説明

アゼチジン誘導体の注射可能又は経口送達可能な製剤

本発明は、アゼチジン誘導体の注射可能又は経口送達可能な二元系又は三元系の製剤に関する。本発明の医薬組成物において使用するアゼチジン誘導体は一般式(Ia)又は(Ib)


[式中、Arは芳香族又は複素芳香族の基であり、場合により1つ以上の(C−C)アルキル、ハロゲン、NO、CN、(C−C)アルコキシ又はOH基で置換されている]により表すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は注射又は経口投与することができるアゼチジン誘導体の製剤に関する。
【0002】
本発明の医薬組成物において使用するアゼチジン誘導体は下記一般式(Ia)又は(Ib):
【0003】
【化2】

[式中、Arは芳香族又は複素芳香族の基であり、場合により1つ以上の(C−C)アルキル、ハロゲン、NO、CN、(C−C)アルコキシ又はOH基で置換されている]により表すことができる。
【0004】
上記アゼチジン誘導体の定義において、「芳香族基」という用語は特にフェニル又はナフチル基を意味し、「複素芳香族基」という用語は特にピリジル、フリル、チエニル、チアゾリル、イミダゾリル又はオキサゾリル基を意味し、及び「ハロゲン」という用語は特にフッ素、塩素、臭素又はヨウ素を意味するものとする。
【0005】
生成物N−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]−アゼチジン−3−イル}−N−(3,5−ジフルオロフェニル)メチルスルホンアミドは式(Ia)の特定の生成物であり、下記の特定の式(Ic):
【0006】
【化3】

