説明

アセタール含有副生物の開裂による多価アルコールを製造する際の収率を増大させる方法

本発明の対象は、ホルムアルデヒドと高級アルデヒドとの縮合により得られる多価アルコール、特にトリメチロールプロパンを製造する際に、後処理により得られ、これらのアルコールの誘導体を含有しており、かつそれぞれのアルコールよりも高い沸点を有する混合物(高沸成分留分)を酸処理し、酸処理された高沸成分留分から多価アルコールを回収することにより、収率を増大させる方法であり、前記方法は、高沸成分留分の含水量が、高沸成分留分及び水からの全量に対して20〜90質量%であることにより特徴付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホルムアルデヒドと高級アルデヒドとの縮合により得られる多価アルコールを製造する際に、酸処理により20〜90質量%の含水量を有する後処理により得られた高沸成分留分中の製造の際に形成されたアセタールを分解することにより、収率を増大させる方法に関する。
【0002】
多価アルコールはホルムアルデヒドと高級なCH酸性アルデヒドとか又は水及びアクロレインもしくは2−アルキルアクロレインとの縮合により大規模に得られる。その際にこの反応の場合に2つの原則的な実施変法の間で区別する。
【0003】
一方ではこれはいわゆるカニッツァーロ法であり、さらにまた無機及び有機のカニッツァーロ法へ分けられる。無機の変法の場合に、過剰量のホルムアルデヒドを相応するアルカナールと化学量論的量の無機塩基、例えばNaOH又はCa(OH)の存在で反応させる。第一段階において形成されたメチロールアルカナールは第二段階において過剰のホルムアルデヒドと不均化反応において反応して多価アルコール及び相応する塩基のギ酸塩、すなわち例えばギ酸ナトリウム又はギ酸カルシウムへ変換される。これらの塩の発生は欠点であった、それというのもこれらは反応生成物から分離するのが難しく、そのうえ1当量のホルムアルデヒドが失われるからである。
【0004】
有機カニッツァーロ法の場合に無機塩基の代わりに第三アルキルアミンが使用される。望ましくない副生物としてギ酸トリアルキルアンモニウムが生じる。それゆえここでも1当量のホルムアルデヒドが失われる。
【0005】
カニッツァーロ法の欠点はいわゆる水素化法の場合に回避される。その際に、ホルムアルデヒドは相応するアルデヒドと触媒量のアミンの存在で反応する。これは反応をアルキロール化されたアルデヒドの段階で止めることにより達成される。ホルムアルデヒドの分離後に、挙げられたアルキロール化されたアルデヒドに加えてさらに僅少量の相応する多価アルコール及び形成されたアルコールのアセタールを含有する反応混合物は水素化にかけられ、その際に所望の多価アルコールが得られる。
【0006】
アルデヒドとホルムアルデヒドとの縮合により入手可能なアルコールの特に有効な製造方法はその際にWO 98/28253に記載されている。僅少量のカップリング生成物(Koppelprodukten)の発生と結びついた高い収率はこの方法を用いて可能にされる。その際に、高級アルデヒドが2〜8倍の量のホルムアルデヒドと第三アミンの存在で反応され、こうして得られた反応混合物が2つの溶液へ分離されるようにして行われ、その際に一方の溶液は挙げられた完全にメチロール化されたアルカナールを含有し、かつ他方の溶液は未反応の出発生成物を含有する。この後者の溶液は反応へ返送される。分離は蒸留又は有機相からの水相の単純な分離により行われる。生成物を含有している溶液は、不完全にアルキロール化されたアルカナールを所望の完全にメチロール化された化合物へ変換するために触媒処理及び/又は熱処理にかけられる。この際に生じた副生物は蒸留により分離され、こうして得られた缶出液は多価アルコールをもたらす接触水素化にかけられる。
【0007】
記載された方法を用いて製造される重要なアルコールの例は、ネオペンチルグリコール、ペンタエリトリトール、トリメチロールエタン、トリメチロールブタン及び特にトリメチロールプロパン(TMP)である。
【0008】
カニッツァーロ法並びに水素化法により製造されるアルコールから、易揮発性である成分(いわゆる低沸成分)もしくはこれよりも難揮発性である成分(いわゆる高沸成分)並びにアルコールの範囲内で沸点を有する成分(いわゆる中沸成分)が蒸留により取り除かれなければならない。低沸成分はその際に特に水、メタノール及びアミンの使用の際に触媒としての遊離アミンである。
