説明

アセトアルデヒド含量が低減された高分子量ポリエステルポリマーの製造方法

チタン触媒及び製造プロセスの遅い段階で添加された触媒失活剤を含む、低減されたアセトアルデヒド発生度を有するポリエステル組成物、特にポリエチレンテレフタレートホモポリマー及びコポリマーを開示する。このポリエステル組成物は、遊離アセトアルデヒドが低く、そのため、ボトル水のような比較的無味の飲料のための飲料容器への加工に適する。更に、このポリエステルは、更に固相重合することを必要とせずに且つアセトアルデヒド捕捉剤の不存在下で、短縮されたプロセス時間で高いインヘレント粘度まで重合され、低減された色を有するポリエステルポリマーを生じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊離アセトアルデヒド(AA)が低く且つアセトアルデヒド発生度が低い、チタン触媒を用いて溶融相で重縮合された高極限粘度数のポリエステルポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(PET)は包装用途において、特に飲料容器として広く利用されている。このような用途において、PETは、分子量(分子量は一般にインヘレント粘度(inherent viscosity)(Ih.V.)又は極限粘度数(intrinsic viscosity)(It.V.)として表される)が比較的高く且つアセトアルデヒド(AA)量が低いことが重要である。アセトアルデヒドにはそれと分かる風味があり、ヒトの味蕾は低レベルでもアセトアルデヒドを検知できる。プレフォームをボトルに吹込成形する場合には、許容され得ないほど高いAAレベルは当該ボトル中に含まれる飲料の風味に悪影響を及ぼす。
【0003】
従来のPET製造方法は、主にテレフタル酸及びエチレングリコールのエステル化又は主にテレフタル酸ジメチル及びエチレングリコールのエステル交換から始まる。エステル化には触媒は必要ない。典型的なエステル交換触媒は、単独使用も併用も可能であり、その例にはチタンアルコキシド、錫(II)若しくは(IV)エステル、亜鉛、マンガン若しくはマグネシウムの酢酸塩若しくは安息香酸塩及び/又は当業者によく知られた他のこのような触媒材料などがある。次に、得られた混合物をメルトで高温において、例えば285℃において適当な触媒の存在下で重縮合に供する。Sn、Sb、Ge、Tiなどの化合物が重縮合触媒として使用されている。
【0004】
一般に0.5〜0.65の範囲のインヘレント粘度に達する溶融相重縮合後、ポリエステルを押出し、冷却し、切断してグラニュールにし、次いでグラニュールの少なくとも外部を結晶性にする結晶化プロセスに供する。このような結晶性は、その後の固相重合(solid state polymerization)における焼結及び凝集を防ぐために必要である。結晶化及びアニールは、特許文献1〜5に記載されているように、流動床中で例えば160〜220℃の温度で数時間行われる。
【0005】
固相重合又は「固相化(solid stating)」は、固体状態においてポリマーの極限粘度数を増加させるために実施する。アセトアルデヒドのような揮発物は、固相重合操作において真空除去するか、不活性ガス(例えば窒素)の流れによって除去する。
【0006】
固相化には、比較的高いインヘレント粘度を達成できる利点がある。更に、揮発による遊離アセトアルデヒドの除去によって、ポリマーの遊離アセトアルデヒド含量がかなり低下するという利点がある。固相化は、高エネルギーの使用と長い製造時間という点ではかなり不利である。最後に、固相化重合はペレットにシェル−コア分子量勾配を作らせ、それが物品の成形時にインヘレント粘度の低下を生じる。このIh.V.低下はメルト中の再平衡によると理論づけられている。
【0007】
特許文献6は、ビス(β2―ヒドロキシエチル)テレフタレート又はビス(β2―ヒドロキシエチル)テレフタレートと少なくとも1種の他の二官能価化合物との混合物をチタン化合物触媒の存在下で重縮合させて、ポリエステルの反復構造単位の少なくとも85%がエチレンテレフタレート単位であるような高重合度のポリエステルを生成するポリエステルの製造方法であって、重縮合反応完了後に溶融ポリエステルに燐化合物を添加する方法を開示している。
【0008】
固相化の排除が望ましいが、それにはより長期間の溶融相重縮合が必要である、即ち、ポリエステルの融点より高温でより長時間重縮合を行うことが必要であろう。他の全てのパラメーターが等しい場合には、溶融相製造において発生する遊離AAの量及び溶融相製造において製造されるAA前駆体の数は、ポリマーのIt.V.(又は分子量)の増加に従って劇的に増加する。更に、It.V.の増加に従って、より高粘度のメルトから遊離AAを除去することがより困難になる。メルト中の分子量の増加は、最近まで、典型的にはかなり低い数値(例えば、約0.65dL/g又はそれ以下、より普通には0.55〜0.60dL/g又はそれ以下のIt.V.)に制限され、ポリマーの分子量はその後に固体状態で更に増加されていた。
【0009】
遊離AA及びAA前駆体の形成にはいくつかの原因があり;AA前駆体は、ボトルプレフォームの射出成形中のような、その後の溶融加工における固体ポリエステル粒子溶融時に更なるAAを発生する一因となる。溶融相重合中における遊離AA及びAA前駆体の形成の一因は、高温でポリマーのIt.V.が増加するに従って、より優勢になる溶融相におけるポリエステルポリマーの熱崩壊である。分子量を増加させるのに固相重合を用いない場合には、所定の用途に必要な性質を有するボトルにその後に吹込成形できる許容され得るプレフォームを後で成形するのに必要な分子量を得るには、より長い溶融相滞留時間が必要な可能性がある。この長期の溶融相暴露は、熱崩壊度を増加させ;従って、その後の成形において許容され得る遊離AA及びAA発生度を有するPETを専ら溶融相で製造することは、分子増成の一部を固相プロセスで行う従来の方法よりもはるかに困難である。発生する遊離AA及びAA前駆体がより少ないより短い溶融相工程に加えて、従来の方法は、固相化用の気体が固体ポリエステル粒子上又は粒子中に含まれる遊離AA(本明細書中では「残留AA」としても記載)のほとんどを吹き飛ばすという別の利点を有する。
【0010】
別の要因は、不充分に安定化され且つ/又は失活された重縮合触媒が溶融相において用いられることである。このような重縮合触媒は、溶融加工ゾーンにおける固体ポリエステル粒子の溶融時にAA前駆体(熱崩壊の結果としてポリマー中に存在する)の転化を触媒し続けて、物品を形成するためのその後の溶融加工の間に遊離AAを形成する可能性がある。従って、重縮合触媒を充分に安定化及び/又は失活させれば、AA前駆体がメルト中に存在することがあっても、物品を形成するための溶融加工の間に発生する遊離AAの量が減少する(AA発生度が減少する)。触媒の安定化及び/又は失活は溶融加工工程において発生する遊離AAを減少させるが、それでもなお、若干の遊離AAは発生する。前駆体から遊離AAへの無触媒転化経路が存在し得る、或いはより低レベルの触媒活性が依然としてAA前駆体種の一部を遊離AAに転化する、或いはAA前駆体から遊離AAへの酸触媒作用が起こる、或いは前記3つの選択肢の2つ又はそれ以上の何らかの組合せが起こると理論付けられているが、本発明は理論によって拘束されるものではない。更に、触媒の失活し易さは金属によって異なる。例えばTi金属を基材とする触媒は、燐化合物、例えばホスフェート化合物で失活させることができる。
【0011】
溶融相製造において生成される遊離AA及びAA前駆体の存在の制御の問題が、特許文献7に記載された。特許文献7は、遊離AA及びAA前駆体の量を、全重縮合工程において反応温度を280℃未満に保つことによって、低用量の高活性チタン触媒を用いて溶融相製造におけるポリマーの滞留時間を制限することによって、また、溶融相製造において添加するAA捕捉剤(scavenger)を過剰に用いることによって、制限できると述べている。溶融相製造において生成されるAA前駆体からのAA発生を制御するために、特許文献7は、触媒が分子量増加を0.63dL/g及びそれ以上の極限粘度数(It.V.)まで促進できるように、重縮合の終了近傍又は終了後において遅い段階で触媒を燐化合物で失活させることを教示している。最後に、AA捕捉剤又は結合剤の添加量は、溶融相製造において生成される残留又は遊離AAを結合するだけでなく、その後の溶融加工工程において発生するいかなる遊離AAも結合するように、過剰でなければならない。
【0012】
アセトアルデヒド捕捉剤を用いるアプローチに関連する問題の1つは、添加時点にかかわらず、それらが高価であることである。溶融相製造におけるアセトアルデヒド捕捉剤添加のもう1つの問題は、溶融相製造において存在する遊離アセトアルデヒドによって捕捉剤の一部が消費され、その結果、その後に形成されるアセトアルデヒドを結合するのに過剰量の捕捉剤の添加が必要なことである。溶融相製造において添加されるアセトアルデヒド捕捉剤の量が増加すると、コストも増し、また、低分子量ポリアミドのようにアミン基を含む種類の捕捉剤を用いる場合には特に、捕捉剤によってポリマーに付与される黄色の度合いが増す。多少のアセトアルデヒド捕捉剤の存在でも、ポリエステル粒子又は成形品中の黒色斑点の濃度増加につながるおそれがある。更に、捕捉剤の有効性は、ポリエステルが溶融される2つの熱履歴を経ることによって低下する可能性がある。熱履歴の一方が、一部の型の捕捉剤の熱安定性が損なわれ且つ捕捉剤の揮発性のために失われる可能性がある高真空、高温及び高粘度条件(溶融相重縮合の場合のように)下にある場合には特にそうである。一部の捕捉剤の場合には、捕捉剤によって付与される黄色の量は、メルトの熱履歴数が増加するにつれて増加する可能性がある。従って、溶融相において添加されるアセトアルデヒド捕捉剤を含まず、その後の溶融加工ゾーンに供給される場合にAA発生度及び残留アセトアルデヒドレベルがいずれも低い、固体高IVポリエステルポリマー粒子を生成することが望ましいであろう。
【0013】
特許文献8は、多数の従来の重縮合触媒のいずれか1つ(Sb触媒とCo、Zn、Mg、Mn又はCaを基材とする触媒との組合せが例示され且つ/又は特許請求の範囲に記載されている)を用いて、触媒を遅い段階で失活させることを開示している。特許文献8は、従来のアンチモン重縮合触媒はポリマーの崩壊を触媒又は促進し始め、それがアセトアルデヒドの形成及びポリマーの黄変をもたらすことに言及している。重縮合反応が本質的に完了した後、更なる反応が触媒にポリマーを崩壊させ、アセトアルデヒド及び黄色い色合いを形成させる。特許文献8は、ポリエステル前駆体をIt.V.約0.64及び0.62dL/g又は0.60dL/g(固相重合によってIt.V.0.81dL/gまで増加)で製造することを開示している。特許文献8は、固相重合技術がポリエステルのIt.V.をより高いレベルに増加させるのに有用であることに言及している。
【0014】
特許文献9は、高表面積チタン触媒の使用とそれに続く燐酸トリフェニルの添加を開示している。燐酸トリフェニルを用いない場合には、インヘレント粘度は高いが、明らかに黄色い生成物が得られた。燐酸トリフェニルを用いると、着色の少ない生成物が得られたが、低インヘレント粘度に限られ、従って、その不利点を有するこのような生成物は固相化が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】WO 02/18472 A2
【特許文献2】米国特許第4,161,571号
【特許文献3】米国特許第5,090,134号
【特許文献4】米国特許第5,114,570号
【特許文献5】米国特許第5,410,984号
【特許文献6】JP4879896(特開昭48−79896号公報)
【特許文献7】EP 1 188 783 A2(米国特許第6,559,271B2号に対応)
【特許文献8】米国特許第5,898,058号
【特許文献9】米国特許第5,656,716号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
固相化を必要とせずに、食品及び飲料容器の製造に適当なインヘレント粘度を有し、且つ有機AA捕捉剤がなくてもアセトアルデヒド含量がより低く、且つ/又は有機AA捕捉剤がなくてもその後の溶融加工時のアセトアルデヒド発生レベルが低い、PET及び他のポリエステルの製造が可能であれば望ましいであろう。更に、固相重合を用いて又は用いずに、生成物のAA特性を保つか又は改良しながら、アンチモンより触媒が活性なことによって、より短い反応時間でPETを製造することが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0017】
溶融相にAA捕捉剤を添加せずに、溶融相で高IVポリエステルポリマーを製造すると同時に、その用途に許容され得るアセトアルデヒドレベルを有する、好ましくはその用途に許容され得る残留アセトアルデヒドを含むプレフォームを製造するためのその後の溶融加工ゾーンへの供給材料として適当な粒子を形成する簡単で確実な方法を提供する。また、少なくとも0.69dL/gのIt.V.を有するポリマーメルトに触媒失活剤、好ましくは燐含有化合物を添加し;続いて、前記メルトを凝固(solidify)させて、添加有機アセトアルデヒド捕捉剤を含まない固体ポリエステルポリマー粒子又は成形品を形成することを含んでなる固体ポリエステルポリマーの製造方法を提供する。別法として、本発明のポリエステルポリマーを凝固させ、固体ポリエステルを再溶融させて目的とする物品(例えば射出成形ボトルプレフォーム又は押出シート)を形成するその後の工程の間に触媒失活剤を添加することもできる。
【0018】
チタンは、アンチモンで触媒される類似したPET組成物に比較して、PET組成物を触媒する点において高活性であるので、同じIt.V.の達成に必要な重縮合温度がより低く且つ/又は滞留時間がより短い。より穏やかな重合条件及び触媒失活の結果として、本発明のチタンで触媒されたPET組成物は、アンチモンで触媒されたPETに比較して、80%低い遊離AA及び52%低いAA発生度(generation rate)で製造される。
【0019】
本発明は、更に、低減された遊離AAレベルを示す、チタンで触媒されたポリエステルポリマー粒子を130〜195℃の範囲内の温度において容器に投入して前記容器内に粒子床を形成し、前記粒子床の少なくとも一部に気体を貫流させ、遊離AA量が更に低減された完成(finished)粒子を容器から取り出す、遊離AAのストリッピング方法を含んでなる。このAAストリッピング方法は、遊離AAを除去するために行い、射出成形ボトルプレフォーム又は押出フィルムのような完成品へのその後の溶融加工の間にAA発生をもたらすAA前駆体には影響を与えない。しかし、重縮合を触媒するためのチタンの使用とそれに続く遅い段階での触媒失活剤の添加により、同様な仕上げ機時間又は速度で製造されたアンチモンで触媒されたPETよりも約50%低いAA発生度を示すPET組成物が得られ、その結果、その後の溶融加工時におけるAA前駆体の遊離AAへの転化が最小限に抑えられる。
【0020】
また、
a)チタン種(species)を含む重縮合触媒組成物の存在下で溶融ポリエステルポリマー組成物を重縮合させ;
b)触媒失活剤化合物、好ましくは燐含有化合物を前記溶融ポリエステルポリマー組成物に添加し;
c)0.69dL/g又はそれ以上のIt.V.に達した後に、前記溶融ポリエステルポリマー組成物を凝固させて、添加有機アセトアルデヒド捕捉剤を含まない固体ポリエステルポリマー粒子を形成し;そして
d)前記粒子のIt.V.を0.03dL/gより多く増加させることなく、固体状態で前記固体粒子中の残留アセトアルデヒドの量を10ppm又はそれ以下のレベルまで減少させる
ことを含んでなる固体ポリエステルポリマー粒子の製造方法であって、前記触媒失活剤化合物を工程b)において以下の箇所:
(i)前記溶融ポリエステルポリマーを重縮合させるための最終反応器内、若しくは前記最終反応器と、前記溶融ポリエステルポリマー組成物を切断して前記固体粒子にするためのカッターの前との間;又は
(ii)前記溶融ポリエステルポリマー組成物のIt.V.が少なくとも0.5dL/gまで上昇した後;又は
(iii)前記溶融ポリエステルポリマーメルトに適用された真空があれば、その少なくとも一部分が開放された箇所;又は
(iv)重縮合時間の少なくとも75%の後;又は
(v)凝固時に得られるIt.V.の+/−0.10dL/g以内;又は
(vi)メルトの凝固前30分以内
の1つ又はそれ以上で前記溶融ポリエステルポリマー組成物に添加する方法を提供する。
【0021】
また、
(a)(i)溶融相重合によって得られた少なくとも0.72dL/gのIt.V.、 (ii)少なくとも20%又は少なくとも30%の結晶化度、
(iii)10ppm若しくはそれ以下又は5ppm若しくはそれ以下の残留アセトアルデヒドレベル、
(iv)チタン種を好ましくは3〜35ppmの範囲の量で含む重縮合触媒組成物の残基、
(v)約20ppm未満のAA発生度を有し、且つ
(vii)添加有機アセトアルデヒド捕捉剤を含まない固体ポリエステルポリマー粒子を、溶融加工ゾーンに投入し、前記粒子を溶融させて、溶融ポリエステルポリマー組成物を形成し;そして
(b)前記溶融ポリマー組成物からシート、ストランド、繊維又は成形品を含む物品を形成する
ことを含んでなる物品の製造方法を提供する。
【0022】
本発明は、高価で且つ色素体及び/又は黒色斑点の形成の一因となる有機アセトアルデヒド捕捉剤の溶融相への添加を回避しながら、溶融相で高IVポリマーを製造する利点を有する。アセトアルデヒド捕捉剤の添加又はIt.V.の低レベルへの低減によって溶融相製造におけるアセトアルデヒドの形成を制御する代わりに、アセトアルデヒド発生度が低いポリエステルポリマー固体を溶融相製造において生成すると同時に、溶融相製造において形成された遊離AAを、It.V.が0.03dL/gを超えて増加するほど分子量を増加させることなく、固体粒子中で低減させる。この好ましい方法は、プレフォーム又は他の物品を製造するためのその後の溶融加工ゾーンへの供給材料として適当な、アセトアルデヒド捕捉剤を用いずに溶融相製造において得られた高It.V.を有する固体粒子を提供する。より好ましくは、少なくとも0.69dL/gのIt.V.を有するこのような固体ポリエステルポリマー粒子は、輸送(shipping)コンテナに詰める際に又はトレイ及びボトルプレフォームのような物品を製造するためのその後の溶融加工装置中に、それらを投入する前に、固相重合されない。
【0023】
別の態様において、他の達成可能な利点は、溶融相重合速度に対する影響を考えずに安定化及び/又は触媒失活の促進のために燐化合物を遅い段階で添加できるように固相重合を回避する柔軟性を可能にし、且つまた、より少ない触媒微粒子を含み(従って増大された明澄度及び低減された、メルトからの結晶化速度を有し)、良好な明度(高L*カラー)及び許容され得る黄色度(低b*カラー)を有する物品の製造に適当なポリマー組成物を生成できるチタン含有触媒の使用を可能にする、確実で簡単な方法を用いることである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、以下の本発明の詳細な記述を参照することによってより理解しやすくなるであろう。
【0025】
本明細書及び添付した「特許請求の範囲」中で使用する単数形(a,an及びthe)は、前後関係からそうでないことが明白に指示されない限り、複数の指示対象を含むことに留意すべきである。例えば、1種の「ポリマー」、1つの「プレフォーム」、1つの「物品」、1つの「容器」又は1つの「ボトル」の加工又は製造への言及は、複数のポリマー、プレフォーム、物品、容器又はボトルの加工又は製造を含むものとする。「1種の」成分又は「1種の」ポリマーを含む組成物への言及は、それぞれ、名前を挙げたものに加えて、他の複数の成分又は他の複数のポリマーを含むものとする。
【0026】
用語「〜を含んでなる」又は「〜を含む」又は「〜によって得られる」は、少なくとも名前を挙げた化合物、要素、粒子又は方法工程などがその組成物又は物品又は方法中に存在するが、他の化合物、材料、粒子、方法工程などが名前を挙げたものと同一の機能を有しているとしたら、特許請求の範囲において明白に除外されないならば、このような他の化合物、触媒、材料、粒子、方法工程(step)などの存在を除外しないことを意味する。
【0027】
また、1つ又はそれ以上の方法工程についての言及は、組み合わされた列挙工程の前若しくは後の追加方法工程の存在又ははっきりと識別されるこれらの工程の間の介在方法工程の存在を排除しないことを理解すべきである。更に、プロセス工程の文字は、別個の活動又は工程を識別するための簡便な手段であり、列挙されたプロセス工程は、特に断らない限り、任意の順序で配列できる。
【0028】
範囲の表示はその範囲内の全ての整数及び分数を含む。プロセスにおける、又は反応混合物の、又はメルトの若しくはメルトに適用される、又はポリマーの若しくはポリマーに適用される温度又は温度範囲の表示は、全ての場合において、適用された温度、メルト若しくはポリマーの実際温度又は両者が指定温度であるか又は指定範囲内にあるならば、制限に適合することを意味する。
【0029】
「溶融相のみのプロセス」又は「溶融相のみのポリマー」とは、ポリマーの製造業者からポリマーを物品に加工する顧客に輸送コンテナ(トラック、船、ゲイロードボックス、鉄道車両など)でポリマーを輸送する前に又はポリマーを溶融させて最終製品を形成する前に、ポリエステルポリマーのIt.V.を固体の状態で更に0.03dL/g増加させることなく、ポリエステルポリマーが約0.69dL/g又はそれ以上のIVまで重縮合されることを意味する。
【0030】
本発明は、
a)チタン種を含む重縮合触媒組成物の存在下で溶融ポリエステルポリマー組成物を重縮合させ;
b)触媒失活剤化合物、例えば燐含有化合物を前記溶融ポリエステルポリマー組成物に添加し;
c)0.69dL/g又はそれ以上のIt.V.に達した後に、前記溶融ポリエステルポリマー組成物を凝固させて、添加アセトアルデヒド捕捉剤を含まない固体ポリエステルポリマー粒子を形成し;そして
d)前記粒子のIt.V.を0.03dL/gより多く増加させることなく、固体状態で固体粒子中の残留アセトアルデヒドの量を10ppm又はそれ以下に減少させる
ことを含んでなる固体ポリエステルポリマー粒子の製造方法であって、前記触媒失活剤化合物を工程b)において以下の箇所:
(i)前記溶融ポリエステルポリマーを重縮合させるための最終反応器内、若しくは前記最終反応器と、前記溶融ポリエステルポリマー組成物を切断して前記固体粒子にするためのカッターの前との間;又は
(ii)前記溶融ポリエステルポリマー組成物のIt.V.が少なくとも0.5dL/gまで、若しくは少なくとも0.6dL/gまで、若しくは少なくとも0.68dL/gまで、若しくは少なくとも0.72dL/gまで、若しくは0.76dL/gまで、若しくは少なくとも0.80dL/gまで上昇した後;又は
(iii)前記溶融ポリエステルポリマーメルトに適用された真空があれば、その少なくとも一部分が開放された箇所;又は
(iv)重縮合時間の少なくとも75%、若しくは少なくとも80%、若しくは少なくとも90%、若しくは更には少なくとも95%の後(重縮合時間は、重縮合の開始から、重縮合が終了する時点若しくは目的とするIt.V.が得られる時点までの全時間である。ポリマーメルトが最終反応器から出ていき且つ真空が開放される時間の測定のために、最終反応器とカッターとの間で極めて小さいIt.V.の上昇若しくは中断が起こり得ることが認められるとしても、最終It.V.は得られる);又は
(v)凝固時に得られるIt.V.の+/−0.1dL/g以内若しくは0.05dL/g以内若しくは0.03dL/g以内若しくは0.015dL/g以内;又は
(vi)メルトの凝固前30分以内若しくは20分以内若しくは10分以内若しくは5分以内若しくは3分以内
の1つ又はそれ以上で前記溶融ポリエステルポリマー組成物に添加する方法に関する。
【0031】
本発明の「ポリエステルポリマー」は、任意の熱可塑性ポリエステルポリマーである。熱可塑性ポリマーは感知できるほどの規則構造を有さないが液相(溶融相)では再溶融されて成形品に再造形でき、液晶ポリマー及び熱硬化性ポリマーは包装又は容器製造のための金型中での延伸のような目的用途には不向きであるので、本発明のポリエステル熱可塑性ポリマーは液晶ポリマー及び熱硬化性ポリマーとは区別できる。
【0032】
ポリエステルポリマーは、ポリマー鎖中のモノマー単位がブロックとしてでなくランダムに配列されたようなランダムポリマーであるのが望ましい。
【0033】
ポリエステルポリマーは、望ましくはポリマー鎖中にアルキレンテレフタレート又はアルキレンナフタレート反復単位を含む。これらの反復単位のより具体的な例としては、エチレンテレフタレート、エチレンナフタレート及びトリメチレンテレフタレートが挙げられる。一態様において、ポリエステルポリマーは、
(i)ポリエステルポリマー中のジカルボン酸成分残基100モル%に基づき、少なくとも60モル%のテレフタル酸、テレフタル酸誘導体、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸誘導体又はそれらの混合物の残基を含むジカルボン酸成分、及び
(ii)ポリエステルポリマー中のジオール成分残基100モル%に基づき、少なくとも60モル%のエチレングリコール又はプロパンジオールの残基を含むジオール成分
を含む。
【0034】
典型的には、ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステルは、エチレングリコールのようなジオールを遊離酸又はそのC1〜C4ジアルキルエステルとしてのジカルボン酸と反応させてエステルモノマー及び/又はオリゴマーを形成し、次いでそれを重縮合させてポリエステルを生成させることによって製造する。1つ若しくは複数のジカルボン酸基又はその1つ若しくは複数の誘導体を含む1種より多くの化合物をその方法の間に反応させることができる。前記ポリエステル生成物の一部となる1つ若しくは複数のジカルボン酸基又はその1つ若しくは複数の誘導体を含む、その方法に加わる全ての化合物が、「ジカルボン酸成分」を構成する。生成物中の存在する1つ若しくは複数のジカルボン酸基又はその1つ若しくは複数の誘導体を含む全ての化合物のモル%は、合計100となる。前記ポリエステル組成物中に存在するジカルボン酸基又はその誘導体を含む1種又は複数の化合物の「残基」は、前記の1種又は複数の化合物をジオール基を含む1種又は複数の化合物と縮合させ、更に重縮合させて種々の鎖長のポリエステルポリマー鎖を形成した後に前記ポリエステル生成物中に残る前記の1種又は複数の化合物の部分を意味する。
【0035】
ジオール基又はその誘導体を含む1種より多くの化合物は、1種又は複数のポリエステルポリマー生成物の一部となることができる。前記の1種又は複数のポリエステル生成物の一部となるヒドロキシル基又はその誘導体を含む、その方法に加わる全ての化合物が、ジオール成分を構成する。前記の1種又は複数のポリエステル生成物の一部となるジオール基又はその誘導体を含む全ての化合物のモル%は、合計100となる。前記ポリエステル生成物の一部となる1種若しくは複数のジオール官能性化合物又はその誘導体の「残基」は、前記の1種又は複数の化合物を1つ若しくは複数のジカルボン酸基又はその1つ若しくは複数の誘導体を含む1種又は複数の化合物と縮合させ、更に重縮合させて種々の鎖長のポリエステルポリマーを形成した後に前記ポリエステル生成物中に残る前記の1種又は複数の化合物の部分を意味する。
【0036】
1種又は複数の生成物中のジオール残基及びジカルボン酸残基のモル%は、プロトンNMRによって測定できる。プロトンNMRに適当な溶媒系は、70容量%の重水素化クロロホルム及び30容量%の重水素化トリフルオロ酢酸である。
【0037】
一態様において、ポリエステルポリマーは、
(a)ポリエステルポリマー中のジカルボン酸成分残基100モル%に基づき、例えば少なくとも80モル%、又は少なくとも90モル%、又は少なくとも92モル%、又は少なくとも96モル%のテレフタル酸、テレフタル酸誘導体、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸誘導体又はそれらの混合物の残基を含むジカルボン酸成分、及び
(b)ポリエステルポリマー中のジオール成分残基100モル%に基づき、例えば少なくとも80モル%、又は少なくとも90モル%、又は少なくとも92モル%、又は少なくとも96モル%のエチレングリコールの残基を含むジオール成分
を含む。
【0038】
ポリエステルポリマーの製造時におけるジカルボン酸成分とジオール成分との反応は、必要に応じて大過剰量のジオール成分を利用できる(使用するジカルボン酸成分100モル%に対して200モル%以下のオーダー)ので、前記モル百分率に限定されない。しかし、この反応によって製造されるポリエステルポリマーは、前記量の芳香族ジカルボン酸残基及びジオール残基を含むことができる。
【0039】
テレフタル酸及びナフタレンジカルボン酸の誘導体としては、例えばC1〜C4ジアルキルテレフタレート及びC1〜C4ジアルキルナフタレート、例えばジメチルテレフタレート及びジメチルナフタレートが挙げられる。
【0040】
本発明のポリエステルポリマーは、1種又は複数のコモノマーを溶融相重合プロセスに加えることによって改質できる。コモノマーは、ポリマー中のその各成分、カルボン酸又はヒドロキシル100モル%に基づき、例えば約40モル%以下若しくは約20モル%以下若しくは約10モル%以下若しくは約8モル%以下若しくは約5モル%以下、又は少なくとも2モル%若しくは少なくとも4モル%若しくは少なくとも5モル%若しくは少なくとも7モル%若しくは少なくとも8モル%若しくは少なくとも10モル%若しくは少なくとも15モル%の量で存在できる。ポリエステルポリマー中に添加される又は存在するコモノマーの量は、ポリエステルポリマーに添加されるコモノマーの量に基づき、溶融相重合プロセスにおいて形成された副生成物の組込みによって生じる改質は除外する。
【0041】
