説明

アスファルト混合物の製造方法及び施工方法

【課題】本発明は、パラフィン系炭化水素を改質剤として添加するアスファルト混合物を施工した際に十分な耐久性を有するようにアスファルトの配合割合を設定して製造する製造方法を提供することを目的とするものである。
【解決手段】パラフィン系炭化水素を主成分とする改質剤を添加してアスファルト及び骨材を混合するアスファルト混合物の製造方法において、改質剤を含むアスファルトの配合割合Ap(重量%)を以下に示す式により算出された値に設定して混合する。
p=As・(Vp/Vs1/3・(γp/γs
但し、Asは、ストレートアスファルトのみ混合した場合のアスファルトの配合割合、Vsは、ストレートアスファルトのみ混合した場合の骨材間隙率(%)、γsは、ストレートアスファルトの比重、Vpは、改質剤を含むアスファルトを混合した場合の骨材間隙率(%)、γpは、改質剤を含むアスファルトの比重である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舗装道路に用いられるアスファルト混合物の製造方法及び施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アスファルト混合物を用いた舗装は、適当な粒度分布を有する砕石、砂等の骨材に、バインダとして、例えば、ストレートアスファルトを加熱状態で混練してアスファルト混合物を製造し、製造されたアスファルト混合物を舗装面上に敷き均してローラーで転圧することで施工される。
【0003】
近年、交通量の増加及びトラック等の大型車両の増加により、アスファルト舗装道路では敷設したアスファルト混合物が車両の通行により徐々に流動してわだちが生じる現象が多発している。道路面状に凹凸状のわだちが生じると、車の乗り心地が悪くなるだけでなくハンドル操作に影響を与えるようになり、降雨時の滞水がスリップの原因となって交通安全上大きな問題となる。
【0004】
こうした凹凸状のわだちが生じる原因であるアスファルト混合物の流動を防止するために、ストレートアスファルトにゴムや熱可塑性エラストマー等の改質材を添加した改質アスファルトを用いることが提案されている。また、特許文献1では、ポリエチレン樹脂等の合成樹脂を熱分解反応により得られたワックス状物質をアスファルト用改質材としてアスファルトに添加し、アスファルト混合物を製造する点が記載されている。また、特許文献2では、骨材とアスファルトを主とする混合物に、融点が50〜90℃の石油系又は合成系ワックスからなる特殊添加剤をアスファルト量に対する内割重質量%で1〜7%添加し、アスファルト混合物を製造する点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3311299号公報
【特許文献2】特許第3628274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1及び2では、ワックス状物質をアスファルトに添加することで、アスファルトの耐久性を向上させるとともに、施工時のアスファルトの加熱温度を低下させることができ、作業効率を向上させることができる。
【0007】
しかしながら、ワックス状物質をアスファルトに添加すると、ストレートアスファルトとは異なる特性を備えた改質アスファルトとなるため、ストレートアスファルトを用いたアスファルト混合物の場合のアスファルト量とは異なる量に設定する必要がある。
【0008】
ストレートアスファルトを用いる場合には、マーシャル安定度試験に基づいてアスファルト及び骨材の配合割合を決定することが行われているが、上述した改質アスファルトを用いる場合には決定された配合割合をそのまま適用しても施工した際に十分な耐久性を備えたものが得られない。
【0009】
特に、パラフィンを改質剤としてアスファルトに添加する場合、パラフィンは凝固する際の収縮率が大きいため骨材の間隙を小さくする傾向がある。そのため、マーシャル安定度試験に基づいた試験結果により設計アスファルト量(アスファルトの配合割合)を設定する場合、骨材間隙率の減少によって設計アスファルト量がストレートアスファルトの場合に比べて小さく設定されてアスファルト量が不足する傾向になり、製造されたアスファルト混合物の施工した場合の耐久性が不十分なものとなりやすい。
【0010】
