説明

アスベスト廃棄物の溶融処理方法

【課題】アスベスト廃棄物の性状そして状況に応じて、アスベスト廃棄物を溶融装置において円滑に溶融処理できる方法を提供することを課題とする。
【解決手段】アスベスト廃棄物発生場所Iにて情報記録表示手段P1にアスベスト廃棄物情報を記録表示し、アスベスト廃棄物を収納する容器Pに該情報記録表示手段P1を装着する情報記録工程と、アスベスト廃棄物溶融処理場所IIにて上記情報記録表示手段P1のアスベスト廃棄物情報を読み取る情報読取工程と、読み取られたアスベスト廃棄物情報に基づき、溶融装置10の運転条件を決定する溶融装置運転条件決定工程と、決定された運転条件に基づき溶融装置10の運転を制御する溶融装置運転制御工程とを、有するアスベスト廃棄物の溶融処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスベスト廃棄物を効率よく溶融処理することができるアスベスト廃棄物の溶融処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アスベスト(石綿)は、天然の繊維性鉱物で、耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性などの優れた特性を有しており、従来は建材、建築物の保護剤や種々の保温材などとして広範囲で使用されていたが、現在は発癌性等の人体の健康に対する影響が指摘され、2006年労働安全衛生法改正によってアスベストの製造は一部の特定分野を除いて原則禁止されている。
【0003】
アスベストの多くは、建築物で使われており、特に、アスベストを含む建材が多く使用された1960〜1970年代の建築物や工作物などが30〜40年の経年劣化や老朽化により、更新や改修の時期を迎え、今後、建築物の解体や改修工事に際してアスベスト廃棄物の発生が増加することが予想されている。
【0004】
アスベストを含む建材としてスレート板、外装材、床タイルがあるが、繊維状のアスベストが、CaO-SiO2等からなるマトリックスに一様に分散して成形材となっている。また、建築物に用いられているアスベストを含む他の材料としては、他に、吹き付け材、保温材、断熱材および耐火被覆材等があり、マトリックスが不定形もしくは可撓性のセラミックス系材料であり、マトリックス中に繊維状のアスベストが一様に分散している。
【0005】
アスベストの種類には、蛇紋岩系のクリソタイル、角閃石系のクロシドライト、アモサイト、アンソフィライト、トレモライト、アクチノライトがあるが、アスベスト廃棄物に含まれるアスベストとしては、クリソタイルがその90%近くを占めている。実際のアスベスト廃棄物を調査、分析するとクロシドライト、アモサイトの他、角閃石系のアンソフィライト、トレモライト、アクチノライトが含まれることがある。
【0006】
これらのようなアスベストを含む建材等が建築物や工作物から除去され、アスベスト廃棄物として解体・除去現場から発生する。
【0007】
建築物や工作物からのアスベスト除去に際しては、微細な繊維であるアスベストの飛散を防ぐため、解体作業の規則が法律により制定されており、遮蔽され管理された管理区域内で作業することになっている。
【0008】
除去作業後、発生したアスベスト廃棄物は、飛散防止措置をとることが義務付けられているため、耐水性材料で二重梱包されるか、保管容器に梱包されてから後に、収集・運搬される。
【0009】
収集・運搬されたアスベスト廃棄物は、その多くは現在のところ埋立処分されているが、埋立処分場の枯渇化、管理費用の増大等の問題から埋立処分には限界がある。一方、溶融施設で溶融処理されるものもあるが、アスベスト廃棄物を溶融して無害化処理して生成したスラグは、一部は路盤材等に利用されたり、通常の産業廃棄物として埋立処分されたりしている。
【0010】
アスベスト廃棄物の溶融処理に関しては、特許文献1に記載されているプラズマ式溶融炉等が知られている。
