説明

アスファルト舗装混合物の製造方法

【課題】アスファルト舗装混合物の製造方法において、ナノ粒子であるカーボンブラックが、ダマにならず、アスファルトと均一に混ざりやすく、しかも品質の安定化を図る。
【解決手段】アスファルト舗装混合物の製造工程において、廃ゴム1から乾留して得られる炭化物2および/またはカーボンブラック3を、まず最初に石粉4と混合しておき、石粉の表面に均一に分散付着させると同時に石粉自体も炭化物のボールベアリング作用によって分散させた粉体5をプラントミキサーに投入し、他のアスファルト資材6と混合して、アスファルト舗装混合物7を製造する。尚、アスファルト舗装混合物7とは、排水性アスファルト舗装混合物、あるいは密粒アスファルト舗装混合物であり、また、廃ゴム1は、タイヤ、ドアシールのゴム、エンジンマウント等カーボンブラックを含有する廃ゴムから選ばれたものを利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般道路、高速道路等の舗装用のアスファルト舗装混合物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
排水性アスファルト舗装は、空隙率が密粒アスファルト舗装よりも著しく大きいため、路面から雨水を急速に表層下の不透水層に排水できる。そのため雨天時、車の走行時のスリップや水はねを生ずるハイドロプレーニング現象の軽減による車両の走行安定性の向上効果や騒音の軽減効果を有する。そのため、道路舗装の主流になりつつあるものである。
【0003】
この排水性アスファルト舗装は、20%〜25%の空隙を有しているため、ポーラス(多孔質)な構造となり、通常の密粒アスファルト舗装よりも強度・耐久性が低下しやすい。そのため、通常の舗装に用いられているストレートアスファルトの約3倍の価格である高粘度アスファルトを用いて品質の低下を最小にしている。それでも、車の走行によるすりへりやゴミ等によって、空隙の目詰まりや目つぶれが生じやすく、透水機能が低下しやすいという欠点があった。
【0004】
このような問題点を解決すべく、本発明者らは、廃ゴム(タイヤ、ドアシール等の廃ゴム)を乾留して得られる炭化物をより安価な低品質の改質II型アスファルトやストレート
アスファルトに添加したアスファルト混合物を作製し、高粘度アスファルトを使用した場合と同等の品質が得られる排水性アスファルト混合物を開発し、低コスト化を実現し、すでに本願の発明者および特許出願人は、特許を得ている。例えば、特許文献1のように。
【特許文献1】特許第3740643号公報
【0005】
このように、カーボンブラックを含有する廃ゴム乾留炭化物、または、カーボンブラックを、より安価な改質II型アスファルトに添加することによって、強度・耐久性が著しく
増大し、従来の高粘度アスファルトを用いた場合と同等の品質を得ることが出来た。
【0006】
しかしながら、上記のアスファルト舗装混合物を製造するに際して、練り混ぜ時に、乾留炭化物をプラントミキサーに砕石(粗骨材)、細骨材、石粉(フィラー)アスファルトと共に、同時に添加して練り混ぜた場合、ナノ粒子(粒子直径0.1μm以下、比表面積100,000〜200,000平方センチメートル/グラム)であるカーボンブラックは、凝集しやすく,即ち,ダマになりやすく、アスファルトと均一に混ざりにくい。そのため、混合物の品質にバラツキを生じやすいという欠点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、この発明は、ナノ粒子であるカーボンブラックが、ダマにならず、アスファルトと均一に混ざりやすく、品質の安定化を図ることのできるアスファルト舗装混合物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するためになされた本発明のアスファルト舗装混合物の製造方法は、 第1に、アスファルト舗装混合物の製造工程において、カーボンブラックおよび/または乾留炭化物を、プラントミキサーに投入する前に、石粉と混合しておき、次に、これらをアスファルト資材である,粗骨材、細骨材、アスファルトとプラントミキサーに投入して練り混ぜることを特徴とする。
