説明

アセチルサリチル酸の制御放出のためのマイクロカプセル

【課題】消化管環境でのアセチルサリチル酸の制御放出のためのマイクロカプセルを提供する。
【解決手段】本発明は、アセチルサリチル酸の制御放出マイクロカプセルであり、セルロース系フィルム形成ポリマー誘導体、粘着防止剤、可塑剤、潤滑剤、および、ビニル系フィルム形成ポリマー誘導体の混合物からなるコーティング材で被覆された100〜1000μmの粒子径を有するアセチルサリチル酸の粒子からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消化管環境でのアセチルサリチル酸の制御放出のためのマイクロカプセルに関する。アセチルサリチル酸の制御放出とは、アセチルサリチル酸の放出の動態を、消化管管路の全長にわたって制御することを意味すると理解される。
本発明はさらに上記マイクロカプセルの製造方法に関する。
【0002】
本発明の薬学的な目的は、特に、トロンボキサンの生産に対して特異的なシクロオキシゲナーゼを、血小板凝集の阻害を最適化することを可能にするその他のプロスタグランジン(プロスタサイクリン)を除き、選択的に阻害して、心臓血管疾病および危険を防止および/または治療することである。
【0003】
市販名「アスピリン」または略語「ASA」は、本明細書でアセチルサリチル酸を表わすために使用される。
【背景技術】
【0004】
新規な制御放出剤形の研究および開発は、製薬産業における長年の間の変わらない興味の対象になっている。実際に、一般的な用語に、活性成分の放出の動態を制御することは、所望の期間にわたって安定した血漿レベルに活性成分を維持し、同時に、活性成分の突然の大量放出と関連する副作用を減少させることを可能にする。
【0005】
制御放出剤形は、特に、記載されている利益だけでなく、より良い局所寛容性を許す利益およびこれらの活性成分の薬理学的若しくは薬物速度論的特性を修正する利益を提供する限りは、アスピリンのような特定の活性成分の場合に有益である。
【0006】
アスピリンに関する限りでは、鎮痛剤、解熱剤および抗炎症剤としての使用が知られている。血小板凝集阻害剤としてアスピリンの特性が、最近例証されている。アスピリンは、血小板凝集に対して、シクロオキシゲナーゼを阻害することにより作用する。シクロオキシゲナーゼは、血小板中でのアラキドン酸のトロンボキサンへの変換を触媒する。トロンボキサンは、強力な血管収縮薬および血小板凝集刺激剤である。
【0007】
血小板シクロオキシゲナーゼの阻害は、アスピリンによるアセチル化の結果である。このアセチル化は、肝臓の中を最初に通過する間に肝臓で行われる。
【0008】
しかしながら、このメカニズムは、急速に飽和に達し、肝臓で脱アセチル化されていないアスピリンは、体循環の中を通過し、その他の細胞、特に、血管および胃の内皮でシクロオキシゲナーゼのアセチル化を起こす。
【0009】
血管および胃の内皮のシクロオキシゲナーゼは、プロスタサイクリンの形成を触媒する。プロスタサイクリンは、トロンボキサンとは反対に、血管拡張剤、血小板凝集阻害剤、および、細胞保護剤である。従って、血管および胃のシクロオキシゲナーゼの阻害により、プロスタサイクリンおよびその他のプロスタグランジン(PGE)の阻害が起こり、血小板凝集に対する所望の効果と逆になるだけでなく、アスピリンの消化管粘膜に対する副作用も起こす。このような生体における異なるプロスタグランジンの目に見えない阻害の現象は、大抵、アスピリンのジレンマとして言及される。このことは化学者によく知れており、文献に広く記載されている。
【0010】
従って、門脈循環での血小板に対するアスピリンの直接作用を助長する一方で、体循環中のアスピリンの量を最少にすることにより、血管壁のシクロオキシゲナーゼに対する影響を最少にすることが最も重要である。
【0011】
例えば、FR−A−2 539 995に開示されているのような処方が知られているが、アスピリンの放出が早すぎるために、上述の結果を達成できていない。
【0012】
特許出願 FR−A−2 539 995は、胃の寛容性を改善し、薬物放出の持続時間を延長することを意図した、アスピリンを含有する微小顆粒を開示する。これらの微小顆粒は、活性成分の全てを十二指腸の環境に4時間以内に放出するように処方されている。
【0013】
アスピリンは、所望の放出の動態が得られるまで、ポリビドン賦形剤およびフタル酸エチルの混合物中のアスピリンの層並びに陰イオンメタクリル酸ポリマーの層の連続コーティング操作により直径約500〜600μmの担体粒子に結合されている。
【0014】
FR−A−2 539 995に開示された、主成分の100%を4時間で放出するガレヌス製剤は、アスピリンの通常の使用(鎮痛、解熱および抗炎症)に適しているが、血漿凝集剤としてのアスピリンの投与には適していない。
【0015】
上記で言及されたアスピリンのジレンマは、特許出願EP 0 411 590に最初に認められる。このジレンマに直面し、前記特許出願の発明は、血小板凝集を阻害するための医薬調合剤からなる。この医薬調合剤は、コーティング材(例えば、アクリル/メタクリルコポリマー)の層で被覆されたASAの内芯を含有するマイクロカプセルからなり、このマイクロカプセル自体もアスピリンの外層で被覆されている。この調合剤によれば、ASAの吸収は、ASA80〜120mgおよび180〜220mgの2つの連続したパルスで起こる。
【0016】
前記特許出願は、以下のジレンマを解決する調合剤の有効性を示す実験的事実を与えていない:
−トロンボキサンの阻害
−プロスタサイクリンおよびその他のプロスタグランジンの議論
−胃の寛容性。
【0017】
それぞれのパルスでのASAの放出量は、それでも非常に短時間で非常に大量であり、肝臓のアスピリン脱アセチル化システムを飽和させる。
【0018】
プロスタサイクリンの循環レベルを減少させずにトロンボキサンを阻害するアスピリンの従来技術のその他の提案は、特許出願EP 0 377 439に開示されている。これらのガレヌス製剤は、アクリレート/メタクリレートコポリマー、ヒドロキシプロピルセルロースおよび塩化ナトリウムを含有するコーティング組成物で被覆されたアスピリンの顆粒である。得られるコーティング材は、顆粒の乾燥重量10〜35%に相当する。これらのガレヌス製剤は、40mg〜120mgの投与量で8時間にわたって5〜15mg/時の放出動態を提供する。
【0019】
概して言えば、前記特許出願EP 0 377 439に開示された発明は、8時間に限られた期間内に放出されるASAの投与量を減少することにより、アスピリンのジレンマを軽減することを論理学的に提供する。24時間にわたるトロンボキサンの完全な阻害に必要な時間の3分の1を治療学的にカバーしているにすぎないので、この発明は不十分である。
【0020】
これらのヒトの血管閉塞性疾病の治療に使用するために提供されたガレヌス製剤は不十分である。実際に、健康なボランティアについての重要な研究の結果は、血清トロンボキサンの阻害が、活性成分50mgを含有する剤で85%、活性成分75mgを含有する剤で90%であり、プラセボ自体が、約10%の阻害であることを示す。尿中トロンボキサンの測定によれば、それぞれ60および70%の阻害値が得られる。