テレフタル酸、テレフタル酸誘導体、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸誘導体又はそれらの混合物のジカルボン酸成分の他に、本発明の1種又は複数のジカルボン酸成分は、1種又はそれ以上の追加の改質剤カルボン酸化合物又はコモノマーを含むことができる。このような追加改質剤カルボン酸化合物は、モノカルボン酸化合物、ジカルボン酸化合物及びそれより多数のカルボン酸基を有する化合物を含む。例としては、炭素数が好ましくは8〜14の芳香族ジカルボン酸、炭素数が好ましくは4〜12の脂肪族ジカルボン酸又は炭素数が好ましくは8〜12の脂環式ジカルボン酸が挙げられる。改質剤ジカルボン酸のより具体的な例としては、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、シクロヘキサン二酢酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの1種又はそれ以上が挙げられ、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸及びシクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸が最も好ましい。これらのジカルボン酸の対応する酸無水物、エステル及び酸塩化物の使用も、用語「カルボン酸」に含まれることを理解すべきである。また、トリカルボン酸化合物分岐剤及びそれより多数のカルボン酸基を有する化合物も、モノカルボン酸連鎖停止剤と共に、ポリエステルを改質することができる。
【0042】
エチレングリコールを含むジオール成分の他に、本発明のポリエステルのジオール成分は、追加の改質剤モノオール、ジオール又はそれより多数のヒドロキシル基を有する化合物をコモノマーとして含むことができる。改質剤ヒドロキシル化合物の例としては、炭素数が好ましくは6〜20の脂環式ジオール及び/又は炭素数が好ましくは3〜20の脂肪族ジオールが挙げられる。このようなジオールのより具体的な例としては、ジエチレングリコール;トリエチレングリコール;1,4−シクロヘキサンジメタノール;プロパン−1,3−ジオール;ブタン−1,4−ジオール;ペンタン−1,5−ジオール;ヘキサン−1,6−ジオール;3−メチルペンタンジオール−(2,4);2−メチルペンタンジオール−(1,4);2,2,4−トリメチルペンタン−ジオール−(1,3);2,5−エチルヘキサンジオール−(1,3);2,2−ジエチルプロパン−ジオール−(1,3);ヘキサンジオール−(1,3);1,4−ジ−(ヒドロキシエトキシ)−ベンゼン;2,2−ビス−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン;2,4−ジヒドロキシ−1,1,3,3−テトラメチル−シクロブタン;2,2−ビス−(3−ヒドロキシエトキシフェニル)−プロパン;及び2,2−ビス−(4−ヒドロキシプロポキシフェニル)−プロパンのうち1種又はそれ以上が挙げられる。
【0043】
別の態様において、ポリエステルポリマーはイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジメタノール及びジエチレングリコールのようなコモノマーを含むことができる。
【0044】
本発明のポリエステルポリマーは、ポリカーボネート(PC)及びポリアミドのような1種又はそれ以上の他の熱可塑性ポリマーとブレンドしてポリエステルブレンドを形成できる。一態様において、ポリエステルブレンドは、主に本発明のポリエステルポリマーからなり、例えば、全ての熱可塑性ポリマー(充填剤、無機化合物若しくは粒子、繊維、耐衝撃性改良剤又は不連続相を形成し得る他のポリマーを除く)の重量に基づき、少なくとも80重量%又は少なくとも95重量%又は100重量%の量で本発明のポリエステルポリマーを含む。別の態様において、ポリエステルブレンドは充填剤、繊維若しくは耐衝撃性改良剤又は不連続相を形成する他のポリマーを含まない。
【0045】
一態様において、本発明のポリエステルポリマーは、ブレンド中の全ポリエステルの総重量に基づき、例えば約60重量%未満又は40重量%未満又は20重量%未満又は10重量%未満又は5重量%未満の使用済みの再生ポリエステルポリマー(PCR)とブレンドすることもできるし、PCRを全く含まないこともできる。別の態様において、ブレンドは、ブレンドの総重量に基づき、例えばゼロより多く且つ60重量%以下又は40重量%以下又は20重量%以下又は10重量%以下の量で存在するPCRを含む。
【0046】
本発明のポリエステルポリマーの製造に使用するポリエステル溶融相製造プロセスは、エステル化ゾーンにおける、任意的に、エステル化触媒の存在下での、ジカルボン酸とジオールとの直接縮合とそれに続く、プレポリマー及び仕上げゾーンにおける、チタン種を含む重縮合触媒組成物の存在下での重縮合;又はエステル交換(ester exchange)ゾーンにおける、通常はトランスエステル化(transesterification)触媒の存在下でのエステル交換とそれに続く、チタン種を含む重縮合触媒組成物の存在下での予備重合及び仕上げを含む。
【0047】
溶融相反応は回分式、半回分式又は連続式で進行する。好ましくは、本発明の方法は連続的である。本発明の方法において、ポリエステルポリマーは、チタン化合物の存在下でポリエステルポリマーメルトを形成することを含む溶融相反応で製造する。
【0048】
ポリエステル前駆体反応体を溶融相プロセスの第1段階を行うエステル化反応器に供給する。エステル化プロセスは、直接エステル化又はエステル交換反応(トランスエステル化としても知られる)によって進行する。溶融相プロセスの第2段階において、エステル化の間に形成されたオリゴマー混合物を重縮合させて、ポリエステルポリマーのメルトを形成する。メルトの分子量は溶融相プロセスにおいて目的のIt.V.まで増加し続ける。
【0049】
更に説明すると、1種又はそれ以上のジカルボン酸、好ましくは芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体と1種又はそれ以上のジオールとの混合物を、約200℃〜300℃の温度において約1〜約70psigの圧力で運転されるエステル化反応器に連続供給する。反応体の滞留時間は典型的には約1〜5時間の範囲である。普通は、1種又は複数のジカルボン酸を、高圧で約240〜約285℃の温度において1種又は複数のジオールで直接エステル化する。
【0050】
エステル化反応は、例えば少なくとも70%の酸又はエステル基転化率が達成されるまで、しかしより典型的には、少なくとも85%の酸又はエステル基転化率が達成されて目的とするオリゴマー混合物(或いは「BHETモノマー」としても知られる)が生成されるまで、続ける。オリゴマー混合物を生成する反応は、典型的には、直接エステル化プロセスにおいては無触媒で行い、エステル交換反応においては触媒を用いて行う。チタン含有触媒は、任意的に、原料と共にエステル化ゾーンにおいて添加できるが、重縮合ための触媒の活性は、使用するチタン触媒の型によってはそれほど高くない場合がある。ジアルキルテレフタレートとジオールとの間のエステル交換反応において更に使用できる典型的なエステル交換触媒は、例えばチタンアルコキシド、錫(II)若しくは(IV)エステル、酢酸亜鉛のような亜鉛化合物又は酢酸マンガン若しくは安息香酸マンガンのようなマンガン化合物及び/又は他のこのような触媒化合物などであることができ、それぞれ単独で又は互いに組合せて使用できる。当業者によく知られた任意の他の触媒材料も適当である。一態様において、エステル交換反応はチタン化合物の存在下で進行する。
【0051】
エステル化ゾーン(直接エステル化及びエステル交換プロセスを含む)において形成された結果として得られたオリゴマー混合物は、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート(「BHETモノマー」としても知られる)、低分子量オリゴマー、DEG及びエステル化ゾーン中で除去されなかった微量の縮合副生成物(例えば水又はメタノール)を、原料からの及び/又はおそらく触媒副反応によって形成された他の微量不純物並びにトナー及び安定剤のような他の任意的に添加された化合物と共に含む。BHETモノマーとオリゴマー種の相対量は、方法が直接エステル化法(この場合には、オリゴマー種の量が多く、主な種として存在することすらある)であるか或いはエステル交換法(この場合には、BHETモノマーの相対量がオリゴマー種よりも優っている)であるかによって異なるであろう。平衡を目的生成物の方向に進めるために、エステル化反応の進行につれて、縮合副生成物を除去する。エステル化ゾーンは典型的には、一連の1つ又はそれ以上の反応器中でBHETモノマー及びオリゴマー種(もしあれば)を連続的に生成する。別法として、オリゴマー混合物中のBHETモノマー又はオリゴマー種は1つ又はそれ以上の回分反応器中で生成することもできるであろう。しかし、PENの製造方法においては、反応混合物は、モノマー種であるビス(2−ヒドロキシエチル)−2,6−ナフタレート及びその対応するオリゴマーを含むことがわかる。この段階で、It.V.は通常は測定できないか又は0.1未満である。溶融オリゴマー混合物の平均重合度は典型的には15未満、多くの場合7.0未満である。
【0052】
オリゴマー混合物は、目的とする酸又はエステル基パーセント転化率に達したら、エステル化ゾーン又は反応器から重縮合ゾーンに移す。重縮合反応の最初は、一般に、エステル化ゾーンの運転温度よりも高い実際運転温度、若しくはエステル化ゾーンに比較して著しい圧力低下、又はその両者を特徴とする。場合によっては、重縮合反応は、エステル化ゾーンの実際運転温度及び圧力よりも高い実際運転温度と低い圧力(通常は大気圧以下の圧力)を特徴とする。典型的な重縮合反応は、約260〜300℃の範囲の温度及び約350〜0.2mmHgの減圧でおこる。反応体の滞留時間は、典型的には、約2〜約6時間の範囲である。重縮合反応においては、オリゴマーエステル種の縮合によって及び分子量増加の過程において、相当量のグリコールが発生する。
【0053】
重縮合ゾーンは、典型的には、プレポリマーゾーンと仕上げゾーンを含んでなるが、重縮合ゾーン内に分割されたゾーンが存在する必要はない。重縮合反応は予備重合ゾーンにおいて溶融相で開始し、継続し、仕上げゾーンにおいて溶融相で仕上げる。その後にメルトを凝固させて、一般にはチップ、ペレット又は任意の他の形状のポリエステルポリマー溶融相生成物を形成する。
【0054】
各ゾーンは、異なる条件で運転される一連の1つ又はそれ以上の別個の反応器を含むこともできるし、或いは単一の反応器中で異なる条件で運転される1つ又はそれ以上の副段階(substage)を用いて、ゾーンを1つの反応器中にすることもできる。即ち、プレポリマー段階は、連続的に運転される1つ若しくはそれ以上の反応器、1つ若しくはそれ以上の回分反応器、又は更には、単一反応器中で行われる1つ若しくはそれ以上の反応工程若しくは副段階の使用を含むことができる。予備重合ゾーン中におけるメルトの滞留時間に対する、仕上げゾーン中におけるメルトの滞留時間は限定するものではない。例えば、いくつかの反応器設計においては、反応時間に換算して、予備重合ゾーンは重縮合の最初の1/2に相当し、仕上げゾーンは重縮合の次の1/2に相当する。他の反応器設計は、仕上げゾーンと予備重合ゾーンの滞留時間を約1.5:1又はそれ以上の比に調節することができる。多くの設計における予備重合ゾーンと仕上げゾーンの共通の違いは、仕上げゾーンが多くの場合、予備重合ゾーンにおける運転条件よりも高い温度及び/又は低い圧力で運転されることである。一般に、予備重合ゾーン及び仕上げゾーンは、それぞれ、1つの反応器又は一連の1つより多い反応器を含み、予備重合反応器及び仕上げ反応器はポリエステルポリマーの連続製造方法の一部として直列に配列される。
【0055】
当業界で低重合器としても知られる予備重合(prepolymerization)ゾーンにおいて、オリゴマー混合物中の低分子量BHETモノマー及びオリゴマーをチタン含有触媒の存在下で重縮合によって重合させて、ポリエチレンテレフタレートポリエステル(又はPENポリエステル)を形成する。Ti種を含む触媒組成物は、エステル化ゾーン又は重縮合ゾーンにおいて、例えば重縮合の開始直前に、重縮合中に、或いはエステル化ゾーンにエステル化若しくはエステル交換前に又はエステル化若しくはエステル交換反応の間又はエステル化若しくはエステル交換反応の完了時に、加えることができる。チタン含有触媒は、エステル化ゾーンに加える場合には、典型的には1種又は複数のジオールとブレンドして、1つ若しくは複数のエステル化反応器に且つ/又は第1エステル化反応器に供給されるテレフタル酸及びグリコールのペーストを含むペーストタンク中に供給する。当業者であれば、典型的なDMTをベースとする方法においては、他の触媒材料及び燐化合物のような他の成分の添加箇所が典型的な直接エステル化方法と異なることがわかる。
【0056】
一部のチタン種に関しては、重縮合触媒活性は、チタン化合物をエステル化後に添加する場合により高い。一態様においては、1種又は複数のチタン化合物を、エステル化後であって重縮合の開始前又は開始時若しくは重縮合中に添加することができる。別の態様においては、1種又は複数のチタン化合物を、エステル化と重縮合の間で加えることもできるし、或いは重縮合の早い段階で、例えばモノマー同士の反応、低分子量オリゴマー同士の反応及びモノマーと低分子量オリゴマーとの反応を触媒して分子量を増加させ且つ1種又は複数のジオールを副生成物として分離する予備重合工程(重縮合の第1段階)に加えることができる。チタン化合物は、エステル化中に存在した後に、触媒活性が低くなるならば、好ましくは酸末端基の%転化率が少なくとも75%となった場合に、より好ましくは酸末端基の%転化率が少なくとも85%になった場合に、最も好ましくは酸末端基の%転化率が少なくとも93%になった場合に、直接エステル化プロセスに加える。
【0057】
別の態様において、チタン化合物は、オリゴマー混合物にエステル化完了時に若しくはエステル化完了後に、又はポリエステルメルトに(例えばメルトのIt.V.が約0.3dL/gに達するまでに、若しくはメルトのIt.V.が約0.2dL/gに達するまでに、若しくはメルトのIt.V.が約0.1dL/gに達するまでに)、又はエステル化ゾーンから出たオリゴマー混合物に、又は重縮合の開始前又は開始時に加える。
【0058】
コバルト化合物及び着色剤のような他の化合物も予備重合ゾーンにおいて加えることができる。また一方、これらの化合物は、予備重合ゾーン及びエステル化ゾーンの代わりに又はそれに加えて、仕上げゾーンにおいて添加することができる。
【0059】
好ましくは、チタン触媒は、燐化合物の不存在下において、通常量の三酢酸アンチモン又は三酸化アンチモンを用いて同じ温度において達成されるのと少なくとも同じ重縮合速度を示し、より好ましくは燐化合物の不存在下において、三酢酸アンチモン又は三酸化アンチモンよりもかなり高い重縮合速度、例えばポリマーの重量に対する触媒元素の重量にある程度基づき、三酢酸アンチモン又は三酸化アンチモンより10〜50倍速い速度を示す。同様な条件下でアンチモン触媒重縮合の場合よりもはるかに少量の触媒を用いながら、より短時間で、適当なインヘレント粘度を有するポリエステルを生成できる。或いは、チタン触媒は好ましくは、燐化合物の不存在下で、通常量の三酢酸アンチモン又は三酸化アンチモンを用いてより高温で達成されるのと少なくとも同じ重合速度をより低い温度で示す。より厳しい条件下でのアンチモン触媒重縮合と同様な時間でより緩和な条件下で、この場合もはるかに少量の触媒を用いながら、適当なインヘレントを有するポリエステルを生成できる。
【0060】
チタン触媒としては、一般に、アルコキシド、グリコレート、アセテート、オキザレートなどのようなチタン(IV)化合物が挙げられる。アルコキシド及び混合グリコレートアルコキシドが特に適当である。チタンアルコキシドには、例えばアセチルトリイソプロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート及びテトライソブチルチタネートなどがある。特に適当なチタン触媒材料としては、アセチルトリイソプロピルチタネート及びテトライソプロピルチタネート(別名チタン(IV)イソプロポキシド)が挙げられる。多くのこのような触媒が市販されている(例えば、DuPontから商標Tyzor(登録商標)チタネートとして)。不均一触媒の役割をする固体チタン化合物、米国特許第5,656,716号(引用することによって本明細書中に組み入れる)に開示されたものも適当である。チタン酸化物及び水和酸化物は、重合の過程において、例えばジオール成分との錯体形成及び/又は反応によって可溶化される可能性がある。触媒が依然として少なくとも一部分が不溶性である場合には、ヘイズ(明澄度の欠如)と同様に、触媒活性が問題となるであろう。可溶性触媒が好ましく、反応の最初に可溶性である触媒がより好ましい。チタン触媒は任意の常法で反応に取り入れることができる。例えば、オリゴマー混合物中の触媒の溶液又はスラリーと同様に、触媒のアルコール溶液又は触媒のエチレングリコール中スラリーを使用できる。触媒は単独でも添加でき、撹拌によって(即ち機械的混合によって又はスタティックミキサーを使用して)分散させることができる。
【0061】
溶融ポリエステルポリマーは、チタン種を含む重縮合触媒組成物の存在下で重縮合させる。「チタン」又は任意の他の無機触媒に言及する場合、チタン又は他の無機触媒原子は任意の酸化状態で存在する。「元素状チタン」又は元素状態の任意の他の無機触媒に言及する場合には、酸化状態はゼロである。
【0062】
本発明のポリマー中の触媒レベルの報告に用いた分析技術は螢光X線(XRF)である。慣例により、XRF技術は「元素分析」と称される。実際には、XRF試験は無機物含有種の酸化状態によって影響を受けず;従って、異なる酸化状態を区別できない。用語「Ti原子」の使用は全ての個々の酸化状態を意味しない。ポリエステル中の測定チタンレベルは、添加したチタン化合物のレベルに換算するのではなく、ポリエステルポリマーの重量に基づいて、Ti原子の量としてppmで報告する。一態様において、添加したチタン触媒の量は、ポリエステルポリマーの重量に基づき、例えば少なくとも2又は少なくとも4又は少なくとも6ppmであることができる。別の態様において、チタンの量は、ポリエステルポリマーの重量に基づき、例えば約50ppm未満、又は30ppm未満、又は20ppm未満、又は15ppm若しくはそれ以下、又は13ppm若しくはそれ以下、又は10ppm若しくはそれ以下である。更に別の態様において、Tiの量は、ポリエステルポリマーの重量に基づき、例えば少なくとも約3ppm、又は少なくとも4ppm、又は少なくとも5ppm、又は少なくとも6ppm、又は少なくとも7ppmであることができる。更に別の態様において、チタンの範囲は、それぞれポリエステルの重量に基づき、例えば約3ppm〜約20ppm未満まで、又は約4ppmから15ppm未満まで、又は約5ppmから10ppm未満までであることができる。
【0063】
アンチモン触媒はアンチモン金属に還元されるとポリマーに灰色の色合いを与えるので、チタンで触媒されたポリマーから製造された完成品はアンチモン基材触媒で触媒されたポリマーよりも通常は明度が高い(L*カラーが高い)ため、チタン基材触媒の使用が有利である。更に、本発明に従ってチタン触媒で促進される溶融相重縮合反応は、黄色の色合いを与えるAA捕捉剤を用いずに製造する場合には、+5未満の許容され得るb*を有するベースポリマーを生成できる。AA捕捉剤によって更に黄色の色合いがもたらされることがなければ、チタンで触媒されたベース樹脂中にトナー又は着色剤を組み入れて、例えば少なくとも70又は少なくとも73又は少なくとも76又は少なくとも80のL*明度を保持しながら、例えば3.0以下のb*値を得ることができる。
【0064】
一態様において、本発明の方法によって得られる結晶化ポリエステルポリマーは、例えば少なくとも約70又は少なくとも73又は少なくとも76又は少なくとも79のL*を有する。
【0065】
チタン種と共に任意的に存在できる他の触媒はアンチモン、亜鉛、コバルト、マンガン、錫、ゲルマニウム及び他の周知金属を含む触媒であることができる。しかし、一態様において、重縮合触媒組成物は本質的にチタン種からなる。これは、チタンと組み合わされる他の金属種の量が使用反応条件下において、同じ反応条件下でTi以外の金属の不存在下で製造された組成物に比べて、固体ポリエステルポリマー粒子のb*を、例えば約0.5 CIELAB単位より多く増加させてはならず、且つ/又は固体ポリエステルポリマー粒子のL*を、例えば約1 CIELAB単位より多く低下させてはならないことを意味する。一態様において、例えば約50ppm超の、又は30ppm超の、又は15ppm超の、又は10ppm超の、又は5ppm超の量の累積量のTi以外の触媒金属が、溶融相重合プロセスに加えられることはない。本発明の方法の利点の1つは、1種よりの多くの触媒を使用する必要なく、直接エステル化によって許容され得る速度でポリエステルポリマーを製造する簡潔さにある。従って、別の態様において、重縮合はチタン種のみからなる重縮合触媒組成物の存在下で行われる。これは、アンチモン、ガリウム、ゲルマニウム、亜鉛、マンガン又はマグネシウムのような他の金属の触媒化合物を、メルト中の重縮合反応を活発に触媒するために溶融相製造プロセスに加えないことを意味する。別の態様においては、コバルトを含む他の金属の化合物を添加しない。しかし、コバルト又はマンガンのような1種又はそれ以上の金属は、金属で触媒される液相酸化プロセスによって製造されたテレフタル酸組成物と共に不純物として入ってくるので、メルト中に低レベルで存在する可能性が高いことを認識すべきであるが、一態様においては、これらの金属は溶融相製造プロセスには加えない。
【0066】
一態様において、ゲルマニウム触媒はポリマーメルトに添加しないか、又は触媒としての添加ゲルマニウム供給源の不存在下で重縮合反応を行い、又はポリエステルポリマー、粒子、プレフォーム若しくはボトルはゲルマニウム原子供給源を含まない。
【0067】
プレポリマー重縮合段階は、一般に、一連の1つ又はそれ以上の容器を用い、約230〜305℃の温度において約5分〜4時間の間、行う。この段階の間に、モノマー及びオリゴマーのIt.V.は一般に最大で約0.45dL/gまで増加させる。メルトの重縮合を推進するために、一般に約4〜200トルの範囲の真空を適用して、プレポリマーメルトからジオール副生成物を除去する。その際に、ポリマーメルトからのジオールの逃散を促進するために、ポリマーメルトを時々撹拌する。ポリマーメルトを逐次容器に供給するにつれて、ポリマーメルトの分子量、従って極限粘度数に関連する溶融粘度が増加する。各容器の圧力は一般に、各逐次容器中又は1つの容器内の各逐次ゾーン内において重合度がより高くなるように、低下させる。グリコール類、水、アルコール、アルデヒド及び他の反応生成物の除去を促進するために、反応器は典型的には真空下で運転するか、又は不活性ガスでパージする。不活性ガスは、反応条件において望ましくない反応又は生成物の特性を生じない任意のガスである。適当なガスとしては、アルゴン、ヘリウム及び窒素が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0068】
予備重合ゾーン中で目的とするIt.V.、一般には、例えば最大約0.45dL/g、又は最大約0.3dL/g又は最大約0.2dL/gのIt.V.が得られたら、プレポリマーをプレポリマーゾーンから仕上げゾーンに供給する。仕上げゾーン中で、メルトのIt.V.が、例えば少なくとも約0.68dL/g又は少なくとも0.70dL/g又は少なくとも0.72dL/g又は少なくとも0.75dL/gあって、且つ約1.2dL/g以下のIt.V.に増加するまで、予備重合ゾーン中に存在するより高い温度まで、例えば約250〜約310℃又は約270〜約300℃の範囲内の値まで一般に昇温された(必ずしも昇温されないが)1つ又はそれ以上の仕上げ容器中で、重縮合の第2段階を継続させる。
【0069】
一態様において、重縮合ゾーンの少なくとも一部における、ポリマーメルトに適用された温度又はポリマーメルトの温度は、例えば約280℃超であって且つ約290℃以下である。別の態様においては、仕上げゾーン中の温度は、従来とは異なり、AA前駆体形成速度の急速な増加を避けるために、約280℃未満である。当業界で一般に「高重合器」、「仕上げ機」又は「重縮合器」として知られる最終容器は、また、通常は、ジオール及び/又は他の副生成物を更に除去し且つポリマーメルトの分子量を増加させるために、予備重合ゾーンで用いられるよりも低い圧力で運転する。仕上げゾーン中の圧力は、例えば約0.2〜約20mmHg又は約0.2〜約10mmHg又は約0.2〜約2mmHgの範囲内であることができる。仕上げゾーンは、典型的には、予備ゾーンと同じ基本的化学反応を含むが、分子の寸法、従って粘度が異なるという事実は、反応条件も異なることを意味する。しかし、プレポリマー反応器と同様に、1つ又は複数の仕上げ容器のそれぞれは真空又は不活性ガス下で運転し、それぞれを典型的には機械的に撹拌して(必ずしもそうではないが)、ジオール及び/又は他の副生成物の除去を促進する。
【0070】
この方法の工程b)において、触媒失活剤をポリマーメルトに添加する。一態様において、触媒失活剤は、Ti触媒を完全に添加した後に添加する。触媒失活剤とは、Ti触媒活性を少なくとも一部分失活させるのに有効な化合物を意味する。ある化合物が触媒系を少なくとも一部分失活するのに有効であるのは、所定レベルでの添加によって粒子溶融時のAA発生度又はプレフォーム中の遊離AAレベルが添加剤なしの場合に比べて低下される場合、並びに/又は所定レベルでの化合物の機能の試験に関してのみ言えば、a)実際運転条件下での固相化速度が失活剤を用いない同一ポリマー(添加剤なしの場合)に比較して低減される場合若しくはb)より早い段階で添加して、実際運転条件下における一定のIt.V.目標値までの溶融相重合速度が低減される、即ち、添加剤なしの場合に比較してIt.V.目標値への到達時間が長くなる又は一定時間におけるポリマーIt.V.が低減される場合である。
【0071】
別の態様において、触媒失活剤は、また、添加剤なしの場合に比較して、粒子溶融時におけるAA発生度を低下させる(即ち、添加剤なしの場合に比較して、プレフォームのような成形品中の遊離AAレベルに対するAA発生の寄与を低下させる)。別の態様において、触媒失活剤は、溶融相重合によって得られた少なくとも0.68dL/gのIt.V.を有する粒子の溶融時のAA発生度を、添加剤なしの場合に比べて低下させる。
【0072】
一態様において、触媒失活剤は、製造の遅い段階でポリマーメルトに加えて、その後の溶融加工工程におけるチタンの活性を制限する。さもなければ、チタンは、ポリマー中に存在するアセトアルデヒド前駆体の遊離アセトアルデヒドへの転化を触媒するであろう。未処理のままにしておくと、ポリマーは押出又は射出成形時に高いアセトアルデヒド発生度を有し、ポリマーから製造されるプレフォーム及びボトル中に許容され得ない量の遊離アセトアルデヒドを生じるであろう。触媒失活剤は、また、溶融相重縮合の終わり近くにおいて、また、固体ポリエステル粒子の溶融時に、例えば物品への溶融加工時に、ポリマーメルトの熱安定化を助けることができる。失活剤がなければ、高粘度メルト中でポリマー鎖を切断するより多くの反応が起こり、より多くのAA前駆体、そして最終的にはより多くの遊離AAが形成されるであろう。AA前駆体及び遊離AAの形成速度を低下させる他に、触媒失活剤はポリマーの加水分解性を改善することもできる。重縮合触媒系によって少なくとも一部分触媒される副反応は重縮合触媒系が少なくとも一部分失活される場合には、それほど問題にはならない可能性がある。メルトへの触媒失活剤の添加は、固体状態における触媒の失活よりも有効である。更に、固相金属失活技術、例えば長時間(30分又はそれ以上)の熱水処理(60〜130℃)は溶融相における触媒失活の経済的メリットを示さない。
【0073】
エステル交換反応において、触媒失活剤は、エステル交換触媒を失活させるのに充分であるが、エステル交換触媒の失活後に添加されるチタン含有触媒の触媒活性を大きく損なうことのないモル量で、エステル交換反応の終わりであって且つ重縮合の前に添加できる。しかし、エステル交換触媒は、得られるポリエステルポリマー溶融相生成物の色若しくは熱安定性又は他の望ましい性質を過度に損なうことがなければ、チタン含有触媒の添加前に失活させる必要はない。
【0074】
触媒失活剤は、例えば燐含有化合物である。燐化合物は1つ又はそれ以上の燐原子を含み、その例としては例えば燐酸トリエステル及び酸性燐化合物又はそれらのエステル誘導体が挙げられる。酸性燐化合物は少なくとも1つのオキシ酸基、即ち1つの酸素に二重結合し且つ少なくとも1つのヒドロキシル又はOH基に一重結合した少なくとも1つの燐原子を有すると定義される。
【0075】
燐化合物の具体例としては、燐酸、ピロ燐酸、亜燐酸、ポリ燐酸、カルボキシホスホン酸、アルキルホスホン酸、ホスホン酸誘導体並びにそれらの酸性塩及び酸性エステル及び誘導体のそれぞれ、例えば酸性燐酸エステル、例えば燐酸モノエステル及びジエステル、並びに非酸性燐酸エステル(例えば燐酸トリエステル)、例えば燐酸トリメチル、燐酸トリエチル、燐酸トリブチル、燐酸トリブトキシエチル、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、オリゴマー燐酸トリエステル、燐酸トリオクチル、燐酸トリフェニル、燐酸トリトリル、(トリス)エチレングリコールホスフェート、ホスホノ酢酸トリエチル、ジメチルメチルホスホネート、テトライソプロピルメチレンジホスホネート;燐酸とエチレングリコール、ジエチレングリコール若しくは2−エチルヘキサノールとのモノエステル、ジエステル及びトリエステル又はそれぞれの混合物が挙げられる。他の例としては、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、燐酸一水素化合物及び燐酸二水素化合物、ホスファイト化合物、ポリマーメルト中に好ましくは可溶なある種の無機燐化合物、ポリ(エチレン)水素ホスフェート及び燐酸シリルが挙げられる。粒子の溶液又は成形品のヘイズ(haze)は、ポリマーメルトへの添加剤の溶解度の欠如又は限られた溶解度の1つの指標である。可溶な添加剤は、触媒系を失活/安定化させる可能性がより高い。
【0076】
本発明において使用する触媒系は少なくとも一部分を容易に失活させることができるので、アンチモン触媒系と一緒ではそれほど有効でないことがこれまでわかっている燐化合物、例えば燐酸トリエステルのような酸性燐化合物のフルエステルを、本発明のポリマーメルト及び方法において使用できる。更に、アンチモン触媒系と一緒ではヘイズの増加を引き起こすことが分かっている燐化合物、例えば亜燐酸を、アンチモン触媒系の場合にはポリエステルを灰色又は黒色にする金属への還元によって明度を低下させ且つヘイズを増加させるように作用することなく、本発明の触媒系と共に失活剤として使用できる。従来のアンチモン触媒とは異なり、本発明のチタン触媒は、ある種の燐化合物によっては元素の形態に、即ちゼロ酸化状態に還元されず、従ってL*の低下(即ち灰色化)をそれほど起こしやすくない。従って、本発明のチタンで触媒されたポリエステルを用いて製造されたプレフォーム及びボトルは、アンチモンで触媒されたポリエステルポリマーから製造されたプレフォーム及びボトルよりも明度が高く、明澄である。
【0077】