第2に、アスファルト舗装混合物の製造工程において、廃ゴムから乾留して得られる乾留炭化物および/またはカーボンブラックと石粉との混合は、他のアスファルト資材との混合のためのミキサー投入前何時でもよく、あるいは、炭化物と石粉とを混合して貯蔵しておき、プレミックス混合物としていることを特徴とする。
第3に、廃ゴムが、カーボンブラックを含有した廃ゴムから選ばれたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明によると、廃ゴム乾留炭化物またはカーボンブラックを、はじめに、石粉と前もって混合した後、他の骨材やアスファルトなどのアスファルト資材と練り混ぜたアスファルト舗装混合物は、従来の炭化物混合方法より、強度・耐久性を向上させ、長寿命化を図ることができる。そして、このように、廃ゴム乾留炭化物またはカーボンブラックを石粉の一部と置換し、石粉と事前混合して、石粉表面に炭化物をまぶしておくことによって、炭化物の分散性が向上し、しかも、乾留炭化物と石粉は粉体であるため、乾留炭化物のボールベアリング作用により均一に混ざりやすい。乾留炭化物と石粉をプレミックスした混合物はアスファルトと混合した場合、アスファルト中で均一に分散し、ダマを生じにくい。このように混合した粉体を排水性アスファルト舗装、または密粒アスファルト舗装混合物製造時に添加することによって、カーボンブラックの架橋効果と紫外線遮蔽効果を十分発揮出来るようになり、強度・耐久性を向上させ長寿命化を図ることのできる等の有益な効果を奏する。
【0010】
即ち,第1に、乾留炭化物を、石粉の一部と置換し、石粉と前もって混合して、100μm(0.1mm)〜10μm(0.01mm)である石粉粒子表面に炭化物を付着させておくことによって、ダマの発生を低減し炭化物の分散性を高めると同時に、石粉の表面に付着した炭化物がボールベアリングの作用をして石粉を1つづつバラバラにして石粉粒子自体の分散性を高める。〔図1(c)参照〕
第2に、乾留炭化物と石粉は粉体であるので、均一に混ざりやすい。
第3に、超微粒子であるカーボンブラックを含有する乾留炭化物を、直接アスファルトと混合した場合、凝集してダマを生じやすく、均一に分散しない。そのため、アスファルト舗装混合物のホイルトラッキング試験による轍掘れ抵抗性は、図5に示すように、従来の同時混合の場合より乾留炭化物と石粉とを事前混合した場合の方がカーボンブラックの分散性が良く、動的安定性が高くなっていることが判明した。
【0011】
さらに、カーボンブラックは、紫外線遮蔽効果が大きく、炭化物と石粉を前もって混合し、均一にアスファルト中に炭化物を分散させたアスファルト舗装混合物の場合、紫外線劣化防止効果が大きいため、表層部アスファルトが剥離しにくく、目詰まりが生じにくい。そのため、排水機能が従来の排水性舗装より低下しにくく、長寿命化が図れるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明は、前述の解決手段に示された性質を利用して、アスファルト舗装混合物の製造方法を開発したものであり、この発明は、アスファルト舗装混合物の製造工程において、カーボンブラックおよび/または廃ゴム乾留炭化物を、プラントミキサーに投入する前に、石粉と混合しておき、次に、これらをアスファルト資材である粗骨材、細骨材、アスファルトとプラントミキサーに投入して練り混ぜて製造することを特徴とするアスファルト舗装混合物の製造方法であり、また、アスファルト舗装混合物の製造工程において、廃ゴムから乾留した炭化物と石粉との混合は、他のアスファルト資材との混合のためのミキサー投入前何時でもよく、あるいは、炭化物と石粉とを混合して貯蔵しておき、プレミックス混合物としていることを特徴とするアスファルト舗装混合物の製造方法から構成される。
【実施例】
【0013】
この発明の第一の発明の一実施例を、図1(a)および(b)に基づいて述べると、アスファルト舗装混合物の製造工程において、廃ゴム(1)から乾留して得られる炭化物(2)および/または、カーボンブラック(3)を、石粉(4)と事前混合してプレミックス粉体(5)を製造し、その後、他のアスファルト資材(6)と混合してアスファルト舗装混合物(7)を製造することを特徴とするアスファルト舗装混合物の製造方法から構成される。