【0021】
血小板凝集に対する薬理学的効果については、トロンボキサン阻害は、95%よりも大きくなければならない。さらに、100%のトロンボキサン阻害は、コラーゲンおよびアデノシ二リン酸ンによって誘導される血小板凝集を防止するためには十分でないかもしれない。ついには、血小板の毎日の再生(健康な被験者で最初の量の1/6〜1/10、危険な患者で1/4)、および、巨核球による急速な再生のためのトロンボキサンの生産は、毎日投与量の通常のアスピリンを服用する個人を、トロンボキサン阻害の最小百分率(95%)よりも極めて十分に低くする。さらに、凝集阻害血管プロスタサイクリンの存在により凝集効果を正しくすることができる。凝集阻害血管プロスタサイクリン自体は、25%程度に阻害される。従って、特許出願EP 0 377 439のガレヌス製剤は、アスピリンのジレンマを解決していない。
【0022】
さらに、これらのガレヌス製剤は、心筋梗塞の防止にも適していない。実際に、そのような心臓病の頻度は、午前4時〜8時および午後6時〜10時の間に増加する。この現象は、朝晩の過剰凝集に起因するといえる。従って、トロンボキサンを阻害するように、ニクトヘメロン(nycthemeron)を通過して門脈にASAを招きいれることが一番重要である。このことは、特許出願EP0 377 439に開示されたガレヌス製剤では達成できない。
【特許文献1】EP0377439 A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
以上のような技術状況下において、本発明の必須な目的の一つは、
−特に血小板凝集阻害剤として24時間にわたって活性であり、一日あたり1回投与するだけで24時間にわたって治療学的に全てをカバーすることが可能であり、しかも、治療の総合的なコストを低減でき、
−トロンボキサンに対する生化学的選択性によりアスピリンのジレンマを十分な解決を提供して、最大の治療効果を達成し、
−生体が完全に寛容であり、かつ、
−簡単で迅速かつ経済的なプロセスで工業的に製造することができる、
ASAに基づくガレヌス製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
すなわち、本出願人は、鋭意試験・研究を行った結果、以上で言及した明細書に関するような特別な目的のための薬剤剤形が、都合良く、ASAのインビボでの吸収が75〜320mgの投与量についての少なくも24時間にわたる独特の動態プロフィールに従って行われる、注意深く選択されたサイズのフラクションのASAの被覆粒子からなることを証明する功をせしめた。前記プロフィールは、図1に示す曲線Cで表される。
【0025】
従って、本発明は、消化管環境でのアセチルサリチル酸の制御放出のためのマイクロカプセルであって、被覆され、かつ、投与量D75〜320mgの1回投与で経口的に摂取された場合に、ヒトのインビボでの穏健なASA吸収動態を、少なくとも24時間にわたって誘発することを意図した、100〜1000μmのサイズを有するアセチルサリチル酸の粒子からなり、
前記ASA吸収が、
−経口摂取後の時間tが0.4時間である場合の被吸収部分Dの10%以下であり、
−t=3.9時間の場合の被吸収部分Dの50重量%以下であり、
−t=23時間の場合の被吸収部分Dの90重量%以下であり、
tが±10%の範囲内になり得る、
ことを特徴とするマイクロカプセルである。
【0026】
これらの有利な点は、EP−A−0 377 439が公知の高投与量剤形が適当でないことを教示する限りでは、極めて驚くべき、思いがけないものであり、8時間にわたるASAの制御放出のための低投与量システムを用意することにより、前者を改めることができる。従って、特に、プロスタサイクリンについて有害な影響を与え得る範囲がどのようなものか知られている高投与量剤形に新たな興味を持つことは、自明なステップではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の好ましい態様では、吸収は、24時間〜48時間の範囲にわたって次のように行われる。:
−t=0.4〜5時間では被吸収部分の10%、
−t=3.9〜25時間では被吸収部分の50%、
−t=23〜45時間では被吸収部分の90%。
【0028】
図1の曲線Cは、本発明のマイクロカプセルにより引き起こされたインビボでの吸収プロフィールの上限を、320mgの投与量での時間の関数として示す。
【0029】
この吸収は、最初の投与量Dの被吸収部分に対する吸収された%で表される。この曲線Cは、一般的なデコンボリューション(deconvolution)分析(Milo GIBALDI and D.PERRIER, Pharmacokinetics, 2nd ed., New York, Marcel Dekker Inc.,1983, p.145−167)により、アスペジック(ASPEGIC)(登録商標)(コントロールの剤形)と同等のASA350mgおよび本発明のマイクロカプセルと同等のゼラチンカプセルの形のASA320mgの経口投与後の時間の関数としての血漿濃度の平均曲線から得られる。
【0030】
この場合、時間の関数としての血漿濃度のために選ばれたトレーサー分子は、必然的に、サリチル酸(SA)、ASAの代謝産物である。SAの血漿濃度は、HPLCで測定される。
【0031】
本発明のマイクロカプセルの定義の中ででてくる、0.4、3.9、および23時間の臨界点は、もちろん、この曲線の上で見出される。
【0032】
この曲線Cより上では、肝臓のASA脱アセチル化メカニズムが飽和する。曲線Cの下側の領域に含まれる全てのASAのインビボでの吸収プロフィールは、本発明に由来していると考えなければならない。
【0033】
本発明の好ましい態様では、マイクロカプセルは、曲線Cと48時間内で100%吸収を導く理論直線DTの間の領域に含まれるASAのインビボでの吸収プロフィールを有している。
【0034】
この本発明の必須の特色の一つを構成するインビボ吸収曲線Cは、トロンボキサンの最大阻害およびプロスタサイクリンおよびその他のプロスタグランジンの最小阻害を誘導および達成することに関しては、決定要因である。
【0035】
これらの顕著な結果が、寛容、特に胃の寛容の制限、または、マイクロカプセルの実現性および産業上の実行可能性を破ることなく得られることに留意することが重要である。
【0036】
アスピリンの放出動態は、カプセル化されるアスピリンの粒子径に従って変化する。
【0037】
例えば、アスピリン80%およびコーティング材20%を含有する粒子径100μmのアスピリンの粒子から得られる本発明のマイクロカプセルは、インビトロで、5時間後に40〜50%のアスピリン、10時間後に80%、16時間後に90%、24時間後に100%を消化管環境内に放出する。
【0038】
より遅い放出性の本発明のその他のマイクロカプセルは、例えば、アスピリン80%およびコーティング材20%を含有する、315〜400μm潤の平均粒子径を有するアスピリンの粒子から得ることができる。これらの粒子は、インビトロで、5時間後に35%のアスピリン、10時間後に60%、24時間後に100%を消化管環境内に放出する。