そこで、本発明は、パラフィン系炭化水素を改質剤として添加するアスファルト混合物を施工した際に十分な耐久性を有するようにアスファルトの配合割合を設定して製造する製造方法及びそのアスファルト混合物の施工方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るアスファルト混合物の製造方法は、パラフィン系炭化水素を主成分とする改質剤を添加してアスファルト及び骨材を混合するアスファルト混合物の製造方法において、改質剤を含むアスファルトの配合割合Ap(重量%)を以下に示す式により算出された値に設定して混合することを特徴とする。
p=As・(Vp/Vs1/3・(γp/γs
但し、
s;ストレートアスファルト及び骨材を混合したアスファルト混合物について実施したマーシャル安定度試験に基づく試験結果により設定されるアスファルトの配合割合(重量%)
s;ストレートアスファルト及び骨材を混合したアスファルト混合物についてマーシャル安定度試験を実施する際に作成される供試体の骨材間隙率(%)
γs;ストレートアスファルトの比重
p;改質剤を含むアスファルト及び骨材を混合したアスファルト混合物についてマーシャル安定度試験を実施する際に作成される供試体の骨材間隙率(%)
γp;改質剤を含むアスファルトの比重
【0012】
さらに、前記改質剤は、自己燃焼性を有する高分子系合成樹脂材料を熱分解して得られたものであることを特徴とする。さらに、前記改質剤を液状又は粒径が3mm以下の粒状で添加してアスファルト及び骨材とともに混合することを特徴とする。
【0013】
本発明に係るアスファルト混合物の施工方法は、上記の製造方法により製造されたアスファルト混合物を施工する施工方法において、二次転圧温度100℃〜120℃で転圧回数を6回行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、上記の構成を備えることで、パラフィン系炭化水素を改質剤として添加するアスファルト混合物を施工した際に十分な耐久性を有するようにアスファルトの配合割合を設定して製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施形態について詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に本発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【0016】
本発明に係る製造方法は、パラフィン系炭化水素を主成分とする改質剤(以下「パラフィン系改質剤」と略称する)を添加してアスファルト及び骨材を混合してアスファルト混合物を製造する。パラフィン系炭化水素は、融点が低く、アスファルト及び骨材を混合する温度(150℃程度)では低粘度になるため、従来のアスファルト混合物の製造工程でも混合が可能となる。
【0017】
パラフィン系炭化水素は、上述した特許文献1に記載されているように、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂やポリスチレン樹脂といった自己燃焼性を有する高分子系合成樹脂材料を燃焼させて熱分解することで生成することができる。こうした高分子系合成樹脂材料はケーブルの被覆材料として広く利用されていることから、ケーブルの廃棄物利用によりパラフィン系炭化水素を低コストで製造することができる。こうして製造されたものをパラフィン系改質剤として用いればよい。
【0018】
道路等の舗装材料としてアスファルト混合物を用いて施工する場合には、施工されたアスファルト混合物が長期間にわたって十分な耐久性を備える必要があり、そうした耐久性をチェックするためにアスファルト混合物に対してマーシャル安定度試験方法が実施される。
【0019】
マーシャル安定度試験方法の詳細については、社団法人日本道路協会編「舗装調査・試験法便覧」(項目B001)に記載されているように具体的な実施方法が決められている。まず、所定の骨材及びアスファルトを準備し、アスファルトの動粘度が所定の値になる温度を混合温度及び締固め温度に設定して、骨材及びアスファルトを混合して締固めを行って供試体を作成する。作成された供試体について、「アスファルト混合物の密度試験方法」(舗装調査・試験法便覧;項目B008)に従って密度を測定する。
