説明

アスベスト封じ込め用コーティング材及びこのコーティング材のコーティング方法。

【課題】 建物の壁等に付着しているアスベストを躯体に固着させるとともに、その表面を覆って封じ込めるアスベスト封じ込め用コーティング材と、このコーティング材を効果的に塗布するコーティング方法を提供する。
【解決手段】 コーティング材は、オルガノシロキサンオリゴマー、触媒、シラン化合物及びチタン化合物を少なくとも含んでおり、25°Cでの粘度が50mpa・s以下であり、コーティング方法は、アスベスト層にエアレス吹き付けにて切れ目なく含浸させた後、ローラー刷毛にて再度切れ目なく塗布する重ね塗り工程と、自然乾燥又は強制乾燥によって塗布ゾーンを乾燥させる乾燥工程とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスベスト封じ込め用コーティング材及びこのコーティング材のコーティング方法に関し、特に、不燃性で防火性能に優れた耐久性のあるコーティング層を比較的簡単で、かつ溶剤を使用することなく得られる一液型のアスベスト封じ込め用コーティング材及びこのコーティング材のコーティング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アスベスト飛散に関してここ数年社会問題化される中において、アスベスト被害を防ぐには、アスベストを完全除去するのが一番望ましい。しかし、実際には対策を施さなければならない膨大なアスベストが存在することから、完全除去は難しいし、仮に完全除去できたとしても、アスベスト産廃処理にも問題がある。そこで、最近、アスベスト封じ込め材料が出現しており、シリコン樹脂や高分子からなる材料を表面に塗布する方法が提案されている。
【0003】
しかし、上記の方法ではアスベスト層の内部まで含浸して躯体とアスベスト層の接着強度を高めるまでの浸透性は期待できず、また、高分子からなる材料を表面に塗布したものでは防火性能にも問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、浸透性のよい樹脂をアスベスト層に吹き付けし、アスベスト層に含浸して躯体とアスベスト層の接着強度を高めるとともに、耐久性のあるコーティング層を比較的簡単に得られるようにしたものであり、これにおいて、溶剤を使用することのない一液型のアスベスト封じ込め用コーティング材及びこのコーティング材のコーティング方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のアスベスト封じ込め用コーティング材は、請求項1に記載した、オルガノシロキサンオリゴマー、触媒、シラン化合物及びチタン化合物を少なくとも含んでおり、25℃での粘度が50mp・s以下のものを基材とする。また、本発明のコーティング方法の基本は、請求項7に記載したように、このコーティング材をアスベスト層にエアレス吹き付けにて切れ目なく含浸させた後、ローラー刷毛にて再度切れ目なく塗布する重ね塗り工程と、自然乾燥又は強制乾燥によって塗布ゾーンを乾燥させる乾燥工程とを備えたものである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1のコーティング材によれば、その高浸透性によってアスベスト層に強力に浸透して躯体表面まで達し、その高接着性によってアスベストを躯体に接着させる。したがって、アスベストの遊離や飛散を防ぐことができる。また、可燃性のものを含まないから、防火性にも優れるものになるし、塗料でもあるから、壁などの化粧直しも可能になる。さらに、溶剤などを使用しない一液型であるから、安全で環境保護に適したものになるし、取扱性にも優れる。一方、請求項7のコーティング方法によれば、簡単で短時間に塗布ができる。加えて、吹付けはエアレスであるから、作業時にアスベストを飛散させるようなこともない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のアスベスト封じ込め用コーティング材は、(a)オルガノシロキサンオリゴマー、(b)触媒、(c)シラン化合物及び(d)チタン化合物を含み、(e)25℃での粘度が50mpa・s以下のものである。そこで、まず、アスベスト封じ込め用コーティング材の各成分について詳細に説明する。
【0008】
(a)オルガノシロキサンオリゴマー
オルガノシロキサンオリゴマーは、
1 3 SiO(R1 2 SiO)i SiR1 3 ‥(1)
(式中、R1 は水素原子、水酸基、ハロゲン原子、炭素数1〜8の1価の有機基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。なお、i は1から40の数を表わす。)で表されるオルガノシロキサンオリゴマー及びその誘導体である。また、誘導体としては、オルガノシロキサンオリゴマーの加水分解物及びオルガノシロキサンオリゴマーの縮合物が挙げられる。なお、このようなオルガノシロキサンオリゴマーは、1種単独で用いても2種以上混合して用いてもよい。
