説明

アスベストの飛散防止固化方法

【課題】建物の壁、天井及び配管等に吹き付けられているアスベスト層或いは該アスベスト層を剥離除去した後の基材表面や隙間などに僅かに残存しているアスベストを長期間安全に封じ込めると共に、アスベスト層を剥離する際においても作業環境汚染を起こさないアスベストの飛散防止固化方法を提供する。
【解決手段】吹付けアスベスト面に、浸透性吸水防止剤を塗布浸透させ、次いで無機質塗料組成物を塗布してアスベスト除去を行い、更にアスベスト除去後の残存アスベスト面に浸透性吸水防止剤を塗布浸透させ、次いで無機質塗料組成物を塗布することによりアスベストの飛散防止固化を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建物の壁、天井及び配管等に吹付けられているアスベスト及び該アスベストを除去した後の表面や隙間などに僅かに残存しているアスベストの飛散を防止するアスベストの飛散防止固化方法に関する。
【技術背景】
【0002】
アスベストは耐熱性、断熱性に優れている繊維状鉱物であり、従来から建物の壁や天井等の断熱材料、防火材料、吸音材料として広く使用されてきた。このアスベスト繊維の微粉末は、作業中に飛散することは勿論、これを使用した断熱材料などが劣化すると、むき出しになったアスベスト繊維微粉末が空気中に舞う現象が生じた。
ところが、このように空気中に舞ったアスベストを長時間吸い続けると、アスベストが体内に蓄積されて重大な肺の障害、即ち、肺がんが生じることが解明されてきた。そのため、建造物等に施工したアスベストを排除することが大きな社会問題となってきている。
このようなアスベスト飛散から人体への影響を防止する方法が注目され、現在では様々なアスベスト汚染対策が実施されている。例えば、建造物等からアスベストを剥離除去する方法、アスベスト層表面をフイルム又はシートで覆う方法が一般に行われている。それでも複雑な建物からアスベストを十分に剥離除去するには難点があった。そのためアスベスト層へ塗装剤を直接塗布してアスベストを封じ込める方法も実施されている。
【0003】
特許文献1には、発泡性ケイ酸塩を、発泡性ケイ酸塩を変性させない水性ポリマーディスパージョンを主体とした塗剤に混入し、前記の混合物をアスベスト層表面に吹き付け或いは塗布してアスベスト層表面を発泡性ケイ酸塩を含有する防火層で被覆することによって、校舎、ビル等の天井や壁に耐火用及び防音用として吹き付けられているアスベストの飛散を防止する押さえ込み工法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、天井を構成しているボードの表面に設けられているアスベスト層にエアースプレーにより酢酸ビニルーアクリル系共重合エマルジョン、水酸化アルミニウム、顔料、その他の添加剤からなるコーティング剤を用いてコーティングし、天井に吹き付けられたアスベスト層を封じ込める方法が開示されている。
【0005】
特許文献3には、壁面や天井等にアスベスト層が吹き付けられている箇所に於いて、アスベスト層が壁面より剥離して浮き上がっている箇所に可とう性ポリアミドアミン、変性脂肪族ポリアミン等を用いた接着剤を注入して壁面とアスベスト層とを接着する工程、アスベスト層に液剤注入具を用いてエポキシエマルジョンのようなアスベスト結合剤を注入する工程、アスベストが一体化した後、その表面にエポキシ樹脂系塗料を塗布する工程、その表面に植毛用糊剤を塗布し、難燃性短繊維を植毛することによってアスベストの飛散防止を行うことが開示されている。
【0006】
特許文献4には、吹き付けアスベスト層に、ケイ酸アルカリ水溶液を塗布浸透させ、次いで多価金属化合物及び/又はアミノ酸を含有する硬化剤を塗布浸透固化させるアスベスト固化法が開示されている。
【0007】
特許文献5には、アスベストを含有する建造物の解体、改修並びに発生する粉塵の飛散を防止せしめる方法において、こんにゃく精粉もしくはその誘導体水溶液噴霧することにより表面での被膜形成を生じさせる粉塵の飛散防止方法が開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開平1−301571号公報
【特許文献2】特開平2−66264号公報
