説明

アダマンタン化合物及びその製造方法

【課題】耐熱性、基板への接着性、硬化したときの曲げ特性に優れる樹脂組成物を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表わされるアダマンタン化合物。式中、Cyは脂環構造であり、Rはそれぞれ水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基であり、nはそれぞれ1〜10の整数である。nがそれぞれ2以上の場合、Rは同一でも異なっていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アダマンタン化合物及びその製造方法、アダマンタン化合物を含有する樹脂組成物、その樹脂組成物を硬化してなる硬化物、及びそのアダマンタン化合物又は樹脂組成物を用いたプリント回路基板形成用レジスト材料又はソルダーレジスト材料に関する。
【背景技術】
【0002】
アダマンタンは、シクロヘキサン環が4個、カゴ形に縮合した構造を有し、対称性が高く、安定な化合物であり、その誘導体は、特異な機能を示すことから、医薬品原料や高機能性工業材料の原料等として有用である。
具体的には、光ディスク基板、光ファイバーあるいはレンズ等に用いる試みがなされている(例えば、特許文献1及び2)。また、アダマンタンエステル類を、フォトレジスト用樹脂原料として、使用する試みがなされている(例えば、特許文献3)。
【0003】
ところで、近年、電子・光学材料分野においては、光学・電子部品の高性能化・改良検討が進められている。従来、光学部材用の樹脂には透明性や耐光性に優れるアクリル系樹脂が一般に多用されていた。一方、光・電子機器分野に利用される光学部材用の樹脂には、エポキシ系樹脂が多用されていた。
【0004】
例えば、アクリル系樹脂の耐熱性の向上として、脂環式アクリレートを含むアクリレート共重合体に関する技術開発が行われている(例えば、特許文献4)。また、光学接着剤等を用途とする、エステル部に炭素数5〜22の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルとアルキレンオキサイドを有する多官能(メタ)アクリレートによる組成物が開示されている(例えば、特許文献5)。
【0005】
このように、近年の光学・電子部品の高性能化に対応するために、さらなる材料開発が必要であり、アダマンタンの利用が期待されている。例えば、特許文献6は、グリシジルオキシ基含有アダマンタン化合物やアダマンチル基含有エポキシ変性アクリレートを開示している。
しかし、耐熱性、密着性、曲げ特性等の性能には未だ改良の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−305044号公報
【特許文献2】特開平9−302077号公報
【特許文献3】特開平4−39665号公報
【特許文献4】特開2006−193660号公報
【特許文献5】特開平11−61081号公報
【特許文献6】特開2008−133246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、耐熱性、基板への接着性、硬化したときの曲げ特性に優れる樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、以下のアダマンタン化合物等が提供される。
1.下記式(1)で表わされるアダマンタン化合物。
【化1】

(式中、Cyは脂環構造であり、Rはそれぞれ水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基であり、nはそれぞれ1〜10の整数である。nがそれぞれ2以上の場合、Rは同一でも異なっていてもよい。)
2.下記式(2)又は(3)で表わされる1に記載のアダマンタン化合物。
【化2】

(式中、Rはそれぞれ水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基であり、nはそれぞれ1〜10の整数である。nがそれぞれ2以上の場合、Rは同一でも異なっていてもよい。)
3.下記式(10)で表されるアダマンタン化合物とジカルボン酸を反応させる、1又は2に記載のアダマンタン化合物の製造方法。
【化3】

(式中、Xはそれぞれ以下の一般式(11)で表される基である。)
【化4】

(式中、Rはそれぞれ水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基であり、nは1〜10の整数である。nが2以上の場合、Rは同一でも異なっていてもよい。)
4.1又は2に記載のアダマンタン化合物を含有する樹脂組成物。
5.4に記載の樹脂組成物を加熱又は光照射により硬化させてなる硬化物。
6.1又は2に記載のアダマンタン化合物又は4に記載の樹脂組成物を用いたプリント回路基板形成用レジスト材料又はソルダーレジスト材料。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐熱性、基板への接着性、硬化したときの曲げ特性に優れる樹脂組成物が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のアダマンタン化合物は下記式(1)で表わされる。
【化5】