【0009】
1 を構成するハロゲン原子としては、フッ素、塩素などが挙げられる。
【0010】
1 を構成する炭素数1〜8の有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、メトキシ基やエトキシ基などのアルコキシル基、フェニル基などが挙げられる。
【0011】
また、R1 は、その一部がハロゲン原子、アミノ基、エボキシ基、カルボキシル基、水酸基、メタクリル基、メルカプト基、フェニル基、ビニル基などの置換基によって置換されていてもよく、これらの置換基の一部が上記の置換基によって更に置換されていてもよい。
【0012】
これらのうち、ケイ素原子が加水分解性基及び/又は水酸基と結合した構造を含有するオルガノシロキサンオリゴマー、例えば、アルコキシシランの縮合物又はクロロシランの縮合物が好ましい。このようなオルガノシロキサンオリゴマーは、本発明に係るアスベスト封じ込め用コーティング材を硬化する際に、シラン化合物、チタン化合物と共縮合して固定化する。そのため、安定なコーティング層を得られる。
【0013】
なお、オルガノシロキサンオリゴマーとしては、上記の化合物を調製して使用してもよいし、市販されているものを使用してもよい。市販されているオルガノシロキサンオリゴマーとしては、例えば、信越化学工業株式会社製のKC89SやKR400、GE東芝シリコーン株式会社製のXC96ーB0446、XR31ーB2230などが挙げられる。なお、これらのオルガノシロキサンオリゴマーは、そのまま使用してもよく、加水分解して使用してもよい。
【0014】
オルガノシロキサンオリゴマーはベース樹脂であるので、これの量を100重量部であるとして比較の基準にする。
【0015】
(b)触媒
触媒としては、酸性化合物、アルカリ性化合物、塩化合物、アミン化合物、有機金属化合物及び/又はその部分加水分解物(以下、有機金属化合物及び/又はその部分加水文分解物をまとめて「有機金属化合物類」という)が挙げられる。なお、このような触媒は、1種単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0016】
酸性化合物としては、例えば、酢酸、塩酸、硫酸、リン酸などが挙げられる。
【0017】
アルカリ性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。
【0018】
塩化合物としては、ナフテン酸、オクチル酸などのアルカリ金属塩などが挙げられる。
【0019】
アミン化合物としては、例えば、アミノシラン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、アルキルアミン塩類、四級アンモニウム塩類などが挙げられる。また、エポキシ樹脂の硬化剤として使用できる各種変性アミンなども挙げられる。
【0020】
有機金属化合物類としては、例えば、ジーnーブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、nーブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウムなどの有機ジルコニウム化合物、ジーiープロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジーiープロポキシ・ビス(アセチルアセテート)チタニウムなどの有機チタン化合物、ジーiープロポキシ・アセチルアセトナトアルミニウム、iープロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウムなどの有機アルミニウム化合物、(C492 Sn(OCOC11232 、(C492 Sn(SCH2 COOC8172 、(C492 Sn(SCH2 CH2 COOC8172 などの有機スズ化合物及びこれらの部分加水分解物が挙げられる。
【0021】
触媒は、上記の化合物を調製して使用してもよいし、市販されているものを使用してもよい。市販されている触媒としては、テトラアルコキシチタンの重合物(部分加水分解物)である信越化学株式会社製Dー20が挙げられる。
【0022】
触媒の量は、オルガノシロキサンオリゴマー100重量部に対して、0.1〜40重量部、好ましくは0.5〜35重量部、更に好ましくは1〜30重量部が好ましい。触媒の量が上記上限を超えると、貯蔵安定性が悪くなり、硬化速度がきわめて早くなるため、コーティング材の塗布作業が困難となる可能性がある。また、触媒の量が上記下限を超えると、硬化速度が極めて低下し、塗り重ね時間、硬化養生時間が長くなる。また、極端な場合には、硬化不良で本来の硬度発現ができなくなる可能性がある。
【0023】
(c)シラン化合物