従来のアンチモン触媒系においては、アンチモン金属及び燐酸アンチモン粒子が充分な大きさである場合には、それらは光を散乱し、粒子のヘイズの原因となる可能性がある。アンチモン金属及び燐酸アンチモンのより小さい粒子は、結晶化において核形成を引き起こし、結晶のヘイズの原因となる可能性がある。更に、PET及び/又は添加剤の不完全な乾燥のために水が存在する場合には、感湿性のヘイズが生じる可能性がある。約250ppmで使用される従来のアンチモン触媒とは異なり、本発明のチタン触媒は、はるかに低レベルで使用し、PET中の触媒粒子又は残基の濃度がはるかに低く;従って、チタンで触媒されたPETは、従来のアンチモンで触媒されたPETよりも結晶化がはるかに遅い。メルトからの結晶化が遅いことは、射出成形プロセスの押出機部分においてそれほど加熱を必要とせずに、明澄なプレフォームを成形し;従って冷却時間がより短く、ひいては射出成形サイクル時間が短縮され、即ち、単位時間当たりにより多くの明澄なボトルプレフォームを製造できることを意味する。メルトからの結晶化が遅いことは、厚い部分(parts)を成形する場合に特に望ましい。
【0078】
触媒失活剤は金属触媒の触媒活性を阻害し、ひいては重合縮合速度を抑制するので、触媒失活剤はチタン化合物の添加と同時には添加せず、重縮合の開始時にも添加しない。しかし、燐化合物の全ての型又は形態が失活剤であるとは限らず、失活剤でない場合には、所望ならば触媒と同時に又は重縮合の開始時に添加することができることに留意すべきである。
【0079】
触媒失活剤を、ポリマーのIt.V.で規定される重合プロセスの過度に早い段階で添加すると、妥当なプロセス時間で高い目標It.V.に達することがより困難又は不可能となる可能性がある。従って、先に述べたように、添加剤は重縮合の遅い段階で、好ましくは仕上げ機の出口近くで又はメルトからのペレット化若しくは他の凝固手段の直前に組み入れて、形成される固体中の遊離AA含量を減少させる。
【0080】
本発明のメリットの1つは触媒系を容易に失活できることであるので、重縮合速度を遅延させるほど過度に早い段階で触媒失活剤を添加しないように気を付けなければならない。所望の触媒失活剤の最終量の添加は、重縮合の実質的完了時とその後にのみ完了させるべきであり、好ましくは、所望の触媒失活剤の最終量は、溶融相製造プロセスにおいては重縮合の実質的完了又はその後まではポリマーメルトに添加すべきでない。
【0081】
触媒失活剤を溶融相重合において添加する態様において、「触媒失活剤の最終量」は、溶融相製造プロセスから出たポリエステルポリマー中において望ましい又はペレット中に見られる触媒失活剤の最終量を意味する。最終量に相当する触媒失活剤の部分を、以下に詳細に説明するように、重縮合過程の遅い段階又はその後であるが、凝固の前に添加するならば、必要に応じて、触媒失活剤の一部の量を溶融相製造プロセスの早い段階で、例えば重縮合の開始時又は最終エステル化反応器若しくはゾーンの後に添加することができる。重縮合速度及び/又は生産速度を最大にするためには、触媒失活剤のほとんど、又は好ましくは大部分、又は最も好ましくは全てを、溶融相製造プロセスの遅い段階で添加する。
【0082】
触媒失活剤を溶融相重合プロセスに添加する別の態様においては、触媒失活剤は、重縮合過程の遅い段階であって且つ凝固前に、ポリエステルメルトに添加する。触媒失活剤は重縮合反応過程において遅い段階で、1つ又はそれ以上の、以下の条件が満たされた時点又はその後であって且つポリエステルメルトの凝固前に、ポリエステルメルトに添加する:
(i)前記溶融ポリエステルポリマーを重縮合させるための最終反応器内、若しくは前記最終反応器と、前記溶融ポリエステルポリマー組成物を切断して前記固体粒子にするためのカッターの前との間;又は
(ii)前記溶融ポリエステルポリマー組成物のIt.V.が少なくとも0.5dL/gまで、若しくは少なくとも0.6dL/gまで、若しくは少なくとも0.68dL/gまで、若しくは少なくとも0.72dL/gまで、若しくは少なくとも0.76dL/gまで、若しくは少なくとも0.80dL/gまで上昇した後;又は
(iii)前記溶融ポリエステルポリマーメルトに適用された真空があれば、その少なくとも一部分が開放された時点;又は
(iv)重縮合時間の少なくとも75%、若しくは少なくとも80%、若しくは少なくとも90%、若しくは更には少なくとも95%の後(重縮合時間は、重縮合の開始から、重縮合が終了する時点若しくは目的とするIt.V.が得られる時点までの全時間である。ポリマーメルトが最終反応器から出ていき且つ真空が開放される時間の測定のために、最終反応器とカッターとの間で極めて小さいIt.V.の上昇若しくは中断が起こり得ることが認められるとしても、最終It.V.が得られる);又は
(v)凝固時に得られるIt.V.の+/−0.1dL/g以内若しくは0.05dL/g以内若しくは0.03dL/g以内若しくは0.015dL/g以内;又は
(vi)メルトの凝固前約30分以内若しくは20分以内若しくは10分以内若しくは5分以内若しくは3分以内。
【0083】
一態様において、失活剤は、ポリエステルメルトが少なくとも0.50dL/g又は少なくとも0.55dL/g又は少なくとも0.60dL/g又は少なくとも0.65dL/g又は少なくとも0.68dL/g又は少なくとも0.70dL/g又は少なくとも0.72dL/g又は少なくとも0.76dL/g又は少なくとも0.78dL/g又は少なくとも0.80dL/gのIt.V.を獲得した後に、ポリエステルメルトに添加し、最も好ましくは、失活剤の添加時点に関わらず、溶融相製造から出た得られたポリマーは少なくとも0.68dL/g又は少なくとも0.72dL/g又は少なくとも0.76dL/gのIt.V.を有する。
【0084】
別の態様において、ポリエステルメルトへの失活剤の添加は、重縮合反応を受けているポリエステルメルトから真空の少なくとも一部分が開放されている間に若しくは開放された後に、又は重縮合ゾーン若しくは反応器中の圧力を、最大でも10mmHg若しくはそれ以下のより低いレベル又は好ましくは最大でも3mmHg若しくはそれ以下のより低いレベルから、300mmHg若しくはそれ以上又は450mmHg若しくはそれ以上又は600mmHg若しくはそれ以上又は大気圧若しくはそれ以上のレベルに至らせた後であって且つ好ましくはポリエステルメルトの凝固前に、行う。
【0085】
別の態様において、失活剤は、溶融ポリエステルポリマーを重縮合させるための最終反応器内において、又は前記最終反応器と溶融ポリエステルポリマー組成物を切断して前記固体粒子にするためのカッターの前との間において、添加する。例えば、失活剤は、反応器の入口から出口までの距離を100%とした場合に、反応器の出口までの距離が50%以内の場所に若しくは25%以内の場所に若しくは10%以内の場所に;又は反応器の出口近傍の場所に;又は最終重縮合反応器と、切断用のダイプレートにメルトを押し通す原動力を提供するギアポンプ若しくは押出機とを直接又は間接的に接続するパイプ(前記パイプは最終重縮合反応器の出口若しくは底部に又はその近傍に導かれる)に;又は最終重縮合反応器の出口近傍にある最終重縮合反応器へのパイプ入口に、加える。「最終重縮合反応器の出口の近傍」とは、添加場所が、前記反応器の最後の25%若しくはそれ以下の範囲内、又は前記反応器の最後の15%若しくはそれ以下の範囲内、又は好ましくは前記反応器の最後の10%若しくはそれ以下の範囲内であることを意味する。この百分率は、最終重縮合反応器の長さ、高さ又は容積によることができる。好ましくは、この百分率は長さ又は高さによる。長さ、高さ又は容積の最終百分率は、最終重縮合反応器の出口を基点として測定する。添加箇所は、高さ、長さ又は容積のいずれか1つによる測定が適合すれば、このような基準の1つが更に要求されるのでなければ、記載された百分率の範囲内であると見なす。
【0086】
更に別の態様において、失活剤は、平均重縮合時間の少なくとも約75%若しくは少なくとも80%若しくは少なくとも90%若しくは少なくとも95%若しくは少なくとも98%若しくは最大で約100%の後に、ポリエステルメルトに添加する。平均重縮合時間は、メルトの所定部分が重縮合ゾーンの最初の部分に入った時点から、メルトの所定部分が最終重縮合反応器からのポリエステルメルトの出口に達した時点までの平均経過時間の基準である。重縮合ゾーン中における平均重縮合時間又は平均滞留時間は追跡調査又は模擬実験によって測定できる。
【0087】
別の態様において、失活剤は、ポリエステルメルトのIt.V.が凝固時に得られるIt.V.の約0.1dL/g以内若しくは0.05dL/g以内若しくは0.030dL/g以内若しくは0.02dL/g以内若しくは0.015dL/g以内となった場合に、ポリエステルメルトに添加する。例えばポリエステルメルトは凝固時に得られるIt.V.より約0.10dL/g低いIt.V.を有することもできるし、凝固時に得られるIt.V.より約0.10dL/g高いIt.V.を有することもできるであろう。
【0088】
更に別の態様において、失活剤は、ポリエステルメルトの凝固前30分以内若しくはそれ以下の範囲内又は20分以内若しくはそれ以下の範囲内又は10分以内若しくはそれ以下の範囲内又は5分以内若しくはそれ以下の範囲内又は3分以内若しくはそれ以下の範囲内の時点で、ポリエステルメルトに添加する。ポリエステルメルトの凝固は、典型的には、メルトをダイプレートに通して水浴中に押し進めて、ペレットに切断する場合又は溶融押出し成形プロセスにおいて前記メルトが射出押出しされて成形品となる場合に起こる。最も広い意味では、凝固は、ポリマーメルトの温度がポリマーの結晶融点未満まで低下された場合に起こる。
【0089】
更に別の態様において、本明細書中に記載した態様のそれぞれを、例えば溶融相プロセスの処理量が定常状態運転でポリエステルポリマーの少なくとも1メートルトン/日又は少なくとも50メートルトン/日又は少なくとも100メートルトン/日又は少なくとも200メートルトン/日又は少なくとも300メートルトン/日又は少なくとも400メートルトン/日又は少なくとも500メートルトン/日である連続的な商業的製造方法において個別に又は組合せて行う。
【0090】
約0.40dL/gのIt.V.から少なくとも約0.68dL/g〜約0.94dL/gの範囲のIt.V.までのメルトの反応時間は、好ましくは約240分若しくはそれ以下又は210分若しくはそれ以下又は180分若しくはそれ以下又は150分若しくはそれ以下又は120分若しくはそれ以下又は90分若しくはそれ以下又は50分若しくはそれ以下である。前記時間の間において、適用された真空は、例えば約0.5〜約1.0mmHgの範囲であり、温度は、例えば約275〜約285℃である。一態様において、目標It.V.は、触媒失活前は約0.82〜約0.92dL/gである。この態様は、本明細書中に記載した他の態様のいずれかと、組合せることが可能である。
【0091】
本発明の方法において使用する燐化合物又は他の触媒失活剤の量は、チタン化合物残基の触媒活性を一部分又は完全に失活させることによって、溶融相において生成された固体ポリエステルポリマー粒子の溶融時に発生する遊離AAの量を低減させるのに有効である。許容され得る、固体ポリエステル粒子の溶融時の遊離AA発生量は、最終使用用途及び多くの場合には関係する当該飲料ブランドの所有者によって異なる。水ボトルの製造に使用されるプレフォームは、炭酸清涼飲料(CSD)用ボトルの製造に使用されるプレフォームよりも低い遊離AA規格値を有することが多い。例えばCSDプレフォーム中遊離AAの最大許容レベルは約9ppmであることができるのに対して、一部の水ボトルプレフォーム中遊離AAの最大許容レベルは約3ppmであろう。CSD及び水市場の両方において使用するためのプレフォーム、即ち二重用途プレフォームは、水市場でのみ使用されるプレフォームと同様なAA規格値を有することが多い。本発明のポリエステルポリマー中に使用する燐化合物又は他の触媒失活剤の量は、最終使用用途及び/又は関係する飲料ブランドの所有者によって異なる。例えば、目標燐対チタンモル比又は所定のTiレベルに対するPET中の燐レベルは、水又は二重用途の場合にはCSD用途の場合よりも高いであろう。触媒失活剤の遅い段階での添加はIt.V.の低下を引き起こすおそれがあるので、可能な最少量の失活剤を、所定の用途のための目標遊離AAレベルを成形品中において達成するように、添加すべきである。85%燐酸の遅い段階での添加によるIt.V.低下は、ニートの燐酸トリエステルの添加によるIt.V.低下よりも大きい。実際的な視点から見れば、It.V.低下は生産速度にマイナスの影響がある。更に、It.V.が低いほど、一部のAA前駆体と反応してAAを形成する可能性があるヒドロキシエチル末端基が多いことを意味するので、ある時点で、It.V.低下はAAに関するメリットを妨害し始める可能性がある。
【0092】
失活剤が腐蝕性である場合には、所定用途のための目標遊離AAレベルを成形品中で達成するために可能な最少量の失活剤を添加することが特に重要である。遊離AA低下における有効性が等しいことを前提とすれば、場合によっては、燐酸トリエステルのような中性化合物が、燐酸のような酸性化合物よりも好ましい。例えば、多量の燐酸は、ポンプの腐蝕、及び装置がチタン又はハステロイのような適切なメタラジーを有さない場合には反応器の腐蝕を促進する可能性がある。その一方で、燐酸は、腐蝕の対策をしさえすれば、使用がより経済的であることができ、より優れた性質を有するポリマーを生成できる。
【0093】
この方法において使用するチタン原子に対する遅い段階で添加する燐の量は限定しないが、メルト中に存在するチタン金属及び他の金属の量は配慮する。チタン以外の金属の化合物も燐化合物と反応する。チタン化合物以外に燐化合物と反応する他の金属化合物が存在する場合には、遅い段階で添加する燐化合物の量は、燐化合物が存在する全ての反応性金属と確実に反応するか又は結合するように、目標P:Ti MRを達成するのに必要な量より上回ることが望ましい。燐原子のモル対チタン原子のモルの比は望ましくは少なくとも0.15:1、又は少なくとも0.3:1、又は少なくとも0.5:1、又は少なくとも0.7:1、又は少なくとも1:1、又は少なくとも2:1である。
【0094】
P:Ti MRは25であるのが適当であること及び上限が特定されないことがわかったが、大過剰の燐化合物は過度のIt.V.低下を引き起こす可能性がある。実際的な視点から見れば、It.V.低下は生産速度にマイナスの影響がある。高レベルの触媒失活剤によるIt.V.低下が大きいほど、触媒失活剤の添加前にIt.V.を大きくする必要がある。It.V.が低いほど、一部のAA前駆体と反応してAAを形成する可能性があるヒドロキシエチル末端基が多いことを意味するので、ある時点で、It.V.低下はAAのメリットを妨害し始める可能性がある。
【0095】
燐化合物の遅い段階での添加の直前の時点では、ポリマー中の燐対チタンモル比は可能な限り低いことが好ましい。この選択が、最大のAAメリットを与える。燐化合物の遅い段階での添加前の時点におけるポリマー中のゼロでない燐対チタンモル比は、AAをそれでも低下させることができるが;早い段階で添加される燐のレベルが増加する場合には特に、遅い段階での燐レベルの増加に伴うAA減少の速度はより遅くなり、最大のAA減少も小さくなるであろう。それはそれとして、前述の燐対チタンモル比の範囲は、燐化合物の遅い段階での添加の前におけるポリマー中の燐対チタンモル比(P:Ti MR)が0.1:1未満若しくは0.05:1未満若しくは0.01:1未満若しくは0.005:1未満である、又は重縮合反応に添加されるP及びTiがゼロ若しくはほぼゼロである、好ましくは溶融相プロセス(エステル化又はエステル交換反応を含む)に添加されるP及びTiがゼロ若しくはほぼゼロである場合に、導き出される。
【0096】
触媒失活剤はニートで、即ち85%又はそれ以上の燐酸の場合のように更なる稀釈をせずに添加するのが望ましい。この態様において、触媒失活剤の溶媒又は希釈剤とポリエステルポリマーメルトとの反応によるIt.V.低下は低減させることができる。或いは、担体を用いて触媒失活剤のより稀薄な溶液を形成する場合には、担体は反応しない、即ち、その分子量のポリエステルポリマーメルトを破壊することもAA発生度を増加させることもないのが好ましい。水、アルコール、グリコール類及び比較的低分子量のPETは、ポリマー鎖を破壊することが知られている。万一、触媒失活剤を反応性希釈剤又は溶媒と共に投入する場合には、触媒失活剤の最少量及びそれに関連するIt.V.低下がわかった時点で、触媒失活前に生じるIt.V.が予想It.V.低下量だけ高くなるように溶融相プロセスを実施することができ、それによって目標It.V.を達成できる。
【0097】
ポリマー分子量が所望の程度まで増加したら、ペレット化のために、最終重縮合反応器、この場合には仕上げ機からポリマーを排出する。分量のバルクポリマーが導管を通って仕上げ容器から出るのを容易にするために、ギアポンプを用いることができる。溶融ポリマーの切断前に、及び本発明の別の態様においては溶融相最終反応器から出る前に、バルクポリマーを溶融相で、液体(溶融流、分散液、乳濁液、均質液体及び不均質スラリーを含む)である第2の流れと合するのが望ましい場合がある。一態様において、第2の流れは、凝固前の任意の段階で、例えば、最終バルクポリマー反応器(例えば仕上げ機としても知られる最終重縮合反応器)の入口とカッターとの間において、溶融相プロセスに導入できる。別の態様においては、第2の流れは、最終反応器内の滞留時間の後半より後であって且つカッターの前において導入することができる。更に別の態様においては、触媒失活剤を第2の流れに添加してから、処理した第2の流れをバルクポリエステルポリマーメルト中に導入することができる。
【0098】
第2の流れの導入方法及び第2の液体流の供給源は限定しない。例えば後流(スリップストリーム)(slip stream)の一部を処理し且つ更に加工することが望ましい場合がある。一態様において、ポリマーメルトの後流は、凝固前にメルトを最終反応器から排出する際に、ポリエステルポリマーメルトから取り出すことができる。次に、後流に触媒失活剤を加え、処理した後流(第2の流れとしても知られる)を、ポリエステルポリマーメルトが最終反応器から排出される箇所より上流で、最終反応器に循環し戻すことができる。別の態様において、第2の流れは、溶融相プロセスで製造されたバルクポリマーから独立した又はそれとは異なる供給源(例えば第2重合反応器)からポンプ手段によって又は押出機を通して仕上げ機中に導入するのが望ましいであろう。
【0099】
仕上げ反応器の直後であって且つペレット化の前に、本発明の燐含有化合物を溶融ポリエステルに添加し、スタティックミキサー又は任意の効果的な混合装置によってブレンドすることができる。別法として、燐含有化合物を仕上げ反応器の終端近くで添加することもできる。いずれの場合にも、燐含有化合物は、ニートで(稀釈せずに)溶融ポリエステルの後流中に、ポリエステルペレット中マスターバッチ(即ちコンセントレート)として又は液体担体中に入れた状態で加えることができる。本発明に係るポリエステルは、シート、フィルム、チューブ、形材、プレフォーム、繊維、織物及び造形品(例えば容器)、並びに熱成形品(例えばトレイ)などを含む種々の物品の形成に使用できる。
【0100】
別の態様において、触媒失活剤及びUV抑制剤、着色剤、再加熱添加剤(reheat additive)のような他の化合物を、最終重縮合反応器から出たポリエステルメルト流から取った後流中に添加し、処理したメルト流を、最終反応器に又は最終反応器から出た溶融相流から後流を取る前の箇所に再循環することができる。これらの添加剤の任意の1種又は混合物を第2の液体流に含ませることができる。
【0101】
触媒失活剤を含む添加剤は、後流によって溶融バルクポリマー流に添加することもできるし、或いは前述のように新鮮な供給源から投入することもできる。更に又は或いは、固体添加剤は固体添加剤供給容器から後流に添加することもできる。押出機のような追加の加工装置を用いて、後流への固体添加剤の混合を促進することができる。押出機は、また、後流への更なる混合量を提供する役割をすることができる。押出機は後流と同一ライン上であることもできるし、後流に交差することもできる。後流に1種又はそれ以上の添加剤を混入する際に後流に原動力を与えるために、1つ又はそれ以上の任意的なギアポンプを用いることもできる。任意的には、後流ラインと同一ラインの1つ又はそれ以上のスタティックミキサーを用いて後流を加工し、希望通りに追加の混合度を提供することができる。従って、処理された部分又は添加剤が混入されたポリマー後流を生成して、バルクポリマー流中に再導入するために仕上げタンクに戻すことができる。所望ならば、添加剤が混入された又は第2の流れを含む触媒失活剤を仕上げタンクに戻し、任意の適当な方法で仕上げタンク中に分散させることができる。
【0102】
遅い段階での又は溶融相プロセスの終わり近くでの触媒の失活により、溶融相プロセス(エステル化及び重縮合を含む)にAA捕捉剤(スカベンジャー)(例えばポリアミドAA捕捉剤)を加えなくても、その後の溶融加工において発生するAAが、触媒失活剤を添加されていなかったならば発生したであろうよりも少ないポリエステル粒子を生成することができる。燐化合物の遅い段階での添加によって、チタン触媒系は、触媒失活剤を用いずに生成したポリエステルポリマー又は従来のアンチモン触媒を用い且つそれを燐化合物で遅い段階で同様に失活させて若しくは失活させずに生成したポリエステルよりも、AA発生度が低いポリエステルポリマー粒子を生成できる。プレフォームのような成形品は、チタン触媒系で触媒し且つ燐化合物を遅い段階で添加したポリエステルポリマーから生成した場合には、同じ系で触媒したが燐化合物の遅い段階での添加を行わなかったポリエステルポリマーから生成した場合又は従来のアンチモン触媒で触媒し且つ燐化合物によって遅い段階で同様に失活させたか若しくは失活させなかったポリエステルポリマーから生成した場合よりも、低い遊離アセトアルデヒドレベルを有することができる。チタン系で触媒されたポリエステルメルトに燐化合物を遅い段階で添加することにより、AA捕捉剤又は他のAA低減剤の添加を必要とせずに、水ボトル用途で用いるのに充分に低い遊離AAレベル及びAA発生度を有するポリエステルポリマー粒子を得ることが可能になる。
【0103】
別の態様において、溶融相のみの重合プロセスから出たポリエステルポリマーメルトを、凝固前に触媒失活剤又は触媒失活工程によって処理しないポリエステル粒子及びこのようなポリエステル粒子の製造方法を提供する。この態様においては、カッター又は粒状化装置から得られた未処理ポリエステル粒子を最終ポリマー反応器から排出し、ペレット化し、触媒失活剤をその後の溶融加工工程において凝固ポリエステルポリマー粒子に添加する(例えばポリエステルポリマー粒子を溶融及び押出してボトルプレフォームにするのに使用する射出成形機中に供給材料として)。
【0104】
本発明の別の態様において、ポリエステルポリマーは凝固前に触媒失活剤で処理するが、凝固後には、触媒を失活させるためのプロセス工程若しくは化合物若しくはポリマー又はそれらの任意の組合せによって、例えばポリマーを製造するための溶融相段階からの凝固の工程後の触媒を失活させるのに充分な温度において充分な時間ポリエステルポリマー粒子を熱水中に浸すか又は熱水に暴露することによって、処理しない。例えば、ポリエステルポリマーを、常法によるか水中切断技術によるかにかかわらず、粒状化し、ポリマーグラニュールを粒状化工程において水から分離して単離した後には、ポリエステルポリマー固体は、60℃又はそれ以上において30分又はそれ以上というような熱水処理には供すことはない。触媒は溶融相においてポリエステルポリマーメルトへの触媒失活剤(例えば燐化合物)の添加によって失活されるので、触媒を失活させるための、凝固後のポリエステルポリマーの更なる処理は必要ない。
【0105】
前述の溶融相プロセス条件及び反応器の配置は溶融相プロセスの例示であること、及び本発明はこの例示としてのプロセスに限定するものではないことを理解すべきである。例えば、ある特定の個々のIt.V.値において、種々の運転条件に言及するが、記載されたIt.V.値の内側又は外側で異なるプロセス条件を実行することもできるし、或いは記載された以外のメルト中It.V.点において、記載された運転条件を適用することもできる。更に、メルトのIt.V.を測定又は予測するのではなく、反応時間に基づいてプロセス条件を調節することができる。この方法は、また、直列又は並列でのタンク形反応器の使用にも、各ゾーンへの異なる容器の使用にも限定するものではない。重縮合反応は、プレポリマーゾーンと仕上げゾーンに分割することも必要ないし(重縮合反応は、経時的に運転条件が変化する1つの重縮合反応器中で行うことができるので)、回分法、半回分法若しくは連続法のいずれにおいても直列の多数の反応器に分割することも必要ない。
【0106】
ポリマー分子量を所望の度合いまで増加させたら、溶融相反応器中の溶融ポリエステルポリマーを溶融相生成物として排出し、ポリマーメルトにアセトアルデヒド捕捉剤を添加せずに凝固させる。アセトアルデヒド捕捉剤は高価であって、特に遊離AAと捕捉剤との反応生成物が有色である場合には、黄色のトーンアウト(toning out)後にポリエステルポリマーのb*カラーを増加させるか又はL*カラーを低下させる原因となるので、アセトアルデヒド捕捉剤の添加を回避することが望ましい。AA捕捉剤に熱安定性又は揮発性の問題があるならば、高温及び高真空が適用される重縮合ゾーンの仕上げ機において捕捉剤が添加される場合には、遊離AAの低下における所定量の捕捉剤の有効性は低下する。一部のAA捕捉剤は、固体ポリエステル粒子及び/又はその後の成形品中の黒色斑点の量を増加させる。
【0107】
アセトアルデヒド(AA)捕捉剤は、物理的力によって相互作用してアセトアルデヒドを結合し、ポリエステルポリマーからのその放出を防ぐか、又は化学反応によって相互作用してアセトアルデヒドを1種若しくは複数の別の化合物に転化する化合物又はポリマーである。アセトアルデヒド前駆体の形成又は前駆体のその後の反応による遊離AAの形成を防ぐのではなく、捕捉剤は遊離アセトアルデヒドに結合することによって又は遊離アセトアルデヒドを1種若しくは複数の別の化合物に転化することによって作用する。最終的な効果はアセトアルデヒドがもはや存在しないか又は固体ポリエステル粒子若しくは成形品から外へ移動できないことである。
【0108】
アセトアルデヒド捕捉剤は当業者には知られている。例としては、ポリアミド(例えば米国特許第5,266,413号、第5,258,233号、第4,837,115号及び第5,650,469号に開示されたもの)、ポリエステルアミド(例えば1996年2月5日に出願された米国出願第595,460号に開示されたもの)、ナイロン−6及び他の脂肪族ポリアミド(例えば特願昭62−182065号公報(1987年)に開示されたもの)、エチレンジアミン四酢酸(米国特許第4,357,461号)、アルコキシル化ポリオール(米国特許第5,250,333号)、ビス(4−[bgr]−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン(米国特許第4,330,661号)、ゼオライト化合物(米国特許第5,104,965号)、5−ヒドロキシイソフタル酸(米国特許第4,093,593号)、超臨界二酸化炭素(米国特許第5,049,647号及び第4,764,323号)及びプロトン酸触媒(米国特許第4,447,595号及び第4,424,337号)が挙げられ、ほとんどの周知のアセトアルデヒド捕捉剤は、ポリ(カプロラクタム)、ポリ(ヘキサメチレン−アジパミド)、ポリ(m−キシレン−アジパミド)のようなホモ及びコポリアミド並びに活性メチレン基を有する任意の他の化合物又はポリマーである。
【0109】
一部のAA捕捉剤は、ポリエステルポリマー並びにポリエステルポリマーから製造されたボトル、容器又はフィルムの黄変を引き起こす。例えば米国特許第5,258,233号、第5,650,469号及び第5,021,515号並びに米国特許出願公開公報第2006/0148957号及び米国特許出願公開公報第2006/0180790号(引用することによってその全体を本明細書中に組み入れる)に記載されたものを含むポリアミドホモポリマー又はコポリマーはAA捕捉剤であり、ポリエステルポリマー中に組み込まれて、溶融ポリエステルポリマーの加工温度に暴露された場合に、ポリエステルポリマーを黄色にする可能性がある。このような1種又はそれ以上のホモポリマー又はコポリマーを本明細書中では単に「ポリアミドAA捕捉剤」と記載する場合がある。
【0110】
本明細書中では一般に用語「ポリアミドAA捕捉剤」を用いる。ポリアミドAA捕捉剤はホモポリマー、コポリマー及びターポリマーであるものを含み、カルボン酸官能基化モノマー(例えばジカルボン酸化合物)をアミン官能基化モノマー(例えばジアミン化合物)と反応させることによって、又はモノマー残基間に主にアミド結合を含むポリマーを形成するための任意の他の周知方法によって、例えばラクタムを介して、アミノ酸若しくはジアミンと反応した酸塩化物を用いて製造できる。ポリアミドは、典型的には、ポリマー鎖中のモノマー単位がブロック状ではなくランダムに配列されたランダムポリマーである。ここで使用する「ポリアミドAA捕捉剤」は、また、低分子量ポリアミド及びオリゴマーも含み、例えば2つの一官能価アミンモノマーと縮合されたか又はそれで末端キャップされたジカルボン酸モノマーを含むことができる。同様に、用語「ポリアミドAA捕捉剤」は、また、2つの一官能価カルボン酸モノマーと縮合されたか又はそれで末端キャップされたジアミンモノマーを含む低分子量ポリアミドを表すこともできる。
【0111】
本明細書中で使用する用語「カルボン酸モノマー」は、典型的にはジカルボン酸モノマーであるが、他の官能価のモノマーであることもできる。例えばカルボン酸モノマーは、ジカルボン酸モノマーに加えて又はその代わりに、例えばポリアミドAA捕捉剤を末端キャップすることによって、分子量及びポリマーブレンドへの分散のような、ポリアミドAA捕捉剤の性質に影響を与えるのに使用される一官能価カルボン酸モノマーを含むことができる。2つより多いカルボン酸基で官能基化されたモノマーもポリアミド中に縮合させることができる。
【0112】
同様に、「アミンモノマー」は、典型的には、ジアミンモノマーであるが、他の官能価のモノマーであることもできる。例えばアミン成分は、ジアミンモノマーに加えて又はその代わりに、例えばポリアミドAA捕捉剤を末端キャップすることによって、分子量及びポリマーブレンドへの分散のような、ポリアミドAA捕捉剤の性質に影響を与えるのに使用される一官能価アミンモノマーを含むことができる。2つより多いアミン基で官能基化されたモノマーも、架橋を付与するためにポリアミドAA捕捉剤中に縮合させることができる。
【0113】
一態様において、ポリアミドAA捕捉剤は、一般式:
【0114】
【化1】