【特許文献3】特開平2−267176号公報
【特許文献4】特開平3−5385号公報
【特許文献5】特開平2−214584号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
建物の壁、天井及び配管等に耐火用及び防音用として吹き付けられているアスベスト層からアスベストが剥離して飛散しないようにするために、発泡性ケイ酸塩を含有する水性ポリマーディスパージョンをアスベスト層表面に吹き付けてアスベストを封じ込める方法、アスベスト層にエアースプレーにより酢酸ビニルーアクリル系共重合エマルジョン、水酸化アルミニウム、顔料、その他の添加剤からなるコーティング剤をアスベスト層表面に塗工すること、アスベスト層表面にエポキシ樹脂系塗料を塗布し、その表面に植毛用糊剤を塗布し、難燃性短繊維を植毛することによりアスベストの封じ込めと共に難燃性短繊維の植毛を行なう方法、吹き付けアスベスト層に、ケイ酸アルカリ水溶液を塗布含浸させ、次いで多価金属化合物及び/又はアミノ酸を含有する硬化剤を塗布浸透固化させるアスベスト固化法及びアスベストを含有する建造物の解体、改修並びに発生する粉塵の飛散を防止する方法において、こんにゃく精粉もしくはその誘導体水溶液を建造物に噴霧する方法等が前記の特許文献1乃至5に記載されている。
【0010】
しかしながら、従来の塗工剤によるアスベスト層封じ込め塗装では、塗工剤がアスベスト層の内部まで充分に浸透しないため、塗装面が長期間風雨に曝されると、塗工剤面に亀裂が生じる場合があり、そこから雨水が浸透して劣化が始まり、アスベスト層が露出する心配があった。また、塗工剤面が太陽光や熱に曝される状況下において耐候性、耐熱性において必ずしも満足されるものではなかった。
そのため、建造物等からアスベスト層を剥離除去する工法も既に実施されている。このようなアスベストの剥離による除去においては、複雑な隙間に入り込んでいるアスベストまで完全に除去することは極めて困難であった。
こうした残存アスベストを封じ込める手段として前記の特許文献に開示された塗工剤を塗布する方法も試みられているが、このような塗工剤は浸透性が満足されるものでなく、複雑な隙間に残存するアスベストまでを長期間完全に封じ込めることは極めて困難であった。
【0011】
本発明は、建物の壁、天井及び配管等に吹き付けられているアスベスト層或いは該アスベスト層を剥離除去した後の基材表面や隙間などに僅かに残存しているアスベストを長期間安全に封じ込めると共に、アスベスト層を剥離する際においても作業環境汚染を起こさないアスベストの飛散防止固化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記の問題点を解決すべく種々研究を重ねた結果、吹付けアスベスト層へ、まず、浸透性吸水防止剤を含浸させ、更にその上に無機質塗料を塗工することによりアスベスト層内部或いは複雑な隙間に残存するアスベスト層に浸透性吸水防止剤が入り込んで被覆され、更にその表面が耐候性や耐熱性のある無機質塗料層によって覆われるため、仮に表面耐熱性塗料層に亀裂が生じたとしてもそこからアスベスト層の内部まで結露水、雨水等が浸漬しないこと、或いは、無機質塗料組成物と浸透性吸水防止剤からなる塗工剤を吹付けアスベスト層或いはアスベスト除去面に塗布することにより浸透性吸水防止剤は塗料と分かれて残存アスベスト面に浸透し、塗料は表面層に残りアスベスト除去面が完全に固定化されることを知見して本発明に到達した。
【0013】
すなわち、本発明は以下の方法を提供するものである。
(1)吹付けアスベスト面に、浸透性吸水防止剤を塗布浸透させ、次いで無機質塗料組成物を塗布することを特徴とするアスベストの飛散防止固化方法。
(2)アスベスト除去後の残存アスベスト面に浸透性吸水防止剤を塗布浸透させ、次いで無機質塗料組成物を塗布することを特徴とするアスベストの飛散防止固化方法。
(3)無機質塗料組成物55〜90重量%、浸透性吸水防止剤10〜45重量%含有する塗工剤を、吹付けアスベスト面又はアスベスト除去後の残存アスベスト面に塗布することを特徴とするアスベストの飛散防止固化方法。
(4)無機質塗料組成物が合成樹脂エマルジョン、吸着性不燃材及びアルミナセメントを主成分とすることを請求項1乃至3に記載のアスベストの飛散防止固化方法。