【0020】
次に、作成された供試体に所定の変位速さで荷重を加え、加えた加重が減少に転じる際の荷重を最大荷重として測定し、荷重の印加開始時から最大荷重までの変形量を測定する。そして、測定された最大荷重から安定度(単位;kN)を算出する。また、荷重の印加開始時の変形量及び最大荷重の印加時の変形量の平均値からフロー値(単位;1/100cm)を算出する。
【0021】
アスファルト混合物の設計アスファルト量(アスファルトの配合割合;重量%)を設定する場合には、社団法人日本道路協会編「舗装施工便覧」(項目6−3−3;設計アスファルト量の設定、100頁〜104頁)に記載されているように、マーシャル安定度試験で得られた供試体の密度、安定度及びフロー値の外に空隙率(%)、飽和度(%)及び骨材間隙率(%)を以下の式により算出する。
空隙率(%);Vv=(1−Dm/Dt)×100
飽和度(%);Vfa=Va/(Va+Vv)×100
骨材間隙率(%);Vma=Vv+Wa・Dm/Da
ここで、Dmは供試体の密度(g/cm3)、Daはアスファルトの密度(g/cm3)、Dtは理論最大密度(g/cm3)、Vaはアスファルトの容積百分率(%)、Waはアスファルトの配合率(%)であり、Dt及びVaは所定の算出式より求めることができる。
【0022】
こうして算出された空隙率及び飽和度並びにマーシャル安定度試験法により得られた安定度及びフロー値に関して予め基準値が設定されており、これらの基準値をすべて満たすアスファルトの配合割合の共通範囲が設計アスファルト量として設定される。
【0023】
以上説明した設計アスファルト量の設定方法は、ストレートアスファルトを骨材と混合したアスファルト混合物を前提としたものである。そのため、上述したパラフィン系炭化水素を改質剤として添加したアスファルト混合物の場合には、ストレートアスファルトのみを使用した場合と特性が異なるため、設定されたアスファルトの配合割合をそのまま使用することができない。
【0024】
パラフィン系炭化水素を添加したアスファルト混合物の場合には、パラフィン系炭化水素が凝固する際の収縮率が大きいため、骨材の間隙が小さくなる傾向がある。そのため、上述した基準値を満たす設計アスファルト量が低く設定されるようになり、設定された設計アスファルト量をそのまま使用すると、混合するアスファルト量が少なくなって耐久性が不十分なものとなる。
【0025】
したがって、パラフィン系炭化水素を添加した場合には、混合するアスファルト量を増加して耐久性を向上させる必要があるが、アスファルト量が多くなりすぎると施工した際にアスファルトが表面に浮き出てアスファルト混合物が不均一になり、かえって耐久性が低下することになる。
【0026】
以上の点を踏まえて、パラフィン系炭化水素を添加したアスファルト混合物については、従来の設計アスファルト量とは別に適切な設計アスファルト量を設定しなければならない。上述したように、ストレートアスファルトのみ混合した場合に比べて骨材の間隙が収縮することから、適切な設計アスファルト量を設定する際に骨材間隙率の減少を考慮する必要がある。
【0027】
まず、骨材表面に形成されるアスファルトの膜厚μ(10-3mm)は、以下の式で算出される。
μ=A/(S・γ)
ここで、Aは設計アスファルト量(重量%)、Sは全骨材の単位重量当りの表面積(m2/kg)、γはアスファルトの比重である。
【0028】
ストレートアスファルトのみ混合した場合のアスファルト混合物については、膜厚μs、骨材間隙率Vsは以下の式により算出される。
μs=As/(S・γs
s=Vvs+Was・Dms/Das
ここで、Asはストレートアスファルトのみ混合した場合の設計アスファルト量、γsはストレートアスファルトの比重、Dmsはストレートアスファルトのみ混合したアスファルト混合物の供試体の密度、Dasはストレートアスファルトの密度、Vvsはストレートアスファルトのみ混合したアスファルト混合物の供試体の空隙率、Wasはストレートアスファルトの配合率である。骨材間隙率Vsについては、上述した骨材間隙率Vmaと同様に算出する。
【0029】
また、パラフィン系改質剤を添加した場合のアスファルト混合物については、膜厚μp、骨材間隙率Vpは以下の式により算出される。なお、全骨材の単位重量当りの表面積Sは、ストレートアスファルトのみ混合した場合と同一とし、設計アスファルト量については、パラフィン系改質剤及びストレートアスファルトの合計量に関する配合割合を示すものとする。