【0011】
特許文献1の処理方法によると、溶融炉内の溶融スラグ層表面に灰を主体とする未溶融層を形成し、該未溶融層上にアスベスト廃棄物が落下するように該アスベスト廃棄物を溶融炉内に投入し、溶融炉内に適宜投入された灰とともに該アスベスト廃棄物を溶融処理している。
【0012】
特許文献1の記載によると、アスベスト廃棄物を灰とともに溶融処理するので、被溶融物の溶流点が低下し、アスベスト廃棄物を単独で溶融処理する場合に比べて低い温度で完全溶融することができ、灰の性状は安定しているため、これと混合して溶融することにより運転の安定化が図れる。
【特許文献1】特開2007−307548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
アスベスト廃棄物のマトリックスとなるセラミックス系材料は、融点が1200℃程度と比較的低い。アスベスト廃棄物の溶融処理において、比較的融点の低いマトリックスは、溶融炉内温度を1300℃程度にすると軟化、溶融を開始するが、アスベスト自体は融点が高いため、溶融炉内温度が1300℃程度では溶融せず、1400℃以上の高温域で、マトリックスが溶融し形成された溶融相に、アスベスト表面から徐々に溶解する過程を経て溶融される。
【0014】
そこで、アスベスト廃棄物の溶融処理に際しては、特許文献1ではスラグ成分を調整するために副資材として焼却灰等を投入して溶融物であるスラグの融点を低下させたり、溶融スラグの流動性を調整して溶融炉からの排出を円滑に行えるようにしている。
【0015】
特許文献1では、アスベスト廃棄物と副資材としての焼却灰を混合して溶融しており、その手段の一つとして、アスベスト廃棄物の塩基度を測定し、その塩基度に基づいて、溶融炉の操業条件である焼却灰投入量やアスベスト廃棄物投入量を制御する方法が述べられている。
【0016】
しかし、アスベスト廃棄物の成分は酸性から塩基性まで幅広く存在し、さらに、アスベスト廃棄物中のアスベスト含有率も幅広い範囲があり、含有されているアスベストの種類も違う場合がある。そのため、アスベスト廃棄物の溶融処理を円滑に行うためには、アスベスト廃棄物の塩基度のみならず、アスベスト含有率やアスベストの種類も把握しなければ、溶融炉においてアスベスト廃棄物を円滑に溶融処理するために、溶融炉の操業条件である焼却灰投入量やアスベスト廃棄物投入量やエネルギー供給量を制御することは困難である。
【0017】
また、特許文献1では、アスベスト廃棄物の塩基度を測定しているが、アスベスト廃棄物は溶融処理設備に搬入された時点では、飛散を防止するため二重の耐水袋に梱包して搬入されており、梱包されたまま溶融炉に投入される。そのため、塩基度を知るため分析するのにアスベスト廃棄物の一部を採取するので、その際にアスベスト廃棄物の飛散を防止するための特別な処置をとらなければならならず、溶融処理施設に特別な区画を設けて分析を行うこととなり、実施することは困難である。
【0018】
また、複数のアスベスト廃棄物発出場所で収集され運搬されてきたアスベスト廃棄物を溶融処理施設で受入れる際に、梱包されているアスベスト廃棄物の容器毎にアスベスト廃棄物に関する情報を得てこれを書面で管理することは、煩雑であり実施することは困難である。
【0019】
また、アスベストを含む建材等を建築物や工作物から除去する際に、飛散防止のためにウォタージェット工法を用いる場合にはアスベスト廃棄物は水分を多く含み50%程度になることがある。水分率の高いアスベスト廃棄物をそのまま溶融炉に供給すると炉内状況が悪化し操業に支障が生じるため、アスベスト廃棄物を溶融炉に供給する前に乾燥装置により乾燥して水分率を低くしておく必要がある。アスベスト廃棄物の水分率は建築物や工作物から除去する際に用いられる工法や、アスベスト建材の種類等により異なるため、アスベスト廃棄物の水分率に応じて乾燥装置の運転条件を制御する必要がある。しかし、アスベスト廃棄物は溶融処理設備に搬入された時点では、飛散を防止するため梱包して搬入されており、梱包されたまま乾燥装置に投入されることが好ましいため、乾燥装置に供給する前にアスベスト廃棄物の水分率を計測することは困難である。
【0020】
本発明は、このような従来技術の事情に鑑み、煩雑な作業が不要で、アスベスト廃棄物の性状そして状況に応じてアスベスト廃棄物を溶融装置において円滑に溶融処理できるアスベスト廃棄物の溶融処理方法を提供することを目的とし、また、アスベスト廃棄物を乾燥装置において円滑に乾燥処理して溶融処理できるアスベスト廃棄物の溶融処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、アスベスト廃棄物発生場所にて情報記録表示手段にアスベスト廃棄物情報を記録表示し、アスベスト廃棄物を収納する容器に該情報記録表示手段を装着する情報記録工程と、アスベスト廃棄物溶融処理場所にて上記情報記録表示手段のアスベスト廃棄物情報を読み取る情報読取工程と、読み取られたアスベスト廃棄物情報に基づき、溶融装置の運転条件を決定する溶融装置運転条件決定工程と、決定された運転条件に基づき溶融装置の運転を制御する溶融装置運転制御工程とを有することを特徴とする。
【0022】
本発明において、アスベスト廃棄物情報は、マトリックス組成情報、アスベストの種類そしてアスベスト廃棄物のアスベスト含有率であり、かかるアスベスト廃棄物情報に基づき、溶融装置運転条件決定工程と、溶融装置運転制御工程を行なうようにすることができる。
【0023】
本発明において、溶融装置の運転条件決定工程では、アスベスト廃棄物のマトリックス組成情報から求められたマトリックス組成物の融点と、アスベストの種類と、アスベスト廃棄物中のアスベスト含有率とに基づき、溶融装置の最適溶融温度を求め、溶融装置運転制御工程では、溶融装置の溶融温度を上記最適溶融温度にするように、溶融装置への供給エネルギー量と副資材の供給量の制御を行なうことが好ましい。
【0024】
アスベスト含有建材はマトリックス中にアスベストが分散している。アスベスト含有建材が用いられている施設からアスベスト含有建材を解体、除去しアスベスト廃棄物が発生する。
【0025】
本発明では、溶融処理されるべきアスベスト廃棄物についての情報、すなわち、マトリックス組成の組成比率、アスベスト種類、アスベスト含有率を、アスベスト廃棄物発生場所にて、アスベスト廃棄物が収納されている容器または袋に装着された情報記録表示手段、例えば、タグ等に直接的または間接的に記録し、溶融処理される場所で溶融処理する際にその情報を読み取り、それに基づき適切な運転条件として溶融装置の溶融温度、副資材の供給量を決定して、その運転条件になるように溶融装置を制御する。
【0026】
本発明において、アスベスト廃棄物情報として、アスベスト含有建材の種類によりマトリックス組成比率とアスベスト種類を特定する。
【0027】
先ず、マトリックス組成比率として、MgO, CaO, Fe2O3, Al2O3,SiO2などの化合物名とその比率、さらには、アスベスト廃棄物中のアスベスト含有率をアスベスト廃棄物発生場所(管理区域内)で簡易計測して求める。本発明において、アスベスト廃棄物発生場所とは、建築物等の解体場所のみならずアスベスト廃棄物を保管しておく場所をも含み、要は溶融処理のためにアスベスト廃棄物を搬出するすべての場所を称する。
【0028】
本発明において、情報記録工程では、アスベスト廃棄物発生場所にて、アスベスト廃棄物の情報、すなわち、マトリックス組成比率、アスベスト種類、アスベスト含有率を、アスベスト廃棄物が収納されている容器または袋に装着されたタグ等の情報記録表示手段に直接的または間接的に記録する。
【0029】