【0009】
高沸成分及び中沸成分はしばしば、製造される多価アルコールの誘導体であり、かつこの多価アルコールから例えばホルムアルデヒド、メタノール又はまたプロセスの過程で発生するアルデヒド又はアルコールとの反応により生じている化合物である。
【0010】
多価アルコールの使用のためには、特にアルコールの低いホルムアルデヒド含有アセタール含量が重要である。
【0011】
ホルムアルデヒド含有アセタールはその際に、ホルムアルデヒドから誘導され、かつ構造要素
−O−CH−O− (I)
を有し、かつホルマールとも呼ばれうる全ての化合物であると理解される。
【0012】
多価アルコールの製造の際に、一般式(IIa)又は(IIb)
【0013】
【化1】

[式中、
、Rは互いに独立して水素、C−〜C10−アルキル、C−〜C10−ヒドロキシアルキル、カルボキシル又はC−〜C−アルコキシカルボニル、好ましくはC−〜C10−アルキル及びC−〜C10−ヒドロキシアルキルを表し、
は水素、C−〜C10−アルキル、好ましくはC−〜C−、特に好ましくはC−〜C−アルキル、又はC−〜C10−ヒドロキシアルキル、好ましくはC−〜C−、特に好ましくはC−〜C−アルキルを表し、かつ
nは1〜4、好ましくは1〜3及び特に好ましくは1〜2の整数を表し、
かつアルキル基はその都度分枝鎖状又は非分枝鎖状であってよい]のホルムアルデヒド含有アセタールが生じる。
【0014】
及びRの例は水素、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−デシル、ヒドロキシメチル、カルボキシル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル又はn−ブトキシカルボニル、好ましくは水素、ヒドロキシメチル、メチル及びエチル、特に好ましくはヒドロキシメチル、メチル及びエチルである。
【0015】
の例は水素、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、2−メチルプロピル、2−メチルブチル、2−エチル−3−ヒドロキシプロピル、2−メチル−3−ヒドロキシプロピル、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブチル、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピル、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロピル又は3−ヒドロキシ−2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピルである。
【0016】
典型的なホルムアルデヒド含有アセタールは、例えば触媒量のトリアルキルアミンの存在でのホルムアルデヒド及びn−ブチルアルデヒドからの三価アルコールであるトリメチロールプロパン(TMP)の合成の場合に、水素化法の粗生成物中に0.05〜10質量%含まれていてよい以下に挙げられたTMP−ホルムアルデヒド−メタノール−アセタール(IIIa)及び(IIIb)
【0017】
【化2】

、しかしまた線状のビス−TMP−ホルマール[CC(CHOH)CHO]CH (IV)及び環式TMP−ホルマール
【0018】
【化3】

である。
【0019】
多価アルコールの単位、特にTMP−単位を含有しているこれらのアセタールの形成が望ましくないことは明白である、それというのもそれらは所望の生成物収率を明らかに低下させ、そのうえ生成物アルコールの適用特性に負の影響を及ぼすからである。これらの欠点を回避するために、ホルムアルデヒド含有アセタールを開裂させ、かつTMP−単位を回収することが望ましい。その際に、このことを達成するために文献中に多様な方法が開示されている。
【0020】
US 6 096 905には、カニッツァーロ法により得られ、線状のビス−TMP−ホルマール又は線状のビス−トリメチロールエタンホルマールを含有している組成物を強酸性触媒で30〜300℃で1/2〜8時間処理する方法が開示されている。処理された組成物は、水15質量%以下を含有すべきである。水とアゼオトロープを形成している炭化水素の添加は含水量を低く維持するために推奨される。