【0039】
本発明の好ましい変形例では、コーティング操作に使用したASAの粒子が、250〜800μm、好ましくは、300〜500μmの粒子径を有する。
【0040】
都合良くは、コーティング材は、マイクロカプセルの全重量に対して、5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%、特に好ましくは10〜35重量%存在する。
【0041】
コーティング材は、本発明の基礎的な外観の一つをなし、上記インビボ吸収曲線は、当業者が比較的安易に(例えば、試行錯誤により)、意図した薬理学的効果を達成することを可能にする、コーティング材のコーティング特性(特に、コーティング材の性質)を決定するために有用なモデルを構成する。
【0042】
都合良くは、コーティング材は、
−少なくとも1つの消化管環境内で不溶性のフィルム形成ポリマー(P)、
−少なくとも1つの水溶性ポリマー(P)、
−少なくとも1つの固形潤滑充填剤、および、
−少なくとも1つの疎水性可塑剤
を含有するコーティング組成物からなる。
【0043】
本発明のその他の新しい特色は、上述のコーティング組成物の中で表される。その特色は、本発明の意図する結果を得るためにその機能が組み合わされる4つの化合物の不随意な選択からなる。
【0044】
好ましくは、コーティング組成物は、次のように量的に規定される(乾燥重量%で表す)。
【0045】
−P:60〜85%、好ましくは、70〜80%
−P:2〜20%、好ましくは、5〜15%
−潤滑剤:2〜20%、好ましくは、8〜20%
−可塑剤:2〜20%、好ましくは、5〜15%
本発明の都合が良い態様では、フィルム形成ポリマーPは、少なくとも1つの35〜120℃の沸点を有する有機溶媒中で溶解する。
【0046】
都合良くは、Pは、Pのための溶媒に溶解する水溶性ポリマーである。
【0047】
さらに、固形潤滑充填剤は、好ましくは、水およびPのための溶媒に不溶性である。
【0048】
本発明のコーティング材の量的規定の変形例では、コーティング材は、ポリマー誘導体P10〜30重量部、ポリマー誘導体P1〜3重量部、固形潤滑充填剤2〜4重量部、および、可塑剤1〜3重量部を含有する。
【0049】
本発明の顕著な特徴によれば、Pは、次の製品から選択される:ゼイン、エチルセルロース、塩化ビニル、酢酸ビニル、および/またはそれらのコポリマー、エチルおよび/またはメチルアクリレートおよび/またはメタクリレートをベースとするコポリマー(例えば、登録商標EUDRAGIT RLおよび/またはRSで販売されている製品)、および、これらの製品全ての混合物。
【0050】
限定を暗示することなく、エチルセルロースは、化合物Pに特に適当であることを強調しなければならない。
【0051】
は、好ましくは次の製品から選択される。
【0052】
−ポリビニルピロリドン、
−ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルエチルセルロースおよびメチルセルロースのような水溶性セルロース誘導体、
−酢酸ビニル/クロトン酸コポリマー、
−無水マレイン酸/メチルビニルエーテルコポリマー、および、
−上記製品の全ての誘導体および混合物。
【0053】
通常は、本発明のコーティング操作を行うためにPに好ましく混合されるのはポリビニルピロリドンである。
【0054】
相補的な固形潤滑充填剤は、次の化合物から選択される:ステアリン酸のアルカリ金属土類塩、ケイ酸マグネシウム、カオリン、タルク、シリカ、および、これらの混合物。
【0055】
本発明の組成物の最後の成分は、可塑剤である。可塑剤は、以下の製品の少なくとも1つからなる:
−グリセロール、プロピレングリコール、トリアセチンのようなグリコールのステアリン酸塩
−クエン酸塩
−フタル酸塩(例えば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、またはフタル酸ジブチル)
−特にパルミチン酸セチルのようなセチルアルコールのエステル、
−セバシン酸塩
−酒石酸塩
−ヒマシ油
−クチン、および、
−合成樹脂(例えば、セライト(Cerit;登録商標))。
【0056】
好ましい固形充填剤および好ましい可塑剤は、それぞれ、ステアリン酸マグネシウムおよびヒマシ油である。
【0057】
より容易に使用されるコーティング組成物の例としては、エチルセルロース(P)/ポリビニルピロリドン(P)/ステアリン酸マグネシウム/ヒマシ油を含有する組成物が挙げることができる。それぞれのコンポーネントは、次の好ましい割合(乾燥重量)で含まれている:
− 74±2
− 8±2、
− 10±2
− 8±2%
このコーティング組成物は、本発明の新しい特色の一つを構成する。その特色は、上記4つの化合物の親密な組み合わせにより特徴づけられる。
【0058】
本発明のマイクロカプセルを構成する被覆粒子の固化の問題を防止するために、好ましくは、タルク、コロイド状シリカまたは両方の混合物で構成される抗固化剤の少なくとも1つを、この組成物に添加する用意がなされる。
【0059】
通常は、本発明のASAの粒子は、有機溶媒または複数の有機溶媒の混合物中に懸濁された、コーティング材を構成する上述の親密な組み合わせでスプレーすることにより被覆される。
【0060】
本発明のその他の課題を構成するコーティング方法は、マイクロカプセル化技術の一般的なパターンに適合する。このマイクロカプセルか技術の主なものは、C.DUVERNEYおよびJ.P.BENOITの文献(L’actuali echimique 、1986年12月)に概略が述べられている。より正確には、問題の技術は、フィルムコーティングによるマイクロカプセル化である。
【0061】
好ましくは、このコーティング方法は、実質的に以下の工程からなる:
a)−P、P、潤滑剤および可塑剤を溶媒系中に混合することによるコーティング組成物を調製する工程、
b)−組成物/溶媒系混合物を、アセチルサリチル酸の粒子に塗布する工程、
c)−得られたマイクロカプセルを乾燥する工程、および、
d)−適当な場合に、少なくとも1つのと後者を混合する工程。
【0062】
溶媒系のコンポーネントの一部を構成するのに適した溶媒の例は、ケトン類、エステル類、塩素系溶媒、アルコール類(好ましくは脂肪族アルコール)、アルカン類、および、これらの混合物である。
【0063】
これらの溶媒は、都合良くは、C〜Cの化合物であり、特に好ましくは、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、シクロヘキサンおよび塩化メチレンである。
【0064】
本発明で使用可能なコーティングの方法論をより詳細に考慮した場合、コーティング組成物/溶媒系混合物は、スプレーにより移動するASA粒子の上に塗布されることが説明できる。この移動は、好ましくは、機械的攪拌または送風(流動化)により引き起こされる。
【0065】
所望の吸収動態を持つ本発明のマイクロカプセルを得るために、75〜320mgの投与量Dについて、75〜500μm、特に300〜500μmの平均粒子径を有するASAの粒子をカプセル化する必要がある。
【0066】