次に、アスベスト廃棄物溶融処理場所における情報読取工程で、上記タグ等の情報記録表示手段のアスベスト廃棄物情報を読み取り、読み取られたアスベスト廃棄物情報に基づき溶融装置運転条件決定工程で溶融装置運転条件を決定する。
【0030】
溶融装置運転条件決定工程における溶融装置の運転条件としての溶融装置の溶融温度は、アスベスト廃棄物のマトリックス組成比率から、アスベスト廃棄物のマトリックス組成物の融点を求め、このマトリックス組成物の融点と、アスベスト種類と、アスベスト廃棄物中のアスベスト含有率との3種の情報に基づき、溶融装置の最適溶融温度として求められる。この最適溶融温度を求めるには、予め3種の情報から最適溶融温度を導く関係表、図又はプログラムを作成しておく。
【0031】
溶融装置運転制御工程においては、溶融装置の溶融温度を最適溶融温度にするように、溶融装置へのアスベスト廃棄物の供給量に対応して、溶融装置への供給エネルギー量と副資材の供給量を制御する。この制御のためには、予め溶融温度から供給エネルギー量と副資材の供給量を導く関係表、図又はプログラムを作成しておく。
【0032】
本発明は、アスベスト廃棄物情報として、アスベスト廃棄物中の水分率をも含み、読み取られたアスベスト廃棄物情報に基づき、溶融装置運転制御工程前に、乾燥装置の運転条件を決定する乾燥装置運転条件決定工程と、決定された乾燥運転条件に基づき乾燥装置の運転を制御する乾燥装置運転制御工程をも有することを特徴としている。
【0033】
アスベスト含有建材を建築物や工作物から除去する際に、水を用いてアスベスト廃棄物の飛散を防止することがあり、その場合にはアスベスト廃棄物は水分を多く含む。建材あるいは除去工法の種類によりアスベスト廃棄物の水分率を大まかに特定することができる。例えば、ウォタージェット工法を用いる場合にはアスベスト廃棄物の水分率は50%程度である。かかるアスベスト廃棄物水分率の特定方法としては、アスベスト廃棄物をアスベスト廃棄物の排出場所で遠赤外線水分計により簡易に測定したり、サンプリングして加熱前後の重量変化からアスベスト廃棄物の水分率を測定により特定することもできる。
【0034】
本発明では、アスベスト廃棄物の発生場所での情報記録工程でアスベスト廃棄物情報としてアスベスト廃棄物の水分率もタグ等の情報記録表示手段に直接的または間接的に記録され、アスベスト廃棄物溶融処理場所での情報読取工程で、タグに直接的または間接的に記録されたアスベスト廃棄物情報を読み取り、読み取られたアスベスト廃棄物情報のうち水分率に基づき乾燥装置運転条件決定工程で乾燥装置の運転条件を決定する。本発明において、乾燥装置としては、例えば、電気加熱乾燥炉、燃料燃焼式乾燥炉などを用いることができ、乾燥装置の運転条件としては乾燥装置温度、乾燥装置滞留時間すなわち乾燥時間が挙げられる。これらを、アスベスト廃棄物の水分率に基づき決定し、乾燥装置運転制御工程で、乾燥装置の運転を制御する。乾燥装置温度、乾燥時間は、予めアスベスト廃棄物の種類と水分率の情報から適切な乾燥装置温度、乾燥時間を導く関係表、図又はプログラムを作成しておき、これにより定められる。乾燥装置運転制御工程では、乾燥装置の温度を最適温度にするように、乾燥装置へのアスベスト廃棄物の供給量に対応して、乾燥装置への供給エネルギー量とアスベスト廃棄物の炉内滞留時間(アスベスト廃棄物の炉内移動速度)を制御する。
【発明の効果】
【0035】
本発明は、以上説明したように、解体現場等のアスベスト廃棄物発生場所における管理区域内にて、アスベスト濃度を分析し、アスベスト廃棄物の種類と除去工法から、アスベスト廃棄物のマトリックス組成比率、アスベスト濃度及び水分などの情報を取得し、この情報を、例えば電子的に読み取り可能な記録媒体等の情報記録表示手段に記録し、これをアスベスト廃棄物を収容する容器、袋に添付し、溶融処理場所で溶融処理前に電子的に読み取ることで、アスベスト廃棄物情報に応じた溶融装置運転条件で溶融装置を運転するので、例えば、副資材として用いる石灰、ガラスカレットもしくは焼却灰等の使用量を低減し、さらには、アスベスト廃棄物の乾燥や溶融に必要な投入エネルギーを低減することが可能となり、副資材そしてエネルギーの無駄を省ける。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、添付図面に基づき、本発明の実施の形態を説明する。