シラン化合物は、
2 m SiR3 4-m ‥(2)
(式中、R2 は、水素原子又は炭素数1〜8個の1価の有機基を表し、R3 はハロゲン原子、水酸基又は炭素数1〜8個の1価のアルコキシル基を表しており、複数個存在するときは、互いに同じものであっても異なるものであってもよい。なお、mは0〜3の整数である。)で表されるシラン化合物及びその誘導体である。また、誘導体としては、シラン化合物の加水分解物、シラン化合物の縮合物が挙げられる。なお、このようなシラン化合物は、1種単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0024】
2 を構成する炭素数1〜8の有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、ビニル基、フェニル基などが挙げられる。
【0025】
また、R2 の一部をビニル基、エボキシシ基、スチリル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、アミノ基、ウレイド基、ハロゲン原子、メルカプト基、スルフィド基、イソシアネート基、カルボキシル基等の置換基によって置換してもよい。
【0026】
3 を構成するハロゲン原子としては、フッ素、塩素などが挙げられる。また、R3 を構成する炭素数1〜8個の1価のアルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、nープロポキシ基、iープロポキシ基等が挙げられる。
【0027】
このような(c)シラン化合物としては、具体的には、テトラメトキシシランなどのテトラアルコキシシラン類、メチルトリメトキシシランなどのトリアルコキシシラン類、ジメチルジメトキシシランなどのジアルコキシシラン類、トリメチルメトキシシランなどのモノアルコキシシラン類、トリクロルシランなどのクロルシラン類などが挙げられる。
【0028】
これらのうち、トリアルコキシシラン類、トリクロルシラン類が好ましく、中でも、有機系物質と化学結合する反応基及び無機系物質と化学反応する反応基の両方を備えたシランカップリング剤が好ましい。これは、シランカップリング剤が硬化を促進し、架橋性、接着性向上の効果を付与するためである。
【0029】
なお、このようなシランカップリング剤としては、具体的には、ビニルトリクロルシラン、3ーグリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3ーグリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3ーメタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3ーアクリロキシプリピルトリメトキシシラン、3ーアミノプロピルトリメトキシシラン、pースチリルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0030】
シラン化合物は、上記の化合物を調製して使用してもよいし、市販されているものを使用してもよい。市販されているシラン化合物としては、例えば、信越化学工業株式会社製のKBMー403が挙げられる。なお、シラン化合物は、そのまま使用してもよく、加水分解して使用してもよい。
【0031】
本発明において、シラン化合物は、オルガノシロキサンオリゴマー100重量部に対して、0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜15重量部、更に好ましくは1.5〜10重量部が好ましい。シラン化合物の量が上記上限を超えると、ひび割れや表面ブリードアウト発生の可能性がある。また、シラン化合物の量が上記下限を超えると、接着不良、架橋不良の原因となる可能性がある。
【0032】
(d)チタン化合物
チタン化合物は、
4 n Ti(OR54-n ‥(3)
(式中、R4 は、炭素数1〜8個の有機基を表し、複数個存在するときは同一であっても異なっていてもよい。R5 は、炭素数1〜6個のアルキル基、炭素数1〜6個のアシル基およびフェニル基からなる群から選択される有機基を表す。なお、複数個存在するときは同一であっても異なっていてもよい。nは0〜3の整数である。)で表されるチタンアルコレート及びその誘導体並びに上記式(3)で表されるチタンアシレート及びその誘導体である。なお、これらのチタン化合物は、1種単独であっても、任意の2種以上の混合物であってもよい。
【0033】
チタンアルコレート及びチタンアシレート誘導体としては、これらの加水分解物及び縮合物、これらのキレート化合物、これらのキレート化合物の加水分解物及び縮合物が挙げられる。
【0034】
上記式(3)において、R4 は炭素数1〜8個の有機基であり、具体的には、メチル基、エチル基、nープロピル基、iープロピル基などのアルキル基、アセチル基、プロピオニル基などのアシル基などが挙げられる。