(5)浸透性吸水防止剤がシラン系浸透性吸水防止剤、ポリウレタン樹脂系浸透性吸水防止剤、エポキシ樹脂系浸透性吸水防止剤、シリコン系浸透性吸水防止剤、アクリルウレタン系浸透性吸水防止剤から選ばれた少なくとも1種である請求項1乃至3に記載のアスベストの飛散防止固化方法。
(6)無機質塗料組成物がアクリル樹脂エマルジョン塗料、エポキシ樹脂エマルジョン塗料、フッ素樹脂エマルジョン塗料等の水分散系塗料、ウレタン樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、フッ素樹脂塗料、シリコンアクリル樹脂塗料、エポキシウレタン樹脂塗料、シリコン樹脂塗料等の有機溶媒系塗料である請求項1乃至4に記載のアスベストの飛散防止固化方法。
本発明は上記の(1)乃至(6)の方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明のアスベストの飛散防止固化方法は、吹付けアスベスト層へ、まず、浸透性吸水防止剤を含浸させ、更にその上に無機質塗料を塗工することによりアスベスト層内部或いは複雑な隙間に残存するアスベスト層に浸透性吸水防止剤が入り込んで被覆され、更にその表面が耐候性や耐熱性のある無機質塗料層によって覆われるため、仮に表面耐熱性塗料層に亀裂が生じたとしてもそこからアスベスト層の内部まで結露水、雨水等が浸漬しないこと、或いは無機質塗料組成物と浸透性吸水防止剤からなる塗工剤を吹付けアスベスト層或いはアスベスト除去面に塗布することにより浸透性吸水防止剤は塗料と分かれてアスベスト層或いは残存アスベスト面に浸透し、無機質塗料は表面層に残りアスベスト層が完全に固定化される。アスベストが固化された表面は耐熱性、耐候性を有する塗膜で覆われているので、熱や結露、風雨等の劣化によってアスベストが表面に露見されることがなく、長期間に渡ってアスベスト層或いはアスベスト除去面の残存アスベストを飛散させずに固定化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明で使用する浸透性吸水防止剤とは、塗布により吹付けアスベスト層の内部まで浸透してアスベスト層へ水等が浸透するのを防止するもので、特に浸透性に優れたものが用いられる。具体的には、シラン系浸透性吸水防止剤、ポリウレタン樹脂系浸透性吸水防止剤、エポキシ樹脂系浸透性吸水防止剤、シリコン系浸透性吸水防止剤及びアクリルウレタン系浸透性吸水防止剤等が挙げられる。これらの中でもアルコキシシラン、アルキル・アルコキシシラン等のシラン系浸透性吸水防止剤が好ましく用いられる。
【0016】
本発明において用いられる無機質塗料組成物は、特に制限されなく、例えば、アクリル樹脂エマルジョン塗料、エポキシ樹脂エマルジョン塗料、フッ素樹脂ョン塗料等の水分散系塗料、ウレタン樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、フッ素樹脂塗料、シリコンアクリル樹脂塗料、エポキシウレタン樹脂塗料、シリコン樹脂塗料等の有機溶媒系塗料が挙げられる。
【0017】
これらの塗料組成物中には、本発明の効果を阻害しない範囲で、吸着性不燃材としての無機系材料が配合されている。例えば、シリカ、アルミナ、タルク、マイカ、酸化亜鉛、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、セラミック、滑石、シラスバルーン、硅砂、ベントナイト、パーライト、軽石、火山灰から選ばれる天然鉱物、及びバーミキュライト等が配合される。
【0018】
本発明では耐熱性、耐候性被膜形成材料としてアルミナセメントが用いられる。アルミナセメントとは、石灰石とボーキサイトまたはバン土ケッ岩とを配合し、平炉、ロータリーキルン、電気炉などで、半溶融または溶融状態にまで焼成しクリンカーとする。これを急冷し、微粉砕したもので、化学組成は、SiO6.4〜8.0%、Al51.3〜53.4%、Fe1.2〜5.3%、CaO31.4%〜39.9%、その他0.8〜2.1%である。耐火性に優れ、ポルトランドセメントより硫酸に浸食されにくいなど、化学的侵食に対して高抵抗性を有する。
【0019】