【0037】
図1にて、アスベスト廃棄物を収容せる袋Pがアスベスト廃棄物発生場所Iからアスベスト廃棄物溶融処理場所IIへ搬送されて処理される様子が示されている。
【0038】
アスベスト廃棄物発生場所Iは、図示のごとく建築物解体・除去現場であることも、あるいは他の場所で排出されたアスベスト廃棄物を一時的に保管している保管場所であることもある。図1の例では、古い建築物が解体され、その現場でアスベスト廃棄物が除去された後、容器としての梱包袋Pに詰められている。アスベスト廃棄物は、その除去の際、現場にて次の項目について測定がなされその結果がアスベスト廃棄物情報として、情報記録表示手段たるタグP1にバーコードで表示され、そのタグP1が梱包袋P毎に貼付される。
【0039】
<アスベスト廃棄物情報>
マトリックス組成
アスベストの種類
アスベスト含有率
水分率
アスベスト廃棄物溶融処理場所IIには、副資材供給装置11が接続されている溶融装置としての電気式溶融炉10と、溶融前にアスベスト廃棄物を乾燥させる乾燥装置としての乾燥炉12とを有し、これは運転操作制御装置13により制御されている。該運転操作制御装置13には運転条件導出装置14が、そしてこの運転条件導出装置14にはバーコード読取装置15が接続されている。
【0040】
このような本実施形態において、アスベスト廃棄物発生場所Iで得られたアスベスト廃棄物の梱包袋Pは、バーコードのタグP1が貼付された状態で上記アスベスト廃棄物溶融処理場所IIに搬入される。
【0041】
廃棄物溶融処理場所IIに搬入された梱包袋Pは、タグP1の情報がバーコード読取装置15で読み取られ、読取情報が運転条件導出装置14へ送られてここで乾燥炉12そして溶融炉10の運転条件が導出され、その導出された条件が運転操作制御装置13へ送られる。運転操作制御装置13は与えられた運転条件となるように乾燥炉12そして副資材供給装置11及び溶融炉10を制御する。
【0042】
次に、以上のようなアスベスト廃棄物の情報の特定から溶融に至るまでの各工程について、さらに詳述する。
【0043】
<アスベスト廃棄物情報の特定>
(1)アスベスト廃棄物のマトリックスの成分組成
アスベスト廃棄物のマトリックスの成分は、Al2O3, SiO2, CaO, Fe2O3, Na2CO3などであり、特に、SiO2, CaO, Fe2O3は、それらの濃度が溶融温度に与える影響が大きい。アスベスト廃棄物のマトリックスの成分組成に関しては、例えば表1に示すように、アスベストを含む建材等の種類からその組成をおおまかに把握することができる。
【0044】
【表1】

【0045】
(2)アスベスト廃棄物中のアスベスト種類
アスベストを含む建材等の種類から含有するアスベストの種類を特定する。
(3)アスベスト廃棄物中のアスベスト含有率の測定方法
アスベスト廃棄物排出場所(管理区域内)例えば、建築物からのアスベストを含む建材等の解体除去現場において、アスベスト廃棄物中のアスベスト含有率(濃度)を分析する。例えば、放射能を用いた簡易分析方法では10分間で含有率が分析でき、効率的に分析を行うことが可能である。
(4)水分率
アスベスト含有建材の解体、除去時に含水する水分をアスベスト廃棄物の水分率として測定する。アスベスト含有建材の種類と除去工法の種類から水分率を特定する。又はアスベスト廃棄物中の水分率をアスベスト廃棄物排出場所(管理区域内)で簡易計測して求める。
【0046】
<タグにアスベスト廃棄物情報を記録>