【0035】
また、R4 は、その一部が、例えば、ハロゲン原子、アミノ基、水酸基によって置換されていてもよく、これらの置換基の一部が上記の置換基によって更に置換されていてもよい。
【0036】
チタンアルコレートとして、具体的には、テトラーiープロポキシチタニウム、テトラーnープトキシチタニウム、テトラーtープトキシチタニウム、ジーiープロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジーiープロポキシ・ビス(アセチルアセテート)チタニウム、ジーiープロポキシ・ビス(ラクテタート)チタニウム、ジーiープロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタニウム、ジーnープトキシ・ビス(トリエタノールアミナート)チタニウム、ジーnープトキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタニウム、テトラキス(2ーエチルヘキシルオキシ)チタニウムなどが挙げられる。これらのうち、ジーiープロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタニウムが好ましい。
【0037】
また、チタンアシレート及びチタンアシレートのキレート化合物として、具体的には、ジヒドロキシ・チタンジブチレート、ジーiープロポキシ・チタンジアセテート、ビス(アセチルアセトナト)・チタンジアセテート、ビス(アセチルアセトナト)・チタンジプロピオネート、ジーiープロポキシ・チタンジプロピオネート、ジーiープロポキシ・チタンジマロニエート、ジーiープロポキシ・チタンジベンゾイレート、ジーnープトキシ・ジルコニウムジアセテート、ジーiープロピルアルミニウムモノマロニエートなどが挙げられる。これらのうち、ジヒドロキシ・チタンジブチレート、ジーiープロポキシ・チタンジアセテートが好ましい。
【0038】
チタンアルコレート及びチタンアシレートのキレート化合物は、これらとβージケトン類、βーケトエステル類などのキレート化剤とを反応させることによって得られる。また、チタンアルコレート及びチタンアシレートの加水分解物及び縮合物又はこれらのキレート化合物の加水分解物及び縮合物は、チタンアルコレート及びチタンアシレート、又はこれらのキレート化合物に水を添加することによって得られる。
【0039】
チタン化合物は、上記の化合物を調製して使用してもよいし、市販されているものを使用してもよい。市販されているチタンアルコレートの縮合物としては、日本曹達株式会社製Tー50等が挙げられる。
【0040】
本発明に使用できるチタン化合物の量は、オルガノシロキサンオリゴマー100重量部に対して、0.1〜50重量部、好ましくは1〜40重量部、更に好ましくは2〜30重量部が好ましい。チタン化合物の量が上記上限を超えると、透明性が低下する可能性がある。また、チタン化合物の量が上記下限を超えると、汚れ防止性能、撥水機能が低下する可能性がある。
【0041】
(e)粘度
本発明のアスベスト封じ込め用コーティング材の粘度は25℃に於ける粘度が50mPa・s以下であり、中でも1〜50mPa・s の範囲内であることがより好ましい。これは、粘度が高くなりすぎると、流動性が劣り、浸透性及び含浸性能が落ちるからである。なお、粘度は回転粘度計など、通常の粘度測定に使用される測定装置によって測定した値である。
【0042】
なお、本発明のアスベスト封じ込め用コーティング材は、その粘度が低く一液性であるため、噴射剤、例えば、液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル(DME)、フロン類、窒素ガス、炭酸ガスなどと混合してスプレー缶に封入し、エアゾールとして使用することもできる。
【0043】
次に、上記のコーティング材を使用するコーティング方法について説明する。まず、このコーティング方法は(イ)スプレー吹き工程、(ロ)重ね塗り工程、(ハ)乾燥工程の3つの工程に分けられる。そこで、以下にこの詳細について説明する。
【0044】
(イ)スプレー吹き工程
まず、アスベスト層にエアレス(ノズル径0.3〜0.6mm)にてスプレー吹きを行い、アスベスト層に間隔を置きながら5〜6往復吹き付けを行いながら、内部に含浸させて施工を行う。ただし、アスベスト層が2cm以上の場合は、エアレスのノズルをアスベスト層に吹き付け後、ノズルをアスベスト層に5mm程埋め込み、低圧で注入を行い、躯体までコーティング材が含浸する様に吹き付ける。
【0045】
また、有効塗布量は吹付け終了後に残るコーティング材の量のことであり、塗布したコーティング材の使用量を塗布面積で除算することにより算出できる。
【0046】
(ロ)重ね塗り工程
スプレー吹き工程の完了後、ローラー刷毛にてコーティング材を塗布する。