に相当する。
【0007】
一般式(Ia)又は(Ib)のアゼチジン誘導体及びこの用途は特許出願WO00/15609、WO01/64632、WO01/64633及びWO01/64634に開示されている。特に、これらのアゼチジン誘導体はカンナビノイド受容体及び特にCB1型の受容体に対するこの高い親和性のために特に好都合である。
【0008】
残念なことにアゼチジン誘導体は水に対して極めて低い溶解性を有する生成物である。
【0009】
現在まで、一般式(Ia)又は(Ib)のアゼチジン誘導体の特に経口による投与はとりわけセルロース、乳糖及び他の賦形剤を含む製剤における錠剤の形態を想定していた。しかしながら、このような製剤は水に対する低い溶解性を有するこれらの生成物にとっては、過剰に低い生体利用能のために、十分適するものではない。
【0010】
多くの文献が疎水性の有効成分を溶解すること及び/又はこの生体利用能を改善することができる系を記載している。しかしながら、試験された系は現在まで、安定であり生体利用能であり、及び含まれるアゼチジン誘導体が有効な濃度において溶解するような上記したアゼチジン誘導体を含む医薬組成物の調製においては、有効ではないことがわかっている。
【0011】
特にJ.Pharm.Science,89(8),967(2000)及びPharmaceutical Technology Europe,p.20,September,2000はあまり水に溶けない有効成分の中鎖トリグリセリド中の製剤に言及している。しかしながら、Miglyol(登録商標)系の製剤を用いて実施した試験はこの生体利用能の観点から満足できない結果を示している。
【0012】
更にまた、国際特許出願WO95/24893は疎水性の有効成分の製剤及びこの生体利用能の改善を意図する消化性油脂、親油性界面活性剤及び親水性界面活性剤を含む組成物を開示している。残念なことに、上記アゼチジン誘導体はこの型の製剤中では過剰に低値の生体利用能を有することがわかっている。特に、Miglyol(登録商標)/Capryol(登録商標)/Cremophor(登録商標)系におけるこのようなアゼチジン誘導体の製剤もまた薬物動態の観点からインビボでは満足できないことがわかっている。
【0013】
生成物は極めて低い溶解性を有しているため、iv製剤又は経口液体剤型の製剤を想定することも極めて困難である。
【0014】
今回、iv剤型で、又は、経口で、特に内服により投与することができる液体剤型における生成物の送達を可能にする、一般式(Ia)、(Ib)及び特に(Ic)の誘導体を含む化学的及び物理的に安定な医薬組成物を調製できることが発見され、及びこれは本発明の要件を構成するものである。
【発明の開示】
【0015】
本発明はヒトに注射又は経口投与することができる二元系又は三元系の何れかを含む製剤に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は式(Ia)又は(Ib)の有効成分、及び賦形剤、ポリソルベート80(POE(ポリオキシエチレン)モノオレエート)又はソルトールHS15(PEG(ポリエチレングリコール)ヒドロキシステアレート)を含む二元系に関する。
【0017】
より詳しくは、本発明は有効成分N−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]−アゼチジン−3−イル}−N−(3,5−ジフルオロフェニル)メチルスルホンアミド、及び、賦形剤、ポリソルベート80(POEモノオレエート)又はソルトールHS15(PEGヒドロキシステアレート)を含む二元系に関する。
【0018】
本発明は又、式(Ia)又は(Ib)の有効成分、界面活性剤、ポリソルベート80(POEモノオレエート)又はソルトールHS15(PEGヒドロキシステアレート)、及び、共溶媒、エタノール、PEG400又はプロピレングリコールを含む三元系に関する。
【0019】
より詳しくは、本発明は有効成分N−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]−アゼチジン−3−イル}−N−(3,5−ジフルオロフェニル)メチルスルホンアミド、界面活性剤、ポリソルベート80(POEモノオレエート)又はソルトールHS15(PEGヒドロキシステアレート)、及び、共溶媒、エタノール、PEG400又はプロピレングリコールを含む三元系に関する。
【0020】
これらの製剤の物理化学的特性は、N−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]−アゼチジン−3−イル}−N−(3,5−ジフルオロフェニル)メチルスルホンアミドの水中の溶解度が0.2μg/ml未満であるにも関わらず、これらがN−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]−アゼチジン−3−イル}−N−(3,5−ジフルオロフェニル)メチルスルホンアミドを水性媒体中に3mg/mlまで溶解する能力があることを示している。
【0021】
本発明によれば、一般式(Ia)又は(Ib)の有効成分は全組成物の0.01から60重量%に相当する。好ましくは、これは全組成物の0.1から20重量%、より好ましくは0.1から5重量%に相当する。擬似生理学的媒体中に有効成分が完全に溶解して可溶化されるiv経路用の製剤のためには、該有効成分は最大で全組成物の5%に相当する。経口投与できる組成物のためには、有効成分は分散した状態で存在することができ、及び、全組成物の60重量%までに相当する。
【0022】
本発明によれば、該共溶媒は医薬組成物の総重量に対して1から70%に相当する。好ましくは、これは全組成物の10から50重量%、より好ましくは20から40重量%に相当する。
【0023】
用量は治療すべき状態の程度又は性質により変動すると考えられる。即ち、本発明の組成物中の有効成分の量は適した用量が処方できるように決定されることになる。この理由のために、一般式(Ia)又は(Ib)のアゼチジン誘導体の量は混合物中のこの溶解性に応じて、及び、患者の治療のために適切な用量にも応じて変動する。
【0024】
ヒトにおいては、経口投与される一日当たり用量は一般的に一般式(Ia)又は(Ib)のアゼチジン誘導体0.1から100mgである。
【0025】
最も適切な用量を選択するためには、患者の体重、全般的健康状態、年齢及び治療の有効性に影響すると考えられる全ての要因を考慮しなければならない。好ましくは、組成物は単位用量が有効成分0.1から100mgを含むように調製する。
【0026】
本発明によれば、式(Ia)又は(Ib)の有効成分は界面活性剤中、又は、界面活性剤/共溶媒混合物中に分散する。ソルトールHS15(常温で固体)の場合は、賦形剤は予め40から50℃で溶融させ、及びその後共溶媒と、又は、直接有効成分と混合する。合わせた混合物は完全に均質になるまで機械的に攪拌し続ける。有効成分/賦形剤の初期比に応じて種々の用量を調製できる。注射用途の場合は、有効成分の用量は賦形剤中、又は、賦形剤/共溶媒混合物中の有効成分の溶解度の数値を超えることができない。
【0027】
以下の実施例は、限定を意図しておらず、本発明による組成物を例示している。
【実施例1】
【0028】
ソルトールHS15を用いた二元系:有効成分(20mg/g賦形剤)をソルトールHS15中に分散させ、次に完全に溶解するまで機械的に攪拌する。ソルトールHS15(室温で固体)は予め40から50℃で溶融させておいた。最終的な製剤(濃縮物)は室温で固体であり、等張性の媒体での希釈およびiv経路での投与前に溶融させなければならない。固体製剤(濃縮物)は5℃で少なくとも6ヶ月化学的に安定である。希釈した製剤(使用可)は等張性媒体(5%グルコース)で希釈後少なくとも6時間は化学的及び物理的に安定である。
【実施例2】
【0029】
ポリソルベート80を用いた二元系:有効成分(10mg/g賦形剤)をポリソルベート80中に分散させ、次に完全に溶解するまで機械的に攪拌する。ポリソルベートはこの粘度を低下させるために予め40℃に加熱しておいた。最終的な製剤(濃縮物)は室温で液体であるが、粘稠である。希釈した製剤(使用可)は等張性媒体(5%グルコース)で希釈後少なくとも6時間は物理的に安定である。
【実施例3】
【0030】
ソルトールHS15/20%エタノールを用いた三元系:有効成分(10mg/g賦形剤)をソルトールHS15/エタノール80:20(w/w)混合物中に分散させ、次に完全に溶解するまで機械的に攪拌する。ソルトールHS15(室温で固体)は予め40から50℃で溶融させておいた。最終的な製剤(濃縮物)は室温で液体であり、5℃で少なくとも8ヶ月で化学的に安定である。希釈した製剤(使用可)は等張性媒体(5%グルコース)で希釈後少なくとも24時間は化学的及び物理的に安定である。
【実施例4】
【0031】
ソルトールHS15/30%プロピレングリコールを用いた三元系:有効成分(10mg/g賦形剤)をソルトールHS15/プロピレングリコール70:30(w/w)混合物中に分散させ、次に完全に溶解するまで機械的に攪拌する。ソルトールHS15(室温で固体)は予め40から50℃で溶融させておいた。最終的な製剤(濃縮物)は室温で液体であり、5℃で少なくとも8ヶ月化学的に安定である。希釈した製剤(使用可)は等張性媒体(5%グルコース)で希釈後少なくとも24時間は化学的及び物理的に安定である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(Ia)又は(Ib):
【化1】