式中、Cyは脂環構造であり、Rはそれぞれ水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基であり、nはそれぞれ1〜10の整数である。nがそれぞれ2以上の場合、Rは同一でも異なっていてもよい。
【0011】
Cyとしては、単環又は多環の脂環構造が挙げられる。Cyは飽和でも不飽和でもよい。また、Cyは2以上の脂環構造が単結合により結合した構造でもよい。
単環脂環構造は、好ましくは炭素数3〜20、より好ましくは炭素数5〜10であり、シクロヘキサンが特に好ましい。
多環脂環構造は、好ましくは炭素数6〜40、より好ましくは炭素数6〜20であり、例えばノルボルネン、アダマンタン、ビアダマンタン、ジアマンタン等が挙げられ、特に好ましくはアダマンタンである。
Cyにおける結合位置については特に制限はない。
【0012】
Rは好ましくは水素原子である。nは好ましくは1〜3の整数である。
本発明のアダマンタン化合物は常温で固体であり、扱いが容易である。
【0013】
本発明のアダマンタン化合物は好ましくは下記式(2)又は(3)で表わされる。
【化6】

式中、R、nは式(1)と同じである。
【0014】
本発明のアダマンタン化合物は、下記式(10)で表されるアダマンタン化合物とジカルボン酸を反応させるエポキシ開環反応により製造することができる。式(10)中、Xはそれぞれ下記式(11)で表される基である。また、式(11)中、R,nは上記と同じである。
【化7】

【0015】
ジカルボン酸としては、上記の脂環構造Cyに2つのカルボキシ基が置換したものを好適に用いることができ、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸、アダマンチルジカルボン酸等が挙げられる。
【0016】
反応温度は0〜200℃が好ましく、特に20〜150℃が好ましい。温度が低すぎる場合、反応速度が低下し、反応時間が長くなる。温度が高すぎる場合、着色が激しくなる。
圧力は、絶対圧力で0.01〜10MPaが好ましく、特に、常圧〜1MPaが好ましい。圧力が高すぎる場合は、安全上、問題があり特別な装置が必要となり、産業上有用でない。
反応時間は、1分〜24時間が好ましく、特に、1時間〜15時間が好ましい。
【0017】
触媒としては、ナトリウムアミド、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、ピリジン、N,N−ジメチルアニリン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン−5(DBN)、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(DBU)、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、燐酸ナトリウム、燐酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酸化銀、ナトリウムメトキシド及びカリウムt−ブトキシド等が挙げられる。
塩基性触媒の使用割合は、塩基性触媒/原料の活性水素(モル比)が、2〜20程度となる量であり、好ましくは4〜12となる量である。
【0018】
上記反応の際には、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド及びテトラエチルアンモニウムブロミド等の4級アンモニウム塩を相間移動触媒として添加してもよい。この4級アンモニウム塩の使用割合は、アダマンタン化合物に対して通常0.01〜20モル%程度であり、好ましくは0.1〜10モル%である。
【0019】
上記反応は、無溶媒又は溶媒の存在下で行う。溶媒としては、アダマンタン化合物の溶解度が0.5質量%以上、望ましくは5質量%以上の溶媒を用いるのが有利である。溶媒の使用量はアダマンタン化合物の濃度が0.5質量%以上、望ましくは5質量%以上となる量である。このとき、アダマンタン化合物は懸濁状態でもよいが、溶解していることが望ましい。
溶媒として具体的には、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、DMF(ジメチルホルムアミド)、DMAc(N,N−ジメチルアセトアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、酢酸エチル、ジエチルエーテル、THF(テトラヒドロフラン)、アセトン、メチルエチルケトン及びMIBK(メチルイソブチルケトン)等が挙げられる。これらは単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0020】
精製方法は、必要に応じて、蒸留、晶析、カラム分離等が可能であり、生成物の性状と不純物の種類により選択できる。
【0021】
式(10)で表されるアダマンタン化合物は、下記式(20)で表わされるアダマンタン化合物とエピハロヒドリン化合物を反応させることで製造することができる。式(20)中、X11はそれぞれ下記式(21)で表される基である。式(21)中、R,nは上記と同じである。
【化8】

【0022】
エピハロヒドリン化合物は、例えばエピクロロヒドリン、エピブロモヒドリンが挙げられ、エピクロロヒドリンが好ましい。
【0023】
上記の反応は、通常、塩基性触媒の存在下で行う。塩基性触媒としては、上記と同じものが挙げられる。また、溶媒も上記と同様である。
【0024】
アダマンタン化合物とエピハロヒドリン化合物との反応は、通常0〜200℃程度、好ましくは40〜150℃の温度において行う。反応温度が0℃以上であると、反応速度が低下せず適度のものとなるため、反応時間が短縮される。また、反応温度が200℃以下であると、生成物の着色が抑制される。
反応の際の圧力は、絶対圧力で通常0.01〜10MPa程度、望ましくは常圧〜1MPaである。圧力が10MPa以下であると、安全性が確保されるので特別な装置が不要となり、産業上有用である。反応時間は、通常1分〜24時間程度、望ましくは1〜10時間である。
【0025】
式(20)で表されるアダマンタン化合物は、下記式(30)で表わされるアダマンタン化合物と環状炭酸エステル化合物を反応させることで製造することができる。
【化9】

【0026】
環状炭酸エステル化合物としては、エチレンカーボネート、炭酸プロピレン、炭酸1、2−ブチレン等が挙げられ、特にエチレンカーボネートが好ましい。
この反応においては、触媒として塩基を使用することが好ましく、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩等の有機アミンや水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、燐酸ナトリウム、燐酸カリウム、ブトキシカリウム等の無機塩基を使用することができる。アダマンタン化合物に対する塩基の使用量は、通常0.5〜5倍(モル)であり、好ましくは1〜3倍である。
使用する溶媒は、上記と同様である。
【0027】
反応温度は、通常、0〜200℃であり、好ましくは80〜140℃である。反応圧力は特に限定されるものではないが、装置の簡便さから常圧で行うことが望ましい。反応時間は、通常、1分〜48時間であり、好ましくは1時間〜24時間である。
【0028】
本発明の樹脂組成物は、上記の本発明のアダマンタン化合物を含有する。
本発明の樹脂組成物は、好ましくは重合開始剤を含有する。重合開始剤としては、熱重合開始剤及び光重合開始剤が挙げられる。本発明の樹脂組成物は、これらの重合開始剤(硬化剤)を用いた反応により硬化させることができる。
【0029】
上記熱重合開始剤の具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイト、メチルイソブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物やアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤が挙げられる。
【0030】
上記光重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ベンジル類、ベンゾインエーテル類、ベンジルジケタール類、チオキサントン類、アシルホスフィンオキサイド類、アシルホスフィン酸エステル類、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族ヨードシル塩、芳香族スルホキソニウム塩、メタロセン化合物等が挙げられる。
【0031】
また、重合開始剤(硬化剤)としては、カチオン重合開始剤、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤及びフェノール系硬化剤等から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0032】
カチオン重合開始剤としては、熱又は紫外線によりエポキシ環と反応するものであればよく、上述したように例えば、p−メトキシベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート等の芳香族ジアゾニウム塩、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート等の芳香族スルホニウム塩、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート等の芳香族ヨードニウム塩、芳香族ヨードシル塩、芳香族スルホキソニウム塩及びメタロセン化合物等が挙げられる。中でもトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート等の芳香族スルホニウム塩及びジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート等の芳香族ヨードニウム塩が最適である。これらは単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0033】