【0021】
DD-A 287 251からは、酸開裂によるトリメチロールプロパンよりも難揮発性の副生物からのトリメチロールプロパンの回収が公知である。トリメチロールプロパンの記載された製造はカニッツァーロ法に従って行われる。故に酸開裂のためには、0.05kg/kgのアルカリもしくはアルカリ土類金属化合物の最大含量が明記されている。既にUS 6 096 905のように、DD-A 287 251においても水濃度は高沸点副生物の酸開裂の際に転化率についての重要な大きさとみなされる。DD 287 251においてはできるだけ僅かな、しかしながら最大0.05kg/kgの含水量が推奨される。
【0022】
技術水準から公知の双方の方法にとって不利なことは、強酸性媒体が所望の多価アルコールの性質、例えば色数に不利な影響を及ぼしうる副反応をまねきうることである。
【0023】
故に本発明の基礎をなす課題は、好ましくは水素化法による、多価アルコール、特にTMPを製造する際の収率損失を、高沸点のTMP−含有副生物の形成により減少させることを可能にする方法を提供することである。前記方法は、有効でありかつ費用がかからないべきであるが、しかしながら同時に多価アルコールの収率を、特に水素化法の際に使用する価値があるように改善すべきである。
【0024】
前記課題は、ホルムアルデヒドと高級アルデヒドとの縮合により得られる多価アルコール、特にトリメチロールプロパンを製造する際に、後処理により得られ、これらのアルコールの誘導体を含有しており、かつそれぞれのアルコールよりも高い沸点を有する混合物(高沸成分留分)を酸処理し、酸処理された高沸成分留分から多価アルコールを回収することにより、収率を増大させる方法により解決され、その際に高沸成分留分の含水量は、高沸成分留分及び水からの全量に対して、20〜90質量%、好ましくは40〜80質量%及び特に好ましくは70〜75質量%である。
【0025】
意外なことに、高沸成分を含有している留分の高い含水量の場合にそれぞれの高沸点の誘導体の有効な分解、ひいては明らかな収率増大が達成されることができることが見出された。この単純な方法により数%まででありうる収率増大がもたらされる。
【0026】
本発明による方法に従って、多価アルコールの合成はカニッツァーロ法並びに水素化法に従って行われていてよい。
【0027】
カニッツァーロ法により得られる合成混合物は通常、まず最初に触媒として利用される無機又は有機の塩基、例えばNaOH、Ca(OH)又は第三アルキルアミンが中和され、過剰のアルデヒドが分離されることにより後処理される。引き続いて多価アルコールは無機又は有機の塩基のギ酸塩及び水から分離される(低沸成分)。多価アルコールを含有している取得される粗生成物は、触媒として使用される塩基の化合物、例えば塩、例えばギ酸塩に加えて、副生物、例えばアセタール及びエステル及び他の、多価アルコールよりも高い沸点を有する化合物を含有する。これらの副生物は通常蒸留により主生成物から分離され、その際に多価アルコールよりも高い沸点を有する留分(高沸成分留分)及びより易揮発性の留分(中沸成分)が得られる。多価アルコールよりも高い沸点を有する化合物、例えば前記の一般式(IIa)及び(IIb)のホルムアルデヒド含有アセタールを含有する、本来公知の後処理により得られるこれらの高沸成分留分から、本発明による方法により多価アルコールの結合された単位が穏やかにかつ有効に回収される。
【0028】
しかしながら好ましくは本発明による方法は、水素化法の合成混合物から後処理により得られる高沸成分留分に適用される。多価アルコールは文献に記載されたように、水素化法の際に触媒量の第三アミンの存在でホルムアルデヒドを高級アルデヒドでアルドール化し、こうして得られたモノ−又はポリメチロールアルカノール、好ましくはジメチロールブタノールを水素化してトリメチロールプロパンに変換することにより製造される。
【0029】