【0115】
で表されるアミド部分を、100%を構成するモノマー残基間の縮合結合の総数に基づき、好ましくは少なくとも50%又は少なくとも70%又は少なくとも80%の結合の量で含む反応生成物である。別の態様において、100%を構成する結合の総数に基づき、ポリアミドポリマー中の異なるモノマー残基間の少なくとも80%又は少なくとも90%又は少なくとも95%又は少なくとも98%の結合がアミド結合である。ポリマー中に存在するこのようなアミド結合の数は、例えば約1〜約200又は約50〜約150の範囲であることができる。
【0116】
別の態様において、ポリアミドAA捕捉剤は、メチレン基が隣接sp2型炭素原子によって共鳴安定化される場合に見られるような活性メチレン基を含む。活性メチレンとしては、例えばアリル基水素及びベンジル基水素、例えば太字で示された炭素に結合した下記構造:
【0117】
【化2】

【0118】
[式中、Rは水素又はアルキル基である]
中に存在するものが挙げられる。従って、ベンジル位はアリール環に直接結合した炭素である。この炭素は、アリール環中の隣接sp2炭素によるベンジル基又はカチオンの共鳴安定化のため、特に活性である。アリール環は、例えばフェニル環又はナフチルのような別の多環芳香環であることができる。好ましくはアミン残基の少なくとも50%が活性メチレン基、例えばアリル基、オキシアルキレン水素を含み、又はより好ましくはアミン残基の少なくとも50%がベンジル水素基を含む。
【0119】
更に別の態様において、ポリアミドAA捕捉剤はアジピン酸及びm−キシリレンジアミンの残基を含む。一態様において、本発明によってポリアミドAA捕捉剤はアジピン酸残基を、合計100モル%になるポリアミド中の総カルボン酸残基に基づき、例えば少なくとも約50モル%又は少なくとも60モル%又は少なくとも70モル%又は少なくとも80モル%であって、約85モル%以下又は90モル%以下又は95モル%以下又は98モル%以下又は100モル%以下の量で含むことができる。
【0120】
別の態様において、ポリアミドAA捕捉剤は、m−キシリレンジアミン残基を、100モル%を構成するポリアミド中の総アミン残基に基づき、例えば少なくとも約50モル%又は少なくとも60モル%又は少なくとも70モル%又は少なくとも80モル%であって、約85モル%以下又は90モル%以下又は95モル%以下又は98モル%以下又は100モル%以下の量で含み、アミン残基の残りは、p−キシリレンジアミンのような1種又は他のアミンからの残基を含む。
【0121】
更に別の態様において、ポリアミドAA捕捉剤は、100モル%を構成するポリアミド中のカルボン酸残基の総量に基づき、約80〜100モル%のアジピン酸残基及び100モル%を構成するポリアミド中のアミン残基の総量に基づき、約80〜100モル%のm−キシリレンジアミン残基を含むコポリマーを含むことができる。更に別の態様において、ポリアミドAA捕捉剤は、100モル%を構成するポリアミドAA捕捉剤中のカルボン酸残基の総量に基づき、約95〜100モル%のアジピン酸残基及び、100モル%を構成するポリアミドAA捕捉剤中のアミン残基の総量に基づき、約90〜100モル%のm−キシリレンジアミン残基を含む。別の態様において、ポリアミドAA捕捉剤は、ポリ(m−キシリレンアジパミド)の反復単位を、100モル%を構成するポリアミド中の酸/アミン単位の総モルに基づき、それぞれ、少なくとも60モル%又は少なくとも75モル%又は少なくとも80モル%又は少なくとも85モル%又は少なくとも90モル%又は少なくとも95モル%又は少なくとも96モル%の量で含むことができる。
【0122】
アジピン酸残基の他に、ポリアミドAA捕捉剤のカルボン酸残基は、例えば20モル%以下又は10モル%以下又は5モル%以下又は2モル%以下の、炭素数が例えば2〜20の1種又はそれ以上の追加のカルボン酸残基、例えば炭素数7〜12の1種又はそれ以上の脂肪族カルボン酸残基、例えばピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸又は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の残基を含むことができる。他の態様において、カルボン酸残基はイソフタル酸又はテレフタル酸残基を含むことができる。
【0123】
ポリアミドAA捕捉剤のアミン残基は、20モル%以下又は10モル%以下又は5モル%以下の、炭素数2〜16の1種又はそれ以上の追加のアミン残基を含むことができる。例としては、p−キシリレンジアミン、1,2−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ヘキサメチレンジアミン及びそれらの混合物が挙げられる。
【0124】
ポリアミドAA捕捉剤の製造に使用するアミンモノマーは100%純粋でなくてもよく、確認されるアミンモノマーが主たるモノマーであれば、副反応生成物をもむことができることを理解すべきである。同じことはカルボン酸モノマーについても言える。
【0125】
本発明のポリアミドAA捕捉剤は、更に、その他の結合、例えばイミド及びアミジンを含むことができる。
【0126】
ポリアミドAA捕捉剤は、例えば
(a)合計100モルとなるポリアミド中の総ジカルボン酸残基に基づき、少なくとも約50モル%又は少なくとも60モル%又は少なくとも70モル%又は少なくとも80モル%であって、約85モル%以下又は90モル%以下又は95モル%以下又は98モル%以下又は100モル%以下の量のアジピン酸のジカルボン酸残基と、例えば5モル%以下又は40モル%以下又は30モル%以下又は20モル%以下又は10モル%以下又は5モル%以下のイソフタル酸又はテレフタル酸の残基及びそれらの混合物からなる残りのジカルボン酸残基;並びに
(b)100モル%を構成するポリアミド中の総ジアミン残基に基づき、例えば少なくとも約50モル%又は少なくとも60モル%又は少なくとも70モル%又は少なくとも80モル%であって、約85モル%以下又は90モル%以下又は95モル%以下又は98モル%以下又は100モル%以下の量のm−キシリレンジアミンの残基を含むジアミン残基と、50モル%以下又は40モル%以下又は30モル%以下又は20モル%以下又は10モル%以下又は5モル%以下の量の、p−キシリレンジアミン又はヘキサメチレンジアミン残基のような1種又はそれ以上の他のジアミンからの残基からなる残りのジアミン残基
を含む。例としては、ポリ(m−キシリレンアジパミド)(本明細書中において「MXD6」と記載する場合がある)、ポリ(m−キシリレンアジパミド−コ−イソフタルアミド)、ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド−コ−テレフタルアミド)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド−コ−イソフタルアミド)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド−コ−テレフタルアミド)、ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド−コ−テレフタルアミド)など又はそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定するものではない。特に適当なポリアミドとしては、ベンジル水素を有する残基を含むもの、例えばポリ(m−キシリレンアジパミド)、ポリ(m−キシリレンイソフタルアミド−コ−テレフタルアミド)、ポリ(m−キシリレンアジパミド−コ−イソフタルアミド)のようなポリアミド及びそれらの混合物が挙げられる。
【0127】
ポリアミドAA捕捉剤の数平均分子量は特に限定するものではない。数平均分子量(Mn)は、例えば少なくとも約1,000であって、例えば約45,000以下であることができる。或いは、ポリアミドポリマーのMnは、少なくとも2,500又は少なくとも3,500又は少なくとも5,000であって、約7,000以下又は約12,000以下又は約25,000以下であることができる。所望ならば、約200から若しくは300から若しくは500から若しくは1,000から約12,000まで、又は2,000〜10,000若しくは2,500〜7,000の範囲の低分子量ポリアミドを使用できる。ポリマーブレンドの光学的明澄度が重要である場合には、本発明者らは、低分子量ポリアミドの使用が光の透過率をそれほど妨げないであろうと考える。
【0128】
ポリアミドAA捕捉剤は、米国特許出願公開第2006/0180790号(引用することによってその全体を本明細書中に組み入れる)に記載されたものを含む。例えばポリアミドAA捕捉剤は、例えばベンジルアミンからのようなベンジル水素を有する2つの一官能価アミン又は二官能価アミンと縮合されたアジピン酸を含むことができる。これらのモノマーは同一であっても異なってもよい。或いは、低分子量ポリアミドは、カルボン酸(例えば蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、安息香酸)又は酸塩化物のような2つの一官能価又は二官能価モノマーと縮合されたm−キシリレンジアミンを含むことができる。これらのモノマーは同一であっても異なってもよい。このような分子の分子量はある程度は、モノマーが一官能価であるか二官能価であるかによって、即ちモノマーがその他のモノマーと更に反応する結合基を有するか否かによって異なる。
【0129】
本発明の一態様において、ポリエステルポリマー組成物は、凝固前の溶融相重合時に添加された、又は輸送容器にポリエステルポリマーを入れる前の任意の時点で添加された、又は物品を形成するために組成物を再溶融させる前の任意の時点で添加されたAAを捕捉するのに有効なポリアミドを含まないことができ、別の態様において、ポリエステル組成物は、AAを捕捉するのに有効な、凝固前の溶融相の間に添加されたポリマーを含まない。
【0130】
溶融相生成物は非晶質粒子のような所望の形態に加工する。ポリエステルポリマー粒子の形状は限定するものではなく、スター、球体、回転楕円体、球状体、円筒形ペレット、従来型ペレット、パステル及び任意の他の形状を含む、寸法に制限のない規則的な又は不規則な形状の離散粒子を含むことができるが、粒子はシート、フィルム、プレフォーム、ストランド又は繊維とは区別される。
【0131】
粒子の数平均重量(数平均分子量と混合すべきでない)は特に限定するものではない。例えば粒子は粒子100個あたり少なくとも0.10g又は1.0g超であって且つ約100g以下の数平均重量を有することができる。
【0132】
溶融相プロセスからのポリエステルポリマーの凝固方法は限定するものではない。例えば溶融相からの溶融ポリエステルポリマーは、ダイを通して誘導し、又は単に切断し、或いはダイを通して誘導した後に溶融ポリマー切断することができる。ギアポンプを、溶融ポリエステルポリマーをダイに通す原動力として使用できる。ギアポンプを用いる代わりに、溶融ポリエステルポリマーは一軸又は二軸スクリュー押出機に供給し、ダイを通して押出すことができる。この際、押出機のノズルの温度は任意的に190℃又はそれ以上である。ダイを通った後、ポリエステルポリマーをストランドに延伸し、低温流体と接触させ、切断してペレットにすることもできるし、或いはポリマーをダイヘッドにおいてペレット化する(任意的に水中で)こともできる。ポリエステルポリマーメルトは切断前に任意的に濾過して、指定サイズより大きい微粒子を除去する。ダイシング、ストランドペレット化及びストランド(強制輸送)ペレット化、パスチレーター、ウォーターリングペレタイザー、ホットカットペレタイザー(hot face pelletizer)、水中ペレタイザー及び遠心分離ペレタイザーを含む(これらに限定するものではないが)任意の従来の高温ペレット化又はダイシング方法及び装置を使用できる。
【0133】
ポリエステルポリマーの結晶化に使用する方法及び装置は限定するものではなく、気体又は液体中における熱結晶化を含む。結晶化は、機械的撹拌容器;流動床;流体運動によって撹拌される床;非撹拌容器又はパイプ中で;ポリエステルポリマーのTgより高温の、好ましくは140〜190℃の液体媒体中で;又は当業界で知られた任意の他の手段によって行うことができる。また、ポリマーは歪み結晶化させることもできる。ポリマーはまた、そのTgより低いポリマー温度において(ガラスから)晶析器に供給することもできるし、或いはそのTgより高いポリマー温度において晶析器に供給することもできる。例えば溶融相重合反応器からの溶融ポリマーは、ダイプレートを通して供給し、水中で切断し、次いで直ちに、ポリマーを水中で結晶化させる水中熱晶析器に供給することができる。別法として、溶融ポリマーを切断し、そのTg未満まで冷却させ、次いで水中熱結晶化装置又は任意の他の適当な結晶化装置に供給することもできる。或いは、溶融ポリマーを任意の常法で切断し、そのTg未満に冷却させ、任意的に貯蔵し、次いで結晶化させることもできる。
【0134】
好ましい凝固技術は、ポリマーの切断及び少なくとも20%の結晶化度への結晶化のいずれの前にもTg未満に低下させないように溶融相製造においてポリマーに熱エネルギーに与えないことによって、切断と結晶化を一体化する。1つの一体化凝固技術において、溶融ポリエステルポリマーはダイを通して誘導し、高温及び大気圧より高い圧力において水中でダイプレートにおいて切断し、熱水によってカッターから一連のパイプ(ポリマーのTgより高い温度の、好ましくは約130〜180℃の高温液体の水中で粒子を熱結晶化させる滞留時間を提供する)を通して押し流して、その後に水を結晶化粒子から分離し、粒子を乾燥させる。別の一体化凝固技術においては、溶融ポリエステルポリマーを水中で切断し、粒子を切断後直ちに液体の水から分離し、粒子を乾燥させ、それから、粒子が依然として高温である間であって且つ粒子の温度がポリマーのTg未満に低下する前に、望ましくは粒子の温度が140℃より高いうちに、粒子を乾燥機から、粒子内の潜熱によって粒子を結晶化させる(好ましくは、熱媒体又は加圧手段を外部から適用せずに)のに充分な層高を有する移動床を粒子に形成させる容器又は表面に誘導する。この技術は潜熱結晶化しても知られ、この方法はBrookman Kreyenborg GmbHから商業的に入手できる。
【0135】
結晶化度は任意的に少なくとも30%又は少なくとも35%又は少なくとも40%である。直接エステル化法においては、溶融相生成物は、好ましくは1種又は複数のチタン含有化合物のみから成る重縮合触媒を溶融相に加えることによって製造する。従って、溶融相において製造された、低い又は許容され得るAA発生度を有するポリエステルポリマーを単離し、固体状態で分子量を増加させる必要なく、加工業者に供給できる。溶融相で高It.V.生成物を製造することによって、固相化工程は完全に回避できる。固相化は、ペレットの重量(及びIt.V.)を固体状態で、通常は少なくとも0.05It.V.単位、より典型的には0.1〜0.5It.V.単位増加させるためによく用いられる。
【0136】
極めて低い遊離AA(例えば約3ppm未満)を必要とする用途では、本発明の溶融相のみの方法を用いて製造されたポリエステルポリマー粒子は過剰の遊離AAを必要とする場合がある。一態様において、極めて低い遊離アセトアルデヒドレベル(例えば約3ppm未満)を有するポリエステルポリマー粒子を、残留アルデヒドの溶融相重縮合後の除去によって得る。従って、溶融相製造プロセスから粒子が得られたら、粒子中に存在する残留アセトアルデヒドを、常法によって又は下記の手段によって減少させる。固体粒子中の残留アセトアルデヒドの量は、費用がかかり且つかなりの分子量増加をもたらす固相重合法以外の方法によって減少させる。望ましくは、固体粒子中の残留アセトアルデヒドは、粒子のIt.V.を0.03dL/gより多く増加させることなく、固体状態において約10ppm若しくはそれ以下又は8ppm若しくはそれ以下又は6ppm若しくはそれ以下又は4ppm若しくはそれ以下のレベルまで低下させる。この態様において、粒子は、そのアセトアルデヒドレベルを低下させるために再溶融及び脱蔵もしないし、粒子のIt.V.を約0.03dL/gより多く増加させる固相重合技術に供することもない。更に別の態様において、固体粒子中の残留アセトアルデヒドレベルは約5ppm又はそれ以下のレベルまで低下させる。更に別の態様において、固体粒子中の残留アセトアルデヒドレベルは約2ppm又はそれ以下のレベルまで低下させる。
【0137】
粒子中のアセトアルデヒドを低減させるための、好ましくは固相重合技術以外の或いは再溶融/脱蔵による以外の或いはポリアミドの添加又はポリマーAA捕捉剤若しくはAAを結合する他の物質の添加以外の任意の従来の技術が適当である。従って、ポリエステルポリマー組成物は、固相重合技術を適用せずに且つ再溶融の前に且つポリアミド又はポリマーAA捕捉剤若しくはAAを結合する他の物質を添加せずに、或いは前記のいずれも行わずに、10ppmのAA含量を有することができる。例えばAA発生度試験のサンプル調製の一部として記載した真空操作が適当であるが、より大規模では、容器はオーブンに取って代わるであろう。
【0138】
分子量を0.03dL/gより多く増加させることなく固体粒子中のアセトアルデヒドレベルを低下させるためのもう1つの技術を、本明細書中では、米国特許出願公開第2006/0047103号明細書(引用することによってその全体を本明細書中に組み入れる)に記載されたように、アセトアルデヒドストリッピングと称する。この方法によれば、粒子を容器中に投入して、容器内に粒子の床を形成し、0.15SCFM/ポンド(粒子)/時以下のガス流速で導入されたガス流と接触させ、低減された残留アセトアルデヒド量を有する完成粒子を容器から取り出すことによって、粒子の残留アセトアルデヒドを減少させる。
【0139】
ガスストリッピング操作において、ガス、例えば空気体又は窒素のような不活性ガスを、連続法又は回分法で、好ましくは連続法で、容器中のポリエステルポリマー粒子の流れに対して並行流又は対向流で、好ましくは対向流でポリエステルポリマー粒子と接触させる。AAストリッピング容器中に導入するガスの温度は特に限定するものではなく、周囲温度から約180℃までの範囲であるが、好ましくは周囲温度から約70℃まで若しくは50℃以下若しくは40℃以下の範囲、又は周囲温度であることができる。ストリッピング容器から出るガスの温度は、容器中に投入されるペレットの温度にほぼ等しいであろう。従って、100℃において粒子を投入する場合には、ガスの出口温度は約100℃+/−20℃となるであろう。容器から出るガスの温度は固体状態で粒子の分子量を約0.03dL/gより多く増加させる温度を超えてはならない。粒子の滞留時間は最初の残留AAレベル、ガス温度及び粒子質量/ガス比によって異なるが、滞留時間は一般に0.5〜30時間の範囲である。ガス組成物は、例えば窒素、二酸化炭素又は周囲空気を含むことができる。所定温度における空気のストリッピング時にかなりのIV低下が起こり且つ/又は固体ポリエステル粒子の色が著しく悪化するならば、ガス組成物として窒素又は別の不活性ガスを用いるのが好ましいであろう。別の態様においては、空気をより低いストリッピング温度において使用することができる。ガスの働きはペレットを乾燥させることではなく、残留AAをペレットからストリッピングすることであるので、ガスは乾燥させる必要がない。しかし、所望ならば、ガスは乾燥させることができる。
【0140】
乾燥機温度、ガス流、乾燥剤の種類及び滞留時間は、物品を製造するための押出機に注ぐ乾燥機中におけるAAストリッピングの効果に影響を及ぼすであろう。アセトアルデヒドのガスストリッピングは、また、物品を製造するための押出機に注ぐ乾燥機中で行うこともできるが、乾燥機中で使用するガス流を減少させ且つ/又は押出機から生成される物品の質を改善するために、残留アセトアルデヒドが既に2ppm若しくはそれ以下であるポリマー粒子を乾燥機に供給するのが好ましい。更に、AAストリッピングプロセスにおいては、粒子からのAAのストリッピングには乾燥ガスは必要ないが、乾燥プロセスにおいては、主に粒子上又は粒子中の水分を低下させるために乾燥空気の流れを粒子中に循環させ、これにはAAも除去するという二次的利点がある。従って、AAストリッピングプロセスにおいて、周囲空気はストリッピング媒体であることができ、好ましくは周囲空気をストリッピング媒体として使用する。
【0141】
従って、一態様において、少なくとも0.069dL/gのIt.V.及び例えば約20〜約55%の範囲内の結晶化度を有し且つ例えば少なくとも約3ppm又は10ppm超又は20ppm超又は30ppm超又は40ppm超の残留アセトアルデヒドレベルを有する本発明の粒子を容器に、好ましくは容器の上端から、AAストリッピングの効率を増加させるために高温粒子(例えば約100〜約180℃)として供給する。高温粒子が、重量によって容器の底端に向かって流れるペレットの床を形成する間に、周囲空気又は窒素のようなガス(約周囲条件〜約70℃又は約周囲温度〜約40℃の範囲の温度において容器中に導入される)の対向流を床中に循環させ、それによって容器中に投入された粒子中及び/又は粒子上の残留AAのレベルを低下させる。粒子は、ガスの対向流中への導入の約0.5〜30時間以内に、容器から取り出す。容器は加圧することができるが、ガス流から発生した圧力による以外は加圧されないのが好ましい。容器は、望ましくは約0〜5psig又は周囲圧力において運転する。
【0142】
ストリッピングされた粒子上に、即ちストリッピングプロセスから出た粒子上に存在する残留アセトアルデヒドのレベルは、例えば約10ppm若しくはそれ以下又は7ppm若しくはそれ以下又は5ppm若しくはそれ以下又は3ppm若しくはそれ以下又は2ppm若しくはそれ以下又は1.5ppm若しくはそれ以下である。溶融相重合から得られた後にストリッピング容器に供給される粒子上の存在する残留アセトアルデヒドのレベルは、一般に、約3ppm若しくはそれ以上又は少なくとも5ppm又は少なくとも10ppm又は少なくとも20ppm又は少なくとも25ppm又は少なくとも30ppm又は少なくとも40ppmである。別の態様において、ストリピング容器に入るペレットとストリッピング容器から出るペレットの遊離アセトアルデヒドレベルの差は、例えば少なくとも約5ppm又は少なくとも10ppm又は少なくとも20ppm若しくはそれ以上又は少なくとも30ppm若しくはそれ以上である。
【0143】
ガスは、任意の常法によって、例えば送風機、ファン、ポンプなどによって容器中に導入できる。ガスは、粒子の流れに対して並流若しくは対向流で又は粒子の流れと交わるように、容器中を流れる。粒子の床を通るガスの好ましい流れは、床を通る粒子流に対して対向流である。ガスは、容器に供給される粒子中のアセトアルデヒドレベルに比較して容器から出る粒子中のアセトアルデヒドレベルを低下させるのに有効な、容器上の任意の望ましい箇所で導入することができる。好ましくは、ガスの導入箇所は、容器中の床高さの下方1/2、より好ましくは床の高さの下方1/4である。粒子床の少なくとも一部分、好ましくは床の少なくとも50容積%、より好ましくは粒子床容積の少なくとも75%を通って流れる。本発明に使用するのに適当なガスは、例えば空気、二酸化炭素及び窒素であることができる。入手し易さ及びコストの低さにより、一部のガスが他よりも好ましい。例えば窒素ではなく空気を使用すると、かなりの運転コストの改善につながるであろう。窒素を用いなければ周囲空気中で多くのポリエステルポリマーと酸素との間で起こるであろうペレットの変色を引き起こす酸化反応に対して、窒素は不活性であるので、180℃を超える温度で粒子の床に高温ガス流を通す運転には窒素ガスの使用が必要であると考えられていた。しかし、容器から出るガスが190℃を超えないようにプロセス温度を低く保つことによって、粒子の変色は最小限に抑えられる。一態様において、ガスは約90容積%未満又は85容積%未満又は80容積%未満の窒素を含む。別の態様において、ガスは酸素を17.5容積%又はそれ以上の量で含む。別の態様において、周囲組成(容器が配置されるプラントの場所の空気の組成)の空気又は分離も精製もされていない空気の使用が好ましい。更に別の態様において、周囲空気を、ガス入り口を通して供給する。ガスは所望ならば乾燥させることができるが、目的は粒子からアセトアルデヒドを除去することであるので、ガスは必ずしも乾燥させる必要はない。
【0144】
粒子を収容し且つ容器へのガス及び粒子の出入りが可能な任意の容器が適当である。例えば少なくともガス入口、ポリエステルポリマー粒子入口、ガス出口及び完成粒子出口を有する容器を用意する。容器は、好ましくは熱を逃さないように断熱する。ガス入口及び完成粒子出口は、望ましくはガス出口及び粒子入口より下方に、好ましくはガス出口及び粒子入口が容器の頂部近くであって且つ完成粒子出口が容器の底部近くとなるように、位置付ける。ガスは、望ましくは容器内の床に床高さの約1/2又はそれ以上において、又はより望ましくは床高さの下方約1/4において、導入する。粒子を、好ましくは容器の頂部で導入し、重力によって容器の底部まで移動させると同時に、ガスは、好ましくは粒子流の方向に対して対向流として流れる。粒子は容器内に蓄積して粒子の床を形成し、粒子は重力によって容器の長さに沿って下方に容器底部の完成品出口まで下降する。床の高さは限定するものではないが、好ましくは連続法においては実質的に一定の高さであり、ストリッピングゾーン内においては粒子を含む容器の高さの少なくとも75%である。容器は、好ましくは少なくとも約2又は少なくとも4又は少なくとも6のアスペクト比L/Dを有する。このプロセスは、粒子は流動しないがガス流を任意の方向で粒子床に通すことができる回分式又は半回分式で行うこともできるが、このプロセスは、容器への粒子の供給につれて、粒子流が粒子入口から完成品出口まで連続的に流れる連続法であるのが好ましい。
【0145】
容器中に導入し且つ粒子床の少なくとも一部に通す適当なガス流速は、容器に導入した粒子上の残留アセトアルデヒド量に比べて、容器から出る粒子上の残留アセトアルデヒド量を低下させるのに充分なものである。例えば、1時間当たりに容器中に装入する粒子1ポンドについて、容器中に導入する適当なガス流速は、少なくとも約0.0001標準立方フィート/分(SCFM)又は少なくとも0.001SCFM又は少なくとも0.005SCFMである。速い流速も適当であるが必要ではなく、ガス流速は、ガスポンプ、ファン又は送風機による不要なエネルギー消費を回避するように充分に遅く保つべきである。更に、粒子の冷却及び乾燥の一方又は両方の達成には典型的には速いガス流速の使用が必要であるので、過度に粒子を冷却したり乾燥したりするのは望ましくない。更に、大幅な冷却が起こった場合には、AAストリッピングの速度は遅くなる可能性がある、即ち、より低温では完成粒子中において同じ残留AAレベルを達成するのにより多くの時間が必要である可能性がある。ガス流速は好ましくは、1時間当たりの装入粒子1ポンドについて、約0.15SCFM以下又は0.10SCFM以下又は0.05SCFM以下又は更には0.01SCFM以下である。
【0146】
製造コストを低く保ちながら、酸化反応、変色を最小限に抑え、粒子のIt.V.を保持し且つアセトアルデヒドを除去するのに最適なプロセス条件は、ガスを周囲温度を周囲温度において導入すること、及び約150〜約170℃の範囲内の粒子を垂直円筒容器に、PET 1bl/hr当たり約0.002〜約0.009SCFMの範囲のガス流速で供給することである。容器の寸法はペレットの滞留時間が平均して約10〜約24時間となるようなものである。
【0147】
本発明の方法を用いることによって、適切な高さのIt.V.を有するポリマーを比較的短い全プロセス時間で又はより温和な温度で同様なプロセス時間で得ることができ、そのポリマーからは、固相化の費用及びプロセス時間の増加を必要としないだけでなく、より少ないAAを含み且つ更なる加工時に発生するAAがより少ない、例えばペレットの形態の、ポリエステル生成物を生成することができる。It.V.が更に高いポリマーが必要な場合には、分子量は固相化によって更に増加させることができる。この追加のプロセス工程は追加の時間及び費用を必要とするが、これは一部は、溶融相における全重合時間の短縮によって補償する。しかも、固相化はAA含量を更に低下させるであろう。
【0148】
更に、ポリマーを着色するある種の物質をメルトに添加することもできる。一態様において、得られるポリエステルポリマー溶融相生成物のb*を低下させるために、青味付けトナーをメルトに添加する。このような青味剤には、青色無機及び有機トナーがある。更に、赤色トナーも、a*カラーを調整するために使用できる。有機トナー(例えば青色及び赤色有機トナー)、例えば米国特許第5,372,864号及び第5,384,377号(引用することによってそれらの全体を本明細書中に組み入れる)に記載された、そのようなトナーを使用できる。有機トナーはプレミックス組成物として供給することができる。プレミックス組成物は赤色及び青色化合物のニートブレンドであることができ、或いはポリエステルの原料の1つ(例えばエチレングリコール)中に予め溶解させるか又はスラリー化することができる。
【0149】
添加するトナー成分の総量はベースポリエステルに固有の黄色の量及びトナーの効果によって異なる。一般に、約15ppm以下の総有機等トナー成分濃度及び約0.5ppm以下の最低濃度を使用する。青味剤の総量は、典型的には、約0.5〜約10ppmの範囲である。
【0150】
トナーはエステル化ゾーン又は重縮合ゾーンに加えることができる。一態様において、トナーはエステル化ゾーン又は重縮合ゾーンの早い段階、例えば予備重合反応器に加える。トナーをエチレングリコール中でスラリー化する場合及び重縮合ゾーンを通って進むにつれて圧力が低下する場合に、特にそうである。
【0151】
本発明のポリエステルポリマー及びこれらのポリマーから製造されるボトルプレフォームは再加熱添加剤を含むことができ、従って、再加熱添加剤を含まない対照サンプルに比較して、20オンスボトルプレフォーム再加熱改善温度(RIT)として表される改善された再加熱速度を有することができる。従って、種々の態様において、再加熱添加剤を含む、特許請求の範囲に記載された本発明に係るポリエステルポリマーの21オンスボトルプレフォーム再加熱改善温度(RIT)は約0.1〜約11℃又は1〜11℃であることができる。
【0152】
ポリエステルポリマー中に使用する再加熱添加剤は、個々の用途、目的とする再加熱時間の短縮並びにL*明度値が100から遠ざかる動きと共に、ゼロから離れるa*及びb*の低下の許容レベルによって異なるであろう。再加熱剤の最大量は目的とする再加熱速度又はL*、a*、b*及び他のカラー特性(用途又は顧客の要求によって異なる)の維持の1つ又はそれ以上によって限定される場合がある。再加熱添加剤のポリエステルポリマーの色に対する影響はCIE L***スケールのような三刺激カラースケールを用いて判断できる。L*値は0〜100の範囲であって、暗色から明色の程度を示す。a*値は赤色〜緑色の程度を示し、正の値は赤色であり、負の値は緑色である。b*値は黄色〜青色の程度を示し、黄色は正の値を有し、青色は負の値を有する。
【0153】
側色の理論及び実際については、Principles of Color Technology,25-66頁,Fred W.Billmeyer,Jr.,John Wiley & Sons,New York(1981)(引用することによって本明細書中に組み入れる)により詳細に記載されている。
【0154】
21オンスボトルプレフォームについて測定されるポリエステルポリマーのL*値は、一般に60超、より好ましくは少なくとも65、より好ましくは更に少なくとも70でなければならない。特定のL*明度の指定は、特定の側壁断面厚さを有するプレフォームを実際に用いることを意味するのではなく、L*を測定する場合に、実際に使用されるポリエステルポリマーを、そのポリエステルポリマーのL*を試験及び評価するために、射出成形して厚さ0.154インチのプレフォームを形成することを意味するだけである。
【0155】
公称側壁断面厚が0.154インチの21オンスボトルプレフォーム中で測定した場合の、望ましいポリエステルポリマーの色は、一般に、好ましくは約−2.0〜約+0.5又は約−2.0〜約+0.1の範囲のa*座標値で示される。b*座標値に関しては、一般に、−3.0から又は−1.5から、+5.0未満又は+4.0未満又は+3.8未満又は2.6未満の正の値までの範囲のb*座標値を有するボトルプレフォームを製造するのが望ましい。
【0156】
本発明の更に別の態様においては、本発明のポリエステルポリマーを含む、5℃又はそれ以上のRIT及び60又はそれ以上のL*値を有するプレフォームから製造された飲料ボトルが提供される。
【0157】
本発明の更に別の態様においては、本発明のポリエステルポリマーを含む、5℃又はそれ以上のRIT及び60又はそれ以上のL*値を有するプレフォームから製造された飲料ボトルが提供される。
【0158】
種々の他の態様において、メルト、ペレット、シート、プレフォーム及び/又はボトルのいずれの形態にせよ、再加熱添加剤を含むポリエステルポリマーが提供され、前記ポリエステルポリマーから形成されたプレフォームは70若しくはそれ以上又は79若しくはそれ以上又は更には80若しくはそれ以上のL*値及び10℃又は少なくとも5℃又は少なくとも3℃のRITを有する。
【0159】
本発明のポリエステルポリマー中に添加する再加熱添加剤としては、例えば活性炭、カーボンブラック、アンチモン金属、錫、銅、銀、金、パラジウム、白金、黒色酸化鉄など、及び米国特許第6,197,851号(引用することによって本明細書中に組み入れる)に開示されたものを含む(それらに限定するものではないが)近赤外線吸収染料が挙げられる。本発明の別の態様においては、窒化チタン粒子を再加熱添加剤として、PETポリマーの重合の間の任意の箇所で、又はその後に、例えばエステル化ゾーンに、プレポリマーゾーン及び仕上げゾーンからなる重縮合ゾーンに、ペレット化ゾーンに若しくはペレット化ゾーンの前に、並びにこれらのゾーンの間の任意の箇所で、添加できる。窒化チタン粒子は、また、固相化ペレットが固相化反応器から出ていく時に、固相化ペレットに添加できる。更に、窒化チタン粒子は、射出成形機への他の供給材料と組合せてPETペレットに添加することもできるし、或いは射出成形機に別々に供給することもできる。明確にすると、粒子は溶融相で添加することもできるし、或いはポリエステル組成物を凝固させることもペレットに単離することもなく、射出成形機に供給することもできる。従って、粒子はプレフォームの製造プロセスの任意の箇所でメルト−成形プロセスにおいて添加することもできる。いずれの場合にも、添加箇所において、粒子はニートな粉末として、又は液体中に入れて、又はポリマーコンセントレートとして添加でき、未使用PET又は再生PETに添加することもできるし、或いはPETポリマー担体として未使用PET又は再生PETを用いてポリマーコンセントレートとして添加することもできる。
【0160】
酸化鉄は、好ましくは黒色酸化鉄であって、非常に微細な形態で、例えば約0.01〜約200μm、好ましくは約0.1〜約10.0μm、最も好ましくは約0.2〜約5.0μmの形態で使用する。黒色酸化鉄の適当な形態としては、マグネタイト及びマグヘマイトが挙げられるが、これらに限定するものではない。赤色酸化鉄も使用できる。このような酸化物は、例えば、Pigment Handbook,Vol.1,著作権1973年,Jon Wiley & Sons,Inc.,323〜349頁に記載されている。
【0161】
本発明のベースポリエステルポリマーに組み入れる特定の再加熱添加剤及び他の添加剤(例えばポリカーボネート及びPCRのようなポリマー)は、ポリエステルポリマー及びこれらの本発明のポリエステルポリマーから形成される製品の色に、強い影響を及ぼす場合がある。この色ずれ(color shift)を修正するために、最終使用用途の要件を満たすポリエステルポリマー及び対応する製品を製造するために着色剤(本明細書中では「トナー]とも称する)の量の調整が必要な場合がある。
【0162】
ポリエステルポリマーの性能特性を向上させるために、他の成分を本発明の組成物に添加することができる。例えば結晶化助剤、耐衝撃性改良剤、表面潤沢剤、嵌め外し剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、成核剤、他の再加熱促進助剤、タルクのような粘着性ボトル用添加剤、及び充填剤などを含ませることができる。
【0163】
本発明の組成物は、任意的に、更に、米国特許第4,617,374号(引用することによってその全体を本明細書中に組み入れる)に開示された型の1種又はそれ以上のUV吸収化合物を含むことができる。一例として、コモノマー、側基又は末端基としてポリエステル分子に供給結合するUV吸収化合物が挙げられる。適当なUV吸収化合物は、ポリエステル加工温度において熱安定性であり、約320〜約380nmの範囲に吸収を示し、前記ポリエステルポリマーからの抽出が困難であるか又は耐抽出性である。UV吸収化合物は好ましくは、厚さ12mil(305ミクロン)のボトル壁を通る、370nmの波長を有するUV光の透過率を約20%未満又は約10%未満にする。適当な化学反応性UV吸収化合物としては、式:
【0164】
【化3】