本発明の方法を実施するのに好ましいモードでは、次の工程が用意されている:
)−まず最初に、アセトン/アルカノール比が50/50〜70/30(V/V)であるようなアセトン/アルカノール混合物か、シクロヘキサン、トルエン、四塩化炭素、クロロホルムおよび塩化メチレンから選択される溶媒のいずれか一方の溶液として、水溶性ポリマーP1〜3重量部あたりフィルム形成ポリマーP10〜30重量部および可塑剤1〜3重量部を含有する混合物を調製する工程、
)−ビニル系ポリマーP1〜3重量部に対して潤滑剤2〜4重量部を先の工程で調製した溶液に懸濁する工程、
b)−得られた混合物を、流動床中の活性成分の微粒子の上にスプレーする工程、
c)−マイクロカプセルを、スプレー工程の最後に流動床の中で次いでオーブン中で乾燥する工程、および、
d)−得られたマイクロカプセルを、ビニル系ポリマーP1〜3重量部に対して粘着防止剤0.5〜2重量部と混合する工程。
【0067】
b)−得られた混合物を、流動床中の活性成分の微粒子の上にスプレーする工程、
c)−マイクロカプセルを、スプレー工程の最後に流動床の中で次いでオーブン中で乾燥する工程、および、
d)−得られたマイクロカプセルを、ビニル系ポリマーP1〜3重量部に対して粘着防止剤0.5〜2重量部と混合する工程。
【0068】
好ましくは、工程b)において、アルカノールを添加してアセトン/アルカノール比を60/40(V/V)にするか、同じ溶媒を添加する。
【0069】
本明細書において、アルカノールは、1〜6の炭素原子を有する脂肪族アルコール、好ましくイソプロパノールを意味するものと理解される。
【0070】
本発明の方法を実施するのに好ましいモードでは、マイクロカプセルは、コーティングの後に乾燥される。
【0071】
上述の方法で得られるマイクロカプセルは、その他のプロスタグランジンに比較してトロンボキサンの阻害に対する生化学的選択性を有する新規なアスピリンのガレヌス製剤の調製に使用できる。特に、血小板凝集阻害剤として有用な新規なガレヌス製剤の調製、および/または、より正確には、心臓血管疾病および危険を防止および/または治療する活性を有する新規なガレヌス製剤の調製に使用できる。
【0072】
さらに、本発明は、これらの構造、提供方法および組成が新規なガレヌス製剤に関する。都合よくは、このガレヌス製剤は、活性成分を、20〜500mg、好ましくは、50〜400mgおよび特に好ましくは75〜320mg含有する錠剤、散剤またはゼラチンカプセルの形で提供される。かかるガレヌス製剤は、好ましくは、1錠あたりASA等価物75〜320mgを含有する1回毎日投与形態で経口投与される。
【0073】
同じゼラチンカプセル、錠剤または散剤の一つの中に、吸収動態が異なるが、発明の特徴的な枠組み(図1の曲線Cのプロフィール)の範囲内である、少なくとも2つのタイプのマイクカプセルを混合することは価値があるを注意すべきである。
【0074】
その他の特色によれば、本発明は、トロンボキサンの過剰に関連する病理学的障害、特に、心臓血管疾病および危険の予防および/または治療方法に関する。この方法は、本発明のマイクロカプセルおよび/またはガレヌス製剤の、好ましくは75〜320mgのASA等価物の1回毎日投与による経口投与からなる。
【0075】
本発明のマイクロカプセルが、薬理学的条件において非常に有効であり、生体により完全に寛容(特に、胃寛容性)であり、種々の適当なガレヌス製剤で提供可能であり、さらに、簡単かつ安価に得られることは、上述のテキストから明らかである。
【0076】
本発明は、以下の実施例でより明確に理解される。実施例は、単に例示のための手段であり、本発明の明確な理解を提供し、異なる態様および/または遂行方法のモード並びに様々な利点を説明するために役立つ。
【実施例】
【0077】
例1:流動床造粒機でのカプセル化によるアスピリンベースのマイクロカプセルの調製
1.1−マイクロカプセル M
アスピリンの微粒子160mgを被覆するために、エチルセルロース(standards USP XXII)21.5mg、ポリビニドロン(フランス薬局方第10版)2mgおよびヒマシ油(フランス薬局方第10版)2mgをアセトン311mgに溶解する。イソプロパノール208mgを得られた溶液に添加した。次いで、ステアリン酸マグネシウム3mgを溶液に縣濁させる。得られた混合物を攪拌し、この攪拌を、次のコーティング操作まで維持する。
【0078】
アスピリンの微粒子2110gを、GLATT GPCC3流動床装置に充填し、1.16〜2m/分の流速で流動させる。流動床に入れられる空気の温度は、55℃であり、一定に維持する。
【0079】
一定に撹拌し続けられた上記コーティング懸濁液7219gを、蠕動ポンプにより、直径1.2mmの注入ノズルに送り込み、前記微粒子の上にスプレー圧力2.8x10Paで連続的にスプレーする。
【0080】
約10分間の予熱段階の後、蠕動ポンプの出力を1分あたりコーティング懸濁液30gをスプレーするように調節する。
【0081】
次に、マイクロカプセルを、減速した流動化流速(1.16m/分)で15〜30分間乾燥する。次いで、マイクロカプセルをチャンバーから取り出し、トレーの上に広げる。このトレーをオーブン中に50℃で約1時間放置する。
【0082】
1.2−マイクロカプセル M
300〜500μmの粒子径を有するASAの微粒子2100mgに、Mについて上記説明したように、GLATT GPCC 3装置で、次の組成を有するコーティング懸濁液を用いてフィルムを被覆した。
【0083】
−EUDRAGIT RS 100 362.8g
−フタル酸ジブチル 36.2g
−微粒子化タルク 107.1g
−ヒドロキシプロピルメチルセルロース 18.4g
−アセトン 2902.0g
−イソプロパノール 4353.0g
1.3−マイクロカプセル M
300〜500μmの粒子径を有するASAの微粒子2110mgに、Mについて上記説明したように、GLATT GPCC 3装置で、次の組成を有するコーティング懸濁液を用いてフィルムを被覆した。
【0084】
−ゼイン 308.7g
−グリセロールトリアセテート 30.9g
−微粒子化タルク 92.6g
−ステアリン酸マグネシウム 58.9g
−ポリビニルピロリドン 30.9g
−塩化メチレン 3087.0g
−メタノール 3087.0g
【0085】
例2:本発明のASAマイクロカプセルに基づいた薬剤剤形の調製
次に、例1の方法で得られたマイクロカプセルMを、コロイド状シリカおよびタルクと混合する。
【0086】
次いで、得られた混合物を、所望の単位投与量(320.160または80mg)に従ってサイズ0、1または2のゼラチンカプセルに分配した。
【0087】
使用したカプセル充填装置は、1時間あたり5000ユニット最大許容量を有するZanussi Lである。ゼラチンカプセルは、予めチェック(色、質)しておき、ユニットは、カプセル充填工程の間チェックする。次に、最終製品を、各製品について規定および適応された新しい仕様(外観、平均重量、投与量、崩壊性、溶解性、不純物のアッセイ)に従ってチェックする。
【0088】
例3:マイクロカプセルの溶解速度の分析定量