カチオン重合開始剤の使用量は、本発明のアダマンタン化合物、又はアダマンタン化合物及び後述する樹脂成分100質量部に対して、0.01〜5.0質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜3.0質量部である。カチオン開始剤の含有率を上記範囲とすることにより、良好な重合及び光学特性等物性を発現できる。
【0034】
酸無水物系硬化剤としては、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、無水グルタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸及びメチルテトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。中でもヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸及びメチルテトラヒドロ無水フタル酸が最適である。これらは単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
酸無水物系硬化剤を用いる場合、その硬化を促進する目的で硬化促進剤を配合してもよい。この硬化促進剤の例としては、3級アミン類、イミダゾール類、有機ホスフィン化合物類又はこれらの塩、オクチル酸亜鉛及びオクチル酸スズ等の金属石鹸類が挙げられる。これらは単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0035】
フェノール系硬化剤としては、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂及びトリアジン変性フェノールノボラック樹脂等が挙げられる。
アミン系硬化剤としては、例えばジシアンジアミドや、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン及びm−キシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等が挙げられる。これらは単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0036】
これらの硬化剤の中では、硬化樹脂の透明性等の物性の点から、酸無水物系硬化剤が好適であり、中でも、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸及びメチルテトラヒドロ無水フタル酸が最適である。
【0037】
上記硬化剤の配合割合は、本発明のアダマンタン化合物、又はアダマンタン化合物及び後述する樹脂成分のグリシジル基と、反応する硬化剤の官能基の比率で決定する。通常は、グリシジル基の数に対して、対応する硬化剤の官能基の数が0.5〜1.5倍、好ましくは0.7〜1.3倍となる割合である。
硬化剤の配合割合を上記範囲とすることにより、組成物の硬化速度が遅くなることや、その硬化樹脂のガラス転移温度が低くなることがなく、また、耐湿性の低下もないので好適である。
耐熱性、透明性に優れる本発明のアダマンタン化合物を、上記硬化剤と反応させることで、耐熱性、透明性の他に耐光性、さらに誘電率等が向上し、また、実用上必要となる溶解性が付与される。
【0038】
本発明の組成物は、耐熱性や機械物性等に悪影響を与えない限りにおいて他の重合性モノマーを含んでもよい。そのような重合性モノマーの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エチレングリコール ジ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオール ジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール ジ(メタ)アクリレート、アダマンタン−1,3−ジオール ジ(メタ)アクリレート、アダマンタン−1,3−ジメタノール ジ(メタ)アクリレート、アダマンタン−1,3−ジエタノール ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール テトラアクリレート、ジペンタエリスリトール ヘキサアクリレート等が挙げられる。アクリレートの配合量は、仕込んだアダマンタン化合物に対して、0.05〜80wt%、好ましくは、1〜30wt%の範囲がよい。
【0039】
本発明の組成物は、さらにバインダーポリマーを含んでいてもよい。バインダーポリマーとしては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、アミド系樹脂、アミドエポキシ系樹脂、アルキド系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられる。アルカリ現像性の見地からは、アクリル系樹脂が好ましい。これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。バインダーポリマーの配合量は、仕込んだアダマンタン化合物に対して、1〜50wt%、アルカリ現像の見地から好ましくは、5〜30wt%範囲が好ましい。
【0040】