【0165】
[式中、Rは水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル若しくはアルケニル、又はポリオキシアルキレン鎖、例えばポリオキシエチレン若しくはポリオキシプロピレンポリマー(いずれも、任意的に、ポリマー鎖中にブロック又はランダムコポリマーとしていくつかのオキシプロピレン又はオキシエチレン単位を有し、前記ポリオキシアルキレン鎖は500〜10,000の数平均分子量を有する)であり;
1は水素又はアルキル、アリール若しくはシクロアルキルのような基(これらの基は全て置換されることができる)であり;
2はポリエステルとの縮合を妨げない任意の基、例えば水素、アルキル、置換アルキル、アリル、シクロアルキル又はアリールであり;
3は水素又はアルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ及びハロゲンから選ばれた1〜3個の置換基であり;そして
Pはシアノ又はカルバミル、アリール、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、複素環、アルカノイル若しくはアロイルのような基であり、これらの基は全て置換されることができる]
の置換メチン化合物が挙げられる。
【0166】
好ましいメチン化合物は、前記式において、
2が水素、アルキル、アラルキル、シクロアルキル、シアノアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル又はアリールであり;
Rが水素;シクロアルキル;1個又は2個のアルキル、アルコキシ又はハロゲンで置換されたシクロアルキル;フェニル;アルキル、アルコキシ、ハロゲン、アルカノイルアミノ又はシアノから選ばれた1〜3個の置換基で置換されたフェニル;直鎖又は分岐鎖低級アルケニル;直鎖又は分岐鎖アルキル、及び1〜3個の置換基で置換されたこのようなアルキル{このようなアルキルの置換基は、以下から選ばれる:ハロゲン、シアノ、スクシンイミド、グルタルイミド、フタルイミド、フタルイミジノ、2−ピロリドノ、シクロヘキシル、フェニル、置換フェニル(即ちアルキル、アルコキシ、ハロゲン、シアノ又はアルキルスルファモイルで置換されたフェニル)、ビニル−スルホニル、アクリルアミド、スルファミル、ベンゾイルスルホン酸イミド(benzoylsulfonicimido)、アルキルスルホンアミド、フェニルスルホンアミド、アルケニルカルボニルアミド、式:
【0167】
【化4】

【0168】
[式中、Yは−NH−、−N−アルキル、−O−、−S−又は−CH2O−、−S−R14、SO2CH2CH2SR14(式中、R14はアルキル、フェニル、置換フェニル(即ちハロゲン、アルキル、アルコキシ、アルカノイルアミノ若しくはシアノで置換されたフェニル)、ピリジル、ピリミジニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、又は式:
【0169】
【化5】

【0170】
、―NHXR16、−CONR1515及び−SO2NR1515の基(式中、R15はH、アリール、アルキル及び置換アルキル(即ちハロゲン、フェノキシ、アリール、−CN、シクロアルキル、アルキルスルホニル、アルキルチオ又はアルコキシで置換されたアルキル)から選ばれ;Xは−CO−、−COO−又は−SO2−であり;且つR16はアルキル及び置換アルキル(即ちハロゲン、フェノキシ、アリール、シアノ、シクロアルキル、アルキルスルホニル、アルキルチオ又はアルコキシで置換されたアルキル)から選ばれ;Xが−CO−である場合には、R16は、また、水素、アミノ、アルケニル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、アリール、若しくはフリル;アルコキシ;シアノ若しくはアルコキシで置換されたアルコキシ;フェノキシ;又はアルキル、アルコキシ若しくはハロゲン置換基から選ばれた1〜3個の置換基で置換されたフェノキシであることができる)である]
の基}から選ばれ;且つ
Pがシアノ、カルバミル、N−アルキルカルバミル、N−アルキル−N−アリールカルバミル、N,N−ジアルキルカルバミル、N,N−アルキルアリールカルバミル、N−アリールカルバミル、N−シクロヘキシルカルバミル、アリール、2−ベンゾオキサゾリル、2−ベンゾチアゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、1,3,4−チアジアゾル−2−イル、1,3,4−オキサジアゾル−2−イル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル又はアシルである
化合物である。
【0171】
前記定義の全てにおいて、種々の基のアルキル又は二価脂肪族部分(moieties or portions)は炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖を含む。好ましいUV吸収化合物としては、R及びR1が水素であり、R3が水素又はアルコキシであり、R2がアルキル又は置換アルキルであり且つPがシアノであるものが挙げられる。この態様において、好ましい種類の置換アルキルはヒドロキシ置換アルキルである。最も好ましいポリエステル組成物は、化合物:
【0172】
【化6】