[式中、Arは芳香族又は複素芳香族の基であり、場合により1つ以上の(C−C)アルキル、ハロゲン、NO、CN、(C−C)アルコキシ又はOH基で置換されている]の有効成分、及び、賦形剤、ポリソルベート80(POEモノオレエート)又はソルトールHS15(PEGヒドロキシステアレート)及び場合により共溶媒、エタノール、PEG400又はプロピレングリコールを含む系を含むことを特徴とする、注射又は経口投与することができる医薬組成物。
【請求項2】
有効成分N−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]−アゼチジン−3−イル}−N−(3,5−ジフルオロフェニル)メチルスルホンアミド、及び、賦形剤としてポリソルベート80(POEモノオレエート)又はソルトールHS15(PEGヒドロキシステアレート)を含む二元系を含むことを特徴とする、注射又は経口投与することができる医薬組成物。
【請求項3】
有効成分N−{1−[ビス(4−クロロフェニル)メチル]−アゼチジン−3−イル}−N−(3,5−ジフルオロフェニル)メチルスルホンアミド、界面活性剤、ポリソルベート80(POEモノオレエート)又はソルトールHS15(PEGヒドロキシステアレート)、及び、共溶媒、エタノール、PEG400又はプロピレングリコールを含む三元系を含むことを特徴とする、注射又は経口投与することができる医薬組成物。
【請求項4】
有効成分が医薬組成物の総重量に対して0.01から60%の比率で存在することを特徴とする、請求項1、2又は3に記載の注射又は経口投与することができる医薬組成物。
【請求項5】
有効成分が医薬組成物の総重量に対して0.1から5%の比率で存在することを特徴とする、請求項4に記載の注射又は経口投与することができる医薬組成物。
【請求項6】
共溶媒が医薬組成物の総重量に対して1から70%の比率で存在することを特徴とする、請求項1、3、4又は5に記載の注射又は経口投与することができる医薬組成物。
【請求項7】
共溶媒が医薬組成物の総重量に対して20から40%の比率で存在することを特徴とする、請求項6に記載の注射又は経口投与することができる医薬組成物。

【公表番号】特表2008−525390(P2008−525390A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547578(P2007−547578)
【出願日】平成17年12月23日(2005.12.23)
【国際出願番号】PCT/FR2005/003263
【国際公開番号】WO2006/070129
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(500152119)アバンテイス・フアルマ・エス・アー (65)
【Fターム(参考)】