説明

アスファルトラバーの貯蔵方法

【課題】加熱貯蔵時のアスファルトラバー中のゴム粉の分解を抑え、ゴム粉濃度の低下を抑制することができるアスファルトラバーの貯蔵方法を提供する。
【解決手段】アスファルトにゴム粉を含有するアスファルトラバーの貯蔵方法において、前記アスファルトラバーを150〜175℃、好適には165〜175℃にて加熱貯蔵することを特徴とするアスファルトラバーの貯蔵方法である。本発明の貯蔵方法は、アスファルトとしてストレートアスファルトを用い、ゴム粉として廃タイヤを破砕したゴム粉を用いたアスファルトラバーに好適に適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアスファルトラバーの貯蔵方法に関し、詳しくは加熱貯蔵時においてアスファルトラバー中のゴム粉濃度の低下を抑制することができるアスファルトラバーの貯蔵方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃タイヤを粉砕したゴムを弾性舗装材として使用することが知られている。この弾性舗装材を歩道に適用した場合には、ゴムの有する弾力性により衝撃吸収性、転倒時の安全性に効果があり、また、車道に適用した場合には、内部に空隙があるため排水性、通気性に加えて吸音性に優れており、そのためタイヤと路面内で発生する騒音の低減にも有効である。しかし、ゴムの弾性により締固めが不十分となりやすく、また摩耗しやすいため、耐久性には問題が残されていた。
【0003】
また、廃タイヤを粉砕して得られるゴム粉をアスファルトに混ぜたアスファルトラバーも知られている。通常のアスファルトの代わりにアスファルトラバーを使用すると、石や砂等の骨材を被覆する膜が厚くなり、舗装の耐久性が向上し、ひび割れができにくくなるといわれている。かかるアスファルトラバーは、加熱溶融したストレートアスファルトに廃タイヤのゴム粉を所定量添加し、所定温度に保持して攪拌・混合した後、これを所定温度で熟成することにより製造される。通常、ゴム粉は、バス・トラック等の廃タイヤを粉砕したもの(以下「TBゴム粉」と称する)を使用し、攪拌・混合および熟成は180℃で行われる(例えば、特許文献1)。
【0004】
かかるアスファルトラバーの特徴は、TBゴム粉が膨潤して高粘度のバインダへと改質されることであり、これにより、改質アスファルトと類似した性能が期待できるとされている。このようにして得られたアスファルトラバーは耐流動性、耐摩耗性、疲労抵抗性、すべり抵抗性および耐候性等に優れていることが報告されている。
【特許文献1】特開2006−328139号公報(特許請求の範囲等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
わが国では、アスファルトバインダは多現場少量出荷が多いため、通常、加熱貯蔵されることが多い。これはストレートアスファルトに限らず、他の改質アスファルトについても同様である。しかしながら、この加熱貯蔵により、添加したゴム粉が分解してしまいゴム粉濃度が低下し、アスファルトラバーに期待されるゴム粉濃度が維持できなくなるという欠点を有していた。
【0006】
そこで本発明の目的は、加熱貯蔵時のアスファルトラバー中のゴム粉の分解を抑え、ゴム粉濃度の低下を抑制することができるアスファルトラバーの貯蔵方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、加熱貯蔵時の温度を所定の範囲に設定することによりゴム粉の分解によるゴム粉濃度の低下を抑制することができることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明のアスファルトラバーの貯蔵方法は、アスファルトにゴム粉を含有するアスファルトラバーの貯蔵方法において、前記アスファルトラバーを150〜175℃にて加熱貯蔵することを特徴とするものである。
【0009】
本発明においては、アスファルトラバーの加熱貯蔵時の温度を165〜175℃の範囲とすることが好ましい。また、本発明においては、前記アスファルトがストレートアスファルトであることが好ましく、さらに本発明においては、前記ゴム粉として廃タイヤを破砕したゴム粉であることが好ましい。さらにまた、前記アスファルトラバーは、アスファルトを加熱して溶融させる溶融工程と、溶融後にアスファルトを溶融温度以上で攪拌しながらゴム粉を添加する添加工程と、添加後さらに溶融温度以上に保ったまま攪拌し続ける攪拌工程と、攪拌後、恒温槽内で熟成させる熟成工程と、を経て製造されたアスファルトラバーであることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、上記構成としたことにより、アスファルトラバーを加熱貯蔵しても、アスファルトラバー中のゴム粉の分解によるゴム粉濃度の低下を抑制することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