【0173】
の反応残基を約10〜約700ppm含む。
【0174】
これらの化合物、それらの製造方法及びそれらのポリエステル中への組み込み方法については、米国特許第4,617,374号(引用することによって本明細書中に組み入れる)により詳細に開示されている。1種又は複数のUV吸収化合物が約1〜約5,000重量ppm、好ましくは約2〜約1,500重量ppm、より好ましくは約10〜約500重量ppmの量で存在できる。UV吸収化合物の二量体も使用できる。2種又はそれ以上のUV吸収化合物の混合物も使用できる。更に、UV吸収化合物はポリマーの主鎖と反応するか又はポリマーの主鎖中に共重合されるので、得られるポリマーはプレートアウト及び/又は揮発などによるUV吸収化合物の損失の低減を含む改善された加工性を示す。
【0175】
溶融相プロセスにおいて製造された固体粒子は、押出式可塑度計中で295℃において5分間処理された場合に、20ppm若しくはそれ以下又は16ppm若しくはそれ以下又は12ppm若しくはそれ以下又は10ppm若しくはそれ以下又は8ppm若しくはそれ以下又は6ppm若しくはそれ以下のアセトアルデヒド発生度を有するのが好ましい。本発明の方法は、成形品を製造するためには295℃において5分間、粒子を溶融させる必要はない。本発明の説明全体を通して記載した全ての他の測定条件と同様に、これらの測定条件は、ポリマー又は運転条件の記載した特性又は性質の一部である必要はなく、ポリマーを記載した測定条件下で実際に製造又は加工されるか否かにかかわらず、ポリマーがその特性を有するか否かを判断するための枠組み又は基準として記載するに過ぎない。295℃において5分間の条件は、CEAST又はTinius Olsen押出式可塑度計(比較的低い剪断力を有し、ポリエステルをほとんど瞬時に溶融させることはない)に適用される。ミニインジェクターはより大きい剪断力を有し、ポリエステルをほとんど瞬時に溶融させ、ほぼ同じAAレベルを生じるのに必要な条件がより穏やかであろう。例えば、同じポリエステルサンプルに関しては、ミニインジェクターは285℃で5分間処理した後に、CEAST押出式可塑度計が295℃で5分間処理後に生じるよりも高いAA発生レベルを生じる。
【0176】
工程b)における触媒失活剤の添加を省略して製造した粒子に比較して、この方法で製造した粒子は、少なくとも約10%若しくはそれ以上又は少なくとも20%若しくはそれ以上又は少なくとも30%若しくはそれ以上又は少なくとも40%若しくはそれ以上又は少なくとも50%若しくはそれ以上又は少なくとも60%若しくはそれ以上のAA発生度の低下を示すのが好ましい。AA発生度の低下は、工程b)を用いた場合の粒子のAA発生度を、工程b)を省略したが他の全てが等しい場合の粒子のAA発生度から差し引き、その差を工程b)を省略した場合のAA発生度で割り、100を掛けることによって算出する。
【0177】
別の態様において、物品中の、例えばプレフォーム(例えば20oz.プレフォーム)中の遊離AAレベルは約11ppm若しくはそれ以下又は9ppm若しくはそれ以下又は7ppm若しくはそれ以下又は5ppm若しくはそれ以下又は4ppmである。20oz.プレフォームに関しては、プレフォームは、275〜290℃又は約285℃の射出成形機バレル温度及び約2分又はそれ以下のポリマーメルト滞留時間を用いて成形する。
【0178】
プレフォームの試験のみを目的として、試験用のプレフォームを収集する前に射出成形機をラインアウトする、即ち、8個取り成形機について最初の30打ちの成形物を廃棄する。1個取り金型、即ち、過去にAA試験値が最も高いプレフォームが製造された8個のキャビティのうち1個から、連続する20個のプレフォームを収集する。これら20個のプレフォームのうち、5個をランダムに選んで1つのバッグに入れ、更に5個をランダムに選んで別のバッグに入れ、10個を、将来、必要となった場合に粉砕及び再試験するために保管しておく。慣習では、プレフォームは粉砕されるまで冷凍庫に保存されるが;これは不可欠ではない。粉砕の前に、プレフォームは液体窒素中で冷却する。プレフォーム全体を、ASTM F2013−00に従って粉砕する。第1のバッグ中の5個のプレフォームを極低温で粉砕し、2個のサンプルを残留又は遊離AA試験のために取り出す。粉砕後、サンプルは、遊離AAを試験する時間になるまで冷凍庫に保存しなければならない。第2のバッグ中の5個のプレフォームを極低温で粉砕し、2個のサンプルを残留又は遊離AA試験のために取り出す。サンプルをASTM F2013−00に従ってランダムな順序で試験する。各サンプルを2回試験する。
【0179】
チタン化合物によって触媒されたポリエステルメルトに燐化合物を遅い段階で添加することによって、AA捕捉剤又は他のAA低下剤を添加する必要なく、ポリエステルポリマー粒子を、水ボトル用途で使用するために、充分に低い遊離AAレベルを有するプレフォームのような物品に成形することが可能になる。更に、AA低下剤が存在しなくても低い遊離AAレベル及び低いAA発生度を共に有するこの型のポリマー粒子は、ポリマーを固相重合する必要なしに、溶融相で高いIt.V.(少なくとも約0.69dL/g又は少なくとも0.70dL/g又は少なくとも0.72dL/g又は少なくとも0.74dL/g又は少なくとも0.76dL/g又は少なくとも0.80dL/g又は少なくとも0.82dL/g又は少なくとも0.84dL/g)まで重合させることができる。更に、この型のポリエステル粒子は、AA捕捉剤の添加を必要とせずに、水ボトル用途で使用するのに充分に低いAA発生度を有し且つ高いIt.V.まで重合させることができるので、この型のポリエステル粒子は二重用途での利用に適する:この型のポリエステル粒子は一部の水ボトルに必要な低いAA発生度及びCSDボトルに必要な高いIt.V.を有し;従って、1つの型のポリエステル粒子を両用途に使用できる。射出成形プロセスの開始前に遊離AAを3ppm未満に低下させるためのAAストリッピング処理を用いることができるが、このAAストリッピングプロセスは、遅い段階での燐化合物の添加によって、Sbで触媒されたPETに必要とされるほど多くの遊離AAを除去する必要がないであろう。
【0180】
AAストリッピングプロセスの必要性及びその長さは、溶融相製造後のポリエステルポリマー粒子中に存在する残留AAの量、及び用途によって異なり得る、粒子中残留AAに関する顧客の基準値によって異なる。溶融相製造後のポリエステルポリマー粒子中に存在する残留AAの量は望ましくは、例えば約5ppm若しくはそれ以下又は4ppm若しくはそれ以下又は3ppm若しくはそれ以下又は2ppm若しくはそれ以下又は1ppm若しくはそれ以下のレベルまで減少させる。
【0181】
更に別の態様において、溶融ゾーンに供給される固体粒子の遊離AAは、例えば約10ppm若しくはそれ以下又は7ppm若しくはそれ以下又は5ppm若しくはそれ以下又は3ppm若しくはそれ以下であることができる。
【0182】
遊離AAは固体粒子又はプレフォームについて測定できる。
【0183】
ポリエステルポリマー組成物中の遊離AAレベルの測定に使用する方法は試験法ASTM#F2013−00である。この試験法は粒子、粉末、プレフォーム、ボトル及びポリマー組成物が取ることができる任意の他の形態中の遊離アセトアルデヒドレベルの測定に使用される。残留又は遊離アセトアルデヒドを測定するために、サンプルを下記の方法に従って試験する。
【0184】
プレフォーム、ペレット、粉末又は他の形態のいずれであれ、サンプルに関する遊離アセトアルデヒドレベルを測定するための試験方法はASTM#F2013−00試験法である。サンプルを極低温で、1.0メッシュのスクリーンを装着したWiley Millに通して粉砕する。最終粉砕材料は800μm未満の粒度を有する。サンプルの一部(0.20g)を20mLヘッドスペースバイアル中に量り入れ、シールし、次いで150℃において60分間加熱する。加熱後、シールされたPETポリマーサンプルの上方のガスをキャピラリーGCカラム上に注入する。遊離アセトアルデヒドを分離し、次いでサンプル中に存在する遊離アセトアルデヒドのppmを算出する。算出されたアセトアルデヒドの量はサンプル中に存在する遊離又は残留アセトアルヒドの量に相当する。
【0185】
プレフォームについてアセトアルデヒド発生度を測定するためには、プレフォームの製造によってペレットは射出成形前に押出機中で溶融されるので、プレフォームを更なる溶融履歴に供することなく、前述のASTM #F2013−00法を用いれば充分である。溶融押出又は射出成形によって、ポリマーメルト中のAA前駆体はアセトアルデヒドに転化される可能性がある。
【0186】
アセトアルデヒド発生度は固体粒子について測定できる。しかし、遊離アセトアルデヒド発生を測定するためには、サンプルは、発生する遊離アセトアルデヒドレベルを測定するために、第2溶融履歴を経なければならない。サンプルが事前の溶融相製造工程以外に溶融工程を経ていない粒子又は粉末である場合には、最初に下記のサンプル調製手順に従ってサンプルを処理し、その後に分析のためにサンプルをASTM #F2013−00試験法に供する。
【0187】
サンプルの調製: アセトアルデヒド発生度を測定するためには、また、サンプルが溶融相重縮合の後に溶融履歴を経ていない場合には、サンプルをASTM #F2013−00試験に供する前に、この方法に従って調製する。ポリマー粉末(3mmのスクリーンを通るように粉砕)のサンプルをオーブン中で115℃において真空(25〜30in.Hg)下で4SCFHの窒素パージを行いながら、少なくとも48時間加熱した。水を除去するためだけならば一晩の乾燥で充分であったであろうが、この長時間にわたるオーブン処理は、溶融相のみの合成の後であって且つAA発生試験前の高IV粉末中に存在する残留AAを約1ppm又はそれ以下まで脱着させるのにも役立った。ペレットから予め残留AAのほとんどをストリッピングしていなかった場合(目標値:1ppm又はそれ以下)には、ペレットから残留AAを脱着する必要があった。ペレットは、前記条件下での残留AA除去前に、2mmのスクリーンを通るように粉砕した。粉砕を行わなかった場合には、粒度がより大きい(拡散経路がより長い)ため、残留AAをペレットから約1ppm又はそれ以下まで脱着するのにより長い時間がかかり且つ/又はより高い温度が必要であったであろう。残留アセトアルデヒドを目的レベルまで低下させるのに充分な時間、高温不活性ガスをペレット上に通すことを含む任意の適当なアセトアルデヒド脱蔵技術を、ペレットについて用いて、遊離アセトアルデヒドレベルを約1ppm又はそれ以下まで低下させることができる。好ましくは、アセトアルデヒド脱蔵温度は165℃を超えてはならず、又はより好ましくは160℃を超えてならず、又は更に好ましくは150℃を超えてはならない。次に、サンプルを、予熱したTinius Olsenメルトインデックサー(別名、押出式可塑度計)中に鋼棒を用いて、充填した。オリフィスダイをASTM D1238に従って較正した。少量の材料を底部からパージし、次いで底部に栓をした。ピストンロッドアセンブリをバレルの上部に挿入した。225gの重りをピストンロッドの上部に置いて、バレルの内部にロッドを下げておいた。ポリマーを295℃に5分間保持した。次に、オリフィスプラグをバレル底部から取り外した。大きな重りとオペレーターの加圧によって、押出物をバレルから氷水浴中に押出した。押出物を叩くようにして水気を取り、バッグ中にシールし、ASTM #2013−00試験を行うまで冷凍庫中に入れておいた。
【0188】
別法として、CEAST Model 7027 Modular Melt Flow計測器を用いる。295℃の温度を保持し且つ溶融PET材料を、計測器のファームウェアに設定された一定流速で5分で押出するAA発生プログラムを開始する。押出物がバレルから氷水浴に押出されたら、サンプルを収集し、叩くようにして水気を取り、バッグ中にシールし、ASTM #2013−00試験を行うまで冷凍庫中に入れておいた。
【0189】
アセトアルデヒドは、Ceast Model 7027 Modular Melt Flow又は任意の同様な押出式可塑度計型計測器を用いて、ポリエステル樹脂中に発生させることができる。しかし、Ceast 7027計測器の自動機能は押出バレル内におけるポリマーの接触時間を均一に保つことによって試験のばらつきを低減するので、Ceast 7027計測器が好ましい。この特定のモデルの計測器には、試験操作の開始時における樹脂の自動充填が組み込まれている。この計測器に、ピストンがバレルの底部より上方の指定した高さとなるまでバレルから材料を押し出す電動プラットフォームを装着する。その後、プラットフォームはピストンロッドを所定の位置に保持して、樹脂を昇温させ、アセトアルデヒドを発生させるであろう。指定保持時間の最後に、プラットフォームは、一定速度で移動しながら、バレルから樹脂の残りを押出す。これらの工程は、最終押出工程全体にわたって、材料の充填による結果のばらつきの可能性をなくす。ポリマーの装填のばらつきは、バレルの設計によって低減されるが、ポリマーの装填は自動化されない。
【0190】
アセトアルデヒドは、前述のようにして、265〜305℃の温度範囲にわたって発生させることができる。最も均一な結果は、275〜295℃において得られる。樹脂をバレル内に保持する時間長は2〜15分の場合に好結果を示す。5〜10分の範囲が最良の再現性及び材料間の差異を示す。本発明に関して記載したAA発生数値に関しては、295℃及び5分を用いた。
【0191】
このようなアセトアルデヒドの発生及び試験の方法を用いると、ボトルプレフォームの成形のような大量の材料を評価に必要とすることなく、ポリエステル樹脂をアセトアルデヒド発生についてスクリーニングすることができる。この方法にはわずか10gの材料を使用すればよく、これは実験室サンプルの試験に理想的である。
【0192】
本発明においては、低い残留アセトアルデヒド及び低いアセトアルデヒド発生度を共に有する、固相重合されずに製造されたポリエステルポリマー粒子の供給材料を、その後の溶融加工工程(例えば押出/射出成形)に供給することが可能である。有利には、低い残留アセトアルデヒドレベル(例えば約13ppm未満)を有するポリエステルポリマー粒子を製造するために、ポリエステル粒子の溶融相製造をもはや低い製造温度に制御することも制限することも必要ない。代わりに、許容され得る処理速度又は製造速度を用いたポリエステルポリマーの溶融相製造によって、低い残留アセトアルデヒドレベル及び低いアセトアルデヒド発生度を有するポリエステルポリマー粒子を得ることができる。この方法によって、アセトアルデヒド捕捉剤の添加が必要でも望ましくもなく、従来のTi触媒組成物の使用を可能にし且つ高It.V.へのポリエステルポリマーの増成を可能にする、広い製造ウィンドウを有する確実な溶融相製造方法が実現可能である。溶融相のみの製造プロセスにおいて真空が開放された後にその後の移送配管中で、また、その後の溶融加工時にアセトアルデヒド前駆体の転化が起こらないようにTi触媒を失活させることによって、プレフォームの製造に適した、低AAを有する粒子を射出成形機に供給することができる。
【0193】
本発明の粒子は、輸送コンテナ中にバルクとして直接的に又は間接的に梱包してから、顧客又は販売業者に輸送する。結晶化された粒子は、粒子を輸送コンテナ中に梱包する前の時点で粒子を固相重合することなく、本明細書中に記載した任意のプロセスに供するのが好ましい。粒子は記載した工程のいずれかの間で、固相重合を除いた多数の追加の加工工程に供することができる。
【0194】
輸送コンテナは、陸路、海路又は空路で輸送するために、使用されるコンテナである。例としては、鉄道車両、セミトラクター・トレイラー・コンテナ、ゲイロードボックス、船殻又は顧客への完成ポリエステル粒子の輸送に使用される任意の他のコンテナが挙げられる。顧客は典型的には、粒子をプレフォーム又は他の成形品に加工する加工事業体である。
【0195】
輸送コンテナは、ポリエステルポリマー粒子のバルクを収容できる。バルクは少なくとも約3m3の体積を占める。好ましい態様において、輸送コンテナ中のバルブは少なくとも5m3又は少なくとも10m3の体積を占める。
【0196】
一態様において、
溶融相重合製造において得られた少なくとも約72dL/g若しくはそれ以上又は0.74dL/g若しくはそれ以上又は0.76dL/g若しくはそれ以上又は0.80dL/g若しくはそれ以上のIt.V.を有し、
少なくとも約20%又は少なくとも30%の結晶化度を有し、
約10ppm若しくはそれ以下又は5ppm若しくはそれ以下又は3ppm若しくはそれ以下の残留アセトアルデヒドレベルを有し、
チタン原子を含み、
燐原子を含み、
約20ppm未満又は18ppm未満又は16ppm未満又は14ppm未満又は12ppm未満のアセトアルデヒド発生度、或いは触媒失活剤を添加しない組成物に比較して、少なくとも約10%又は少なくとも20%又は少なくとも30%又は少なくとも40%又は少なくとも50%又は少なくとも60%若しくはそれ以上のアセトアルデヒド発生度又はプレフォームAAの低下を示し、
有機アセトアルデヒド捕捉剤を含まず、且つ
固相重合されていない
完成ポリエステルポリマー粒子を提供する。
【0197】
これらの粒子は、好ましくは約5若しくはそれ以下又は3若しくはそれ以下のb*及び少なくとも約55又は少なくとも60又は少なくとも65又は70若しくはそれ以上又は73若しくはそれ以上又は76若しくはそれ以上又は79若しくはそれ以上のL*を有する。これらの粒子は、好ましくはAA捕捉剤を含まない。
【0198】
「完成」粒子とは、成形機に付随する乾燥機ホッパー中にすぐに供給できる又は粒子の物品への加工に使用する成形機に直接供給できる粒子の製造に必要な全ての加工条件に粒子製造業者が既に供しており、粒子製造業者がそれ以上加工工程を行うことない粒子を意味する。
【0199】
物品は、当業者に知られた任意の従来の方法によって、ポリエステル粒子を溶融加工することによって形成できる。例えば少なくとも約20%の結晶化度まで結晶化されたポリエステル粒子を、飲料若しくは食品容器への延伸ブロー成形に適当なプレフォームのような形状にメルトを溶融押出及び射出成形するための機械に、又は射出成形ではなく、シートのような他の形態に単に押出すための機械に供給する。物品を形成するための適当な方法は周知であり、押出、押出ブロー成形、溶融キャスト、射出成形、溶融−成形プロセス(melt-to-mold process)、延伸ブロー成形(SBM)、熱成形などを含む。
【0200】
本発明の溶融相生成物及びポリエステルポリマー組成物から形成できる造形品の種類の例としては、シート;フィルム;パッケージング及び容器、例えばプレフォーム、ボトル、ジャー及びトレイ;ロッド;チューブ;リッド;並びにフィラメント及び繊維が挙げられる。水又は炭酸飲料を飲料ボトルを入れるのに適当な、ポリエチレンテレフタレートから製造される飲料ボトル及びボトル中に熱間充填される飲料を入れるのに適当なヒートセット飲料ボトルは本発明の結晶化ペレットから製造されるボトルの種類の例である。トレイの例はデュアルオーブナブルであるもの(通常のオーブンにも電子レンジにも使用できるもの)及びその他のCPETトレイである。
【0201】
本発明の別の態様において、
(i)溶融相重合において得られた少なくとも約0.72dL/g又は少なくとも0.74dL/g又は少なくとも0.76dL/g又は少なくとも0.80dL/gのIt.V.を有し、
少なくとも20%の結晶化度を有し、10ppm若しくはそれ以下の残留アセトアルデヒドレベルを有し、
チタン種を含む重縮合触媒組成物の残基を有し、
好ましくは燐原子を含む触媒失活剤の残基を有し;
且つ添加有機アセトアルデヒド捕捉剤を含まない固体ポリエステルポリマー粒子を、溶融加工ゾーンに投入し、前記粒子を溶融させて、溶融ポリエステルポリマー組成物を形成し;そして
(ii)前記溶融ポリエステルポリマー組成物からシート、ストランド、チューブ、繊維又は成形品を含む物品を形成する
ことを含んでなる物品の製造方法であって、
物品に形成される前記溶融ポリエステル組成物が約20ppm未満又は18ppm若しくはそれ以下又は16ppm若しくはそれ以下又は14ppm若しくはそれ以下又は12ppm若しくはそれ以下又は10ppm若しくはそれ以下のアセトアルデヒド発生度(前記ポリエステル粒子の一部を押出式可塑度計中で295℃において5分間溶融させることによって測定)を有するか、或いは触媒失活剤を添加しない同一組成物に比較して、少なくとも約20%又は少なくとも30%又は少なくとも40%又は少なくとも50%又は少なくとも60%のアセトアルデヒド発生度又はプレフォームAAの低下を示す方法が提供される。
【0202】
この態様において、溶融相において製造された、Tiで触媒されたポリエステルポリマー粒子は高It.V.となり、溶融加工ゾーンに供給される粒子中にアセトアルデヒド捕捉剤を存在させることなく、低い残留アセトアルデヒド及び低いアセトアルデヒド発生度を共に有することによって、溶融加工ゾーンへの適当な供給材料として提供される。この場合は、アセトアルデヒドの発生は、粒子に溶融履歴を与える前述のサンプル調製技術を用いて、粒子供給材料について測定する。この態様において、残留アセトアルデヒドは、溶融相製造プロセスから製造された粒子をガスストリッピングすることによって、10ppm未満まで低下させることができる。更に、溶融相において添加した触媒失活剤は、ポリマー中のTi触媒残基がアセトアルデヒド前駆体をアセトアルデヒドに転化するのを少なくとも部分的に妨げる。この態様において、溶融加工ゾーンに供給される粒子は好ましくは固相重合されていない。溶融相のみの合成によって製造されたポリエステル粒子は、表面から中心への分子量勾配が小さく、溶融加工時に受けるIt.V.低下が従来のポリエステルより小さい。例えばボトル及び/又はプレフォーム、特に炭酸清涼飲料又は水ボトルのような飲料ボトルが本発明の粒子から製造され、粒子のIt.V.とプレフォーム及び/又はボトルのIt.V.との差は約0.04dL/g以下又は0.03dL/g以下又は0.02dL/g以下である。
【0203】
別の態様において、成形品は好ましくは有機アセトアルデヒド捕捉剤を含まない。別の態様において、溶融加工工程において固体ポリエステル粒子に添加される成分は有機アセトアルデヒド捕捉剤を含まない。
【0204】
別の態様において、
(i)溶融相重合によって得られた少なくとも0.72dL/gのIt.V.を有し、
少なくとも20%の結晶化度を有し、
10ppm若しくはそれ以下の残留アセトアルデヒドレベルを有し、チタン種を含む重縮合触媒組成物の残基を有し、
且つアセトアルデヒド捕捉剤を含まない
固体ポリエステルポリマー粒子を、溶融加工ゾーンに投入し、前記粒子を溶融させて、溶融ポリエステルポリマー組成物を形成し;そして
(ii)前記溶融ポリエステルポリマー組成物からシート、ストランド、繊維又は成形品を含む物品を形成する
ことを含んでなり、プレフォーム又は20oz.ボトルのような前記物品が約10ppm若しくはそれ以下又は8ppm若しくはそれ以下又は6ppm若しくはそれ以下又は4ppm若しくはそれ以下のアセトアルデヒドを含む、物品の製造方法を提供する。
【0205】
成形品に関する遊離AA量はASTM F2013−00によって測定できる。成形品は285℃のバレル温度設定値及び約2分のメルト滞留時間を用いて製造する。プレフォームは本発明の粒子から種々の射出成形バレル温度及び滞留時間で製造できる。具体的な射出成形条件は、プレフォームAAについて指定された数値に関する状況を示すために記載するのであって、本発明をある特定の射出成形条件に限定するために記載するのではない。或いは、本発明の粒子から製造されたプレフォームは、触媒失活剤を添加しない組成物から製造されたプレフォームに比較して、少なくとも約20%又は少なくとも30%若しくはそれ以上又は少なくとも40%若しくはそれ以上又は少なくとも50%若しくはそれ以上又は少なくとも60%若しくはそれ以上のプレフォームの遊離AAの低下を示す。
【0206】
この態様において、残留アセトアルデヒドのレベルはプレフォームのような物品について測定する。この場合、粒子は射出成形機中で溶融されたので、プレフォームサンプルに第2の溶融履歴(溶融相製造を第1溶融履歴と見なす)を与える必要はない。乾燥後であって、射出成形前の粒子中に存在する残留アセトアルデヒドの量を、プレフォームにおいて得られる残留アセトアルデヒド値から差し引かなければならない。
【0207】
溶融加工押出機においては、ペレットの性能特性を向上させるために、押出機に他の成分を加えることができる。これらの成分はニートで若しくは液体担体中に入れてバルクポリエステルペレットに添加することもできるし、又はバルクポリエステルにレットダウンされるポリエステルポリマー中に少なくとも約0.5重量%の成分を含む固体ポリエステルコンセントレートとしてバルクポリエステルペレットに添加することもできる。適当な成分の種類としては、結晶化助剤、耐衝撃性改良剤、表面潤沢剤、嵌め外し剤、コンパウンド、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、成核剤、再加熱促進助剤、タルクのような粘着性ボトル用添加剤、及び充填剤などが挙げられる。全てのこれらの添加剤及び多くの他の添加剤並びにそれらの利用法は当業界でよく知られており、詳細な解説は必要ない。
【0208】
前述のように、触媒失活剤は重縮合過程の遅い段階又はその後であって凝固前に添加する。別の態様においては、触媒失活剤のバルクを重縮合過程の遅い段階又はその後であって凝固前に添加するが、一部は重縮合過程のより早い段階で添加することができる。触媒失活剤のいかなる早期添加も、生産速度に与える影響を検討する必要があり;従って、早期添加をするにしても、ごく一部にとどめるべきである。更に、ポリエステルメルトが、そのプロセスのかなり早い段階で添加された触媒失活剤を含む場合には、追加の触媒失活剤を遅い段階で添加しても、同じ総量が遅い段階で添加されるほどには、AA発生度の低下に効果がない可能性がある。これは、前に定義した、遅い段階での添加の前に添加される総触媒失活剤の百分率が増加するにつれて、より問題になるであろう。
【0209】
触媒失活剤の総量を、ポリエステルポリマーを製造するための溶融相プロセスの間に添加する態様に加えて、別の態様においては、触媒失活剤の総量を少なくともとも2つの部分に分けて、少なくとも1つの部分はポリエステルポリマーを製造するための溶融相プロセしにおいて、また、少なくとも1つの他の部分はポリエステルポリマーが凝固された後であって且つポリエステルポリマーから物品を形成する前の任意の箇所で、例えば物品を製造するための押出機又は射出成形機中で従来行われるような物品を製造するためのポリエステルポリマーの溶融加工時に、ポリエステルポリマーに添加する。更に別の態様において、触媒失活剤の総量を、凝固後であって且つ物品の製造前、例えば射出成形によってポリエステルポリマーをボトルプレフォームに溶融加工する間に、添加する。
【0210】
溶融相製造プロセスからの凝固後の触媒失活剤の部分添加又は全添加は、触媒失活剤をポリエステルポリマー粒子と溶融配合して、ランダムに分散された触媒失活剤化合物を含むポリエステルポリマー粒子の固体コンセントレートを形成し、その後に前記コンセントレートを、物品を製造するための溶融加工ゾーンにポリエステル粒子の供給流と共に供給することによって、行うこともできるし;又は触媒失活剤の流れを直接的にニート流として若しくは液体担体を用いて生成されたスラリー又は分散液の形態で、物品を製造するための溶融加工ゾーンにポリエステルポリマー粒子の流れと共に添加することもできる。従って、一態様において、非晶質固体ポリエステルポリマー粒子を、遅い段階で触媒失活剤を添加せずに溶融相プロセスから製造し、結晶化させ、その後に触媒失活剤とポリエステルポリマーとを、配合押出によって又は射出成形プロセスの押出機部分(押出機中でポリエステルポリマーの流れに固体、液体若しくは溶融成分を溶融ブレンドするのに使用されるもの、又は射出成形プロセスにおいて押出によって成形品を形成するために使用されるもの)においてブレンドするか、或いは任意の他の混合装置中でブレンドする。この態様において、遅い段階で触媒失活剤を添加せずに溶融プロセスから製造された固体ポリエステルポリマー粒子は、任意的に、スクリューに巻き付くことなく押出されるのに充分な結晶化度で製造され、即ち、ポリエステルポリマー粒子は非晶質ではなく、従って別の結晶化工程を必要としない。
【0211】
この態様において、触媒失活剤が投入される混合装置は、射出成形機の一部であることもできるし、或いは射出成形前の別の工程であることもできる。触媒失活剤はニートで又は、液体担体中に入れられた状態で又はポリマーコンセントレートによって投入できる。ポリマー担体中における触媒失活剤と触媒との反応は有効性を低下させる可能性があるので、ニートで又は液体担体中に入れられた状態で投入するのが好ましい。触媒失活剤が液体であり且つニートで添加する場合には、周囲条件の混合機を用いて、ペレットを液体添加剤でコーティングしてから押出機中に入れることができるであろう。ポリマーコンセントレートルートを用いる場合には、コンセントレートペレットは、専ら溶融相で製造されたペレットと周囲条件においてドライブレンドして、「塩胡椒」型ブレンドを生成することができるであろう。これらの同じ注釈及びアプローチは、触媒失活剤と固相化ペレットとの溶融ブレンドにも適用できる。
【0212】
この態様は、ペレットを固相重合する場合に特に有用である。溶融相への触媒失活剤の組み込みは、場合によっては固相化速度を低下させるおそれがある。ポリエステルペレットを固相重合しようとする場合には、ペレットが固相重合プロセスを経た後で触媒失活剤を添加するのが有利である。
【0213】
一態様において、本発明の方法によって得られたポリエステルポリマーから製造されるボトルプレフォームは少なくとも約50又は少なくとも60又は少なくとも65又は少なくとも70のL*を有するであろう。別の態様において、本発明の方法によって得られるポリエステルポリマーから製造されるボトルプレフォームは、少なくとも50又は少なくとも60又は少なくとも65又は少なくとも70のL*を保持しながら、約5.0以下又は3.0以下のb*値を有するであろう。
【0214】
この方法において使用されるチタン原子に対する、遅い段階で添加される触媒失活剤としての燐の量は限定するものではなはないが、メルト中に存在するチタン金属及び他の金属の量を考慮する。燐のモル対チタンのモルの比は望ましくは少なくとも約0.15:1,又は少なくとも0.3:1、又は少なくとも0.5:1、又は少なくとも0.7:1、又は少なくとも1:1、又は少なくとも2:1である。
【実施例】
【0215】
本発明をその態様の更なる実施例によって更に説明できるが、これらの実施例は説明のためにのみ記載するのであって、本発明の範囲を限定することを目的としない。
【0216】
実験
この説明全体にわたって記載したIt.V.の値は、60重量%のフェノール及び40重量%の1,1,2,2−テトラクロロエタン中で25℃において測定されたインヘレント粘度(inherent viscosity)から算出されたものをdL/g単位で示してある。ポリマーサンプルは0.25g/50mLの濃度で溶媒中に溶解させる。実施例部分におけるサンプルについては、ポリマー溶液の粘度は、Rheotek Glass Capillary粘度計を用いて測定する。この粘度計の操作原理の説明は、ASTM D 4603に見られる。インヘレント粘度は、測定された溶液粘度から算出する。以下の式は、このような溶液粘度測定値とその後の、Ih.V.までの計算及びIh.V.からIt.V.までの計算を記載している。
【0217】
ηinh=[ln(ts/t0)]/C
[式中、ηinh=フェノール60重量%及び1,1,2,2−テトラクロロエタン40重量%の溶媒100mL当たり0.5gのポリマー濃度での25℃におけるインヘレント粘度
ln=自然対数
s=毛細管を通るサンプルの流下時間
0=毛細管を通る溶媒ブランクの流下時間
C=溶媒100mL当たりのポリマー(g)の濃度(0.50%)]。
【0218】
極限粘度数(intrinsic viscosity)は、ポリマーの比粘度(specific viscosity)の無限稀釈における極限値である。これは以下の式によって定義される:
ηint=limC→0(ηsp/C)=limC→0(lnηr)/C
[式中、ηint=極限粘度数
ηr=相対粘度(relative viscosity)=ts/t0
ηsp=比粘度=ηr−1]。
【0219】
計測器の較正は、標準対照材料を三重反復試験し、次いで適当な数式を適用して「許容」Ih.V.値を得ることを含む。較正のために用いた3つの値は、0.010の範囲内とし;そうでなければ、この範囲内の3つの連続した結果が得られるまで、問題を解決し、標準の試験を繰り返すものとする。
較正係数=対照材料の許容IV/三重反復測定値の平均
【0220】
極限粘度数(It.V.又はηint)は、Billmeyer式を用いて以下のように概算できる:
ηint=0.5[e0.5×補正Ih.V.−1]+(0.75×補正Ih.V.)。
【0221】
極限粘度数の概算に関する参考文献(Billmeyer関連)は、J.Polymer Sci.,,83−86頁(1949)である。
【0222】
別法として、ポリマー溶液の粘度を、Viscotek Modified Differential Viscometerを用いて測定する。差圧式粘度計(differential pressure viscometer)の操作原理はASTM D 5225に記載されている。各サンプルの未補正インヘレント粘度(ηinh)を、Viscotek Model Y501 Relative Viscometerから、下記式:
ηinh=[ln(P2/KP1)]/C
[式中、P2=毛細管P2中の圧力
1=毛細管P1中の圧力
ln=自然対数
K=ベースラインの読み取り値から得られる粘度定数
C=ポリマーの濃度(溶媒100mL当たりのg)]
を用いて計算する。
【0223】
標準対照材料を用いた較正に基づく補正Ih.V.は以下のように計算する:
補正Ih.V.=計算Ih.V.×較正係数。
【0224】
*又はb*カラーは、以下に説明するように、粉砕して粉末にした又はディスクに成形した又はプレフォームに成形した又はボトルにブロー成形した試料について測定できる。これらの試験方法の任意の1つによって測定された試料から得られた報告L*又はb*値が添付した「特許請求の範囲」に記載した範囲であるならば、試料は、添付した「特許請求の範囲」中の指定L*又はb*カラー範囲内であると見なす。例えば、1つの試験方法によって測定した場合には指定b*範囲外であったが別の試験方法で測定した場合には指定b*範囲内であったb*カラー値は、試験方法の1つによって指定b*カラー範囲に適合したので、指定範囲内のポリマーと見なす。
【0225】
*又はb*カラー値の測定は、以下の方法の任意の1つに従って調製した試料について行う。別法として、カラー値は、粉砕によって3mmのスクリーンを通る粉末にされたポリエステルポリマーについて測定する。
【0226】
粉末サンプルについては、側色は、拡散/8°(照明/視野角)の球形光学的形状を使用するHunterLab UltraScan XE(Hunter Associates Laboratory,Inc.,Reston VA)を用いて反射率(正反射率を含む)で実施した。結果は、D65光源及び10°の観察角(observer)によってCIELABスケールを用いて報告した。HunterLabの推奨基準に従って、分光光度計を定期的に標準化し、UV対照を使用し、較正状態に保持した。球の汚染を最小にするために、光学ガラス・ポートプレートを反射ポートに取り付けた。粉末を、ガラス前部を除いてメタリックグレイであるセル中に入れた。光学グレードのガラスはセルの前部から0.062”引っ込めて取り付けられた。ガラス自体は厚さが0.092”である。サンプル領域は深さ0.71”、幅1.92”及び高さ2.35”であった。サンプルを実験室用Mini−Vortexer(VWR International,West Chester,PA)を用いて20秒間振動させることによって、粉末を固く詰めた。ガラスセルを反射ポートにぴったり付いた状態に保持し、黒い不透明のカバーで覆った。1回のセル充填について評価し、セルを取り出して、各サンプル当たり3回の反復測定のために交換した。報告値は、三重反復試験の平均としなければならない。
【0227】
粉砕して粉末としたポリエステルポリマー試料は好ましくは、例えば約15%の最小結晶化度を有する。従って、ボトルはより低い結晶化度の領域を有するので、この方法からボトルを分析する場合には注意しなければならないと推測される。非晶質ポリマーから結晶性ポリマーを分離することが可能でない場合には、カラー値の評価にはディスク法の方が適していると推測される。
【0228】
色は、Daca MicroCompounder/MicroInjectorを用いてディスク(直径3cm,厚さ66〜68mil)に成形したポリマーから測定する。ディスクの場合は、HunterLab UltraScan分光光度計を用いて、一緒に積み重ねられた3枚のディスク(厚さ約198〜204milの範囲)についてL*、a*及びb*を測定する。分析するポリエステルサンプルから、直径3cm、厚さ約65〜68milの明澄なディスク3枚1組を調製する。ディスクの調製は、供給口への1.4scfhの窒素流及び283〜285℃のミクロインジェクターバレルへの120rpmのスクリュー速度を用いて各ポリエステルサンプルを278℃の温度で押出すことによって行う。バレルは、どのディスクを成形しようとする前にも、材料でパージしなければならない。最終ディスクは、射出用ピストンに対して100psigの射出機圧を用いて調製する。ディスク金型は、冷水の循環によって10〜20℃の温度範囲に保持する。サンプルがこれらの温度で溶融され且つ前記速度で押出されるならば、別の押出装置を使用することもできる。HunterLabUltraScan分光光度計は、10°の観察角及び積分球形状と共にD65照明光源を用いて操作する。側色は、サンプルを直接透過する光と広範に散乱される光の両方が測定される全透過率(TTRAN)モードで行う。3枚のディスクを、最大面積を有する面が光源に対して垂直に配置されるようにして、ホルダーを用いて光源の前に一緒に積み重ねた。
【0229】
ポリマーの結晶化度は、示差走査熱量測定法(DSC)を用いて測定した。この測定のためのサンプル重量は10±1mgである。分析に供する試料は、好ましくは極低温で粉砕した。第1加熱走査を実施した。サンプルを約25℃から290℃まで20℃/分の速度で加熱し、[融解吸熱曲線(1つ又はそれ以上)の面積]−[結晶化発熱曲線の面積]の絶対値を求める。この面積は、正味融解熱に相当し、ジュールで表す。100%結晶性のPETの融解熱は119ジュール/gと見なした。従って、ペレットの重量%結晶化度は、正味融解熱÷119×100として算出される。特に断らない限り、各場合における初期融点も、同じDSC操作を用いて測定した。
【0230】
パーセント結晶化度は、低ピーク融点(Tm1a)及び高ピーク融点(Tm1b)両方から計算した。場合によっては、低い結晶化度においては特に、DSC計測器中で結晶転移が非常に急速に起こる可能性があるので、真の比較的低い融点は検出されないことに留意されたい。その場合には、DSC計測器の温度傾斜速度(temperature ramp rate)を増加させ且つより小さいサンプルを用いることによって、比較的低い融点を検出することができる。高速熱量測定法にはPerkin−Elmer Pyris−1熱量計を用いた。試料の質量は、走査速度に反比例するように調節する。約1mgのサンプルは500℃/分で用い、約5mgのサンプルは100℃/分で用いる。典型的なDSCサンプルパンを用いた。ベースラインの湾曲を最小限に抑えるために、ベースラインを減じた。
【0231】
別法として、パーセント結晶化度は、2〜3個のペレットの平均勾配管密度から算出できる。勾配管密度試験は、ASTM D 1505に従って水中臭化リチウムを用いて行う。
【0232】
各成形ディスクの再加熱速度を、以下のようにして測定した。ディスクを、サンプルとその縁端部に沿ってのみ接触する支持体上に置いた。次いで、アクチュエーターがパイロメーターの真下のディスクを自動的に動かし、初期温度(Ti)を測定した。次に、ディスクは、60Vにおいて動作する電球(GE DYH 映写用電球,250W,120V)を装着したランプハウジングの下、一定の距離まで移動させた。サンプルを放射光に20秒間暴露した。ランプの色温度は約2,200℃であった。加熱後、ディスクはパイロメーターに自動的に戻され、ランプがオフになってから2秒後に、ランプに面する側(正面)の中央領域の表面温度(Tf)がパイロメーターに記録された。90秒の冷却サイクルを連続試験間に用い、その間に次のサンプルの取り付け前にファンがランプハウジングを冷却した。[再加熱添加剤を含むサンプルのTf]−[再加熱添加剤を含まない対照のTf]によって、RITを算出する。
【0233】
ポリエステルポリマープレフォームの再加熱改善温度(RIT)は、20オンスボトルプレフォームを用いて測定する。各組成物のRITを測定するために、全てのプレフォームを、一貫した方法で、Sidel SBO2/3ブロー成形ユニットのオーブンバンクに通す。一組の20オンスプレフォーム(外径0.846インチ及び側壁断面厚0.154インチを有する)を、Sidel SBO2/3ブロー成形ユニットのオーブンバンクに通す。Sidelブロー成形ユニットのランプ設定値を表Iに示す。ヒーター中におけるプレフォームの加熱時間は38秒であり、石英赤外線ヒーターへの出力を64%に設定する。5個一組のプレフォームを、石英赤外線ヒーターの前に通す。プレフォームの表面温度を測定した。
【0234】
【表1】