μp=Ap/(S・γp
p=Vvp+Wap・Dmp/Dap
ここで、Apはパラフィン系改質剤を添加した場合の設計アスファルト量、γpはストレートアスファルトにパラフィン系改質剤を添加したアスファルトの比重、Dmpはパラフィン系改質剤を添加したアスファルト混合物の供試体の密度、Dapはストレートアスファルトにパラフィン系改質剤を添加したアスファルトの密度、Vvpはパラフィン系改質剤を添加したアスファルト混合物の供試体の空隙率、Wasはストレートアスファルトにパラフィン系改質剤を添加したアスファルトの配合率である。骨材間隙率Vpについては、上述した骨材間隙率Vmaと同様に算出する。
【0030】
骨材間隙率は、骨材の間の容積(体積)に関するパラメータであり、アスファルトの膜厚は骨材の間の間隔(長さ)に関するパラメータである。したがって、長さ及び体積の関係により、膜厚の比は、骨材間隙率の比の3乗根と等しくなるものと仮定することができる。すなわち、以下の関係式を導くことができる。
μp/μs=(Vp/Vs1/3
この関係式に基づいて以下のとおり設計アスファルト量の関係式を導くことができる。
μp=μs・(Vp/Vs1/3
p/(S・γp)=As/(S・γs)・(Vp/Vs1/3
p=As・(Vp/Vs1/3・(γp/γs)・・・(式1)
【0031】
したがって、パラフィン系改質剤を添加した場合の適切な設計アスファルト量Apは、(式1)に基づいてマーシャル安定度試験方法等によるストレートアスファルトの設計アスファルト量Asに骨材間隙率の比の3乗根及び比重の比を掛けることで求めることができる。
【0032】
(式1)により設定された設計アスファルト量に基づいてアスファルト混合物を製造し、施工した場合の耐久性について実験を行った。アスファルト混合物は、最大粒径20mmの骨材を用いて密粒度アスファルト混合物を製造した。アスファルトは、ストレートアスファルトの量を100%として、パラフィン系改質剤の添加率を0%、2%、4%、6%、8%に設定して添加した5種類のものを用いた。なお、パラフィン系改質剤は、ケーブルの廃棄物を利用して公知の製造装置により製造された再生パラフィンを用いた。
【0033】
5種類のアスファルトを用いてマーシャル安定度試験を行い、設計アスファルト量A(重量%)、骨材間隙率V(%)を求めた。また、パラフィン系改質剤の添加率が0%の場合がストレートアスファルトのみ混合した場合に該当することから、添加率0%場合の設定アスファルト量及び骨材間隙率を用いて添加率2%〜8%の場合の設計アスファルト量Apを(式1)により算出した。なお、比重については、パラフィン系改質剤を添加した場合に、添加しない場合とほとんど変わらないものとして比重の比は1とした。算出結果を表1に示す。
【0034】
【表1】

表1の算出結果をみると、設計アスファルト量Aよりも(式1)による設計アスファルト量Apの方が配合割合が大きくなっていることがわかる。
【0035】
設計アスファルト量A及び設計アスファルト量Apに基づいて混合したアスファルト混合物についてホイールトラッキング試験方法に従って動的安定度(回/mm)を算出した。算出結果を表2に示す。
【0036】
【表2】

表2の算出結果をみると、添加率が2%及び4%では、従来の設計アスファルト量Aで設定されたアスファルト混合物の動的安定度が設計アスファルト量Apの場合に比べて若干上回っているが、動的安定度5000回/mmを超える流動防止の実用範囲においては、設計アスファルト量Apに基づいて混合したアスファルト混合物の動的安定度が設計アスファルト量Aの場合に比べて大きく上回っており、より適切な設計アスファルト量が設定されていることがわかる。
【0037】
以上のことから、(式1)により設計アスファルト量を設定することで、従来の設計アスファルト量の設定方法を利用しつつパラフィン系改質剤を添加した場合の適切な設計アスファルト量を正確かつ簡単に設定することが可能となった。
【0038】
こうして設定された設計アスファルト量に基づいてアスファルト混合物を製造する場合、実際の施工現場において、パラフィン系改質剤をストレートアスファルトに均一に混合することは時間的に難しいことから、骨材が投入されたミキサーにパラフィン系改質剤をストレートアスファルトと一緒に投入して混合する製造方法が好ましい。