バインダーポリマーは、例えば、重合性単量体をラジカル重合させることにより製造することができる。上記重合性単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン等の重合可能なスチレン誘導体、アクリルアミド、アクリロニトリル、ビニル−n−ブチルエーテル等のビニルアルコールのエステル類、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、α−ブロモ(メタ)アクリル酸、α−クロル(メタ)アクリル酸、β−フリル(メタ)アクリル酸、β−スチリル(メタ)アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソプロピル等のマレイン酸モノエステル、フマール酸、ケイ皮酸、α−シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸、プロピオール酸等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0041】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、これらの構造異性体等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
本発明の組成物には、さらに必要に応じて、従来から用いられている、例えば、硬化促進剤、劣化防止剤、変性剤、シランカップリング剤、脱泡剤、無機粉末、溶剤、レベリング剤、離型剤、染料、及び顔料等公知の各種添加剤を添加してもよい。
【0043】
上記硬化促進剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、トリス(2,4,6−ジメチルアミノメチル)フェノール等の3級アミン類、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート等のリン化合物、4級アンモニウム塩、有機金属塩類、及びこれらの誘導体等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、あるいは、併用してもよい。これら硬化促進剤の中では、3級アミン類、イミダゾール類及びリン化合物を用いることが好ましい。
【0044】
劣化防止剤としては、例えば、フェノール系化合物、アミン系化合物、有機硫黄系化合物及びリン系化合物等の、従来から公知の劣化防止剤が挙げられる。劣化防止剤を添加すると、本発明の組成物における耐熱性や透明性等の特性を保持することができる。
【0045】
変性剤としては、例えば、グリコール類、シリコーン類、アルコール類等の、従来から公知の変性剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、例えば、シラン系、チタネート系等の、従来から公知のシランカップリング剤が挙げられる。脱泡剤としては、例えば、シリコーン系等の、従来から公知の脱泡剤が挙げられる。無機粉末としては、用途に応じて粒径が数nm〜10μmのものが使用でき、例えば、ガラス粉末、シリカ粉末、チタニア、酸化亜鉛及びアルミナ等の公知の無機粉末が挙げられる。溶剤としては、樹脂成分が粉末の場合や、コーティングの希釈溶剤として、トルエンやキシレン等の芳香族系溶剤やメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤等を使用することができる。
【0046】
本発明の樹脂組成物は白色ソルダーレジストに用いることができる。この場合、樹脂組成物は例えば、光硬化性モノマー、チオール系化合物(硬化剤)、光重合開始剤、希釈剤、ルチル型酸化チタン及び上記のアダマンタン化合物を含む。
【0047】
本発明の硬化物は、上記組成物を熱硬化又は光硬化することにより得ることができる。
熱硬化温度は通常30〜200℃程度、好ましくは50〜150℃である。30℃以上とすることにより硬化不良となることがなく、200℃以下とすることにより着色等を生じることがなくなる。硬化時間は使用するアダマンタン化合物や重合開始剤等によって異なるが、0.5〜6時間程度が好ましい。
【0048】
光硬化においては、例えば紫外線の照射により硬化物を得ることができる。紫外線の照射光量はアダマンタン化合物や重合開始剤の種類、硬化物の膜厚等の諸条件により異なるが、通常、100〜5000mJ/cm程度、好ましくは500〜4000mJ/cmである。紫外線照射後に後加熱を行ってもよく、70〜200℃程度で0.5〜12時間程度行うことが好ましい。
【0049】
このように本発明のアダマンタン化合物及び樹脂組成物は、優れた特性を有するので、プリント回路基板形成用レジスト材料、ソルダーレジスト材料、半導体用レジスト材料等として用いることができる。
【実施例】
【0050】
実施例1
還流冷却器、温度計、攪拌機、窒素導入管を取り付けた500mlの四つ口フラスコに、化合物(A)60g、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸18.6g、及び48wt%水酸化ナトリウム水溶液17.3gを仕込み、攪拌しながら100℃まで加熱した。
【化10】