また、塗料組成物中には必要に応じて着色顔料が配合される。例えば、アゾ系顔料、銅フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサジン系顔料等の有機顔料、酸化チタン、黄鉛、クロムバーミリオン、群青、酸化鉄、複合酸化物系焼成顔料等の無機顔料及びカーボンブラック等を挙げることができる。
さらに、顔料分散剤、レベリング剤、沈降防止剤、たれ防止剤、防腐剤、防黴剤などの添加剤を単独あるいは併用して配合することができる。
【0020】
本発明においては、ハジキ防止性や浸透性をより高めるために水との相溶性がある親水性有機溶媒や界面活性剤を添加することができる。
このような親水性有機溶媒としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジアセトンアルコール、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、グリセリン等が挙げられる。
【0021】
また界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性イオン系界面活性剤等を挙げることができる。
【0022】
本発明の浸透性吸水防止剤及び無機質塗料組成物を塗装する際の施工方法としては特に限定されず、刷毛塗り、スプレー塗装、ローラー塗装、ロールコーター等従来公知の塗装方法を用いることができる。浸透性吸水防止剤の塗布量は、アスベスト剥離後の基体の粗密差により異なるが、一般的に20g〜250g/mの範囲で塗装される。更にその上に塗装される無機質塗料組成物の塗布量は50g〜300g/mの範囲で一回または二回塗装される。同様に無機質塗料組成物、浸透性吸水防止剤からなる塗工剤の場合も50g〜300g/mの範囲で一回または二回塗装される。
【実施例】
【0023】
次に実施例によって本発明を具体的に説明するが、これによって本発明は何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0024】
複数のスリット模様を有するセメントモルタル基板(80mm×80mm×7mm)のスリット模様面にアスベストが20〜25mm厚で吹き付けられた基板をテストピースとして準備した。
次いで、上記テストピースのアスベスト面にシラン系浸透性吸水防止剤(商品名:アクアプルーフ 東亜合成化学社製品)を刷毛で100g/m塗布し、5時間乾燥を行なった。さらに、下記の無機質塗料組成物を調製した。
アルミナ粉末 30重量部
アルミナセメント 100重量部
アクリル樹脂エマルジョン(固形分40重量%) 100重量部
上記の割合で配合した配合物に適量の水を加えて常温においてミキサーで20分間混練して無機質塗料組成物を調製した。
次いで、上記の無機質塗料組成物をシラン系浸透性吸水防止剤塗布面にスプレーで二回塗布してアスベスト層を封じ込めた後、常温で10日間放置して乾燥し、アスベスト層を固化した。次いで、無機質塗料被膜面に布粘着テープを貼着して剥離テストを行った。その結果、塗膜の剥離は全く認められなかった。更にテストピースを水中へ1ヶ月間浸漬した後、乾燥して布粘着テープを貼着して剥離テストを行った結果、塗膜の剥離は認められなかった。
【実施例2】
【0025】
複数のスリット模様を有するセメントモルタル基板(80mm×80mm×7mm)のスリット模様面にアスベストが20〜25mm厚で吹き付けられた基板をテストピースとして準備した。
次いで、上記テストピースのアスベスト面にシラン系浸透性吸水防止剤(商品名:ダイステンダー2000 大日精化工業株式会社製品)をスプレーで100g/m塗布し、10時間乾燥を行なった。さらに、下記の無機質塗料組成物を調製した。
パーライト 30重量部
アルミナ粉末 30重量部
アルミナセメント 100重量部
エチレンー酢酸ビニル共重合エマルジョン
(固形分45重量%) 100重量部
上記の割合で配合した配合物に適量の水を加えて常温においてミキサーで20分間混練して無機質塗料組成物を調製した。