【0039】
しかしながら、パラフィン系改質剤をストレートアスファルトと一緒に投入する場合短時間の間にパラフィン系改質剤がストレートアスファルトと均一に混合しなければ、均一な品質のアスファルト混合物を製造することができない。
【0040】
短時間でパラフィン系改質剤を混合するためには、パラフィン系改質剤を予め液状化又は粒径が3mm以下に粒状化して投入することが望ましい。パラフィン系改質剤を液状化して投入する場合には、投入する所定量の固形のパラフィン系改質剤を計量した後加熱容器に投入して液状化し、液状化したパラフィン系改質剤をミキサーにストレートアスファルトとともに投入すればよい。パラフィン系改質剤を粒状化して投入する場合には、固形のパラフィン系改質剤を予め破砕装置により粉砕して篩をかけて粒径が3mm以下のパラフィン系改質剤を準備する。そして、投入する量の粒状パラフィン系改質剤を計量した後ミキサーにストレートアスファルトとともに投入すればよい。
【0041】
粒径が3mm超のパラフィン系改質剤及び粒径が3mm以下の粒状パラフィン系改質剤並びに液状パラフィン系改質剤を添加したアスファルト混合物を製造し、施工した場合の耐久性について実験を行った。アスファルト混合物は、最大粒径20mmの骨材を用いて密粒度アスファルト混合物を製造した。アスファルトは、ストレートアスファルトの量を100%として、パラフィン系改質剤の添加率を4%、6%、8%に設定した。なお、パラフィン系改質剤は、ケーブルの廃棄物を利用して公知の製造装置により製造された再生パラフィンを用いた。
【0042】
まず、市販のアスファルトミキサー(出力37kw、55rpm)に骨材を投入した後ストレートアスファルト及び粒状又は液状のパラフィン系改質剤を一緒に投入し、加熱温度約175℃で約1分間撹拌混合した。混合したアスファルト混合物についてホイールトラッキング試験方法に従って動的安定度(回/mm)を算出した。算出結果を表3に示す。
【0043】
【表3】

表3の算出結果をみると、粒径3mm以下又は液状のパラフィン系改質剤を用いて製造したアスファルト混合物の動的安定度が粒径3mmを超える場合に比べて大きく上回っており、耐久性を大幅に向上させたアスファルト混合物が得られることがわかる。
【0044】
次に、パラフィン系改質剤を添加したアスファルト混合物を用いて舗装道路等に施工する場合について実験を行った。
【0045】
まず、液状パラフィン系改質剤を添加したアスファルト混合物を製造し、製造されたアスファルト混合物を施工する場合において、転圧温度と動的安定度との関係について実験を行った。なお、本実験では、ホイールトラッキング試験方法に基づいてアスファルト混合物を施工し、予備転圧における転圧温度を1次転圧温度とし、ローラ転圧における転圧温度を2次転圧温度としている。
【0046】
アスファルト混合物は、最大粒径20mmの骨材を用いて密粒度アスファルト混合物を製造した。アスファルトは、ストレートアスファルトの量を100%として、液状パラフィン系改質剤の添加率を8%に設定した。なお、パラフィン系改質剤は、ケーブルの廃棄物を利用して公知の製造装置により製造された再生パラフィンを用いた。
【0047】
市販のアスファルトミキサー(出力37kw、55rpm)に骨材を投入した後ストレートアスファルト及び液状パラフィン系改質剤を一緒に投入し、加熱温度約175℃で約1分間撹拌混合した。混合したアスファルト混合物についてホイールトラッキング試験方法に基づいて施工した。その際、ローラ転圧の転圧回数を6回として、ローラ転圧における2次転圧温度を80℃、100℃、120℃に設定して動的安定度(回/mm)を算出した。
【0048】
算出された動的安定度は、80℃で5,727回/mm、100℃で7,000回/mm、120℃で7,000回/mmであった。したがって、2次転圧温度が100℃以上であれば十分な動的安定度が得られることがわかる。また、120℃を超えるとタイヤローラにアスファルトが付着するようになるため、施工性を考慮すれば、2次転圧温度を100℃〜120℃に設定すればよい。
【0049】