【0047】
また、重ね塗り工程は、スプレー吹き工程の完了後10分から120分経った後に行うと、シラノール化反応が進行し、コーティング膜が強固に一体化するので好ましい。
【0048】
(ハ)乾燥工程
目的とするすべての塗布ゾーンに対して重ね塗り工程が完了した後、そのまま放置して自然乾燥するか又は強制乾燥する。自然乾燥の場合は、例えば、外気が直接当たらない屋内の換気設備のある場所で、1〜2時間以上、好ましくは3時間以上放置する。強制乾燥の場合は、15分以上、好ましくは30分から60分程度自然乾燥した後、熱風式乾燥機、赤外線中波乾燥機、赤外線短波(遠赤外線)乾燥機などを用いて、乾燥機中の槽内雰囲気温度が50℃〜150℃、好ましくは60℃〜70℃となるように5分から60分、好ましくは15分程度乾燥する。
【0049】
このように、本発明によるアスベスト封じ込め用コーティング材及びコーティング方法を利用すれば、アスベスト封じ込めと不燃性の防火性能に優れた耐久性のあるコーティング層を、溶剤を使用しないことによってホルムアルデヒド等の発生がなく、比較的簡単に得られる。
[実施例]
【0050】
以下に本発明を実施例に従って説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例中において粘度は25℃での値を示す。
【実施例1】
【0051】
(試料の調整)
置換基がメチル基であり、加水分解性アルコキシ基がメトキシ基であるKC89S(信越化学株式会社製、粘度2mPa・s)100gとエポキシシランKBMー403(信越化学株式会社製)0.5gと、ジーiープロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタニウムTー50(日本曹達株式会社製)5gと、チタン触媒Dー20(信越化学株式会社製)3gとをマグネチックスターラーで均一になるまで攪拌して、粘度が5mPa.sのアスベスト飛散防止保護用コーティング材(試料1)を得た。
【0052】
オルガノシロキサンオリゴマーとしてメチルメチル型のKR500を使用したことを除いて、試料1と同様の組成・手順により、粘度が75mPa・sのアスベスト封じ込めコーティング材(試料2)を得た。
【0053】
ジーiープロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタニウムを加えなかった点を除いて、試料1と同様の組成・手順により、粘度4mPa・sのアスベスト封じ込め用コーティング材(試料3)を得た。
【実施例2】
【0054】
(初期性能試験)
試料1、2、3のアスベスト封じ込め用コーティング材を磨き鋼板にスプレー吹きを行い塗布完了した後、それぞれ60分間後にローラー刷毛にて重ね塗りを同様の方法によって行った。
【0055】
このようにして作製した塗布見本を25℃で7日養生した後、重ね塗り密着性、塗布膜厚について調べた。その結果を表1に示す。なお、塗り重ね密着性はJIS K 5600 5ー6碁盤目試験に従って評価した。また、塗布膜厚は、塗布したコーティング材の重量と密度から体積を算出し、反応後の体積減量を20%として計算により求めた。
【0056】
【表1】

【実施例3】
【0057】
試料1のアスベスト封じ込め用コーティング材をスレート板(試験体100×100mm)にスプレー吹きを行い、塗布完了した後、60分間後にローラー刷毛にて塗り重ねを行った。このようにして作製した塗布見本を約25℃で7日養生した後、ガスバーナーの炎の直噴射による不燃性試験(内部試験)を行った。その結果を表2に示す。
【0058】
【表2】

【実施例4】
【0059】
試料1のアスベスト封じ込め用コーティング材をスレートの上に実施例3と同様の方法でスプレー吹きとローラー刷毛重ね塗りを行い、作製した塗布見本を25℃で7日養生したのち、耐候性試験を行った。試験方法はウエザーメーター2000時間と長期間屋外に暴露して調べた。その結果を表3に示す。
【0060】
【表3】

【実施例5】
【0061】
(成分量決定試験)
コーティング材を構成するオルガノシロキサンオリゴマー(実施例1に記載のKC89S)、触媒(信越化学株式会社製のリン酸とオルガノシロキサンとの混合体X40ー2309A及び実施例1に記載のDー20)、シラン化合物(実施例1に記載のKBMー403)及びチタン化合物(実施例1に記載のTー50)の割合が、コーティング材の性質に与える影響を調べるため、これらの量が異なる試料4から試料15を実施例1と同じようにして調製し、指触乾燥時間、硬化性、鉛筆硬度、接着性、塗り重ね性のそれぞれについて試験した。その結果を以下の(I)から(III)に示す。
【0062】