【0235】
次に、再加熱添加剤を含む目標サンプルのプレフォーム表面温度の差を、再加熱添加剤を含まない同じポリマーの場合と比較することによって、プレフォーム再加熱改善温度(RIT)を算出する。RIT値が高いほど、組成物の再加熱速度は速い。
【0236】
比較例A、C、D及び実施例A、B、C、D、E及びFの重縮合反応は、主にテレフタル酸及びエチレングリコールから製造し、概ねシス35%/トランス65%の1,4−シクロヘキサンジメタノールを約1.5モル%及びジエチレングリコールを約1.5重量%含むPETオリゴマーを用いた。バッチ間及び/又は試験方法間に若干の差異があるため、このオリゴマーは、酸基のプロトンNMR/滴定によって約90〜95%の酸基転化率を有する。
【0237】
比較例A
重縮合のために、粉砕オリゴマー(103g)を0.5Lの一口丸底フラスコ中に量り入れた。使用した触媒は三酢酸アンチモンであり、これをエチレングリコール中溶液としてフラスコに加えた。赤色及び青色トナーを、表IV中に比較例Aに関して示した量で、フラスコに加えた。316Lステンレス鋼パドル撹拌機及びガラスポリマーヘッドをフラスコに取り付けた。ポリマーヘッドをサイドアーム及びパージホースに取り付けた後、2回の窒素パージを完了させた。重合反応器は、以下の配列(表II)を実施するようにプログラムされたCAMILE(登録商標)自動化システムの制御下で運転する。
【0238】
【表2】

【0239】
Belmont金属の溶融浴を、フラスコを取り囲むように上昇させ、CAMILE(登録商標)配列を実施した。この配列において、「傾斜」は、指定した段階時間の間における、真空、温度又は撹拌速度の直線的変化と定義する。撹拌系は、段階4と5の間で自動的に較正された。アンチモン化合物によって触媒される重合反応に典型的な条件は、約285℃及びポリマー中Sb約250ppmであった。これらの条件下で約0.80IhVに相当するトルクにおいてポリマーサンプルを終了させると、仕上げ機段階時間は約58分であり、従ってその時間量が段階10で使用された。58分の仕上げ時間後に、真空を破壊し、段階12の間に市販オリゴマー燐酸トリエステル配合物をSb対照に加え、段階14での混合を促進するために段階13において真空を再開した。ポリマーを加水分解又はグリコール分解する(glycolyze)可能性のある存在する溶媒の量を減少させるために、エチレングリコール、n−ブタノール、水又はポリマーを加水分解若しくはグリコール分解し得る他の全ては、段階12におけるその投入前には、市販オリゴマー燐酸トリエステル配合物に添加しなかった。市販オリゴマー燐酸トリエステル配合物は、燐9重量/重量%として直接添加した。シリンジによって容量で再現性のある方法でポリマーに添加できるオリゴマー燐酸トリエステルの最少量は0.02mLであった。これはポリマー中のPの目標値、約20ppmに相当する。
【0240】
配列又は実験室製造の終了後、ポリマーを約15分冷却させ、ガラスフラスコから分離し、約10分間冷却し、次いで直ちに液体窒素中に入れた。ポリマーを、3mmのスクリーンを通るように極低温で粉砕した。残留又は遊離AAサンプルを、ASTM#F2013−00に従ってヘッドスペースGCによって測定するまで、凍結保存した。
【0241】
粉砕ポリマーを、Tinius Olsenメルトインデックサー(別名、押出式可塑度計)中で295℃で5分間処理することによるアセトアルデヒド発生度(AAGen295/5)、遊離AA(AAFN)、螢光X線による金属、インヘレント粘度、L*、a*及びb*カラーについて分析した。3枚のチップを作り、積み重ね、チップの色について試験した。データを表IVに記載する。
【0242】
実施例A
重縮合のために、粉砕オリゴマー(103g)を0.5Lの一口丸底フラスコ中に量り入れた。使用した触媒はチタンテトラブトキシドであり、これをn−ブタノール中溶液としてフラスコに加えた。赤色及び青色トナーを、表IV中に実施例Aに関して示した量で、フラスコに加えた。赤色及び青色トナーの量は、表IVに示された、比較例Aに関して得られたのと同様なチップa*及びチップb*が得られるように、選択した。316Lステンレス鋼パドル撹拌機及びガラスポリマーヘッドをフラスコに取り付けた。ポリマーヘッドをサイドアーム及びパージホースに取り付けた後、2回の窒素パージを完了させた。重合反応器は、以下の配列(表II)を実施するようにプログラムされたCAMILE(登録商標)自動化システムの制御下で運転した。
【0243】
【表3】

【0244】
Belmont金属の溶融浴を、フラスコを取り囲むように上昇させ、CAMILE(登録商標)配列を実施した。この配列において、「傾斜」は、指定した段階時間の間における、真空、温度又は撹拌速度の直線的変化と定義する。撹拌系は、段階4と5の間で自動的に較正された。仕上げ機滞留時間が同様である場合の2つの触媒系を比較するために、この例におけるチタンレベルを10ppmとし、温度を比較的低い270℃とした。これらの条件下で約0.80IhVに相当するトルクにおいてポリマーサンプルを終了させると、Ti触媒ランに関する仕上げ機段階時間は約66分であり、従ってその時間量が段階10で使用された。66分の仕上げ時間後に、真空を破壊し、段階12の間に市販オリゴマー燐酸トリエステル配合物を加え、段階14での混合を促進するために段階13において真空を再開した。段階12の間に、市販オリゴマー燐酸トリエステル配合物を直接、即ち、配合物に他に何も添加せずに、9重量/重量%の燐として添加した。入手可能なシリンジによって容量で再現性のある方法でポリマーに添加できるオリゴマー燐酸トリエステルの最少量は0.02mLであった。これはポリマー中Pの目標値、約20ppmに相当する。同一Tiレベルに対してより少量のP、即ち、より低いP:Tiモル比がある時点までは同程度に有効であることができる。例えば、実施例Aにおいては、XRF値を用いたP:Tiモル比は1.85であった。P:Ti 1においては、同程度の結果が期待される。しかし、実験室規模でP:Tiモル比1を達成するのに必要な極少量のオリゴマー燐酸トリエステルを添加するのは困難であった。
【0245】
配列又は実験室製造の終了後、ポリマーを約15分冷却させ、ガラスフラスコから分離し、約10分間冷却し、次いで直ちに液体窒素中に入れた。ポリマーを、3mmのスクリーンを通るように極低温で粉砕した。残留又は遊離AAサンプルを、ASTM#F2013−00に従ってヘッドスペースGCによって測定するまで、凍結保存した。
【0246】
粉砕ポリマーを、Tinius Olsenメルトインデックサー(別名、押出式可塑度計)中で295℃で5分間処理することによるアセトアルデヒド発生度(AAGen295/5)、遊離AA(AAFN)、螢光X線による金属、インヘレント粘度、L*、a*及びb*カラーについて分析した。3枚のチップを作り、積み重ね、チップの色について試験した。データを表IVに記載する。比較例A及び実施例Aは、Tiの場合の方が触媒装填量がはるかに少なく且つ温度が15℃低かったとしても、10ppmのTiを用いた270℃におけるポリエステルポリマーの製造に必要な仕上げ機時間又は製造速度は、約250ppmのSbを用いた285℃におけるポリエステルポリマーの製造と同様であり得ることを示している。更に、比較例A及び実施例Aは、触媒失活剤(この場合にはオリゴマー燐酸トリエステル)を遅い段階で添加する場合には、アンチモン触媒に比較したチタン触媒によって実証されるように、固体ポリエステル粒子中により低い残留AAを、また、溶融時により低いAA発生度を示す。結果はまた、同様な仕上げ機段階時間を用いて製造した場合に、触媒失活剤が遅い段階で添加された、Tiで触媒されたポリエステルポリマーは、アンチモンで触媒されたポリマーと同様なチップb*カラーに色調を変えることができることを示している。Tiで触媒されたポリマー(実施例A)のチップL*明度は、Sbで触媒されたポリマー(比較例A)のチップL*明度より数単位だけ暗かった。Sbの場合に添加される赤色トナーの量を、Tiの場合と同様な中性の又はゼロのチップa*を生じるように減少させた場合には、このL*差は若干増加し得るが、Tiの場合に添加される青色トナーの量を、Sbの場合により類似したチップb*を生じるように減少させた場合には、このL*差は若干減少し得る。
【0247】
比較例B
使用する出発オリゴマー混合物は、主にテレフタル酸及びエチレングリコールから製造した。オリゴマーは更に、概ねシス35%/トランス65%の1,4−シクロヘキサンジメタノールを約1.5モル%及びジエチレングリコールを約1.2〜1.3重量%含んでいた。酸基の転化率は、カルボンキシル末端基のプロトンNMR/適当によって、約95%であった。オリゴマー混合物のMnは約766g/モルであり、Mwは約1478g/モルであった。
【0248】
重縮合のために、粉砕オリゴマー(103g)を0.5Lの一口丸底フラスコ中に量り入れた。使用した触媒はチタンテトラブトキシドであり、これをn−ブタノール中溶液としてフラスコに加えた。トナーはフラスコに添加しなかった。316Lステンレス鋼パドル撹拌機及びガラスポリマーヘッドをフラスコに取り付けた。ポリマーヘッドをサイドアーム及びパージホースに取り付けた後、2回の窒素パージを完了させた。重合反応器は、以下の配列(表III)を実施するようにプログラムされたCAMILE(登録商標)自動化システムの制御下で運転した。
【0249】
【表4】

【0250】
Belmont金属の溶融浴を、フラスコを取り囲むように上昇させ、CAMILE(登録商標)配列を実施した。この配列において、「傾斜」は、指定した段階時間の間における、真空、温度又は撹拌速度の直線的変化と定義する。撹拌系は、段階4と5の間で自動的に較正される。このランには燐化合物を添加しなかった。仕上げ段階(13)は、撹拌機のトルクに従って終了させた。目標Ih.V.は0.80dL/gであった。撹拌機のトルク目標値を、各仕上げ機温度及び各重合リグに関して特定した。メルトの分子量及び対応するIh.V.が増加するにつれて、その溶融粘度も増加する(溶融粘度は、回転の向きを変えるのに撹拌機に必要とされるトルクと相関があった)。撹拌機のトルク目標値が3回達成されたときに、各ランが終了した。
【0251】
配列又は実験室製造の終了後、ポリマーを約15分冷却させ、ガラスフラスコから分離し、約10分間冷却し、次いで直ちに液体窒素中に入れた。ポリマーを、3mmのスクリーンを通るように極低温で粉砕した。残留又は遊離AAサンプルを、ASTM#F2013−00に従ってヘッドスペースGCによって測定するまで、凍結保存した。
【0252】
粉砕ポリマーを、Tinius Olsenメルトインデックサー(別名、押出式可塑度計)中で295℃で5分間処理することによるアセトアルデヒド発生度(AAGen295/5)、遊離AA(AAFN)、螢光X線による金属、及びインヘレント粘度について分析した。データを表IVに示す。
【0253】
比較例Bには、燐化合物を遅い段階で添加しなかった。比較例BにおいてXRFによって測定された燐レベルは1.9ppmであった。使用したXRF法による燐の定量の下限は約2ppmである。2ppm未満では、記載された燐の量はノイズである場合がある。燐化合物を添加しなかった場合には、報告された低レベルの燐化合物(約2ppm又はそれ以下)はノイズである可能性がある。燐化化合物を添加していなくて且つ5ppmのレベルが報告される場合には、XRF試験に関するチップ成形時と同様に、事後にいくらかの微量の燐混入があり得た。この微量の混入は、意図して添加された周知の燐化合物ほどの効果はないとい予想される。
【0254】
燐添加化合物を用いない場合には、P:Tiモル比(MR)は、特に5ppmのような低チタンレベルの場合には、誤解を招く場合がある。例えば、比較例Bは約0.3のP:Ti MRを有するように見えるが、報告した燐レベルは検出限界に近いので、実際にはサンプル中に燐が存在しない場合がある。
【0255】
チタン触媒を用い且つ触媒失活剤を遅い段階で添加して製造したポリエステルによって例証される実施例Aは、触媒失活剤を遅い段階で添加せずにチタン触媒を用いて製造したポリエステル(比較例B)に比べて、低い固体ポリエステル中残留AA及び低い溶融時AA発生度を示す。実施例Aに使用したのと同じ仕上げ機真空を比較例Bに用いたならば、比較例Bの残留AAはおそらく高くなったであろう。
【0256】
【表5】

【0257】
実施例B、C及びD
仕上げ機段階の滞留時間が同様な場合の2つの触媒系を更に比較するために、チタンレベルを5ppmに保持しながら、反応温度を289℃に増加させた。表Vの配列を用いた。
【0258】
【表6】