マイクロカプセル、ゼラチンカプセルおよび錠剤のインビトロにおける溶解性を、欧州薬局方第2版、題名「固形経口用剤形の溶解性試験」(“Essai de la dissolution des formes orale solides”)の指図に従ってチェックした。最後の剤形(ゼラチンカプセルおよび錠剤)についてはバスケット装置を使用した。このバスケット装置は、マイクロカプセルの溶解性を測定するために選択した。このバスケット装置は、円筒容器、スターラーおよび温度制御浴からなる。溶解溶媒は、pH7.2のリン酸緩衝液であり、前記薬局方の勧告に従って調製した。アスピリンのコントロール溶液は、活性成分61mをpH7.2の溶媒に溶解して全量20mlとして調製した。試験は、溶解溶媒900ml中で37℃±0.5で、100rpmの回転速度で行う。1つのゼラチンカプセルの等価物を、溶解溶媒中に入れて、溶媒10mlを、実験開始後0,1,2,4,6,8,12および24時間後に取り出す。ASAがSAに加水分解する可能性を考慮し、265nmのASAおよびSAの等吸収点での吸収を測定することにより、溶解したアスピリンの量を定量した。
【0089】
図2は、40kgのバッチについて定量された、例1のマイクロカプセルMについての放出されたアスピリンの百分率を時間の関数として示す。
【0090】
図3は、上記条件で、0,3,9および12か月の保存の後に測定された、放出プロフィールを示す。
【0091】
例4:放出制御カプセル化アスピリン(CRA)の毒性試験
例1で調製したアスピリンのマイクロカプセルMを、市販の白色粉末状のアスピリン(CA)との比較による毒性試験に付した。これらの2つの薬剤剤形のアスピリンの急性毒性は、ラットに投与して比較したところ同等であった。
【0092】
a)方法:
製品の2つの各製剤を、10匹のSDラット(雄5匹、雌5匹)の群に、10mg/kgの量で0.5%カルボキシメチルセルロース中懸濁液として経口投与した。本発明の制御放出性アスピリンは2500mg/kgの投与量で投与し、市販のアスピリンは、740,1110,1670および2500mg/kgの投与量で投与した。全ての動物は、治療前に水食(water diet)を採らせた。
【0093】
死亡率、生存している動物の一般行動および体重変化を、製品の1回投与後14日間追跡した。解剖病理学的試験は、死亡しているかまたは試験の終わりに犠牲にされた各動物について行った。
【0094】
LD50は、フィニー法により計算した。
【0095】
b)結果:
*CA:
CA製品を、投与量740,1110,1670および2500mg/kgで投与した後、投与に関係する自発的活動の下落および起毛を、治療後数時間にわたって観察した。
【0096】
投与に関係する体重増加の僅かな下落が、1〜5日の間に認められたが、その後試験の終わりまで、何ら結果は得られなかった。
【0097】
試験中に死亡した動物の解剖においては、投与量740および1110mg/kgでは、肉眼で見える異常は何ら認められなかった。投与量1670および2500mg/kgでの投与後数時間で死亡した動物は、肝臓の異常なやや黒色の呈色、消化管の壁が厚くなったことによる変色および胃での赤みがかった溢血点を有することが観察された。これらのサインは、著しい胃の不耐性の特徴である。
【0098】
*CRA:
投与量2500mg/kgのCRAを用いて治療した動物の一般行動および体重変化は、試験が終了するまで正常である。
【0099】
死亡またはまたは試験の終わりに犠牲にされた動物の解剖では、いかなる肉眼で見える異常を見出せなかった。
【0100】
c)結論
上記実験条件下では、CA製品のラットに経口投与した場合のLD50は、1432mg/kgである。95%の確率閾値についての信頼区間の上限および下限は、それぞれ、936mg/kgおよび2394mg/kgであった。本発明のCRAのラットに経口投与した場合のLD50は、2500mg/kg以上であった。この投与量では、行動異常または主要器官の異常は観察されなかった。
【0101】
例5:32時間にわたる放出制御カプセル化アスピリンの薬物動態試験
この試験は、ヒトについて行なわれ、本発明のマイクロカプセルのバイオアベイラビリティを測定し、血漿トロンボキサンBの測定による血小板シクロオキシゲナーゼの阻害の程度を証明した。
【0102】
さらに便宜上、次の略号を以下の明細書で使用できる:
−CRA:本発明の制御放出カプセル化アスピリン(例1のM)、
−ASA:アセチルサリチル酸
−SA:サリチル酸。
【0103】
薬物動態試験を、12人の男性ボランティアについて実施した。彼らは、血液生化学的疾病、出血性疾病、アレルギー性疾病および胃腸病の何れにも悩まされておらず、1日に10本以上喫煙せず、しかも、治療学的試験に参加せず、かつ、試験前3ヶ月以内に献血をしていなかった。これらの被験者は、試験前15日以内に何ら薬物を服用していなかった。
【0104】
各被験者は、水250mlで、2つのゼラチンカプセル(各カプセルにはASA160mgが含有されている)、または、アスペジック2袋(1袋投与量250mgを含み、他の1つの袋は、投与量100mgを含み、すなわちASA350mgである)を服用した。
【0105】
このゼラチンカプセルおよび袋は、空腹時の少なくとも10時間後に服用させた。
【0106】
薬物投与後4時間で食事を与えた。
【0107】
a)血漿中の活性成分の定量
薬物投与前、および、治療後0.5,1,1.5,2,3,4,5,6,8,12,16,24および32時間に被験者から血液サンプルを採取した。
【0108】
R.JAMES ら(R.JAMES et al., J. Chrom, Biomed. Appl., 1984, 310, 343−352)の方法を適合させたものにより、血漿中のASAおよびSAをアッセイした。この方法の概略は次の通りである。
【0109】
内標準溶液(3,4,5−トリメトキシベンズアルデヒド、25μg/ml)50μlおよび30%過塩素酸50μlを、血漿0.5mlに添加し、アスピリンの加水分解を防止するためにフッ化カリウムを混合する。
【0110】
この混合物を、渦巻状に30秒間攪拌し、5分間、3000rpmで遠心した。上澄み相約20μlをクロマトグラフィー分析に使用した。
【0111】
分離は、Linchrospher 100 RP−18カラム(5μm,250x4mm;メルク)上で、アセトニトリル/メタノール/0.085% HPO(10/40/50v/v/v)の移動相を用いて行った。移動相の流速は、1ml/分に固定し、検出は230nmのUVで行った。
【0112】
ASAおよびSAの平均血漿濃度を決定し、表1に表した。
【0113】
【表1】

これらの結果は、図4および図5に図解する通りである。図4および図5は、それぞれ、ASAおよびSAの平均血漿濃度(mg/ml)の変化を時間の関数として示す(CRAおよびアスペジックコントロール)。
【0114】
アセチルサリチル酸は2時間に達するまでには血漿中で検出可能になり、4および5時間後には、0.25μg/ml以下の極めて低い濃度である。サリチル酸は、極めて急速に、8〜24時間の間に非高平部(0.8〜1.8μg/ml)に到達するまで上昇した濃度で検出可能になる。
【0115】