多様な変法の例はその際に既に上記で引用された出願公開明細書DE-A-25 07 461、DE-A-27 02 582及びDE-A-28 13 201中に見出される。本発明による方法はWO 98/28253に記載された方法に従って製造された合成混合物の場合に収率増大に特に適している。この方法の短い説明はさらに上記で見出される。ついで後処理は文献に記載されているように常法で、一般的に水の分離及び引き続き蒸留により行われる。高沸成分留分は、後処理の際に生成物及び中沸成分から、例えば蒸留により分離されることができる。ついで別個の段階において高沸成分留分を用いて本発明による方法が実施され、かつ高沸成分の分解により得られる生成物アルコールが留去される。
【0030】
本発明による収率を増大させる方法はDE-A 199 63 435に記載された方法により得られる高沸成分留分を用いて特に良好に実施されることができる。挙げられた出願明細書の開示は参考のために本発明に取り入れられている。
【0031】
DE-A 199 63 435に開示された方法の場合に、モノ−又はポリメチロールアルカノールの水素化により得られる多価アルコール、特に2,2−ジメチロールブタノールから得られるトリメチロールプロパン(TMP)は蒸留により後処理され、その際に第一段階において、水素化後に得られる粗生成物から水及び他の低沸成分、例えばメタノール、トリアルキルアミン、ギ酸トリアルキルアンモニウムが蒸留により分離される。
【0032】
多価アルコール、特にTMP、高沸成分及び多価アルコールよりも低い沸点を有する化合物、例えばTMP−ギ酸エステル、エチルプロパンジオール、環式TMP−ホルマール(以下に中沸成分と呼ぶ)の一部を含有しており、第一段階において缶出液として取得される混合物から、多価アルコール、特にTMPの主要量及び中沸成分が蒸留により高沸成分から分離される。ついで高沸成分留分は本発明による方法において酸で処理される。
【0033】
多価アルコールの主要量及び中沸成分を含有している留分から、低い色数を有する多価アルコールを取得するためにさらなる精製蒸留に場合によりかけられることができる純粋な多価アルコールが、中沸成分の分離下に取得される。
【0034】
高沸成分留分から、本発明による酸処理後に生成物アルコールは好ましくは蒸留により回収されることができる。しかしながら本発明による方法の特に好ましい一実施態様において、酸処理された高沸成分留分は完全にか又は部分的に水素化法の水素化段階へ、すなわち多価アルコールへのモノ−又はポリメチロールアルカナールの水素化、特にTMPへのジメチロールブタナールの水素化へ直接に返送される。酸処理された高沸成分留分の部分的な返送の場合に、これから返送の前に高沸点副生物は蒸留による分離装置又は相分離器を経て分離される。分離される副生物は例えば焼却されるか又は別の方法で廃棄物処理されることができる。
【0035】
この手法は、酸処理された高沸成分留分からの生成物アルコールの直接分離に比較して、高沸点アセタールの再形成が水素化により生じたアルデヒドのアセタール交換(Umacetalisierung)により回避され、それにより収率増大が数%の範囲内で可能になるという利点を提供する。
【0036】
特別な一実施態様においてさらに多価アルコールの主要量から分離される中沸成分留分は完全にか又は部分的に返送され、かつ高沸成分留分と混合されて酸処理にかけられることができる。中沸成分留分とのこの混合は中沸アセタールの開裂によりさらなる収率増大をもたらす。中沸成分留分を高沸成分留分の代わりに本発明による方法により処理することも可能であろう。しかしながら本発明によれば、高沸成分留分それ自体又は中沸成分と混合された処理が有利であることが確かめられた。
【0037】
本発明によれば、20〜90質量%、好ましくは40〜80質量%、特に好ましくは70〜75質量%の高沸成分留分の含水量が、高沸成分留分からの多価アルコール、特にTMPの特に有効な回収を可能にすることが分かった。本発明による含水量の調節は水添加により行われる。
【0038】
本発明により高沸成分を分解するために混合物に添加される酸量は、本発明によれば高沸成分留分及び水からの全量に対して0.1〜20質量%、又は高沸成分留分及び中沸成分留分及び水からの混合物に対して、好ましくは0.1〜10質量%、特に好ましくは0.5〜2.5質量%である。
【0039】