【0259】
反応開始前に、赤色及び青色トナーをPETオリゴマーに、同様なb*カラーを目標とするのに充分なレベルで添加した。これらの条件下において、目標値0.8Ih.V.でトルク終了させたTi触媒ランの仕上げ機時間は約48分であり、従って、段階10の時間量は48分であった。シリンジによって容量で再現性のある方法でポリマーに添加できるであろうオリゴマー燐酸トリエステルの最少量は0.02mLである。これはポリマー中Pの目標値、約20ppmに相当する。ある点までは、同一Tiレベルに対してより少量のPが、即ちより低いP:Tiモル比が同様に有効であり得る。例えば、実施例B及びCにおいては、XRF値を用いたP:Tiモル比は約4であった。P:Ti 1においては、同程度の結果が期待される。しかし、実験室規模でP:Tiモル比1を達成するのに必要な極少量のオリゴマー燐酸トリエステルを添加するのは、これらの実施例の場合のようにTiレベルが5ppmまで低下されている場合には特に、困難であった。
【0260】
以下の表において、Sbランは、比較例Aに示したのと同一である。同様なb*を得ようとする際に直面する困難、試験のばらつき、及び多量の燐を添加した1つのランのために、各チタンランの結果を報告する。表VIは、a*、b*及びL*カラーに関する分析結果を示す。
【0261】
【表7】

【0262】
表VIによれば、低レベルのTi、高い重縮合温度及び遅い段階での触媒失活剤添加は、Sb対照に比べて、残留AA及び溶融時AA発生度が共により低い固体PET粒子を生じることができる。実施例Dは、失活剤が多い方が良いとは限らなかった、即ち、残留AAはより低くできるが、It.V.はより低く且つ295℃で5分間の加工した場合のAA発生度は同程度であったことを示している。
【0263】
実施例E、F及び比較例C、D
これらの実施例を、チタン及びアンチモンを用いて触媒された、充分に配合されたポリエステルポリマー組成物に関して同様なb*カラーを得るのに必要な着色剤の量を求めるために評価した。また、L*カラー、同様なIt.V.レベルに達する反応時間、固体ポリエステル粒子中残留AA、及び溶融時AA発生度に対する着色剤の量の影響を評価した。
【0264】
実施例E及びFにおいては、約2CIELAB単位のディスクb*カラー目標値を狙って、青色及び赤色有機トナーを添加した。Sbで触媒されたポリマーの再加熱速度に一致するように、Tiで触媒されたポリマーの再加熱速度を増加させるために、少量(0.0005g)のFerro製黒色酸化鉄を添加した。
【0265】
実施例E及びFにおいては、低レベル(5ppm)のチタンを用いて比較的低温(270℃)で触媒されるポリエステルポリマーに、燐触媒失活剤を添加した。約0.80IhVに相当するトルクでポリマーランを終了させた時、反応時間は約155分であった。P/Tiモル比は少なくとも1であった。155分の重合時間後、真空を破壊し、燐化合物を添加し、混合を促進するために真空を再開した。
【0266】
これらの実施例において、燐化合物は燐酸又はオリゴマー燐酸トリエステルであった。起こり得るIt.V.低下を回避するために、濃縮型の燐化合物を用いた。濃縮型の燐化合物を用いることよって、ポリマーを加水分解又はグリコール分解し得る溶媒の存在量を減少させた。燐酸は85重量%水溶液として添加した。シリンジによって容量で再現性のある方法でポリマーに添加できる燐酸の最少量は0.02mLであった。これはポリマー中Pの目標値、約80ppmに相当する。オリゴマー燐酸トリエステルは、9重量/重量%の燐として直接添加した。シリンジによって容量で再現性のある方法でポリマーに添加できるオリゴマー燐酸トリエステルの最少量は0.02mLであった。これはポリマー中Pの目標値、約20ppmに相当する。
【0267】
表VIIの配列は、約5ppmのTiを用い、更に、オリゴマー混合物が約1.5DEGを含み且つバッチ間の若干の差異がある転化度が約90〜95%の範囲であった以外は実施例1と同様な記載されたオリゴマー混合物出発原料及び量を用いる、チタン触媒ポリマーを製造するための加工条件を示す。燐化合物は段階12で添加した。1つは燐酸の添加に関し、1つはオリゴマー燐酸トリエステルの添加に関する2つのポリマーランを以下の配列で行った。
【0268】
【表8】

【0269】
アンチモン化合物によって触媒される重合に典型的な条件は、約285℃及びポリマー中Sb約250ppmであった。約0.80IhVに相当するトルクでポリマーランを終了させた時、反応時間は約58分であった。約250ppmのSbで触媒されたランについては、表Iの配列を用いた。比較例C及びDにおいては、約2CIELAB単位のディスクb*カラー目標値を狙って、青色及び赤色有機トナーを添加した。燐化合物は段階12で添加した。1つは燐酸の添加に関し、1つはオリゴマー燐酸トリエステルの添加に関する2つのポリマーランを以下の配列で行った。
【0270】
表VIIIは、オリゴマー燐酸トリエステルで安定化されたチタン触媒ポリマー及びアンチモン触媒ポリマーを比較する分析結果を示す。ある点までは、同一Tiレベルに対してより少量のPが、即ちより低いP:Tiモル比が同様に有効であり得る。例えば、実施例Eにおいては、XRF値を用いたP:Tiモル比は約4.5であった。P:Ti 1においては、同程度の結果が期待される。しかし、実験室規模でP:Tiモル比1を達成するのに必要な極少量のオリゴマー燐酸トリエステルを添加するのは、これらの実施例の場合のようにTiレベルが5ppmまで低下されている場合には特に、困難であった。約2CIELAB単位のディスクb*カラー目標値を狙って、青色及び赤色有機トナーを添加した。Tiで触媒されるポリマーの再加熱速度はSbで触媒されるポリマーの再加熱速度に試験誤差範囲内で一致したので、黒色酸化鉄は添加しなかった。
【0271】
【表9】

【0272】
実施例E(Ti 5ppm,270℃,15ppmのPをオリゴマー燐酸トリエステルから遅い段階で添加)の場合の溶融時AA発生AA量は、極めて低く(約5ppm)、比較例Cの場合の発生量(約22ppm)よりも確かにはるか少なかった。実施例A及びEの両例において重縮合温度が270℃であっとしても、実施例Eの場合のAA発生量は実施例Aの場合よりも低かった。実施例Eは、実施例A中に存在するTiの約1/2を含む。実施例Eでは実施例Aよりチタンレベルがより低く且つ燐レベルが若干高いので、P:Tiモル比が、実施例Eでは実施例Aよりも高かった。
【0273】
実施例Eは比較例Cよりも若干暗色である(3ディスクL*としても知られるチップL*)と同時に、実施例Eはまた、2のチップb*目標値よりも青色であった(比較例Cはこの目標値に近かった)ので、比較例Cに一致させるのに必要な青色トナーはより少なかったであろう。従って、実施例Eはより明度が高かったであろう。他方、比較例Cは実施例Eよりも赤色であったので、実施例Eのような中性のチップa*を得るのに必要な赤色トナーはより少なかったであろう。従って、比較例Cはもっと明度が高かったであろう。
【0274】
表IXは、燐酸で安定化されたチタン触媒ポリマー及びアンチモン触媒ポリマーを比較する分析結果を示す。ある点までは、同一Tiレベルに対してより少量のPが、即ちより低いP:Tiモル比が同様に有効であり得る。例えば、実施例Fにおいては、XRF値を用いたP:Tiモル比は約25であった。P:Ti 1においては、同程度の結果が期待される。しかし、実験室規模でP:Tiモル比1を達成するのに必要な極少量の燐酸を添加するのは、これらの実施例の場合のように、燐酸がオリゴマー燐酸トリエステルよりも燐が濃縮されている場合及びTiレベルが5ppmまで低下されている場合には特に、困難であった。
【0275】
【表10】

【0276】
実施例Fは比較例Dよりも明度が高く(チップ又は3ディスクL*がより高く)且つより青色であった(チップ又はディスクb*がより低かった)。実施例Fの場合のAA発生量は、実施例Eの場合のAA発生量よりも高かった。これは、燐供給源及び/又は実施例Fにおけるはるかに高いP:Tiモル比による可能性があった。
【0277】
比較例Dの場合のAA発生量は、比較例A及びCの場合のAA発生量よりも低かった。これは、異なる燐供給源及び比較例Dにおけるより高い燐レベルによる可能性があった。
【0278】
実施例G、H、I、J及び比較例E、F、G
触媒失活剤は、固体ポリエステル粒子の製造後に、例えば押出時に添加できる。ガラスフラスコ中において、予め製造されたポリマー及び触媒失活剤を溶融ブレンドすると、ポリマー内に触媒失活剤のかなり均一な分布が達成される。これは、配合押出(compounding extrusion)時又は一般には押出時に起こるのとやや似ている。これらの例は、表Xに概説された溶融ブレンド操作を用い、約2.6モル%のイソフタル酸及び約4.2モル%のジエチレングリコールで改質されたPET100gを使用した。このPETは、約10ppmのTi及び0ppmのP(添加せず)を用いて生産規模で製造した。パドル撹拌機によるグラスフラスコ内の混合を促進するために、ペレットは、2mmのスクリーンを通るように極低温で粉砕した。得られた粉砕材料又は粉末は、真空オーブン中で120℃において完全真空(25〜30in.Hg)下で一晩(約16時間)乾燥させる。デシケーター中でフラスコを約室温まで冷却した後(約1.5時間)、触媒失活剤をフラスコ中に量り入れる。
【0279】
撹拌機をついたポリマーヘッドを取り付け、フラスコを窒素で2回パージした。表Xに示した以下の配列のために、CAMILE(登録商標)自動化システムをプログラムする。
【0280】
【表11】

【0281】
中程度の窒素パージを常に用いた。段階2及び3の間において、撹拌機を手でゆっくりと回転させた。配列の終了後、ポリマーをガラスフラスコから分離し、冷却し、細断し、3mmのスクリーンを通るように極低温で粉砕する。粉砕ポリマーをアセトアルデヒド発生度、インヘレント粘度、L*、a*及びb*カラーについて分析する。
【0282】
ある点までは、同一Tiレベルに対してより少量のPが、即ち、より低いP:Tiモル比が同様に有効であり得る。例えば、実施例G、H、I及びJにおいては、XRF値を用いたP:Tiモル比は約8〜9であった。P:Ti 1においては、同程度の結果が期待される。しかし、実験室規模でP:Tiモル比1を達成するのに必要な極少量の燐化合物を添加するのは、この実施例の場合のように濃縮された燐供給源を使用する場合には特に、困難であった。
【0283】
【表12】

【0284】
ポリマー中に約10ppmのTiを用い且つ触媒失活剤によって約50〜70ppmのPを添加した場合(P:Tiモル比8〜9)、表XIの結果は、Tinius Olsen押出式可塑度計中で295℃で5分間に発生したAAの量が、触媒失活剤を添加剤しなかった場合に比較して、50%減少することを示している。また、触媒失活剤の添加時にはポリエステルの色が、特により少ない黄色及びより低いb*という点で、改善されている。表XIでは、燐酸(H3PO4)、ポリ燐酸(PPA)及び亜燐酸(H3PO3)を含む種々の触媒失活剤を用いた。
【0285】
予め単離されたポリマー中に触媒失活剤を溶融ブレンドすることが、AA発生を減少させる有効な手段であった。固体ポリエステル粒子を溶融相のみの製造プロセスから得た後に、触媒失活剤の一部又は全てを添加することができる。任意的に、固体ポリエステル粒子を従来の製造プロセス(固相化を含む)から得た後に、触媒失活剤の一部又は全てを添加することができる。固体ポリエステル粒子の製造プロセスの後における触媒失活剤の添加に関する選択肢には、その後の押出若しくは溶融加工前に粒子のバルクとブレンドできるコンセントレート粒子(concentrate particle)を製造するための配合押出、及び/又は繊維、シート、フィルム、フィルム、トレイ、チューブ若しくはボトルプレフォーム(射出成形プロセスにおいて押出機を用いて製造されたもの)を含む製品の製造の一部である溶融加工装置若しくは押出機への触媒失活剤の添加などがある。触媒失活剤は、ニートで又は液体担体に入れて、押出機に添加できる。
【0286】
実施例K及び比較例H
これらの例は、実施例G、H、I及びJ並びに比較例E、F及びG中に記載したのと同じ出発ポリマー及び手法を用いる。使用した溶融ブレンド配列は、表Xに示したものである。配列又は実験室製造の終了後に、ポリマーを約15分間冷却し、ガラスフラスコから分離し、約10分間冷却し、次いで直ちに液体窒素中に入れた。ポリマーを、3mmのスクリーンを通るように、極低温で粉砕した。残留又は遊離AAサンプルを、ASTM#F2013−00に従ってヘッドスペースGCによって測定するまで、凍結保存した。
【0287】
同一Tiレベルに対してより少量のP、即ち、より低いP:Tiモル比がある時点までは同程度に有効であることができる。例えば、実施例Kにおいては、XRF値を用いたP:Tiモル比は10であった。P:Ti 1においては、同程度の結果が期待される。しかし、実験室規模でP:Tiモル比1を達成するのに必要な極少量の亜燐酸を添加するのは、これらの実施例の場合のように濃縮された燐供給源を使用する場合には特に、困難であった。
【0288】
【表13】

【0289】
表XIIによれば、予め単離された、燐化合物を添加せずに製造されたTi触媒PET中に触媒失活剤を溶融ブレンドすると、実施例G、H、I及びJに関して見られるのと同様に、固体ポリエステル粒子中の残留又は遊離AAが大幅に低下し、AA発生度が低下した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)チタン種を含む重縮合触媒組成物の存在下で溶融ポリエステルポリマー組成物を重縮合させ;
b)触媒失活剤化合物を前記溶融ポリエステルポリマー組成物に添加し;
c)約0.69dL/g又はそれ以上のIt.V.に達した後に、前記溶融ポリエステルポリマー組成物を凝固させて、添加アセトアルデヒド捕捉剤を含まない固体ポリエステルポリマー粒子を形成し;そして
d)固体状態で固体粒子のIt.V.を約0.03dL/gより多く増加させることなく、固体状態で固体粒子中の残留アセトアルデヒドの量を約10ppm又はそれ以下のレベルまで減少させる
ことを含んでなる固体ポリエステルポリマー粒子の製造方法であって、前記触媒失活剤化合物を工程b)において以下の箇所:
(i)前記溶融ポリエステルポリマーを重縮合させるための最終反応器内、若しくは前記最終反応器と、前記溶融ポリエステルポリマー組成物を切断して前記固体粒子にするためのカッターの前との間;又は
(ii)前記溶融ポリエステルポリマー組成物のIt.V.が少なくとも0.5dL/gまで上昇した後;又は
(iii)前記溶融ポリエステルポリマーメルトに適用された真空があれば、その少なくとも一部分が開放された箇所;又は
(iv)重縮合時間の少なくとも75%の後;又は
(v)凝固時に得られるIt.V.の+/−0.10dL/g以内;又は
(vi)メルトの凝固前30分以内
の1つ又はそれ以上で前記溶融ポリエステルポリマー組成物に添加する方法。
【請求項2】
前記溶融ポリエステルポリマー組成物が、
(a)前記溶融ポリエステルポリマー組成物中のジカルボン酸成分残基100モル%に基づき、少なくとも約60モル%のテレフタル酸又はテレフタル酸ジエステル誘導体の残基を含むジカルボン酸成分、及び
(b)前記溶融ポリエステルポリマー組成物中のジオール成分残基100モル%に基づき、少なくとも約60モル%のエチレングリコールの残基を含むジオール成分
を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶融ポリエステルポリマー組成物が、
(a)前記溶融ポリエステルポリマー組成物中のカルボン酸成分残基100モル%に基づき、少なくとも80モル%のテレフタル酸又はテレフタル酸のジエステル誘導体の残基を含むカルボン酸成分、及び
(b)前記溶融ポリエステルポリマー組成物中のヒドロキシル成分残基100モル%に基づき、少なくとも80モル%のエチレングリコールの残基を含むヒドロキシル成分
を含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記溶融ポリエステルポリマー組成物が、
(a)前記溶融ポリエステルポリマー組成物中のカルボン酸成分残基100モル%に基づき、少なくとも92モル%のテレフタル酸又はテレフタル酸のジエステル誘導体の残基を含むジカルボン酸成分、及び
(b)前記溶融ポリエステルポリマー組成物中のヒドロキシル成分残基100モル%に基づき、少なくとも92モル%のエチレングリコールの残基を含むジオール成分
を含む請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記溶融ポリエステルポリマー組成物中のチタンの量が、前記溶融ポリエステルポリマー組成物の重量に基づき、約3〜約35pmの量である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリエステルポリマー粒子中のチタンの量が、前記溶融ポリエステルポリマー組成物の重量に基づき、4〜20pmの量である請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリエステルポリマー粒子中のチタンの量が、前記溶融ポリエステルポリマー組成物の重量に基づき、5〜15pmの量である請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記チタン触媒がチタンアルコキシドを含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記重縮合を、少なくとも0.72dL/gのIt.V.まで続ける請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記重縮合を、少なくとも0.76dL/gのIt.V.まで続ける請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記重縮合を、少なくとも0.80dL/gのIt.V.まで続ける請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記触媒失活剤が燐化合物を含む請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記触媒失活剤が燐酸、亜燐酸、ピロ燐酸、ポリ燐酸、カルボキシホスホン酸、ホスホン酸誘導体又はそれらの塩及びエステル及び誘導体のそれぞれを含む請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記触媒失活剤が燐酸;ピロ燐酸;ポリ燐酸;又は燐酸とエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール若しくは2−エチル−1−ヘキサノールとのモノエステル若しくはジエステル;ピロ燐酸とエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール若しくは2−エチルヘキサノールとの酸性燐酸エステル;ポリ燐酸とエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール若しくは2−エチルヘキサノールとの酸性燐酸エステル;又はそれぞれの混合物を含む請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記触媒失活剤が燐酸を含む請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記触媒失活剤が少なくとも約0.15:1のP:Tiモル比で存在する燐化合物を含む請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記触媒失活剤が少なくとも0.7:1のP:Tiモル比で存在する燐化合物を含む請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記触媒失活剤が少なくとも1:1のP:Tiモル比で存在する燐化合物を含む請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記燐化合物を、最終反応器の近傍若しくは終端又は最終反応器の後であって且つ前記溶融ポリエステルポリマーを切断して粒子にするためのカッターの前の箇所において添加する請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記燐化合物を前記溶融ポリエステルポリマーに、前記ポリエステルメルトが少なくとも約0.74dL/gのIt.V.を得た後に添加する請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記燐化合物を、最終反応器の圧力を約600mmHg又はそれ以上のレベルに至らせた後であって且つ前記ポリエステルメルトを凝固させる前に、前記溶融ポリエステルポリマーに添加する請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記燐化合物を、重縮合時間の少なくとも約95%の後に、前記溶融ポリエステルポリマーに添加する請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記燐化合物を、前記ポリエステルメルトのIt.V.が凝固時のポリマーIt.V.の約0.05dL/g以内である場合に、前記溶融ポリエステルポリマーに添加する請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記燐化合物を、前記ポリエステルメルトの凝固の約10分又はそれ以下の範囲内において、前記溶融ポリエステルポリマーに添加する請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記燐化合物を、パイプ入口を通して、前記溶融ポリエステルポリマーを重縮合させるための最終反応器に添加し、前記燐化合物が前記最終反応器から出る溶融ポリエステルポリマーの一部に含まれ且つ前記最終反応器に再循環される請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記AA捕捉剤が1種又はそれ以上のポリアミドホモポリマー又はコポリマーである請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記固体ポリエステルポリマー粒子を容器中に投入して前記容器内に粒子床を形成し、そして前記床を、0.15SCFM/ポンド(粒子)/時を超えないガス流速で導入されるガス流と接触させ、低減された残留アセトアルデヒド量を有する前記容器から完成粒子を取り出すことによって、前記固体ポリエステルポリマー粒子の残留アセトアルデヒドを低減させる請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記固体ポリエステルポリマー粒子を、少なくとも約140℃から約170℃までの温度範囲で、前記容器中に投入する請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ガスを、約70℃未満の温度で、前記容器に導入する請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記ガスが空気である請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記ガスが窒素である請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記固体ポリエステルポリマー粒子中の残留アセトアルデヒドレベルを固体状態で約5ppm又はそれ以下に低下させる請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記固体ポリエステルポリマー粒子中の残留アセトアルデヒドレベルを固体状態で2ppm又はそれ以下に低下させる請求項27に記載の方法。
【請求項34】
前記固体粒子が約12ppm又はそれ以下のアセトアルデヒド発生度を有する請求項1に記載の方法。
【請求項35】
前記固体粒子が10ppm又はそれ以下のアセトアルデヒド発生度を有する請求項1に記載の方法。
【請求項36】
前記固体粒子が6ppm又はそれ以下のアセトアルデヒド発生度を有する請求項1に記載の方法。
【請求項37】
前記溶融ポリエステルポリマーに有機着色剤を添加して、少なくとも約65のL*カラー及び約−5〜約+5のb*カラーを有する結晶化固体ポリエステルポリマー粒子を生成する請求項1に記載の方法。
【請求項38】
前記溶融ポリエステルポリマーに有機着色剤を添加して固体ポリエステルポリマー粒子を生成し、それを少なくとも70のL*カラー及び3以下のb*カラーを有するプレフォームに成形する請求項1に記載の方法。
【請求項39】
前記溶融ポリエステルポリマーに有機着色剤を添加して固体ポリエステルポリマー粒子を生成し、それを少なくとも70のL*カラー及び0.8〜2.5のb*カラーを有するプレフォームに成形する請求項1に記載の方法。
【請求項40】
a.(1)i.溶融相重合によって得られた少なくとも約0.72dL/gのIt.V.を有し、
ii.チタン種を含む重縮合触媒組成物の残基を含み、
iii.燐化合物を0:1〜約2.5:1のP:Tiモル比で含む触媒失活剤を含み、
iv.アセトアルデヒド捕捉剤を含まず、
v.約10ppm若しくはそれ以下の残留アセトアルデヒドレベルを有し、且つ
iv.約20ppm未満のアセトアルデヒド発生度を有する
溶融相プロセスのみで製造された固体ポリエステルポリマー粒子;
(2)物品のP:Tiモル比が2.5:1未満となるような量で燐化合物を含む追加の触媒失活剤
を溶融加工ゾーンに投入し;
b.前記ポリエステルポリマー粒子を溶融させて、溶融ポリエステルポリマー組成物を形成し;そして
c.前記溶融ポリマー組成物から、シート、ストランド、繊維又は成形品を含む物品を形成する
ことを含んでなる物品の製造方法。
【請求項41】
前記固体ポリエステルポリマー粒子が、
(a)前記固体ポリエステルポリマー粒子中のカルボン酸成分残基100モル%に基づき、少なくとも約80モル%のテレフタル酸又はテレフタル酸のジエステル誘導体の残基を含むカルボン酸成分、及び
(b)前記固体ポリエステルポリマー粒子中のヒドロキシル成分残基100モル%に基づき、少なくとも約80モル%のエチレングリコールの残基を含むヒドロキシル成分
を含む請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記固体ポリエステルポリマー粒子が、
(a)前記固体ポリエステルポリマー粒子中のカルボン酸成分残基100モル%に基づき、少なくとも92モル%のテレフタル酸又はテレフタル酸のジエステル誘導体の残基を含むジカルボン酸成分、及び
(b)前記固体ポリエステルポリマー粒子中のヒドロキシル成分残基100モル%に基づき、少なくとも92モル%のエチレングリコールの残基を含むジオール成分
を含む請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記固体ポリエステルポリマー粒子中のチタンの量が、前記溶融ポリエステルポリマーの重量に基づき、約3ppm〜約35ppmの量である請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記固体ポリエステルポリマー粒子中のチタンの量が、前記固体ポリエステルポリマーの重量に基づき、4ppm〜20ppmの量である請求項40に記載の方法。
【請求項45】
前記固体ポリエステルポリマー粒子中のチタンの量が、前記溶融ポリエステルポリマーの重量に基づき、5ppm〜15ppmの量である請求項40に記載の方法。
【請求項46】
前記固体ポリエステルポリマー粒子が少なくとも約0.70dL/gのIt.V.を有する請求項40に記載の方法。
【請求項47】
前記固体ポリエステルポリマー粒子が少なくとも0.72dL/gのIt.V.を有する請求項40に記載の方法。
【請求項48】
前記固体ポリエステルポリマー粒子が少なくとも0.76dL/gのIt.V.を有する請求項40に記載の方法。
【請求項49】
前記固体ポリエステルポリマー粒子が少なくとも0.80dL/gのIt.V.を有する請求項40に記載の方法。
【請求項50】
前記ポリエステルポリマー粒子が少なくとも約0.15:1の燐原子対チタン原子のモル比を有する請求項40に記載の方法。
【請求項51】
前記触媒失活剤が少なくとも0.7:1のP:Tiモル比で存在する燐化合物を含む請求項40に記載の方法。
【請求項52】
前記触媒失活剤が少なくとも1:1のP:Tiモル比で存在する燐化合物を含む請求項40に記載の方法。
【請求項53】
前記ポリエステルポリマー粒子が1:1〜2.5:1の燐原子対チタン原子のモル比を有する請求項40に記載の方法。
【請求項54】
前記AA捕捉剤が1種又はそれ以上のポリアミドホモポリマー又はコポリマーである請求項40に記載の方法。
【請求項55】
前記固体粒子が8ppm又はそれ以下のアセトアルデヒド発生度を有する請求項40に記載の方法。
【請求項56】
前記物品がボトルプレフォームである請求項40に記載の方法。
【請求項57】
前記ボトルプレフォームが約6ppm又はそれ以下の残留アセトアルデヒド含量を有する請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記ボトルプレフォームが3ppm又はそれ以下の残留アセトアルデヒド含量を有する請求項56に記載の方法。
【請求項59】
前記ボトルプレフォームが更に再加熱添加剤を含む請求項56に記載の方法。
【請求項60】
前記ボトルプレフォームが更に、約70又はそれ以上のプレフォームL*値及び約−0.8〜約+2.5のb*値を保持しながら、少なくとも約5℃の再加熱改善温度(RIT)を有する請求項59に記載の方法。
【請求項61】
工程a)が、1種又はそれ以上のポリカーボネート若しくはポリアミド又はそれらの混合物を、前記溶融ポリエステル組成物の総重量に基づき、約50重量%以下の量で前記溶融加工ゾーンに投入することを更に含む請求項40に記載の方法。
【請求項62】
工程a)が、PCRを、前記溶融ポリエステル組成物の総重量に基づき、約50重量%以下の量で前記溶融加工ゾーンに投入することを更に含む請求項40に記載の方法。

【公表番号】特表2010−528150(P2010−528150A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509340(P2010−509340)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/006163
【国際公開番号】WO2008/150350
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【Fターム(参考)】