次いで、上記の無機質塗料組成物をシラン系浸透性吸水防止剤塗布面にスプレーで二回塗布してアスベスト層を封じ込めた後、常温で10日間放置して乾燥し、アスベスト層を固化した。次いで、無機質塗料被膜面に布粘着テープを貼着して剥離テストを行った。その結果、塗膜の剥離は全く認められなかった。更にテストピースを水中へ1ヶ月間浸漬した後、乾燥した結果、塗膜の剥離、ヒビ割れはなかった。また、布粘着テープを貼着して剥離テストを行った結果、塗膜の剥離は認められなかった。
【実施例3】
【0026】
実施例1と同様のテストピースのアスベスト面にシラン系浸透性吸水防止剤(商品名:アクアプルーフ 東亜合成化学工業社製品)50重量部、アクリルエマルジョン塗料(商品名:アルストップ 神東塗料社製品)50重量部からなる混合塗料組成物を120g/m量を刷毛で塗布し、さらにその上にアクリル樹脂系無機質塗料をスプレー塗装し、アスベスト層を固化した。
次いで、無機質塗料被膜面に布粘着テープを貼着して剥離テストを行った。その結果、塗膜の剥離は全く認められなかった。更にテストピースを水中へ1ヶ月間浸漬した後、乾燥した結果、塗膜の剥離、ヒビ割れはなかった。また、布粘着テープを貼着して剥離テストを行った結果、塗膜の剥離は認められなかった。
【実施例4】
【0027】
複数のスリット模様を有するセメントモルタル基板(80mm×80mm×7mm)のスリット模様面にアスベストが20〜25mm厚で吹き付けられた基板をテストピースとして準備した。
次いで、防塵設備のされた室内において、防塵服、防塵マスク、メガネ、手袋を着用して前記テストピースのアスベストを剥離ナイフで除去する。しかしながら、テストピース表面から完全にアスベストを除去することは極めて困難であり、特にアスベスト除去後のスリット模様部分には依然除去しきれないアスベストがかなり残存していた。
次いで、前記セメントモルタル基板のアスベストが残存している面に、シラン系浸透性吸水防止剤(商品名:アクアプルーフ 東亜合成化学社製品)を刷毛で100g/m塗布し、5時間乾燥を行なう。さらにこの面に耐候性を有するアクリルウレタン系樹脂塗料(商品名:EPコート 中国塗料社製品)を150g/mスプレー塗装し、常温で24時間乾燥して残存アスベスト面を固化したセメントモルタル基板を得た。
次いで、塗料被膜面に布粘着テープを貼着して剥離テストを行った。その結果、塗膜の剥離は全く認められなかった。更にテストピースを水中へ1ヶ月間浸漬した後、乾燥した結果、塗膜の剥離、ヒビ割れはなかった。また、布粘着テープを貼着して剥離テストを行った結果、塗膜の剥離は認められなかった。
【実施例5】
【0028】
実施例4と同様の方法によりセメントモルタル基板のアスベストが残存している面に、シリコン系浸透性吸水防止剤(商品名:トスバリア100 東芝シリコン社製品)を刷毛で80g/m塗布し、5時間乾燥を行なう。さらにこの面にアクリルシリコーン系樹脂塗料(商品名:ベルタイト 日本油脂社製品)を120g/mスプレー塗装し、常温で24時間乾燥して残存アスベスト面を固化したセメントモルタル基板を得た。
次いで、塗料被膜面に布粘着テープを貼着して剥離テストを行った。その結果、塗膜の剥離は全く認められなかった。更にテストピースを水中へ1ヶ月間浸漬した後、乾燥した結果、塗膜の剥離、ヒビ割れはなかった。また、布粘着テープを貼着して剥離テストを行った結果、塗膜の剥離は認められなかった。
【実施例6】
【0029】
実施例4と同様の方法によりセメントモルタル基板のアスベストが残存している面に、シラン系浸透性吸水防止剤(商品名:タイトシラン 東洋インキ製造社製品)を刷毛で80g/m塗布し、5時間乾燥を行なう。
さらにこの面に下記組成の塗料組成物を刷毛で60g/mを2回塗布し、常温で24時間乾燥して残存アスベスト面を固化したセメントモルタル基板を得た。
アルミナ粉末 30重量部
アルミナセメント 100重量部
アクリル樹脂エマルジョン(固形分40重量%) 100重量部
上記の割合で配合した配合物に適量の水を加えて常温においてミキサーで20分間混練して塗料組成物を調製した。
次いで、塗料被膜面に布粘着テープを貼着して剥離テストを行った。その結果、塗膜の剥離は全く認められなかった。更にテストピースを水中へ1ヶ月間浸漬した後、乾燥した結果、塗膜の剥離、ヒビ割れはなかった。また、布粘着テープを貼着して剥離テストを行った結果、塗膜の剥離は認められなかった。