【0014】
尚、アスファルト舗装混合物(7)とは、排水性アスファルト舗装混合物、あるいは密粒アスファルト舗装混合物であり、また、廃ゴム(1)は、タイヤ、ドアシールのゴム、エンジンマウント等カーボンブラックを含有する廃ゴムから選ばれたものを利用する。
【0015】
また、アスファルト舗装混合物(7)のアスファルトは、高粘度アスファルト、改質I型および改質II型、ストレートアスファルトから選ばれたものであり、さらに、廃ゴムか
ら乾留した炭化物は、廃ゴム乾留炭化物である。
【0016】
尚、石粉の一部を乾留炭化物で置換した混合物とは、重量%で、
砕石 75〜90%
細砂 3〜15%
石粉(4) 1〜 5%
乾留炭化物(2) 0.1〜 5%
である。
【0017】
また、アスファルト舗装混合物(7)において、アスファルト資材(6)に添加する乾留炭化物(2)と石粉(4)との混合が、ミキサー投入前、何時でもよく、あるいは、乾留炭化物(2)と石粉(4)とを混合して貯蔵しておき、ミキサー投入直前にアスファルト資材(6)と混合するものであってもよい。
【0018】
上記の発明の開発をするに当たり、アスファルト舗装混合物(7)のうち、排水性アスファルト混合物(7)の配合は、表1に示す。「CB」はカーボンブラック(3)である。
【0019】
この実施例では、下記、表1における(No1)に示す排水性アスファルト混合物の場合、乾留炭化物および/またはカーボンブラックを事前混合した場合である。
【0020】
また、他の実施例では、下記、表1における(No2)の配合、これらすべてのアスファルト資材を同時混合するものである。尚、No1とは、乾留炭化物と石粉事前混合であり、No2とは、全材料同時混合のことである。
【0021】
【表1】

【0022】
次に、上記配合の排水性アスファルト混合物の実験項目及び目的を述べると、
1)試験名「透水試験」実験目的は、排水性機能の評価
2)試験名「カンタブロ試験」実験目的は、骨材飛散抵抗性の評価
3)試験名「マーシャル安定度試験」実験目的は、静的安定度,強度の評価
4)試験名「ホイールトラッキング試験」実験目的は、動的安定度,轍掘れの評価
である。
【0023】
透水試験を行うにあたり、マーシャル供試体を用い、その上部から水を注入させ、10秒間に透水する水量を計測する。透水試験結果は図2に示す。基準値は、0.1 mm/secである。
【0024】
さらに、カンタブロ試験を行うにあたり、マーシャル供試体の質量を量り、ロサンゼルス試験機の中に入れ、300回回転させ取り出す。その後、質量を量り、試験前と試験後の質量の割合から損失率を出し、骨材飛散抵抗性の有無を測定する。尚、基準値は損失率20%以下である。このカンタブロ試験結果を図3のグラフ図で示す。
【0025】
この骨材飛散抵抗性に関して、基準値である損失率20%以下を乾留炭化物と改質II型
アスファルトを用いた場合は、どの混合方法においてもすべて満たしていた。
【0026】
全アスファルト資材を同時混合した場合、損失率が高くなった。これは同時混合の場合、超微粒子であるカーボンブラックが凝集してダマになりやすく、均一に分散されないため、アスファルトを結びつける架橋効果が十分に発揮できないためである。
【0027】
さらに、マーシャル安定度試験においては、60°Cのお湯に、30分水中浸漬させる。その後、試験機に取り付け、圧縮する。安定度(荷重)が減少し始めたら、試験機を止め、最大安定度とそのときの変形量を記録する。マーシャル安定度試験の結果は、図4に示す。基準値は、3.5kN以上である。
【0028】
そして、マーシャル安定度試験では、どの混合方法においても、基準値である3.5kN以上を十分に満たしていることが確認できた。
【0029】