酸として本発明によればC−〜C12−カルボン酸、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、2−エチルヘキサン酸及び乳酸、C−〜C12−ジカルボン酸、例えばシュウ酸、マロン酸、マレイン酸、コハク酸及び酒石酸、スルホン酸、鉱酸、例えば硫酸、リン酸及び亜硫酸、ガス状又は水性の形の酸性ガス、例えば二酸化炭素又は二酸化硫黄又は酸性イオン交換体が有用でありうる。好ましくはギ酸及びリン酸が使用される。ギ酸を使用することが特に好ましい。
【0040】
本発明によればギ酸が特に適していることが分かった。このことは意外である、それというのもギ酸は鉱酸とは異なりTMP−エステルを形成し、かつこれらのTMP−ギ酸エステルは多価アルコールから困難に分離されうるに過ぎないからである。
【0041】
酸処理された高沸成分留分が完全にか又は部分的に、好ましくは完全に水素化へ返送されることによる、特に本発明による方法のさらに前記の特別な実施態様において、ギ酸の利点が利用されることができる、それというのも多価アルコールの製造のための水素化法において好ましくは使用される水素化触媒はギ酸エステルを開裂させることができるからである。そのような水素化触媒は例えばDE 101 52 527.7、“Verfahren zur Zersetzung von Ammoniumformiaten in polyolhaltigen Reaktionsgemischen”に開示されており、その開示について本明細書では明示的に参照される。
【0042】
特に好ましい一実施態様によれば、水素化は、本明細書では明示的に参照されるDE-A 198 09 418から公知の、TiOを含有する無機担体及び活性成分として銅又は銅と亜鉛、アルミニウム、セリウム、貴金属及び第VIII亜族の金属の群から選択される少なくとも1つの金属との混合物を含み、かつ比銅表面積が最大10m/gである触媒の存在で実施される。これらの触媒は、好ましくは担体としてTiO又はTiOとAlとからなる混合物又はTiOとZrOとからなる混合物又はTiOとAlとZrOとからなる混合物を含有し、特に好ましくはTiOが使用される。DE-A 19809418によるこの触媒の製造の際に、金属Cu−粉末が別の添加剤として錠剤化の間に銅表面積が最大10m/gであるように添加されることができる。
【0043】
高沸成分留分の本発明による酸処理は30〜180℃、好ましくは80〜120℃の温度で行われる。その際に0.5〜10時間、好ましくは1〜6時間に達する高沸成分留分に基づく滞留時間が選択される。
【0044】
本発明による方法は際立って圧力依存性ではない。分解は真空中で、常圧下で又は外圧の適用下でも、好ましくは常圧下で又は系の固有圧下で実施されることができる。その際に不活性ガス雰囲気なしで、又は不活性ガス雰囲気ありで、例えばアルゴン−又は窒素雰囲気で、操作されることができる。
【0045】
本方法は、触媒量のトリアルキルアミンの添加下でのホルムアルデヒドと高級アルデヒドとの縮合及びその後の水素化により製造されることができる全ての多価アルコールに適用可能である。適している高級アルデヒドは、カルボニル基に対してα−位の酸性水素原子を有する事実上全てのアルカナールである。炭素原子2〜24個を有する脂肪族アルデヒドが出発物質として使用されることができ、これらは直鎖状又は分枝鎖状であってよいか又は環式脂肪族基を有していてもよい。同じように、カルボニル基に対してα−位にメチレン基を有することを前提として、芳香脂肪族アルデヒド(araliphatische Aldehyde)が出発物質として適している。一般的に炭素原子8〜24個を有する、好ましくは炭素原子8〜12個を有するアラルキルアルデヒド、例えばフェニルアセトアルデヒドが出発物質として使用される。好ましくは炭素原子2〜12個を有する脂肪族アルデヒド、例えば3−エチル−、3−n−プロピル−、3−イソプロピル−、3−n−ブチル−、3−イソブチル−、3−s−ブチル−、3−t−ブチル−ブタナール並びに相応するn−ペンタナール、−n−ヘキサナール、−n−ヘプタナール;4−エチル−、4−n−プロピル−、4−イソプロピル−、4−n−ブチル−、4−イソブチル−、4−s−ブチル−、4−t−ブチル−ペンタナール、−n−ヘキサナール、−n−ヘプタナール;5−エチル−、5−n−プロピル−、5−イソプロピル−、5−n−ブチル−、5−イソブチル−、5−s−ブチル−、5−t−ブチル−n−ヘキサナール、−n−ヘプタナール;3−メチル−ヘキサナール、3−メチル−ヘプタナール;4−メチル−ペンタナール、4−メチル−ヘプタナール、5−メチル−ヘキサナール、5−メチルヘプタナール;3,3,5−トリメチル−n−ペンチル−、3,3−ジエチル−ペンチル−、4,4−ジエチルペンチル−、3,3−ジメチル−n−ブチル−、3,3−ジメチル−n−ペンチル−、5,5−ジメチルヘプチル−、3,3−ジメチルヘプチル−、3,3,4−トリメチルペンチル、3,4−ジメチルヘプチル−、3,5−ジメチルヘプチル−、4,4−ジメチルヘプチル−、3,3−ジエチルヘキシル−、4,4−ジメチルヘキシル−、4,5−ジメチルヘキシル−、3,4−ジメチルヘキシル−、3,5−ジメチルヘキシル−、3,3−ジメチルヘキシル−、3,4−ジエチルヘキシル−、3−メチル−4−エチルペンチル、3−メチル−4−エチルヘキシル−、3,3,4−トリメチルペンチル−、3,4,4−トリメチルペンチル−、3,3,4−トリメチルヘキシル−、3,4,4−トリメチルヘキシル−、3,3,4,4,−テトラメチルペンチルアルデヒド;特にC〜C12−n−アルカナールである。
【0046】
本発明の範囲内の特に好ましい多価アルコールはトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ネオペンチルグリコール及びペンタエリトリトールである。最も好ましいアルコールはトリメチロールプロパンである。
【0047】
本発明は今から次の例において説明される。
【実施例】
【0048】
例1:粗−TMPの製造
粗−TMPを次のように製造した:
全部で72 lの内容積を有し、溢流管により互いに結合された2つの加熱可能な撹拌釜からなる装置に、40%水溶液の形の新鮮なホルムアルデヒド水溶液(4300g/h)及びn−ブチルアルデヒド(1800g/h)及び触媒としての45%水溶液の形の新鮮なトリメチルアミン(130g/h)を連続的に装入した。反応器をその際に40℃に加熱した。
【0049】
排出物を直接に、取り付けた塔を備えた流下薄膜型蒸発缶の上部へ導通し、そこで本質的にはn−ブチルアルデヒド、エチルアクロレイン、ホルムアルデヒド、水及びトリメチルアミンを含有している低沸点留出液と高沸点缶出液とに常圧で蒸留により分離した。
【0050】
留出液を連続的に凝縮し、前記の反応器へ返送した。
【0051】
蒸発器からの高沸点缶出液(約33.5kg/h)を、新鮮なトリメチルアミン−触媒(50g/h、45%水溶液の形で)と連続的に混合し、12 lの空容積を有し、不規則充填物を備えた加熱可能な管形反応器中へ導いた。反応器はその際に40℃に加熱されていた。
【0052】
後反応器の排出物を、別の蒸留装置の上部、ホルムアルデヒド分離へ連続的に導き、そこで本質的にはエチルアクロレイン、ホルムアルデヒド、水及びトリメチルアミンを含有している低沸点留出液と高沸点缶出液とに蒸留により分離した。低沸点留出液(27kg/h)を連続的に凝縮し、第一の撹拌釜へ返送したのに対して、高沸点缶出液は捕集した。
【0053】
こうして得られた缶出液は、水に加えて本質的にはジメチロールブチルアルデヒド、ホルムアルデヒド及び痕跡のモノメチロールブチルアルデヒドを含有していた。ついで連続水素化にかけた。そのために反応溶液を90bar及び115℃で循環−/流下運転方式の主反応器中で及び循環運転方式の後接続される後反応器中で水素化した。触媒をDE 198 09 418に類似して製造した。この触媒はCuO 24%、Cu 20%及びTiO 46%を含有していた。使用される装置は、10mの長さの加熱される後反応器(内径:25mm)からなっていた。循環スループットは液体25l/hであり、反応器フィードを4kg/hに調節した。それに応じて水素化排出物4kg/hが得られた。
【0054】
水素化後に得られる混合物を、DE 199 63 435の例2及び3に記載された方法に相応して蒸留により後処理した。
【0055】
この際に水分離後に得られる混合物は、ここで高沸成分留分と呼ぶTMPよりも高い沸点を有する留分と、ここで中沸成分と呼ぶTMPよりも低い沸点を有する留分とに分離される。
【0056】
こうして取得される高沸成分留分は本質的には次の化合物から構成される:TMP−DMB−アセタール45%、線状ビス−TMP−ホルマール(IV)10%、TMP 10〜25%及び未知の高沸成分20〜35%。
【0057】