AUC(曲線の下の領域)は、アスペジックに対するCRAのバイオアベリラビリティが、約72%であることを示す。さらに、SAは、アスペジックを投与した後16時間に達するまでしか検出可能でないが、一方、CRAを投与した後32時間後まで検出可能である。
【0116】
これらの結果は、本発明のマイクロカプセルが、アセチルサリチル酸が、肝臓の中を最初に通過する間に完全に脱アセチル化され、血小板シクロオキシゲナーゼを阻害し、一方で、末梢性シクロオキシゲナーゼの活性を完全なままにしておくような制御放出動態を得ることを可能にすることを示す。
【0117】
b)血漿中のトロンボキサンBのアッセイ
治療後、1,2,3,4,5,6,8,12,16,24および32時間後に、被験者から血液サンプルを採取した。
【0118】
サンプルは、水浴(37℃)中に1時間放置し、次いで遠心する。次に、血清を除去し、2つのチューブに分配し、分析に必要になるまで凍結する。
【0119】
トロンボキサンBの測定方法は、特異的な抗トロンボキサン抗体および対応する酵素トレーサー、すなわち、アセチルコリンエステラーゼと結合したトロンボキサンをB、を使用した酵素免疫測定法である。
【0120】
この方法は、抗ウサギIgGモノクローナルマウス免疫グロブリンで被覆された96ウエルを有するマイクロタイタープレートを用いた競合的アッセイである。この特異的な抗トロンボキサンB抗体、標準または生物学的サンプルおよびトレーサーを50μlの容量で添加した。
【0121】
反応および希釈は、アルブミンを含有するリン酸緩衝液中で行われる。4℃で一晩インキュベーションした後、プレートを洗浄し、次いで、エルルマンズ試薬(Ellman’s reagent)を含有する酵素基質を各ウエルに分配する。振とうして呈色を発現させた後、24時間後、分光光度計を用いて414nmにおける吸光度を測定する。
【0122】
発現された呈色は、サンプル中に存在するトロンボキサンBの量に比例している。得られた結果を以下の表2に表す。
【0123】
【表2】

本発明のカプセル化アスピリン320mgを投与した後の最大阻害が8時間後に得られ、投与後32時間でもいまだ高かった(88.2%)。
血清中のトロンボキサンBの濃度は急速に下落し、本発明の製剤が効果的にASAを放出するが、対象的に、ASAは全身循環中で認められないことを証明する。
【0124】
以上の結果は、本発明のアスピリンをベースにした放出制御マイクロカプセルの投与は、血小板シクロオキシゲナーゼの阻害を可能にすることを証明する。
【0125】
例6: コーティングしたマイクロカプセル化ASAの、28日間の繰り返し投与後の薬物動態および臨床薬理の研究、並びに通常の剤形との比較
12名の健康なボランティア男性を、くじ引きによって得られたランダム化スケジュールに従って、下記 2種類の処置の一方または他方に割り当てた。A群には、カプセル化ASAの 320mgゼラチンカプセル 1カプセル(例1のマイクロカプセルM)を28日間毎朝経口投与した。B群には、液状の非カプセル化コントロールASA350mgを28日間毎朝投与した。
【0126】
両ケースにおいて、被検者は水200mlを用いる処置を受けた。
【0127】
被検者を3群に分け、異なる日数で研究を開始した。各々の期間中、アスピリンおよびその代謝物であるサリチル酸のアッセイのため、各被検者から血液サンプル(5ml)を採取した。採取は、D1およびD28の処置投与前、D1の下記時間(H0は処置投与のまさにその時間):5分、10分、15分、H0.5、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H8、H12およびH16、D5およびD14のH0.5、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H8、H12およびH16、D28のD5およびD14と同じ時間とそれに続くH24、H36およびH48に行ない、さらにD42の早朝1サンプルを採取した。
【0128】
血清トロンボキサンBの測定のためのサンプル(5cl)を、D1、D2、D3、D4、D5、D14、D21、D27、D28およびD42の毎日の処置投与の前に採取した。
【0129】
アスピリンおよびその代謝物であるサリチル酸のアッセイのための血液サンプルは、毎日の処置の前に、D1、D5、D14およびD28には短い静脈内カテーテルを介するシリンジを用いて、他の日には直接針を刺すことにより採取した。この血液を、氷中に据えられ、ナトリウムヘパリネート50μl(1000単位/ml)およびフッ化ナトリウムの50%水溶液50μlを収容するバキュテナ・チューブ(Vacutainer tube)に直ちに注ぎ、穏やかに2分間振盪した後、4℃で3分間6000rpmで遠心した。球状残渣から急速に分離する血漿を2本の適当にラベル付けしたガラスチューブに移し、−20℃で直ちに凍結した。
a)尿サンプル
各々の期間中、クレアチン尿素のアッセイ並びに血小板および血管プロスタグランジンの測定のために、各被検者から尿サンプルを採取した。
【0130】
D1、D2、D14、D27およびD28の午前7時に朝の尿を集めた。被検者は、6時間尿が得られるように、真夜中から午前1時の間に膀胱を空にし、朝までに再び用を足さないように要請された。朝の小用は被検者が起床する前に行なった。採集した各サンプルのうち:
− 20mlはクレアチン尿素アッセイを行なうために分析し、
− 40mlは適当にラベル付けした2本の20mlポリプロピレンチューブに移して−20℃で直ちに凍結した。
b)出血時間の測定:
各々の期間中、D0、次いでD27の処置投与直前に出血時間を測定した。
【0131】
方法:出血時間はデュークス法(Duke’s technique)(予めエーテルで消毒した耳たぶ前面の皮膚の切開)により測定した。形成される血液の滴を、30秒毎に、押し付けることなくブロッティングペーパー片に集めた。出血時間は、それ以降は出血が止まる時間である。
c)胃の寛容性:
各々の期間中、胃鏡検査により胃の寛容性を評価した。
【0132】
1以上の実質的な病変が観察された場合には、その被検者は研究から除外した。
【0133】
アスピリンおよびサリチル酸は、生物学的媒体における低レベルアッセイのために特別に開発されたHPLC法を用いて分析した。血清トロンボキサンBは、PRADELLES et al [Analytical Chemistry 57, 1170−1173 (1985); Ann. Biol. Clin. 43, 475−484 (1985)]によって記述される酵素免疫測定法を用いて分析した。尿サンプルについては、 11−デヒドロトロンボキサンB、ジノルトロンボキサンBおよびジノル−6−ケトプロスタグランジンF1αを、前述の方法により、固相における前抽出および薄層クロマトグラフィによる精製を用いて分析した。この方法は、陰イオンイオン化検出器を用いる質量分析装置と結合したガスクロマトグラフィにより確認した[LELLOUCHE et al., Prostaglandine 40, 297−310 (1990)]。
【0134】
図6は、カプセル化ASA(CRA)並びにコントロールASAによる血清トロンボキサンBの生成阻害パーセンテージを示す。