また、ホイールトラッキング試験においては、マーシャル安定度試験と同様に、高温時(60°C)において、重交通道路を想定し、轍掘れの起きやすさをホイールトラッキング試験による動的安定度で評価した。排水性アスファルト舗装混合物供試体を作製し、試験開始の5時間以上前に60±2°Cの高温で養生した後に行う。ホイールトラッキング試験結果を図5に示す。動的安定度(DS)値の基準値は、通常の場合1500回/mm以上で大型車両が多い場合は3000回/mm以上である。〔DS値:1mmの深さの轍堀れが生じるのに要する鉄輪の走行繰り返し回数〕
【0030】
どの混合方法の場合でも、DS値が1500回/mmを超えており、一般道では実用できる結果になった。高速道路や大型車が走る舗装の基準値3000回/mmの場合では、同時混合の場合,基準値をみたすことができなかった。このことから乾留炭化物がアスファルト中で均一に分散していることが、極めて重要な条件であることが実証されている。
【0031】
以上のような結果となったのは、乾留炭化物と石粉との事前混合の場合、カーボンブラックが石粉の周囲にまぶされた状態となっているので、分散性能が向上しアスファルト中に均一に分散して架橋効果を発揮できるため、同時混合の場合より好結果が得られたものと思われる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
乾留炭化物および/または石粉をカーボンブラックと事前混合してから、他のアスファルト資材と混合する方法で製造した排水性アスファルト舗装混合物は、従来の舗装混合物の場合より、強度および耐久性を著しく増大できるため、すべての排水性アスファルト舗装に利用できるだけでなく、密粒性アスファルト舗装にも利用できる。従って、この発明の技術を確立し、実施・販売することにより、産業上利用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】この発明の一実施例を示し、(a),(b)はそれぞれアスファルト舗装混合物の製造フローを示す説明図であり、(c)は石粉の表面への乾留炭化物の付着状況を示す説明図である。
【図2】この発明の透水試験結果を示すグラフ図である。
【図3】この発明のカンタブロ試験結果を示すグラフ図である。
【図4】この発明のマーシャル安定度試験の結果を示すグラフ図である。
【図5】この発明のホイールトラッキング試験結果を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0034】
1 廃ゴム
2 乾留炭化物
3 カーボンブラック
4 石粉
5 乾留炭化物またはカーボンブラック添加石粉(プレミックス粉体)
6 アスファルト資材〔粗骨材(砕石),細骨材(細砂),アスファルト等〕
7 アスファルト舗装混合物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルト舗装混合物の製造工程において、カーボンブラックおよび/または乾留炭化物を、プラントミキサーに投入する前に、石粉と混合しておき、次に、これらをアスファルト資材である,粗骨材、細骨材、アスファルトとプラントミキサーに投入して練り混ぜることを特徴とするアスファルト舗装混合物の製造方法。
【請求項2】
アスファルト舗装混合物の製造工程において、廃ゴムから乾留して得られる乾留炭化物および/またはカーボンブラックと石粉との混合は、他のアスファルト資材との混合のためのミキサー投入前何時でもよく、あるいは、炭化物と石粉とを混合して貯蔵しておき、プレミックス混合物としていることを特徴とするアスファルト舗装混合物の製造方法。
【請求項3】
廃ゴムが、カーボンブラックを含有した廃ゴムから選ばれたものであることを特徴とする請求項1または2記載のアスファルト舗装混合物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−68218(P2009−68218A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−236484(P2007−236484)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(595075595)学校法人鶴学園 (11)
【出願人】(507306126)有限会社下岡タイヤ産業 (1)
【Fターム(参考)】