アスベスト廃棄物が収納されている容器または袋に装着されるタグ(荷札)としては、バーコードシール、QRコードなどの2次元コード(スタックドバーコードシール方式またはマトリックス方式)などが記録されたタグ、ICタグなどを用いることができる。
【0047】
容器に添付可能なシール等にアスベスト廃棄物情報を印刷した後、容器に貼付けること等により、アスベスト廃棄物が収納されている容器または袋に装着されたタグに、次の(i)または(ii)のごとく、直接的または間接的にアスベスト廃棄物情報を記録する。
タグに記録される情報
(i)アスベスト廃棄物情報そのもの
ICタグの様に記録可能な情報容量が大きいタグの場合は、アスベスト廃棄物情報としてマトリックス組成の組成比率、アスベスト種類、アスベスト含有率、水分率などの情報をタグに直接記録する。
(ii)アスベスト廃棄物情報に対応付けられたコード情報
バーコードシールの記録容量では、アスベスト廃棄物情報を直接記録することは困難である。二次元コードシールでも十分でない場合がある。そのようなときは、整理コードをアスベスト廃棄物情報に一対一で対応させ、そのコードを記録する方法をとることができる。たとえば、バーコードシールの場合は、13桁の数字が記録可能なので、アスベスト廃棄物情報毎に付与された分析年月日(6桁)、解体施設番号(2桁)、解体場所(2桁)、検体番号(2桁)、チェックデジット1桁というような整理コードを記録する。
【0048】
整理コードを記録する方法をとった場合は、アスベスト廃棄物情報をサーバー等に記憶させ、バーコードシールリーダーなどで読み取られた整理コードに対応するアスベスト廃棄物情報を呼び出すことができるようにする。
【0049】
<タグからアスベスト廃棄物情報を読み取り>
収集運搬され溶融処理場所に持ち込まれたアスベスト廃棄物のアスベスト廃棄物情報を、容器に添付された、タグの情報を読取装置により読み取る。タグがバーコードシール、二次元コードシールの場合は、人間がコードリーダーをタグに接触させて、情報を読み取る。ICタグの場合は、溶融処理施設に設けられた無線により情報が読み取られる。
【0050】
<乾燥装置の運転条件の決定>
タグに直接的または間接的に記録されたアスベスト廃棄物情報を読み取り、読み取られたアスベスト廃棄物情報のうち水分率に基づき乾燥装置の乾燥運転条件を決定する。
乾燥装置運転条件決定工程 乾燥装置の乾燥運転条件
乾燥装置としては、電気加熱乾燥炉、燃料燃焼式乾燥炉などを用いることができ、乾燥装置の乾燥運転条件としては乾燥装置温度、乾燥装置滞留時間すなわち乾燥時間が挙げられる。これらを、アスベスト廃棄物の水分率に基づき決定し、乾燥装置の運転を制御する。
乾燥炉内温度、乾燥時間
予めアスベスト廃棄物の種類と水分率の情報から適切な乾燥炉内温度、乾燥時間を導く関係表、図又はプログラムを作成しておく。
【0051】
<乾燥炉運転制御工程>
乾燥炉の炉内温度を最適温度にするように、乾燥炉へのアスベスト廃棄物の供給量に対応して、乾燥炉への供給エネルギー量とアスベスト廃棄物の炉内滞留時間(アスベスト廃棄物の炉内移動速度)を制御する。
【0052】
<溶融炉の運転条件の決定>
(1)アスベスト廃棄物のマトリックス組成比率の情報から、アスベスト廃棄物のマトリックスの融点は、例えば、下記の公知の融点計算式(化学工学、第64巻、第3号、138、2000参照)によってマトリックスの融点を計算する。
【0053】
融点=1338+430[Al2O3]-53[CaO]-426[Fe2O3]-407[Na2CO3]+422[P2O5]
(2)溶融炉の溶融温度を導出
マトリックスの融点と、アスベスト種類と、アスベスト廃棄物中のアスベスト含有率とに基づき、溶融炉の最適溶融温度を求める(予め3種の情報から最適溶融温度を導く関係表、図又はプログラムを作成しておく)。
【0054】
例えば、アスベスト廃棄物が建築物から除去したアスベスト吹き付け材であり、マトリックス組成比率から算出したマトリックスの融点が1200〜1250℃であり、アスベストの種類がクリソタイルであり、アスベスト含有率が50%の場合には、溶融炉の最適な溶融温度は1500〜1550℃であることを導く。