【0135】
図7および8は、コントロールASA並びにCRAそれぞれによる、D0、D1、D2、D3、D4、D5、D14、D27、D28およびD42でのトロンボキサンBの阻害を示す。ヒストグラムの各バーには濃度の標準偏差が示されている。
*印は、対照日であるD0との比較で、トロンボキサンレベルの低下の統計的観点からの優位性を示す。これら通常の表記法は、以下の別の図の幾つかにおいても用いられる。
【0136】
トロンボキサンBはトロンボキサンAの代謝物であり、その合成は血小板シクロオキシゲナーゼによって触媒される。
【0137】
図9および10は、横軸上の数字1ないし7に対応する異なる測定時点(D0、D1、D14、D21、D27およびD28)での、コントロールASAおよびCRAそれぞれによる11−デヒドロトロンボキサンBの生成阻害を示す。
【0138】
図11および12は、横軸上の数字1ないし7に対応する異なる測定時点(D0、D1、D14、D21、D27およびD28)での、コントロールASAおよびカプセル化ASA(CRA)それぞれによる尿性トロンボキサンBの生成阻害を示す。
【0139】
2,3−ジノルトロンボキサンの尿性排泄の20%は血小板に起因しないが、トロンボキサンBの尿性代謝物は2種類ある。
【0140】
図13および14は、横軸上の数字U0ないしU5に対応するD0、D1、D14、D21、D27およびD28での尿採取時の各々について、尿性ジノル−6−ケトプロスタグランジンF1αに対するコントロールASAおよびカプセル化ASA(CRA)それぞれの効果を示す。
【0141】
2,3−ジノル−6−ケトプロスタグランジンF1αは、血管および胃由来のプロスタサイクリン(プロスタグランジンI2)の尿性代謝物である。
【0142】
図15および16は、横軸上の数字1ないし7に対応する時期D0、D1、D14、D21、D27およびD28での、トロンボキサンBの尿性排泄に対する、コントロールASAおよびカプセル化ASA(CRA)を用いる処置の影響を示す。
【0143】
図17および18は、横軸上の数字1ないし7に対応する時期D0、D1、D14、D21、D27およびD28での、6−ケトプロスタグランジンF1αの尿性排泄に対する、コントロールASAおよびCRAを用いる処置の影響を示す。
【0144】
トロンボキサンBおよび6−ケトプロスタグランジンF1αは、腎臓由来のトロンボキサンBおよびプロスタグランジンF1αの代謝物である。
【0145】
結果と上に示した図(図6ないし図18)との比較は、カプセル化ASAが、血小板に起因するトロンボキサンに対して、コントロールASAと同程度の阻害能力(処置の3日目以降96.93%対98.15%)を有していることを明白に示している。この結果は、尿性代謝物の測定によって確認される(77.8%対75.6%および51.9%対68.9%)。
【0146】
反対に、カプセル化ASAはコントロールASAよりも、プロスタサイクリン(8.9%対43.2%)および腎臓由来プロスタグランジン類(23.8%対42.8および16.6%対34.6%)に対しては、非常に弱い阻害しか示さない。
【0147】
このため、本発明によるカプセル化ASAの最大投与量320mgでさえも、血小板に起因するプロスタグランジン類に対するバイオセレクティビティの増強を示す。80ないし320mg、好ましくは160mgの投与量(これは、10ないし40mg/時、好ましくは最初の5時間に20mg、次いで次の19時間に2ないし8mg/時、好ましくは4mg/時の速度でアスピリンを搬送する)は、血小板に起因するトロンボキサンの少なくとも95%の阻害を引き起こし、血管性プロスタサイイクリンの90%をこえる保護を提供する。
【0148】
このように記載される本発明は、アスピリンのジレンマに対する最適の解決法を提供し、1日投与量を1度に投与した後少なくとも24時間の血小板凝集の危険性からの最適な保護を保証する。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】75〜320mgの投与量についての少なくも24時間にわたるASAのインビボでの吸収の動態プロフィールを示す特性図。
【図2】40kgのバッチについて定量された例1のマイクロカプセルMについての放出されたアスピリンの百分率を時間の関数として示す特性図。
【図3】0,3,9および12か月の保存の後に測定された放出プロフィールを示す特性図。
【図4】ASAの平均血漿濃度(mg/ml)の変化を時間の関数として示す特性図。
【図5】SAの平均血漿濃度(mg/ml)の変化を時間の関数として示す特性図。
【図6】カプセル化ASA(CRA)並びにコントロールASAによる血清トロンボキサンBの生成阻害パーセンテージを示す特性図。
【図7】コントロールASAによるトロンボキサンBの阻害を示す特性図。
【図8】CRAによるトロンボキサンBの阻害を示す特性図。
【図9】異なる測定時点での、コントロールASAによる11−デヒドロトロンボキサンBの生成阻害を示す特性図。
【図10】異なる測定時点でのCRAによる11−デヒドロトロンボキサンBの生成阻害を示す特性図。
【図11】異なる測定時点でのコントロールASAによる尿性トロンボキサンBの生成阻害を示す特性図。
【図12】異なる測定時点でのカプセル化ASA(CRA)による尿性トロンボキサンBの生成阻害を示す特性図。
【図13】尿採取時の各々について、尿性ジノル−6−ケトプロスタグランジンF1αに対するコントロールASAの効果を示す特性図。
【図14】尿採取時の各々について、尿性ジノル−6−ケトプロスタグランジンF1αに対するカプセル化ASA(CRA)の効果を示す特性図。
【図15】トロンボキサンBの尿性排泄に対するコントロールASAを用いる処置の影響を示す特性図。
【図16】トロンボキサンBの尿性排泄に対するカプセル化ASA(CRA)を用いる処置の影響を示す特性図。
【図17】6−ケトプロスタグランジンF1αの尿性排泄に対するコントロールASAを用いる処置の影響を示す特性図。
【図18】6−ケトプロスタグランジンF1αの尿性排泄に対するCRAを用いる処置の影響を示す特性図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消化管環境でのアセチルサリチル酸(ASA)の制御放出のためのマイクロカプセルであって、
被覆され、かつ、投与量D75〜320mgの1回投与で経口的に摂取された場合に、ヒトのインビボでの穏健なASA吸収動態を、少なくとも24時間にわたって誘発することを意図した、100〜1000μmの粒子径を有するアセチルサリチル酸の粒子からなり、
前記ASA吸収が、
−経口摂取後の時間tが0.4時間である場合の被吸収部分Dの10%以下であり、
−t=3.9時間の場合の被吸収部分Dの50重量%以下であり、
−t=23時間の場合の被吸収部分Dの90重量%以下であり、
tが±10%の範囲内になり得る、
ことを特徴とするマイクロカプセル。
【請求項2】
吸収が、24〜48時間の期間にわたって、下記の方法に従って行われることを特徴とする請求項1記載のマイクロカプセル:
−t=0.4〜5時間では被吸収部分の10%、