次に、粒径が3mm以下の粒状パラフィン系改質剤を添加したアスファルト混合物を製造し、製造されたアスファルト混合物を施工する場合において、ローラ転圧の転圧回数をと動的安定度との関係について実験を行った。アスファルト混合物は、最大粒径20mmの骨材を用いて密粒度アスファルト混合物を製造した。アスファルトは、ストレートアスファルトの量を100%として、液状パラフィン系改質剤の添加率を5%に設定した。なお、パラフィン系改質剤は、ケーブルの廃棄物を利用して公知の製造装置により製造された再生パラフィンを用いた。
【0050】
市販のアスファルトミキサー(出力37kw、55rpm)に骨材を投入した後ストレートアスファルト及び粒状パラフィン系改質剤を一緒に投入し、加熱温度約175℃で約1分間撹拌混合した。混合したアスファルト混合物について、転圧機械として15tタイヤローラ及び25tタイヤローラを用い、ホイールトラッキング試験方法に基づいて、ローラ転圧における2次転圧温度110℃で、ローラ転圧の転圧回数を3回、6回、9回に設定して動的安定度(回/mm)を算出した。
【0051】
算出された動的安定度は、15tタイヤローラの場合、3回で2,250回/mm、6回で2,333回/mm、9回で2,100回/mmであった。また、25tタイヤローラの場合、3回で1,969回/mm、6回で3,000回/mm、9回で2,423回/mmであった。したがって、転圧回数が6回の場合に最も動的安定度が高くなることがわかる。
【0052】
以上説明したように、パラフィン系改質剤を添加したアスファルト混合物を製造する場合には、(式1)に基づいて設計アスファルト量を設定することで施工した際に十分な耐久性を備えることができる。また、アスファルト混合物を製造する際には、液状又は粒径が3mm以下のパラフィン系改質剤を添加するようにすれば、施工現場において短時間でパラフィン系改質剤を均一に混合したアスファルト混合物を製造することができる。さらに、製造したアスファルト混合物を施工する場合には、転圧工程において2次転圧温度100℃〜120℃で転圧回数を6回行うことで、十分な耐久性を確実に得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラフィン系炭化水素を主成分とする改質剤を添加してアスファルト及び骨材を混合するアスファルト混合物の製造方法において、改質剤を含むアスファルトの配合割合Ap(重量%)を以下に示す式により算出された値に設定して混合することを特徴とするアスファルト混合物の製造方法。
p=As・(Vp/Vs1/3・(γp/γs
但し、
s;ストレートアスファルト及び骨材を混合したアスファルト混合物について実施したマーシャル安定度試験に基づく試験結果により設定されるアスファルトの配合割合(重量%)
s;ストレートアスファルト及び骨材を混合したアスファルト混合物についてマーシャル安定度試験を実施する際に作成される供試体の骨材間隙率(%)
γs;ストレートアスファルトの比重
p;改質剤を含むアスファルト及び骨材を混合したアスファルト混合物についてマーシャル安定度試験を実施する際に作成される供試体の骨材間隙率(%)
γp;改質剤を含むアスファルトの比重
【請求項2】
前記改質剤は、自己燃焼性を有する高分子系合成樹脂材料を熱分解して得られたものであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記改質剤を液状又は粒径が3mm以下の粒状で添加してアスファルト及び骨材とともに混合することを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の製造方法により製造されたアスファルト混合物を施工する施工方法において、二次転圧温度100℃〜120℃で転圧回数を6回行うことを特徴とするアスファルト混合物の施工方法。

【公開番号】特開2011−74183(P2011−74183A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226375(P2009−226375)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(592029256)福井県 (122)
【出願人】(506100897)日広開発株式会社 (3)
【出願人】(509273282)株式会社辻広組 (1)
【出願人】(307007454)
【Fターム(参考)】