【0051】
液温が100℃に達してから5時間後にサンプリングを行い、LC(液体クロマトグラフィー)で原料の消失を確認後、反応液を室温まで冷却した。
その後沈殿物をろ別し、水及びメタノールで再結晶を行い、析出した固体を乾燥させ、以下に示す目的物を得た(白色固体、収量30g、エポキシ当量890)。
【化11】

【0052】
実施例2
還流冷却器、温度計、攪拌機、窒素導入管を取り付けた500mlの四つ口フラスコに、化合物(A)37g、1,3−アダマンチルジカルボン酸10g、48wt%水酸化ナトリウム水溶液10gを仕込み、攪拌しながら100℃まで加熱した。液温が100℃に達してから5時間後サンプリングを行い、LCで原料の消失を確認後、反応液を室温まで冷却した。
その後、水、クロロホルムを加えた。クロロホルム相を水洗し、濃縮後、析出した固体を乾燥させ、以下に示す目的物を得た(白色固体、収量38g、エポキシ当量950)。
【化12】

【0053】
実施例3
実施例1で合成した化合物10g、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル10g、酸無水物としてメチルヘキサヒドロ無水フタル酸(新日本理化(株)製、MH700)15.7g、及び硬化促進剤として1,8−ジアザビシクルロ[5.4.0]ウンデセン−7のオクチル酸塩(サンアプロ社製、SA102)0.4gを室温で混合し、脱泡した。
【0054】
上記で得られた組成物を以下のように評価した。結果を表1に示す。
(1)接着性試験
得られた組成物をポリイミドフィルムに塗布し、110℃で2時間、150℃で3時間硬化させた後、フィルムを90度に折り曲げを行い、硬化物の接着性を評価した。
硬化物が保持している場合を「○」と評価し、硬化物の剥がれが生じた場合は「×」と評価した。
(2)曲げ強度試験
組成液を110℃で2時間、150℃で3時間硬化させ、曲げ強度をJIS K7171に準拠して測定した。
(3)長期耐熱性試験
組成液を110℃で2時間、150℃で3時間硬化させ、140℃の恒温槽に試料を100時間置き、サンシャインテスターを用い、試験前後の400nmの光線透過率を測定した。変化が20%未満の場合を「○」、20%以上低下した場合「×」とした。
【0055】
実施例4
実施例2で合成した化合物10g、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル10g、酸無水物としてメチルヘキサヒドロ無水フタル酸(新日本理化(株)製、MH700)15.6g、及び硬化促進剤として1,8−ジアザビシクルロ[5.4.0]ウンデセン−7のオクチル酸塩(サンアプロ社製、SA102)0.4gを室温で混合し、脱泡した。
得られた組成物を実施例3と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0056】
比較例1
4,6−ビス(1−アダマンチル)−1,3−ジグリシジルオキシベンゼン10g、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル10g及び酸無水物としてメチルヘキサヒドロ無水フタル酸(新日本理化(株)製、MH700)20.2g、硬化促進剤として1,8−ジアザビシクルロ[5.4.0]ウンデセン−7のオクチル酸塩(サンアプロ社製、SA102)0.4gを室温で混合し、脱泡した。
得られた組成物を実施例3と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0057】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のアダマンタン化合物及び組成物は、ソルダーレジスト材料として使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表わされるアダマンタン化合物。
【化13】

(式中、Cyは脂環構造であり、Rはそれぞれ水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基であり、nはそれぞれ1〜10の整数である。nがそれぞれ2以上の場合、Rは同一でも異なっていてもよい。)
【請求項2】
下記式(2)又は(3)で表わされる請求項1に記載のアダマンタン化合物。
【化14】

(式中、Rはそれぞれ水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基であり、nはそれぞれ1〜10の整数である。nがそれぞれ2以上の場合、Rは同一でも異なっていてもよい。)
【請求項3】
下記式(10)で表されるアダマンタン化合物とジカルボン酸を反応させる、請求項1又は2に記載のアダマンタン化合物の製造方法。
【化15】

(式中、Xはそれぞれ以下の一般式(11)で表される基である。)
【化16】

(式中、Rはそれぞれ水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基であり、nは1〜10の整数である。nが2以上の場合、Rは同一でも異なっていてもよい。)
【請求項4】
請求項1又は2に記載のアダマンタン化合物を含有する樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の樹脂組成物を加熱又は光照射により硬化させてなる硬化物。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のアダマンタン化合物又は請求項4に記載の樹脂組成物を用いたプリント回路基板形成用レジスト材料又はソルダーレジスト材料。

【公開番号】特開2012−153605(P2012−153605A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11264(P2011−11264)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】