ここで、上記各試験は、気温25℃の室温で、各試料を有効塗布量が40g/m2 となるようスプレー吹きとローラー刷毛重ね塗りしたスレートを使用して次のように行った。まず、指触乾燥時間は、指で触って付着しなくなるまでの時間を測定した。また、硬化性は、塗布2時間後の塗膜にカーボンを付着させた後、濡れた綿布で拭き取って評価した。なお、各表中の記号の意味は、○:完全除去、△:薄く残った、×:除去不能、である。また、鉛筆硬度は、24時間後及び7日後にJIS K5600 5ー4引っかき硬度(鉛筆法)に従って評価した。さらに、接着性は、JIS K5600 5ー6碁盤目試験に従って評価した。塗り重ね試験は、スプレー吹きを行い、ローラー刷毛重ね作業性、塗膜の透明性、平滑性を観察し、感覚と目視により評価した。なお、各表中の記号は、スプレー吹きと重ね塗りの塗布膜が上記基準を満たすことが、○:容易、△:やや困難、×:不能であることを意味している。
【0063】
(I)触媒量の影響
表4に示すように、コーティング材に加える触媒の量を変えたところ、触媒の量が少ない場合(試料4)には硬化に時間がかかるとともにコーティング層の硬度が低くなり、反対に、触媒量が多い場合(試料7)にはコーティング材の塗り重ねが難しかった。また、オルガノシロキサンオリゴマー100重量部に対する触媒の量が0.5〜30重量部の範囲では良好な性質を示した。
【0064】
【表4】

【0065】
(II)シリコン化合物量の影響
表5に示すように、シリコン化合物の量が少ない場合(試料8)にはコーティング層の接着性が低下してスレートから剥がれ易くなり、反対に、シリコン化合物の量が多い場合(試料11)は硬化に時間がかかるとともに、コーティング層の硬度が低かった。また、オルガノシロキサンオリゴマー100の重量部に対するシリコン化合物の量が0.1〜20重量部の範囲では良好な性質を示した。
【0066】
【表5】

【0067】
(III)チタン化合物の影響
表6に示すように、チタン化合物の量が多い場合(試料15)はコーティング材の塗り重ねが難しかった。また、オルガノシロキサンオリゴマー100重量部に対するチタン化合物の量が0.1〜50重量部の範囲では良好な性質を示した。
【0068】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
オルガノシロキサンオリゴマー、触媒、シラン化合物及びチタン化合物を少なくとも含んでおり、25°Cでの粘度が50mpa・s以下であるアスベスト封じ込め用コーティング材。
【請求項2】
オルガノシロキサンオリゴマーが、置換基を一個以上有する請求項1に記載のアスベスト封じ込め用コーティング材。
【請求項3】
触媒が、酸化合物、アルカリ化合物、塩化合物、有機金属化合物である請求項1又は2に記載のアスベスト封じ込め用コーティング材。
【請求項4】
シラン化合物が、少なくともシランカップリング剤を含んでいる請求項1から3のいずかに記載のアスベスト封じ込め用コーティング材。
【請求項5】
シラン化合物が、グリシジル基、アミノ基、ビニル基のいずれかの官能基を有する請求項1から4のいずれかに記載のアスベスト封じ込め用コーティング材。
【請求項6】
チタン化合物が、ジーiープロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタンである請求項1から5のいずれかに記載のアスベスト封じ込め用コーティング材。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載のアスベスト封じ込め用コーティング材を、アスベスト層にエアレス吹き付けにて切れ目なく含浸させた後、ローラー刷毛にて再度切れ目なく塗布する重ね塗り工程と、
自然乾燥又は強制乾燥によって塗布ゾーンを乾燥させる乾燥工程と、
を備えたアスベスト封じ込め用コーティング材のコーティング方法。
【請求項8】
塗布ゾーンのアスベスト層への有効塗布量が100g〜500g/m2 である請求項7記載のアスベスト封じ込め用コーティング材のコーティング方法。
【請求項9】
エアレス吹付け工程を作業開始から60分以内に完了させ、エアレス吹付け工程終了後10分から120分放置してシラノール化反応を進行させた後、重ね塗り工程を行う請求項7又は8に記載のアスベスト封じ込め用コーティング材のコーティング方法。
【請求項10】
乾燥工程が、3時間以上の自然乾燥を行う工程、又は自然乾燥を30分から60分間行った後、50℃〜150℃で5〜60分間強制乾燥する工程である請求項7から10のいずれかに記載のアスベスト封じ込め用コーティング材のコーティング方法。

【公開番号】特開2008−120967(P2008−120967A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−308989(P2006−308989)
【出願日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【出願人】(503186397)
【Fターム(参考)】