【0055】
<溶融炉運転制御工程>
溶融炉の溶融温度を最適溶融温度にするように、溶融炉への供給エネルギー量と副資材の供給量を制御する(予め溶融温度から供給エネルギー量と副資材の供給量を導く関係表、図又はプログラムを作成しておく)。
【0056】
供給エネルギー量としては、プラズマ溶融炉、電気溶融炉では供給電力量であり、燃料燃焼式溶融炉では燃料供給量やコークス供給量である。
【0057】
副資材としては、石灰石、ガラスカレットもしくは焼却灰である。
【0058】
タグに記録する情報としてアスベスト廃棄物情報の他に、アスベスト廃棄物に不可避的に含まれる異物の情報を記録して、その情報を溶融炉の運転制御に反映させてもよい。異物の情報としては、アスベスト含有建材の解体、除去時に使用しアスベストが付着した保護具、飛散防止シート類(これらの多くは、可燃物である)や飛散防止剤等の薬剤(硫黄が含まれることがあり、酸化雰囲気で加熱するとSOxが発生する)の情報等がある。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施形態を示す概要構成図である。
【符号の説明】
【0060】
10 溶融装置(溶融炉)
12 乾燥装置(乾燥炉)
13 運転制御装置(運転操作制御装置)
I アスベスト廃棄物発生場所
II アスベスト廃棄物溶融処理場所
P 容器(梱包袋)
P1 情報記録表示手段(タグ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスベスト廃棄物発生場所にて情報記録表示手段にアスベスト廃棄物情報を記録表示し、アスベスト廃棄物を収納する容器に該情報記録表示手段を装着する情報記録工程と、アスベスト廃棄物溶融処理場所にて上記情報記録表示手段のアスベスト廃棄物情報を読み取る情報読取工程と、読み取られたアスベスト廃棄物情報に基づき、溶融装置の運転条件を決定する溶融装置運転条件決定工程と、決定された運転条件に基づき溶融装置の運転を制御する溶融装置運転制御工程とを、有するアスベスト廃棄物の溶融処理方法。
【請求項2】
アスベスト廃棄物情報は、マトリックス組成情報、アスベストの種類そしてアスベスト廃棄物のアスベスト含有率であり、かかるアスベスト廃棄物情報に基づき、溶融装置運転条件決定工程と、溶融装置運転制御工程を行なうこととする請求項1に記載のアスベスト廃棄物の溶融処理方法。
【請求項3】
溶融装置運転条件決定工程では、アスベスト廃棄物のマトリックス組成情報から求められたマトリックス組成物の融点と、アスベストの種類と、アスベスト廃棄物中のアスベスト含有率とに基づき、溶融装置の最適溶融温度を求め、溶融装置運転制御工程では、溶融装置の溶融温度を上記最適溶融温度にするように、溶融装置への供給エネルギー量と副資材の供給量の制御を行なうこととする請求項2に記載のアスベスト廃棄物の溶融処理方法。
【請求項4】
アスベスト廃棄物情報は、アスベスト廃棄物中の水分率をも含み、読み取られたアスベスト廃棄物情報に基づき、溶融装置運転制御工程前に、乾燥装置の運転条件を決定する乾燥装置運転条件決定工程と、決定された乾燥運転条件に基づき乾燥装置の運転を制御する乾燥装置運転制御工程をも有することとする請求項1ないし請求項3のうちの一つに記載のアスベスト廃棄物の溶融処理方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−142690(P2010−142690A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−319855(P2008−319855)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】