【比較例1】
【0030】
パーライト 30重量部
アルミナ粉末 30重量部
ポルトランドセメン 100重量部
アクリル樹脂エマルジョン(固形分40重量%) 100重量部
上記の割合で配合した配合物に適量の水を加えて常温においてミキサーで20分間混練して塗工剤を調製した。
次いで、実施例1と同様のテストピースのアスベスト層表面に上記の塗工剤をスプレーで二回塗布してアスベスト層を封じ込めた後、常温で10日間放置して乾燥した。次いで、塗工剤被膜面に布粘着テープを貼着して剥離テストを行った。その結果、塗膜の一部が剥離してアスベスト層が現れた。さらにテストピースを切断して断面を調べた結果、塗工剤はアスベスト層内部まで浸透されてなく、アスベスト層は充分固定化されていなかった。
【比較例2】
【0031】
実施例1と同様の方法によりセメントモルタル基板のアスベストが残存している面に、シラン系浸透性吸水防止剤の塗布を行なわず直接アクリルウレタン系樹脂塗料(商品名:EPコート 中国塗料社製品)を150g/mスプレー塗装し、常温で24時間乾燥して残存アスベスト面を固化したセメントモルタル基板を得た。
次いで、塗料被膜面に布粘着テープを貼着して剥離テストを行った。その結果、塗膜の一部が剥離してアスベスト層が現れた。さらにテストピースを切断して断面を調べた結果、塗工剤はアスベスト層内部まで浸透されてなく、アスベスト層は充分固定化されていなかった。
【比較例3】
【0032】
実施例4の塗料組成物からシラン系浸透性吸水防止剤を除いてアクリルエマルジョン系水性塗料(商品名:アルストップ 神東塗料社製品)を実施例4と同様のセメントモルタル基板のアスベストが残存している面に刷毛で100g/mを2回直接塗布し、常温で24時間乾燥して残存アスベスト面を固化したセメントモルタル基板を得た。
次いで、塗料被膜面に布粘着テープを貼着して剥離テストを行った。その結果、塗膜の一部が剥離してアスベスト層が現れた。さらにテストピースを切断して断面を調べた結果、塗工剤はアスベスト層内部まで浸透されてなく、アスベスト層は充分固定化されていなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吹付けアスベスト面に、浸透性吸水防止剤を塗布浸透させ、次いで無機質塗料組成物を塗布することを特徴とするアスベストの飛散防止固化方法。
【請求項2】
アスベスト除去後の残存アスベスト面に浸透性吸水防止剤を塗布浸透させ、次いで無機質塗料組成物を塗布することを特徴とするアスベストの飛散防止固化方法。
【請求項3】
無機質塗料組成物55〜90重量%、浸透性吸水防止剤10〜45重量%含有する塗工剤を、吹付けアスベスト面又はアスベスト除去後の残存アスベスト面に塗布することを特徴とするアスベストの飛散防止固化方法。
【請求項4】
無機質塗料組成物が合成樹脂エマルジョン、吸着性不燃材及びアルミナセメントを主成分とすることを請求項1乃至3に記載のアスベストの飛散防止固化方法。
【請求項5】
浸透性吸水防止剤がシラン系浸透性吸水防止剤、ポリウレタン樹脂系浸透性吸水防止剤、エポキシ樹脂系浸透性吸水防止剤、シリコン系浸透性吸水防止剤、アクリルウレタン系浸透性吸水防止剤から選ばれた少なくとも1種である請求項1乃至3に記載のアスベストの飛散防止固化方法。
【請求項6】
無機質塗料組成物がアクリル樹脂エマルジョン塗料、エポキシ樹脂エマルジョン塗料、フッ素樹脂エマルジョン塗料等の水分散系塗料、ウレタン樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、フッ素樹脂塗料、シリコンアクリル樹脂塗料、エポキシウレタン樹脂塗料、シリコン樹脂塗料等の有機溶媒系塗料である請求項1乃至4に記載のアスベストの飛散防止固化方法。

【公開番号】特開2007−218071(P2007−218071A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−196183(P2006−196183)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【出願人】(592263698)株式会社エビハラ (4)
【Fターム(参考)】