得られる中沸成分留分は本質的には次の化合物から構成される:50%がTMP及びTMP−ギ酸エステルからなり、環式TMP−ホルマール(V)10%、TMP−ホルムアルデヒドアセタール(IIa)5〜10%、2−エチル−プロパンジオール5%、かつ約20%が未知の中沸成分である。
例2〜11
100℃までの全ての試験を、常圧で窒素下で撹拌装置中で実施した。100℃を上回る試験をオートクレーブ中で窒素圧(50bar)下で実施した。
【0058】
分析を、J&W ScientificのDB5−カラム(30m、0.32mm、1μm)上でのガスクロマトグラフィー(GC)を用いて行った、インゼクタ:300℃、毎分15Kで90℃。検出はFIDを用いて行った。
例2〜9
例1に記載されたように製造した高沸成分留分100gを、第1表に記載された量の水及びギ酸と混合し、撹拌しながらかつ保護ガス下に明記された温度に加熱した。100℃を上回る温度の場合に反応をオートクレーブ中で実施した。pH−値は全ての試験の場合に2〜3であった。ジメチロールブタノール(DMB)もしくはトリメチロールプロパン(TMP)の上昇はガスクロマトグラフィーにより決定し、かつ、酸なしでの同じ水量とのそれ以外は同じ試験条件での比較に基づいて、収率上昇[GC−面積%(GC-Fl.-%)]として明記されている。結果は第1表にまとめられている。
【0059】
【表1】

例10
例1のように得られた中沸成分留分100gを、表に記載された量の水及びギ酸と混合し、撹拌しながらかつ保護ガス下に明記された温度に加熱した。GC分析での評価はトリメチロールプロパン(TMP)及び2,2′−ジメチロールブタナール(DMB)の上昇を示す。pH−値は2.4であった。結果は第2表にまとめられている。
【0060】
【表2】

例11
高沸成分留分50gを、例1に記載されたようにその都度得られた中沸成分留分50gと混合した。混合物を第3表に記載された量の水及びギ酸と混合し、撹拌しながらかつ保護ガス下に明記された温度に加熱した。GC分析での評価はトリメチロールプロパン(TMP)及び2,2′−ジメチロールブタナール(DMB)の上昇を示す。pH−値は2.1である。
【0061】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルムアルデヒドと高級アルデヒドとの縮合により得られる多価アルコール、特にトリメチロールプロパンを製造する際に、後処理により得られ、これらのアルコールの誘導体を含有しており、かつそれぞれのアルコールよりも高い沸点を有する混合物(高沸成分留分)を酸処理し、酸処理された高沸成分留分から多価アルコールを回収することにより、収率を増大させる方法において、
高沸成分留分の含水量が高沸成分留分及び水からの全量に対して、20〜90質量%であることを特徴とする、多価アルコールを製造する際に収率を増大させる方法。
【請求項2】
多価アルコールを、触媒量の第三アミンの存在でホルムアルデヒドを高級アルデヒドでアルドール化し、こうして得られたモノ−又はポリメチロールアルカナールを水素化し、好ましくはジメチロールブタナールを水素化してトリメチロールプロパンに変換することにより製造する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
次の工程:
a)モノ−又はポリメチロールアルカナールの水素化の粗生成物から多価アルコールよりも低い沸点を有する成分を蒸留により分離する工程
b)得られる缶出液を第2の蒸留段階において高沸成分留分と多価アルコールの主要量を含有している留分とに分離する工程
c)高沸成分留分を酸処理する工程
d)易揮発性の化合物(中沸成分留分)の分離及び純粋な多価アルコールの取得下に多価アルコールの主要量を含有している留分を蒸留する工程
を有し、酸処理された高沸成分留分を多価アルコールへのモノ−又はポリメチロールアルカンの水素化へ返送することを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項4】
蒸留により多価アルコールの主要量を含有している留分から分離される中沸成分留分を酸処理の前に完全にか又は部分的に高沸成分留分と混合する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