本発明のアスファルトラバーの貯蔵方法は、加熱貯蔵温度を150〜175℃の範囲に設定することが肝要であり、好適には加熱貯蔵温度は165〜175℃の範囲である。加熱貯蔵温度が150℃未満では、ゴム粉の分解を抑えることはできるがアスファルトとゴム粉の溶融状態が非常に悪くなってしまう。一方、175℃を超えるとゴム粉が分解してしまい、所定のゴム粉濃度を維持することができなくなる。
【0012】
本発明を好適に適用することができるアスファルトラバーとしては、ストレートアスファルトにゴム粉を添加したアスファルトラバーがあげられる。ストレートアスファルトとしては、ストレートアスファルト40/60、60/80、80/100、100/120等を挙げることができる。これらはそれぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。また、アスファルトは、脱色アスファルトであってもよい。
【0013】
また、本発明を好適に適用することができるアスファルトラバー中のゴム粉としては、特に制限はされないが、廃タイヤを粉砕したゴム粉であることが好ましい。廃タイヤを破砕したゴム粉としては、TBゴム粉や乗用車用廃タイヤを破砕したゴム粉(以下「PSゴム粉」と称する)などがあげられるが、所望の効果を得る上で、本発明においてはPSゴム粉であることがより好ましい。廃タイヤを破砕したゴム粉を用いることにより、廃タイヤをリサイクル使用することになるため、廃タイヤの不法投棄等の公害問題の解決にも貢献することができる。
【0014】
また、アスファルトラバーには必要に応じ、添加剤として、着色顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、接着性改良剤、老化防止剤、金属不活性剤、光安定剤、発泡剤、水分除去剤、希釈溶剤、物性調整用高分子または低分子添加剤などを配合したものでもよい。
【0015】
次に本発明のアスファルトラバーの貯蔵方法を好適に適用することができるアスファルトラバーの製造方法について説明する。
本発明のアスファルトラバーの貯蔵方法を好適に適用することができるアスファルトラバーの製造方法は、アスファルトを加熱して溶融させる溶融工程と、溶融後にアスファルトを溶融温度以上で攪拌しながらゴム粉を添加する添加工程と、添加後さらに溶融温度以上に保ったまま攪拌し続ける攪拌工程と、攪拌後、恒温槽内で熟成させる熟成工程と、を含む。
【0016】
溶融工程において、アスファルトの加熱溶融温度は、130℃〜180℃の範囲が好ましい。130℃未満ではアスファルトが十分に溶融せず、一方、180℃を超えても溶融効果は変わらないためである。
【0017】
添加工程において、加熱溶融したアスファルトにゴム粉を添加する際の温度は、150℃〜200℃が好ましい。150℃未満ではゴム粉が十分にゲル化せず、一方、200℃を超えるとアスファルトが熱劣化を起こしてしまうからである。この時、ゴム粉の添加は、加熱溶融したアスファルトを攪拌しながら添加しても、添加後に攪拌してもよいが、ゴム粉のゲル化の促進と均一な混合を考慮すると、アスファルトを攪拌しながら添加することが好ましい。この際、攪拌速度は50rpm〜3000rpmであることが好ましい。攪拌速度が50rpm未満であると添加したゴム粉の分散が不十分となり均一な混合物が得られず、一方、3000rpmを超えても攪拌効果は変わらないためである。
【0018】
攪拌工程において、加熱溶融したアスファルトにゴム粉を添加後、攪拌する時間は、10分以上が好ましい。加熱溶融したアスファルトと添加したゴム粉がゲル化して均一に混合されるには10分程度の時間が必要であるからである。また、攪拌速度は50rpm〜3000rpmであることが好ましい。攪拌速度が50rpm未満であると均一なアスファルトラバーが得られず、一方、3000rpmを超えても攪拌効果は変わらないためである。なお、この際のアスファルトラバーの温度は、150℃〜200℃が好ましい。150℃未満ではゴム粉が十分にゲル化せず、一方、200℃を超えるとアスファルトが熱劣化を起こしてしまうからである。