−t=3.9〜25時間では被吸収部分の50%、
−t=23〜45時間では被吸収部分の90%。
【請求項3】
コーティング操作で用いられるASAの粒子が、250〜800μm、好ましくは300〜500μmの範囲内であることを特徴とする請求項1記載のマイクロカプセル。
【請求項4】
コーティング材が、マイクロカプセルの全重量に対して、5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%、特に好ましくは10〜35重量%存在することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載のマイクロカプセル。
【請求項5】
コーテイング材が、
−少なくとも1つの消化管環境内で不溶性のフィルム形成ポリマー(P)、
−少なくとも1つの水溶性ポリマー(P)、
−少なくとも1つの固形潤滑充填剤、および、
−少なくとも1つの疎水性可塑剤
を含有するコーティング組成物からなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載のマイクロカプセル。
【請求項6】
コーティング組成物が、以下のように量的に規定されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載のマイクロカプセル(乾燥重量%で表す):
−P:60〜85%、好ましくは、70〜80%
−P:2〜20%、好ましくは、5〜15%
−潤滑剤:2〜20%、好ましくは、8〜20%
−可塑剤:2〜20%、好ましくは、5〜15%。
【請求項7】
は、ゼイン、エチルセルロース、塩化ビニル、酢酸ビニル、および/またはそれらのコポリマー、エチルおよび/またはメチルアクリレートおよび/またはメタクリレートをベースとするコポリマー、および、これらの製品全ての混合物から選択されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載のマイクロカプセル。
【請求項8】
が以下の製品から選択されることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載のマイクロカプセル:
−ポリビニルピロリドン、
−ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルエチルセルロースおよびメチルセルロースのような水溶性セルロース誘導体、
−酢酸ビニル/クロトン酸コポリマー、
−無水マレイン酸/メチルビニルエーテルコポリマー、および、
−上記製品の全ての誘導体および混合物。
【請求項9】
固形潤滑充填剤が、以下の化合物から選択されることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1つに記載のマイクロカプセル:ステアリン酸のアルカリ金属土類塩、ケイ酸マグネシウム、カオリン、タルク、シリカ、および、これらの混合物。
【請求項10】
可塑剤が、以下の化合物の少なくとも1つからなることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1つに記載のマイクロカプセル:グリセロールのステアリン酸塩、フタル酸塩、クエン酸塩、セバシン酸塩、セチルアルコールのエステル、ヒマシ油、クチン、および、合成樹脂。
【請求項11】
コーティング組成物が、エチルセルロース74±2%(乾燥重量百分率)、ステアリン酸マグネシウム10±2%、ポリビニルピロリドン8±2%およびヒマシ油9±2%を含有することを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1つに記載のマイクロカプセル。
【請求項12】
タルク、コロイド状シリカまたは両方の混合物抗固化剤少なくとも1つを0.5〜5%、好ましくは1.5%混合することを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1つに記載のマイクロカプセル。
【請求項13】
実質的に以下の工程からなる請求項1ないし12のいずれか1つに記載のマイクロカプセルの製造方法:
a)−P、P、潤滑剤および可塑剤を溶媒系中に混合することによるコーティング組成物を調製する工程、
b)−組成物/溶媒系混合物を、アセチルサリチル酸の粒子に塗布する工程、
c)−得られたマイクロカプセルを乾燥する工程、および、
d)−適当な場合に、少なくとも1つのと後者を混合する工程。
【請求項14】
溶媒系が、以下のリストから選択される化合物で構成されることを特徴とする請求項13記載の方法:
ケトン類、エステル類、塩素系溶媒、アルコール類、好ましくは脂肪族アルコール、アルカン類およびこれらの混合物、好ましくは、C〜Cの化合物、特に好ましくは、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、シクロヘキサンおよび塩化メチレン。
【請求項15】
コーティング組成物/溶媒系混合物が、移動するASA粒子の上にスプレーにより塗布され、前記移動は、好ましくは機械的攪拌または送風(流動化)により引き起こされることを特徴とする請求項13または14のいずれか1つに記載の方法。
【請求項16】
請求項1ないし12のいずれか1つに記載および/または請求項13ないし15のいずれか1つに記載の方法により製造されるマイクロカプセルの、その他のプロスタグランジンに比較してトロンボキサンの阻害に対する生化学的選択性を有するアスピリンのガレヌス製剤の調製への使用。
【請求項17】
請求項1ないし12のいずれか1つに記載および/または請求項13ないし15のいずれか1つに記載の方法により製造されるマイクロカプセルの、血小板凝集阻害剤として有用なアスピリンのガレヌス製剤の調製への使用。
【請求項18】
請求項1ないし12のいずれか1つに記載および/または請求項13ないし15のいずれか1つに記載の方法により製造されるマイクロカプセルの、心臓血管疾病および危険を防止および/または治療する活性を有するアスピリンのガレヌス製剤の調製への使用。
【請求項19】
ASA等価物を、20〜500mg、好ましくは、50〜400mgおよび特に好ましくは75〜320mg含有する錠剤、散剤またはゼラチンカプセルの形で提供される請求項16ないし18のいずれか1つに記載の新規なガレヌス製剤。
【請求項20】
ASA等価物をそれぞれ75〜320mg含有する1回毎日投与形態で経口投与される請求項19に記載の新規なガレヌス製剤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2008−19274(P2008−19274A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−260178(P2007−260178)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【分割の表示】特願平6−104799の分割
【原出願日】平成6年4月19日(1994.4.19)
【出願人】(593125160)フラメル・テクノロジー (22)
【氏名又は名称原語表記】FLAMEL TECHNOLOGIES
【Fターム(参考)】