酸濃度が、高沸成分留分又は高沸成分留分と中沸成分留分とからなる混合物及び水からの全量に対して、0.1質量%〜20質量%である、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
酸が、C−〜C12−カルボン酸、C−〜C12−ジカルボン酸、スルホン酸、鉱酸、二酸化炭素、二酸化硫黄及び酸性イオン交換体から選択されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
ギ酸を使用する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
多価アルコールが、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ネオペンチルグリコール及びペンタエリトリトールの群から選択されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
多価アルコールがトリメチロールプロパンである、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒量の第三アミンの存在でホルムアルデヒドを高級アルデヒドでアルドール化し、こうして得られたモノ−又はポリメチロールアルカナールを水素化し、特にジメチロールブタナールを水素化してトリメチロールプロパンに変換することにより得られる多価アルコールを製造する際に、次の工程:
a)モノ−又はポリメチロールアルカナールの水素化の粗生成物から多価アルコールよりも低い沸点を有する成分を蒸留により分離する工程
b)得られる缶出液を第2の蒸留段階において高沸成分留分と多価アルコールの主要量を含有している留分とに分離する工程
c)高沸成分留分を酸処理する工程、その際に高沸成分留分の含水量が高沸成分留分及び水からの全量に対して、20〜90質量%であり、
d)易揮発性の化合物(中沸成分留分)の分離及び純粋な多価アルコールの取得下に多価アルコールの主要量を含有している留分を蒸留する工程
を有する収率を増大させる方法において、
酸処理された高沸成分留分を多価アルコールへのモノ−又はポリメチロールアルカンの水素化へ返送することを特徴とする、多価アルコールを製造する際に収率を増大させる方法
【請求項2】
蒸留により多価アルコールの主要量を含有している留分から分離される中沸成分留分を酸処理の前に完全にか又は部分的に高沸成分留分と混合する、請求項記載の方法。
【請求項3】
酸濃度が、高沸成分留分又は高沸成分留分と中沸成分留分とからなる混合物及び水からの全量に対して0.1質量%〜20質量%である、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
酸が、C−〜C12−カルボン酸、C−〜C12−ジカルボン酸、スルホン酸、鉱酸、二酸化炭素、二酸化硫黄及び酸性イオン交換体から選択されている、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
ギ酸を使用する、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
多価アルコールが、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ネオペンチルグリコール及びペンタエリトリトールの群から選択されている、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
多価アルコールがトリメチロールプロパンである、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。

【公表番号】特表2006−501206(P2006−501206A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−525253(P2004−525253)
【出願日】平成15年7月18日(2003.7.18)
【国際出願番号】PCT/EP2003/007870
【国際公開番号】WO2004/013074
【国際公開日】平成16年2月12日(2004.2.12)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【Fターム(参考)】