【0019】
熟成工程において、アスファルトに添加したゴム粉がゲル化して均一に混合された後、所定温度、所定時間にて熟成を行うが、この時の温度は150℃〜200℃の範囲が好ましい。150℃未満ではアスファルトとゴム粉の正常な溶融状態を維持することができず、200℃を超えるとアスファルトラバーが熱劣化を起こしてしまうからである。また、熟成時間は30分未満では熟成効果が十分に得られないので、30分以上が好ましい。
【実施例】
【0020】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
(実施例)
本発明である加熱貯蔵方法を実施するにあたって、以下の手順に従いアスファルトラバーを調製した。尚、アスファルトとして新日本石油社製ストレートアスファルト60−80を、また、ゴム粉としてPSゴム粉であるUSS東洋社製PS−#4000を用いた。
【0021】
まず、ストレートアスファルトを180℃まで加熱し、溶融させた。温度を190℃にまで上げ、攪拌機を用いて200〜400rpmで攪拌しながら、14.5質量%のゴム粉を添加した。190℃に維持したまま混合物を約2時間攪拌してアスファルトラバーを調製した。
【0022】
上記手順で調製したアスファルトラバーを170℃にて加熱貯蔵し、アスファルトラバー中のゴム粉濃度を測定し、ゴム粉濃度の経時変化を観察した。ゴム粉濃度の測定は以下の手順で行った。先ず、調製直後、あるいは所定日数経過したアスファルトラバーを約0.2gとり、これを濾紙に包んで秤量した。秤量後、ソックスレーにてトルエン抽出、次いでアセトン抽出を行い、ソックスレーからサンプルを取り出し、常温乾燥あるいは真空乾燥させた。その後、アスファルトラバーを秤量し、アスファルトラバー中に含まれるゴム粉量を算出した。得られた結果を図1に示す。
【0023】
(比較例1)
実施例と同様にしてアスファルトラバーを調製した後、180℃にて加熱貯蔵し、実施例と同様の評価を行った。得られた結果を図1に併記する。
【0024】
(比較例2)
実施例と同様にしてアスファルトラバーを調製した後、190℃にて加熱貯蔵し、実施例と同様の評価を行った。得られた結果を図1に併記する。
【0025】
(比較例3)
実施例と同様にしてアスファルトラバーを調製した後、150℃よりも低い温度で加熱貯蔵を行うと、アスファルトラバーのゴム粉の溶融状態が急激に悪化した。
【0026】
図1より、比較例1および比較例2における180℃、190℃での加熱貯蔵では、時間とともにゴム粉濃度が減少していく様子を確認することができる。一方、実施例における170℃での加熱貯蔵ではゴム粉濃度の減少は見られず、初期のゴム粉濃度を維持することができることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施例、比較例1および比較例2における異なる貯蔵温度でのゴム粉濃度の経時変化を表すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルトにゴム粉を含有するアスファルトラバーの貯蔵方法において、前記アスファルトラバーを150〜175℃にて加熱貯蔵することを特徴とするアスファルトラバーの貯蔵方法。
【請求項2】
前記加熱貯蔵を165〜175℃にて行う請求項1記載のアスファルトラバーの貯蔵方法。
【請求項3】
前記アスファルトがストレートアスファルトである請求項1または2記載のアスファルトラバーの貯蔵方法。
【請求項4】
前記ゴム粉が廃タイヤを破砕したゴム粉である請求項1〜3のうちいずれか一項記載のアスファルトラバーの貯蔵方法。
【請求項5】
前記アスファルトラバーが、アスファルトを加熱して溶融させる溶融工程と、溶融後にアスファルトを溶融温度以上で攪拌しながらゴム粉を添加する添加工程と、添加後さらに溶融温度以上に保ったまま攪拌し続ける攪拌工程と、攪拌後、恒温槽内で熟成させる熟成工程と、を経て製造されたアスファルトラバーである請求項1〜4のうちいずれか一項記載のアスファルトラバーの貯蔵方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−209534(P2009−209534A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−50969(P2008−50969)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】