024】
図1より、各温度において、膨潤時間が100分を超えると、膨潤度が安定することがわかる。一方、100分未満では、各温度において、急激な膨潤度の変化が起きている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】各温度でのゴム粉の膨潤度の経時変化を表わすグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともゴム粉と、アスファルトと、骨材とを含むアスファルトラバーの製造方法において、前記ゴム粉と前記アスファルトが接している際の時間が100分〜150分であることを特徴とするアスファルトラバーの製造方法。
【請求項2】
前記アスファルトがストレートアスファルトである請求項1記載のアスファルトラバーの製造方法。
【請求項3】
前記ゴム粉が廃タイヤを破砕したゴム粉である請求項1または2記載のアスファルトラバーの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−59377(P2010−59377A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229287(P2008−229287)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】